○太宰
政府委員 議題になりました項目につきまして、そのかんじんのところを御
説明申し上げたいと思います。
四六六号の診療収入の取扱当を得ないもの――これは群馬県にございます国立療養所の六日向荘で、
昭和二十三年十二月から二十五年三月までの間に、群馬県社会保險診療報酬
支払基金
事務所から
支払いを受けた診療費を、日銀に納付しないで市中銀行に普通預金としてお
つた。こういうことが
会計検査院の
指摘を受けたのでございますが、これは医療団から引継ぎを受けました国立療養所でございまして、職員もふなれな点がございましたために、かような間違いを生じたのでございます。これは本来ならば、ただちにこれを日本銀行に納付すべきことは申すまでもないところでありまするが、医療団当時、その地方銀行を利用してお
つたというその観念が残りまして、国立に移管後も、そのまま継続してそこに預金をしてお
つた。そして二十五年の四月三十日まで一回の払出しもすることなく、そのまま預金として処理していたのでございます。これは取扱者の
事務ふなれによるものでございまして、まことに遺憾に存ずる次第でございます。なおその金は、ただちに二十五年四月末に国庫に納入して整理いたした次第でございます。
次に、四六七号の診療収入の徴収に当り
処置当を得ないもの――これは国立療養所の久里浜病院外五箇所で、
昭和二十二年一月から二十五年三月までの診療収入につきまして、徴収決定の漏れが出たということで
批難を受けたのでございます。これも先ほど
ちよつと文部省
関係でも出ましたかと存じますが、診療収入の徴収につきまして、このごろまでは事後調定と申しまして、収入が入りましてから調定をするという手続をと
つてお
つたのでありまするが、これは
昭和二十三年より事前調定に改めたのでございます。ところが、
ちようど切りかえの直後というわけでもございませんが、その前後しておりました時でございまして、その際にその担当の者が
事務ふなれのために、前の分につきまして、ただちに整理をしておかねばならないのを、うつかりしてお
つて徴収決定漏れに
なつたということが
一つでございます。なおそのほかに、生活保護法によりまするところの被保護者の診療費、これの徴収決定をいたします際に、これは御案内の
通り、
関係の市区町村長の発行いたします医療券というものを提出させましてから後、初めて生活保護法によるものとしての取扱いをいたすべき筋合いでございますが、患者の方からそういう手続中であるというようなことで頼まれますと、まずそれが確実に入
つた後に手続をすべきものであるが、大体生活保護法の患者としての
処置をして、そうして請求書をその町村長の方にまわす。ところが町村長の方では、その手続を遅れていたしましたり、あるいは場合によりましては、それは要保護者とは認めがたいというようなことで否定された、そういうような事態ができました。かような
事務上の齟齬を来しましたために、さようなものの徴収未決定のものが生じたようなことでございます。大体そういうようなことで、ここに三百十万余円の徴収決定漏れのものを生じたのでございます。これは大体
昭和二十五年九月までに
金額徴収決定済みと訂正いたした次第でございます。今後かかることのないように十分に
注意をいたすとともに、
責任者に対しましては、
巖重な
注意を与えた次第でございます。
その次の四六八号の、補助金の交付に当り
処置当を得ないもの――これは愛媛県で、
昭和二十四
年度中に宇和町外二箇村に対しまして、
国民健康保險の直営診療所を設置するための補助金交付についてでございます。これは当時の
状況を調べてみますと、補助金の交付に
あたりまして、申請書の内容を十分調査いたしまして、設置の必要と認めましたものについて、この指令を出したのでありますが、これは
昭和二十四年の六月に敷地を買収いたしまして、まさに工事に着工しようという運びにな
つておりました。ところが、地元の宇和町の一部の住民の間におきまして、こういうところに病院を建設されては困るというので、病院の建設延期期成同盟というような組織が表面化するに至りまして、町の議会、
理事者と地元民との間にいろいろなごたごたを生じまして、そのために着手せんとするばかりに至りましたところの工事の施工が、中断するのやむなきに至
つたのであります。これは結局、その後の
