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1951-08-20 第11回国会 参議院 労働委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年八月二十日(月曜日)    午前十時四十五分開会   ―――――――――――――  委員氏名    委員長     中村 正雄君    理事      一松 政二君    理事      原  虎一君    理事      波多野林一君            大屋 晋三君            宮田 重文君            赤松 常子君            重盛 壽治君            椿  繁夫君            田村 文吉君            早川 愼一君            岩男 仁藏君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件労働関係法規改廃問題に関する調査  の件 ○労働行政実情に関する調査の件  (国鉄賃金調停案の処理に関する  件)   ―――――――――――――
  2. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 只今から委員会を開きます。  本日の議題は、先般理事会を開きましていろいろ協議いたしまして、各委員に御通知申上げておりますように、問題になつておりまする労働関係法規改正につきまして、一応労働大臣経過直その他をお聞きする問題と、もう一つは、かねてからこれも問題になつておりまする国鉄の調停問題に関しまして、関係者の御意見を聞き、経過検討して行きたい、この二つのことで本日委員会を開いたわけでありますが、議事の都合によりまして、労働関係法規改正経過から事情を聞いて行こうと思います。従つて最初労働大臣から労働関係法規改正につきまして一応御関係なさつておりまする経過一つお知らせ願いたいと思います。
  3. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 労働関係各法について講和独立後におきまして、自立経済を達成して参ります上に非常に大事だと考えられます産業平和をできるだけ円滑に確保をして、紛争議の円滑な調整を図つて行く上において、現行法規の過去の実際から見て検討を加える点はないかどうか、現状通りでいいかどうか、或いは又困難なこの日本産業経済実情の中において、真に労働者の利益を擁護し、その生活を確保して参る上において基準法等において検討を要すべき点がありや否や、そういう考え方をもつて事案の検討をいたしておりますわけでございますが、いずれの点につきましても未だ結論を見出し得ないでおる実情であります。できるだけこの問題は非常に重大な問題でありますから、政府といたしましては十分慎重に各方面の御意見を伺い、決して拙速でなく、慎重の上にも慎重を期して行かなければならない、そういう考えで今労働省の各部局においてそれぞれ御検討を願つておるわけでございまするが、まだ結論を得て意見を申上げる段階に至つていないことを御了承願いたいと思います。
  4. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 何か御質問ありませんか。
  5. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 今労働大臣の大体の方向としては私らも肯くのですが、今おつしやつた説明だけでちよつと我々おつしやることと実際に行うこととがどういう方法かということが非常に問題なところなんですが、先ずお聞きしたいと思いますことは、拙速でなく慎重に各方面意見を聞いて取入れてやりたい。こう言われるのだが、先ず第一に、我々の一般的に今動いて行くのじやないかという考え方から見ますとまあ政令諮問委員会なるものの意見が出て、そうしてそれに伴つて労働省事務当局でお考えになつている。こういうことなんですが、実は各方面意見を取入れてとおつしやるその取入れの方法そのものについては大臣としてのお考えがあるはずだ、こう考えるのです。細かい具体的な問題は別にしまして、この労働三法ができ上りました経過労働法制審議会等で各方面権威者を寄せて、それによつて三法ができて来た、こういうような経過から考えて、又現在の情勢からは非常な民主的な方法でこの三法が改正されなければ一般国民なり労働者なりの納得を得難いというふうな社会事情からも考えて、この改正手段を今伝えられるように政令審議会意見労働者事務当局の案と、そういうふうなものででき上つてしまつてから各方面の御意見を入れられるのか、或いは草案のでき上る過程においてそういう権威者意見を入れてお作りになるのか。これが非常に問題のポイントだと思うのでありますが、その点について先ずお聞きいたしたいと思います。これが一点。  それから第二点は、まあ慎重に改正を意図しているというお話ですが、伝えられるところによると、成るべく占領下にあるうちに作り上げようというような御意向があるやにも承わつております。慎重にという事柄はそういう占領政策が行われているうちかどうかということに制約されないで、慎重にお考えになるのだろうかどうか、その点が第二点なんです。  それから若しも占領政策が行われているかいないかということをお問いにならないとすれば、マツカーサー書簡に基きます政令三百二十五号でありますか、これのゼネラルストライキに関する分だけはどういうふうなお考えでいるか。つまりこの分だけはああいうマツカーサー書簡に基いて政令が出ているとすれば、この問題についてはどういう態度でおきめになるのか。先ずその三点だけをお聞きいたします。
  6. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 各方面意見を徴するにどういう方法を以てやるか。大体の政府の内部の案を取りまとめた上で、更にその上で意見を聞こうというのじやないかという御懸念だろうと思いますが、そのことは実は今私考えているところでありますから、先ほど来の件と併せまして、只今それは検討いたしておりますから、さように一つ了解を願いたいと思います。  なお法令の改廃に対する心組みでございますけれども、これは総理大臣基本的な考え方として、あらゆる制度民主化ということが戦後各方面に強く推進をされて相当成功を収めて来ているわけでございます。併しながらこの制度の大変革に当つて、相当同じ民主化という線の上に立つて検討を加えましても、必ずしも我が国実情と余りそぐわない点がひとり労働関係法のみならずあるのではないか、その点は私ども承知しております限りにおきましても、総司令部当局においてもそういう懸念を抱かれているということも洩れ承わつているわけであります。そういう上から民主化基本的な線を飽くまで保持しつつ、而も今後の講和独立後における日本の発展を期して参ります上に是正を要すべき点がありと結論が出るならば、そのことはできるだけ国際信義の上から申しましても、占領軍占領管理のうちに少くとも日本政府或いは日本国民意思を明らかにしておく必要があるのではないか、そういう考え方の上に立ちまして、改正手続すべてのことが占領期間中に完了するしないは別といたしましても、日本政府或いは日本国民のそういう考え方の上に立つて意見を取りまとめ、これを明らかにしておくということは極めて必要ではないか。占領管理が解かれて、そうして独立になつてから何もかにもひつくり返すようなことは、これはもう今後の日本国際上における地位から考えましても、さような国際信義に背くようなことは絶対にすべきではない、そういう考えの上に立つて、できるだけ占領軍占領期間中にそういう大きな是正の必要があるというものについては意見を取りまとめてこれを明らかにいたしておきたいという考えの上に立つて検討を加えているわけであります。  第三の政令三百二十五号の関係につきましては、これはもとよりゼネスト関係におきまして私ども重大な関係を持つておりますことは申すまでもございません。これは主として治安観点から別途考慮せられている、私はそういうふうに了解いたしているのでございます。私のほうでこれを責任を持つてどうするという実は案を作つているわけではございません。
  7. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それに、今の問題だけに限局して更に一応労働大臣の御意見を伺いたいのですが、つまり今おつしやるように占領期間中にすることが国際信義だという考えがあるようです。併し実際言いますと、日本講和条約で従来やつて来た民主化の線というものは飽くまでも守る国際的責任を負わされているのであつて、私は占領が済んだから反動になるということを考えられること自体がすでに何といいますか、世の中が反動になることを予想されているのであつておかしいと思うのですが、それは別にいたしまして、ともかくも占領軍占領政策のうちにおきめになる。併し民主化基本線は飽くまでも守つて行く諸実情から見て、民主化基本線を守りつつもなお改正をしなくちやならないという点を改正されるとすると、一番国民をして納得せしむる方法手段というものをお考え願わないと、これは一番問題だと思うのです。まあ保利さんは非常に進歩的らしいんですが、(笑声一般の今の考え方は、今の政府自身方向というものは非常に反動的だというふうなことがまあ言われているわけです。それだけに私はその本当に民主的な方法を是非おとりになつて頂きたいので、その方法についてだけだとここでお考え願うべき問題じやなかろうか、何も新らしいことを申上げるのではなくて、この三法を改正する以上は、成立経過から鑑みてもその問題が先ず最初に取上げられるべき問題じやなかろうか、こういうふうに私は考えるのです。どうもお考え願つても、その問題どうするかもまだはつきりきまらないとおつしやるのですが、吉田首相が行つて参りまして、帰つて来るとじきに批准の何がきまると、まあ調印国相手国が何カ月以内にこれを批准するかどうかという問題はありますが、労働三法改正ということに慎重を期せられると、どんなにしたつて半年以上の時期はかして頂かなければならん。これは私はまあ合理的な考え方じやないか、そうすると今のままで参りますと、どうも我々が一番心配していたこの三法についての改正手段方法がどうも一方的に進んでしまう、各方面意見を取入れるということが非常に形式化してしまう。こういうふうな心配があると思いますので、その点については是非何とかもうおきめになる時期だと思うのでありますが、どういうふうに、今言つた実際問題として取上げるとき、そういうことを考えられると思うのですが、私の考え方に御反対でございましようか、御賛成でございましようか。(笑声)そういう点について御意見を承わらして頂ければ非常に結構だ、こう私は考えるのです。  それから第二段のこのゼネラルストライキの問題でございますが、この問題についてはこれはその治安法規としておきめになる方向だ、これは政令諮問委員会もどうもそういう方向らしいのですが、これはどうも私ども一番心配しますのは、治安法規としてきめるのだと言つて労働省そつぽを向いてしまうことが一番困る。労働者権利を擁護する立場にあり、労働者福祉を増進しようとする立場にあるところの労働省が、恐らく行政部門で一番労働者のことを考えてくれるのは労働省だろうと思うのですが、その労働省そつぽを向いて、そうしてこの法規治安関係観点からきめられるということは非常に困るのです。若しもそういう治安法規で以てきめるというふうな方向が内閣の方向でありますとすれば、労働大臣、それについては又基本的な議論は別にいたしますが、併しながら治安法規としてきめられたならば、労働省といたしましてはこの問題に対してどういうふうにして労働者権利を擁護しよう、単純な治安の面からだけこの問題を取扱おうとするときには、却つて日本経済を混乱に陥れるようなことがなきにしもあらず、こう危惧されるのですが、そういう点について労働大臣としてはどういう御決心で以て治安法規としての制定をお認めになつておるのか、その点をお聞きいたしたい。これが二点であります。  それから三つぐらいはいいだろうと思いますから、もう一つ附加えますが、この政令諮問委員会では、ゼネラルストライキに対してこれがストライキの性質上公共の福祉を非常に阻害する、日本産業を破壊するというふうな事柄から禁止制限すべき立場をとるのだろうと思いますが、その際に政府の一方的な考え方で以ておきめになるお考えでございましようか。これはゼネラルス・ストライキである、これはゼネラルストライキでないというふうな判定をどこにお任せになるおつもりだろうか、その点をお聞きいたしたい。つまり第一番は私の考え方自身に御反対方向でありましようかどうか。それについて私の考えに対する御批判を承われば非常結構だと思います。第二段はゼネラルストライキに関しましての二つ質問、そういう点の御意見を伺いたい、こう思うのであります。
  8. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 堀木委員の御意見に対しましては、私はあえて敬意を表して、できるだけ尊重いたして参つて来ておりました上から申しましても、この場合御意見に対して賛成反対かの態度を明らかにすることは、まあ適当であるかとも存じますけれども、そのことは只今考えておりますところに対する結論的な意思になりますから、私は先ほど申上げた点を一つ了解頂きたいと存じます。基本的な三百二十五号を治安的な角度から考えているということを先ほど申上げましたわけでございますが、同時に又併しこれはお説のように労働大衆の非常な大きな重大な問題でございますから、労働省といたしましても責任当局とならなくても、これに無関心でいるわけには参りません。従いましてこの立案過程におきましては、労働省側としては十分その意見を反映するようにいたして、手続の上におきましてもそういう方法をとつて参りたい。只今重大なお尋ねでございますが、恐らくその点について私はまだ草案的な意見も確定していないのじやないか。まだ確定してそういう意見がまとまつたという報告を受けておりませんわけで、御指摘事態認定の問題が最も重大な点である。その点はまだ方針と申しますか、申上げ得るようなところまでに至つておらないのじやないか、今賀来労政局長もおりますから、承知しておるかも知れません。
  9. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 今の問題について賀来労政局長からお願いいたします。
  10. 賀来才二郎

    説明員賀来才二郎君) この問題につきまして労働省法務府と今から一カ月前に一応基本的な話をしたことはございます。併し全然まだ法務府の草案としての相談も受けておりません。従つて全然まだ両方とも具体的に相談しておりません。
  11. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それでは、実はそれだけを私心配しておるのですが、法務府で草案ができてしまつたら、これはどうしたつてもう取締り一方のお役所なんで、大体その労働問題を扱えるような人が余り法務府にはいない。五年たつてしたつて……。労働問題について司法事件になるにしても……、我々はそういう感を強くしている。ですから労働省自身がむしろ積極的にこういう点とこういう点は是非織込まれなくてはならないという積極的な基本方針があつて法務府がそれによつて考えるというほうが本当なのです。大局の方針はむしろ労働省がお出しになつてそれで治安関係からの分をそれに充足してお考えになるほうが穏当であつて、私はそれが本当の治安法規で行くとしてもそのほうが正しいと思います。で治安法規で行くということについて根本的に疑いを持つておりますが、せめてそういう点についてお考えにならなければならないと思います。そうすると、さつき賀来労政局長お話ではすでに一回といえども基本的な問題についてお話合いがあつたといたしますれば、労働省ゼネストに対する基本的な御方針はどういうことにあるかということをお伺いいたしたいと思います。
  12. 賀来才二郎

    説明員賀来才二郎君) ゼネストという問題につきましては、過去五カ年間の経験によりますると、一回二・一ゼネストという形において起り始めたことがあるだけであります。又世界的に各国の事例を見ましてもゼネストというものは非常に困難なことでありまして、なかなかこれが頻発をするというふうなことはあり得ないという感じは持つておるのであります。ただ日本現状におきまして、或いは近い将来におきましては、まだ事実独立国といたしましての十分な回復ということもむずかしいと思われますので、それらの点を併せ、而も労働省といたしましては、堀木委員の御指摘のようにこの取扱を誤りますと、却つて逆の効果になるということも十分考えまして、目下検討をいたしておる次第であります。
  13. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 では重ねてお尋ねしますが、ゼネストの問題は今おつしやつたように重大な問題なのです。ですから大体の方向について早く考え方の構想などおまとめになつてこれもいろいろな意見をお聞きになるほうがいい、場合によればその成立過程において各方面権威者意見を取入れつつでき上つたものでなければならないだろう、こう思うのでありますがそういう点について、今、労働省としてはそういうふうになさる方向で進んでおりますか、私一番心配しておるのは労働省がそういう問題について責任を回避されるときには、労働者は何によつてその行政のやり方を信頼して行けるかという問題になると思うのです。ですから、その点についてはまあ一日も早く基本的な労働省考え方が発表されなければならないものだと思います。で、私一番心配しておることがどうも今の御答弁の内でも労働省自身の御意見が出て来ないことが一番心配なんですが、一体いつ頃になつたらその点について出されるおつもりであるか重ねてお聞きいたします。今言つたようなことは大臣で結構です。余り細かくないので……。
  14. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これは先ほどから申上げておる問題と無論重大な関連を持つわけでありますから、併せて意見を取まとめたいと、かように考えております。
  15. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 最後に一言……私だけ時間を取つておるのは申訳ありませんので、一応労働大臣に対する質問はこれで打切るつもりですが、実はそのまあ労働大臣は非常に政治家でいられるので、私ども意見を尊重するとおつしやりながらどうも労働大臣は、私は労働委員になつて一年になるのですが、失業対策事業ちよつぴり、ちよつぴりですよ。この頃現場を見に廻ると、資材の割当をお出しなつたと、これは併しどうも私の意見をお聞きになつてからではなくて、労働大臣がお考えになつていた程度と思いますので、……決して私は労働大臣が私の意見を尊重なすつた結果だという自惚れでは全然ありませんですが、とにかくその何と申しますか、尊重が議会開会中だけに終りますことは私として非常に残念であります。意見はいろいろ聞いて頂くのですが、どうもお用いになつたところがよくわからないのですが、ともかくもこの問題だけは非常に重大な問題でございますので、特に最後に非常にくどい話でありますが、特にお忘れにならないように是非お考えを願いたいと思います。そして国民大衆が納得いたす姿におきまして、物事をお進めなさるようにこれだけは切にお願いいたします。と同時に、そういう方向におきまりになつたならば、一日も早く拠り所をお知らせになるように、私も会期中であろうと会期中でなかろうと、特にその問題については関心を持つております。委員長のほうも特に関心を持つて、その問題については労働委員会は特にお開きを願うようにあとでお願いいたすつもりでおりますが、どうかそれだけお願い申上げて私の一応の御質問を終りたいと思います。
  16. 椿繁夫

