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1951-08-20 第11回国会 参議院 文部委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年八月二十日(月曜日)    午前十一時七分開会   —————————————  委員氏名    委員長     堀越 儀郎君    理事      加納 金助君    理事      高田なほ子君    理事      若木 勝藏君    理事      木内キヤウ君            川村 松助君            木村 守江君            工藤 鐵男君            平岡 市三君            大野 幸一君            荒木正三郎君            河崎 ナツ君            和田 博雄君            梅原 眞隆君            高良 とみ君            高橋 道男君            山本 勇造君            櫻内 辰郎君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育及び文化に関する一般調査の件  (水産大学校舎及び敷地問題に関す  る件)  (文化財保護行政に関する件)  (学校事務職員の身分の取扱に関す  る件)  (教科書発行及び指定に関する件) ○連合委員会開会の件 ○証人喚問に関する件   —————————————
  2. 加納金助

    理事加納金助君) それじやこれより本日の会議を開きます。  今日は大橋法務総裁、それから予備隊次長江口見登留君、それから当該天野文部大臣の出席があるはずでございます。只今お見えになつておるのは、江口予備隊次長が出席しておりますから、どうぞ一つ質問のあるかたは御質問を願いたいと思います。
  3. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 警察予備隊庁舎についてお伺いいたしたいと思いますが、二十六年度予算警察予備隊経費として百六十億を組みまして、その中に臨時的経費として四十三億四千万本年度補正予算に計上してあるわけでございますが、あの予算審議の当時にこの臨時的経費四十三億四千万、これで大体警察予備隊庁舎は設置できるんだと、こういう答弁大橋法務総裁からあつたと私記憶しておりますが、お伺いいたしたい点は、この臨時的経費四十三億四千万は勿論装備の関係もあると思いますが、予備隊庁舎の設置にどういうふうにお使いになつたか、それと同時にこの予備隊隊員の入るところの庁舎は今どういう状況にあるか、その点先ず伺いたいと思います。
  4. 江口見登留

    説明員(江口見登留君) お答えいたします。二十六年度の臨時費のうちで、予備隊営舎関係いたしまする施設費と申しますか、営繕費でございますが、営繕費は十七億ばかりございますが、その十七億で二十六年度における予備隊営繕の需要を充たして参るわけでございますが、大体十七億で現状の隊員を収容するには一応それで十分であろうと考えております。但し次から次に古い建物を修繕して入つておりまする関係上、予算外の工事を必要とするものが出て参りまして、一応二十七年に度一文営繕費が要らんかと申しますと、そういうわけには参りませんので、二十七年度におきましては、二十六年度の足らず目をやはり計上さして頂かなければならんと考えております。それから隊員入隊状況と申しますか、現在の収容はどうなつておるかということでございますが、大体非常に窮屈なキヤンプの中に相当無理をして、上下になります寝台に非常に詰めて収容しております関係上、何とか一段ベツドに直すような方法で進みたいとも考えておりますが、今申しますように、何分にも営繕費が不足いたしておりますので、当分は二段ベツドのまま辛抱して頂くほかはなかろうと考えております。営舎設備の古い建物使つておりまして、甚だ快適でないものもあるわけであります。それを理由にやはり辞めて帰る者もかなり今までにはあつたような次第であります。できるだけ落ちついて快適に隊員営舎の中で生活ができるように今後も考えて行きたい、かように考えております。
  5. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 臨時的経費の四十三億四千万の中の十七億が営繕費であるという御答弁を見ますと、一応それで建物が確保できておるという御答弁でございますが、主として旧軍用建物使用しておると思うのでございます。そういうところは比較的問題ないと思いますが、他に教育施設を転用したとかいうような場合、若干昨年の八月に強引に緊急という立場から接収しておるような問題があると思うのでございますが、そういう問題になる建物、そういうものがどのくらいあるか、それを承わりたいと思います。
  6. 江口見登留

    説明員(江口見登留君) 昨年予備隊の発足を非常に急ぎました関係上、新設の営舎ということはとても不可能でありましたので、既設建物を利用するという方針をとつたのであります。お話の通り昔の軍用建物で使えるものをできるだけ修繕して入る、或いは進駐軍が利用しておりまして、後に空いた建物をこちらで借用するというのが建前でございました。一、二の教育施設の競合という問題も起つたことは事実であります。例えば久里浜水産大学との関係、或いはすでに地方公共団体においてその営舎を入手したものでそれを教育施設使つてつたものもございます。併し我々といたしましては、大体当局者との話合は円満に付けて使用いたしたいと考えておるのでありますが、何分にも去年の八、九月の頃には極めて早急にこの仕事をしなければなりません関係上手落があつたものも或いはあるかも知れませんが、それはその後の手続において補正するという方法をとつておる次第であります。
  7. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に伺いたい点は、元の水産講習所、即ち深川越中島にあつたあの建物を、今警察予備隊使用しておるわけでありますが、あれは将来もあの建物は適当な位置であり、適当な規模だと、こういうふうにお考えになつていらつしやるのか、或いはもう少し適当な土地に適当な規模において再建しようというようなお考えでいらつしやるのか、その点承わりたいと思います。
  8. 江口見登留

    説明員(江口見登留君) 久里浜水産大学使つておりました建物予備隊のほうに讓り受けまして、そこに隊員を収容いたし、同時にそこには予備隊学校を併置いたしております。予備隊といたしましては、只今申しましたように、ほかのキヤンプは非常に荒れたものが多うございまして、久里浜と共に一番上等であると申してもいいのではないかと思います。従いまして学校施設で……。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私の伺つておりますのは越中島のことですよ。
  10. 江口見登留

    説明員(江口見登留君) 越中島建物本部部隊のほうと分かれておりまして、本部は元の高等商船学校建物でございます。裏のほうは水産講習所建物であります。昭和二十二年のたしか春に水産大学久里浜に参りまして、そのあと進駐軍が入り接収しておつた建物をたしか十一月頃でありますか、水産講習所建物であつたものをその部分だけを予備隊が使うからという條権の下に日本政府に解除になりましたので、総隊総監部と、それの附属部隊が七、八百ほど入つております。只今久里浜の話をしましたが、久里浜と同様に水産講習所のほうは、これは非常に立派な建物でありますから、予備隊としては最もいい部類に属する建物でありますので、今後もその建物を当分使用さして頂きたい、かように考えております。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 今の御答弁ですと、深川越中島の元の文教施設は当分これを使つて行く方針だ、こういうふうに了承したわけでありますが、然らば私は深川越中島を追われて久里浜の元海軍通信学校の後に入つた水産大学、これが更に警察予備隊の接収するところとなつて教育支障を来たしていることを私視察して来たのでありますが、あなたは久里浜水産大学視察なされたことがございましようか、どうですか、その点を承わりたい。と申しますのは、先ほどの御答弁では、昨年の八月、急であつたの既設建物を利用する立場から教育施設を転用したのもあるが、その後いろいろ円満に話合つて支障のないように努力して来ているというような御答弁がありましたので、あえてお伺いするのでございますが、久里浜水産大学教育施設というものを御視察なつたか、どうか。
  12. 江口見登留

    説明員(江口見登留君) 私は警察予備隊のものでありますので、学校施設視察しておりません。ただ久里浜営舎のほうだけを視察して参つております。その営舎のほうから垣根を越して水産大学を拝見しただけであります。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 公人として水産大学視察されてないのは御尤もでありますが、先ほどあなたの御答弁では、勿論警察予備隊も緊急な問題で重要ですが、さればといつて教育その他の施設が短時日の間に強制的に接収されても困りますから、円満にすべてが行くように努力して来た、今後もその考え方であるという、こういう御発言がありましたので、私は久里浜水産大学を接収された警察予備隊としては、残つた水産大学がどういう事情であるかという点について恐らく視察なされたであろうということを私想像したのでお伺いしたのですが、外から垣根越しに御覧になりましたということですが、  一体どういうふうに想像されていらつしやいますか、伺いたいと思います。
  14. 江口見登留

