○三輪貞治君 私は只今の岩間君の非常に派手な
講和論議の後塵を拝しまして、地味ではありまするけれども、(「余計なことを言うな」と呼ぶ者あり)
国民の非常な関心事でありまするところの災害対策に関しまして、
日本社会党を代表いたしまして、農林、建設、大蔵の各大臣、及び地方自治庁長官に対しまして
質問を試みたいと思います。
ややもすると目睫の間に迫
つておりまする
講和の問題のみに目を奪われまして、足下の問題を見逃し、或いは軽視する傾向なきにしもあらずでありまするが、我が党におきましては、差迫
つておりまする公務員のべース・アツプの問題、或いはインフレ傾向の激化に伴う物価高に対する対策、労働対策、台風期を控えての対策、これに伴う補正予算の問題等を審議すべき必要を認めまして、臨時
国会の要請をいたし、
従つて当
国会の会期が一週間以上なければならぬことを強調したのでありましたが、時日がないとの理由で、
講和全権承認にとどまる
国会のみに限定され、会期も僅かに三日間と
決定されましたことは、誠に遺憾の極みであります。
さて、今年も又例年の台風季節が訪れて参りました。第一陣の台風ケイトは、すでに六月末九州南部に上陸をいたしまして、南九州と四国、近畿の各地方を襲いまして、死傷者、家屋倒壊、田畑の流失冠水、その他の損害を莫大に與えたのであります。今年も又自然の暴威の前に
我が国の後進性と
政治の貧困を露呈することをば恐れ且つ憤る者は、本員一人でないと思います。台風は
我が国の地理的宿命とも申すべきものでありましようけれども、これは地震などに比べまして、発生地、強度その進路等が大体予知することが可能であり、又、毎年且つ同じような時期に定期的に来襲することまでわか
つておるのであります。それにもかかわらず、年々歳々依然たる惨害と損失を繰返しておるということは、誠に文化国家の名に恥じる情ない話であります。本年もこれから続いて台風の後陣が来襲することが予想されまするが、この災害対策というものは、昨年に比しまして旧態依然として何ら見るべき進歩を示していないと思われるのであります。国庫の支出の額、即ち
政府の腰の入れ方が、その年の、或いはその後の災害の発生に大きな
関係を持つことを考えますると、うたた寒心に堪えないものがあるのであります。農林公報の第三十四号によ
つて見ますると、これは河川改修工事と氾濫面積の相関
関係を調べているのでありまするが、これによりますると、満州事変が始まりました
昭和八年以来、年を逐
つて工事費が減少をいたしまして、それに応じて反比例し、氾濫面積が増加をしておるという数字があるのであります。
昭和二十四年の調査でありまするが、最近十カ年平均の氾濫面積は、年二十五万六千町歩でありまするが、最近における五カ年平均は三十六万八千町歩と激増いたしまして、工事費の減少、即ち
政府の関心の底下が、てきめんに氾濫面積の増大と
従つてその災害の増加とな
つて現われていることをば発表しているのであります。
そこで建設省が六月末発表いたしました建設白書によ
つて見まするというと、
昭和二十二年より二十五年までの河川災害復旧の進行状況は、二十三年災害に対しまして五一%、二十四年災害に対しまして三八%、二十三年災害に対しましては実に一二%の復旧状況に相成
つておるに過ぎないのであります。台風の災害の中で最大なるものは、これに伴
つている豪雨による洪水でありまするが、河川の復旧状況にして右のごとき遅々たる状況であるとしまするならば、台風季節を目前にいたしまして、誠に心細い限りであるわけであります。建設大臣におかれましては、果してかくのごとき復旧状態で台風期を迎えまして、なお且つ荒廃せる国土を保全し、尊い人命と産業を守るに万全なりというお考えであるかどうか。又、若し然らずとするならば、現在進行中と思われまするところの補正予算或いは来年度予算編成に当
つて如何なる
構想で御折衝を進めておるか。これはお茶濁しでなしに、詳細且つ具体的に親切に御
説明を願いたいと思います。この点に関しましては大蔵大臣の御所見も併せてお伺いしたいと思います。
なお、洪水の害を防ぎますところの最も有効な方法は、合理的治水工事と、それによるところの水の統制にあると考えられます。よく人口に膾炙されておりまする有名な
アメリカのTVAの気象管理について、安芸博士の述べておられるところをば見ますると、テネシー河の流域は天然資源に富み、人口も多い所であるが、洪水がしばしば繰返され、土地はすつかり荒れ果てて、よい土地を待ちながら食糧さえ移入しなければならなかつた。そこでTVA即ちテネシー河河域公社が設立され、多数のダムが作られて、河は運河となり、大水力発電が行われるように
なつた。一九四二年の冬に上流地方に大豪雨が襲つたけれども、以前は間違いなく大洪水になるところであるが、この河の集水地域には数百カ所に及ぶ雨量観測所があ
つて、そこから樵夫、農夫或いは商人によ