    椿繁夫君 今堀木さんと応答の中に、国際信義の問題が出たんでちよつとお尋ねいたしますが、この戦前日本政府というのは国際労働機関決議なり、採択されたものについて非常に冷淡な態度をとつて参りました。今度は大分事情が違つておりますから、国際信義に厚い政府のことでありますから、相当尊重していられると思われますが、そういうふうに理解してよろしうございますか。国際労働機関決議採択等について今後政府の御方針戦前とはこのように違うのだということを宣明して頂ければ非常に幸いであります。
  17. 保利茂

    国務大臣保利茂君) その点はもうその通りでありまして、併しながら、この戦前といえども我が国国際労働機関最終決議に対しては、私のほうの聞いておるところでは、そうよその国に劣つたような取扱いはしていないように私は承知いたしております。無論このお話の点は十分尊重して参りますということを申上げておきます。
  18. 椿繁夫

    椿繁夫君 これまで日本政府国際労働機関の諸決定に対して外国と余り違つた措置はとつて来ていないように思うというのでは、私は大分考え大臣と違うのですが、戦前に尊重して来た程度で今後も政府はおやりになるというのでございましようか。
  19. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これは併し事柄と問題によつて来るのだと思いますが、併しともかくも基本とすべき日本国民経済というものが国際信頼の上に立たなければにつちもさつきも動かないという実情の上に立つておりますから、従つてその国際的信頼をかち取るに足る日本政府は如何なる政府といえどもそういう態度をとらなければたらないのではないかという意味において尊重して参るということを申上げます。
  20. 椿繁夫

    椿繁夫君 今度ILOに、初めて国際機関への復帰を許されたことを先般来伺つておるのですが、この日本ILOへの復帰について外国から何か日本政府にこういうことを約束してくれというような動議があつて政府代表からそのことを証言されて、そういう経過を辿つてILOへの復帰が承認されたというふうに伺つておりますが、大臣その経過の御報告を御聴取になつておりましようか。
  21. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 概略伺つておりますが、この復帰の申請に対する審議委員会において、委員会審議過程において日本政府労働政策と申しますか、労働諸問題に対する考え方について政府代表意見を徴したということはあつたようであります。
  22. 椿繁夫

    椿繁夫君 なお、それを私伺つておるので具体的にお尋ねいたしますと、労働基準法を始め労働三法について日本政府改正と称して国際的な水準を低下させるようなことがありはしないか。若しあるということなら俺のほうは賛成ができんのだが、という有力な国の代表発言があつて、それについて政府代表は毛頭そういうことは考えておりません。労働三法改悪というようなことは全然考えていないということの発言があつたということですが、それも事実でございましようか。
  23. 保利茂

    国務大臣保利茂君) そこを細かく私は文書を以て……或いは私の了解が違つておるかと存じますから、若し申上げる筋が間違つておりましたら御訂正を申上げます。私の承知いたしておりますところでは、私はここに非常に残念に実は思つておる点があるので。と申しますのは、労働三法各法に対する政府取扱の状態は先ほど申上げました通り段階に立つておるわけであります。ところが逸早くもう半年も一年も前から、或いは基準法なんかなくしてしまうのじやないか、非常な労働弾圧法に変えてしまうのじやないかというようなことが非常に遺憾なことでございますけれども、私は海外に誇大に宣伝された、これがそういうILOへの復帰審議過程においてもそういう誇大な宣伝に基く誤解が一、二の代表をしてそういう懸念を持たせたということにあつたようであります。たびたび申上げておりますように、飽くまで私は労働法取扱つて参ります上におきましては、我が国経済民主化のこれが基本線である。同時に労働者労働条件国際的水準を下らないようにというこの基本線は絶対に動かすべきものではないという考えの上に立つてそこまで行こうと思つておることであります。その気持がその通りに反映すれば私はそういう懸念はなかつたろうと思います。従いまして労働三法お話のように改悪するなどというような意思は毛頭ございませんから、政府代表が或いは委員会の御質問に答えて、さような改悪意思はないということを申上げたことと私も聞き及んでおります。そういう意味で申上げておるわけであります。
  24. 椿繁夫

    椿繁夫君 今大臣が御答弁のように、外国大変誤解をしておるが、何もお考えになつていないことを誤解して、ひよつとすると労働三法改悪するのじやないかというような心配外国がしているということでありますが、国内でも心配をされているものがあるのです。これはメーデーがこれまでのように同じ場所でできないような措置をとられたりなどする政府のことだから、ひよつとするとそういうことをやるんじやないか、こういう心配が国内にも実はあるわけであります。そこで私はこの政令諮問委員会というものの性格について私が不明のためにこれをお尋ねすることになると思うのですが、これは政府の諮問機関でございますか、総理大臣の単なる私的の諮問機関として了解してよろしうございますか、ちよつと教えて頂きたいのですが。
  25. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 私は総理大臣の単なる諮問機関であるというふうに了解をいたしております。
  26. 椿繁夫

    椿繁夫君 従つてこの諮問委員会の答申というものは法律改正などの場合労働省ではどの程度に尊重されるのでございましようか。
  27. 保利茂

    国務大臣保利茂君) とにかく総理大臣の単なる諮問機関と申しましても、相当権威あるかたがたが相当の時間を費やされて、各方面意見も聞かれ、そうして一応の試案を取りまとめておられるわけでございますから、私どもとしては相当これを尊重して参らなければならんと考えております。どの程度に尊重するのか、拘束を受けるというほど尊重しなければならないものとは考えておりませんけれども、併し私としてはこれは全然プライベートなものでございますけれども、権威あるかたがたの研究の結論でございますから、できるだけ尊重して参りたいと考えております。
  28. 椿繁夫

    椿繁夫君 これは法律的な背景を持つて作られた委員会ではございませんから、今大臣がお答えになつ程度に私も了解をしたいのでありますが、例えば調停委員会の裁定とかというような法律的な根拠を持つた機関の勧告とか裁定と同じように尊重をされるのではない、これは全く私的な総理大臣の諮問機関であるから、法律的な根拠を持つて作られておる例えば人事院の勧告であるとか、或いは国鉄の裁定、調停委員会結論であるとかというものと同じように尊重はされないのでございましようね。大分尊重されるにしても政府のほうとしては誠意の意気込みが違うはずでありますね。この諮問委員会と今申しますような法律的な根拠の上に立てられたものとのその差違をちよつと御説明頂きたいのです。
  29. 保利茂

    国務大臣保利茂君) これはもう言葉のあやになつて参ると思いますけれども、今の政令諮問委員会、まあそういうふうにいうのかどうか実は私その名称も知らないのでありますけれども、(笑声)そういうふうに新聞には出ておるようであります。これはまあ主として政治上考えるべき問題であろう、こういうふうに考えております。併しその他の只今お示しの法律に基くところの各種の委員会意思については、これは法律に基く制度上の問題でございますから、おのずからこの尊重というものは全然別個の問題である、こういうふうに考えます。
  30. 原虎一

    ○原虎一君 ちよつと関連して……。政令諮問委員会の答申に基いて政府が、むしろ政府というよりかこれは総理大臣が取上げるというものであると思いますが、その政令諮問委員会総理大臣に答申して、その答申に基いて総理が閣議、或いは次官会議というようなものを開かれて、労働法規の改正に関して労働省が準備する、こういう段取りになつておりますかどうか、その点をお伺いしたいのですが……。
  31. 保利茂

    国務大臣保利茂君) そういう諮問機関の意見がとりまとめられて、総理にそういう意見を具申されて、その具申の案に対して政府としてその点について検討を加えておることは事実でございます。それだけの今段階に立つておるわけでございます。
  32. 原虎一

    ○原虎一君 形式上の問題ですが、いわゆる私のお聞きしたいのは、政令諮問委員会の答申が例えばそのまま総理の手許へ来た、総理はそのままこれに基いて労働省は何か準備しろ、こういう形になつておるのか、或いは答申を一応閣議で審議するとか、或いは次官会議で審議されるのであるかどうか、この点をお尋ねしたいのです。
  33. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 次官会議のほうは私はよく存じませんが、閣議ではまだ審議をいたしておりません。
  34. 原虎一

    ○原虎一君 そうしますと形の上では総理が答申を受取つて、それに基いて労働省が何か準備をしておる、こういう形になりますか。
  35. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 労働省と申しますか、それは主として私の手許におきましてですね。無論全般的には各部局においてその問題、その答申案のみならず広く各方面意見に基いていろいろの問題を検討いたしておりますが、その問題も併せて検討をいたして参りたい、それだけに縛られてそれだけを私のほうで検討しているわけではないのであります。
  36. 原虎一

    ○原虎一君 先ほど椿君の質問に対して大臣答弁をなさつておりましたですが、政令諮問委員会の性格につきましては、前国会の末期に労働委員会を開きまして、そうして岡崎官房長官の説明を求めて明らかにされておりますのは、総理の個人的な諮問機関である、その審査の結果答申されたものを採択するかせんかということはすべて総理大臣の権限にある、従つてこの審議過程がどうであるとか或いは答申の内容を全部国会に報告する義務はない。こういう御答弁になつて、速記もその通りになつておるはずであります。それからなお附加えて性格、どの範囲のものを審議するのかという質問をいたしました結果、答弁は、独立後に政令が廃止される、独立関係して政令を廃止するために政令に代る法律を必要とする場合、それに関連する範囲のものを審議するのであつて、法律改正基本的に取上げてやるというようなことはしない方針であるという答弁をいたしております。それで我々は労働法規そのものをあの政令諮問委員会でかく審議されることは、実はその答弁を信用いたした私といたしましては意外である、でありまするから、これは労働省の何ら関係のないことでありますけれども政令諮問委員会労働法改正というものは、官房長官の前国会末期における労働委員会答弁からしますれば、私に言わしむれば間違つているということを大臣お話し申上げて、政令諮問委員会そのものに対してそう拘束されるものでもなければ何でもない、岡崎官房長官の御答弁からいえば、あそこで労働法規の改正なり改悪なりを審議すること自体がおかしい、そうでなければ官房長官の御答弁が欺瞞であつたということになるわけであります。これだけを申上げて私は今日は時間もありませんから質問を打切つておきます。
  37. 赤松常子

    ○赤松常子君 時間がありませんから簡単に大臣にお尋ねしたいのですが、それは前の婦人少年局長でございました山川さんの辞任をめぐりまして、いろいろ不明朗なことが聞かされているのでございます。私今その山川さんの適格不適格を論じようと思つておりませんけれども、いやしくも局長のポストにおありになりますかたの辞任に関しまして、承わるような、その猶予期間のぎりぎりの日まで放つておいてそうしてそのぎりぎりの日にやめてもらいたいというようなお取扱をなさつたということを聞いているのでございますが、いろいろと労働三法の問題も取上げられております今日この頃、山川さんの辞任に対しましてもそういう暗い影、山川さんがこの労働三法改正に対しましてはつきりした態度をお持ちになつていらつしやるので、そういう問題も絡んでいろいろ労働婦人の間にも、又一般婦人界にも臆測が行われている際でございます。でその前後の事情をはつきりお示し頂きたいことと、それからもう一つはその後任に対してどういう御構想をお持ちでいらつしやいましようか。とかく反動化が予想されております今日、殊に遅れております婦人と少年を対象といたしていろいろとやつて参りますこのポストにお就きになるかたの性格は非常に今後重大だと思うのでございますので、そういうこの後任者に対して今どういう御選考をしておいでになりましようか、その二点をお尋ねいたします。
  38. 保利茂

    国務大臣保利茂君) 山川前婦人少年局長の退任に関連しまして、一部にさような御懸念のような誤解が生じておりますということは、これは全く私の不徳のいたすところで誠に申訳なく思つておるところであります。私どもとしましては、このことを余り細かく具体的に申上げることは、私は御遠慮申上げたいと思いますが、私どもとしては山川氏に対して何と申しますか、気持の上では最大の敬意を払つて参りましたことは事務当局においてもそ通りでございまして、それが却つて誤解の因となつておるようでございまして、その点は非常に私も遺憾に思つております。併しながら一部に誤解を生じておりますように、労働三法改正と関連して抜打的にああいう措置をとつたというようなことは全くございません。今日行われております人事制度上の一つの事務的な問題として扱われたに過ぎないわけであります。これが今日においては恐らく山川氏もよく御了解になつていらつしやるところでないかと私は考えております。そういう点につきましては今後におきましても十分注意して参るつもりであります。決して一部の誤解を生じておるような不純な動機によつて御退任をせられたものでないということだけを一つ了解を頂きたいと思います。後任の局長につきましては、一部局長とはいいますものの、社会的に極めて重要な部局でございますから、各外部の民間の婦人団体等におきましても十分御協力を頂き得るような立派なかたを是非求めたいということで、先般来各方面に選考いたして参つております。極めて最近のうちに決定し得る段階に参つておるわけであります。両三日後には発表できるかと、かように考えております。
  39. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 一応労働三法改正に関しまするいろいろの調査につきましては継続調査事項になつておりますので、閉会中もやれると思いますし、労働省側も具体的な構想は未だお持ちになつておらないようでありますし、堀木委員なり椿委員等からそれぞれ要望されました点も十分尊重になることと一応期待いたしまして、本日は次の議題に移りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   ―――――――――――――
  40. 中村正雄

    委員長中村正雄君) それではもう一つの議題でありまする国鉄の調停につきまして、未だ解決がついておりませんので、本日調停委員長国鉄の総裁、国鉄労働組合の委員長、運輸大臣労働大臣、大蔵大臣、この六名のかたに御出席願いまして、この問題につきましての事情を聴取しようと思つて議題に上げたわけでありますが、ただそのうち大蔵大臣からは正式な書面を以ちまして、佐藤議長宛に八月十八日付参総庶第三百八十二号を以て、本月二十日午前十時に貴院労働委員会に出席方要求があつたが、当日は補正予算に関する重要な会議を予定しておる関係上出席いたしかねるので、よろしくお取計らい願いたいという書面が来て、不出席の通告が参つております。ただ運輸大臣なり、労働大臣が見えておりますので、政府としての意見は一応わかると思いますので、五人のかたがたに陳述を願いまして議事を進めて参りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 中村正雄

    委員長中村正雄君) それでは議事を進めるにつきまして一応調停案を出されました調停委員長から意見の陳述を願いたい。その次に受諾されました国鉄組合、並びにこの監督官庁でありまする運輸大臣労働大臣並びに政府といたしまして、この調停を実現するについてどういう措置を講ずるかということについて、大蔵大臣に代つていずれかの両大臣から陳述を願うというふうな議事の運び方をしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 中村正雄

