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小峰会計檢査院説明員 艦艇解撤につきまして、今
委員長より御
注意もありしましたので、若干お時間を拝借して、経過、檢査の結果、こういうことを御
説明申し上げたいと思います。
経戰後、陸海軍が全部武装
解除されたわけでありますが、海軍も一切くず鉄化されたわけであります。それで終戰当時保有しておりました船は、戰艦四隻を初めといたしまして、特攻艦艇のような小さいもの、あるいは木造のもの、こういうものを合せますと五百隻を越えていたわけでありますが、そのうち特殊の用途に使われましたものを除きまして、四百六十八隻、排水
トンにいたしまして六十七万七千
トン、これが解撤を條件にして日本側に返還されたわけであります。これが二十四
年度までに全部解体を終りまして、完全に海事は消滅したわけなのであります。この経費につきましては、
先ほど委員長からも言われましたように、当初はずいぶん
世間からも疑惑の目をも
つて見られ、所によりましては檢察庁の手が入る、こういうようなことも実はあ
つたのであります。私どもの方でも、これについては詳細な檢査をいたしましたが、結局のところ、誤解に基いたものとか、あるいは担当
官庁の放任の度が過ぎたと思われるようなものが多か
つたようであります。これは私どもが本格的な檢査を始めましたのは二十四年の三月でありますが、当時までに大体解体作業は終
つていたにもかかわらず、実はまだ金の
支払いをする担当
官庁などもはつきりしておらなか
つたというような状態であ
つたのでありまして、当時業者から早く
払つてくれという声も、非常に高か
つたような状況でありました。覚書とかそういうものは省略いたしますが、要するに二十一年の四月に、一年以内に全部解撤せよ、解体を條件として
日本政府に返還する、こういう條件で覚書が出、軍艦が返されたわけであります。これに対しまして、
日本政府は二十一年の五月に、大蔵、商工、運輸、逓信、当時の
関係四省の共同通牒を発しまして、その取扱い方針を定めたのでありますが、その方針によりますと、多数の民間造船業者などに、この四百数十隻という船を現状のまま
——これは動ける船も若干あります。あるいは半分沈みかか
つた船も
相当あ
つたわけでありますが、とにかく現在の姿のまま解撤を條件として払い下げ、その価格は解撤後にきめるということにしたのであります。ここにいろいろな問題が起きる余地があ
つたわけでありますが、
政府はこの方針で播磨造船所ほか五十六業者に艦艇を引き
渡し、業者はどんどんと解撤工事を始めるようにな
つたのであります。そのころ
部分的に
会計檢査院で檢査をしてみますと、どうもなかなか不当だと思われるような経理が、実は
相当に見つか
つたのであります。その結果まず
会計檢査院から
当局者に対しまして、艦艇の解撤は国に課せられた重大な義務である、その收支は公明を期すべきものであるから、その経費はこれを予算化すべきだ。同時に、作業の結果発生した諸資材も、国において
処分するのを
相当とする。こういう
注意をお出ししたわけであります。同時に、
昭和二十一
年度の決算
檢査報告にそれを書きまして、国会に御
報告したわけであります。第二国会でこれが問題になりまして、そして
会計檢査院の言う
通りだということにな
つたのでありますが、一方
政府では、十分に予算がないくらいでありますから、十分な経理
措置もなかなか進行しない、こういう状態のところへ、国会の御決定もございました。ところが、一方業者からはやいやい金を払えというようなことも言われ、何らかの打開策を講ずる必要を生ずるに至
つたのであります。結局、
政府は当初の方針を全面的に変更いたしまして、二十八億二千六百万円を二十三
年度の
終戰処理費に計上したわけであります。ここから
政府の経理
措置が始まるわけでありますが、二十三
年度に計上しました一億数千万円、これも実はなかなか
支払いが進まなか
つたのであります。二十二
年度以前に予算
措置をしないで解撤を始めたもの、あるいは二十三
年度に今の予算をとりまして後に解撤を始めたもの、この二つにわけまして、その前者、予算のないうちに解撤を始めましたものを大蔵省の
国有財産局が管理する。それから二十三
年度になりまして予算をと
つてからやり出したものを運輸省海上保安庁があとの始末をする、こういうふうにきまりましたのが二十四年の二月ごろであります。それでこの大蔵省で取扱うことになりました、予算
措置を講じないで解撤工事を始めたものは約九〇%にな
つております。運輸省海上保安庁で扱うものは一一%、こういうような非常に少い量だ
つたわけであります。そういう状態でずつと数年経過し、工事はもう済んでしま
つたわけであります。どこに
幾ら払つていいかということも、実は業者から請求は出ておりますが、はたしてその請求が妥当かどうか、こういう点については妥当だと言い切るだけの資料が、実は何も
政府側になか
つたわけであります。そこで
檢査院としては、これは自分で一切檢査をしてみなければだめだ、こういうような結論を得まして、
ちよつと異例でありますが、
関係業者である播磨造船所ほか三十四
会社を、
会計檢査院法の規定によりまして直接
会計檢査院で檢査する指定をしたのであります。それで当時はまだようやく二十三
年度の予算を繰越す
ため、大
部分のものが概算
契約を締結した。こういう状態で、ごく一部運輸省
方面で金を支