    説明員(江口見登留君) 水産大学が非常にお困りであるということは私何遍も聞いております。ただ昨年の春ぐらいまでですか、水産大学が現在あります予備隊宿舎違つた敷地西北部で二、三年間学校教育をして来たように私は聞いております。それが非常に手狹になつて、昨年の六、七月頃に、今の予備隊営舎になつておる部分の一部分を仮使用すると申しますか、そういう事情に立至つたのではないかと思います。仮使用して間もなく一、二カ月で予備隊ができるので、又元のところに帰つてくれというので、元の上西北部一隅水産大学が押込められた恰好になりまして、非常に手狹で、我々としましては、二、三年間その恰好教育して来られて手狹になつて、今予備隊になつておる建物を少し使われたのではないかと思いますが、その元の西北部一隅に押込められて、その後どういうふうに教育支障があるかどうかという詳しいことは存じませんが、とにかく建物も狹く、他に適当な土地があればそちらに行きたいから、何とか予備隊のほうでも考えてくれという話もございまして、我々といたしましては、別な敷地を探して莫大な金をかけて予備隊経費から支払うということも非常に切詰めた予算の中で困難でございますので、我々といたしましては希望としましては、文部省のほうで一つ国費を計上されて、適当なその後の措置をおとり下さることを実は希望いたしておる次第でございます。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点非常に僕は認識が不十分だと思うのです。その点は先ず遺憾の意を表明いたします。長くなりますから申上げませんが、文部当局のほうからこの席上で言明をして頂きたいと思うのですが、水産大学深川越中島から更に久里浜海軍通信学校あとに入るに当つては、少くとも二十二年の六月に、国内においては将来これを水産大学に全面的に使わせるということの了解の下に水産大学はあちらに移つておりますし、なお横須賀に駐在されているところの第八軍の責任者もそれを認め、そうして二十五年の六月に初めて完全に移転が終了したわけであつて、今あなたが申されるように、決してこの一部を借りとつたから、それでは不十分で狹いから更に一部を借りたというような状況でなくて、これは関係方面も、それから国内のあらゆる省の打合せによつて使用するという方針でずつと来たのを、昨年の八月の中旬になつて突然模様替されて、それに代るべき対象が与えられていなくて非常に教育支障を来たしておる。この点は警察予備隊に専念されているあなた様としても、この点遺憾に思つておられると思つていましたところが、今のように経過を全く御存じなく、而も水産大学はどういう事情にあるかということについては殆んど同情らしい一念もないやに私は答弁から承わつて非常に遺憾に思うのでございますが、これについては一つ私大橋法務総裁にお伺いいたしたいと思うのでございますが、総裁は先般の二十六年度の本予算審議の際に当つて警察予備隊庁舎というものは大体本年度一応完了するし、更に若木委員から教育施設との問題を質問なつた場合にも、そういうものについては極力解決に努力する、二十六年度の予算で一応解決できるものと考えているというような御答弁があつたわけでございますが、水産大学を接収した久里浜警察予備隊は、まあ一応十分の訓練が行われているかと思うのでございますが、そのかげに水産大学は非常に教育実施上不自由な道を歩いておる、この事態を如何に政治的力を以て解決されようとお考えになつておられるかどうか、総裁の御見解なり、今後に対する、文部省所管ではございますけれども、経過から考えまして、どういうような対策を構想として持つておられるか承わりたいと思います。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お答えを申上げます。水産大学につきましては、従来の完成いたしておりましたる校舎設備を接収せられまして、その結果現在の久里浜移転をせられた。そうして久里浜の現在の校舎手狹であつて、これを拡張する必要があるという状態であります。そしてその一方法として、現在警察予備隊使用いたしておりまする区域を、法律上の手続がどうなつておるかは別といたしまして、ともかく事実上使用しておられるということは事実でございます。これを警察予備隊が改修をいたして現在使用をいたしておるわけであります。このことによりまして、水産大学とされましては非常に教育上障害を感じておられることは御尤もであると考えております。この点につきましては、かねて文部大臣からも再三お話を頂いておりまして、第一の希望といたしましては、現在警察予備隊本部使用いたしておりまするこの越中島建物を何とか返してもらう方法はなかろうか、こういう御相談をしばしば受けております。警察予備隊といたしましては、本部位置越中島が最も適当であるとは決して考えておりません、ただ現状いろいろな建物が、あり合わせがないために使用いたしておるのでございまして、若しいろいろな事情が許されれば、他に適当なところを求めて移転するということが十分に考え得ることである、かように存じます。一方水産大学といたしましては、この位置その他の関係から申しまして、やはり越中島が最も適当である、こう言われます点も十分にわかつておるわけであります。それでできるだけこの御希望に副うように努力をいたしたい、かように考えておるわけでございます。実は今年度の予算ということを、只今お言葉がございましたが、今年度におきましては、建設関係経費を計上いたしてなかつたのでございます。その理由は、昨年度の経費相当使用の残額を生ずる見込みであり、この経費の中から残つたものを今年度に繰越し使用いたしまして、そうして各種の施設を完備いたしたい、こういうふうに考えておつたのでございまするが、この繰越し使用いたしましたる経費のみを以ちましては、警察予備隊全体の施設拡充は到底不可能である、こういうことが朗らかと相成りまして、従いまして二十六年度並びに二十七年度を通じまして、相当額施設整備のための費用を必要とするという事態に相成つたわけであります。この中の一部はすでに補正予算として審議を得るために大蔵省に要求をいたしてあるような次第でございます、で、私どもといたしましては、水産大学のお困りになつておりますることは十分に了解をいたしておるのでございます。成るべく速かな機会に御希望がかなえ得るような措置をとりたい。これがためには文部大臣とも十分に御相談をいたしたいと存じます。成るほど役所の建前から申しまするというと、水産大学につきましては、文部省所管であり、これが拡充に要する経費文部省所管経費として計上して頂くというのが筋道かも知れませんが、併し実際従来の政府部内の予算使用の実例から申しますると、必ずしもそうきちつときまつたものもございません。いろいろ各省間にかような施設の交換というようなことがありまする場合におきましては、双方ない予算を出し合つて目的を達するということも従来からあつたわけでございます。この問題につきましても、文部省と十分に連絡をとりまして、経費の支出に当たりましても、できるだけ警察予備隊といたしましても御協力申上げるという考え方に立つて処理をいたして参りたい、かように存じておるのであります。併しいずれにいたしましても、その経費の問題が先になるわけでございまするので、これに要する経費という具体的な計算はいたしておりませんが、全国におきまする警察予備隊の病舎その他の整備に要する費用といたしまして、今年度この補正予算並びに来年度予算において相当額を計上いたさなければならんような状況でございまするので、この予算の折衝に当りましても、十分に文部省と協力をいたしまして、御趣旨の通るような措置を講じて参りたい、かように念願をいたしておる次第であります。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 只今総裁から深川越中島警察予備隊位置としても建物としても最も適当なものとは考えていないので、いろいろな事情では適当なところを選んで云々というような構想があるという答弁を頂いたわけですが、現在何と言いますか、適当な予定地というものが構想中にあるのでございますか、どうですか。そこまで行つていないんですか、その点一つお伺いしたい。
  18. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今私の申述べましたのは、まだ具体的な構想というわけではございませんので、将来の問題といたしまして、警察予備隊本部の永久的な場所といたしましては、どこが適当であるかということはおのずから考えるべき時期があろうと存じます。その際を予想いたしまして、現在の場所が必ずしも最善場所とは考えていないので、従いまして将来さような機会がありましたならば、その際におきまして最善場所にするということも、これは予備隊庁舎整備の上から申しましても重要な問題の一つである、こういうふうに考えるわけであります。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 大橋法務総裁水産大学の問題並びに予算の問題について二、三お聞きしたいと思う。先ず第一に、この前の委員会におきまして、この問題については是非天野文部大臣並びに大橋法務総裁が同道されて、この水産大学を実際見てもらいたい、どういう実情になつておるか、これは見なければお話にならないという結論に立つておるのでありますが、これは先の委員長が外国に出られる前のことでありましたので、このことは通知しておりませんか、どうか、これを文部当局では御存じでありますか。それから法務総裁はこれを御存じでありますか。当委員会でそういう決定線が出ておるわけでありますが、この点についてそういう事実を御存じですか、お伺いいたしたい。文部大臣如何ですか
  20. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は大橋法務総表と同道してそこを見るということは聞いておりませんです。ただ併し自分は当然見なければならんと思つて、この間そういう計画を立てて局長と行くつもりだつたのが、私が不意の怪我をしたために行けなかつたのですが、同道ということは伺つておりません。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 大橋法務総裁如何ですか。
  22. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私もこの委員会においてそういう御決定があつたということは承知いたしておりません。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 これは当委員会委員長が或いはそういう事務手続をとらなかつたかと思いますが、このことは恐らく確認されておることでございますから、間違いないと思いますので、是非早急にそういう措置をとつて頂きたい。この問題を解決するために一番必要なことはやはり実地に見学されるということであると私は思うわけです。当委員会希望につきまして、それをお果しなさる御所存がありますか、どうか、この点お伺いいたしたいと思います。
  24. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 文部大臣はすでに御視察になる気持のあることを先ほどお述べになりました。さような機会におきまして御連絡を頂きますならば、私も御一緒に参り、十分に実情を拝見いたしたいと思つております。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 実際今私たちも見に参りまして、事態の非常に急迫しておるのに驚いたのです。実は昨年から水産大学のしばしばそういう陳情があつたんです。併しあれほどひどい問題だとは思つていなかつた。それから今年の三月に予算委員会若木委員質問がありましたときに、これは大体みんな解決付ける見通しだ、こういうことを聞きましたので、その後問題が起らなかつたので、もう解決したのかと思つていたんです。ところが七月になりまして、文部委員会を開きますと、大勢の水産大学のかたが見えられまして、以前にも増した陳情をされたので、びつくりして当委員会が発動してこの実情を見に行く、こういう形になつたんです。それで実際御覧頂けば一番いいわけでありますが、私たち驚いたのは、先ず第一に、とにかく校舎の三分の二くらいがとられて片隅に寄せられておる。我々がバスで参りますと、バスの入る校門というものはない、有刺鉄線でできました門で、向うの予備隊の門衛の人が誰の人が誰何するような形で以て、その許可を得なければ入れない、そこから教育環境としては非常にふさわしくないという感じを受けた。中に入つてみて、実際見ますと、その施設、それから旧校舎でありますから、これは学校としては全く問題にならない、こういうふうに思われたわけです。只今江口次長お話では、警察予備隊としては一番上等なところだそうです。警察予備隊はとても立派な近代的な建物で堂々と威容を誇つておる。ところがすぐそばにある水産大学は悲惨な形で、何だか日本の現在の縮図を見るような形で私は胸が詰つた。そうして中に入つて見ますと、とにかく問題にならない。例えばひどいのは便所を改造して化学実験室にしておる。それから生徒寄宿舎でありますが、この寄宿舎を見たのでありますが、ここには何ら寝具、藁ぶとんのような寝台にするようなものがない、而もここにも三百人近くの生徒が合宿しておる、何だか非常に暗い陰惨な、薄暗いところであります。それから更に蔵書なんかも十万冊、これは日本の恐らく水産の文献としては誇るべきものだという話でありますけれども、それが殆んど物置のようなところに、がらんとしたところにしまわれておる。それから今まで水産講習所時代に蓄積された厖大な標本並びに機械があるわけですが、これを全然使用する場所がないわけですから、これは一方に片付けられておる、こういう実態をこれはまざまざと見たのであります。更に驚いたことはテニスコートがとられてしまつて、そうしてテニスコートの跡に、最近新らしい住宅が十幾つか建つて進行中なんです。これは何だというと、これは警察予備隊の幹部の宿舎なんだ、こういう姿、そうして而もそういう形であるからして校庭なんかも今まで演習のために使用されるということがあつたそうで、生徒警察予備隊間の空気が思わしくない。我々が最初に行くと、門に立つている人が、水産学校に行くんですかと言う、我々は水産大学に来たはずだと、こう心中考えざるを得なかつた、そういう感じ方に非常に問題がある。こういう形は我々は非常にまずいと思う。教育環境としては全く悲惨な姿を見たのであります。こういうところは是非とも十分見に行つて頂いて、一刻も早く解決しなければならん。このまま置いたなら、私は大変まずい結果になるということをつくづく感じたものでありますから、これについて是非これは早急に、まあ非常に国務多端のことは考えられますが、早急にこれは解決して頂きたい。殊に水産日本の産業における立場から考えまして、これが日本の唯一の大学だというようなことは何とも私は言い切れたものじやないと思う。今聞きますというと、越中島のほうに何とかこれは明渡して早急に移転するように案を立てたいという話でありますが、私お願いしたいのは、この委員会はまだ継続されるはずでありますけれども、それまでに実は成案を得て、この委員会に示してもらえるかどうかということであります。そこまで事態が非常に急迫しているということについて、大橋法務総裁はどういうお考えを持つておりますか。これに対する解決策をもつと具体的にこの次の委員会あたりまでに、こういう大体の見通しでいいのでありますが、これを示してもらいたい。並びにこれを補正予算でやるか、或いは二十七年度の予算考えられているかということ、できたらこれは補正予算で組まれるのが最もこの事態に対しては必要なんじやないか、こう考えますが、この二点についてお伺いいたしたい。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 誠に御尤もなことでございまして、私どもといたしましても、でき得る限り速かにこの問題を解決いたしたいと、かように念願いたしておる次第でございます。もとより早く具体的な計画を立てて、又これを実現するようにいたしたいと考えております。併し時期がいつになるかということにつきましては、只今申上げる段階になつておりませんから、できるだけ速かにやりたいと思います。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 これは先廻しにはできないと思いますから、できるだけ御覧になつて対策をお願いしたいと思います。  次にこれはこの委員会でやはり決定されておる問題としましては、第三次教育使節団が来たという場合には、これは是非水産大学を見てもらいたい、こういうことを委員会で申合わされておるのであります。これは私は今度の使節団は大学関係のほうを主として来られるということでありますが、これは是非私は必要である。日本教育改革というものにとつて具体的に実情はどうであるか、名前は大学であるけれども、その実態はどうなつている、そうしてそれはどのような原因によつてそういうところまで日本教育というものが追詰められているか、こういう実態を認識してもらうことが必要じやないか、どうもいいところだけを見せて、表通りだけを見せてもらつて日本教育がこんなにできておつたということでは、私たちは真相を把握してもらつて具体的な示唆を受けることはできないということから、第三回の教育使節団が来場合には必ず視察の中に入れてもらいたいということが申合せになつているのでありますが、文相としては、こういう点についてどういうような御努力が頂けるか、どうか。
  28. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は水産大学が現状のようにあるということは、これは実に遺憾千万なことだと思つております。殊にその原因が警察予備隊によつてつているということは、国民感情を悪くする虞れもあり、学生に対する思想的な影響も大きくて実に困つたことだと思つて、できるだけ早くこの問題を解決したいとは思つておりましたが、どうも今日まで延びたということは誠に相済まんことだと私ども思つております。実は本年の二月頃でしたか、ほかによいところがあるということで、どんな無理をしてでもいいから、そこを一つ手に入れてやろうと思つたのですが、そこもうまく行かないという実情で延び延びになつたということは誠に申訳ないと思います。法務総裁とよく御相談いたしまして、早く解決するように努力いたします。  アメリカの教育使節団が来たときに、いいところだけを見せるという意思は私は全然ございません。現に非常に悪いところを見せております。今回も見て頂いて、いいところだけを見せるという考えは毛頭持つておりません。いずれにしても今日まで遷延したということについては非常に相済まんと思つております。今後は努力いたします。
  29. 若木勝藏

