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1951-11-13 第12回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年十一月十三日(火曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 守島 伍郎君    理事 北澤 直吉君 理事 竹尾  弌君    理事 山本 利壽君       小川原政信君    菊池 義郎君       栗山長次郎君    仲内 憲治君       中山 マサ君    並木 芳雄君       松本 瀧藏君    林  百郎君       黒田 寿男君  出席政府委員         外務事務官         (政務局長)  島津 久大君  委員外出席者         検     事         (特別審査局監         査第二課長)  西本 定義君         外務事務官         (管理局渡航課         長)      星  文七君         経済調査官         (査察部第三課         長)      山口 一夫君         専  門  員 村瀬 忠夫君     ――――――――――――― 十一月十二日  委員青木孝義君及び尾関義一君辞任につき、そ  の補欠として橋本龍伍君及び池田勇人君が議長  の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十一月十日  国際連合食糧農業機関憲章を受諾することにつ  いて承認を求めるの件(条約第七号)  旅券法案内閣提出第二八号) 同月十二日  平和條締結国代表を貴賓として歓迎に関する  請願(花村四郎君紹介)(第一一〇八号) の審査を本委員会に付託された。 同日  海外胞引揚促進に関する陳情書  (第六三四号)  同(第  六三五号) を本委員会に送付された。     ―――――――――――――   本日の会議に付した事件  連合審査会開会に関する件  旅券法案内閣提出第二八号)  国際連合食糧農業機関憲章を受諾することにつ  いて承認を求めるの件(条約第七号)     ―――――――――――――
  2. 守島伍郎

    ○守島委員長 ただいまより外務委員会開会いたします。  旅券法案国際連合食糧農業機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件を一括議題といたします。  まず政府側より逐次提案理由説明を求めます。島津外務省政務局長。     —————————————
  3. 島津久大