    委員長中村正雄君) それでは最初に調停委員長に陳述を願いたいと思うわけですが、一応調停案につきましては各委員に配付いたしてありますので、一応陳述願いたい要点は、一つは調停の趣旨につきましてお願いしたい。次には調停後におきまして、両当事者間にいろいろ意見の相違、調停案についての見解の相違が出ておると思いますので、その点の陳述を願いたい。最後にこの調停を実施するにつきましてどういう点について障害があるとお考えになるか、一応この三点につきまして陳述を願いたいと思います。
  43. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) 私藤林でございます。大変遅れて参りました。今委員長のお言葉に従いまして三つの点をお答えをしたいと思います。  第一の点でございますが、すでに皆さんも御承知の通り国鉄の調停委員会は給与べースの改訂に関しましては今回で第三回目でございます。第一回は八千五十八円案というものを一昨年出したわけでございます。ところがこれは組合側に幸いにして受諾されましたが、当局側は給与予算を自由に措置できないという点に難点があつて、残念ながら受諾できないということでございます。この場合は従つて明確に双方の態度によつて調停案が不成立に終りました。第二回は昨年の初めでございましたが、組合側の要求は全く一昨年の例の場合と同様でございまして、我我調停委員会といたしましては、その際には事情に余り変化はないから、同じ事態、要求について同じ調停案を繰返すのはどうかと考えるというのが第一の理由でございまして、第二にはどうも調停案を出して見ても簡単に当局に受入れられて民間企業のごとく事態が収拾できるとは思われないということがございますので、この点に改善が加えられない以上は第一回のような調停案を出しても、調停案による事態収拾ということの見込みはない、見込みがないのに調停案を出すというのは調停委員会としてはどうも工合が悪いという点がございます。この点をかなり実は調停委員会といたしましては大きな問題にせざるを得なかつたのでございまして、非常措置として従つて調停案は出さないという措置をとつたわけでございます。次いでその際には調停委員長名義でございまして、調停委員会の声明ではございませんが、調停委員長私の名前で、今申しました点に甚だ遺憾の点があるから、労使双方はもとより、政府並びに一般のかたがたもこういう事情で調停では事態の収拾がむずかしいということをよく御勘考願いたいということで、これが二回目の調停打切りの際の事情でございました。ところで今回で第三回目でございまして、調停委員会といたしましては、殊に又この前二回の調停の経験を以ちまして、私といたしましては果して三回目の調停案を出し得るかどうか、又出し得るかどうかということは、勿論出して事態の収拾の見込みがあるかどうかということでございますが、いよいよ組合から近く給与ベース改訂についての調停申請が行われるということをかねがね聞いておりましたので、果して調停が円滑に行われるかどうかということについては私は最大の懸念を持つてつたのでございます。従つて第一回の調停委員の席上におきまして、私は先ず調停案、組合側の要求でございますが、普通ならば組合側の要求をどういう事情でこういう額を要求されたというようなことを聞いて参るのが労働委員会その他の経験から申しましても普通の調停委員会の運び方でございますが、私といたしましては、そういうことは先ず可能性があつての問題であつて、可能性があるかどうかということを先ず当事者双方に聞いてみなければ調停はできないというので、我々は前二回の調停の経験を持つているのだが、果して第三回目の問題について調停案を出し得るか出し得ないか、出し得る可能性が若しあるとすれば、関係当事者双方においてこれを出し得る見込みがあるということを調停委員会に明確に一つ意思の発表を願いたいというのが、第一回の調停委員会の席上で最初に私が申上げた点であります。このようなことを申さなければならぬということを労働委員会関係の皆様の頭の中に是非私は置いて頂いて、一つ今後のためにもいろいろな御配慮を願いたいと思うのでありますが、まさにこういうことを申上げなければならぬ私は調停委員会としては、調停機能がかなり制限されているということを率直に申上げたいのであります。ところがそういう私の発言に対しては、その際には必ずしも明確に回答は得られませんでしたけれども、当事者、労使双方ともに、今回は前二回の経験もあるけれども、調停によつてでき得べくんば困難を収拾したいというかなり強い熱意を持つておられることがわかつたのでございます。その後二回三回と調停委員会を重ねますに従つて調停委員会としては今度はどうも見込みが別の形でありそうだということがわかりましたので、それならばその現実に可能性のある線に沿つて調停案を出し、そうしてその可能性の線を強く実現して行く、こういうことで多少調停委員会の役割も果せるかというようなところへ調停委員会は遂に落着きまして、それならばそういう線で、甚だ調停委員会としては必ずしもそういう線を守るというのは本質的には好ましいとも言えませんけれども、併しまあ今のところいろいろな理窟を言つて見ても始まりませんので、先ず現実に可能性があるというならば、その可能性に我々は沿つて行こうじやないかというので、今回第三回目の調停案を出したのでございます。と申しますのは、朝鮮動乱以後当局のおつしやるところによると、物価の値上りがあり、資材その他の値上りがあつて、どうしても国鉄の予算では補正をしなければならない。ついては、一般物価の値上りがあつて、従業員の生活の問題も考慮しなければならぬ。これらの事柄は予算を補正することによつてつて行きたいという希望を持つていられる。そこでそういう希望と御努力の途があるというならば、我々はその可能性に沿つて行きたいというので、一万八百二十四円という案を出したわけでございます。そうしてこの当局が今まさに努力をされようというその線に沿つて、でき得べくんば我々と してはこの一万八百二十四円というものを少くも実現してもらいたい。そうしてその実現のための補正予算の点については当局も最大の努力を払つてもらいたいという意味の調停案を出したわけであります。だから簡単に約めて申上げれば、そういう補正予算による給与改善という可能性がある。従つてその可能性の線に沿つて労使双方が努力をなさいというのが今回の調停案の趣旨でございます。これに対しまして、今回はこれは前二回の調停案、殊に二回目が打ち切りでございますから、具体的な内容のある調停案を出しておりません。第一回目の調停案、更に又一般の民間の企業の場合の争議の調停案などに比べると、今度の場合におきましては、かなり調停案の内容は違つておるわけでございます。ところがこの点に労使双方に多少の調停案の受け取り方に、気持の上で今日ほどはつきりした点がなかつたような点もあるのじやないかと思いますが、その後労使双方、組合側は受諾しようという御回答でございましたが、当局側の回答はやはり調停案の趣旨に従つてできるだけこれを生かすような努力はしたいというような回答でございました。そこで調停委員会としては、こういう御回答が果して調停案の回答であるかどうかということをはつきりさせなければ、調停案を出した事案の処置がつきませんので、いろいろ委員会といたしましてはこれを果して当局のこういう回答は受諾とみなすか、みなさないかということについて論議をいたしました。その結果どうも調停案の趣旨からいえば努力しろということであつて、その努力に応じようというのが当局の回答だから、これは調停案の今回の趣旨からいえば我々としては受諾とみなさざるを得ない。みなしてよろしかろうというので、調停委員会といたしましては、当局の回答はやや受諾をするという問題は明確には出ておりませんが、受諾とみなすという態度に出たわけであります。今日に至るまで調停委員会は公の態度をこの事案処理についてとりましたことについて、当局から何の異論が参つておりませんので調停委員会といたしましては、調停委員会のこれを受諾とみなすという態度に対して当局がこれに応じてをられる。従つて調停案は双方に円満に受諾された、こういうふうに私のほうではみなしておるわけです。ところが今申しましたような事情でございまして、その後労使双方で団体交渉をこの調停案を基にして持たれました。その結果そこで組合側の考えておられたことと、当局側の考えておることとの間に食い違いがございます。そこで組合としては当局の言うようなのが果して本当の調停案であつたのかどうかというようなことについて疑念をお持ちである。疑念と同時に多少の不満をお持ちであるというのがこの実情のようでございます。ところがそこで再び労使双方に起きた問題として、組合側の中には公労法十六条に基く調停を労使双方で調停案に基いてやりたい。ところが当局は、いやこれは努力目標を示されたものであつて、我々としては努力をしておることであるので、そういう調停を結びたくないという、こういう意見の食い違いがそこに出たわけでございます。こういう意見の対立を調停委員会が何と考えるかという問題に我々がそこで当面せざるを得なかつたのでございます。とこで調停委員会といたしましては、この際十六条問題についてははつきりここで申上げることは次のようであります。成るほど私は今まで組合にそういう意向がございましたので、或る一部の方面からは会度の調停案は頗るはつきりしておらんというようなことを聞いたり、或いは又間接に承わつて、真実その通りであるかどうか確かめておりませんが、例えば大蔵省筋におきましては、何か今度の調停案を当局が呑んだとか呑んでないとかそれさえもわからないのに、調停案が果して効力があるのかないのかというようなことを言われたりしているということを私は聞いておりますが、私としてはそういうことを政府当局内において言われることは甚だ遺憾千万であると思つているのであります。何となれば、我々は今回とりましたのは先ほど来申上げましたことで、我々としては今回かくのごとき調停案しか出し得なかつたという事情があります。私は民間の調停の経験も何回か持つておりまして、何も四苦八苦してかくのごとき調停案を出したいとは決して思つておりません。思つておりませんが、国鉄の場合の労使関係はかくのごとき調停案を出す以外には今のところ途がない、そうでなければ私は打切る以外にはないと率直に申上げれば考えるのでございます。そこでこの問題につきましては、いろいろ十六条の問題がからみ合つて参りましたが、十六条の問題に関しましては、私はいろんな意見を私も伺いました。伺いましたが、併し調停委員会としてはこの労使双方に十六条協定を結びなさいということを実は本当は言いたいのでありますけれども、若しこれを言つたといたしましても、第一次の仲裁裁定の場合におきましては、政府は国会の承認を求めるというような態度をおとりになつて、仲裁裁定の示しました金額をその通り予算にして、そしてこれを国会の審議に任せるという態度にお出にならなければならなかつた。それから又併しそのときはそのときであるが、その調停案に基ずいて十六条協定を結べばやはりこれに縛られて政府も予算を組まれて、そうして国会の審議に実は任せられるという態度にお出になるかも知れぬ。だから調停委員としては強くそういうところまで要求なさるべきじやないかというのが組合の意向であるし、一二の人が我々におつしやる。併し私は今日直ちに以てかくのごときような措置が政府部門にとられ得るとも私は考えておらないのであります。そこで私は当初申しましたように、現実の可能性と調停委員会が認定いたしましたものにはそういう可能性は含まれていないのであります。従つて私は調停案の趣旨から言つて調停案を出しましたが、十六条に従つてその協定が結ばれるということを調停委員会は必ずしも積極的に期待しておりません。但し労使双方が自主的に調停案の趣旨に従つて公労法十六条に基ずく協定を結びたいと言つてお結びになることは、調停委員会としては妨げはいたさないということが調停委員会立場でございます。そこで調停委員会出した案は至極あいまいだという批判をこうむるのですが、実は繰返して大変恐縮でございますが、我々としてはそういう可能性……十六条協定を結んでその線で行けるという可能性があるならば、勿論我々はその可能性によつたのでございますけれども、残念ながらその可能性は現実にはない。理想としては民主主義政治の理想から言い、国会民主主義の運営から言えば、そういう筋にも私はなろうかと思うのでございますが、併し私はそういう理想論ではなくて、いわゆる現実を以て多少とも改善するところに達して行くのには、……私はよかれ悪しかれとにかく現実的にはこういう途以外には今日の場合はないというその可能性に従つたのでございます。そこで調停委員会としては労使双方にそういう対立の意見がございましたが、むしろ当局側が最善の努力をしておるということに対しまして、理解を持つていらつしやることを以てこれ又至当だと私どものほうで考えるのであります。且つ又私はやはり調停案を出しました関係上、その後の当局の努力が如何ようであるかということを再三当局からお聞きをして、そうして事態がうまく行つているかいないかということを確かめつつ今日に至りました。調停委員会の伺いました限りにおきましては、当局としては幸いにしてまださように非常にはつきりしたこれこれになるとか、こうだとかいうことは我々としても聞いておりませんが、とにかく伺いました限りにおいては、当局としてはできる限りの努力をしておられるものと調停委員会が認定せざるを得ない今段階でございます。ただここでそれから第二の点についてのお答えでございますが、ただこの際に申上げて置きたいと思いますが、調停委員会といたしましては、これはもう労使双方に繰返して申しましたが、調停委員会出しました今回の調停案は、とにかく一万八百二十四円というものを目標にしてそれの実現に努力するという趣旨でございますが併し労使双方が誠意を以て最善の努力を払われても、その結果一万八百二十四円という数字を弾いた調停案から見ると、結果的にはかなり開きがあるということになると、この点については調停委員会は或る程度の結果判断をする必要があるのじやないかというように私は考えております。併しこれはまだ結果が出ていませんのでわかりませんが、私は結果が出れば結果判断を調停委員会としてはして、而もそれは何のためにするかと言えば、一つは若し結果が非常に不満足なものであれば組合が御承知にならぬだろう。一旦調停案を呑んだか、我々はこういう結果が出たのでは不満であるということを必ずおつしやるに違いない。その場合に調停委員会はそういうおつしやつたことに対してどういう態度をとるかという必要も出る。より多く私も必要を感じましたことは、先ほど来繰返して申しましたように三回目の調停でございますが、或る意味においてはこれは調停案としてはテスト・ケースでございまして、このテスト・ケースが結局結果的には殆んどやはり骨抜きになつてしまつたということであるならば、四回目の調停をこういう形ではできないという点が一つ。そういうことを調停委員会として調停機能を行なつて行く上におきましては、やはり重要な事柄でございますが、従つて調停委員会として結果判断を必ずやりたいと存ずるのであります。  そこで第三の問題でございますが、調停機能が果してうまく行けるかどうか、どういうふうにする考えがあるかということでございますが、私は卒直に申しまして、以上申上げましたようなところを皆さんでよく御考慮、御判断下されば、如何にこの公共企業体労働関係法があり、その法律の下における調停委員会ではございますが、こういう調停委員会はこうやつて調停案を出して問題を収めることについてあれやこれやと今までやつてきても、併しあれやこれややつても満足に行かないというのでは調停のやりようがない。私は甚だせつかちで気短かで、第二回目の調停はやらんという態度をとりましたけれども、今回はそれを繰返えさないと言つたのでありますが、先ほど申上げましたように見込みがあるというので、新らしいやり方でやつてみた。これさえもまだ見込みがないというならば、あと、残されるところは、まだ事実はやつておりませんが、十六条協定を結べというような、これこれしかじかの金額を弾いて十六条を結んで事態を収拾しろという調停案を出せばでございますが、それは私は出してみたところで、そういうものを書けば当局がお蹴りになるのがやまであつて、という見込みもかなりございますし、だから今回もやらなかつたのでありますが、まああえて形式的に言えばそういうやり方も一つないわけではないが、見込みがあればやりますけれども、見込みがないものを私としてはやることはないという趣旨でございます。そういたしますと、非常にびつこな調停しか調停委員会はできないということで、この給与問題、給与予算の変更を含む調停案に従えばこの給与ばかりでなく、この調停だけでなくいろいろな問題が現にありますし、今後何回か起ると思いますが、そういう問題につきましては、およそこういうことになると折角公労法で給与問題は団体交渉の対象である、労使双方の意見が合わないときは調停に持つてつてよろしいと書いてあつても、実は殆んど空文に等しいのではないかということを我々としては考えざるを得ない。調停機能というものはまるきり死んだものじやないかというように考えざるを得ない。こういうことになることを我々調停委員会をあずかつている関係者としては甚だ遺憾な状態であるということを今までも何回か申しておりましたが、この席上でも繰返さざるを得ないこの事態を遺憾であると思います。以上で、何か御質問がございましたら……。
  44. 中村正雄

    委員長中村正雄君) お諮りしますが、各参考人の御意見を聞きましてその都度やりますか、一応関連した問題になりますので、全部聞いてから各参考人に御質問しますか、どうしますか。
  45. 椿繁夫

    椿繁夫君 これはやはり各参考人にそれぞれの立場の御説明を願つて、そうして一括して御質問するようにして頂きたいと思います。
  46. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 椿君の御意見に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 中村正雄

    委員長中村正雄君) ではさようにいたします。ただ時間の関係がありますので、次に調停案を受諾されました組合の委員長から陳述を願いたいと思いますが、そのような順序にいたしましてから、食事のために休憩したいので、もう少し御辛抱願いたいと思います。では国鉄労働組合の委員長の寺山君の陳述を願いたいのですが、大体お聞きしたい点は一つは調停案を受諾しました理由についてお聞きしたい。二番目は受諾後の経過の要点についてお聞きしたい。三番目は現在の組合のこの問題に対する現状、大体この三点につきまして要点だけ簡単に御説明願いたいと思います。
  48. 寺山源助

