○永岡
参考人 私は全
逓信従業員組合中央執行委員長の永岡光治であります。ただいまから
一般職の
職員の
給與に関する
法律の一部を
改正する
法律案について、私どもの
立場から御
意見を申し上げたいと思います。
まずこの
引上げの金額について、私どもの
意見を述べたいと思うのでありますが、御
承知のように、現在の
給與ベースは、昨年の五月、当時の経済状況に基きまして
人事院が
勧告したものを、しかもその金額よりははるかに下まわつた金額で実施されておるのが、現在の
給與ベースであるわけであります。ところで
人事院の今度の
勧告によりますと、昨年の五月に比べて本年の五月では、成人の独身者において四千二百円、つまり約二六%の騰貴を来しておるということを言われておるのでありますが、これに対して
政府の方では、それは四千円にしかな
つていないのだ、こういうことを
言つておりますガ、しかしどうしてそうな
つておるかということをいろいろ追求してみますと、実は本年一月に現在の
給與ベースが実施に
なつたのだから、そのときと
比較すればいいんだというようなことを
言つております。こうな
つて来ますと、何回
勧告されてみましても、その基準にとつた月からはるかに遅れて、しかも低く実施される。それでもう今までのは御破算だということで、いつもいつもばかを見ているのが、この
国家公務員の
給與ベースのあり方だ、こういうふうに私どもは感じられますので、これでは非常に耐えられないのであります。今回の
人事院の
勧告を見ましても、わずかに食費の値上り程度しか見込んでいないように聞いておりますが、御
承知のようにガス、電気、
交通費あるいは通信費、そういうものが非常に大幅に
引上げられておりますが、こういうものもやはり当然見なければならないし、
政府の
言つておるところの千五百円なるものが、いかに現在の実情に即さないかということは、これだけを見てもわかると思うのであります。先ほど
大都市の市長さんの方からも、いろいろ公述があつたようでありますが、承
つておりますと、
国家公務員よりも高い給料をもら
つておる所もあるのだけれども、しかしそれでもやはり現在の生活が苦しいのだから、どうしても
引上げてやらなければならぬので、
国会議員の皆さん方の方で、何とか
平衡交付金ででも補助していただいて、何とかこれを解決してくれないかと言われておるのであります。現在の
国家公務員より上まわつた給料をもら
つておる人の場合でも、なおかつそうでありますので、いかに
国家公務員が
給與の
引上げについて、現在の金額で
不満であるかということは、この市長さん方の言をも
つてしても明確であろうと私は考えるのであります。そうしてこの標準世帯のCPSの最近の
東京の例をと
つて見ますと、標準世帯で大体一万六千五百円ぐらいにな
つておるそうでありますが、
国家公務員の場合をとりまして、大体どういう程度の俸給をもら
つておる人に当るかと申しますと、十級の三号という人に当るわけであります。そうしますと役所の場合でどういう地位にある人かと言いますと、古参の係長ないしは課付事務官と申しますか、役所では非常に高い地位にある人がやつとこの程度の俸給しかもらえないということにな
つておるわけでありますので、これを見ても現在の私どもの
給與がいかに低いか、そうして今度の
引上げがいかに
不満であるかということを、明確に物語
つておると思うのであります。
それからもう一つは、
俸給表を
政府は
人事院の
勧告とは違つた体系で出されておりますが、現在私どもの俸給体系で、一番生活が困
つておるのはどこの階級かと申しますと、総体的に全部困
つておりますが、わけても困
つておるのは、五級職から八級ないし九級職に至るところの中堅暦の生活が、非常に困
つておるのでありますが、これが
人事院の
勧告と
比較いたしまして、
政府案によりますと、この中堅層の開きが何ぼくらい開きがあるかと申しますと、四号から中には六号近いものにな
つておるわけであります。にもかかわらず、非常に高い俸給をもらう人は、
人事院の
勧告に比べて、わずかに一号しか下
つていない、こういう矛盾した
俸給表が出ておりますが、こういう点につきましても私どもは、実際困
つておる生活の層を、