    若木勝藏君 東京水産大学の問題については、第九国会において文部委員会においてすでに陳情があつたのです。非常にそのときの写真なども我々が見せられて、教育についてこれは困つたものだ、こういうふうなことから、私は予算委員会においてたしか二回に亘つてこの問題について質問したのであります。その際に先ほど岩間君からも、矢嶋君からもお話があつたように、何とかこれを早急に解決したい、こういうふうな答弁があつたので、私もそう考えておつたのでありますが、一カ年経つている今日、なおこの解決を見ない。更に水産大学のいわゆる教育というものが非常な悲運に遭つているということは、誠に私は当局者の怠慢について、徹底的にこれは究明しなければならない、こういうふうな考えを持つているのであります。その際の御答弁の中に、この水産大学の解決は早急にやりたい、更にその後におけるところの学校施設を接収することがあるか、ないか、こういうことについての質問をしたのでありますが、これはできるだけ避ける、恐らくこういうことがないであろうという答弁をしておるのであります。ところがその後において、私は資料提出をしてもらつて調査したところによりますというと、更にこれははつきり頭にありませんが、広島県の学芸大学以下数校に亘つてやはりこの事実が出ているのであります。こういうようなことになりまするのは、これは警察予備隊というふうなものを置くについての庁舎に対する、庁舎と言いますか、或いは営舎と言いますか、そういうものに対するところの一つの計画も持たないで、そのときにおける間に合せの考え方によるのであると考えるのであります。その当時においては、成るべく元の兵舎のようなところを使うとか、或いはアメリカの占領軍の空いているところのキヤンプを利用するとか、全く計画性を失つている。それが今日こういうふうな実情を生んでいるのであります。従いましてこれにつきましては、いろいろ先からの御答弁はありましたけれども、法務総裁といたしまして、これらの問題に対して一応の計画を持つておられるか、どうか、この点を先ず伺いたいと思うのであります。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) お答えを申し上げます。警察予備隊の創設の際におきましては、御承知のような事情を以ちまして、急速に宿舎を必要といたしましたので、いろいろ現地におきましては無理もあつたと存じます。殊にそれが教育関係施設との間に摩擦を生じましたということは、甚だ遺憾に存じておるのでございます。私どもといたしましては、その後新たにかような位置を選ぶ場合におきましては、かような教育関係施設との摩擦を生じないように留意をいたして参つたのであります。只今御指摘になりました広島県の、恐らく福山市におきまする宿舎の問題ではないかと存じまするが、これは実情を申上げますると、在来の建物の一部を大学が使い、それからなお余裕がありまするので、その残部を警察予備隊が使うということになりまして、現に入つておるわけであります。なお警察予備隊といたしまして、現在の施設だけでは不足いたしまする部分を、なお所属未定になつておりまする建物をこちらへもらいたい、こういうことになりまして、これが同じ部分希望いたしておりまするので、学校との間に奪い合いと申しますか、そういうような形で摩擦を生じたと聞いているのでございます。いずれにいたしましても、さような事態を生ずるということは面白くございません。若し他に適当なものがあれば、予備隊をそのほうへ移動することによりまして、問題を避けるということは十分に考えてよろしいと、こう思つております。
  31. 若木勝藏

    若木勝藏君 私は今伺つたのは、先ず当面の問題もありますけれども、今後において警察予備隊庁舎というもに対する一応の計画を持つておられるかどうか、こういう点だつたのであります。
  32. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 宿舎として、全体どれだけのものが全国で要るかということについては、或る程度の見通しは立てなければならんと思つております。それはあるわけございますが、現実にそれらの必要なる建物を、如何なる土地の如何なる建物によつて充たして行くかということになりますと、現在までのところ、必ずしも一定の計画が立ちがたい状況でございます。と申しまするのは、今後の事態の推移に応じまして、占領軍において不要に帰する建物も或る程度あることと推察をいたしておるのでございますが、併しこれがまだ具体的に如何なる建物が不用になるであろうということについての見通しを得るに至つておりません。従いまして全体として或る程度の建物を要するということは事実でございますが、それを如何なる建物を得ることによつてその計画が実現されるかということについての具体的な点は、只今申上げまする通りまだ十分に立つておらない状況なのでございます。今後恐らくこれらの問題は逐次具体的な解決を得るに至ることと想像いたしております。それと相待ちまして、かような種々な問題も具体的に解決をいたして参るようにいたしたいと、かように考えております。
  33. 若木勝藏

    若木勝藏君 それで大体の今後の御計画は、まあ抽象的ではありまするけれども、私はわかつたのであります。それでは現在教育施設を、つまり営舎のようなものに充当している、そういうのは実際は何カ所くらいあつて、その後において御計画の中においてこの問題は更に早く解決するところの御意思があるか、どうか。この問題をお伺いしたいと思います。
  34. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 教育施設使つている、従来学校の一部であつた建物を現実に現在使つているというものは全国で相当数あろうと思います。併しこれらのすべてがかような問題を生じておるとは考えておりませんので、例えて申上げますると、姫路市におきましても大学建物の一部を使用しております。又都城におきましても学校建物の一部を使用しております。これらの土地におきましては、この問題は円満に解決を見ているのでございまして、これらについてこの機会に将来の移転考えるという必要はないかと思つております。併し只今御指摘のような、具体的に摩擦を生じ、問題を生じておりますものもございまするので、これらにつきましては、成るべく速かに具体的に個々のケースとして処置をいたして参りたい、かように存じております。
  35. 若木勝藏

    若木勝藏君 今のお話で、とにかく水産大学のような非常な摩擦を生じておるというふうな所は余り見えないというようなお話でありましたけれども、併しこの問題先ほど文相からもお話があつた通り、ただ単に建物狹いとか、或いは広いとかということばかりでなしに、非常に教育上、あの青年期の思想上そういうふうな方面に非常に関係があると私は考えるのでありまして、早い機会においてそれらの問題を解決して頂きたい。他に移るなら移るようにして、そういう所の設置はやめてもらいたい。こういうことを要望するものであります。更にこの問題につきまして、私は文部大臣にお伺いしたいのでありますが、先ほどの岩間君に対するところの御答弁で、文部大臣の御意向はよくわかりました。併しそういうところのお考えを持つておられましたならば、なぜ一体この一年の間に一回の御視察もなさらなかつたのか。この点非常に私は遺憾に思うのであります。そうしてそういうような所は、何とかこれは法務総裁とも相談して早く解決したいというところの御意向は私わかりますけれども、そういうような御意向だけでは、すべてこの問題は解決しない。この問題は単に水産大学校舎の問題ばかりでなしに、今までの六・三制の問題につきましても、文相のお気持は私はよくわかります。併しそのお気持だけで我々が要望したように解決したかということを考えて見ますと、我々はそれに対して非常に不満を持つものであります。そういう点からこの問題については、文相といたされましても、早急に一つの手を打つて、そうして解決に乗り出してもらいたい。先ほどもそういうふうな要望がありましたが、私はこの問題を取上げまして、今日まで一カ年間のうちに、こういうような支障があるということに対しては忍び得ない、而もこれは単に教育ということばかりでなしに、日本一つしかないところのこの水産大学が、日本の産業上から見ても、重要な部面にあるこの水産の問題から考えましても、こういう状態に置かれるということは、これは国としても考えなければならん、そういうふうに思うのであります。どうかこの点については早急の一つ決定的な手を打つてもらいたい、こういうように私は考えまして、文相に対する確信のほどを伺いたいと思います。
  36. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はそういう意思を持つているだけでなく、それを実現するためにはいろいろなことをして来ているつもりであります。先ほども申しましたように、いろいろな建物を探したりして、今年の二月頃と思いますが、もうこれで解決できたか思つた。そうしてそのときなどの相談でも非常に金の上でも無理だけれども、何とかして無理でもやろうと言つたけれども、それもできなかつたが、又敷地もいろいろ考えている所もあります。而も御承知のように水産大学でありまするから、どこでもいいということには行かない、そういうようなところから行き悩んでいる次第でございます。けれども、その意思だけでいいのだという考えは私は毛頭抱いておりませんので、微力にして今日まで実現できなかつたということに対しては相済まん、先ほども私が申した通りであります。今後は大橋法務総裁も御一緒に行つて下さるということでありますから、近日一緒に行つて視察もし、又法務総裁の御助力を得て、一日も早くこれが解決できるように考えております。
  37. 木村守江

    ○木村守江君 この際法務総裁にお伺いいたします。法務総裁久里浜警察予備隊庁舎にお出でになつたことがありますか。
  38. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察予備隊に関します限り二回行つております。
  39. 木村守江

    ○木村守江君 久里浜警察予備隊に参りましたときに、警察予備隊のために非常に困つて、片隅に押付けられている水産大学をお見にならなかつたのでしようか。
  40. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは誠に申訳ない次第でございますが、只今まで一度も見ておりません。
  41. 木村守江

    ○木村守江君 私はこういう点非常に遺憾に思うのですが、少くとも一国の法務総裁が、自分の管轄にある警察予備隊のために非常に困つておる状態をすでに御承知であろうと考えるのであります。そういう点から、本当に国務を遂行する国務大臣といたしましたならば、自分の赤誠を抱瀝して学校を訪問して、法務総裁立場を弁明して、生徒、教官等にその意思を通じておつたならば、私は非常に困つておりながら、或る程度の解決ができていたのじやないかという考えを持つのですが、  これに対して御意見を承わりたい。
  42. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 只今になりますと、或いは仰せのような措置をとつておりましたら、よろしかつたと存じます。現在までその点心ずかなかつたことは甚だ申訳ない次第であります。
  43. 木村守江

    ○木村守江君 先ほど江口次長から説明があつたのですが、各地の学校教育施設その他の施設警察予備隊使用する場合には、両者間の円満なる妥結を見て、これを使用しておるというようなお話を拝聴したのでありまして、恐らくは法務総裁においても同様なお考えであろうと考えるのであります。ところがあの久里浜水産大学につきましては、水産大学の教室の窓口からすぐ目の下に見える。本当に家の中まですつかり見える所に警察予備隊の人たちの宿命を建築とております。而もその建築に際しましては、警察予備隊の訓練場にするとかということのために、あの学校のテニス・コートであつた所を警察予備隊が取上げまして、而も今申しました教育環境としては非常に悪い結果をもたらすような宿舎を建築中であるのを私は見て参つたのであります。私はさような点から考えますと、これは非常に今教育環境という問題が大きく取上げられております。そういう点から考えましても、又両者間の円満なる妥結の下に使用しておるということから申上げましても、これは非常な矛盾があり、撞著があるのではないかと考えますが、如何でありましようか。
  44. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 何分学校のお隣りの敷地のことでございますから、学校に悪い影響をするようなものを建てるということは、これは慎まなければならんことである、こう存ずるのでございます。只今仰せられました宿舎につきましても、若し学校からまる見えで悪いというようなことでございましたならば、何らか適当な方法を講ずることによりまして、支障を生じないような措置をとりたいと考えております。
  45. 木村守江

    ○木村守江君 只今お話ですが、実際あそこに行つて見ますと、よくわかりますように、目の下に見えます大体十間か十五間くらいでしよう、離れておるのは……。ああいうところで、家の中まですつかり見えます。授業時間でもちよつと耳をそらせば見えます。ああいう状態にああいうものを作つて、或いは赤い腰巻きを干したり、おしめを干してあるというようないろいろな状態を見て、教育環境としては誠に悪い環境であると考える次第でございます。どうぞその点につきましては、只今のお言葉通り善処せられんことをお願いいたします。それから次に、かようなことを考えて参りますと、これは久里浜警察予備隊宿舎は、あれは永久的にあそこを警察予備隊として使用するというような考え方から、ああいうことをやつておられるのだろうと考えられまするが、その点へ如何でありましようか。
  46. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 用途につきましても、必ずしも現在の用途そのまま引続き使うとは考えておりませんが、警察予備隊といたしましては、現在の建物は永久的に使うという考え使つてつたのです。
  47. 木村守江

