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山際説明員 私は
日本輸出銀行の
専務理事をいたしております
山際であります。お申しつけによりまして、
日本輸出銀行の最近の
状況について御
説明申し上げます。
日本輸出銀行は、御
承知の
通り昨年の十二月制定せられました
日本輸出銀行法に基きまして、
機械設備、
車両、
船舶など、いわゆる
プラント輸出に伴いまして、比較的
期間の長い、すなわち
期間六箇月以上にわたる
運転資金を供給することによりまして、
金融面から
プラント輸出を促進する
目的をも
つて設立せられたものでございます。
設立を見ましたのは昨年の十二月二十八日でございましたが、ただちに
開業準備に着手いたしまして、
政府予算上定められました定員、すなわち総裁以下実際の
従事員を加えまして総員四十余名の小規模をも
つて、丸の内の
興業銀行ビル内において、去る二月一日より営業を開始いたしたのでございます。
本行の
資本金は
全額政府出資金でございまして、百五十億円でございます。開設の当初
一般会計から二十五億円の拂込みを受けまして、三月末にさらに見返
資金特別会計から二十五億円、九月の初めに
一般会計より再び二十五億円の拂込みを受けまして、現在では拂込済み
資本金は七十五億円、残余七十五億円は未拂込みのまま存在しておる
状況に
なつております。しかして本行は、
債雰の発行はもとより、借入金を行いますることも一切認められておりませんので、本行の運用し得る
資金は、
右政府出資金以外にはないわけでございます。本行の行います
業務につきましては、その大綱は
法律において定められておるのでございまするが、こまかい
資金融通の
條件などは、本行が独自に定めまするところの
業務方法書に従
つて行うことと相
なつております。
まず本行の行います
業務の範囲でございますが、それにつきましては、
さきに申し述べました本
行設立の
目的に照しまして、きわめて局限されたことに
なつております。すなわち本行の
業務は、
設備、
船舶、
車両並びにその
部分品及び
付属品、すなわち俗にいわゆる。
プラントものの
輸出、並びにこれに伴
つてなされる技術の提供のために必要なる、
期限六箇月以上にわたる
長期運転資金を、供給することに限定されておるのであります。しかして本行が右の
長期運転資金の
融通を行うにつきましては、
法律は次の
三つの
要件を
規定いたしております。その第一は、普通の
銀行が
通常の
條件によ
つては
資金の供給を行うことが困難であるということであります。その第二は、
輸出契約がすでに締結されておるか、またはその締結されることが確実であるということであります。その第三は、
輸出契約に基く債務の履行及び
融通金の
回収が、確実と認められることでございます。本行は右の
要件を遵守いたしまして、
資金の
融通に当
つておるわけでございまするが、その
融通の
方式につきましても、
法律に
規定があるのでございまして、それには次の
三つのものが定められております。
すなわちその第一は、
国内の
輸出業者または
輸出品製造業者に対する
資金の
貸付でございまして、しかもその場合には、普通の
銀行とのいわゆる
協調融資の
方法に限られておるのであります。その第二は、普通の
銀行が
プラント輸出のために、
国内の
輸出業者または
輸出品製造業者に対して、まず
手形の
割引をいたしまして、その
割引いた
手形をさらに本行が再
割引することによりまして、
資金の
融通を行う
方式であります。第三の
方式は、
外国の
政府、
銀行、
商社等に対して、
わが国から
プラント設備を買い付けるための
資金として、直接
円資金を貸し付ける
方式でございます。
以上
法律に定められました
三つの
方式の中におきまして、現在本行が取扱
つておりまするのは、その第一の
協調融資と、第二の
手形の再
割引の二つでございます。第三の直接
外国政府等に対して
貸付をいたしますことは、いまだ奥行をいたしておりません。しかして現在は
業務方法書の定めるところによりまして、
協調融資の場合におきましては、本行が
所要資金の八割、普通の
銀行が二割の割合でこれを分担することといたし、利率につきましては、
協調融資の場合も
手形再
割引の場合も、本行の
取得せる金利は年利にして七分五厘、日歩にして二銭三毛を徴しております。また
融通の
期限は
法律の定めるところによりまして、六箇月以上
原則として三年以内、特別の必要ある場合に
限つて五年以内といたしております。
担保につきましては、
資金の
性質上、
通常の場合は
物的担保を徴することが困難でありますので、これはむしろ特別の場合に考慮いたすことといたし、
通常の場合におきましては、
輸出信用保険をつけること、
代金受領の委任を受けること、