    島津政府委員 旅券法案提案理由を御説明いたします。  すでに御承知の通り、本年九月八日にサンフランシスコにおいて、大多数の連合国わが国との間に平和條約が調印されましたが、この平和條約の発効に先だち、最近連合国最高司令部は、従来最高司令部が保持していた日本人国外渡航に関する許可権を、日本側に返還する意向のあることが明らかとなりました。  このことは、わが方といたしましては非常な朗報でありますので、占領下に適合するよう制定されました旅券に関する現行二政令を廃し、至急日本政府が自主的に渡航行政を行い得る新旅券法を制定する必要が生じた次第であります。  次に旅券法案内容について御説明申し上げます。本法案は現在施行されております二つポツダム政令、すなわち連合国最高司令官許可を得て海外渡航する者に対して発給する旅券に関する政令昭和二十五年政令第十一号、並びに日本政府在外事務所発給する旅券及びその取り扱う旅券事務に関する政令昭和二十六年政令第二百八十五号を廃止しまして、日本政府が、日本国の主権に基いて旅券発給すること、及び国際的に認められた旅券制度を基調としまして、これに日本固有特殊性を適度に加味して、旅券種類効力発給方式等を新たに制定しようとするものであります。  この法案の主たる点をあげますと、第一に旅券自主的発給、第二に旅券種類、第三に旅券発給その他の手続、第四に旅券発給の制限、第五に旅券効力、第六に手数料、第七としまして旅券にかわる身分証明書等に帰するのでありますが、以下この法案を逐條的に御説明をいたします。  第一條におきましては、旅券法を制定する目的規定し、第二條におきましては、この法律に用いられる用語定義規定しております。この定義によりまして、日本政府発給する旅券を、公用旅券一般旅券に分類することを明らかにいたしております。  第三條におきましては、一般旅券発給申請手続方法と、これを受ける官庁と、申請に必要な書類を明示いたしております。またこの発給申請を受ける官庁が、国内国外とで異なつていることをも明らかにいたしております。また申請を受ける官庁につきましては、国内においては原則として都道府県知事でありますが、急を要する場合は外務大臣が受理できることになつております。  第二項におきましては、これら必要な書類も、その申請人身元いかんによりまして、ある程度省略してさしつかえありませんので、これを省略し得ること、並びに省略してさしつかえない場合を規定いたしております。また省略し得る場合は、国内事情国際情勢の変化により異なつて行く性質のものでありますので、具体的な場合を特に外務大臣が指定することといたしております。  第四條におきましては、公用旅券発給請求を行うものと、その方法と、これを受ける官庁と、申請に必要な書類を明示いたしております。発給請求をするものと、これを受ける官庁とが、国内国外で異なつていることも明示いたしております。以下これを受ける官庁国内国外で異なつておりますが、これを一々反復することを省略させていただきます。第五條につきましては、旅券発行権の所在を明らかにいたしております。旅券国外に通用することを主要な目的とする公文書でありますから、外務大臣発行いたすことになつております。言いかえますと、この発行権外務大臣固有権限でありまして、どこの国でも外務大臣発行いたすことになつております。また国外においては領事官発行することとなつておりますが、これは外務大臣の委任によるものであります。  旅券発行には事前にまず申請書審査の上、その申請が妥当と認められる場合に、備えつけの旅券冊子必要事項を記載し、または具備せしめて、旅券を作成することを必要といたします。そのあと発行原簿に登録して、その当該旅券日付番号を与えます。この発行原簿に登録して当該旅券日付番号を与える行為発行と申すのであります。旅券日付番号旅券の基本となるので、人間にたとえますと、出生年月日氏名に当り、査証、出国、通過、入国、滞在及び旅行に、常にその当該官憲によつて記録され、検察される記標となります。従つて発行原簿戸籍簿に該当することとなり、一旦登録を行えば、みだりにこれを抹消、修正することのできない性質を持つものであります。  第六條におきましては、申請に基いて発行されました旅券は、いかなる官庁がこれを申請人交付するものであるかを明らかにいたしております。すなわち一般旅券については第一項で、公用旅券については第二項で、国内の場合と国外の場合にわけて明示いたしております。また一般旅券交付につきまして、国内においては都道府県知事交付官庁でありますが、急を要する場合は外務大臣都道府県知事の名義で申請人に直接交付できることになつております。  以下一般旅券公用旅券ではその都度項をわけて明示いたす建前をとつておりますので、特に区別して説明申し上げることを省略いたしたいと存じます。  ここでちよつとお断りいたしておきたいことは、発給発行交付用語であります。発行とは先ほども申し上げます通り外務大臣または領事官発行原簿に登録して当該旅券日付番号を決定付与する行為であり、交付とは申請人にこの旅券を引渡す行為であります。この発行交付を含めたものが発給ということになつております。  第七條におきましては、発給申請をいたしましたあとで、申請人が先に申請いたしました渡航目的または渡航先変更を受けようとする場合の手続を定めるためのものであります。渡航目的や、渡航先変更は、発給申請審査目標を全的に変更させるものであります。すなわち甲の渡航目的または渡航先においては旅券発給がさしつかえなくても、乙の渡航目的または渡航先においてはその渡航先国国内法がその入国を認めないことがあります。ここにおきまして、渡航目的または渡航先変更を受けようとする者は、新たに旅券発給申請をしなければならないことを明示するものであります。書きかえ発行及び再発行の場合も含まれることはもちろんであります。またこの問題は日本出国前にのみ起きる問題でありますので、国外の場合を包含いたしておりません。  第八條におきましては、渡航先追加を受ける場合の申請方法出願先並び申請に必要な書類を明示いたしますとともに、第三條の場合と同様申請に必要な書類で省略し得るもの及びその場合を規定いたしております。渡航先追加渡航先変更とは性質が異なつておりますので、第七條とは区別いたしましてその手続を明示いたした次第でございます。  第九條におきましては、旅券発行後第七條または第八條規定いたします渡航目的及び渡航先のことを除きましたその他の事項で、しかも旅券に記載してある事項変更を生じた場合、すなわち氏名または本籍地等変更となりましたとき、その旅券書きかえ発給を受けようとする場合の手続方法出願先並び申請に必要な書類を明示いたすものでございます。また旧旅券返納を必要とする理由につきましては、同一人が二つ以上の有効旅券を所持することにより生ずる弊害を防止するがためのものであります。  第十條におきましては、旅券交付を受けました者が、旅券を紛失し、焼失し、もしくは著しく毀損したこと等によりまして、旅券の再発給を受けようとする場合の手続方法出願先並び申請に必要な書類を明示いたすものでございます。旧旅券返納につきましては、第九條で説明いたしましたと同様の理由に基くものでございます。  第十一條におきましては、旅券発給を受けようとする者が、十五才未満の子を同伴いたす場合、申請人がその子を自分の旅券に併記を希望するときの手続方法を明示いたしたものでございます。併記される子の限度を三人といたしました理由は、旅券面に併記し得る箇所が三人分しか余白を持たないがためであります。年齢を十五才に限定いたしましたのは、併記される子の年齢規定した各国の移民法に抵触することを避けることもに、実際上併記を必要とする年齢として、妥当と考えられる年齢を選んだがためであります。  第十二條におきましては、数次往復用旅券につきまして規定いたしております。日本旅券は第十八條効力のところで規定しておりますように、原則として、帰国とともに無効となることとなつております。しかし申請人によりましてはたびたび国外渡航を必要とする場合があり、帰国の都度旅券申請をすることがきわめて不便に感じられる場合があります。こうした申請人のために二年間は何回でも国外渡航のできる旅券発給できる例外的措置を講じたものであります。しかしその性質からいたしまして、この旅券は、でき得る限り確実な身元の者に対して発給を必要とするばかりでなく、その用務数次往復用旅券を必要とするものであることを前提といたします。この数次往復を必要とする用務であるかいなかは、将来いろいろ変動を見るここと考えられますので、外務大臣におきまして、その都度その用務種類を指定いたすことが最も適正を期することができるからでございます。  第十三條におきましては、一般旅券発給または渡航先追加を制限する場合を、第十四條におきましては、第十三條によりまして発給または追加をしない場合の申請人に対する通知につきまして、また第十五條におきましては、第十三條及び第十四條に基く決定通知に対し、異議のある場合の異議申立て方法並びに異議申立てに対する裁決及びその裁決の結果、外務大臣または領事官のとるべき措置等規定しでおります。  第十六條におきましては、旅券所持人旅券面に行う署名のことを規定いたしております。旅券は本人の署名を記入いたすことにより、不正旅券の行使を防止するごとに役立てております。  第十七條におきましては、旅券不正使用を防止するため、旅券を紛失または焼失いたしましたときの名義人届出義務等規定いたしております。  第十八條におきましては、旅券効力につきまして規定いたしております。  第十九條におきましては、旅券返納する場合を規定いたしております。  第一項におきましては、現に有効な旅券返納を命ずる場合でございます。現に有効な旅券といえども、制限規定の第一項に掲げてある事項に該当することがあとで判明し、またはそういう事態あとで立ち入つたとき、これを回収する必要があります。また錯誤、過失による発給等の場合を救済するとともに、本人保護の見地からもこれが発給を取消すことを必要とする場合もございます。  第四項及び第五項におきましては、失効または無効となつ旅券返納並びにその返納先規定いたしたものでございます。  第六項におきましては返納した旅券のうち、その保存を希望する名義人に対し、これを還付し得る旅券の範囲と、還付手続規定いたしております。  第二十條におきましては、旅券手数料につきまして規定いたしております。  第一項及び第二項は国内において徴収する場合を、第三項は国外において徴収する場合を規定いたしております。国外における場合は外貨で徴収いたしますが、国別によつてことごとく異なつておりますので、他の法令に譲ることといたしております。  第四項は関係官庁過失により書きかえ発給行つた場合の手数料免除を明示しております。  第五項におきましては、現段階では明示困難でありますが、将来渡航を想定されます移民等に備えたものでありまして、終戦前移民一般旅券手数料が、非移民一般旅券手数料に比し三分の一だりた事実をも勘考、これが減額をはかりたい意向のもとに、政令によつてその減額のでき得ることを規定いたしたものでございます。  第二十一條におきましては、査証必要性を明示いたしております。旅券発行によつて旅券そのもの効力は発生しますが、渡航先国に通用するためには、渡航先国出先官憲発給査証を必要といたします。往々旅券さえあれば国外渡航が可能であるとする一般の誤解を防止するに必要な規定でございます。第二十二條におきましては、申請者等の様式を規定いたしております。、  第二項におきましては、支払い能力を立証する書類渡航先及び渡航目的によつて特に必要とされる書類について規定いたしております。これを外務大臣の告示に譲りました理由は、この種書類国内においては為替管理方式により、国外においては外国国内法によりときどき変更がありますので、本法案のような恒久法に織り込むことができないがためであります。  第二十三條におきましては、旅券そのものに関する違反行為を処罰することを目的といたす罰則を規定いたしたのであります。  第二十四條におきましては、第二十三條の違反行為国外でも行われる次第でありますから、これに備えて国外犯罪の処罰を規定いたすものでございます。  第二十五條におきましては、第二十三條の各号に定められた違反行為行つた者国外逃亡を防止するため、行政処分により外務大臣当該旅券を没取できることを規定いたしたものでございます。  附則の第一項におきましては、連合国最高司令官から自主的旅券発給権の委譲される目が確定いたしておりませんので、別に政令をもつて施行期日を定めることの必要があるからでございます。  附則の第二項におきましては、本法案実施により廃止されるべき政令をあげております。  附則第三項から第六項までは、本法案実施に伴い、従前の法令との間に生ずる過渡的ギャップに対処する方針を明らかにいたしたものであります。  附則第七項及び第八項におきましては、ある特定の地域への渡航に対しては、旅券にかわる身分証明書発給し得ること、並びにその手数料を徴収し得ることを規定いたしております。  これを政令に譲りました理由は、自主権委譲の際までその地域その他を明確にすることができないからでございます。  以上がこの法律案を提案いたします理由及びその内容説明であります。何とぞ慎重御審議の上、御可決あらんことをお願いいたします。  次に議題となりました国際連合食糧農業機関への加盟の件につきまして、提案理由説明をいたします。  国際連合食糧農業機関略称FAO)は、今次大戦後の世界食糧問題の重要性にかんがみ設立されたものであり、その後国際連合と協定しで、その専門機関となつているものであります。  国際連合食糧農業機関には現在六十六箇国が参加しております。食糧及び農業の問題は、世界の平和及び繁栄に関係するところが大であるという立場から、各国民の栄養及び生活水準を向上し、食糧及び農産物の生産及び分配の能率を改善し、並びに農村住民の状態を改善することを目的としております。そのために、同機関は第一に栄養食糧及び農業に関する情報を収集、分析、頒布し、第二に栄養食糧及び農業に関する各種の研究及び知識の普及、並びに天然資源の保全、食糧及び農業生産物の加工、販売、分配等の改善について加盟国の行動を促進し及び勧告し、第三に、加盟国技術的援助を与えることをおもな任務としております。  わが国のこの機関への加盟が実現しますれば、これによつてわが国は、栄養食糧及び農業に関する各種の資料報告等を受けること並びに世界栄養食糧及び農業の現状を把握することができ、わが国食糧及び農業政策の立案に資すること多大なるものありと存じます。また、FAOが主催する諸会議に参加し、わが方の希望ないし意見を述べる機会を得、さらに、わが国加盟国間、特にアジア地域諸国との間で食糧及び農業の技術の相互交換を行う上に資する次第であります。  わが国加盟に伴う負担としましては、FAOべの報告の義務分担金支払い及びFAOの提案した條約を受諾した場合の当該條約の規定を履行する義務等であります。分担金は、FAO分担金比率等を参考にしますと、日本の場合は、二%程度で、来年度は十一万ドル、今年度は十一月から加盟するとしまして第四・四半期分二万五千ドルと推定されます。  政府は、この機関加盟することの利益にかんがみまして、十月二日FAO事務局長わが国加盟申請しましたところ、事務局長から、わが国加盟申請は、来る十一月十九日からローマで開かれる総会の審議にかけられること、及びわが国によるFAO憲章受諾書は、総会の開会前に事務局長に寄託するよう要望される旨の通報がありました。  以上の次第でありますから、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御承認あらんことをお願いいたします。
  4. 守島伍郎

    ○守島委員長 それではまず旅券法案について質疑を許します。松本君。
  5. 松本瀧藏

    松本(瀧)委員 関連質問を簡単にしてみたいと思うのであります。まず最初に政府にお聞きしたいことは、司令一部の入国手続が大幅に日本政府に移されるようになつてから、在外事務所における取扱いが、以前よりも煩雑になつたということを私各地で聞いて参つたのでありますが、そういう事実はありましようか。もしあつたとしたならば、その理由は一時的の現象であるかどうかということを、ちよつとお尋ねしたいと思います。
  6. 島津久大

    島津政府委員 ただいまお話がございましたように、旅券日本在外事務所が取扱うようになりまして以来、手続的なことで多少やはり煩瑣になつたということはあります。
  7. 松本瀧藏