    ○木村守江君 そうすると、結局は現在の水産大学のところまで警察予備隊として使いたいというような下心があると考えても差支えありませんか。
  48. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは必ずしも現在の水産大学を追立てて、そこまで手に入れようというようなことは決して考えておりません。ただ現在使つておりまする建物は、これは原則的に警察予備隊で引続き長く使用するようにいたしたい、こう考えております。併しこの警察予備隊内におきまする用途につきましては、なお最後的な決定はいたしておりませんが、多少現在と変つた用途に使う場合もあり得る。その場合におきましては、勿論新らしい用途に従いまして、建物について余裕を生ずるということも志ずしも想像できないことではないかと考えます。
  49. 木村守江

    ○木村守江君 今法務総裁の御答弁ですが、これは非常にむずかしい問題だと思うのですが、実際問題といたしまして、警察予備隊は現在の水産大学の運動場であるところで訓練をやつておる。それからその反対側のすぐ前に宿舎教育環境を害するような、本当に教育環境から申しましたならば傍若無人な建築をやつております。かような観点から考えまして、これは教育環境水産大学としては一日も早くどこかに出て行つてもらいたいというような恰好を押付けておるのではないかと、非常にひがみですが、(「ひがみではない」と呼ぶ者あり)考えざるを得ないのであります。さように考えられるのですが、法務総裁としてはどうですか。
  50. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察予備隊といたしましては、水産大学が隣りにあるから困るということは養えておらないのでありまして従いまして、これをよそへ行つて欲しいということをその点からも考え理由はないわけでございます。又警察予備隊といたしまして使用する建物の範囲は、現在の用途といたしましては、大体現在使用しておる程度で間に合つておるのでございまして、これ以上水産大学使用しておる建物をも是非入れたいということも考えておらないのでございまして、この意味から申しましても、水産大学に何か圧力を加えて目的を達しようというその目的を持ち合わせておらんわけでございます。決してさようなことはないのでございまして、両方とも箇々の敷地を相隣りしております以上は、相寄り相扶けてお互いにそれぞれの目的に十分敷地を活用いたして、そうしてそれがために相手側に迷惑をかけるような用途に用いることはお互いに慎むべきであると、こう考える次第でございます。
  51. 木村守江

    ○木村守江君 只今法務総裁答弁では、警察予備隊には何ら支障がないと申しまするが、勿論警察予備隊はあの立派な建物使つて、あの広い場所を占領しておりまするが故に、警察予備隊には何ら支障がないでしようが、水産大学に困らせるような環境を作つて行くというようなことは、これは直接出て行けと言わなくても、暗に困つてそこにいられないような状態を作ることは、私は追出しの方法ではないかというように考えられるのであります。かような点から、これは率直にあそこでは水産大学が困るだろう、法務庁のほうでも協力してやるから、どこか適当な場所を見付けたらよいだろう、そうしたら警察予備隊でもあれを活用して、現在水産大学使つているものはよりよく使えるのだというのが現在の腹じやないかと思うのですが、どうでしよう。
  52. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 実はこの水産の問題はいろいろいきさつがございまして、殊に最初は水産大学が占領軍に接収せられておつた。そうして  その接収せられておつた水産大学、これは現在の越中島の問題でございます。これを明渡すから日本側でここに警察予備隊本部を置け、こういうような話で参つたわけでございまして、これが日本政府といたしまして、いろいろな建物につきまして、自由に計画的にこの利用の計画が決定できるような状況に相成りましたならば、むろん各種の観点を総合しまして、政府の持つておりますところの建物全体についての利用計画の一部でございますから、これは警察予備隊の側におきましても、十分建物の構造、位置等からいつて適当な利用方法があれば、それに対して讓つて行く、警察予備隊が譲るべきものは讓つて行く、又代りに警察予備隊に讓つて頂けるものがあれば讓つて頂く、そうしてお互いに円満に問題を解決いたしまして、国家の建物全体の利用を十分にする、そういうふうな心がけでこの問題を処理して参りたいと思います。
  53. 木村守江

    ○木村守江君 それは警察予備隊の任務の重要性、これは非常によくわかるんです。わかるんですが、警察予備隊のためにこの非常に、殊に水産大学においては越中島において追出され、又久里浜のあの惨憺たる状態を呈しておる。何か昔から因縁でもあるように警察予備隊水産大学とはいがみ合つておるのが現在の恰好です。かようなことから、私は先ほど江口次長から話されましたが、警察予備隊としては当局と円満なる妥協の下にやつておるのだ、従つて警察予備隊としては越中島水産大学をとつて警察予備隊を置いておる、又久里浜のほうで不便な状態を与えても、これを警察予備隊予算からどうこうする問題ではない。むしろ管轄の文部省の手においてやるべきだというようなことでありますが、これは私は普通のときにはそうだろうと思いますが、これは常識的に、人の建物をとつて自分で使つておいて、而もそれが向う様の言葉であるから問題がないのだというふうに、人の建物をとつておいて、人に不便を与えていて、これはそちらで、こちらには関係ないのだというような態度では、常識的に、法律論としてそういうように解釈していいのかどうか。人の家を追い出して自分がのほほんとそこに入つて、それは何ら差支えないのだというような恰好が現在の状態だと思うのですが、こういう点から私はこの問題はどうしてもこれは実際占用して、占用といつては言葉は変ですが、実際使用している警察予備隊としても非常な大きな責任があるのだという点から、むしろ警察予備隊予算の中から、建築予算の中からでも応分の支出をしまして、この問題を解決すべきが、殊に現在日本国内における大きな問題じやないかと考ますが、如何でしようか。
  54. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 事務当局といたしまして、一応警察予備隊予算は直接警察予備隊の目的に使うべきものである。他の例えば学校等の建物をとは考えられないと、こういう答弁を若しいたしているといたしますならば、これは通常の場合におきましては、さような考えを以て予算を経理するのが当然でございますから、そういう意味から申しまして、さような答弁はそれで筋の通つた答弁として受取り得ると思います。ただこの水産大学の問題はいろいろな因縁等がありまして、必ずしも事務的にだけ解決できる問題とは考えません。これにつきましては、将来文部大臣又大蔵大臣とも十分に御相談申しまして、適切な方法によつて必ず円満な解決を得るようにいたしたい。
  55. 木村守江

    ○木村守江君 大体私の質問は終りましたが、この際繰返して申上げますが、この水産大学の問題を早急に解決し、日本の唯一の水産大学として、立派に日本水産の発展のために働けるというために、文部大臣は今お忙しいでありましようが、早急に実際の状態を御視察下さいまして、法務総裁と共にこの問題の解決の一刻も早からんことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  56. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 木村委員の御要望のようにいたしたいと思つております。
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 文部大臣質問ですが、本日の委員会で、天野文部大臣並びに大橋総裁のこの問題に対する誠意のほどは了といたします。さつきから議論がありましたように、とにかく見ないことには問題は始まらないということを申上げておきます。それからもう一つ少しお耳に入れておきたい点は、三回ほどに亘つて水産大学の事務局長から、ここで我々は陳情をうけたのでございますが、非常にその事務局長は立派であるということ、私たちは実際に陳情を受けましたが、あれほどひどいとは思わなかつた。非常に控え目に陳情なさつているというこの事実をお耳に入れておきたいと思います。次に文部大臣質問でございますが、二十六年度の国立文教施設整備費の十五億五千万円の中には、水産大学施設というものは入つているのか、いないのか。事務当局でもよろしうございます。
  58. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 初め入れようとしたのだけれども、よくこのことについてそういう計画が立たないから、どれだけ要るという計画が立たないから入れなかつたのです。
  59. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは次に伺いますが、国立文教施設整備五カ年計画が、百五十億という数字を以てその第一年次分として来年度予算に三十二億六千万円を要望するという説明を聞いたわけですが、この三十二億六千万円の中には水産大学の件は積算の中に入つているのか、いないのか。
  60. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 入つておりません。
  61. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次に伺います。それでは国立文教施設整備の五カ年計画の百五十億の中には積算してあるのか、入つていないのか。
  62. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは入つております。
  63. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次にお伺いいたします。文部省としてはこの水産大学施設の確立のために二十六年度の予算にも入れてない。それから来年度の予算にも入れてないという立場から私お伺いするのでありますが、方針として新たに予算をとつて、適当な所に水産大学の建築をやろうという構想であるのか。それとも大橋法務総裁と協力して、国家予算の出る所は同じでありますから、越中島施設水産大学に振り向けて、そうして解決しようという構想を持つておられるのか、いずれをお考えになつておるのか。
  64. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) それは越中島に帰りたいというのが私の考えでございます。あすこをのいて頂いて帰りたいという考えであります。
  65. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その点については或いは土地のこととか、建物について若干の問題があると思いますが、私は大臣の意見を了とするものであります。そこで私は大橋法務総裁文部大臣と両国務大臣への要望なのですが、越中島の元の水産講習所施設水産大学施設に振向けて、そうして警察予備隊庁舎を他に適当な所、規模においてこれを確保するという線に沿つて、両大臣に極力努力して頂きたいと私は要望するものでありますが、その線に沿つて両大臣は努力して頂けるかどうか、その決意のほどを伺つて置きます。
  66. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 私もそれができれば望ましいことと思います。極力努力をいたします。
  67. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私は只今申した通りであります。
  68. 岩間正男

    岩間正男君 文部大臣にこの問題について是非ここに確認して頂きたいと思いますのは、そのことを今努力されても、早くて半年、長きに亘れば一年ということになる。その間が問題である。そこまで事態は切迫しております。従つて今起つておる事態をよく見られればわかるのですが、例えば先ほどのすぐ校舎から下の住宅が見える。或いは又出入口の校門なんかが非常に不自由である。その他非常に今教育環境としてふさわしくない状態ができるわけです。先ほどからお話がありましたように、これは向うさんの命令であるということで、例えば引越しの場合なんかは明日の何時まで移れということで、まるで軍令のような形でやつて来る。これは果して向うの命令だかどうかわからないのにそういうことになつているが、非常にこれは便乗的に圧迫されているということは木村君の述べた通り間違いないと思います。従つてこういう現在の状態に対して早急に即刻これは私はここで手を打つことが教育上重要だと思います。従つてそういう事情を調査して、警察予備隊位置教育環境等のことについての非常に不当な圧力とか、そういうような実情については、ここで適当に早急にこれに対するところの手段をとるべきだ、こう思うのでありますが、こういう処置をとられる考えがあるかどうか、法務総裁並びにこれは江口次長に伺つておきたい。
  69. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ほども申しましたる通り、成るべく速かな機会文部大臣のお供をいたしまして一応視察いたします。その視察いたしました結果、必要と認めるような措置を急速にとるようにいたしたいと思います。
  70. 江口見登留