    ○参考人(寺山源助君) 私は国鉄委員長の寺山でございます。  ここに国鉄四十七万の労働者並びにその家族の生活苦境を打開して、社会的な使命であります輸送の増強を一層高めるための要件でありまする賃金べースの改訂問題につきまして、参議院の皆様から御審議を煩わすことになりましたことは、この各位の御配慮に対しましては深く感謝を申上げます。更に又この際お詫びと御礼を申上げ、一層の御協力をお願いいたしたいことは、先般来桜木町におきまして惹起いたしましたあの不祥事件でございまするが、この点は国民大衆各位に我々国鉄従業員といたしましても深くお詫び申上げますると共に、この悲惨な事柄を契機といたしまして、国鉄のあり方について国会におきまして十分なる責任を持つておられまする皆様に深甚なる御配慮を切にお願いをいたしたいのであります。私どもといたしましては、根本的な国鉄の予算、国鉄経営の実情に沿つて更に一層の御配慮をお願いいたしたいのでございますが、それはそれといたしまして、輸送の安全につきまして国鉄労働組合も又社会的に負わされておりまするところのこの大きな責任に対しましては、この重責を痛感いたしまして、六月の新潟の全国大会におきましても満場一致安全に関しまする決議を採決をいたしました。更に一層の安全への努力を着々いたしつつある現状であることを申添えまして、各位の御了解と又国会としてのこれに対しまするいろいろな御配慮をお願いいたしたいと考えるのでございます。  さて国鉄労働者といたしまして、昨年参議院におきまする御審議によりまして八千二百円ベースとなりました。この間国鉄労働者は輸送力の増強というものが日本経済の根幹であるということを痛感いたして、定員法以来とみに加わりました非常な劣悪な労働条件の中で、本当に孜々といたしまして精進をいたして参りました結果、昭和二十五年度におきましては、先般国鉄白書にも明らかにされておりまするように、三十数億という極めて顕著に業績に貢献をしたのでございます。併しながらこの間朝鮮事変によりまする物価の高騰は日一日と速度を加えまして、八千二百円べースではとてもその生活は保ち得られない。その生活安定の意義を失いまして、本年の春以来国鉄労働者は極めて生活の苦境に立つに至つたわけでございます。そこで私どもは本年の三月中央委員会決議を以ちまして、四月以降の賃金べース一万一千五百円を以てスライド制の新賃金として要求することにいたしまして、国鉄当局に団体交渉を申入れたのでございます。それからすでに六カ月にも相成りまするが、こ間ますます生活は困窮から困窮へと陥つて参りましたにもかかわらず、解決はますます遅々として進みません。四十七万の国鉄労働者の焦慮と苦悶はようやく輸送の障害とさえなりつつあるような次第でございまして、これから申上げるその経過を十分にお聞きとり御審議の上、どうぞ適切な御審議を速かにとられまするように、国鉄労働者代表いたしまして心から要望をいたすわけでございます。  先ず団体交渉を申入れましてからの概要を御説明申上げますが、調停案提示に至りまするまでの概要を簡単に申上げます。三月十三日に二十六年四月を一万一千五百円として、以下物価の高騰に比例いたしましてスライドして生活の安定を図り得るようにという趣旨に立ちまする新賃金の要求を提出いたしまして、当局との団交を重ねましたが、交渉はなかなか進みません。四月の十七日になりまして、国鉄の当局は文書を以ちまして、今直ちには応じがたいという旨を述べて要求を拒否して参りました。止むなく四月の十九日に中央調停委員会に申請をいたしましたところ、六月の五日まで何回かに亘つて審議を受けました。この間只今公述いたしました藤林調停委員長より、調停は従前の経験からして非常に困難であるけれども、やはり調停による紛争解決を求めるかどうかというような、先ほどおつしやられましたような御質問があつたことは事実であります。これに対しまして、私どもは公労法の精神に副いまして当然でありますと御返事をいたしたのであります。言うまでもなく、労使の紛争は本来団体交渉のみで解決することが本則でございまして、調停の上に仲裁機関があるにせよ、調停機関に解決願うべきことは当然でありまして、今日までの経緯よりいたしまして、問題の国鉄当局にあつて、公労法十六条の趣旨を本当に守る決意ありや否やの質問がなさるべきもあつた考える次第でございます。従いまして私どもは当然である旨お答えはいたしましたが、そのことは調停の内容が今日の問題になつておるようなことになつてもよいなどという意味では全然なくて、又御質問もそのような趣旨には到底理解できなかつた言葉であつたわけでありまして、六月の五日に調停委員会より給與改善の緊急性を認められまして、昭和二十六年度における職員の新賃金は平均月額一、万八百二十四円とする調停案が提示されましたのは先ほど委員長が申されました通りであります。そうしてその際調停案の十九項に示した通り補正予算の必要な措置をとる可能性を考えて立てた調停案である旨の答弁もございました。それから主文第一項の必要な措置とは何であるかという御質問がありまして、これに対しまして補正予算の編成であるという旨の御返事がございまして、我々といたしましても普通当然の意味においてそのまま受取つたわけでございます。ところが又今日二カ月以上に及んでも労使間の常識的処置でありまする賃金協定が成立しないで紛争となつたのでございます。私どもはこのとき、この調停案は債権債務関係を両者に負わせないとか、又は賃金協定は締結できない内容だとかのお話は何ら伺つておりませんし、又調停案主文又は理由書を拝見いたしましても、かような解釈は一般常識の上からは生まれて来ないから、丁度六月五日から八月までの間は新潟におきまする国鉄労働組合としての全国大会を開催しておりましたのでこの調停案は即日大会の審議するところとなりました。そうしてこの大会の小委員会でありまする給與委員会におきまして、深更……全く遅くまで審議をいたしまして、更に翌日の本会議にかけて審議をいたしました結果、金額の点、それから並びにスライド制を否定された点などは不満なところがありましたけれども、原則として受諾の立場を取るということを了承いたしまして、回答文その他は本部に一任をすることとして、賃金水準の改訂の速かに実現する最善の方途をとることを本部に一任するという旨の決議なつたわけでございます。大会におきまして役員の改選がございましたが、新役員はこの大会の決議を以て六月十五日調停委員会へ次の趣旨の回答をいたした次第でございす。即 第一に、調停案第二項は第一項の具体的実施の方途であること、と言いますのは、月平均一万八百二十四円ベース改訂、打切りがいつからそれを実施するか不明確ではありますが、第二項の補正も全くベース切替後と同じく四月から実施まで一人当り平均二千四百円を支給する意味であることを確信いたしたのでございました。第二には調停案は一般賃金と物価生計費の本年三月までの上昇率がそのまま推移するであろうとの観測を以て算定されたので、この推定が余りにも低過ぎる、余り低きに失する場合には調停案にとらわれず新たに考えなければならないと考えたわけでございます。以上の二点が当然許される考え方であることを条件として受諾の回答をいたしました。国鉄当局も又六月十五日に実施に努力する旨の回答をいたしましたのでありますが、その時の受諾という文字が回答文にないのが問題になつたのでありますが、調停委員会に赴いた当局の代表が、調停受諾と解釈してよろしいかとの質問に対して、そう解釈されても結構であるという旨の証言をいたしたので組合側もさように受取りました。同日附を以ちまして中央調停委員会成立の宣言を公式にされ、紛争の解決を明確にしたわけでございます。私どもといたしましては、労使双方が調停を受諾したことを全く心から喜びましたことは言うまでもございませんが、民主的労働組合として労使間の問題が業務に支障を及ぼすことがなくて妥結に至ることを望むのは当然でございます。従いまして国鉄当局に対し鋭意完全実施までの努力を要望した次第であります。調停案の理由書にもあり、且つは又我々も知り尽くしておりますように、国鉄財政の現在では調停案全額を実施する余裕がございません。従つて国鉄当局は完全なる支払をする能力を今日では欠いております。併しながら能力を今日では欠いておると言いながら、このことは国鉄の当局が調停全額を協定して調印をなし得る能力を欠いているということには、そういうことにはなりません。なぜならば言うまでもなく公労法の十六条は資金上予算上不可能なことであつても妥当なことであれば協定し調印をなし得る能力を付与されているからでございます。私どもはこういう点から調停案の双方の受諾によつて双方が債権債務の関係が生じたと考え、あとは具体的な点についての取りきめを行つて協定調印をすることが公労法に副う一般常識と考えた次第でございました。これは今日労使間の常識でありまして、一般的な通例でさえございます。今日まで私どもは始終調印はいたしたものの債権債務の伴わない協定をしない、いわゆる債権債務を伴わない協定はしないという例は聞いたことがないのでございます。従つてその後の交渉経過といたしまして、組合は直ちに調停案の趣旨に副つた賃金協定組合案を当局に提示いたしましたところ、六月の二十五日に加賀山総裁との会見の席上当局は不明確な態度を先ず示しまして若干の猶予を求めました。次いで六月の二十七日の会見におきましては、調停案の受取り方に組合と違つた点があると申しまして、その後十数回に亘る交渉にもかかわらず実施に努力はするが、協定には応じられないという立場を逐次明らかにして参つたのであります。この問夏期手当の問題がありまして若干の時日の停頓がありますが、その後においても何ら進捗いたしませんで、八月の十一日の回答も又交渉は不調に終つて、剰え組合が仲裁申請するのも止むを得ないというようなことに至りました。八月の十四日補正予算の編成について大蔵省へ要請に参りました組合の代表が、先ほど藤林委員長ちよつと申されましたが、大蔵省の主計局長から国鉄当局が調停案を受諾したと解釈してはおらないという旨の意外な発言を承わりまして、我々は非常に驚き、更に大蔵次官にその向を質しましたところ、その点自分としても不明確であるというので明答をそらしておりました。この点は誠に奇々怪なことでありまして、すでに補正予算の編成は二十二、三日頃までには終了するという話もあるのに、大蔵省自体がこういう態度審議に当つているという原因がどこにあるかということを我々は静かに考えると同時に、且つ激しい忿懣の情を押えることができないのでございます。次いで八月十七日に国鉄当局は正式に我々が要求いたしました協定締結には応じないという回答をいたし、更に調停案の第二項の趣旨に副うべース改訂の補正第一回として八月二十三日に二千円支払いせよとの要求も拒否して参りました。すでに最近では人事院の勧告案が、今日あたりの新聞で見ましても、それによりますれば公務員の新賃金は一万一千二百六十三円であるよにう承わつております。現業職員でありまするし、且つは最も重労務の輸送を担当しておりまする国鉄職員賃金がこれよりも安く一万八百二十四円の調停案であることの矛盾もさることながら、その調停案ですら大蔵省で奇々怪々な取扱を受け、国鉄当局も又公労法で当然の協定に応ずべき当事者能力を持ちながらこれに応じないという不誠意に対しましては、今や国鉄職員は折角労使双方が受諾し、平和裡に賃金紛争が解決をするであろう希望を全く打ちしだかれるのではないかという、この生活苦境の中で重大な決意を固めざるを得ないというような立場に追いつめられておる次第でございます。  国鉄労働者現状は細かく申上げなくてもおわかりと思いまするけれども、あの動乱以来特需生産資材の値上りによりまして、それによる消費物価はここ一年間三五%以上上昇を示しておりますことは皆様のすでに御承知の通りでございますが、そのうち米価の引上げと、或いは電気料金の値上げ、地方税源泉徴収等、生活の窮迫はどん底に落ちて全く破局に瀕しております。更にガスや水道の料金の値上ということもそれぞれ企画されているというようなことも伝え聞かされておりまする今日、収入は依然として八千四百円べース据置きに、日増しに殖えて参りまする現状におきましては、今全国から組合本部に続々寄せられまするところの決議案、或いは申入書、抗議書、或いは組合役員それぞれの文書で間に合わず、あらゆる代表者が本部に押しかけて参ります等、この一つ一つが苦しい職場と台所の中から惨み出る血の綴りであるということは、いささかの誇張もございません。このままにしておいたならばどんな状態に、如何なる事態が惹起されるかもわからないというような状態でございます。このような苦しい生活と闘いながらも組合員は、いわゆる国鉄労働者は輸送の重責を痛感いたしまして、飽くまでその責務を発揮しようと努力をいたしておるのでございまして、各位もその点はすでに十分御了承を頂いて本日のような御審議を頂くことになつたのだろうと存じておるのでありますが、これを輸送目標と委員の面から見ますと、昨年まではいわゆる一億三千万トン増送ということにそれを目標といたしまして、かなりの現場におきましても無理と労働強化を我々は忍んで参りました。最近におきましては遥かにこの目標を突破いたしまして、朝鮮動乱がああいうような一時鎮静の状態になりましても、一億五千五百万トンの増送を目指して計画し進んでおるような実情でございます。一方このように輸送実績、目標は殖えて行く、その半面裏付となる人員の面については先だつての定員法以来十七万近くの人間が整理乃至削減が行われております。業務量は二十四年度に比べますと、貨物においては三千万トン殖えておる。旅客輸送の人員は二割も増加しておるという、かように多くなつておるのでございますが、当然そこには数字では想像されないいわゆる労働強化の厳しさが職場を包んでおるのでございます。現在体力管理法に基ずきまして、病気で休養を命ぜられておりますものは一万三千名余りもおるのであります。これらも労働強化によりますところの大きな犠牲であるということが考えられる。こういう今日のように失業者が殖え、そうして就職難で困つておるときに、我々の働いております職場の中からどんどんと退職者が、みずからの希望によつて退職者が殖えておる。大操車場におきましても新規採用者がこの就職難の世の中に相ついで集団的に職を去つて行くのであります。という現状は給料が安い上に、非常に苦労な、過酷な労働過重として堪えられないという大きな有力な証拠でございます。最近に入りまして大阪の吹田操車場のごときは、助役、運転係の現場の指導者がどうにも方法がないと言つて手を挙げておるような実情が、どんなにか労働強化という面が目に見えるか、我々が堪え忍んでおるかということがおわかりになることと考えるのでございます。又国鉄職員の大多数は御承知のように夜寝ずに働くという仕事をしております。二十四時間勤務で、徹夜交代の勤務をいたしておるのでありますが、その苦労というもの、肉体的な苦労というもの、更に夜働くのでありますから、夜中に物を食べます。その夜食料が一晩三十円が最低でありまして、四十円というようなところから三十円というものが大多数でございます。このおかず代にも足りないという実情や、人手不足のために、夜中には基準法によりまして、或いはそれぞれの折衝によりまして当然四時間睡眠ができるのでありますが、連続して四時間眠むるということができない状態のものが大半なのであります。この超過勤務を終了し勤務をいたしますと同時に、更に時間外勤務をいたします。人手が足りませんからみすみす帰れません。超過勤務をいたしましても、超過勤務手当の予算が満足でないために支払われないというような所もあるので、完全に支払われておるという所ばかりではない。こういう実情も相当にあるのであります。  又国鉄の現場の業務が一般の公務員に比べまして、大衆の生命をお預りしておるのだ、これは世間からもひどくその点を指摘されると同時に、我々も大切な仕事に携つておるというこの重責は痛感をいたしておりまするが、併せて職員自身極めてみずからの身体に対する危険な作業に携つておるのであります。多いときには、一年の統計を見ますると、五百名以上も仕事のために死んでおります。殉職をいたしております。三百七、八十名というような平均から見ましても、我々の同僚の殉職がどんなに多いかということでございます。こうやつて我々が御審議を頂いておりまする本日におきましても、一名乃至二名というものが、どこかで輸送のために殉職しておるというのが実情でございます。如何に激しい苦労な仕事であるかということがおわかりになつて頂けることと存ずるのであります。国民の生命を預つて身に危険を感じながら、経済の苦闘の中にありながら、負けたりとはいえども我々の郷土、祖国の再建を念じて経済の復興に熱情を捧げておりまするこれら職員の前にいささかでも忘れてならないことは、罷業権を奪われた組合として平和的な解決手段の調停案が一日も早く実施され、ペース改訂の実施されることにすべてを賄けまして、ただひたすらに政府、国会及び当局の誠意に期待をいたし、切望いたしまして、黙々としてこの暑い中職場で働き頑張つておる職員の実情を十分に御了承願いたいのであります。  以上申上げましたように、要求提出以来ここにすでにカ月でありまして、今日まだ紛争の解決点に達しておらないということについて、私たちは皆様の本当に深甚なる御考慮を願いたいと思うのであります。これを要約いたしますると、第一には、調停案を双方受諾した民主的基盤を確認をして、政府において国会提出の補正予算に際し、その金額、即ち四月以降一人当り二千四百円のべース・アツプが可能になるという予算を編成されたということでございます。本調停案は人事院勧告を数字的に下廻り、二千九百二十円ペースを設定した当初から国鉄の特殊事情でございますね、この特殊事情として設定された公務員との開き、差を総体的に比べると、それが今日においては含んでおりません。併しながら受諾という国鉄労働組合としてみずから踏み歩いて参りました責任をとると共に、紛争の平和的な解決を願うものでありまして、従いまして、調停案が完全に実施される限りにおいては、今日人事院勧告を下廻ろうと、これを卒直に受け容れて社会的責任を果したいと決意をいたしておる次第でございまするから、この辺の微衷を十分にお汲み取り下さいまして、皆様の御協力を切に要望する次第でございます。  第二には、賃金調停の成立についてでありますが、本来これは労使間の問題でございまして、且つは又公労法の上から当然過ぎる組合の主張であると考え国鉄当局側の何か含みを持つた態度は我々は却つて法律の枠を紊すものと考えておる次第でございます。この点につきましても、皆様の適切な御判断、御配慮をお願いしたいと存じます。又この際ちよつと申し添えさして頂きたいのでございまするが、皆様の深甚な御調査、御尽力をお願いしたいことに年末手当の問題がございます。これは公務員は本年予算に半月分、これはまあ少々少きに失するとは考えておるのでございますが、この半月分の年末手当が計上されておりますが、然るに国鉄は予算総則におきまして、年末手当を支給しないと規定されて一銭の計上もなされておりません。これはまあどういうわけか。一体如何なる理由によるものでありましようか。今日に至つても私たちは理解に苦しんでおるのでございます。第一次仲裁裁定によつて国鉄に給与金の制度を決定するようにこの裁定を受け、その後昨年の三月、本日労働委員長をなさつておられまする中村先生が運輸大臣との質問応答によりまして一歩前進を見ておるのにかかわらず、国鉄当局はいろいろな口実を以てまだ裁定に基く賞与金制度も行われておりません。まあかくのごとき年末手当に関する不均衡な本年の実情は全く国鉄労働者四十七万がひとしく重大な不満を以て、政府方針に対しましても全く批判を向けざるを得ない立場に置かれておるわけでございまして、皆様の深甚なる御審議と御配慮を願つて止まない次第でございます。最後にいろいろと願い申したいことがございまするが、時間の関係もあつてこれを以て一応御説明に代えたいと存じまするが、最後に申添えたいことは私たち国鉄労働組合は今日の日本労働運動の中におきまして、責任ある且つ民主的な組合として行動いたしますると共に、輸送という重大な責任を背負つておることを常に認識しております。従つて労使の紛争を平和裡に解決をいたし、生活の安定を図りたいと、そしてそのモデルになりたいという念願をいたしております。さりとても私たちは平和解決を願うの余り理不尽な方式や、或いは又安易な妥協は健全な組合の到底受入れるべきものではないと確信しておるものでございます。今日国鉄における労働負担の過重や、業務の向上、生活費の高騰に対しまして、政府並びに国会、国鉄当局が今日こそ当然調停案の完全なる実施をなすべき責任と義務があることを御認識されたいと考えるものでございます。国鉄労働者が異常な決意を以て調停案の実施を注視しておることを御洞察願い、若しこのことが実現することなくば、私は中央国鉄労働組合の中央闘争委員長といたしまして、ますます事態の悪化、組合員の悪化に対しまして、心から憂慮をすると共に、みずからその解決のために先頭に立つて政府の反省を促すべき行動に出でざるを得ない立場に置かれることを思いおる次第でございます。講和の調印がなされようといたしまする今日、この辺のところについて各位の十分なる、而も深甚なる御賢慮を以て四十七万労働者の生活安定が図られますように努力を深く要請いたしまして説明に代え、この説明を終る次第であります。どうぞよろしくお願いいたします。
  49. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 寺山君の陳述を終りましたが、あと国鉄総裁、運輸大臣労働大臣の陳述は午後に廻しまして、一時三十分まで休憩いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 中村正雄