    松本(瀧)委員 私もGHQに申請した当時の方がもつと簡単に行つた在外事務所に依頼するようになつてから、非常にめんどうになつて来たということを聞いているのでありますが、それは切りかえどきの一時的の現象であるか、あるいはもし簡単にできるものであるならば、将来どういうぐあいになるのか、あるいは今の煩雑な事務は、切りかえの手続上によつてそういうことになつておるのか、それを承りたい。
  8. 星文七

    星説明員 今の御質問は、主としてアメリカに住んでおる日本人のことであろうと思うのですが、司令部日本人入国について、十一月一日から日本政府に完全に権限を委譲したという事態が起りまして、それ以後アメリカに住んでおります日本人が一時的にも、あるいはまた永久的にも日本に帰つて来る場合には、在外事務所旅券発給を受けないで、国籍証明書、あるいはアメリカヘの再入国許可証というものを持つて来れば、日本に入れるということになりまして、その点は十一月初めに在外事務所の方に訓令を出しまして、アメリカに関する限り非常に簡単になつたと思います。ただこれはアメリカ日本との間の特別な除外例でありまして、たとえばブラジルに住んでいる日本人なんかが日本に帰つて参ります場合には、やはりほかの外国をたくさん経由して来なければなりませんので、その場合には旅券発給を必要とするわけでありますが、アメリカに関する限り、アメリカに住んでいる日本人日本に帰つて来る場合においては、旅券発給を必ずしも必要としないということでありまして、非常に簡単になつております。それが現状であります。
  9. 松本瀧藏

    松本(瀧)委員 その説明を聞きまして非常に安心したのでありますが、最近ハワイその他の土地をまわりましたときに、国籍証明等の要求がありまして、非常に煩雑で、急に国に帰りたいといつても帰れなかつたという事態がありましたので、新たにそういうように簡素化されたことは非常に喜ぶものであります。  次にやはりこれに関連してお聞きしたいことは、わが国におきまして、輸出貿易国家経済の復興に重要な地位を占めておることは言うまでもないことであります。ことにインヴイジブルトレード、目に見えざる貿易の収入というものが、今後わが国にとつて大きな財源にならなければならぬと思うのでありますが、これにつきまして、外務省といたしまして、このインヴイジブルトレード、ことにツーリストインダストリーを促進するために何か努力しておられるか。もししておるならば、どういう状況にあるかということを、ちよつとお聞きしたいと思います。
  10. 島津久大

    島津政府委員 ただいまの御趣旨は、観光事業等によりまして、外国人をなるたけたくさん日本に来てもらうという趣旨だと思いますが、もちろんそういうような方向で努力はいたしておるわけであります。特別に外務省としまして、その点何か措置をとるというようなことは別にしてないと思いますが、なるたけそういうような事業は促進したいと思います。
  11. 松本瀧藏

    松本(瀧)委員 最近この問題が非常に一般の関心を集めるようになつて来たのでありますが、特に西欧諸国ツーリスト事業を調べてみますと、もつとも資料は非常に制限されておりますので、断片的であるかも、しれませんが、これらの諸国におきまして政府が非常に力を入れておることを知るのであります。ことに統計を見ますと、一九四九年のツーリストが、西欧諸国アメリカ人だけで二十五万一千人入つおります。これは単なる民間ツーリズムストであつて、その落した金が二億七千万ドル以上になつておるのでありますが、それがさらに昨年はもつと大きな数字になり、今年ではこれが三億四十二万ドル、しかもツーリストの数が三十五万人という数になつておるのでございます。戦前におきましても、非常にインヴイジブル・トレードに力を注ぎましたこれらの諸国は、一九二七年から三七年の十年間の統計を見ましても、毎年その平均が二億ドルであり、これが輸入超過を補うために三〇%にも役だつておるという事実を知るのであります。また戦後におきましては、特にこれらの諸国ツーリストインダストリーに非常な力を注いでおりますが、ことにフランス、イタリア、ドイツあたりの例を見ますと、七三%から八〇%増を一年間に見ておるのであります。ここにECAの少し古い資料ですが、これを見ますと、普通の一般貿易を一〇〇といたしますと、それに対してツーリストインダストリーがフランスでは八一・七%に上つております。イタリアにおいては四二・一%、アイルランドにおいては二九四・一%、デンマークにおきましては五三・八%、これは全部ではありませんが、ただ漫然と拾つてみましてもこういう数字が出るのでありますが、要するにこれらの政府は非常にツーリストインダストリーに力を入れております。特にホテルの設備、交通の便、なかんずく入国の便というものに非常に力を入れておるのでありますが、こちらに、これもちよつと一夜づかみで調べた資料ですが、アメリカ合衆国との双務協定あたりにおきましても、これだけの国がヴィザなしに短期滞在を許すというような、いろいろな便宜をはかつておるのであります。こういつた意味からいたしまして、やはり査証とか、移民官の取調べの問題であるとか、あるいは税関の問題、ことにみやげ品に対するところの無税制度であるとかいうような、いろいろな入国手続きの便宜ということが、今後非常に大きな問題になるのではないかと思うのであります。これは最近のアメリカ滞在中、各地のいろいろな人に会いましたときに、日本に行きたいのだが非常に手続がめんどうだ、もう少し簡単になれば手軽に行けるのだということを聞いて参つたのであります。従つて今後特にアメリカ人に対しての入国手続を、両国間の協定等あたりにおきまして、もつと簡素化する方針ありやいなや、これを最後にひとつお聞きいたしまして、私の質問を打切りたいと思います。
  12. 島津久大

    島津政府委員 ただいま詳細資料をお示しいただきまして、ツーリストインダストリーがいかに重要であるかということの御意見を伺いましたが、まことにごもつともでございます。日本に関しましても、私どもも外人の筋から、日本は非常にその点恵まれておるので、ひとつ大いに力を入れてやるべきだというようなアドヴアイスを受けておるわけです。所管官庁の方でもその点は十分研究もしておりますし、した入国を簡単にするというような点は、これまた当然考えなければならないことでございます。ところが現在のところでは、外国人入国許可につきましては、なお司令部権限に属しておりまして、外国人査証日本政府権限にはまだ委譲されておりません。従いまして現在のところは、その点を簡素化するということは実現は困難だと思います。しかし将来の問題といたしまして、ただいま御指摘になりましたように関係の国と話合いをしまして、相互的に何らかとりきめをしまして、査証を免除いたしますとか、いろいろな点で往来を簡便にするという措置がとらるべきものであると思いますし、また條約の効力発生その他の事情にも伴いまして、早晩そういうような措置をとりたいと思つております。なお外客の誘致、その他につきましては、外務省といたしましても在外事務所におきまして、できるだけ宣伝ないし情報の提供ということには努めて参りたいと思つております。
  13. 守島伍郎

    ○守島委員長 並木君。
  14. 並木芳雄

    ○並木委員 最近の海外渡航希望の情勢についてお伺いしたいと思います。公用別、一般別の海外渡航希望者の分析をしていただきたいと思います。
  15. 星文七

    星説明員 御説明いたします。旅券発給いたしましてから、今年の十月三十一日までの状況ですが、終戦以来この旅券発給は全部で一万四百八十九となつております。各年度別に申し上げますと、二十一年度が八、二十年度が十二、二十三年度が百六十三、二十四年度が八百五十七、二十五年度が増しておるのでございます。  今御質問の公務員でございますが、公務員ということで分類した資料を今手元に持つていないわけでございますが、昭和二十四年の末までの資料がございますので、これを御説明申し上げたいと思います。  二十一年、二十二年、二十三年、二十四年と通計いたしまして、留学及び文化関係で、公務員で出ておりますのが全部で五十二となつております。それからそのときの一般が留学及び文化関係で五百七十四人、公務員はその五百七十四人に対して五十二でございます。  それから商業関係、商用関係、コマースの関係で出ておりますのが、公務員が八十二でございまして、一般人が二百八十三、それからその他、これはいろいろな目的になつておりますが、これは公務員はゼロでございます。合計いたしますと、二十一年、二十二年、二十三年、二十四年、この四年間を通じまして公務員が百三十四、一般人が九百六という数字になつております。その後二十五年度、二十六年度の数はございますが、これは目的別にわけた資料を持つておりまして、公務員というかつこうで出した資料は持つておりません。これは必要ならばあとで提出いたします。
  16. 並木芳雄

    ○並木委員 行先別の統計はできておりませんか。
  17. 星文七

    星説明員 これは持つておりませんですが、一人の旅行者につきましても、アメリカその他たくさんの行先を持つておる者もございますので、これは調べるのに非常に時間がかかりますので、今私の手元には数だけしか持つておりません。しかし大体われわれの観測といたしまして、アメリカが半分以上、六〇%くらいになるのではないかと思つております。
  18. 並木芳雄