つて、電話、ラジオで雨量が刻々通報され、又全地域に設けられた数百カ所の水位観測所からも、そこの水位がTVAの予報課長の下に通報される。それらの通報が技術者の手で総合され、いつ、この河のどこで、水位がどれくらいに上るかが判断をされた。この確かな判断に基いて、TVA中央調整所が各支流ダムに指令することによ
つて、組織的水位予報と水の統制下に洪水が防がれ、而もこの水の大部分があとにな
つて水力発電に使われた。かようにあるのであります。このように国の予算を思い切
つて計画的な国土計画の下に治水工事に廻されるならば、どんなに狭小である
日本の国土が豊かなものになるであろうかと考えられるのであります。私はこの際、建設大臣の包蔵される国土計画の大綱と、この計画に基いて着々これをば実現せんとする熱意のほどを伺いたいと思います。
次にお伺いいたしたいことは、台風といい、豪雨といい、全国的な問題ではありまするけれども、地域的にその頻度と災害状況に著しい差があることは、皆さん御
承知のところであります。年々歳々甚大なる被害をこうむる府県にとりましては、全く年と共に痩せ細
つて行く状態でありまして、地方財政はために非常に逼迫をし、その復旧に追われて、積極的施策の遂行は止むなく等閑に付される状況であります。一例を申上げまするならば、一年の予算が僅かに三十億か四十億の府県にいたしまして、その年々の災害は百五十億に上るという府県もあるわけであります。又十年に一回もそのような災害をこうむらないところの地方さえあるわけでありまして、その頻度と災害の状況は誠にまちまちであるわけであります。そこで、そのようなたびたび災害をこうむる地方におきましては、被害者は一種の宿命観に階
つております。この災禍をば再び招かないための積極的な防衛策に挺身協力する気力と社会性をも喪失するがごとき状態を間間散見するのであります。而も毎年これを繰返しておるわけでありまして、このことは、延いては非科学的にして而も無気力な宿命観と社会意識の欠如を招来いたじまして、このような状態の中に溌剌たる
政治の伸張を見ることはできないことは、皆さんよく御
承知のところであります。これは近代的な文化国家として一大恥辱と言わなければなりません。
そこで、これらの地方に対しまして、全国一律の考え方でなしに、特別な立法措置でも講じて、これに基いて災害復旧費或いは進んで防災施設費を支出する等の措置をすることが絶対に必要であると思われるわけであります。又現案におきましても、そのような計画と運動を起しておる地方もあるかのように
承知いたしておりまするが、建設大臣は、このような特別に災害をこうむる地方に対する特別立法の問題に対しまして、如何ようにお考えになりまするか。又この問題は最古大蔵省と
関係が深いのでございまして、聞くところによりますると、大蔵省がそういつた立法の障害にな
つておるということも聞いておるのでありまするから、この際大蔵大臣の御所見も併せて承わりたいと思います。
次に農林大臣にお伺いいたしまするしが、現在におきましては、全国的に長期に亘りまして降雨がなくて、旱魃の被害さえ見られておるのでありまするけれども、今年二月以降六月末に至る期間におきましては、全国各地に不連続線が発生いたしまして、ケイトその他の台風となり、異常な豪雨をもたらし、水害は各地に発生して、河川の氾濫、堤防の決壊、道路、水路、橋梁等の流失、耕地の埋没等、農林
関係の施設並びに農作物に対する被害は甚大なものでありまするが、これに対する災害復旧と農作物に対する災害補償の実績をお伺いしたいと思います。
なお、この際、このたびの水害に見られる特徴は、あたかも水稻の植付け直後でありましたために、耕土の流失が甚しくて、応急に原形に復旧して、植付けは何とか間に合わしたけれども、長年に亘るところの生産力の減退と、よ
つて来たるところの收穫の減少は、蔽おうべくもない事実とな
つて現われることは必定であります。農林大臣におかれましては、このような土地の生産力を保全するために、国がこれらの生産力を
保障するために、何らかり立法的な措置、例えば
アメリカにおける土地保全法のごとき、或いはこれは新らしい考え方でありましようけれども、共済制度を耕地にまで拡張するといつたような、抜本塞源的な対策の用意ありや否やをお伺いいたしたいと思います。
次に時間がありませんから一々数字を挙げませんが、農林省
関係の耕地災害復旧のうち、過年度災害の多くの部分は復旧が未解決のまま残されておるという事実は、全国各都道府県或いは市町村の怨嗟の声にな
つております。末端農家におきましては、非常に緊急を要しまするから、国の補助がなくても、借金をしてでもこれを応急にやるのであります。ところがこの危険率の多い、而も当てにならない、利益の低い農業という企業に対しましては、金融の途は全く閉ざされており、而も高利が待ちかまえておるのであります。さような状態におきましては、非常に経営的に成り立