    委員長中村正雄君) では一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十五分休憩    ―――――・―――――    午後一時五十六分開会
  51. 中村正雄

    委員長中村正雄君) では再開いたします。  午前中に引続きまして、国鉄総裁の代りに天坊理事が見えておりますので、国鉄側の陳述を願いたいと思いますが、大体お願いしたい点は、調停案を受諾しました理由、及びこの調停案の内容につきまして、組合側と意見の違つた点があるということになりますれば、その点の御意見を聞きたいと思います。もう一つは調停案を実現するについてどういう措置を講ぜられておるか、特に政府関係との措置の内容について陳述願いたいと思います。
  52. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 国鉄の天坊でございます。只今委員長からはつきりと問題の要点をお示しになりましたので、その点について簡単に御説明申上げます。  調停を受諾いたしました点につきましては、私どもといたしまして、国有鉄道の従事員の給与というものについてその任務等から申しまして、できればもう少しよくしたい、こういう気持はかねがね持つていたわけであります。ただこれに裏付になる理由、或いは又その必要財源というのが当然必要なんでありまして、それらと見合つた恰好で考えて行かなければならないことは申すまでもないわけであります。そういう際に特に朝鮮動乱以後の物価の値上りというようなことを理由といたしまして、組合から給与ベース改訂の話が出まして、ただ御承知の通りどもの鉄道側といたしましては、会計的と申しますか、財政的に非常に自主性の幅が狹いのでございまして、その点を増えますと、簡単においそれという話合いができる筋のものでは勿論ないわけであります。それが調停に出まして、調停案をお示し下さいましたが、その席上先ほども藤林さんからも縷々お話がございましたように、表に現われた字句のみならず、その裏に含まれておる考え方というものを非常に詳細御説明願いまして、その線でこの調停案が、単に文句だけの解釈にとどまらず、裏面の御趣旨というものをはつきり伺えば伺うほど、これは何といいますか、すぐこれだけの一万八百二十四円を支給するとか何とかということでなくて、国有鉄道としてこの段階においてそういう予算措置を講ずるという点に重点があるというふうにお話をお伺いしました。これをお断りする筋はないというように考えます。ただ我々一応大蔵省なり、運輸省なりといそれぞれの政府側の御意見も伺つたのでありますが、それらの方面では、なお若干ああいう調停案ではありましても、そのままではつきり受諾いたしますという言い方に対しては、若干御疑問の点もあるように見受けました。むしろ率直に鉄道としての立場というものをそのまま書いて実現に最大限の努力をいたしますという気持を現わして、これが受諾の気持、当然の気持なんだという、これをそういう点を認めて頂きたい、そういう回答もいたしたのでありますが、それに対しまして先ほどお話がございましたように、これは受諾なんでしようというお話でございました。勿論そうでございますという御返事を申上げたわけでございます。只今申上げました通り鉄道の自主性の問題につきまして特に今年度のごときは給与増額というような枠は大体今年の予算定員からしてこれが一万人近くも減らなければ確保できないような要素があるわけであります。その枠の問題。それから同時に財源の問題でありますが、これも今年は御承知の通り朝鮮動乱以後のいろいろな物の値上がりがありまして、これを考えますというと、どうしても本年度は補正予算を組んで頂かなければならん。而もその財源として相当程度なものは運賃の値上がりとかいうようなこともお願いいたさなければ普通の手段では財源が確保できない。こういう見通しと両面でありまして、而もそれらの点が相当いろいろと困難な事情が予想されるわけであります。それらを政府の御方針そつちのほうへ持つてつて頂いて、而もこの実質的な給与ベースの改訂ができるようにというような点をいろいろ勘案いたしますと、ああいうふうな受諾の回答書になるということなんでありまして、その点は十分御了承願いたいと思うわけであります。それからあの受諾をいたしました以後組合との間に協定を結ぼう、調停案を頂いてその調停において協定をしようということに話はなつたんでありますが、その間先ほども話が出ましたが、若干解釈上疑義もありまして、これらの点についていろいろ問合せをいたしました。結局調停案の一番眼目であるその予算措置を講ずることについて最善の努力をする。こういう趣旨でその意味の協約をするならば、これは勿論私どもとしても必ずしも拒否する立場ではない。ただそこのところを呑み込んで十六条の効果を出すような協約をするということにつきましては、そういう協約すること自体が今申上げましたようにいろいろな財源なり、資金なりの実質的な答えを出すのに必ずしも有利であるかどうかという点も考慮いたしまして、そういう協約については応じられない。こういう解釈がよろしいということも先ほど藤林さんから御説明がございましたように、私どもはそれで調停をお受けいたして、そのあとに協約に対する態度をしても間違つていないと私ども考えておる次第であります。組合側のほうとされましては、十六条の効果が出るような協定でなければ、単に努力をするというような協約では不満であるというような点で、必ずしも意見が一致いたしませんでした。その後組合のほうといたされましては、必ずしもその努力をするというような、協約をするということで不満ではあるけれども、何か努力をするという確認書のようなものを出して欲しいというお話がありました。確認書ということも必ずしも妥当な答えではないと考えましていろいろ努力をいたしましたが、結局組合のほうの質問に対する答えというような形式で、当局では調停実施に対する誠意を以て最大限の努力をしますと、こういうような同等書を極く最近差上げた次第でありまして、それでこの問題は一応党えになつておるのではないかというふうに考えております。なおその後私どもといたしましては、運輸省並びに大蔵省に対しまして、この二千四百円のベースアツプに伴う所要資金百六十三億というものを計上いたしまして、これを補正予算に盛込んで頂くように目下関係方面と大蔵省と折衝中であります。只今までのところ大蔵省といたしましても、この問題を真向から削るとかいうような話は今のところは出ておりません。ここ数回のうちにこの問題が具体的な決定をされる段階に至るものと考えておりますが、只今までのところはそういうような状況であります。極く簡単でありますが、……
  53. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 只今までの調停委員長、組合の委員長並びに国鉄側からの調停案に対しまする陳述を承わつたわけですが、最後に調停案実施に対しまして国鉄当局から政府にそれぞれ根本は金の問題でありますので、補正予算の要求をいたしておるという陳述でありましたが、一応政府といたしまして、国鉄からの要求に基きまするこの百六十三億の予算についてどういうお見通しか、政府方針を御説明願いたいと思います。
  54. 山崎猛

    国務大臣(山崎猛君) 只今委員長から項目を御指摘になつてのお尋ねでありましたが、ありていに申上げれば、私は運輸大臣でありまして、実はその百六十三億の要求を補正予算の上に実現させるべく努力するほうの側に立つておるのであります。只今委員長は、政府方針をというお尋ねであつたのでありますが、この場合は政府には相違ないのでありますけれども、大蔵大臣立場からこの問題についてお答えをするというほうが最も当然であろうかと、こう考えられるのであります。勿論私も国務大臣として政府方針に無関心ではなく、重大な責任を感ずるものでありますけれども、同時に運輸大臣として実現に努力するほうの側に立つておるということを一つ了解つて、この問題は大蔵大臣のほうにお尋ねを願いたいと思います。
  55. 中村正雄

    委員長中村正雄君) では一応国鉄の経営について監督なさつておる運輸大臣としまして、この調停案について何か監督上のお考えでもあればそれを承わりたいと思います。
  56. 山崎猛

    国務大臣(山崎猛君) 午前中の本委員会におきまして、藤林委員長より調停案の沿革と、ここに至つた経過並びにその結論についての詳細なる御説明を承わつたのであります。私ども誠に肯く点が多く承わつたのであります。同時に又国鉄労組の委員長よりも労組側の立場における主張、更に附加えて労働者諸君の今日の国鉄運営における重大なる使命、並びに翻つてその生活状態の窮迫した有様等を縷々お述べになりました。これ又私も誠にその通りであろう、こう承わつたのであります。更に又只今は天坊君より国鉄側の現状についてお述べになつて、調停案に対する所見を述べられたのであります。私は大体調停案に対する労組並びに国鉄両者の態度は、強い言葉で申せば、そのまま応諾したるものと申しても差支えないと思うのであります。併しながら、労組側においては労組側の立場から条件を付けるというか、或いはそれでは言葉が強過ぎるのであつて、念を押す或いは駄目を押すと申してよろしいかも知れませんが、二カ条の点については回答書に念を押されておるのであります。同様に国鉄の場合においても、条件というか、何といいますか、その実情を訴えて、その範囲において、その立場において応諾するという態度を明らかにしておると思うのであります。いずれにしても、両者とも念を押す、駄目を押すという用意の下に応諾をしておるということは同じようであると思うのであります。私は労組側のほうについては申上げても同じようですから申上げませんけれども国鉄側のほうの駄目を押した点は、回答文の中に明記されてありますように、「国有鉄道現在の予算、財源その他の諸事情よりみれば、その実現を期することは極めて困難ではありますが、」、こう断つておるのであります。これは今天坊君も触れておつたようでありますが、予算、財源その他につきましては、大蔵省の査定を経なければならんし、更に又国会の審議を待たなければならず、占領統治下においては関係筋の御理解も得なければならないような状況の下においてでありますから、わかり切つたことではあるが、これを駄目を押したのだと思うのであります。併し主文はそれから以後にあるのであります。主たる精神は「調停を尊重し、同案並びに御説明の趣旨に従つて予算の補正に必要な措置を講ずること」と、こうはつきり述べてあるのみならず、「その実現に努力致したいと思います。」、こう述べてあるのでありますから、一応条件を駄目を押しつつ調停を尊重し、その実現を期するということに力を入れておることは明瞭であると思うのであります。組合側のほうにおきましては、又「本年度中、ことに後半期において調停案理由書に賃金策定に推計された、諸条件が、著しく相違した場合、新しくこれが補填の要求をすることについては、何等拘束されない」のだという駄目を押してやはりかかつておるのであります。諸条件の相違は或いは上る場合もあれば下る場合もあるはずでありますが、いずれにしてもそういう諸情勢には拘束されないということを駄目を押してかかつておるのであります。別段これは間違つた駄目の押し方ではないと考えます。いずれにしても両者ともに調停案を尊重し、その実現を期するためにそれぞれの立場において実現を図ろうという点においては、甲乙のないものと運輸大臣は見ておるのであります。そうして今日のあり方はどうかと言えば、即ちこれが実施に必要なる措置を講じつつあるのでありまして今まさに万全の努力をなしつつある最中であるのであります。国鉄当局がみずから予算関係において、補正予算の関係において大蔵省に案を付して折衝しつつあると同時に、運輸大臣も又その実現に向つては直接の当事者双方以外でありますけれども、この調停のあり方を尊重して、その実現に力を添えつつある現状なのであります。でありますから、而も補正予算は極めて今日よりは短い期間の間に、目鼻がつかなければならない現状に置かれてありまするので、労組諸君のいらいらされて心配なさるのも御尤も、同時に国鉄側において万全の努力をなしつつあるということも両方事実である、運輸大臣としてはこういう見地からこの実現を期したいと、こう考えるわけであります。申上げるまでもなく、法律はどこまでも絶対的に尊重されなければならないことであり、法律によつて定められたるそれぞれの委員会なり或いはその決定等に対しては、その趣旨を実現することを目標としなければならないのであることは申すまでもないのでありますが、ただ最後に政治的な見地から一言申上げておかなければならないこと、或いはこれも一種の駄目を押すということであるかも知れませんけれども、財政、経済、財源等の関係から百%実現し得ざることもあり得るということは、政治上の実際の面においては免れ得ないのであります。それと申すのは、今日国鉄の経営の実情は文字通りに推算すれば、五百億を超えるような大きな赤字が眼前にそびえておるのであります。而もそれらは物価の値上りと国民生活を、経済を支持して行かなければならない、確保して行かなければならないという立場からの賃金改定、それが大きな赤字の要素をなしておるのであります。而も国鉄の財源は申すまでもなく運賃を以つてその大宗とし、それ以外は殆んど数うるに足るものはないのであります。併し運賃の値上げは国民の生活、又物価或いはこれを総合して悪性インフレーシヨンの上昇にも影響を持つものでありますから、慎重なる考慮を払うにあらざれば、ただ統計表の数字だけで割出した率によつて運賃の値上げを決定するというわけにはいかないと、かようにも考えられるのであります。而も運賃の改定の問題は国会の慎重なる審議を経なければならないのでありますから、国鉄の収入を机上において統計表の上からはじき出したる料率だけで収入を確実に押えるということはできないという現状である今日においては、財源に戻つて考えた場合に果してよく物価の値上りに応ずるだけの財源を運賃によつて賄い得るや、或いは又必要として叫ばれる従業員の生活を確保するための賃金財源を得られるや否や、こういう方面の問題も先に残つておるのであります。併しそれらのあるないにもかかわらず調停を尊重して、そうしてこれを実現することに必要なる措置を講じ、万全の努力をするということは一歩も戻らないつもりで運輸大臣は努力したい、かように考えておるのでございます。概略以上の通りであります。
  57. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 以上で大体参考人並びに政府の見解の陳述を願つたわけでありすまが、一括して質疑を行うわけですが、先にその参考人並びに政府意見を聞きまして、それぞれ問題の集点もはつきりしたと思うわけでありますが、最初委員長が総括して質疑いたしまして、あと各委員から補充的に質疑を願いたい、こういう運営で参りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 中村正雄