人的保証をとることなどによりまして
実情に即した取扱いをなすことといたしております。
本
行開業以来今日に至るまでに、すでに九箇月余りも経過いたしたのでありまするが、その間における本行の業績について御
説明を申し上げますると、便宜上先般お手元に配付いたしました
融資状況と申す
謄写版刷りがございまするので、それについてごらんをいただきたいと思います。その最初のページは「
月別貸出状況」と記してございますが、一番左の欄をごらんいただきますると、そこに
融資承諾の欄がございます。すなわち本
行開業以来今日まで
資金の
融通を承諾いたしましたものでございまするが、
件数にいたしまして、その欄の一番右の方に
累計がございまするが、五十一件でございます。その下に括弧書きして七件とございまするのは、五十一件の
うち手形再
割引の
方法によりまして、
資金を
融通いたしたものの
内書きでございます。しかして
融資歩承諾いたしました
金額は、そこにございまする
通り累計五十四億六千三十八万七千円、その下に括弧書きいたしまして、再
割引に属する分一億八千八百十八万二千円ございます。その次の欄の「月中
貸出金額」と申しまするのは、現実に
資金を貸し出しました額でございまして、その額は
累計五十億四千五百五十五万一千円、
うち再
割引に属するものが一億七千九百三十万八千円でございます。その次の欄の「月中
回収金額」と申しまするのは、
開業以来すでに
回収をいたしました
金額を記してあるのでございまするが、
累計四億三千二百二十万七千円でございます。差引きまして月末残高といたしまして、十月二十日現在において
件数は五十件、すなわち一件はすでに
全額償還に
なつておるために減
つております。その
金額は四十六億一千三百三十四方三千円、
うち再
割引に属する
金額が一億七千九百三十万八千円でございます。第二の表をごらんいただきますると、ただいま申し上げました
金額を
品目別、
仕向地別に、
輸出契約に対しまして
協調融資並びに
手形再
割引をいたしました
状況を、
一覧表として差出してあるのでございます。一番左の欄は
品目の欄でありまするが、
電気機械、これが
仕向地といたしましては、ここにございまする
通り、アルゼンチン二件、沖縄七件、フイリピン一件、
インド一件、
台湾三件、
タイ国が一件、
合計いたしまして、
電気機械関係は十五件、これに対しまして、そのもととなりました
輸出契約全額は、次の欄の三十五億八千二百万円、その
うち輸出銀行が
融通を承諾いたしました
金額が三十億二千万円と
なつております。次の
品目は
繊維機械でございまするが、
台湾向けが三件、
パキスタンへ七件、
ベルギー領コンゴへ一件、
インドへ一件、
合計十二件、その
輸出契約金額が三十四億三千四百万円、それに対しまして
輸出銀行が
融資を承諾いたしました
金額が、十五億七千二百万円であります。その次は
鉄道車両でございますが、これは、
パキスタンに対して二件であります。
輸出契約金額で十一億六千九百万円、
融資を承諾いたしました
金額は五億四千四百万円でございます。
次に
船舶でございますが、パナマヘ向けて二件、リベリアへ一件、
タイへ九件、
沖繩へ一件、
朝鮮へ一件、
合計十四件、
輸出契約金額ぶ二十八億六百万円、本行が
融資を承諾いたしました
金額が、九億九千五百万円でございます。
その他といたしまして
インド向けが一件、これはデイーゼル・エンジンでございますが、
輸出契約が一億五千六百万円で、本行が八千八百万円を
融資いたしております。その次のビルマ、これは浮桟橋でございますが、一件で一億一千百万円の
輸出契約に対して、五千二百万円を
融通いたしております。それから
沖繩へ向けまして、これは軍の
関係の施設でございますが、六件、
輸出契約が十二億一千五百万円、これは全部
手形再
割引でいたしておりまして、一番右の欄をごらんいただきますと、一億三千万円を再
割引いたしております。その他の部類に属するものが
合計いたしまして八件、
輸出契約金額が十四億八千三百万円で、本行が
融資を承諾いたしましたのが一億四千万円と、再
割引をいたしましたのが一億三千万円。
以上を
合計いたしまして、
件数において五十一件、
輸出契約金額において百二十四億七千大百万円、これに対しまして
協調融資の
方法によ
つて融資を承諾いたしました
金額が五十三億七千百万円で、
手形再
割引において放出いたしました
金額が一億八千八百万円、これを
合計いたしました五十四億六千万円が、先ほど申し上げました十月一十日現在の残高に
なつております。
なお最後のページをごらんいただきますと、これは「借入申込
状況」でございますが、この申込みの
うちには、まだ正式の申込みというには至りませんが、あらかじめ商談が進行中でありまして、大体契約ができそうだというところで、あとのことのためにあらかじめ打合せに参