    ○並木委員 アルゼンチンとかブラジルでは最近の情勢はいかがですか。日本から希望者があつた場合に、たやすく渡航許可がおりるようになつておりますかどうか。
  19. 星文七

    星説明員 ブラジル、アルゼンチン等一時旅行者につきましては、そう困難な入国上の問題はないのですが、ただ向うに永住しようとする人、つまり移民として行こうとする者につきましては、アルゼンチン、ブラジルにつきましても、いろいろめんどうな規則ある関係で、なかなかそう容易ではないようでありますがへ最近特にアルゼンチンには永住の目的で行かれる方が相当の数に上つておるようであります。
  20. 並木芳雄

    ○並木委員 ソ連とか中共方面への希望者というものは、やはりあるにはあるだろうと思うのですが、私ども全然わかつておりませんが、今までどうだつたのですか、実績などわかつておりましたら……。
  21. 星文七

    星説明員 全然ございません。ソ連、中共などは全然わかりません。
  22. 並木芳雄

    ○並木委員 申出者もないということですか。
  23. 星文七

    星説明員 そうでございます。
  24. 並木芳雄

    ○並木委員 もし希望者があつた場合には、どういう手続がとられますか。
  25. 星文七

    星説明員 現在の制度では申請書外務省に持つて来られる。この申請書に行先国その他を書かれて、ソ連に行きたい人はソ連と書いて申請書を出される。それを外務省が総司令部へ取次いで、最終的に総司令部で決定して、いけないものはノー、よろしいものは旅券発給してもよろしいということで、外務省へ返つて来て、それに基いてわれわれが旅券を出しております。現在のところ、ソ連並びに中共に行こうという希望を持つて、われわれのところに願書を出した人はないわけであります。
  26. 並木芳雄

    ○並木委員 その方面は特に禁止をされておるというようなことはありませんか。
  27. 星文七

    星説明員 実際そういう申請を取次いで司令部に出したことがございませんので、司令部意向もわからないのであります。
  28. 並木芳雄

    ○並木委員 外電などによりますと、ソ連では外交官などに対しても相当旅行の制限をしている、あるいは旅券発行を渋る場合があるというようなことですけれども、そういう方面の情報か調査はありますか。ソ連における旅行制限、それから外交官に対してすら相当の制限を与えているというようなことについての、情報をお知らせ願いたいと思います。
  29. 星文七

    星説明員 現在のソ連でどういう旅行制限を行つておるかという情報は、われわれは全然入手いたしておりません。
  30. 並木芳雄

    ○並木委員 外交官は治外法権が与えられるのですから、大体国内の旅行とかいうようなものに対して、制限を与えないのが原則であると、私どもは考えておるのですけれども、外交官に対してすら旅行その他の制限を与えている国は、ほかにどこかありますか。
  31. 星文七

    星説明員 現在までのところ、いわゆる外交官というかつこうで外交旅券というものを日本政府はまだ発給しておりませんので、従つて今まではそういう問題は全然起つていないのであります。
  32. 並木芳雄

    ○並木委員 独立したあかつきはこれからだんだん起るのです。今起つていないのはあたりまえだと思うのですけれども、独立した国から外交使臣が行つている国もあるのですから、その調査ができていますかと聞いているのです。いかがですか。
  33. 星文七

    星説明員 特にソ連への入国の御質問だと思いますが、それにつきましては、現在のところ私どもに全然情報がございません。
  34. 並木芳雄

    ○並木委員 政府としては今海外渡航一般に奨励しておるかどうか。これは外貨との関係などもあつてむずかしい問題だろうと思います。ある時期においては大いに奨励もするし、外貨が欠乏してくれば一時制限しなければならぬというようなことはあるのですけれども、一番の悩みは、今まで私の聞いたところでは、やはり外貨の問題のようでありますが、何か便法は講ぜられないですか。つまり現実に渡航した国で外貨が入手できぬ、こういうことが非常に渡航制限となりますので、何か渡航者の便宜のために、円を外貨にかえる方法というようなことも講ぜられないかどうか。もし現在まで講ぜられておらないとすれば、政府の方針はどうか。今後は大いに海外渡航者を出して行くべき方針であろうと私は思うが、それに対する方策をお聞きしておきたいと思います。
  35. 星文七

    星説明員 現在におきましては、一般外貨予算に海外渡航費というものが計上されているわけでございます。それからまた輸出業者の輸出によつてかせいだ外貨によつて、市場開発、貿易の伸張のために優先外貨制度というものもあるわけでございます。もちろん額は限られたものでございますが、円と外貨を交換し得る道は開かれているわけであります。ただ外貨が非常にきゆうくつなものでありますから、審議会を設けまして、目的なりいろいろそういつた点の審議を加えて、そうして渡航者に円と交換に外貨を渡すという制度は持つているわけであります。今後外貨の方がいくらかでも楽になりますれば、そういつた方面で外貨を与えて渡航するという人が多くなるのではないかと考えております。
  36. 山本利壽

    ○山本(利)委員 関連して。最近琉球方面へ行く場合には、向うから滞在資金の保証ということが必要なようでありますが、アメリカなり南方方面の各国の住民から、こういう人間が来た場合には、滞在中の費用はこちらで持つてやるといつたふうな、手紙か何か証明的なものが来れば、渡航が楽に許されるかどうか、その点ちよつと伺いたい。
  37. 星文七

    星説明員 それは今御指摘のように、沖縄方面のみならず、一般の諸外国への旅行につきまして、向うで滞在費を持ちます、また交通費も持ちますといつたはつきりした保証が与えられれば、海外渡航ができるという制度になつております。
  38. 山本利壽

    ○山本(利)委員 先ほどの松本委員の御質問に関連してお尋ねしたいが、今回の旅券交付に関する規則というものは、戦前の旅券交付に関する規則と比較して、非常に簡素化されておるか、あるいは何かの事情でさらに複雑になつておるか、その全般的なことについてお伺いしたい。
  39. 星文七

    星説明員 戦前旅券規則という省令がございました。本文十七條附則からなつた割に簡単なものでございました。大体内容は今ここに御審議つている旅券法と大差ないわけであります。しかし憲法の関係なんかからいたしまして、いろいろ不備な点がございましたので、戦前の旅券規則と現在の政令二つをいろいろ考えまして、それからまた新しい各国の旅券制度なんかを考慮いたしまして、今回の旅券法をつくつたものでございまして、内容的には戦前とそうかわつたところはないわけであります。
  40. 山本利壽

    ○山本(利)委員 もう一つだけ。先ほどアルゼンチンへ移民として渡航する者がある程度あるようなお話でありますが、それは再渡航とか、あるいは呼び寄せ移民とかいつた種類のものでありますか。全然新たな移民が少数でも許されておるかという点と、もう一つは、先ほど松本委員からのお話では、外国から観光客として日本に来る者に対して、手続きをもつともつと楽にしたらどうかというお話があつたのですが、今度は日本から海外へ出る場合、文化の農とか、その他いろいろな意味で今後奨励すべきだと思うのですが、そういう場合に、ある一つの観光会社とか団体とかいうものが取扱つた場合に、多数のものをその会員として、連名で一括して旅券交付するという便法が、今度の規則で許されておるか、あるいは一人々々の旅行手続をして、団体を組んで行くようになつておるのか、でき得るなれば、この連名式で一括して取扱われるというふうなことを講じておく方が、入国の場合でも非常に奨励になるのではないか、私はそういうふうに考えておりますが、そこら辺を……。
  41. 星文七

    星説明員 アルゼンチンの御質問でございますが、大体大部分呼び寄せ移民でございます。入国の方が相当制限がございますものですから、大体近親者の呼び寄せということになつております。  それから第二の連名式の点ですが、これはこの旅券法では、そういうことを予定しておりません。しかし将来移民、あるいはまた大多数の者が観光に出るといつたような場合に、御指摘のような点はやはり考慮しなくてはならぬのじやないかと思いますが、この旅券法においてはそういうことは規定しておりません。一々一人ずつ旅券を持つて行くということを前提としております。
  42. 並木芳雄

    ○並木委員 またさつきの続きでありますが、海外渡航の奨励という見地からお尋ねしておきたいのです。それは若い者に渡航希望者がずいぶん多うございます。特に留学して勉強しようという人々ですがへ現在までのところでは向うに特別の知人があるとか、特に学校の招聘が歩つたとかいう限定された者に限られております。私はどうしてもこれを政府としては、計画的に相当大勢養成して留学さすべきであると考えておるのですけれども、そういう点についての政府の所見をお伺いしたいと思います。
  43. 星文七