    委員長中村正雄君) ではそのようにいたします。  では一つ調停委員長にお伺いしたいわけですが、この調停案の主文の第一項目、これが大体組合側と当局側と根本においては相違しておりませんが、いろいろこれに解釈の相違があるようにお聞きするわけなんです。従つて最初にお尋ねしたい点は、この調停案を組合も呑み、当局も呑んだということの法律的な効果はどこにあるか、言換えればこの調停案を組合も承諾し、当局も承諾した場合にどういう公労法上の法律効果を生ずるか、この点につきましてお答え願いたいと思います。
  59. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) その点に関しましては、先ほど私が今回の調停案策定に対しましてとりました態度を縷々御説明申上げましたが、それでお答えに大体なつているのではないかと私は思つております。というのは調停案の趣旨は一万八百二十四円を四月から実施するように最善の努力を補正予算のときにやつてこれを実現してもらいたいというので、当局もそれをその通り実現したいというので努力を拂うつもりだというようにおつしやつて頂いて、今お伺いするのは、運輸大臣もできるだけ調停の趣旨は尊重したいという政府側の運輸大臣としての御意見を承わりましたが、私は別に法律的な商法の権利義務、債権債務というような問題は、そういうのは極めて常識的でございますが、今回の調停に関しましては、そういう常識的なこで一応いいのじやないかというふうに感じております。
  60. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 次にお尋ねしますが、当局からの回答書によりますと、実現に努力する、又調定委員長の出されました趣旨も先ほどお述べになりましたように、一万八百二十四円の賃金を実施するについて必要な措置を講ずるというのが、主文第一項の要点であるこういうように承わつたわけでありますが、この調定案によつて国鉄側も受諾したということは明らかになつておるわけですが、その場合、一万八百二十四円という賃金を国鉄側も承諾した、従つて勿論賃金は受諾しましても、それの実施につきましては、他の法律関係がありますので、予算的措置を講じなくてはいけない、こういうことは他の法規によつて拘束を受けるわけでありますが、一万八百二十四円という賃金は両当事者の承諾によつて一応確定した、こういうふうにお考えになるわけですか。
  61. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) 私はその場合に一つの努力目標という意味がそこに入つていて、それを承諾したから必ずその通り実現されなければならんのかどうかということについては、結果的な判断の余地も実はあろうと思つております。
  62. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 国鉄当局にお尋ねしますが、何か先ほどの各参考人の御意見を聞いて見ますと、予算的措置について大蔵当局との交渉の過程において大蔵当局との交渉の過程において何か大蔵当局のほうはこの調定案受諾というふうには解釈されない、こういうふうな話もあるわけですが、一応受諾についての経過として、国鉄当局が受諾する場合は、恐らく単独に受諾なさつたのではなく政府との協議の上で受諾なさつたと思いますが、受諾するについての政府との交渉についてお話を願いたい。
  63. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 先ほどちよつと申上げたのですが、一応意向は聞きましたが、必ずしも政府としては私ども考えているように、すつぱりと調定案自身の解釈も私ども説明を承わつて努力するのだということはわかるのでありまして、むしろ絶対に、率直に読めば必ずしもそれとばかりとれない、従つて無条件での受諾というものには政府としては必ずしもできかねるということで、私どもとしては回答は政府と相談しては十分な答えが出ない、他に私どもとしてはむしろ出て来る答えは、できるだけ実現したい、効果の実現にあるということにありまして、むしろ私どもは私ども立場として私ども実情を述べたような恰好で、これを政府の回答……ただ大蔵省その他に参りまして、私どもははつきり受諾したのだ、従つて協約、十六条による協約はしないけれども、受けたと同じだ、そこのところをむしろ協約をしないところが私どもの非常に政府側の立場考えての問題なので、そこのところを考てえもらわなければならんということを、そういう話はしておるわけであります。
  64. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 次に一つお尋ねいたしますが、十六条の協約なんですが、調停案を受諾してたとえ協約を結びましても、現在の予算上不可能の協約になるわけで、その場合は国会においてそれを審議するとなつておるわけで、可能不可能は別として一万八百二十四円という賃金は妥当なものと一応はお考えになつて、これを目標に実施する、実現に努力をする、こういう意味で受諾になつておるわけですから、一万八百二十四円の賃金が妥当であるというふうにお考えになつておるのであれば、なぜ組合の要求する協約を結ばないかというのが組合側の言い分として当局と違つておる点だと思います。従つて今の御答弁によりますと、協定を結ばないのは予算上の措置を講ずるための政府との今までの関係から躊躇いたしておる。こういうふうな御答弁ですが、そう了解していいわけですか、法的には十六条の協定を結ぶことについては御異議がないと思われるのですが、如何ですか。
  65. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) それと一つには繰返して申上げますが、実際上の効果を得るのに、そういう協定をするほうがいいかどうかという一つの配慮がある。それからもう一つはやはり先ほどお話が出ましたが、前の仲裁の裁定がどのようなことがあつたか。やはり結果的に従業員全体に対する答として、一つの債権債務の発生したような結果になつて、それが履行できたとか、できないとかという、不必要といいますか、必要以上の混乱をもたらす問題もあり得ると思います。そこでむしろ今の公共企業体としては率直なそのままの姿で、いわばできないのだという線でおるほうがよいのじやないか。この点を考えての答えであります。
  66. 中村正雄

    委員長中村正雄君) そうすると協定を結ばないという理由は法律上の問題でなくして、政治上、実際上の効果等から考えて今拒否しておる、こういうふうなお考えですか。労働大臣が見えておりませんから、次官のかたに御答弁願いたいのですが、調定委員長からもおつしやつておりますように、公労法によりますと一応調停というものは両当事者がそれを承諾した場合、一応争議が解決するということになつており、そういう平和的解決をするための公労法が制定されたわけですが、現在ですると一応公労法においてはそれぞれの平和的な解決手段を設けて、それによつて形の上で争議が解決できるというそれぞれの法的効果を与えておるわけですが、他の面における日鉄との関係、及び予算上の給与総額の予算総則等の関係等から実際公労法自体が賃金については労働組合と当局側とそれぞれ交渉してきめるという制度があるにもかかわらず、実際上は当局側は賃金に関する当事者能力を欠いておる、こういう状態になつておると思うのです。従つて公労法自体、調停委員会の機能自体、当局のそういう団体交渉の制度自体が実際上できないような状態になつておる。他の法規の制約を受けておるわけですね。従つて公労法実際の問題として、法の趣旨のように争議の平和的解決の手段として適用するためには現在の公労法を直しまして、或いは公労法の趣旨を実現するために日鉄法並びに予算総則の規定を改正しなければ所期の目的は達成できないわけですね。それにつきましてどういうふうにお考えですか。
  67. 山村新治郎

    説明員(山村新治郎君) 御指摘のようないろいろな面がありますことはその通りであります。今までのたびたびのことについてだんだんと慣行は確立しつつあります。なお将来の問題につきましては十分考慮いたしまして、善処いたしたいと考えておる次第であります。
  68. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 重ねてお聞きしますが、私のお聞きしましたのは、賃金に関しまして団体交渉し、或いは調停なり、仲裁等に対しましての国有鉄道の総裁としての当事者能力が現在ではないように思うのですが、労働省としてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  69. 賀来才二郎

    説明員賀来才二郎君) 全面的に当事者能力がないとは考えておりません。併しながら予算上、資金上の不可能な問題が出て参りますと、当事者能力を完全に使いますのにいろいろな制約が加わつておるということはございます。
  70. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 只今の御回答ですが、午前中に調停委員長からもお話があつたのですが、仮に現在の予算によりますと、給与総額という枠がはつきりきまつておる。而も賃金に関しまする労働争議というものは現在の段階においては賃金を上げるという問題が焦点になつておる。賃金を上げると当然予算措置を講じなければならない。従つてすべては政府なり、国会というものが最後の権限を持つておることになつてつて国鉄の総裁としては賃金を上げるか上げないかということについては何ら交渉する余地がないような制度になつておるのですが、その点現実において賃金問題についても国鉄総裁限りでやり得るような現在余地があるとすれば、どういう点を御指摘になつておるわけですか、重ねてお聞きしたいと思います。
  71. 賀来才二郎

    説明員賀来才二郎君) 御指摘のように予算上、資金上ということにつきまして、特に予算措置において枠がはめられておるというような状況になつておるわけであります。従つてその枠或いは予算上、資金上の何によりまして可能な範囲におきましては、国鉄総裁としては賃金を団体交渉のみによつて決定し得るわけでありますが、併しながら枠について、或いはその他の措置を講じなければならない場合におきましては直ちに総裁としては決定的な調整をすることは不可能でありますし、又それを実施することが不可能なわけであります。併しながら今日まで仲裁裁定第一次、第二次を経まして、さような場合におきましても漸次その仲裁委員会等の裁定を尊重して行つてそれに近い解決を図つて行くという慣行が確立をせられつつあるというのが現状である、かように考えております。
  72. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 国鉄の天坊君に伺いますが、一応調停案は先ほど説明になりましたように、これが実施に必要な措置を講ずるという点を中心にして受諾なさつておると思いますが、そういう受諾を実現するという点に重点を置かれて、一万八百三十四円は一つの目標になつておるということでありますれば、この調停を受諾せずに、仲裁のほうに持つて行かれるということも一応お考えなつたと思いますが、仲裁に持つて行かずに、何故調停を受諾するようになつたか、その点を御存じでございますればお聞かせ願いたい。
  73. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 特別に理由もございませんが、先ほど藤林さんもお話になりましたように、これをやはり鉄道の労使間の問題について調停と仲裁と二段制というのは非常に意義があるという感じを持つております。そういう問題につきまして、一番初め先ほど述べましたように、調停だけの答えでは、必ずしも効果が出ないことを惧れるという藤林さんのお話も非常に同感なんですが、大体私どもとしてはやはり初めから相当の補正予算を組んで頂かなければならんというようなことも考えておりましたし、それに大体おきめ願つた一万八百二十四円という線もそう不当ではないというふうに考えておりましたので、裁定を受けてそのままきめてもらうということも一つ方法でありますが、その調停を受けてそれだけの予算措置を講ずるということも一つの行き方だと考えております。
  74. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 組合の委員長に伺いますが、この調停に基きまして、賃金協定を結ぶということを当局に強行に要求なさつておるというふうな陳述でしたが、賃金協定を結ぶことの利益といいますか、効果といいますか、必要といいますか、そういう点はどこにあるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  75. 寺山源助

    ○参考人(寺山源助君) 折角調停委員会にかけて、調停委員各位の御努力によつて平和裡に我々の要求が不満ではあるけれども一応受諾した。要求を平和裡に解決するためには御承知のように国会の審議を経なければならない。こういうような組織の中にありましては、調停の趣旨を尊重して飽くまでも双方が尊重したというものをそのまま国会に持込まれて、いわゆる国民代表である人々によつてこれを慎重に審議をされて御決定を頂くということが望ましいので、そのためにはやはり双方が協約をして国会にそのまま調停案が持込まれて御審議を願うというためには、どうしても協約が結ばれなければ、その調停の趣旨というものが少しも歪められずに国会に御審議を願うというわけには行かない。こういう見地から我々は飽くまでも調停を尊重する、こういう建前で、当然組合といたしましては法律上の効果は変つておるということは聞いておりません。当然公労法十六条の趣旨を負うものである。又負わなければ調停を尊重したという、調停が成立したという成立宣言というものは意味をなさないと、こう考えまし、法を守る、或いはこの現実的な実施の面ということから考えて見て、どうしても協約を結んで頂くことが調停案を各方面から尊重したということであると同時に、実質的に実施の線に一番近づくのである、こういう考え方でおるわけであります。
  76. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 最後に調停委員長、組合の委員長国鉄側にお尋ねしたいのですが、この調停問題を何とか円満に解決する鍵はどこにあるとお考えになつておるのか、どの点が盲点であるとお考えになつておるのか、その点一応調停委員長からお話願いたいと思います。
  77. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) 私は大体申上げることを申上げてしまつた。今の御質問でございますが、どうもなかなかむずかしい問題で、率直に私から申上げれば、先ほど運輸大臣も調停委員会のやつたところもよくわかつて頂いたようなお話を頂きました。私といたしましては、大変好都合な御意見を承わつたのでございますが、今の公労法と団体交渉、調停委員会制度、仲裁委員会制度というものの全体を眺めて、給与ベースの問題を考えて見ますと、実はいろいろなところで割切れない問題が多々あるのでございます。併しそういうことを一々言つていたのではなかなか先に行きませんから、今回のような非常に妙な解決を取つたわけですが、これさえもやはり政府で容れて頂かないということになると、実は私は率直に申しまして恐らくこの次当りに、来年当りでもこのままで行つて組合から再び給与ベースの調停申請がなされたら、私としては政府に向つて一体調停をやる可能性と意義がどこにあるかということを実はお伺いでもしなければ、調停委員会としては存在の意味がないじやないか。今回も実はそうしようかと思つていたのですけれども、とにかく当事者双方は調停委員会で問題を収めたい、収まる可能性があるというようなことをおつしやつたからこういうことをやつたので、今になつて見るとだんだんお話に出ましたように、又この委員会委員長の御質問にもございましたように、私としては実は非常にあいまいなような調停案を出して、而も事態が今日まで解決しないということについては、実は当事者双方に対して、なかんずく給与ベースの改訂を要求された委員会に対しては実は申訳けないと思つております。併しそう心の中では思つておりますけれども、事態がこのような事態であるので、これも実は非常に止むを得ないということで今日までこれを忍んで来ておるのでありますが、こういう事態はやはりここへ来れば政府は非常な雅量を以てこれを容れて下さる以外にはない。先ほどの運輸大臣の言葉であれば、これは成るほど政治的にはいろいろ政府としてお困りになる点も多々あろうとは思いますが、やはりこれも殺すのも政治であれば生かすのも政治であると思うので、実は政府で雅量を以てこれを生かして頂くという以外には私はないのじやないかと思います。盲点盲点と言いますけれども、盲点の一つの問題はそこにあると思います。ただもう一つここで申上げたいのは、今までもそうでございますが、組合もこれを一番恐れておると思います。私のほうも一番恐れておりましたのは、いろいろお伺いいたしておりますと、人事院の勧告は今日行われたようなことでございますが、果してそうであるかどうかも知りませんが、人事院が勧告をなかなかしない、政府では今度ま補正予算で公務員の給与を改訂する、一千五百円を上げるとか何とか聞いておりますが、国鉄の場合大体右に做えするというようなことを言つております。若しもそういうような政府にお態度があるならば、私は実は公労法を改める前に、実は調停委員会で給与べースの調停案なんかやるなと言つておる、こういうことでやらしておいて、こういう態度に出られては私は甚だ遺憾であるということを言わざるを得ない。
  78. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 国鉄側は円満にこれを解決する鍵はどこにあるとお考えになりますか。
  79. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 一般的には先ほどお話が出ておりました国鉄自体の当事者としての能力にあると思います。この問題が成るほど枠の中で処理する問題もないではございませんが、給与ベース改訂というような大きな問題になつて参りますれば当然その能力はないということになる。いつでも問題が起きればこういう恰好にしかならない、一番の元はそこにある。この問題につきして私どもいろいろ何がありますが、鉄道従事員の給与というものにつきましてこれはもう少しよくしたいということは率直に私どもも思つております。その荷つておりますいろいろな使命、或いは又いろいろ安全に関係する仕事をやつております者が生活のことに不安を持つておることはその次の日に影響する、その仕事に影響することが多い。その影響することがいろいろ人命その他に関係するという関係になつておりますので、何とかして給与の点をよくしたいというふうに私ども考えております。できるなら今年の補正予算で何とか調停案を容れて頂くような特別の御配慮をお願いしたいと思つております。
  80. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 組合のほうはどうですか。
  81. 寺山源助

    ○参考人(寺山源助君) 組合といたしましては、結論的に補正予算の二千四百円を四月からすべて組んで頂くということなんですが、それに対して今の委員長のどうすればいいかということは、やはり法を尊重する、先ほども運輸大臣がおつしやいましたが、法を尊重するというその前提に立つて労働組合も進んでおるのですから、やはりその前提には公労法の正しい道を労使双方が歩いて行つて、協定を結んで労使関係をはつきり確立して、堂々とその調停によるところの審議をして頂いて決定をしたら、国会においてこれはもう決定線が出されたときには、現在の段階におきましては我々ももはや何をか言わんやですが、それが途中で歪められるようなことであり、而も我々の考えておりまする一万八百二十四円というものは国鉄先ほども申上げましたが、いろいろな職責とか仕事のあり方、労働力の強化、こういうことから考えて見て妥当でないということは国鉄の当局も言つておられるし、先だつての官房長官もまあまあというところだろうというようなことまでおつしやつておるので、これを妥当なものを妥当として出して頂くということが望ましいので、それにはやはり円満に進めるのには協約を結んで、そうしてその決定されたものが労働者もそれから使用者側も納得の頂ける答えが出るという途を真直ぐに進んで頂く、こう考える。ですからやはり二千四百円を四月からということは目途であり、その改訂は協約を結んで、そうして国会において調停案を十分に御審議を願う、これよりほかに我々の考えた円満に進んで行く途というものはないと思う。先どほ藤林さんのおつしやられました公務員並みということは、平等のようであつても現実的には平等でない。法を尊重しないということも現われると同時に、これは平等の扱いを受けないという国鉄労働者考え方がどうなるのだということも、十分にこれは決して威嚇する意味合いにおいてではなくて、やはり正々堂々として道を歩かないとどういうことが起るかということは責任が持てない。正々堂々として歩んだ道に対しましては、私は身を以て責任を以て四十七万の人たちに納得して了解をして頂く努力をしなきやならない。そういう意味合いで円満ということであるならば、やはり正義の道を歩かせてもらう、これよりほかにないと思います。
  82. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 三人の参考人のかたがたの御覧は、現下のところでは経過についての御見解が述べられたわけですが、結局結論としては調停の内容である賃金を、補正予算にその他の関係とは切離して盛るということが円満な解決のポイントだというふうに三人とも意見が一致されておると思うのですが、それについて重ねて政府側のほうからこの三人の参考人の御意見に対しまして、どういう決意でいらつしやるか、御答弁を願いたいと思います。
  83. 山崎猛