つておらないところの農家の経営は、赤字を累積せしめるという現実が現われております。この過年度の災害の復旧促進と新規災害の速かなる復旧こそは最も契緊のことと思われるのでありまするが、この点、農林大臣の御所見を承わりたいと思います。なお、併せて災害復旧の融資と拡大と手続の簡素化、非補助災害の復旧に関する融資の便法等、具体的にお述べ願いたいと思いま
次に、農作物の災害に対しましては農業災害補償法が適用されておりまして、農家の災害をできるだけ少く食い止めることに相成
つておりまするけれども、この制度も永年農家の側から見ますと多くの欠階と不満があるわけであります。何よりの問題は、支給される保険金が実際に受けた災害を補償し得ないことであります。これでは仏作
つて魂入れずと言うべきでありまして、実情に即して改善される必要があるわけであります。この点について農林大臣の御意思をお伺いいたします。
次に、近来稀に見る惨害を起しました京都の中和池の決壊の問題についてお伺いいたしたいと思います。私は上京の途路、京都に立ち寄
つて参りまして、その現場をつぶさに見ましたが、梅雨明けを狙
つて突如京都地方を襲いました豪雨は、またたく間に多数の人命を奪い、家屋、田畑等に莫大な損害を與えたのでありますが、なかんずく農林省所有名義にかか
つております平和池の決壊は、約百名の尊い人命を奪いました。更に百四十名余りの重怪傷者を出しました。未だに行方不明が二十一名もある。而も家屋、田畑を流失又は浸水いたしまして、一大惨禍を惹起いたしておるのであります。そもそもこの中和池は、一昨年十一月、農林省の直轄で、而も全国五カ所のモデル・ケースとして、巨額の資金を投じて、近代的土木技術の粋を集めて完成したといわれるのであります。これは
昭和二十二年度の非常にたび重な
つて参りました災害のために、災害を防ぐ、即ち防災の堤防として初めて試みられたものであるのであります。ところがこの池の構築に当りましては、現在被害をこうむ
つております篠村等では、決壊による非常な災害を恐れまして、
反対の運動等も猛烈に行われたようであります。ところがその
反対を押切りまして施行せられたのであります。ところがその防災のための池が前述の
通りの惨害のモデルとなりました。今や地元の人は平和池と呼ばずして魔の池と呼んでいるのは誠に皮肉の至りであります。自然は如何なる粉飾をも認めず、現実を容赦なく我々の前に露呈して深い反省を求めているのであります。工事施行の不完全と管理のサボがその原因であると聞く場合に、私は、工事施行者である農林省の
責任の重大であり、而もこのて種惨禍は
曾つての国電桜木町事件に比て優るとも劣らざる
政府当局の怠慢であると言わな分ればならんのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり)杖とも柱とも頼む父、夫を失いまして、生活の糧である田畑を流され、農具を失い、住むに家なきこれら気の毒な罹災者を
政府は一体どう見るのでありましようか。ここにおきまして、私は今回の災害について
関係当事者の
責任を追及すると共に、この災害の直接的原因が必ずしも天災によるものでなくして、工事施行上の手落とその管理の不十分によると率直に認めますが故に、これらの災害の犠牲者に対しましては国家賠償法の適用を要求するものでありますが、農林大臣は如何にこの
責任をとらんとするのでありますか。併せてその対策もお伺いたします。なお、本件に関しましては、検察当局におきましては、月余に及ぶも決壊の原因発表をなさず、農林省又
責任を回避するがごとき
態度の否めない事実は、誠に遺憾至極であるわけであります。
次に、地方自治庁長官にお伺いいたしたいのでありまするが、現在全国都道府県におきましては、これらの相次ぐ災害に対する復旧工事に多額の費用を要するの結果、或いは地方税法が不適当であるという結果から、財政的困窮状態に階
つておりまして、去る十四日から現在も開かれております全国知事
会議の
協議に現われた
通り、合計五百六十七億円もの地方財政不足額を生じているわけであります。すでにこれに対する国庫
負担並びに平衡交付金の増額、起債の枠増大の要請も申入れられているものと思います。なお、知事
会議は更に無期延期をいたしまして、現在も続行しているという状態でありまするが、場合によ
つては知事
会議においては、公共事業の返上、或いは応急の切抜けのために地方公務員の給與改訂のストツプもこれに籍口して止むを得ないという空気さえ見える状態であります。かくては又この面の地方財政窮乏のしわ寄せが勤労階級の生活の上に重圧とならないとも
保障できない状態であると思います。地方自活庁長官は、この地方財政窮乏を誰よりもよく御
承知のはずでありますから、これに対して如何に処せられんとするのであるか。併せてこれに関して大蔵大臣の御所見も承わりたいと思います。
以上で私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
国務大臣根本龍太郎君
登壇、
拍手〕