政府はほんとうに真剣に考えてくれておるのであろうかどうかということについて、大きな疑問を抱かざるを得ないのであります。先ほど自治労協の淺崩君から、
人事院勧告を実施しないことは、
憲法を無規するものであるという
趣旨のことを言われ、
人事院の権威を高めて、ぜひ
勧告を実施してほしいという
趣旨のことを言われました。私はあえて繰返しませんが、とに
かくこの俵給表に盛られておる金額なり体系を見た場合に、非常に
不満であるのであります。聞くところによりますと、最近に内閣総理大臣が二万円以上の給料の
引上げをされるようなことであり、あるいは大臣は一万五千円、おそらく
国会議員の皆さんにも大幅な金額の
引上げがあろうかと考えておるのでありますが、まさにそれだけ生活に困
つておるし、
物価高にな
つておるわけであります。そういう二万円ないし一万五千円という大幅の
引上げを認めなければならない現段階に、
国家公務員に至
つては千五百円程度でよろしいという結論は、どこから出るかということについて、私どもは大きな
不満を抱かざるを得ないのであります。それだけの金額は必要であろうと思います。
従つて私どもにつきましても、少くとも
人事院勧告の程度のものは、
人事院勧告そのものは、どうしてもここで実施してもらいたいということを、強く希望するものであります。これは生活の改善のみならず、現在の日本の置かれておる
立場から、いろいろと民主主義がどうだこうだという批判も出ておる時代でもありますので、
国家公務員から罷業権を奪い、せめて
国家公務員の
立場を守る機関として設けられた
人事院の存在というものの権威を高めて、皆がこれに従うという方法をぜひと
つていただきたいと思うのであらます。私はイギリスその他のこともいろいろ聞いておりますが、イギリスでもこういう仲裁
制度はあるそうでありますが、
勧告されますと、いまだか
つて政府がこれを拓否したためしがないと聞いております。私はそれこそがまさに真の民主主義国家のあり方だろうと思うのであります。生活状態を見ましても、経済状態を見ましても、日本とイギリスと比べて、イギリスがその日本よりは裕福とは考えられません。苦しい状態にあるイギリスですら、なおかつこの
勧告には文句なしに従う、これがイギリスの民主主義の高さ、国民の品性の高さを物語るものでもあるわけであります。ぜひ日本の場合も、こういう権威を高めて、日本の秩序を保ち、民主主義をどんどん伸ばしていただきたいこいうことを、切に念願するものであります。
さて
一般的な問題はその程度にいたしまして、私はたまたま郵政従業員組合の役員をや
つております
関係上、企業官庁
関係の問題について若干触れてみたいと思うのでありますが、今度の
法律案によりまして、企業官庁の
職員につきまして特別な
俸給表が設定されるということにな
つておりますが、この
趣旨そのものは私どもは賛成であるわけであります。ただその内容につきまして、その適用の範囲なり、その
俸給表の金額なり、体系なりについて大きな
不満がありますので、これを申し上げてみたいと思うわけであります。
まず適用の範囲でありますが、御
承知のように、郵政の場合を例にとりますと、地方貯金局、地方保険局、それから郵便局、これの
職員だけが該当するようにな
つておるのでありますが、しかしこれは
事業の
実態を見ます場合に、人事
行政の上から見ましても、業務運行の円滑の土から見ましても、非常に私は大きな疑問を抱かざるを得ないのであります。私どもの主張は、これは郵政従業員全部に適用してもらいたい、あるいは電気通信従業員全部に適用してもらいたい、それがこの特別
俸給表を生かすほんとうの
精神ではないか、こういうふうに考えておるのであります。事実今郵政省あたりの
職員の全部は、どういう経歴を踏んで来ておるかといいますと、給仕、小使、あるいは筆耕等は別といたしまして、全部
現業を経て来た人であります。本省あるいは郵政局あたりで約一万ぐらいの者がおりますが、全部
現業を経て来た人ばかりであります。それは現場を知らなければ運行できないのが、企業の
実態であるからであります。ちようど例を申し上げますと、国鉄公社であり、
一般の例をとりますれぼ、これは電気産業
関係の本社が、実は郵政省に当るわけであります。現場の実情を知らなければできないのが
実態であります。