つておる
金額を含んでおりますが、それを内訳いたしますと、
電気機械関係が五件で、その次に
金額とございますのは、
輸出契約の
見込み金額でございます。これが五億八千六百万円。
繊維機械が十件で十三億五千八百万円。
船舶車両は七件で百四十四億三千六百万円。その他の機械類が四件で二十一億四千六百万円。総計二十人件で、
輸出契約見込み金額は百八十五億二千六百万円と相
なつております。なおこれらの
融資に関しまして、その一件当りの
金額並びに
期限を申し上げますと、融
資金額といたしましては一価最高のものは四億六千四百万円でございます。最低のものは五百六十三万円に
なつております。平均いたしまして一件当り一億七百万円と
なつております。また
融資の
期限は最長十七箇月、最短六箇月、平均ば約九箇月と相
なつております。
本
銀行開設以来今日までの
融資の実績は、以上申し上げました
通りでございますが、以上の数字は昨年の秋本
銀行法を御審議いただきましたころの予想に比較いたしますと、やや
輸出不振の情勢を示しておることは、いなみがたいところであると存じます。何ゆえに予期の数字を示さなかつたかと申しますと、昨年の上半期中は、
わが国の
プラント物の
輸出は、比較的順調に漸次増大の趨勢をたど
つてお
つたのでございますが、昨年六月
朝鮮動乱の勃発とともに、形勢一変いたしまして、その後における
わが国の原材料価格の、ことに鋼材の価格の高騰とかつその価格の不安定ということが、
輸出契約の長期にわたる見積りをほとんど不可能にいたしまして、原材料の将来の値上リを考慮いたしまして見積りをいたしますと、とうてい諸
外国と競争し得ないような高値にならざるを得ない
状況に陷りまして、これがために昨年末以後におきましては、
プラント輸出の新規契約はまことに少い
状況になりまして、その結果がただいま申し上げましたような数字として、今日に及んでおるのでございます。ただ最近に至りましては、国際的に見ましても、また
国内的に見ましても、物価の
状況がやや安定の度を増して参つたようにも思われまするせいか、幾分
プラント輸出の取引も活気をとりもどし始めたような気がいたします。ことに最近注目を引いておりまするところのいわゆる東南アジアの
経済開発が、今後具体的に進行するように相なり、あるいはまた最近しきりに伝えられておりまする米国からの各種工作機械類の注文が、現実に発注を見るように相なりまするならば、今後は
相当の成績を上げることができるのではないかと、ひそかに期待をいたしておるような次第でございます。
なおここで最近の情勢として注意を要しますることは、最近話ができて参りまする
輸出契約は、その
條件が、たとえば
輸出後一年とか二年とか、または物によりましては三年、五年の比較的長期の
支拂いを要求して参
つておる傾向が、漸次濃厚と
なつておることでございます。この
支拂い條件が長引いて参りますことにつきましては、すでに他の競争国においても、ある程度この種の
條件に応じて
輸出をいたしておるような
状況が見受けられまするために、
わが国といたしましても、漸次これに同調せざるを得なくなるのではないかと思うのでございます。そう
なつて参りますと、本
銀行の貸出し
條件も、勢い今後は漸次長期化せざるを得ないと思われるのでございまして、その結果といたしまして、
資金の回転がおそくなりまして、より多くの
資金量を必要とすることに相なるのでございます。私どもといたしましては何どきでも
資金の需要に応じ得るように、極力
銀行の資力を充実いたしまして、万全の備えをはかりますることを望んでお
つたのでございますが、幸いにここに、本
年度内において、
資本金をさらに二十億円追加いたして、百七十億円とする
法律案並びに
予算案が
提案されておりますることは、本
銀行といたしましては、大いに喜んでおる次第でございます。
なお本
銀行の業況を御
説明いたしまする機会に、一言つけ加えさせていただきたいと思いますことは、
日本輸出銀行の運営に関しましては、皆さま御
承知の
通り、
法律の定めるところによりまして、広汎なる権限を
銀行当事者に御一任くださ
つておるのでございます。われわれ当事者といたしましては、
業務に十分愼重を期しまするために、
設立と同時に、非公式な会合ではございますが、
輸出金融懇談会なるものを設けまして、大蔵省、通商産業省、
日本銀行の代表の方々並びに
輸出品製造業表、貿易業者、普通
銀行の東西のそれぞれの代表の方々に御参集いただきまして、毎月少くとも一回以上御会合を願いまして、本行の行いまする
業務に関して忌憚なき御意見、御批判等を承りまして、運営の参考といたしておるのであります。いやしくもその運営が独善に隔り、過誤を犯すがごときことのないよう十分留意をいたしまして、運営に当
つておるつもりでございます。
以上をもちまして一応私の御
説明を終りたいと思います。