    説明員(江口見登留君) 法務総裁のお説の通りいたしたいと思います。
  71. 岩間正男

    岩間正男君 根本的対策と応急対策を是非つて頂きたいと要望いたします。それからこの問題はそれじやいいですが、まあ私はあとで又質問いたしますが、他になければ、文部大臣にちよつと緊急質問があるのです。文部大臣に簡単にこれは伺つておきたい問題であります。それは一昨日の本会議におきます私の質問に対しまして、吉田総理は六・三制を堅持するということを表明されているのであります。これはまあ文部省の今後の政策に相当影響するところがあると思うのでありますが、然るにそのあと、我々は予算委員会におきまして、この問題につきまして特に矢嶋委員から発言があつて、首相のこういう言明に対して、どういうふうに処置されるかということが聞かれた。これに対して池田蔵相としては、まあ当分六三制は首相も堅持すると言われたのだから、その線で行きたいと、こういうことを言われましたが、併し講和と当然そのあとに起つて来るのは、当然発生して来るところの財政負担、この中に一番問題なのは賠償の問題或いは外債支払いの問題或いは一千億にもなんなんとするところの駐屯費負担金の問題或いは対日援助資金の借財の……外債の一部でありますが、こういう厖大な、実にこれは財政負担が非常に多くなるので、これについては改めてこういう事態に立ち至つたときに、これと睨み合せて検討しなければならないというような、或る意味でこれは六三制が果してこういうものとの睨み合せで、継続できないんじやないかということを含みましたような答弁があつたのであります。この点は非常に重要だと思うのであります。こういう点につきまして、やはり蔵相は十分にこの事態を把握されて、私は今後のやはり折衝なり、要求を貫徹される必要があるんじやないかというふうに考える。もう一つ具体的に申しますと、やはり何と申しましても、来年度の八十七億の補正並びに二十七年度の六・三予算、建築予算、この問題がとれるかとれないかということ、このことがやはり私は六・三制がどうなるかということのもう一つの大きな境目である、分岐点である、こういうふうに考えられるのであります。六・三制は仮に分れましても、今までしばしば繰返しましたように、実体がなければ何もならないのであります。その分岐点は恐らくこれは現状から言いまして、実体から考えますと、この予算がとれるかとれないかと、これが試金石になると思うのであります。こういう問題を十分に把握されまして、文相は今後保持されることを私は切望したいのであります。これについての文相の御見解を承わりたいと思います。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 答弁の前にちよつと……。これは議事法違反だと思う。これは今岩間委員から質問されたのは極めて重大な問題で、相当これは長引くと思うのですが、私は今朝事務職員の身分に関しての緊急質問を大臣にしたいと言つて、委員部を通して大臣に対して通告をしてある、そういう通告を後廻しにして、そうして緊急質問をするのは議事法違反だと思う。今の質問は大臣の答弁を願わなくちやなりませんが……ちよつと速記を止めて下さい。
  73. 加納金助

    理事加納金助君) 速記をとめて……。    〔速記中止〕
  74. 加納金助

    理事加納金助君) 速記を始めて……。
  75. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 岩間さんのおつしやつておる講和後の日本の経済事情、そういうようなものが非常に苦しいことになるということは、私もよく存じております。だからして大蔵大臣がそういう点に顧慮を懐かれるということも、これは当然のことであろうと私も思いますが、併し一体この六・三というものを六・二に切つてしまつたとして、どれだけ金が節約になるかというと、それにそう大した金の節約にならない。そういうところで以て金を節約しようというような考えは私は非常に間違つておると思うのです。だからしてその点は今後どういう経済事情になつても、その犠牲にするという性質のものでないと思う。けれども文部予算というものはそのために非常に縮めなければならない、どういう点で縮めたらよいか私ども非常に研究して、縮められるものはできるだけ縮めようと、併し私はそこは縮めてはいけない、そういう考えでございます。それから今後の補正予算等の重要性ということは、私も十分考えております。
  76. 加納金助

    理事加納金助君) それでは先ほど来矢嶋委員から、学校事務職員の身分について、文部当局の意見を聞きたい、こういう申入れがあつたのでありますが、如何でしよう。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  77. 岩間正男

    岩間正男君 今の問題につきまして、私意見がありますけれども、もう時間がありませんから、これは先に延ばすとして一応……。補正予算を縮めるというお話ですが、午後からそれでは……。
  78. 若木勝藏

    若木勝藏君 議事進行について…。午後から大臣おいでになりますか。私も緊急質問があるのですが、午後から大臣の出席を要求したいのですが、できますか。
  79. 加納金助

    理事加納金助君) 大臣は衆議院のほうに約束されておるので、午後の出席はちよつと困難らしいです。そこで今矢嶋さんのほうですね、あなたもそう時間をとらないでしよう。
  80. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 時間の関係がありますので、要点だけ簡単にお伺いいたします。今も岩間委員から六・三制の問題が出て来たわけなんでございますが、私のお伺いいたしたいのは、学校事務職員の身分の取扱について、更にこの学校の事務職員というものを教育の振興の立場から身分的にどういうふうに取扱つたら適当かというような点につきまして、大臣並びに文部省の見解を伺いたいというのが緊急質問の目的であります。六・三制に絡んで一昨日の予算委員会でも、池田大蔵大臣はやはり教職員の定員ということを考えられておるような…、時間の関係で長く質問できなかつたのでございますが、考えておられるようです。六・三建築の臨時的な経費もさることながら、それ以上に経常的な経費、而も人件費というような立場から相当の構想を持つているやに伺えたのでございます。そこでお伺いするのでございますが、今学校でも文部省でも研究されているように、いろいろ定員の問題がございますけれども、教職員の労働という立場から考えても、又能率の向上とい立場から考えても、事務職員の数とか、質とかいう問題は相当に私は根本的な問題じやないか、この事務職員というものを質の面においても、量の面においても財政と睨み合せ、適度にこれを確保して、そうして教職員を学校の雑務から開放する、これは私は子供に立派な教育を捧げるという今の当面の問題としても一番大きな問題じやないか、こういうふうに考えておるのでございますが、大臣はその点どういうようにお考えになつていらつしやるか、先ず伺いたいと思います。
  81. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私はその前にちよつと岩間さんに対するお答えを追加させて頂きますが、自分は好んで何も文部予算を減らそう、そういう考を決して持つているわけではない、併し若し事態が非常に一般予算を減らさにやならん、すべての省がみんな減らす、文部省もら減さなくちやならんということが起つたと仮定するならば、そのときにはどういうところででも研究しようけれども、そういう際においてすらも、この六・三の三を減らすということことには反対だ、そういう考えであるから、語解のないようにお願いいたします。  それから矢嶋さんのお考えは、私は前からそういうことを考えておるのであつて、今の校長とか、教頭というような人が何か事務ばかりやつておるとかいうようことは遺憾千万である。そういう事務は事務当局を置いてやつて、校長のかたなどはもつとやつぱり教育家としての仕事を心がけることが必要ではないか、例えばどういう学校でも校長は、今は修身とは言いませんが、道徳的な科目などは持つて、そうして一校を率いて行くというようなことにもつと力を注ぐためには、私は事務職員というものは必要だ、そういう考えであります。
  82. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 そこで量と質の問題になりますけれども、そのためには或いは給与の問題とか、身分の問題が出て来ますけれども、今日私は身分の一点についてお伺いしたいのですが、御承知のごとく学校の事務職員は教育公務員ではないわけです。従つて教育公務員特例法が適用されていないわけです。これはやはり優秀な事務職員を確保する意味において非常に私は障害になつておると思うのですが、従来教育公務員は教育公務員特例法の第二條の定義から免許状というものを持つていなければ入れられない、こういう立場で参つたわけですが、第十国会において社会教育主事に教育公務員特例法を適用するようになりましたし、又或いは博物館とか、研究所におる職員の一部も教育務公員として認めるというような一部改正法が第十国会で通過したわけです。そうなりますと、今まで免許状がないから教育公務員に取扱いできなかつたという学校事務職員は、その職務の内容から言つても当然教育公務員として認め、特例法を適用すべきじやないかと、こういうふうに考えるのですが、そういう改正法を次の国会にでも提案するところの用意が文部省にあるかどうか、その点承わりたい。
  83. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 局長からお答えいたします。
  84. 稻田清助

    説明員(稻田清助君) 学問研究の自由でありますとか、或いは教育の自主性を確保するというような見地からいたしまして、従来教育公務員に対しまして特別の身分法規が設けられておるという点から考えますれば、同じ学校に勤務いたす学校の事務職員に対しまして、こうした研究員或いは教授等と全く同様に取扱うかどうかという点につきましては、かなり問題があろうかと考えております。要するに、こういう身分に関しまする法律は、それぞれの機関及びそれぞれの職員の特殊性というものを考慮して研究すべきものだと考えまするので、そういう点から見まして、学校の事務職員と他の官庁の事務職員とは又おのずから意味の異なる問題もあろうかと思います。そういうような意味合におきまして、お話の点は十分考究すべき問題だと考えております。
  85. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それだけで局長満足できないのですがね。それで過去数年間やつて来ておるのですからね。確かに事務職員は、学校の事務職員と官庁の事務職員は違いますがね、事務職員という言葉は学校教育法の中にもちやんと明記されております。適格審査も受けるようになつているし、恩給あたりも教員と同じような扱い方になつておるし、それから図書館とか、或いは博物館の一部職員と同じように飽くまでも教育的に行動し、校長並びに教員の教育活動に協力しているというような、あらゆる角度から考えても、もう私は研究というものは結論に達して、次の国会あたりに文部省としてはそういう一部改正法を提出するだけの私は結論に到達しなくちやならんと思うのでございますが、まだその程度でごまかして行くつもりでございますか、どうですか。大臣それをどうお考えになるか。さつききの大前提は大臣に全く敬服するし、全く同感でありますが、その具体的な方法としては予算は余り大して伴わないのですから、一部改正をやるべき時期に来ておるのじやないかと思うのです。
  86. 天野貞祐

    国務大臣天野貞祐君) 私もこういう点に一種の心配を持つておるのです。学校で教職員のほうと事務職員のほうとの開きが余りあるということは、学校をよくやつて行くのに非常に困ることだという考を持つております。だからして、若しもそこに十分な理論的な根拠ができさえするならば、そうすることが結構だと思うのですが、ただ形式的に考えて、そこに理論的には幾分の無理があるような気もするので、そこが研究をしていると言つておる点ではないかと私は思つております。結論に到達すれば、そういう処置を早速いたしたいと思つております。
  87. 稻田清助

    説明員(稻田清助君) 先ほど御引例になりました例えば社会教育主事とか、或いはその他図書館等の特殊の職員につきましては、免許法の適用はございませんけれども、社会教育法その他に御覧になりまするように、一定の資格の要件がございます。その点において純然たる事務職員でないという点で現在一線を画されておるのだと考えております。その線をどの程度に引くかという問題につきましては、十分今後なお研究の余地があろうかと考えております。
  88. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう教育公務員特例法が出て以来、文部省は鋭意研究なさつて来られておるわけでございますが、最後の結論を急がれて次の臨時国会、少くとも通常国会には教育公務員特例法の一部改正を提案され、学校の事務職員を量並びに質の面において確保し、延いては教育の振興を図るように極力努力することを要望して、時間がございませんので、これで打切ります。
  89. 加納金助

    理事加納金助君) 午前中の会議はこれで閉じまして、休憩いたします。    午後零時三十九分休憩    —————・—————    午後二時十一分開会
  90. 加納金助