払つただけで、大
部分はまだ金を
払つていなか
つたのでありますが、そういう状態において実は檢査を始めたわけであります。
先ほど申しました四百六十八隻、六十七万七千余
トンのうちで、檢査をいたしましたものが三百四十九隻であります。隻数においては
相当開きがございますが、
排水トン数では六十五万七千余
トンを檢査いたしております。結局非常に小さいものだけをや
つておるところは、檢査の指定から除きましたが、鋼船、鉄船をや
つておるようなところは、全部檢査の中に入れたのであります。
排水トン数にいたしますと、九七%を実は檢査いたしました。これは二十四年三月に開始いたしまして二十五年の八月に完了したのであります。結局におきまして、まだ
幾ら支
払つたらいいかということがしつかりきまらぬうちに、会計檢査を始めざるを得なか
つたわけであります。
会計檢査院の檢査によ
つて、
政府の方も
支払額を決定する、こういう
ちよつと逆な結果に実はな
つてしまつたのであります。私どもとしては、実はなれない方法の檢査で、
相当いろいろな新しい方針もとりましてや
つたわけでありますが、しかし、これは全国統一した一定の方針に従いまして、
相当嚴正な檢査をしたつもりでおります。その結果出ました結論も、金額的に申しましても実は
相当に大きいのでありまして、業者の工事費に対する請求額八億二千二百万円、檢査の結果減額すべきものと認めたものが一億五千六百余万円で約一九%にな
つております。それから発生諸資材の売払額これは業者の五億九千二百余万円に対しまして三千五百七十余万円を増額すべきもの、こういうふうに実は決定したのであります。これを
政府側に示しましていろいろ御相談したのでありますが、この段階に至るまでは、実は大きな業者等には実地檢査にも参ります。私も視察に参りまして、ひざを突き合せていろいろ向うの言い分を十分聞いてここまでおちついたわけであります。
相当向うの言い分を聞いて、第一回の檢査が行き過ぎた面では、われわれが修正した面もございます。ともかくもここにおちついたわけでありますが、中には間に立ちました
当局者の態度の
関係で、額が結局においてまとまらなか
つた。
檢査院がこれだけは
相当だというふうに申し上げたのでありますが、それが修正にならないで、そのまま業者の言い分
通りに確定して
しまつた、こういう
案件が若干出たわけであります。その
檢査院の正しいと認めた額で
処置されなか
つた案件が、全部実はこの四三二号から四三八号に載せたわけであります。
会計檢査院の言
つた通り御修正にな
つた額は、全然批難としては扱
つておりません。それで今申し上げました一億五千六百余万円という経費の
会計檢査院の不当支出と認めた中で、
政府が
檢査院の言う
通りだというのでお直しになりましたものが一億一千九百余万円であります。それから売払代も、三千五百七十余万円を増額すべきだというのに対しまして、
政府がお直しになりましたものが二千二百八十余万円、こういうことにな
つております。差額はここに出ておりますが、修正されておりませんので、大体この直しました收入、支出合せまして一億数千万円というものはここに全然出ておりません。
大体のことを申し上げますると、
先ほども申し上げましたように、業者が意識的に悪いことをしよう、
政府に不当な損失を與えても自分がもうけようというよう
なつもりでや
つたというのは、私どもが見ましたところでは、着手しました当時は、これが非常に多いのではないだろうか。世の中でも、実はこういう声が出ていたのでありますが、檢査の結果によりますと、これは案外少い、こういう結論を現在では持
つておるのであります。大
部分は指導方針の不徹底、監督の不行届、こういうことによるものが多いように思うのであります。中には艦艇解撤と
関係のない
会社国有の経費を突き合せたとか、
先ほど日鮮サルベージの十八万円の二重計上という話が
ちよつと
政府委員からありましたが、あれなどは質の悪い方と思いますが、そういうものもあります。それからわざと工事期間をひつぱ
つて、その間の人件費を解撤経費に持たす、こういうようなのもございましたが、大
部分の批難と申しますか、
会計檢査院が不当支出だと見ましたものは、たとえば労務費とか、材料費において、一応高い見込みの予算を立てまして、実績はそれほどかからなか
つたのに、高い予算をそのまま
政府に請求した。こういうのが割合に金額が大きか
つたのであります。それから
先ほど政府委員からお話がありました間接費の問題、これがここに上
つておりますように、
政府は最後までがんば
つて御修正にならぬ。こういう
案件まで生じたのでありますが、これも労務費、直接労働時間を基準にして、
会社のプロパーの
仕事と、艦艇解撤の間接費の二部門に全体の経費をわけたのであります。そういたしますと、大体造船をや
つておる
会社が多いのでありますが、造船のように、材料代が約半分、労力費が四十数パーセントというような作業と、ほとんど大
部分の経費が労力費の解撤作業とは、労力費だけで按分いたしますと、非常に不公平になる。解撤は造船ではないことは明瞭で、家をこわす作業
とつくる作業とのたとえ話でよくわかりますが、間接費を按分するのに、家を建てる方とこわす方を労力費だけでや
つたのでは、非常な不公平になる。こういう結果で、間接費の不公平な配分を来しておるのであります。
大体そのくらいにしまして、一つ一つの
案件については御
質問がありましたらまた申し上げることにいたします。