    星説明員 まつたく御趣旨通りだと思います。ただ外貨の関係で、今でも留学生の大半は、アメリカヘ、いわゆるガリオア資金で、アメリカの金で行く人が大部分を占めております。しかもまた留学する学生の資金も、大体アメリカ人あるいはまたその他の外国人が出すというのが大部分でありまして、自費留学という者は、いろいろな資金の関係、外貨の関係等で、非常に少い。しかしこれまた外貨の関係でそういうことが許されるなれば、もちろん大いに奨励すべき問題であると思います。
  44. 並木芳雄

    ○並木委員 また海外から日本に留学をしようという人も相当あるのじやないかと思うのです。そういうものに対する旅券交付状態は、どういうふうになつておりますか。日本では国際学友会というものがあつて、相当外国からの留学生のめんどうも見ておりましたし、これからもまた見てもらわなければならぬと考えますが、そういう点に関連して、海外からの日本への渡航希望者の状況をひとつ
  45. 星文七

    星説明員  外国人日本入国につきましては、現在までのところ、日本政府は全然関与していないものでございますから、どれほどの外国人留学生が日本に来ているか、その外国旅券発行ということは明らかでないわけであります。最近東南アジアの諸国から、学生というわけでもございませんが、日本の美術その他を研究するために、日本へ来るという者が逐次ふえているようでございます。その数がどれほどに達しておるかということは、日本政府は全然関与してない、全部外国政府あるいは司令部という関係でやつているものですから、その間のことはよくわかりません。
  46. 並木芳雄

    ○並木委員 しかしこの旅券法というものが通過すれば、これに基いて、日本政府の意思というものが、ほぼ完全に近いほど働いて来ると思うのです。今後海外から日本渡航希望の方方に対して、政府としてはどういう態度で臨むか、ある特定地域の人に対しては入国制限をするというような計画はあるのかないのか、そういうことをお伺いしておきたいと思います。
  47. 星文七

    星説明員 この旅券法は、日本人海外に出るときに出す旅券のことのみを取扱つておりまして、外国人日本に来ることについては、全然この旅券法では取扱つていない。全然旅券法の範囲外の問題でございます。
  48. 栗山長次郎

    ○栗山委員 先ほどの政府委員の御説明で、戦前はこの種のことは省令をもつて処理しておつたという御発言があつたのでありまするが、今日特にこれを法律でしなければならぬという理由を承つておきたいのであります。あるいはまた国会の審議権の尊重というようなことでこうなつたのであるか、それとも海外渡航ということが、従前にも増してもつとウエートを増したことであるか、想像はつきますけれども、政府委員の口から聞いてみたいと思います。
  49. 島津久大

    島津政府委員 この旅券法内容に、渡航制限でありますとか、あるいは手数料、ないしは罰則、そういうような規定がございますので、これらの点は、今日におきましては当然法律事項であるという解釈から、この法律案を提出した次第であります。
  50. 栗山長次郎

    ○栗山委員 いま一つは、旅券法案審議でありますけれども、旅券発給内容といたしますもののうちの重要なるものに、海外渡航移民がありますが、これは当然外務省の他官庁に率先して関心を持つべき問題と思います。民間にあつても、海外移住協会等——私などもそれに関係しておりますが、設立して、せつかくこの方面に調査研究を進めております。しかし先ほども同僚委員諸君の御質問に対する政府委員の答弁に出ておりました通り、問題は渡航の金の問題になるわけであります。それで海外移民の場合——留学の場合は、現下の逼迫した国情からしばらく第二点に考えるとしても、人口問題の解決上、海外日本の移民を歓迎するところがあるならば、これは相当金を出しても、将来の根本的な解決策の一つとして実施すべきものである。たとえばブラジルならブラジルの方面に行く場合に、十分なる調査をいたしておりませんけれども、聞くところによれば約二十万円の金がかかる。とうていこれは一移民の立場の渡航者の出資し得る金ではありません。そこで両方の国でもつてもつと相談をすれば、渡航費を下げることもできるかと思います。かりに半減して十万円になつた。そういうような場合に、外務省を中心とし、日本政府の側にあつても、またわれわれも協力して、たとえば海外移民金融金庫というようなものまでもつくつて、そうして移民の奨励をなすべきであると私は考えます。今の法律案と直接の関係はありませんけれども、内容の一部をなすものとして、お考えおきを願いたいと思います。今何か所見があれば、聞いておきたいと思います。
  51. 島津久大

    島津政府委員 ただいま御意見の点はごもつともと思いますので、私どもといたしましても、具体的に研究を進めたいと考えております。
  52. 並木芳雄

    ○並木委員 それではもう一点だけ質問しておきます。それはこの旅券法の通過によつて、沖縄とか小笠原とか台湾とか朝鮮とか、わが国との関係が必ずしも的確でない地域への渡航というものは、容易になるかどうか、今までこれらの地域への渡航実績、希望者、そういうようなものについてお尋ねしておきたい。
  53. 星文七

    星説明員 この法律が成立いたしますと、司令部の方で今まで持つていた日本人海外旅行に対する許可権というものを、全部日本政府に返すということが明らかに予想されます。そうなりますと、今までは外務省外務大臣旅券発給をいたします前に、ともかく最高司令官の許可をとらなければならなかつたわけでございます。これは旅券をもつて渡航し得る国、つまりアメリカ、フランス、あるいは朝鮮も台湾もそうでございますが、南西諸島、つまりアメリカの極東軍の管轄する地域へ行く者につきましては、旅券発給いたしませんで、身分証明書という、簡単な旅券にかわる証明書を発給しておつたわけであります。この証明書も、やはり連合国最高司令官許可をとらないと、外務省外務大臣発給できなかつたのであります。こういう点につきましては、旅券法通りますと、その点で非常に簡単になつて早くなるというふうに考えます。ただ南西諸島、つまりアメリカ極東軍管轄地域へ行く場合には、証明書は連合軍最高司令官の許可なしで、日本政府だけで発給し得るといたしましても、これらの地域の特殊な関係から、この島々へ入ります前に、入島許可書というものをどうしてもとらなければならぬと思います。このことにつきましても、司令部の方で最近非常に考えてくれておりまして、これから従前に比べてよほど楽になるのではないか。また実際早く渡航が実現できるというふうになるのではないかと予想されます。
  54. 中山マサ

    ○中山委員 先ほどの呼び寄せの問題でございますが、これは少し本筋を逸脱するかもしれないと思いますが、私は濠州の軍曹の人から手紙をもらいました。そしてこの人は、呉のある一女性と日本に進駐中内縁の結婚をした人でございますが、もし日本にすべての権限が移つて参りましたときに、アメリカの人たちが日本人を呼び寄せるような方法でもつて、内縁の夫を日本に呼び寄せられるような方法があるものかないものか、私はその方法質問いたしました手紙をいただいておりますので、ここで少し筋が違うとは思いますけれども、伺つておきたい。むろん今の状態ではできませんでしようけれども、平和條約等すべてのものが一通り治まりましたあかつきに、日本政府ではそういうことを御許可になるかどうか。私も返事を書かなければなりません関係上、妻が呼び寄せ得る権限を与えられるかどうか。濠州に連れて帰りたいにも、向うでは入れてくれないから、向うの籍を廃棄して日本人になりたい、六回か七回不法入国をしては、返されて監獄へ入つたりしておりますので、国会議員として何とかしてくれないかという手紙をいただいたのでございます。
  55. 星文七

    星説明員 それはまず第一に、濠州の政府でそういう目的の人に旅券を出すかどうかという問題と、それからあと日本入国できるかどうかという問題は、現在施行されております入国管理令、これはまた法律に切りかえられますが、その法律の中に、外国人日本へ人国する場合のいろいろな規定を設けているわけであります。また日本に滞在する期間についてもいろいろ規定を設けているのであります。
  56. 中山マサ

    ○中山委員 それはもう日本人になるというのです。濠州の籍を捨てて日本人になりたいのですから、少し話が違うと思います。
  57. 星文七

    星説明員 国籍法によつて日本国籍というものを取得すれば、これは問題なく日本人になりますから、入国が自由になるわけであります。
  58. 中山マサ

    ○中山委員 その方法はどうしてとつたらよいのですか。
  59. 守島伍郎

    ○守島委員長 ちよつと私からお話しますが、それはいろいろな規則がございまして、ここのところでそのために非常に時間をつぶすことはあまり適当でないと思います。外務省から直接あなたに御説明すればおわかりになると思います。いろいろな規則がございますが、その規則に当てはまりさえすれば、日本に来て永住することができる。しかし日本の国籍をとるについては、その規則に適合するかどうかどうか、そういう問題がございます。ここで今お話すると時間をとりますから、別の機会にしていただきたいと思います。——北澤君。
  60. 北澤直吉