従つて郵政省本省というものは、監督
関係の仕事は全然持
つていないのであります。すべて
事業をいかに円満に、いかに
経費を節約して運行できるか、こういうことに重点が置かれている。いわゆる企画事務をや
つておるのが、この企業官庁であります。そうしてそれに基いて現実に仕事に携わ
つておるものが、これが郵便局あるいは貯金局、保険局、こういうことにな
つておるのでありますが、そのために、これは一体とな
つてこの企業を運行しておるのであります。よく
現業官庁といいますが、
現業官庁でないのであります。企業官庁であります。この点はひ
とつ明確に認識してほしいと思います。
現業という言葉は適当しないのであります。企業官庁であります。
従つてこの点から考えて、私どもはこの一体となる
立場からして、現場であり、あるいは管理部門であるという区別なしに、一本にならなければならない必然性がここにあるということを申し上げたいのであります。この前大蔵省の
政府委員の方は、人事交流は郵政省等につきましては、ほとんどないということを
言つておりますが、私先ほど申し上げましたように現在郵政省の
職員は、給仕、小使、筆耕を除いた全部は、現場から入
つておる人だ、
従つて人事交流は上からも下に行き、下からも土に来るというここで、全部が交流されているのであります。これはもちろん郵政省から大蔵省、あるいは他官庁に行くということは、大蔵省の
政府委員のおつしやつたように、交流はない、いや交流できないという、ここに企業官庁と監督官庁のわかれが出て来ておるのであります。そういう意味からして絶対にこれは全部を
対象とした俸給体系を宮この中で実現してもらいたいということを特に主張するのであります。現在これがもし二つにわかれたままで運行されるということになりますと、どういう結果が出て来るかということを二、三申し上げてみたいと思うのであります。
第一点には、他官庁に比べて役づきの
職員が郵政省には非常に少いのであります。私どもが調べました範囲によりましても、運輸省とか、厚生省、農林省等は、役づきの
職員と称する数が、全体の三割ないし六割を占めておる。ところが郵政省あるいは郵政局等ではどの程度の率かと申しますと、わずかに一割四分にしか達していないのであります。そうしてこれは、郵政
関係の学校を出て、長く郵政省に職を奉じよう、この仕事に自分の一生をささげたいということで入
つておる
職員が多いのであります。
従つて勤続年数も非常に長いのであります。にもかかわらず、こういうような昇進の道が開かれない結果にな
つております
関係上、現在では非常に不遇な
立場にあります。
従つていわゆる俸給の頭打ちというものが、現在二十五万数千の
職員の中で、四万一千人を越えるほど出て来ておるという状況であります。これは他の官庁で見ますと、係長程度の役づきになるのには、せいぜい五年ないし十年くらいでなれるのでありますが、郵政省の場合では二十年ないし二十五年の長い期間を要するのが例であります。こういうものを打開しなければならないのでありますが、もしそういう形で二つにわかれますと、現場では多少頭打ちが救われる。ところがそれが、経験を経て企画業務をやらなければならぬとして、本省あるいは郵政局に入
つて来た
職員は、二、三年するうちに、自分と同じ條件で現場におつた人よりは、はるかに低い給料にな
つて来る、こういう矛盾が出て来るのであります。これではやはり一体とな
つて、企業官庁の
事業を円満に運行することは非常に困難である、私どもはこう考えておるわけであります。
従つて、ぜひこの点は全部を含めたもので検討を願いたい、こういうのが第一点であります。
それからもう一つは、頭打ちをひとまず是正するということで、三号ないし四号を現在延ばしていただいた、そのことはいいのでありますが、しかしその程度では、やはり先ほど申しました長い間の私どもの苦しい不遇な状態というものは解決できません。企業官庁でありますから、ほんとうに企業が生きて行けるような俸給体系をほしいのであります。
従つて一般官庁の
俸給表に
従つてやるということではなしに、特別な一つの俸給の立て方というものを、私どもはこの中で打出していただかなければ困る。そうしてそれは一日も早ければ早いだけ郵政
事業、
