○平田
政府委員 お話の点はあまり御説明を要しないかと思いますが、退職所得は勤労所得的な要素がある。しかも給与所得の一種の延長と申しますか、そういうものであり、かつ一時にもらう所得である、こういう点が退職所得の特色ではないかと存じます。譲渡所得になりますと、資産所得的なものであ
つて、かつ一時所得であるということになるかと思います。それから山林所得になりますと、さつき申し上げましたように、これは年々山林所得のある人が相当多い。それも本来元本的な所得というよりも、年々山林が成長いたしまして、生じ得べかりし所得を一時に取得する場合のあることも事実でありまして、山林所得になりますと、その辺の一時所得的性質も、よほどほかの所得と違う。事業所得的な要素と一時所得的な要素と両方持
つているのではないか。奥村さん御承知の
通り、
日本のずつと前の
所得税でありますれば、純然たる一時所得には課税してなか
つたが、その当時も山林所得にはやはり課税いたしております。従いましてその辺所得の種類によりまして、若干差があるようでございます。
所得税の純粋
理論から申しますと、全部所得を総合いたしまして、しかも負担として適正な負担をするという
考えが、最近最も進歩した
所得税の
理論でありまして、変動所得の平均課税方法で課税をするという、二十五年から行いました課税方式というものは、
所得税の
理論といたしましては、最も進んだ税制だと今でも実は
考えております。たださつき申しましたように、
所得税の一般の税率等が重いために、こういう所得が一町に入
つて来ますと、変動所得の平均課税方法だけでは、現実問題としては必ずしも即応しない部面がある。それから五箇年の平均課税にいたしましても、なおまだ完全に問題は解決されていない。しかも非常に納税の方法が煩雑で、かえ
つて納税者は、公平ではあるが、めんどうなので困る、こういうような議論もありますので、
日本の現状からいたしますると、さつき申しましたように、なるべく簡単化をはかりまして、同町に一時所得的な性質にかんがみまして、負担の緩和をはか
つたらどうか、こういう
趣旨で
提案をいたしたのでございます。
十五万円の基礎控除をいたしましたのは、これは所得がなくな
つてしま
つたような人の場合には、実は現在の税法でもかからないのです。少額の退職所得は、最初の年はかかりましても、その次の年からかからなくなりまして、あるいは返さなければならないようにな
つておるのであります。ところが今度は分離課税をしますので、そういうことがなくなりました。
従つてそれに対しましては、一定額の控除が必要ではないか、こういう
意味で基礎控除の三年分、扶養親族が三人か四人くらいでありますと、一年分の基礎控除と扶養親族の控除額、その程度の控除は退職所得について認めた方が妥当ではないか。これは
理論的にはつきりした数字は出て来ないのですが、そういう
一つのよりどころからいたしたのであります。
それからいま
一つは、二分の一控除して半額に課税するわけでありますが、これはやはり一時にもらう所得であるので、ある年に固ま
つた所得になるわけであります。それに対しまして、年々の所得に対しまする税率をそのまま適用したのでは無理であろうというので、半額を課税所得にしまして、税負担を計算する。しかもこれはなるべく簡単な方法がいいだろうというので、半額にする、こういう方法にいたしたのでございます。りくつから申しますと、二十五年度から実行しました方法、これは捨てがたいものがあると思うのでございますが、今の実際から申しますと、こういう方式の方が、より実情に即しはしないだろうかというので、かような改正にいたすことにいたしたのであります。将来
所得税がすべて非常に理想的な状態になりまして、うまく行くということになりますれば、私はやはり理想としては現在のような方式の方が、将来非常に長い眼で見ますと、
理論的にはいいのではないかと
考えますが、今の実情から申しますと、やはりこの
提案いたしましたような方がより妥当ではないか、こういう
意味で改正案を
提案いたしましたことを、御了承願いたいと思います。