    ○北澤委員 まず第一に明らかにしておきたいのは、今度司令部では、日本人海外渡航に関する許可権日本側に返還する、こういうようなお話でありますが、そうしますと、今後は日本人外国へ出る場合には、外務省が完全に自主的にこれを決定する、これまでのように司令部の同意なり許可を得る必要はない、こういうふうに解釈しでよいのですか。
  61. 星文七

    星説明員 その通りであります。
  62. 北澤直吉

    ○北澤委員 それから外国人日本に来る場合、先ほど政府説明によりますと、司令部許可がいる。従つて外国人旅券を持つて来る場合には、外国人旅券査証日本政府でなくて、司令部がやると了解してよいのですか。
  63. 星文七

    星説明員 その通りで、ございまして、いわゆる外国人日本入国許可というものは、査証人国ということになつているわけでございます。
  64. 北澤直吉

    ○北澤委員 今度廃止になる連合国最高司令官許可を得て海外渡航する者に対して発給する旅券に関する政令、これによりますと、日本人外国へ出る場合、いろいろな目的が書いてあります。留学、あるいは文化等いろいろ書いてありますが、今後は日本人外国へ出る場合には、こういう目的なら外国へ行つていいが、こういう目的では行つてはいかぬ、こういうような海外渡航目的制限があるかどうか、その点をお尋ねいたします。
  65. 星文七

    星説明員 これは今御審議つております旅券法の第十三條に、旅券制限する場合を書いてあります。そういうことに該当すれば、旅券発給されない。
  66. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に日本人渡航する渡航先でありますが、世界の国の中には日本人入国を認めるところもあり、認めないところもあると思いますが、現在のところ、世界の国々で日本人入国を認めない国はどういう国でありますか。
  67. 星文七

    星説明員 アメリカでも、日本人が移民としてアメリカに行こうという場合は、アメリカ移民法によつて制限しております。また濠州は御承知のように、最近日本人の商社の者は入国を許すということにしておりますが、そのほかの目的を持つた日本人は濠州に入ることができません。そのほかシンガポール、マレーにつきましても、日本人入国制限されております。二、三の例でありますが、そういう例がございます。
  68. 北澤直吉

    ○北澤委員 先ほどからも同僚の委員から質問があつたのでありますが、そうすると、ソ連、中共、そういうところは日本人入国は認めておらぬ、こう解釈してよろしゆうございますか、その点を伺つておきます。
  69. 星文七

    星説明員 これは現実に今まで行つたことも、そこへ行こうと希望した日本人もおりませんし、また実際に日本人に対する向うの入国制限ということはどういうことになつておるか、資料を全然持たないのでございます。
  70. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に伺いたいのは、この旅券発給する官庁ですが、国内では都道府県の知事がこれを発給する、こういうふうになつております。給与する場合には外務大臣が渡してやる。そうしますと、戦争前の外務省の官制によると、外務大臣はある事項については府県知事を指揮監督する、こういうような規定があつたのでありますが、現在の地方自治法によりますと、都道府県知事は中央官庁のようなかつこうをしておる、中央政府とは独立した立場を持つておる。そういうふうに今日におきましては、都道府県知事と中央政府、特に外務大臣との関係は全然なくなつたのでありますが、こういうふうに旅券について都道府県知事が出すとなりますと、その範囲内では、外務大臣は必要ある場合にはある程度都道府県知事を監督と申しますか、そういうふうなことができるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  71. 星文七

    星説明員 いま都道府県知事旅券発給ができるというふうにおつしやいましたけれども、これはそういうふうに規定しておりませんで、旅券発行国内においては外務大臣国外においては領事官、ただ旅券発給申請をいたしますものが都道府県知事を通じて外務大臣に行うことができる。また旅券が一旦発行された場合に、これを外務大臣が直接渡すかわりに都道府県知事を通じて交付できるということだけを規定しておりまして、その間に監督といつたような問題は生ずる余地がないと考えます。
  72. 北澤直吉

    ○北澤委員 ただいまの点はわかりました。  それから次に伺いたいのは、アメリカでは旅券発行する場合におきまして、例の反共法案ですが、ああいうものに上りまして、共産党員が外国へ出る場合には旅券発行してはいかぬ、こういうふうな規定ができかかつておるのではないかと私は思うのでありますが、日本の場合におきましては、日本人外国に出る場合には——もちろん今のところはないのでありますが、将来——これは機微な問題でありますが、ただ一つ参考のために、アメリカにおきましては、外国に出る場合に共産党員に対しては旅券発行しない、こういうふうな制度が現在できておるのかどうか伺いたい。
  73. 星文七

    星説明員 アメリカで今反共法というものが旅券とどういう関係を持つているか、私よく承知していないわけでございますが、実際アメリカ旅券発行権を持つておるのは、日本外務大臣に相当する国務長官であります。この国務長官が旅券発行する上についての専権と申しますか、そういうものを持つているわけでありますが、実際共産党員の国外渡航に対しては、旅券発給を拒否しているというのが実例でございます。
  74. 北澤直吉

    ○北澤委員 次に伺いたいのは、この旅券法案によると、「北緯三十度以南の南西諸島その他特に外務大臣が定める地域渡航する者に対しては、当分の間、政令で定めるところにより、身分証明書発給するものとする。」とあります。そうすると、これは今の占領行政が続いている間のことでありまして、占領行政がなくなりますと、北緯三十度というものはどうなりますか、北緯二十九度になりますか、その点をひとつはつきりしていただきたい。
  75. 星文七

    星説明員 これは講和條約が発効すれば当然北緯二十九度というふうになると思います。その場合には法律を改正しなければいかぬというふうに思います。
  76. 北澤直吉

    ○北澤委員 もう一つ伺います。今度の講和條約によりますと、日本は南西諸島、南方諸島は領土権を放棄しないということになつております。従つて南西諸島、南方諸島におる日本人は、依然として日本の国籍を維持するというふうにわれわれは了解するのでありますが、そうしますと、南西諸島、南方諸島におる日本人、こういう者に対する旅券はどうなりますか。こういう者が外国に旅行する場合におきましては、これはアメリカ政府旅券を出すのであろうと思いますが、国籍は日本人である、しかし旅券アメリカが出すというのは、ちよつと問題があるのでありますが、私の想像では、国籍は日本人であるけれども、南方諸島、南西諸島におる住民が外国へ旅行する場合には、あそこを統治するアメリカ政府旅券または旅券に類似する文書を発行して、それによつて海外に旅行する、こういうふうに私は想像するのでありますが、この点お伺いいたします。
  77. 島津久大

    島津政府委員 ただいま御質問の点は、その他の問題とも関連いたしまして今後話合いをした上で決定さるべき事項であります。現在のところどういうふうになるかということは、ちよつと判明いたしておりません。
  78. 北澤直吉

    ○北澤委員 こういう問題は非常に機微な問題でありまして、日本側アメリカ側との交渉によつてきまるものと思うのであります。しかし国籍が依然として日本の国籍を持つておるということになりますと、そこに非常に大きな問題が起ると思う。これに関連して伺いたいのは、例の関東州の旅券——旅順、大連など関東州、これは日本が中国から租借した。従つてあそこにおつた中国人は、国籍は中国人である。そうすると関東州におつた中国人が外国へ旅行する場合には、旅券を一体中国から出したのか、あるいは日本政府が出したのか。そういう実例は一体どうなつておつたか、もし外務省で研究したものがあつたら、お伺いしたいと思います。
  79. 星文七

    星説明員 今その点について資料を持つておりません。後刻調べました上で御返答申し上げたいと思います。
  80. 守島伍郎

    ○守島委員長 林君。
  81. 林百郎

    ○林(百)委員 同僚委員からもいろいろ質問があつたのですが、日本人外国への旅券発行してもらう場合の資格について、どういうものについては許可しない、どういうものについては許可するとか、その資格、條件をちよつと示してもらいたいと思います。これはちよつと條文にもあるようですが、大体の基準を示してみてください。
  82. 島津久大