    理事加納金助君) それではこれより午前に引続きまして、会議を開きます。
  91. 山本勇造

    ○山本勇造君 日程によりまして、文化財保護委員会の件を取上げて頂きたいと思うのですが、この問題は去年の秋、委員会のほうから報告があつたと思いますが、以後とうとう今日まで御報告がないのでありますが、その後さまざまな問題が起つておるようでありますし、一応一つその後の委員会経過につきまして、我々承わつておきたいと思います。当局のほうから説明並びに補正予算等のあれも出ておるようでありますから、それらの説明もお聞きいたしたいと思います。
  92. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 只今山本さんからお話がありましたが、昨年こちらに参りまして、御報告を申上げまして、その後こちらに出まして御報告をいたすことをいたしませのんでございますが、御質問でもございますれば、無論罷り出るつもりではおつたのでございまするが、いろいろこちらの御予定もあることと存じまして、実は私どもといたしまして、差控えておつた次第でございます。なおその後の委員会の行いました仕事につきましては、種類に認めましてお手許に差上げてあることと存じますが、なお今日は事務局長並びに美術工芸品課長が見えられておりまするので、細かい点はこれらのかたがたから、質問によりますれば、お話申上げることにいたしますが、委員会はすでに御承知のことと存じまするが、先ず最初の大きな仕事といたしまして、専門審議員約九十名を定めまして、その会議を続けて行いました。これによりまして、新国宝の指定を行なつた次第であります。すでに第一回の指定を終りまして、それぞれ発表をいたしたのでございます。なお今後引続きまして重要文化財の指定を行い、更に第二回の国宝の指定を明春恐らく三月頃には行うことができるであろうと考えております。  それから又災害をこうむりましたもの、殊に最近における台風の損害によりまして破損せられました国宝建造物などが非常に多いのでございまして、これらのものに対しまして、どういう補助を与うべきであるかというような問題につきまして、いろいろ議を進めた次第でございます。それから又極く最近になりまして、これも新聞紙上で御承知のことと存じまするが、アメリカのサンフランシスコのデ・ヤング・メモリアル・ミユージアムの館長のハイルというかたから、文化財保護委員会に附属しておりまする国立博物館の原田治郎君のところに、日本の古美術展覧会をサンフランシスコにおいて開催してはどうかという招請を受けたのであります。これにつきまして、文化財保護委員でこの問題を取上げまして、いろいろ審議いたしました結果、一ハイル氏を相手方としない相当なボードを作り、このボードと文化財保護委員会との間の契約によりましてならば展覧会を開会しよう、こういうことに相成りまして、すでにその運びが著々として進んだ次第でございます。最初は原田氏一個に宛てた手紙でございましたが、只今申上げましたように、原田氏が先に有光次郎、富士川金二両氏と共にアメリカに参りました際に、同君が一番年長であり、又語学に堪能でありましたがために、特に同君宛ての手紙で先ず内交渉をしたので、我々としては、やはり文化財保護委員会でこの問題を取上ぐべきもの、こう考えまして、文化財保護委員会とあちらのボード・オブ・トラストの間に契約を取交しまして、来月三日を以て開会の運びと相成りました次第でございます。  買取りの件でございまするが、これも文化財保護委員会におきまして慎重な注意をいたしまして行いましたのであります。昨年は梁楷の描きました李白の図を買取ることに決定いたしました。これは日本の絵画界に及ぼしました影響の非常に大きなものでございまして、比較的小さな、又極く簡単なものではございまするが、実に立派なものであると考えたのでございまして、これはアメリカからして購入の依頼がありましたそうであります。梁楷はすでに日本には立派なものが数点あるのではないか、この一点は是非アメリカに行つてもらいたいというような意向でありましたので、特に我々として慎重審議をいたしたのでございまするが、やはりこれも日本にとどめて置くべきものではないかという結論に到達いたしたのでございます。お手許に行つてると存じまするが、今年になりまして一点買取りましたのでございまするが、どうぞこれを一つ御覧頂きたいのであります。昭和二十六年度文化財買取品目でこの点はなお本間課長から詳細の御報告を申上げることに相成ると存じまするが、地獄草紙そのほかのものでございます。すでに地獄草紙は御承知の通り、かなりあちらこちらにこれを見るものでありまして、博物館におきましても、すでに一昨年でございましたか、六十万円或いは六十五万円でしたか、で以てこれを買取りましたのでありまするが、それと比べまするというと、このほうが保存そのほかの点におきまして、遥かに優れておるものがあつて是非これも日本に残しておきたい。こういう考えでこれを買取ることにいたした次第でございます。まあそのほかのものにつきましては、詳細の説明が若し必要でございまするならば本間課長からいたさせることにいたします。  国法の指定につきましては、先ず専門審議会の各部門におきまして基準を定めることに力をいたしたのでございます。その結果といたしまして、お手許に差上げましたような案ができまして、大体におきまして、これを委員会で承認いたしまして、採択いたしまして、この基準に従いまして指定を行うことにいたした次第でございますから、どうぞこれを御覧頂きまして、或いは後に局長若しくは課長から読み上げましてもよろしいのでございまするが、又御質問がございましたら、お答えをすることにいたしたいと存ずる次第でございます。極く大体でございまするが、私からこれだけのことを申上げておきまするが、無論言葉も甚だ足りなかつただろうと存じまするので、足りません点は又御質問に応じてお答えしまするなり、局長若しくは課長から申上げることにいたします。
  93. 森田考

    説明員(森田孝君) 委員長只今の報告に対しまして若干補足をさせて頂きます。文化財保護法で、昨年の八日二十九日に成立いたしましてから、一番委員会として早急に必要がありまする問題は、御承知の通りに文化財保護法で指定せられておりまする旧国宝の調査であります。それが真先に行われたのであります。これは併しながら目下更に若干の未報告のもの対しましての調査を続行しておるような状態であります。それからもう一つは、文化財保護法によりまして、委員会規則の制定が二十数件要求せられておりまして、これに対しましての委員会規則の制定が行われたのであります。政令は二つ要求せられておりまするが、そのうち一つはすでに出たのであります。専門審議会令であります。併しながらもう一つのほうは、若干法の修正がなされなければ出せない状態になつておりますので、国会のほうにお願いいたしまして、法の修正をでき得る限り早くして頂きました上で、政令を出したいと考えております。これは相続に関連しましての補助金の支給と相続税との関係の政令であります。  それから、次が文化財、今委員長から御報告になりました点は省かして頂きまするが、そのほかに文化財保護委員会といたしましては、今後の文化財行政を進めて行く上においての基本的な台帳が戦災で焼けてしまつておりますので、台帳の整備、その整備をするに必要な基本調査ということも非常に力を入れております。又今後の文化財保護行政を進めて行く上におきましての前提となる調査、例えて言いますると、現在の重要文化財の防火、防災の必要な調査、或いは環境整備に必要な調査、或いは郷土芸能、或いはその他の芸能関係についての調査、これは旧文部省時代におきましても全然行われていない問題でありまして、我々といたしましては、これを徹底的に行うべく手配をいたしまして、或る程度すでに集計を見て来ておるのでありまするが、目下その整理中であります。  それから、その他本年度補正予算に入りまする前に、昨年の十一月頃に従来の美術刀剣等の取締りが警察だけによつて行われておりましたのを、政令を改正いたしまして、ポツダム政令を改正いたしまして、これが登録事務は文化財保護委員会においてこれを行う、警察のほうは単にその所持の所締面においてだけ、つまり保安関係の面だけを見るというようにこれを分けましたのであります。従つて、文化財保護委員会におきましては、文化財保護法による仕事以外に、美術刀剣等の審査に関する事務を合せ行うということにしたのであります。以上のような問題が主として今委員長から申上げられましたほかの点であります。  予算を若干申上げますというと、本年度予算は四億二千万円に通常予算はなつておりますが、これの中におきましたところの重要なもので、今後補正予算として只今要求中のものにつきまして、若干御説明を申上げたいと思います。一つは、重要文化財等の災害復旧費であります。昨年のジエーン、キジア台風による災害復旧におきまして、当面必要なものにつきましては、昨年度の追加予算で計上いたしましたが、本年度の分につきましては、時期が遅かつた関係上、通常予算には計上できなかつたので、大蔵省との話合によりまして、通常予算における修理費を廻して、そうして差当つて必要なジエーン、キジア台風の災害復旧費に充てて、補正予算の場合におきまして、災害復旧費を計上して、これを通常予算の修理の、何と申しますか、転用した部分を補充して、通常の修理のほうを促進して行くという話合の上で、通常予算によつて災害復旧を大分賄つてつたのでございます。今回補算を編成するにつきまして、七千六百方円の災害復旧補正予算を要求したのであります。  それから先ほど委員長からお話になりました買取費でありますが、これは通常予算におきましては一千万円を盛つておりましたが、お手許にお配りいたしました買取によつて、すでに九百七十万円を買取りまして、三十万円しか残つていないのであります。そうして買取の申出のありますもの、或いはフランスの松方コレクシヨンの処置というようなことも睨み合せまして、現在におきましては、約一億数千万円の金がなければできないような状態になつておるのでありますが、通常、補正予算におきまして、一応一億円の要求を出してあるのであります。これによりまして、折衝の結果とれた金額によりまして、最も緊急性のあるもの、或いは最も重要なものから順次買取を実施して参りたいと考えておるのであります。  それからなお奈良県におきまして、県の商工館を寄附するから、そこにその建物を寄附するので、そこで文化財研究所を設けてもらいたいという陳情がたしか国会に出ておつた考えておりますが、この点につきまして、仄聞するところによりますと、国会のほうにおかれましても、法律改正によつてこれが設置を行なつてもいいという意図の下に、種々御研究になつておるということを聞きましたので、予算を計上いたすことにいたしたのであります。なお、京都の恩賜博物館、これを又国に移管を要求せられておるということでありますので、これが国に移管するに必要な準備金をも補正予算に計上したのであります。そのほかには、なお若干の細かい、例えば美術刀剣の審査に要する経費が三月で終ることと、更に新発見その他で続々と出つつありますので、補正予算においてこの事務の継続を考えて行くとか、或いは又更に来年度、内外の文化交流の意味を以ちまして、外国において展覧会を開催するために必要な準備等を整えるための費用、それから姫路、松本の修築費の追加、或いは又旧高松宮の御所有でありました黒門の一隅買上、それから日光の神橋の修理というような費用が加わりまして、総計二億六千三百万円の追加予算を一応要求しておるのであります。それから来年度の予算、これはまだ文部省で査定を受けて編成中でありまして、総額が幾らになるかということは若干の数字が変るとは予定しておりますが、今のところ約九億程度の予算の要求になつております。主なるものは従来の保存修理、これが四億一千万円それから特に私のほうとしましては、御承知の通りに修理につきましては六・三予算とは違いまして、金額を余計とりましても、宮大工なり、物資の数が限定せられておりますので、この実施の能力に限度があるために、予算のとれた額というものは幾ら高くても消化するということはできないので、その能力を限度にして、一応予算の編成を行う結果、戦時後十年間放置せられておりました文化財の破損に対して、これを一挙に修理完成することは困難であるので、今あるのを悪くしないという意味で、文化財の予防対策、災害の予防対策ということに重点を置くという委員会の御方針に従いまして、この予防対策のために約一億三千五百万円の費用考えておるのであります。この中味につきましては、防火、防水、それから環境整理或いは保存施設或いは防災施設の完備或いは管理の充実というようなことを考えております。そのほか本年度考えておりました普及宣伝という点は、又来年度はもつと慎重に計画を樹立いたしまして、国際的な文化交流のために重要美術品の展覧会なり、講演会或いは又その普及宣伝に必要な諸種の事業を行いたいと考えておるのであります。なお東京に現在あります美術研究所は、でき得れば奈良と歩調を合せる意味で、東京文化財研究所とお名前をお変え願いまして、そうしてその中に防災科学の研究部を設けたい。それからでき得れば、又芸能の研究も設けたいというような希望を以て一応予算の要求を考えて参りたいと思つております。その他は従来の経常的な業務のための費用であります。  大体予算は、大変雑駁でありますが、以上御説明を申上げました。
  94. 岩間正男