    国務大臣(山崎猛君) 重ねて立場を明らかにしておきますが、政府側と申しましても運輸大臣であるということを操反して述べておきます。只今の藤林委員長お話でありますが藤林委員長は午前のお話のときにもどうも自分は短気だから今度はもうてんから受付けないで行こうかとさえ思つたのであるというお話がありましたが、今もそういうふうな意味最後の結びの言葉があつたのでありますが、どうか一つ短気だけはもう少し御勘案を願つて一つじつくりこのこととのできるようにこの上ながらのお骨折りを国家のために切望して止みません。ところでどうも政治家の言葉は漠然としておるかも知れませんが、事態を按ずるに俗に言う勘定足りて銭足らずであります。勘定の即ち理論はお互い皆わかつておる。理論の勘定ははつきりよくわかつておるのであるが、要するに財布の中が足りないということだと思うのであります。労組の代表としてのお話を聞いておつても、この辺の事態は万々胸に抱いておりながら、この線を円満に且つ確実に調停の線を実現させたいということを、説明するいろいろの言葉になつたのであると私は思います。立場はよく私どもわかります。それから国鉄当局者の述べるところもさつき私が判断をしたように、できるだけ出したいという気持は万々持つておるのだが、国鉄が置かれてある状態がその考えを実現する上にそれだけの独自性の強い状態に置かれていないために、いろいろな状態を勘案しつつ調停の線を尊重して実現の方向に努力したい、こういうふうに来ておるのであります。運輸大臣としましては、労組の代表の言、国鉄代表の言、そこに非常な矛盾を感じません。その立場において述べるのであるが、帰着点はできるだけ調停原案を実現させたいという方向の心持があることは明々白々であると、こういうふうに判断をいたす次第であります。運輸大臣としましては、政府の部内にあつて、このあり方をできるだけ実現させることに力を尽して行きたいと先刻申上げたと同じ言葉を繰返すような次第であります。
  84. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 三人の参考人からの御意見もそれぞれ違つておりますが、今目前に控えております補正予算の編成、特に本日大蔵大臣から出席できないという理由として、本日から補正予算の内容にかかつているのでできない、従つて問題は眼の前に迫つておりますので、各参考人の御意見も十分御考慮願つて、運輸大臣として調停の実現のための補正予算の編成ということに御努力を願いたいということを特にお願いしまして、一応委員長としての総括的な質問は終りまして、続いて各委員からの御質問を願いたいと思います。
  85. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 実は質問前に議事に関してなんですが、この問題について労働大臣がお出になつていないということはどういうわけなんですか。労働大臣はこの問題について運輸大臣と同様に主管大臣としての責任がある。それを委員長がその手配をいたされないということは私どもとして非常に遺憾である。殊にこの問題は今日午前中の労働政策について労働大臣が御責任あるかどうか、民主的な方向に御責任あるかどうかということを口先だけでなくて、政治上の言葉だけでなくして、真にこれを守れるかどうかということを証明する一つの項目なんです。そういう意味からもここにお出になることが必要なんで、こういう場合には労働大臣は自分の所管である重要な問題については是非御出席のあるようにお取計らい願いたい。(「異議なし」「賛成々々」と呼ぶ者あり)
  86. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 午後労働大臣が出られないのは緊急な用務のために出られないとこう断つておられますが、併し代つて政務次官が見えておられますから、政務次官が全責任を持つて答弁に当られるであろうし、恐らく運用されると思いますので労働大臣同様政務次官のほうに御説明願えれば結構だと思います。
  87. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は政務次官を何も軽蔑する意味ではありません。併し少くとも午前中労働政策基本について労働大臣が御説明なさつたのだから、これは是非お出になるべきはすなんです。政務次官だからいいじやないかというようなことは委員長としておつしやらないように願いたい。併し今日のところは一応おいでになりますから、無論政府代表として私どもお聞きをします。
  88. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 労働大臣に政務次官より今の堀木君の趣旨を十分お伝え願いたいと思います。
  89. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 私は議事進行について発言をしてみたのですが、更に議事の内容についてお聞きしますが、次官はほかに用事がありますので、極く簡単に項目的にお答え願いたいと思いますが、組合の委員長に先ずお聞きいたします。組合の委員長先ほどの御決意で実はわかつているのですが、人事院のべースが上廻つたときには 国有鉄道の構成内容、つまり年齢とか、家族とか、男女別の差違とか、或いは労働条件の差違というふうなものから見て、人事院の勧告より下廻つております国有鉄道の調停委員会の調停案を御受諾になりますか、なりませんか。
  90. 寺山源助

    ○参考人(寺山源助君) 結論的には調停案の線に従つて、人事院の額よりも下廻つても調停案の線に従つて進んで行くというのが我々の今の基本線であります。理由としては、もう法律を尊重し、そうして早急に改訂しなければならない国鉄職員の賃金の問題で、調停委員会を尊重して決定を見たのでありますから、今日人事院の案が出ましようとも、我々の歩いて来た、先ほど申しました責任の上におきましても、これは当然調停委員会の案に従つて四月からの実施ということを、これはやはり調停委員会の案というものを飽くまで実施をする条件の上において進んで行きたいというのが私たちの今の変らない考えでございます。併し四月から実施しないというのであるならば、我々が受諾いたしました調停案尊重の意味とは多少違いができますので、それは又お答えが別になつて参ります。以上であります。
  91. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 第二にお聞きいたしたいことは、調停案が団体協約の対象にもならない。そうして自分たちの権利を守る方法がないときには重大な決心をしなくちやならないというふうなお考えがあるようですが、無論当然のお考えだと思いますが、そのほかに残された法律上の手段というものについてはお考えになりませんか。
  92. 寺山源助

    ○参考人(寺山源助君) それは強いて申上げれば、仲裁委員会に御苦労をかけるということが一つ残されていると思いますが、私たちはそういう仲裁委員会に行く階段を踏まないで、そうして今の我々の考えていることは、極めて身贔負でなくて妥当だと考えておりますので、これは調停委員会の線で実施して頂きたいと思うので、強いて申上げれば一つ只今申上げました委員会にお願いをする。併し仲裁委員会に持込もうと調停委員会で解決をしようと、これはそれに当りますところの政府並びに当局それぞれのかたがたの心構え一つであるとこう考えるので、その心構えを、決して不当でないものは不当でないようにして頂きたいということが強い要望であります。
  93. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それでは藤林委員長にお尋ねいたしますが、私調停委員長の御苦労の存したところはだんだんよくわかるわけです。殊にお言葉のほかに、私自身も同じような仕事を同じような時期にさせて頂いておりましたから、今回の第三次調停に当つてのお心構え、或いは特に調停に入りますときの将来に対する危惧というふうなものはよくわかるのでございますが、それにいたしましても調停をなさいました場合に、少くともこれは労働組合法第十四宋のいうところの労働協約になると、労資双方の少くも権利義務を何らかの形において発生させる、そうしてそれが協約になつて書面に作成されて、両当事者が署名することによつて効力を生ずるものだということ、その点については却つてそういうことをするのは実現を妨げるというふうに御考慮があつたことは十分了承できるのですが、その点について調停委員長としては、どうしても書面に作成して労働協約になり得る性質のものだということは、少くともお考えにならなかつたのだろうかと、こういうふうな点をお聞きいたしたいのですが。
  94. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) 今の御質問誠に御尤もであるのですが、調停委員会態度といたしましては、調停案受諾後の労資双方が公労法第十六条に基く協定を自主的におやりになるということについては、先ほども一言いたしましたように、むしろ調停委員会としてそういうことをなさつて下さることについては妨げはいたしませんし、大いにそう自主的におやり下さることを歓迎も恐らく若しやつて頂ければしたのであろうと思います。併し今度の第三次調停におきましては、先ほど来何回も繰返しましたように、そういうことを調停委員会が希望いたしますことが、調停案を出し、これを双方に受諾して頂くということになるかならんかということを考えますと、どうもそういうことをはつきり申上げて、その希望を文書で書くなり口頭で申上げるなりすることは、調停案受諾ということに至らないという考え方が我々調停委員三人の中に暗黙の中におのずからできており、正直のところ当初はそういう手続上の問題について、そうやかましく調停委員会の中でもこの点を議論したわけではございません。先ほど申上げましたように、労使双方が受諾をされた後、いろいろ御討議なさつた過程で、そういう問題が非常にはつきり現われて参りましたので、我々としてはその問題に対してはこうだということを明確にお答えをするというようなことになりまして、当初は必ずしも調停委員会で十分議論した上でこのような態度とつたというわけではございませんが、併しそれは勿論調停委員会としてはそういうことを申上げると、これは必ずしも調停案受諾に至らないのではないかという気持があり、又そう考えたらばこそでございます。そこで残る問題は、やはりどうも私自身もその点で堀木委員の御質問通り、何か調停者としてはちよつと割切れないものが残つておることは事実でございまして、質問者の気持も十分私にはわかるのでございますが、私の今回やりました調停が事態上どうも調停委員会自体としても割切れないものが残つている調停しかできなかつたということを御了解願います。
  95. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 第二段にお聞きいたしたいのですが、そういたしますと、調停委員会案の実際上の考慮でそうなさつたと思いますが、まあ随分斡旋段階では政府の頑固な態度に第一回でお懲りになつて、私はよくわかるのですが、何か調停委員会としても今後斡旋的な過程で、これが実現を両者の間に立ち、政府との間に立つて、斡旋過程を幾分でもしようというお考えがありましようか、どうですか。
  96. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) この点に関しましては、一度組合も実はいろいろこういう協定書を結びたいということも申入れをしておられまして、私も当局に向つてできるならばその協定を実はして頂いたらどうだろうかという申入れを一度いたしたことがございました。が併しまあ率直な話、今日までに至りますとどうも……と申しますのは、この一週間、十日前あたりからも、組合からはやはり私に対してもそういうような努力を希望するような口吻が何回も要請されたのでございますけれども、どうも私はここ一週間、十日以内には補正予算も政府部内においてはつきりするという時期に来ておるのに、どうも出しました調停案の趣旨そのものが繰返して申しましたような趣旨でございますので、私が非常に強く組合の要望を入れて、十六条協定ということもこれはどうも私としても当局が率直自分でやろうとおつしやる場合は別でございますけれども、そうでないのに私のほうから率直にこういうことを申上げるのはどうか。従つて十六条協定ではないが、もう少しそれから外れた、多少外れた意味でまあ協定をなさるというようなことならば、それはできるだけおきめになつたらどうか、それさえも併しまあ補正予算もきまるようだからというので、私自身も余りこの問題について斡旋の労をさほど熱心に実はとらなかつたのです。
  97. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それはお憤りになつたから……。
  98. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) いや憤つたためじやないのです。
  99. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それとも当局が非常に頑迷だから、これはもう斡旋しても効力がないと、こういうお考えなんですか。
  100. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) いやそうじやございませんので、今申しましたように、私は、出しました今度の調停案の作成者としては、その立場上余り強くこれを当局にも言いかねるという面があるから、余り私のほうが積極的でないのであります。決して当局の態度が怪しからんというのではございません。
  101. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 もう一つ委員長に……、調停委員長にもう一つだけお聞きしたいのですが、今度の一万八百二十四円は、先ほどの公ないろいろな諸般の情勢を考慮されたということから、合理的に物価の趨勢なり、他の鉱工業賃金なり、その他の状況というふうなもの、国鉄の裁定も加わるでしようが、まあお出しなつたときに必ずしも合理的でないかも知れないと、併し実際的な両者の受諾というものを予想しつつ、まあ理窟の立つ程度、幾分下目におきめになつた、如何にも政策的に下目にきめられたということではないと思いますが、実際上の問題を御考慮なすつたのだから、当局も呑み易いようにとお考えなつた以上は、或る程度下目のものにおきめになつた。こう考えていいでしようか。先ほどの御説明を伺つておると、そういう点が幾分窺えるような気がします。
  102. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) 今の御質問は、実はそうではないのでございまして、今日まあ人事院の勧告が、私が弾きましたそろばんよりも値が高いようでございますが、これは今の御質問はそれとの関係はないと思いますけれども、序でに一言申さして頂きますと、どうもこれは弾いた時期が違い、材料が違いますので、違うのは当り前だと思いますが、で、御質問の御趣旨にお答えする点では、私は決して現実可能性を見越したから、一応理想的な数字を弾いてみたが、それを割引いて一万八百余円にしたのかというと、これは決してそうではございません。一つできるだけやります。現在の給与状況、これがきめられた時期、そのあとの物価、生計費の値上り、一般給与水準の変化というようなものも考慮いたしますと、どうもこういうところに落着く。勿論数字はいろいろに出て参りましたけれども、まあこの数字をとるのが妥当じやないか、決して値引きをする意味でこの数字をとつたわけじやございません。
  103. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それじやもう一言聞きますが、そうすると最近の情勢、とつた時期によつてはもつと高くなり得る、こういうお考えでございますか。
  104. 藤林敬三

    ○参考人(藤林敬三君) ええそうです。調停案を出しました時期以外は、今日若し弾くとすれば、同じ数字を弾くとしても或いはもう少し高くなつたかもしれない。だからその意味におきましては、人事院の勧告がなされた場合に、その差額は当然あり得るだろうと私も考えております。
  105. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 今度一つ国鉄当局側にお聞きしますが、公労法第十六条を非常に御心配になるようなんだが、国有鉄道が大体において何を御心配なさるのだろう、結局労働問題は労使が対等だという基本原則ですね、これをお忘れになつているのじやないか。何か労働条件をきめるのに、恩恵的に国鉄当局のほうを考えられている、そういうものじやないという立場に立てば、政府がどう考えていようが、ああ考えていようが、それは日本国有鉄道法の編成の手続ですね、編成上のあなたのほうの手続なり、大蔵大臣のほうの予算編成権なり、そういうものとのいろいろの考慮はあるでしようが、それでなければ何が支障なんだろう。調停案が出て、それを先ほど組合法の十四条に基いて申上げたが、当然そういうふうなお考えが浮ぶので、実はその協約をお作りにならないという理由がわからないのですが、どこにあるのでございましようか。
  106. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 今の御質問の趣旨がちよつとわかりにくいところもあるのですが、別段そう左顧右眄というふうにも考えておりませんが、今回の調停、お受けした調停の趣旨そのものから、先ほどお話がありましたように、十六条の協約を前提としての調停ではないのであります。自主的にそうやれば別だというお話でありますが、まあそこまで行くと私どもとしてはちよつと困るというふうな私ども考え方から出ているわけなんです。
  107. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 重ねてお聞きしますが、どうも調停案を受諾するのはいいのだが、自主的に協約を作るとおかしいと、協約を作るのはおかしいと、そういう考え方はどこから出て来るのですか。およそ労働問題をお扱いになつて、そういう考え方が出て来そうなはずがないと思うのですが。
  108. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 結局国有鉄道の運営というものは、やはり国の政府方針の枠の中に入つて参るわけでありますし、その政府方針にこれは附いて行かざるを得ない面も当然あるわけなんです。
  109. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 そうすると、重ねてお聞きしますが、政府の御方針があるから協約ができないのでございますか。
  110. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 協約の内容の問題でありまして、それだけの予算支出を契約するということは、やはり或いは国の財政なり、全体を睨んだ枠の中でやはり問題になり得ると思います。
  111. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 それでは重ねてお尋ねしますが、予算の制約があるということは、あなたのほうの予算を編成されるときから、すでに政府から何らかの方針が示されておるから、それによつて制約を受けるのでしようか。
  112. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) その点が先ほどからも問題になつておりますように、国有鉄道としての自主性の私は問題になるのじやないかと思います。
  113. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 自主性が……、だからよくわからないのですが、そうすると、一体どこに制約があるのか。あなたのほうでまあとにかく何らかの方針があるとすれば、独立採算制の問題であると思うのですね、そうすると、調停案をお受けになれば、予算上はどうも困るのだというような点はあるだろうが、それ以外にはもう調停案を受諾なすつたときに、もうきまつているはずのもので、何が考慮にあるのか、はつきりしません。
  114. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 調停案の受諾の内容は、先ほど申しましたように、この予算措置を講ずることに全力を上げるという意味なんでありまして、今お話のございましたように、先ほど大臣からもお話がございましたように、結局今年のこれだけのベースアップに対する財源というものは大きな財源の手当てというものが表裏になつてできるわけでありまして、その点を鉄道だけで大きく先ず呑込んでしまうというようなことは私は到底できない問題だと思います。
  115. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 天坊さんが呑込めるか呑込むことができないか、そんなことはどうでもいいのですが、法律の話なんで、要するにあなたのほうでは高い品物を、物価が上つた政府の物価政策が悪るかつた、物価が上つたがレールは買わなければならない、だけれどこれは予算編成の都合でどうもそれがきまらないと買えるか買えないというのがわからない、御躊躇なさるはずがないのです。今買つておられるんだから予算に組まれたものの三割以上高いものを……。だからそれと同じこつちやないですか、調停案を御受諾なさるという以上は労働賃金がそれだけ上つたんだから、上つたんだからどうしたつてそれは対価として払わなければならん、こういうので、ちよつとも違わないので、予算上考慮なさるところはそれだけだ、その点について賃金だけそういうものが考えられるということがわからないのですね。
  116. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) 法律上十六条の契約ができないということを申上げておるのじやなくて、それをするためにはいろいろそういうことを政治上の問題を勘案しなければならない、それを勘案した結果がいわゆる十六条による協定はいたしにくい。
  117. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 同じ方向だけから言いましてもお答えになりませんから、今度は逆な方向から行きますが、協約を結ばれて、そうしてそれが政府の意向によつて履行できないか、できるかということは別問題であります。更に国会がそれを履行するかしないかということも履行し得るような条件を与えるかどうかということはあなたのほうの責任じやないのです。要するに国鉄という公共企業体の経営者としてきめられればいいじやないか、でそういうことは別問題だとすれば、少くとも協約をお結びになるのが本当じやないか。
  118. 天坊裕彦