    島津政府委員 旅券発給上の制限はどうなつておるかという御質問でございますので、その点につきましてお答え申し上げます。  旅券国内発給いたします公文書とは性格が異なつておるのでございまして、相手国がございます以上は、自国の国内法国内事情だけからでなく、やはり渡航先国内法あるいは国際事情、そういうものも考慮に入れて発給する必要があるわけであります。例をあげますと、渡航先の国が、法令によりましてその入国を禁止しておるものに対してこちらで旅券を出しますと、渡航先の出先官憲は査証をいたさないということになります。これがために本人手数料を払いましたり、いろいろな手続に時間や費用を浪費するということになります。またもしこの事実を渡航先の国の出先の官憲が気づかないで査証を与えたといたしますと、本人は知らずに日本を出て行く、そうして渡航先の国の上陸港に到着する、もとよりその国の法規によつて入国が禁止されておりますから、また引返して行かなければならぬ、そういうことにもなるわけであります。また死刑、無期または長期十年以上の刑に当る罪につきまして訴追を受けております者や、禁錮以上の刑に処せられまして、その執行を終るまで、または執行を受けることがなくなるまでの者に対しまして、無差別に国外渡航許可するということは、司法権の発動を妨げることとなりましてよろしくないという事情がございます。また不正な行為によりまして、旅券法上の罰則に該当するような者に旅券発行いたしますことは、これまた制限すべきことは申すまでもないところでございます。またそのほか本人国外渡航することによりまして、日本国の利益や公安が害される行為を行うおそれがある、そういうような場合に旅券発行しないことも、国の治安を保持する上からこれまたやむを得ないと思います。旅券発給制限を加える国は日本ばかりではございません。ただいま関係課長から御説明申しましたように、米国におきましても、国に対して忠誠を欠く行為のあつた者、福祉や国の政策に反する行為をする者、または国際信用を落すような者、こういう者には旅券発給を拒否することになつております。
  83. 林百郎

    ○林(百)委員 第十三條の五号がやはり私は問題になると思うのであります。というのは「外務大臣において、著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う所があると認めるに足りる相当の理由」とありますが、そのときの外務大臣の属する政権の性質によつて、自分の政権と相いれないような政策を持つている人の、海外渡航を許さないというような政治的な制限が出て来るのではないかと思うのであります。たとえばパリに世界平和委員会の会合がある、ここへ日本の平和委員を派遣して、今の吉田内閣のとつておる戦争政策あるいは軍事基地化の政策、そういうものを世界に訴えたいというような場合には、吉田内閣の政権の性格からいつて、これでもつて旅券発給しないというようなことになる危険があると思うのでございます。この「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由」というのは一体どういうのですか。これで政治的に実際の旅券発給制限することができると思いますか、この点について、どう考えておられるか、政府の責任ある答弁を聞きたいと思います。
  84. 島津久大

    島津政府委員 ご質問の「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為」、これがいかなるものであるかということでございます。具体的に一つ一つ、例示することは簡単ではございませんが、たとえば次のようなものが該当するかと考えます。多量の金塊、貨幣、そういうものを不法に国外に持ち出そうとする者、または麻薬を密輸入する目的をもつて海外渡航を計画する者、国内に暴動を起させる目的で、その連絡または準備のために海外渡航をしようとする者、または国内の治安を害するような破壊的な文書、図書を国内に持ち帰る企図をもつて渡航しようとする者、拳銃その他銃砲、火薬類を不法に国内に持ち帰ることを渡航目的とする者、そういうようなことが一例になりはしないかと思います。御懸念のように、そのときの政府の政治的な考えで左右されるということは万々ないわけであります。その当人が特定の政党員であるとかあるいは特定の主義を持つておるということだけでは、この制限規定にはかからないという解釈をとつております。
  85. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、たとえば共産党員がアメリカへ行きたいということで、旅券発給申請いたしましたら……。もしおりるなら私は申請してみたいと思います。
  86. 島津久大

    島津政府委員 ただいま申し上げますように、共産党であられるというだけで渡航ができないということにはならないのであります。ただ旅券発給に際しましてはこの法文にもございますように、法務府と十分連絡をとりまして、先ほど申し上げましたような事例をあげましたようなことがないかどうか、確かめました上で発給することになろうと思います。
  87. 林百郎

    ○林(百)委員 法務府の人が見えておつたら答弁していただきたいのでありますが、旅券発給申請をした者が今言つたように、国内に暴動を起そうとする意図を持つておるとか、暴動を起そうとするための文書を連絡するために行くと疑うに足る相当の理由というのは、具体的の場合はどういう場合が相当の理由になるのですか。
  88. 西本定義

    ○西本説明員 その具体的な場合に諸般の事情を総合いたしまして、さような事実の行為を行う危険があるかないかを認定するわけであります。結局相当の理由という点につきましては、通常人の合理的な判断によりまして、嫌疑を肯定することができる理由があるというような場合にのみ、この第五号に該当するものと考えるわけであります。従つて単なる風説、流言あるいは単なる情報一本というようなものでは、絶対に発動しないということはこれは申すまでもないのであります。いわゆる諸種の資料を総合して、何人が考えても、一応さような認定をすることが、合理的であるというような事情のある場合にのみ、この第五号に該当する、さように考えております。
  89. 並木芳雄

    ○並木委員 私はさつき政府委員の出て来るのをお願いしておきましたところ、経済調査庁査察部第三課長山口一夫さんが見えましたから、先ほどの私の質問に関連して、この際ぜひお伺いしておきたいと思うのです。それは海外渡航などに関連してどうしてもドル貨がほしい、こういう心理状態に乗じて起る犯罪でございますけれども、私の方の地区は、特に立川とか横田とか、そういう基地を控えてそのケースも多い。要するにドル貨の売買でございます。軍票の売買と申しますか、そういうものについて、もうやがて日本は独立するのだから、ドルを持つていれば、今度はそのまま役に立つのだとかいうようなことによつて、取引も行われておるやに聞いております。私自身はその軍票だかドルだか、そのほんとうのもの自体を見たことはありませんから知らないのでありますけれども、こういう点を総合してみますと、どうも厳重な取締りの対象となつているのだというようなことが、一般大衆に徹底しておらないのじやないかと思うのです。それでぜひこの際軍票の取引、売買などというものは、いけないのだということをここでお示しをいただいて、最近調査も行われておるそうでありますが、その調査の実態もここで詳しく明らかにしていただきたいと思うのであります。また私はこういうものは、日本人ばかりの責任でもないと思うのです。第三国入側においても、相当の責任があるのじやないかと思いますが、そういう方面に対する取締りはどんなふうになつておるのかということも、あわせてお伺いしておきたいと思います。
  90. 山口一夫

    ○山口説明員 軍票の問題につきましては、経済調査庁におきまして過去約一年にわたりまして、主として外国人用物資の横流れの媒介手段として、軍票が国内においてやみ取引されております実情から、取締りを継続して今日に至つております。すでに今日まで佐世保・呉・名古屋・静岡等の各地におきまして、相当大規模なブローカーを逮捕いたしましたし、また昨日東京におきましても、一部のブローカーを逮捕いたしたのであります。今後におきましても引続き軍票の取締りを継続して参るつもりでおります。経済調査庁が軍票の取締りをいたしました動機は、主としてこれが先ほど申し上げましたように、外国人用物資の横流れの媒介になつておるということでございまして、さらに詳しく申し上げますれば、現在国内において外国人の日用品を販売することを許されておりますスペツシヤル・シヨツプ、SPSと申しておりますが、SPSが物資を販売いたします場合に、軍票によつて販売ができる関係上、実際にSPSから買う資格がない者が、軍票を手に入れてSPSから買う、あるいは悪質なSPSにおきましては、軍人、軍属に売つたように見せかけますために、軍票を集めまして、円で売つた跡始末をやみで買い集めた軍票によつてするというような状況がございます。またさらにSPS自体が、国内でやみもうけをいたしました円を海外に送金いたします場合に、それを軍票にかえまして海外に送金するというような事例がきわめて顕著でありますために、経済調査庁におきましては、このやみの媒介となつております軍票の取締りをいたしておるわけであります。経済調査庁といたしましては、現在経済調査庁法によつて指定されております連合国占領軍財産等収受所持禁止令によりまして、この収受所持の段階において取締りをいたしますことによりまして、この悪質の媒介たる軍票の流通を遮断するという目的で、ただいま取締りをやつております。
  91. 並木芳雄