    岩間正男君 今のはプリントはないのですか。
  95. 森田考

    説明員(森田孝君) このプリントはまとめまして、お手許へこういう袋に入れて配つた、この中に全部入つております。
  96. 山本勇造

    ○山本勇造君 ちよつと質問いたします。大分質問する事項が多いと思いますが、取りあえずサンフンンシスコにこちらから出品する問題につきまして、先ほど高橋委員長からお話が出た問題でございますが、なお私ちよつと腑に落ちない点がございますので、お尋ね申上げたいと思います。今私初めて受取つたのですが、原田さんに来た手紙というのは、向うのほうのヤング博物館ですか、そこから原田さん個人宛に来た手紙によりますと、九月の平和会議に備え、多彩な内容を盛つた日本美術展覧会を準備中であるから、我が米国の主要美術館から借入をするのですから、貴国が文化に対してなした偉大な貢献を示すに足る真に重大な展覧会になるであろうことを確信することができます。この又とない重要な計画を実現するため、日本の蒐集品中から優れた作品を借用することはできないでしようか云々というふうな手紙のように思われますのですが、こういうふうに個人のところに来た問題を文化財保護委員会が取上げておつて、文化財保護委員会としてお出しになる、一体日本のこういう文化を世界各国の人が集まつて来るところで展覧して見せるということ、そのこと自体非常に結構なことで、私も非常に賛成なんでありまするけれども、併し、ただそういうのをやるのは時期とやり方とがあると思うのですが、御存じのように今度の講和会議というものは案外楽に行くのかも知れませんけれども、又非常に面倒なのではないか。又或る種の国から日本は賠償を出さないので不都合であるというような意見も随分出ておりまするので、外交的にも随分やつかいな問題があると思うのでありますが、この際に向うの博物館が日本のものを集めてそれを観覧に供する、これは少しも差支ないのでありますが、日本から日本にまだこういう宝があると言つてこの際出すのが適当な措置かどうか。必ずしもこれは不適当だとも考えませんけれども、適当な措置かどうかというようなことについて、委員会として十分に御検討になつたかどうか。又大変時期が急なので、かけ替えのないものを出すのに、恐らくは或る種のものは船で出すようですが、或る種のものは飛行機等で出すのじやないかと思いますが、こういうものに対する危険率が随分あると思いますが、それらについて委員会としてどういうふうにお考えになるか。それらの点、委員会としてどれだけこれに対して審議をお尽しになられたか。その結果お出しになるのか、これはまあ出さないということも考えられる。又出すとすれば、何なる方法で出すかということも考えられる。或いは又委員会が、委員会がというこうは国家がということですが、国家が出すというふうに結論されたのは、どういうところにあるのか、それを一つお伺いしたい。
  97. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 只今の山本さんからの御質問にお答えいたします。まだ文化財保護委員会発足以前に、アメリカのルーマンという方が吉田総理宛で、日本の重要文化財の展覧会を講和会議が終つたならばアメリカで催してはどうかという招請を受けたのであります。その頃から私どもはその博物館長といたしまして、或いは又文部省の文化財保存課といたしまして、いろいろ考えておつたのでありますが、今回誠に突然ではあつたのでありまするけれども、先ほど来申しておりまするように、デ・ヤング博物館から、講和会議の行われるのを機会として展覧会を開いてはどうか、そうして日本の重要な文化財を出品してはどうか、こういう手紙をもらいましたので、これは無論原田氏個人の力の及ぶところのものでもなく、又博物館だけでも力の乏しいところがあると存じまして、むしろ我々の委員会全体の問題としてこれを取上げたならいいのではないか、こう考えまして、この問題につきまして、いろいろ審議をいたした次第であります。先ほどお話のありましたように、随分危険もないとは決して申せないのでおりますが、又賠償の問題などもございますことでありまするので、こういう点に関しては心配がないであろうかと、こういう問題を委員会などで議しました。比較的この方面に明るい委員のかたなどもおられまするので、そういうかたがたの意見を徴しまして、先ずこの点は心配がなかろうというところに到着いたしましたので引受けることに相なつた次第であります。それからして、これを出品いたしまするにつきましては、先ほども申上げましたかと思いまするが、専門審議会にかけましたのであります。専門審議会は非常に慎重な態度をとつておりまして、我々に対しまして答申されたのでありますけれども、大よそこのくらいのものならば出してもよかろう、こういう意向であつたのであります。それを又委員会におきましては、更に厳選いたしまして、大分減したのであります。実は打明け話に相成るのでありまするが、かけ替えのないような重要文化財は、この際むしろ差控えるべきものではないか。無論これはいやしくも重要文化財とみなされているものでありますから、あすこにもある、ここにもあるというわけではないのでありまするが、おのずからその間にいろいろ差等もあることでありまするので、全く天下一品であつて、これが若しなくなつてしまうならば、全くかけ替えのないもの、他に得られないものと考えられまするところのものは、今回はこれを省くことにいたしたのであります。そして新たに国宝に指定せられましたところのものなどはこれを省く、こういう方針で参りましたのであります。アメリカに対しまして、余りそういうことを申しますることは差控えなければならんと思うのでありまするが、大体この方針に従いまして選定を行なつた次第であります。これを拒みまますることは、今回の講和会議を好機として展覧会を開いたらばどうかという招請を拒みますることは、山本さんもお話のありましたように如何かと思いますので、我々は安全を期して出品を引受けた次第であります。これを送るにつきましては、飛行機が安全であるか、船が安全であるかということもたびたび委員会並びに事務局におきまして議した問題でありますが、いろいろ説が分れておつたのでありまするが、分散いたしまして、これを船と飛行機と両方で運ぶということにいたしましたならば、危険率は最も少いのではないかというところに到達いたしたのでありますが、もうすでに積み出されたところのものも多いのであります。まあ、かような次第でありまして、随分我々といたしましては、全責任を持ちまして、委員会といたしましては全責任を持ちまして、これを行うことに決定いたした次であります。
  98. 山本勇造

    ○山本勇造君 高橋委員長が全責任を持つてお出しになるということであります。又ここまで来ていることでありますから、これをとめるとか、何とかいう意味ではないのであります。文化財保護委員会というものは普通の委員会と違つて諮問機関でない、そしてこれは行政的な機関であります。そして文部大臣も口を出すことができないというほど非常に強い委員会なのであります。それだけにこういう国際的な問題になりますと、これは一体出すべきか、出すべきでないかというような点について、もう少し僕は慎重に御審議になつて然るべきじやないか、又出すとしても、今度出さなければもう出すべきときがないということじやなくて、前にほかから話があつたということも先ほどお話がありましたように、批准のときに出してもいいのだし、何も今度の調印のときに是非されなければならんというものではないと私は思う。それからして、又これはアメリカ政府からの招請ではなくて、サンフランシスコにある私立の博物館、何か市の博物館よりも立派なくらいの博物館だという話でありますが、併みながら私立でありまして、アメリカとしてでは必ずしも一流の博物館とは思えない。そこからの招請であるのに、今のような私から考えると少し無理じやないか、時日の点からも、さまざまの点からも無理じやないかと思うようなことを、一番最高の委員会でおきめになつたというところに、どうも僕は少し疑問をなお持つている。又その席上においても或る種の委員の人から、一人でなくて、どうもそういうことについて疑問の人があつたようにも洩れ聞いておる。これはかなり事務局のほうが進んじやつたために、どうもそこへ落着かざるを得ないような形になつたところがありはせんかと思う。それらの点を一つこの際伺つておきたい。
  99. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 只今の御質問でございまするが、我々といたしましては、この講和会議がサンフランシスコで開かれまするのを機会に、日本の美術品の展覧会を開きまするということが、世界各国の人たちが大勢サンフラシスコに集まられるわけでありますので、日本の美術品を海外に示す上において特に効果があるということを考えましたのであります。他の機会において、かような計画を立てますことも無論いたしたいとは考えておりまするが、講和会議がサンフランシスコで開かれるということが、これが一つの大きな機会ではないかと存じまして、あちらの招きに応じた次第であります。そうしてなおあちらからの要求といたしまして、サンフランシスコ以外の大都市におきましても、この品物を持廻つて展覧会を開いてはどうかという考えが見えておつたのであります。先ほど申上げましたグルノ氏の旨を受けまして、ルーマン氏の寄越しました手紙による招請、これに応ずるということも考えられたのでありますが、どうも時日が如何にも切迫いたしておりまするので、それほどの準備を整えることができないので、今日は終戦後第一回の試みありまするので、それから又先ほども申上げましたよように、かけ替えのない品物は暫らくこれを除くというようなことも考えておりましたがために、サンフランシスコ一カ所だけにとどめたい。期日の長いということはさほど品物を破損させる原因にはならんと思うのでありまするが、包装を新たにいたしまする際が一番危険であるということを専門家も申しておりますので、各地で展覧会を開くことを取りやめまして、サンフランシスコ一カ所といたした次第であります。  それからして、あれほどのことをやるのに、慎重な注意を欠いておりはしなかつたかというような御懸念もあるかと存じまするが、この展覧会の開催につきましては、各省とも十分打合せをいたしまして、先ず文部省の局長会議と申しまするか、これにかけまして、それから更に又次官会議にかけまして、更に閣議にかける、こういうような順序を経ましたのであります。何分期日が切迫しておりまするために、なお我々に手ぬかりもあつたと存じまするが、かなり慎重な注意をいたしたのでありまするが、なおまだ注意の足りませんところは幾重にもお詫びをいたすのでございますが、我々といたしましては、でき得る限りのことはいたしたつもりでおるのであります。それからして委員会の委員の中に、或る委員のかたがたはこれに対して反対と申しまするか、或いは躊躇しておられたというようなお話があつたようでございまするが、委員会に現われましたところでは、私の記憶に残りますほど強い反対の主張或いは見合せろというような主張はなかつたと申して誤まりないと存じますので、或いは私の聞き落しがあつたかも知れませんが、少くともその点が論争せられたという点はなかつたのでありまして、方法、期日、相手方というような点につきましては、多少御意見も出ましたようでありまするが、今回はこれを見合せろという意見は全然なかつたように記憶いたしておるのであります。事務局が初めこの話を原田氏から聞きまして、非常に乗り気になつたということはこれは事実であります。実は私どうも少し躊躇した側なのでありますが、事がいいので慎重な注意を以て行なつたならば、先ず危険はないだろうし、効果は甚だ多かろうというので、我々といたしましても賛成いたしたのでありまして、先ず事務局長のところに原田氏からの通知がございまして、事務局のほうで是非これをやりたいという意見を持ちましたことは事実であります。併しながら無論事務局がさような考えを持ちましても、委員会に強い反対があれば、今回のことは行われなかつたことと思うのであります。
  100. 山本勇造

    ○山本勇造君 もう一回ちよつとお聞きしたい。今のこれを送るのに、委員会から送るか或いは博物館からするかという点も問題になつておるのでありますが、向うの博物館からこちらの博物館に来たのですから、博物館として出したいという意向がかなりあつたように思われる。あなたの考え方からいたしますと、今度は大変いい機会だと、こういうふうな考え方であります。これはまあ見解の相違と思いまするが、逆に先ほど申しましたような賠償等の問題から申しますと、こういうところに出すということは、むしろ逆になりはしないかという心配もあります。結果はどちらになるか私はわかりませんが、自然に考えますと、賠償のやかましいときに、日本にこんな宝物があるぞと言つて全権と一緒に行くことが果して外交的にいいか、悪いか甚だ問題がある。国が出すのでなくて博物館同士でやつておるというなら、仮に出すとしても、この点も和らぎはしないかと思いますが、それらの点について委員会として御考慮なされないか、それを一つお伺いしたいと思います。
  101. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 只今の御質問でございまするが、どうも博物館としてあちらの求めに応じますることは、全国的なこれは計画になりまするので、いろいろ博物館がやるということになりますると、隘路は多かろうと思うのであります。殊に予算の点、時日の点などにおきまして困難な問題が多いのでありまして、或いは博物館がこれをやらないことになればいいということは別問題でありますが、博物館がやるということになりますると、いろいろな困難に遭遇いたしまして、これほど話が運ぶということは恐らく困難ではなかつたろうかと考えまする次第でございます。  それから先ほど御質問のありましたところでありまするが、初め事務局で拵えました案につきましては、我々も実を申しますると、全面的に賛成することができませんので、いろいろ修正をいたしたのでありますこの点は委員の間にいろいろ議論が出ましたことは事実であります。例えば各地を廻つて歩くというような点であります。こういうようなことにつきましては、危険が甚だ多いから、今回はこれを取りやめたらどうか、ハワイで開くということも言われておつたのでありますが、ハワイですら今回はやめたらいいではないかというような意見が出まして、この点は一応議論があつたのでありまするが、委員の間の意見が分れるというようなところには全然参りませんで、極めて円満に話が進んだのでございます。
  102. 岩間正男