    ○参考人(天坊裕彦君) まあその点堀木さんと見解が若干違うようでありますが、私どもとしては協約を結ばないでこういう恰好で努力するという方法でも結果が何とかなればいい、又そのほうが結果がいい方向に行くんだという意見の違いのようであります。
  119. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 意見に持つて行かれると困るのですが、あなたのほうは協約を結ばないほうがいい結果ができるんだというお話なんで、私は結果がいい結果が出るか出ないかは別なんで、調停案を受諾されたらそれは受諾して労働協約の対象にならないというものは労働法規からは一つも出て来ないのです。だから受諾されたら進んでそうなさるほうがいい、政治論から言えば賃金の額についても妥当だし、そうして従事員諸君がそれによつて平和裡に解決しようとして努力した組合の姿がとかく正常な状態から離れるときの姿、それを考えたらそういう問題は非常に酷だと私は政治問題としては考える。併し大蔵当局の事務当局とのたださえ削りたい、何でも削ればいいという大臣以下大蔵省の性格と、そういうものと交渉なさるのに、そういう協約がないほうが便利だというお考えが僕にはわからないのです。これ以上は何ですが、労働省のほうは笑つておられますが、実は労働省のほうは共同の責任がある、どうも委員長を抜きにして申訳ありませんが、時間を急がれておりますので……。労働省は一体労働条件についてそういうものが出たときにどうお考えになるか、労働関係法規の解釈については労働省が主管官庁なんです。そうすれば今日私が労働大臣の来ていないのは怪しからんと申したのは、これは運輸大臣だけが心配する問題じやない。閣内において労働大臣自身が本当に民主的に日本を作ろうとし、労働者福祉を図ろうとすれば労働大臣自身が実は運輸大臣に率先して考えなければいけない問題だ。でそういう点について実は政務次官にお聞きしたい。労働省としてはどうお考えになるか、法律解釈一点、それから政治的にこれをどう解決されるかという態度二点、これだけをお聞きします。
  120. 山村新治郎

    説明員(山村新治郎君) 大臣がおりませんで不敏なものでございますが、大臣責任においてお答えします。労働省といたしましては、本問題の解決につきましては、やはり公労法の精神に則りまして、一日も早く特に労働者福祉のためにこの中央調停委員会を中心にしまして解決されんことを望んで止まないのでございます。ただ労働省が確かに労働者自身の福祉のためにもその実現を積極的にいたすべきことは当然ではございますが、必ずしも公労法の精神から言つてこの調停そのものに果して積極的に乗出すことがいいかどうかということについては、いささか議論のあるところだろうと思うのでありますが、併し飽くまでもこの当事者の自主的の解決に待つと申しましても、何といつても問題は予算の問題になつて参りますので、これはすでに運輸大臣先ほど大蔵省とも相当の御努力を続けられておる点についてのお話がございましたが、労働省といたしましても側面的な、むしろ運輸大臣より一つ率先してやるつもりでございますが、ただ私個人的の見解でございますが、どうも調停委員長さんの御意見について、組合側も国鉄側も、又運輸大臣も御承諾なさつておることについて実現できないという点は或いはこの正式な何と申しましようか、実際はもう解決の緒が見出しておるような感じをいたすのでございますが、一応労働省といたしましては、労働者福祉のために一日も早く公労法の精神に則つて解決あらんことを希望いたしております。
  121. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 事務的の解釈は賀来君から私は聞きます。今は政治的な僕は御解釈だと思う。
  122. 賀来才二郎

    説明員賀来才二郎君) この調停案が出まして、労使双方からの回答書が出ましたときに、これは堀木委員からの御指摘のように、我々といたしましては無関係ではございません。これが一体双方受諾というけれども、この受諾という内容は、或いは形式、特に法律上の解釈はどういうふうになるのか、これをはつきりいたしておきませんと、仲裁委員会に行くべきものかどうか、行くとすれば如何なる手続をとるべきかということが問題になりますので、非常に我々はこの結末取扱につついては注意をいたしておつたのであります、ところが先ほど委員長並びに労使双方のお考えが述べられましたが、結局今度の調停案につきましては、事実上或いは政治上の考慮からいたしまして、事実上ではこれは双方納得したので、一応この問題が解決をしたという取扱にいたしたい、併しながら組合法十四条によるような協約或いは公労法十六条によるような協約の形はとらずに行きたいという御意向がありましたので、それ自体違法とは考えませんから、我々はこの委員会の御決定に従つて今日まで様子を見て参つたというのが実情でございます。
  123. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 どうも賀来君は公労法の十六条の解釈を、自分のほうと政府の見解と違つたものだから非常に法律の解釈については御慎重なんだろうと思う。まあ労働大臣政府からお叱りを受けるようなこともお困りだろうと思つて立場は同情するのですが、政務次官がお答えになるなら法律解釈としてお答え願いたいと思うのですが、ともかくも労使双方の関係というものは違法でないことは確かです。併し大体この労働組合法なり公共企業体労働関係法なんかをお作りになるときに、調停なり仲裁なりというものができた場合には、それが労働組合法の十四條以下の協約になる関係において作られるのであつて、一方が恩恵的にどうだこうだということの問題でありようがない。斡旋ならばそれは考えられる、斡旋ならば……。或いは調停のうちに斡旋を織り込みつつなさつて行くならばそれもわかる。これは実情労働問題というのは生き物ですから、そういうことがあり得ると思う。そういう点であなたのほうの御解釈というものが、一体この労働組合法なり、労働関係調整法なり、公共企業体労働関係法なりで、出て来たものが、それによつたものが債権債務を何ら法律上の効果を生じない、そうして協約の対象にならないものが出て来ておる。それで済んだとお考えになるかどうか。これは法律論をしますと非常に細かくなりますから、そこまで行きませんが、殊に賀来君にお気の毒だからしませんが、その点について少くともはつきりおさせになつたほうがいい。そういう点では恐らく協約の対象にならない調停と仲裁はあり得ない。双方受諾したら仲裁と同じ効力を生ずる、これは明らかです。だから双方受諾したら仲裁と同じ効力を発する。同じ効力を生じたものは労働協約ができなくても協約と同じ性格なんです、本当は…。そういうところまで入つて行けば別ですが、ここで法律論はいたしませんが、その問題について重ねてどちらでもいいですから、余り答弁が不十分ですと、なお御質問をいたします。
  124. 山村新治郎

    説明員(山村新治郎君) 望ましいとは法律上の問題で以てきまりをつけることが望ましいことでございますが、併し政治上、事実上の問題がございまして、いわゆる調停案には含みがございますので、その間に問題があるのじやないかと思います。
  125. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 さつきから非常に今度はこの労働委員会委員長は法の不備を言われますが、法の不備より私には実際において運用する人が正常な頭であるかどうか、つまり何らかの誠意があつて解釈を行われるかどうか……これは明らかなんです。併しその法律論をやりますと長くなりますが、少くとも公共企業体労働関係法にいうところの調停については、両者が承諾した場合にはこれは仲裁と同じです。そうすると組合法によつてこれは業者を拘束する、これはもう明らかです。だから法の不備じやない、少くとも公共企業体労働関係法に基いてやられている以上はこれは法の不備でありません。私はその点法律上の効果を生ずべきものと思います。ただ生物だから実際において協約は延ばしておいたほうがいいという場合はあり得る、併しこの場合は僕にはそれは考えられない。こういう考え方なんですが、そういう公労法の十六条を曲げて御解釈になる政府の下において、正常に解釈した賀来君が怒られるような状態の下において、この問題を御解釈になると違つて来るのじやないかと思いますが、なおこの問題は別に委員会があるそうですから、今度更に質問をいたすときに譲りましよう。  最後に一点だけ運輸大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、御誠意のほどはお披瀝になつてここでお考えになつておられるのですが、実はなかなか運輸大臣労働大臣も非常に政治上の堪能なかたなんでして、委員会を何されることは非常に御答弁がうまいのですが、実は結局誠意の問題は数字に出て来るわけなんです。先ほどちよつと国鉄当局あたりの人に申上げましたのですが、ほかのものを買うときには高いものを現在買つておられるのです。今、二十六年度の予算単価をお見込みになつたものより三割以上高い、特に七割も八割も高いものがあり得る、こういう状態なんです。これは既定の計画を遂行すれば予算が不足することは明らかなんです。ところが人間の問題になりますと、とかく労働価値が物価が上つたにつれて変動して来たものについては釘付になるのですが、こつちの建設政策はしなくちやならない、こつちの改良政策はしなくちやならない、だから労働者の賃金はあとになるのだ、これが従来の行き方なんです。運賃値上の問題について片つ方収入増については運賃値上について御考慮がある、それはもう確かにそうです。これは大きな物価政策の問題ですが、而もその物価政策というものは非常に物価が上つておる、自然のままに上げられておる、非常に上つた。その間従事員は常にこの差額について悩まなければならない。結局御誠意のほどがあるかないかという問題はどこに行くかといいますと、ほかの既定計画から削つて運賃値上げを他の物価政策との関連をとどめられてもお出しになるかどうかという、こういう問題が実は誠意の尺度だと思うのです。無論この問題については組合法、労働関係法規関係として、労働省は私は運輸大臣と同様に責任があると思いますが、と同時に片つぽう日本国有鉄道法を管理されておる大臣として、そこまで踏込んで万難を排して、場合によれば全体として予算の枠が認められなくても、この問題だけは優先的に第一に取上げて解決してやろうというお考えがあるのかどうか。ほかの問題よりも真つ先に優先して解決しようという、プライオリテイを一番重きを置いて御解決をなさろうとするのかどうか。この問題が私は一番御誠意のほどの尺度になるものであるというふうに考えるのであります。無論政治的な考慮からこれを御解決願うほうがいいというふうな問題については、これは政治上の御先輩であるから、私より重々御承知のことだろうと思います。今申上げました他の経費に優先して解決せんとする御意思があるや否や、一つ運輸大臣としてはつきりその点をお答えを願いたい。
  126. 山崎猛

    国務大臣(山崎猛君) お話を伺つてつたのでありますが、私にははつきり御趣意の徹底しない点があるのであります。御指摘のように資材が三割値上げになつてもやはり三割の品物を買つておるじやないか。その場合にはその資材の量が減るということが当然伴つて来ると思うのであります。限りある財源、資金を以て三割上つたものを買う場合には、資材の量が減つて来ると、こう思うのであります。これは人事の場合には言われることができないと思いますことは、給与を上げたからといつて人間を減らすことはできないのでありますから、どうしても人間の場合においては物価上昇に伴う給与の改訂をするときには人数は減らさずにそれだけ余計に金を持つて来なければ、それはできないということになろうかとお話を承わりつつ考えたのであります。併しれは必ずしも揚足をとるような意味言つたのではありません。申上げるのではありませんが、そう感じたのであります。ところでこの人件費を上げるということはこれは申上げるまでもなく優先的にということは財源の関係上、実情許すや否やが根本の問題であると考えますけれども、人件費、給与の改訂をして行くということは若し優先的といつてそれを一つ選ぶわけには参りませんけれども、重要度を比較する場合においては最も重要に考うべきものの一つである、こう考えておるということを申上げてよろしいと思うのであります。
  127. 堀木鎌三

    堀木鎌三君 もう余ほど時間が切れましたからもうやめますが、この資材のほうは安いときに買つた持越しがありますとか、事業計画を国会の議決を経た予算の通りになさらないで打切る。こういう点があるので、先ほども私は計画を御施行なさろうとすればと、こう言つて加えて置いたのですが、ただ問題は他の重要な政策と併せて考慮するというおつしやり方のうちに、要するにいつでも他の経費と睨み合せてということが起つて来るわけなのです。人間の問題、人間をどう使うかということが先ず何よりも大切なので、物より人間が尊重されないわけはないと私は思つております。政治の問題として人間があとになるということも考えられないのですが、要するにどこまで優先するか、これは国家全体から見ましても、敗戦下の日本経済として制約はあるが、併し人間を優先するのか、物を優先するのか、或いは計画的事業を優先するのかというふうなことになつて来ますと、そこに非常に今の政府としてのやり方に私どもとしては納得行かない。で、この点につきましては非常な私は運輸大臣としてはお骨折りを願わなければならん。又職席上おやりになりますことが当然だと思いますので、是非いつもの従来我々が政府の各方面から承わつていますように、ただほかの重要度の一つとして考えますというふうなお考えだけでなしに、是非この問題を実現して、平和裡に国有鉄道がうまく運営される。のみならず国有鉄道だけのなんではないと存じますので、……労働組合としては、現在の物価の趨勢から見れば低くても一応法に従つてこれを守ろうと決、心する程度まで悲壮な決心を持つておるなら、当然お考えを願えるものだとこう考えるので、特にお願いしておきます。
  128. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 一応終了しますが、時間も相当遅くなりましたので、あとの委員の御意見なり、或いは御質疑もあると存じますが、次回に廻して、本日の質疑はこの程度で打切つたらどうかと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 中村正雄

    委員長中村正雄君) では一つ御了承願います。では最後に、一応本日の参考人の意見なり或いは政府側の答弁等を聞いたわけでありますが、本日から大蔵省で予算の具体的な編成にかかつておる、こういう目の前に解決の原因なり、予算編成が控えておる関係上、労働大臣の代理として労働大臣責任答弁なさつた政務次官の言によると、すでに解決はもう見えておるというかうな非常に明るい見通しであるけれども、念のために一応労働委員会としてはこれはハウスと違つて決議する権能は持つておりませんが、本日の各意見、参考人、政府意見等を聞いた上において、労働委員会の申合せ事項としてでも何とかこの調停を円満に解決するように、調停に示された賃金の補正予算を組んでもらいたいということを労働委員会の申合事項として政府に伝達するというふうに持つて行きたいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  130. 中村正雄

    委員長中村正雄君) それではさように決定いたしまして、政府にお願いいたします。
  131. 原虎一

    ○原虎一君 異議はないが 政府にお願いしなくてもいいんじやないの……。僕はもつと政府の誠意を追求したいんですが、この委員会がそうせよと言つて頼む必要はない。
  132. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 今申上げたのは頼むということではなくして、何かこの解決のために補正予算を是非とも組むようにということを要望したら如何ですか。
  133. 原虎一

    ○原虎一君 委員会が、我々がどう解釈するかということならば正しいが、この委員会が或る事項を実施せよということを要望する必要はないと僕は思う。どうあるべきだということを我々が決定することはある。解釈を与えることはいいけれども……。これは僕は委員会として研究を要する問題だと思う。
  134. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 一応今申上げた点について、政府としても大蔵省の……。
  135. 原虎一

    ○原虎一君 立法府の権限としてそんなことを言う必要はない。
  136. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 今申上げた関係は……。
  137. 原虎一

    ○原虎一君 そういうことをやるならばもつとよく審議してやるべきだと思う。実施せよという要望に僕は反対意見を持つている。我々は委員会の権限というものをよく考えなければならない。
  138. 中村正雄

    委員長中村正雄君) ちよつと速記を止めて下さい。    〔速記中止〕
  139. 中村正雄

    委員長中村正雄君) 速記を始めて下さい。では先ほどお願いしました申合せ事項は一応委員長の手許で文章をこしらえまして、政府に申入れをするということで御一任願いますか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 中村正雄

    委員長中村正雄君) じやさよう決定いたします。  では参考人のかた暑いのに御苦労でした。これを以て閉会いたします。    午後三時五十三分散会  出席者は左の通り。    委員長     中村 正雄君    理事            原  虎一君            波多野林一君    委員            宮田 重文君            赤松 常子君            椿  繁夫君            岩男 仁藏君            堀木 鎌三君            堀  眞琴君   国務大臣    運 輸 大 臣 山崎  猛君    労 働 大 臣 保利  茂君   事務局側    常任委員会専門    員       磯部  巖君    常任委員会専門    員       高戸義太郎君   説明員    労働政務次官  山村新治郎君    労働省労政局長 賀来才二郎君   参考人    日本国有鉄道中    央調停委員会委    員長      藤林 敬三君    日本国有鉄道労    働組合中央執行    委員長     寺山 源助君    日本国有鉄道運   輸総局総支配人  天坊 裕彦君