関係方面各位の努力によりまして、ようやく
昭和二十五年の三月、事態が好転いたしまして再び着工するということに相
なつた次第でございます。ところが
年度がすでに経過せんとしているような状態にございまして、これは本来ならば繰越しの手続をすべきでございまするが、当時の一般情勢といたしまして、なかなかこの繰越しの手続がめんどうであ
つた、しかもこれは今までごたごたしたが、もう話がつきましたので、
あとはスムーズに行くということが確実と見られるような事態でございましたので、この工事につきましては竣工間違いなしというところで、先に補助金を出したため、こういうような間違いを生じた次第でございます。もつとも、この工事はその後順調に行きまして、二十五年十月三十日に竣工しておるのでございます。問題は、
年度内にでき上らないのに補助金を出したというところで、
検査院から御
指摘を受けたのであります。これはまさしく御
指摘の
通りでございまして、将来かかることのないように十分戒めておると同時に、当時の
責任者に対しましては、
巖重な
注意を与えた次第でございます。
その次の四六九号、建築工事を請け負わせるに当り
処置当を得ないもの――これは国立埼玉病院、それから大蔵病院、世田谷病院の三箇所でございますが、これは
昭和二十五年の三月に、その病院の管理室及び病棟の改築工事その他の請負工事の指名競争に対して、
契約いたしました際に、入札でございまするので、一番最低のものに落札すべきであるにかかわらず、最低制限
価格というものを設けまして、それ以下のものはこれをオミツトしまして、その最低制限
価格以上のところで一番低いものに、これを落札者として
契約をした。これが会計法規の趣旨に反するということで
指摘を受けたのでございます。これはまさしく御
指摘の
通りでございまして、まことに申訳ないのでございます。ただこの間の
事情だけを申させていただきますると、これは非常に緊急を要する工事でございまして、たまたま業者を十分に吟味するだけの余裕がなか
つたために、当時の係官といたしましては、むしろ何と申しますか、常識的にはこれがもつともだというような
考えで、かえ
つて間違いを起したというようなものでございます。当時の見積り
価格の約二割引いた八割というところに線を
引きまして、おそらくその当時の情勢といたしましては、これより以下のもので入札させて工事をやるとなると、当然業者が足を出す。従
つて、業者が不正をやるおそれがある。しかしながら今選定した業者については十分にそれを吟味するだけの余裕がない。そこで大体この最低制限というところの線を引いて、これ以下のものについては、今のような危險性があるからこれをオミツトしよう、それ以上のところで、一番低か
つたものに入れようというようなことを
考えたのであります。私
どもも、ごく常識的な議論としては、その気持はうなずけないことはなか
つたのでありますが、これは国の会計法規等をみだるものであることは、申すまでもないのであります。端的に申せば、当時の係官が、その会計法規を知悉していなか
つたというところに、あるいはうつかりしてお
つたというところに、この間違いを起したもとがあるわけであります。この点はまことに恐縮に存ずる次第であります。
それからその次の四七〇ないし四七七までは、これは職員の
不正行為によ
つて国に損害を与えた問題であります。第一の四七〇号の北海道の旭川地方世話所――これは未復員者の留守宅渡しをいたしますそれの原簿を扱
つている係員でございます。これがすでに帰
つて来ました既復員者及び架空の人物を利用いたしまして、これがしめて三十六件でございます。大体それが大きなものでございます。そのほかに留守宅渡しの分を横領したのが、
ちよつと千六百円ほどございますが、それ以外は、ただいま申し上げたような既復員者と架空の人物を利用しまして横領し、これを遊興費に
使つてお
つた、こういう事案でございます。これは
昭和二十五年九月に検察
当局から公訴の提起がございまして、懲役二年の判決がありました。横領金の弁償につきましては、そのうち九千三百二十三円弁償済み、残額は本人が目下服役中でございますし、その財産は格別のものがございませんので、出所後にこの弁償の
方法をきめるほかにない、かように
考えます。
次の鹿児島県の世話課の職員は、これは出納官吏でございまして、これが復員費の前渡金を持