従つて国家全体の発展のために、裨益するところが非常に大である、こういうふうに私どもは考えて、この点を特にお願いするわけであります
それからいま一つは、
人事院勧告には企業官庁の性格といたしまして、奨励
手当のことがうたわれていると思うのでありますが、しかしこれはどうしたことか、今度の
政府の
法律案にはいれられておりません。御
承知のように私どもの職場では非常に定員が不足して困
つておりますが、定員法があるために、いくら事務量がふえましても、定員が増員されない限りは人員をふやすことができない、非常に困つた
制度にな
つている企業官庁でありながら、企業官庁の本質を抜いたところのわくで縛られておるために、非常に無理な仕事をさせられるのはこの企業官庁の運命であるわけであります。そういう
職員に対しまして、何らかの報償をするというのは、これはあたりまえだと私どもは考える。その意味で
人事院もおそらく
勧告を出したのであろうと解釈しておりますが、これはいれられてないということについては、大きな
不満を持つものであります。
従つてこれはぜひこの
国会におきまして復活してもらいたい、このことをお願いするわけであります。
それからいま一つは休職者に対する
給與の問題について、触れてみたいと思うのであります。これは私どもの職場を見ますと、青森の鉄道郵便局というのは、現在の定員が約三百ちよつとでありますが、長期欠勤者、つまりこれは結核
関係の患者でありますが、これがどの程度あるかと申しますと三十八名であります。一割強であります。こういうような職場の
実態でありますが、これは多かれ少なかれ郵政
事業の各職場に、共通する問題でありますが、これほど長期欠勤者を出す職場でありますので、こういう諸君に対しての療養についての保障がなされなければ、非常に困るのでありますが、現在部内全体を見まして、要注意者と称せられる者が、どの程度あるかと申しますと、二割二分に達しておる。こういう諸君につきましても、早期にこれは診断を受けさせ、そうして早く直
つてまた職場に復帰してもらわなければならぬのでありますが、これがどうも事務量がふえる割に定員が少い。今度の定員を見ますると、来年の事務量はどんどんふえておりますにもかかわらず、定員は落すという無謀なことが計画されているのでありますが、どうしで、も負担がかかるのであります。こういうことからもこの長期欠勤者、こういう者についての保障は十分見ていただかなければならぬのでありますが、今度の
法律案におきましては、二年間
給與の八割を保障して休ませることにな
つておりますが、私どもは今までの実績からいたしまして、この点だけを皆さんにぜひ入れてもらいたい。
それはまず最初の一年は病気欠勤として扱
つてもら
つて、次の三年を有給の休職にしてもらいたい。あとの二年――これは結核患者は非常に長い療養を要しますので、あとの二年は無給でよろしいが、とに
かく休職にしておいてもらいたい、こういうことを強く主張しておるのであります。ところが今度の
法律案によりますと、それがわずか二年にしかな
つておらない。同じ
公務員でありながら、教員
関係については三年ということが認められておりますが、
一般官庁等の作業の状況から見ましても、企業官庁におきましては、非常にこういう病気が職業病と言われるほど、罹病率が多いのでありまして、この点はどういうことがありましても、ぜひ国民の健康の向上からも――これは期限が切られておりますと、現在の実情といたしますと、首を切られるということが恐ろしいあまり、いろいろとごまかして職場に帰
つて来るわけであります。そうしてそれが病菌をまいてまたふやすという結果になりますので、そういうことのない上からいたしましても、ぜひこの療養期間の二年ということについては、休職期間、給料を出して休ませる期間が二年ということは、どんなことがあ
つても、三年以上にはどうしてもや
つておかなければならぬということを申し上げるのであります。
以上いろいろ申し上げましたが、大部分の方々が申されておりますので、できるだけ重複を避けて申し上げた次第でありますが、いずれにいたしましても、とに
かく人事院の
勧告そのものは、どういうことがあ
つても、万難を排してぜひ実施してもらいたいというのが、私どもの強い主張であることを重ねて申し上げまして、私の公述を終る次第でございます。