    ○並木委員 その取締りの実況はどんなふうになつておりますか。
  92. 山口一夫

    ○山口説明員 ただいままでに軍票自体の取締りといたしましては、先ほど申しました佐世保その他各地におきまして、この夏以来相当のブローカーをあげております。ただいま詳しい資料を持ち合せませんが、昨日東京で実施いたしました取締りにおきましては、朝鮮人、ポルトガル人並びに日本人合せまして男女十六人の者を逮捕いたしました。所持しておりました軍票千三百三十六ドル六十セントを押収いたし、ただいま取調べ中でございます。  そのほか直接軍票の現物をこちらが取上げない場合におきましても、たとえばSPS等を調査いたしまして、それによりましてSPSが過去において相当軍票の取引をしていたというような実情が立証されました場合には、通商産業省の方に連絡いたしまして、SPSの営業を取消すというような手段によりまして、昨年来相当不良SPSの一掃をはかつてつて現在に至つております。数字的にはどのくらいということは、全部ははつきり申し上げかねますが、ただいまわかつておる範囲におきましては、ただいま申し上げました東京の分を除きまして、今日まで佐世保、呉、鳥取、名古屋、静岡等の各地におきまして、告発をいたしました者の総数が六十五人、逮捕いたしました者が七十六人、違反金額が三十六万六千六百二十二ドルということになつておりますが、むろんこれは強制調査によつてつて参りました数字でございますので、このほかにもただいま申し上げましたようなSPSの店舗の閉鎖その他によりまして、実際の軍票の流通が遮断されました数量は、相当の数量に上つているというふうに考えております。
  93. 並木芳雄

    ○並木委員 状況はわかりましたが、悪質なものは別でございますけれども、中には全然事情がわからないでひつかかる人もいるわけです。政府はこの取締り、あるいは違反行為であるということに対して、どういうふうに今まで周知徹底せしめて来たか。私はそういう方面の予防方面の努力において欠くるところがなかつたかと思うのです。あるいはこれは経済調査庁の直接の仕事ではないかとも思うのですけれども、どんなふうに周知徹底をして来たか、取締りにあたつて十分民権を尊重しつつやつておるかどうか、取締りの場合の実際の方法について最後にお尋ねしておきたい。
  94. 山口一夫

    ○山口説明員 経済調査庁の仕事は、本来違反事件を検挙するというのが目的じやございませんで、違反事件が起らないように予防的な措置を講じて、国内の経済活動撹乱に対して防遏の措置を講ずるのが本来の趣旨でございますので、従つて軍票の問題につきましても、特に軍票の集中的に集まつて参りますSPS等に対しましては、十分その趣旨を徹底いたし、告発に至りますまでに戒告、警告そのほかの手段によりまして、十分に注意を喚起いたしております。  それから取締りの方針といたしましては、末端におきまして、たとえばいわゆるパンパンが向うの軍人から軍票をもらう、またみやげ物販売店が軍人から押しつけられて軍票をもらうというような、末端における個々の事件につきましては、一々それを取上げまして調べるというようなことはいたしませんで、それらが集まりまして、小ブローカー、中ブローカー、あるいは大ブローカーの段階に至りました場合に押えるという方針で、やみ軍票の最も多く集まつて参ります段階で集中的に取締りをいたしております。昨日の東京の取締りにおきましても、過去約四箇月間の調査によりまして、最も集中的に軍票が集まつておると考えられます数寄屋橋から銀座一帯にかけての軍票のブローカーの中心地をねらつたわけであります。末端の個々の収受につきましては一々これを取締るというような方法はとつておりません。
  95. 黒田寿男

    ○黒田委員 林君が先ほど質問された問題に関連して少しお尋ねしておきたいと思います。  第十三條の問題であります。第一の「渡航先に施行されている法規によりその国に入ることを認められない者」こういう事態がありますときには、外務大臣一般旅券発給はしない、こういうことになつておるのでありますから、もとより日本政府で、「その国に入ることを認められない者」というのはどういう者であるかという外国法規、具体的にどこの国にどういう法規があるか、ということがおわかりになつていると思います。私どもそれを知つておきませんと、将来渡航しようとする場合に不便が生じますので、これは今でなくてもよろしいから、できるだけ早く、たとえばアメリカには、イギリスには、またフランスには外国人入国することを拒むことについてどういう法律があるか、これに関する資料を至急御提出願いたいと思います。これは外務省にはおわかりになつているはずであります。外務省はそれに照して許可するかしないかを決定するのでありましようから、わかつていると思いますので、至急にお示し願いたいと思います。
  96. 守島伍郎

    ○守島委員長 至急出させます。
  97. 黒田寿男

    ○黒田委員 その次は第五号ですが、先ほど林委員質問に対しまして、法務庁の説明員の方からお答えがありまじたけれども、非常に抽象的であります。「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為」と通常の判断で認定することが妥当と考えられるような場合というように表現をされましたけれども、これでは答えにならぬと思います。こういう抽象的な考え方でいいかげんな認定をされると問題が起る。そこで私は具体的にはどういう罪に当る場合かということをお示しにならなければ答えにならぬと思います。特定思想を持つているというだけでは、これは島津局長も申されましたように、それが発給を拒む理由にはならない、どういう思想かということは問題にならない。だから「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為」とは、具体的に日本法律で申せば何であるか、これがわからなければ、私どもは国民として、安心ができぬと申しますと、ちよつと言葉づかいが適当でないかもしれませんが、とにかくむやみに第五号に該当するといつて渡航を禁止せられるということになつては困る。ですから具体的にどういう犯罪に当るような場合に「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する」と認められるか。この犯罪が示されて、そしてこの犯罪に該当するような場合ということになればこれはまた別問題であります。この点法務庁関係の方から具体的に犯罪名をお示し願いたい。こういう犯罪に当る場合に「著しく且つ直接に日本国の利益又は公安を害する行為」となるのだ——島津局長からは多少具体的にお話がありましたけれども、もう少し法律的にはつきりと御説明願えれば、その点明瞭になると思うのであります。
  98. 西本定義

    ○西本説明員 この問題につきましては、先ほど局長より御説明がありました通りでありますが、第一に申し上げておきたいのは、思想だけでは絶対に制限しない、事実がなければならないという点は、これははつきり申し上げておるのであります。  次に具体的に犯罪を明示せよという御質問でありますが、いろいろの場合が想像されますから、これを一々申し上げるということはむずかしいと思います。そこで先ほど予想される犯罪あるいは不法行為の形態を二、三御説明申し上げましたが、あのような場合には一応犯罪の類型に当るように考えられる、また犯罪の構成要件を充足する前の危険な行為ということも考えられる。われわれといたしましては、第五号に該当する犯罪の型なりあるいは不法な行為を全部明示して申し上げるということは至難と考えますが、さき申し上げました事例に類するような場合で御了解を願いたいと考えるわけであります。
  99. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは法務総裁に質問した方がいいかもわかりません。日本人が罰せられるような場合は罪刑法定主義という大原則がある。われわれが何らか国民として一人前の取扱いを受け得ない、普通の人なら外国に行けるのに、お前は行けない、こう言われるような場合には、何かそこにはつきりとした理由がなければならない。はつきりした理由を示されないでそのような処置がとられれば、そこに政治の専制というものが起る。国民の民主主義的権利を守ることができない。基本的人権を守ることができない。そこで犯罪を具体的に示して、これに当る場合、これに当る危険がある場合に初めてそういう犯罪として刑にも処せられるし、また第十三條のような場合も起り得ることになるのであります。でありますから日本人に対して、いやしくも普通人より区別した取扱いを第十三條第五号で行おうというのであるならば、それがいかなる犯罪に当る場合かということを具体的に明らかにしなければ、民主主義国の旅券法であると私は言うことはできないと思う。何も日本にこの場合に該当するような法律が何千何万とあるわけではありません。しかも「著しく且つ直接に」という形容詞がついておる。こういう限定がついておるのでありますから、こういう場合に当る犯罪は何であるかということを、二、三の例示というようなことでなくて、もつとはつきりとお示しにならなければなりません。少しも困難な問題ではない。世界中の法律の中から探せというのではありません。日本法律の中から例示せよというのであります。限定された條件のもとで数え上げられる法律名にすぎないのであります。それをはつきりさせないでおくと、国民に対する基本的人権の蹂躙という事態が起り得る。私は、この問題は、はつきりさしておかないと、将来に問題が起ると思いますので、お尋ねしてみたのであります。しかしこれは事務官では無理だと思いますので、私はきようはこの点の質問は打切ります。あらためて法務総裁にでも御質問いたしたいと思います。
  100. 守島伍郎

    ○守島委員長 本日の質疑はこの程度で打切ります。     —————————————
  101. 守島伍郎

    ○守島委員長 お諮りいたします。国際連合食糧農業機関憲章を受諾することについて承認を求めるの件につきまして、農林委員長より連合審査会開会の申出がございましたので、この際本件につきまして、農林委員会と連合審査会を開会いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  102. 守島伍郎

    ○守島委員長 御異議なければさようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。明日は午前十時から外務農林連合審査会を開きます。     午後零時二十一分散会