つております。その前渡金を横領したというような事案と、それから現金出納簿から落します際に誤
つたようた顔をしまして、余分に落して約千七百円ほど着服した、これも遊興費に
使つておるわけであります。これは二十五年の五月に検察
当局から起訴せられまして、懲役三年の判決を受けて目下服役中でございます。その横領金の弁償につきましても、八十七万七千十二円はすでに弁償済みでございますが、残額の分につきましては、本人に資産がございませんので、本人の出所を待
つてこれを働きによ
つて支払いさせるよりほかにない、かように
考えておる次第でございます。
第四七二の厚狭社会保險出張所――これは職員が主任の収入官吏と分任収入官吏でございます。これは保險料の払込みを受けて日銀に払い込むのを、それをいたしませんで、やはり遊興費に
使つてお
つた、こういうような事案でございます。このうちこの間崎某というのは、結局起訴せられます前に結核で病死いたしました。
あと吉田というものにつきましては、現在公判中であります。横領金につきましては、大体本人及び親類と相談いたしまして、すえ置貸しという
方法によ
つて、逐次これをもどさせるというような手続をと
つてございます。
その次の、国立内野療養所におきまする事案でございますが、これはそこの雇が、生活保護法あるいは社会保險の療養費、これを現金で受けました分を、金庫に入れませんで、着服して遊興費に
使つてお
つた、こういうことであります。これは二十五年の七月に公訴の提起がありまして、懲役一年六箇月の判決を受けて、目下服役しているのでございます。横領金の弁済につきましては、本年の六月に
民事訴訟の提起を起して、目下手続中でございます。
それから四七四号の、国立療養所大府莊――これは収入官吏でございます。これもやはり同様に生活保護法あるいは社会保險の診療費もしくは外来診療の窓口で現金で受入れましたようなものの現金を着服いたしまして、遊興に使う、あるいは建築の費用に充てるというようなことをしておりました。それから歳出の
小切手を業者に
支払わないで、自分が着服したというような問題でございます。これはいずれも懲役一年六箇月あるいは一年の判決を受けております。そのうち一人は控訴しておりまするが、他の二人は目下服役中でございます。横領金の弁償につきましても、このうちの一人は、全額を払
つて弁償済みでございます。一人は五万九千円弁償しております。それから
あとの分につきましては、裁判所へ即決
和解の申立てをいたしまして、今年の五月にその
和解が成立したというような
状況でございます。
その次の四七五号、国立療養所下志津病院――これは歳入係でございまして、まだ払い込んでございませんものを町村に督促に行
つて、督促して来ましたものを自分が着服している。そしてこちらの方には、督促に行
つたがまだ入らなか
つたというようなかつこうにして、これを遊興費に充ててお
つたという事案でございます。これは二十五年の二月に告発いたしまして、懲役一年の判決がございました。横領金の弁償につきましては、
民事訴訟を提起して目下審理中でございます。
次の四七六、下関病院――これは医事係と申しまして、直接入院患者の世話をする係でございますが、これが入院患者の診療費を、自分が取次ぐ際にこれを着服して、遊興費に充てたという事案でございます。これは二十五年の七月に公訴の提起がございまして、懲役三年の判決を受けております。横領金の弁償については二十八万四千五百円ほどは弁償済みであります。残りの分につきましては、目下
民事の訴訟を提起しまして、これは
和解が成立し、その後少しずつ入れるようなことにいたして解決いたしました次第でございます。
四七七の小倉病院――これは
給与係
決算の雇でありまして、これは架空の人物を使
つたり、あるいはすでに退職した人の名前をさらにもう一度利用して、職員に払う俸給を着服して遊興に
使つてお
つたということであります。これは二十五年の六月に公訴の提起がございまして、二年六箇月の判決を受けております。横領金の弁償につきましては、即決
和解の申立てをいたしまして、
和解が成立したというような次第でございます。
以上八件は、職員の
不正行為によ
つて国に損害を与えたものでございまして、まことに申訳のない次第でございます。何分にも厚生省には病院、療養所、その他施設が全国に三百有余ございまして、その上に職員がずつと厚生省のはえぬきの職員ばかりではございません、医療団から受継いだものもおるというようなこと、かたがた昔と違いまして、現在なかなか訓練が行き届かないというような悪條件も重な
つておりますので、かような不始末をいたしまして、まことに恐縮に存じておる次第であります。なおこれにつきましては、当時のそれぞれ
責任者に対しまして、あるいは減俸、あるいは戒告というような、それぞれ公務員法の精神にのつとりました
監督上の
責任を解いて処分をいたしておる次第であります。それと同時に、かような事案が出ますということにつきまして、どこにその欠陷があるかということについて私
どもも考究を重ねて、それを少くする
方法を
考えなければいけないのじやないかというようなことから、昨年以来
会計検査院が
検査をいたしますほかに、私
どもの方でも、できるだけの陣容をもちまして施設の
検査をし、こういう
事故の防止について指導いたしますと同時に、かような
事故が起きました際に、どこにその間違いがあ
つたかという点を検討いたしまして、それをこちらからほかの施設全部について通知をしてやりまして、あるいは会議の席上でそれを知らせまして、みんなが協力して、目下かような不祥
事件を一件でも少くするように努力するような態勢を整えてございます。その後少しずつ効果は出ておるやに存じますが、さような努力をしておるということをつけ加えて申し上げておきたいと存じます。
最後の四七八号、検定手数料の徴収に当り
処置当を得ないもの――これは
昭和二十四
年度中に、厚生省の国立予防衛生研究所が、ワクチン類の国家検定を行
つておりまして、その手数料はこの検定の際に同時に納めなければならないということに規則でな
つておるのでありますが、検定申請の際に、その手数料を怠
つてお
つて、二十五年の九月末までになお千九百三十六万円が収納に至
つていないということで
指摘を受けたのでございます。どうしてこういうようなものが徴収できなか
つたかということにつきまして、当時の
状況を調べてみましたところが、
昭和二十三年の十一月に京都及び島根においてあのジフテリアの
事故が発生いたしまして、総司令部の指示があ
つて、全部予防接種液その他の移動及び使用を一時禁止いたしました。と同時に、そのワクチン類を製造しておりますところの査察を行
つて、施設の改善をはからせましたと同時に、古い製剤の再
検査を行う、こういうような非常の措置をと
つたのでございますが、その間製造業者は、ワクチンの製造一切、中止を命ぜられてお
つたわけであります。これが二十四年の四月三十日以降になりまして、その施設のよろしいものから逐次製造の再開を許されるようにな
つたのでございますが、この間およそ八箇月以上の長期の空白期間がございましたために、業者の方が非常に困窮状態になりまして、この国家検定に製剤を出します際にも、その金を納めるだけの力がなくな
つて来たということが
一つ。もう
一つは、この保健衛生上、非常にワクチン類に対する需要が全国で高ま
つておりまして、ぜひとも早くこれを出してもらいたいというような要望が強か
つたために、予防衛生研究所におきまして、検定申請の際にこの手数料を納めさせることをしないで、それで
あとから納めてもよろしい、やむを得ないというようなことで、この検定だけを急いで製品を出させた次第でございます。これはさような
事情があるのではございますが、国の製造検定規則にもと
つたような措置をいたしましたことで、申訳ない次第であります。なおそのほか未納の分につきましては、その後逐次努力を重ねてございまして、本日までに千九百三十六万円のうち千六百九十七万円は収納済とな
つてございます。残余の二百三十八万円余りがございまするが、これは納付者の方で
債務履行の誠意が認められません。私
どもの方で逐次これを納めさせるように誠意をも
つて交渉したのでございまするが、その誠意が認められませんので、ついに本年の十月に訴訟を提起した次第であります。これは訴訟上の
和解が成立して、大体今後分割納入ということに相
なつた次第でございます。
一応全部一括して、簡單でございますが、御
説明申し上げました。かようなたくさんの
事故を出しましたことは、まことに申訳ないことと存じておりまして、今後十分に
注意して参りたいと存ずる次第であります。