    岩間正男君 私も今の問題で二、三点お聞きしたい。今の山本委員の意見に賛成であります。やはりこの問題は、今お聞きして実はいろいろな点で疑問を持つておるのでありまするが、よほど慎重に扱うべき問題ではなかつたかと、お聞きしますと、大体プライベートな機関がプライベートな方式で以てこちらにそういうことを要請して来ておる、この点がやはり問題じやないかと思います。こちらは一国の機関として、これは法律の定める範囲内で国家機関なんだ、国家機関ですから、これは今後の一つの国家の保護政策と非常に深い関係があるので、即ち海外移出の問題というものは、恐らく今の文化保護法の範囲内では新たな問題としてこれは考えられなくちやならん問題じやないかと、こういう点でこれは今のお話の、委員長等のお話を聞きますと、事務局のほうで随分進めておつたということでありますが、事務局としては、こういうような法制的な立場からこれを検討することが非常に重大でなかつたかと先ず思うのです。プライベートに来たものに対して公式の機関がどのような立場でこれを決定するかということが第一点、更に第二としては、一体どういう條件がそれに付いておるか、期日はどうであるか、或いは損害の補償はどうであるか、仮に損害が起つた場合には、これに対してどのような補償をするのであるか、このような具体的問題について相当我々は一国の文化を保護する、そういう立場からいたしますと、実に慎重な態度をとる必要があるのじやないかというように考えられるのでありますが、私は期限の問題並びにその間にそういう事態が起らないことが望ましいのですが、起つた場合に対する補償條件というようなものについては、向うさんではこれはどういうふうに言つて来ておるのでありますか、この点一つ明らかにして頂きたいと思います。
  103. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 只今岩間さんの御質問にお答えいたしまするが、期日はあちらから申して参りましたのは最初六週間ということでございます。我々といたしましては、六週間は如何にも長過ぎる、私どもの考えでは三週間と申したのでございますが、これは電話でたしか話をしたと思いますが、あちらでは三週間では如何にも短か過ぎる、せめて一カ月ということで、一カ月間会期ということで決定いたしたのであります。それからして責任でございまするが、これはこちらからあちらに到着いたしまするまで、それから向うの基地を離れまして、こちらに帰りまするまで、これはこちらが持たなければならないのでありますが、あちらにありまする間、即ちおよそ三十日間というものは無論向うが全体の責任を負う、こういうことに相成つておるのであります。それからなお大きな問題と関連いたすと思うのでありまするが、文化財保護の事業、これは只今お話のありましたように、保護ということは無論重要なことでありまするが、ただこの重要な文化財を私物として保存して置くだけでなく、これを世界の文化に貢献せしめて行きたい。そうして新らしい文化の創造に役立たせて行きたいという考えを持つておりまするので、こういう際には幾分危険を冒しましても、世界の各国の人たちの集まりまするのを好機といたしまして、展覧に供するということが世界文化の興隆並びに発達の上に役立つところ甚だ多いと考えまして、決意いたした次第であります。
  104. 岩間正男

    岩間正男君 やはりこれは只今の世界文化に対する寄与の点については、私は何も異論を言うのではないのでありまするけれども、ただこの海外に移動させるというのは一つの新らしい機会と思うのであります。こういう新事態に対して文化財保護委員会としては、やはり国家機関というような立場から考えましてですね、そういうプライベートな一つの申入れに対して、今後も起る問題と思うのでありますが、どういうような方法で処理するかということを根本的にこれは検討をして行くことが必要だと思います。こういうところは事務局としてはどういうように考えられて進められたのですか。
  105. 森田考

    説明員(森田孝君) 先ほどの中にちよつと補充をいたして……。御質問に対する委員長のお答えの中にはなかつたのでありますが、最初に原田事務官個人に手紙が来たのでありますが、これは我々のほうへ連絡をされたのでありますけれども、これを政府として取上げるかどうかは、先ほど委員長が申されましたような手順を経て、閣議の了解を経て初めて政府として取上げたのであります。それまでは原田さん個人が自分の意思として向うと連絡をとつておられたのであります。で、閣議の了解がありましてから、初めて文化財保護委員会としては、外務省を通じて在外事務所長を通じ、公式の交渉を始めて、そうして公文でそれぞれ今委員長から申されました通り、こちらの責任分担の区域はどうか、それから責任の範囲はどうか、それから向うはどこから、どういうときにどういう責任の負担の仕方をとつたかという点についての交渉をして、その文書によつて、契約といつては語弊がありますが、文書の交換をいたしだのであります。それに基いてなお若干の交渉中と申しますか、未済の点が一点か二点ありますけれども、これは細かい……細かいといつちや語弊がありますが、とにかく展覧会を実施するに必要な点につきましての話合いが付きましたので、それではやるということで応じて、こちらから出したのであります。政府としての交渉は飽くまで閣議の了解を得るまでは実施しなくて、閣議の了解を得てから政府の交渉として正式に交渉を別途に新らしく始めた。ただ原田さんは個人として下交渉をしておられたに過ぎなかつたというので、その点御了承を願いたいと思います。それからあとの問題は、実は初めてではないのであります御承知かと思いますが、日本の国宝なり、重要美術品なりを含んだ展覧会は、すでにボストンでも開かれたこともありますし、又ドイツでもこれよりももつと大規模なものも開かれたのでありまして、今回は初めての例であるということはないと考えておるのであります。併しながら、ただこれを短期間に急いでやつたというところに、確かに一般の国民なり、国会のかたがたから見るというと、どこか手落がありはしないか、又起る可能性があるという御心配は御尤もだと思つておるのでありますが、将来これを更に実施する場合におきましては、もつと慎重な準備と、そうして各協議も十分尽した上において実施して参りたいと考えておるのであります。
  106. 岩間正男

    岩間正男君 これは閣議に一応諮られたとすれば、政府のこれに対する政策が問題になつて来るのですが、やはりまあ今まではまだ保護法というものが制定されていない時代のことなんで、保護法というようなものができまして、それで大体その任務の性格というものが明らかになれば、私はこれは海外輸出の問題というよりは、新らしい事態で、政府としてもそういう点から、やはり日本の文化財保護の立場で新たに検討すべきじやなかつたかと思いますが、これは単に委員会だけの問題ではないのでありますから、この点は残しておきますが、内容とか、点数はどんなもので、何点ぐらいですか。
  107. 森田考

    説明員(森田孝君) お手許にリストを只今の資料の中に入れておきました。もう一つ、今の活用の問題でありますが、参議院なり、国会なりでお作りになりました文化財保護法の解釈につきまして、実は我々のほうといたしましては、参議院の専門員室なり或いは法則局なりとも十分協議をいたしたのでありますが、文化財保護法の第六條に、「委員会は、文化財の保存及び活用、」と出ておりまして、この活用という言葉が、いろいろと意見が出て来るだろうと思いますが、その一つ考え方として、先ほど委員長が申されました新らしい日本の文化を振興する一つの基盤として、この文化財の活用を図つて参りたいという委員会の御意見でありますので、これに従つてつているような次第であります。
  108. 岩間正男

    岩間正男君 この点はやつぱり山本委員が発言された時期、それが非常に重要な問題になると思う。活用ということは、それは活用するに越したことはないのでありますが、やはりまだ講和も、仮に調印されたとしましても批准前である。やはり我々の気持から言いますと、もう少し事態が本当に国家間の位置というものが対等になつて……、そういう段階だと非常に違うのでありますが、何せ今の段階でありますと、ひがみじやありませんけれども、いろいろな点に支障があるので、この点もつと慎重でよかつたのじやないかと思います。その問題と関連するのでありますが、最近新聞やラジオで報道されている問題に、我が国の国宝は、ユネスコから海外に疎開したらどうだというような要請を受けた問題、これが起つているので、これも関連しまして、これに対しては保護委員会としてはどうような態度をおとりになつていられるか、お聞きしたいと思います。
  109. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 只今岩間さんの御質問でありまするが、私どもといたしましては、今が時期でないという御意見もございますとは思いまするが、一方から申しまするというと、今が丁度いい時期である、講和会議が開かれまする際に、日本がこれだけの文化を有している国家であり、日本は古来の文化国家であるということを特に示したいという念願も伴つてつたのでありまして、これがいろいろ御議論のある点とは思いますが、そういう点どうぞお汲みとり願いたいと思うのであります。この頃こちらに参つておりますバンス氏なども言つておられるのであります。どうも日本の美術品でアメリカあたりへ行つている品物、そこらあたりにちよくちよく見かけるような日本の品物というと実にお粗末至極なものである。これが日本の美術品である、日本の美術の発達の程度はこれくらいなものであるというふうに考えられますることは如何にも心外である、世界各国の人の集まりまする際に、日本にはこれだけの高い文化を持つてつたのであると是非一つ示したいという希望が伴つておりましたがために、委員会といたしましては、事務局の案に賛成いたしました次第であります。それからなおお話のありましたユネスコでありますが、この点は新聞に伝えられておりまするような点はどうかと思いますが、これは私も今新聞を手許に持ち合せておりませんが、たしか中国の李さんのお話か何かが且つて新聞に伝えられたと存ずるのでありまして、今ちよつとこの点を調べてみたのでありまするが、第六回のユネスコ総会におきまして、すべての加盟国及び非加盟国との協議を経て、第七回総会に戦時における文化財の保護のための條約案を提出することが決議されたのであります。それは重要な文化的作品の滅失は、所有国のみならず、すべての国際社会にとつての精神的な窮乏を意味するものであるという確信に基くものでありまして、特に戦争技術の発達によりまのて非常に増大した危険から、このような文化財を守ることに努力することはすべての国家の義務であるという認識に基くものであります。この決議の際に付せられました草案の内容もここに翻訳いたして参りましたのでありまするが、これは一々読むことを避けまするが、第一には戦時の破壊に対するその国の文化財の保護の制度を確立すべき義務を確認する、こういうようなことがずつと規定されておるのでありまして、只今質問のありましたほど、まだはつきりしたところへは至つておらないように存ずるのでありまするが、なお又ユネスコのほうにも問合せて見たいと存じておるのであります。我々の知つておりますのは、この第六回のユネスコ総会においての決議でございます。
  110. 岩間正男

    岩間正男君 この事態につきましては、早速これはユネスコのほうとも内容について御検討頂きたいと思う。その上についてこれは意見を申上げたいのでありますが、こういうニユースが伝えられるほど、このことの持つている意味は非常に大きいと思うのです。これは無論国宝の保護の問題から端を発したのでありますが、併しこれは例えば具体的に日本の国宝保護という問題と関連して来ますと、どうも戦争の危機が非常に日本にあるのじやないかというような懸念から、こういう問題がこれは日本としては考えられる。一般的な問題として世界の国際的な文化の保護という立場からこれは提案されたのかどうか、これは具体的にはその点が明らかでないのでありますけれども、日本人の立場にして見ますと、とにかくこの島国が非常にそういうような危機にさらされているというふうな感じを持つので、そういう点で国民の感情なんかから言いますと、やはりそういう事態に備えてすぐ手を打たれるということから起る事態ですな、そういう一つの不安な要素というものについて関連して来るわけです。だから問題は、やはりどのようにして日本の平和を守るかという問題、戦争を避けて同時にそのことと関連して、こういう文化をはつきり守つて行く、こういうところが非常に重要なわけで、この問題が例えば非常にそういう危険があるから、日本の国宝についてはそういう処置をとらなくちやならないというふうなことになりますと、これは日本一つの輿論に対しては非常に影響を持つ、こういうふうに考えられるのですが、この点について今やはりいろいろな学術会議関係学者の間あたりでも非常な問題になつておるように聞いておるのでありますけれども、文化財保護委員会としては、どういう対策を、仮にそういう事態が起つた場合にお持ちになりますか、大体の委員長のお考えでもいいのでありますが、お聞きしておきたいと思います。
  111. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) これはユネスコそのほかの国際的な機関に協力をいたして、文化財の保護に努めなければならんと存じております。実はこれは私まだこの委員の一人になりません以前、即ち委員会が成立いたしまする以前、博物館長をいたしておりました当時から、若し日本が戦争にさらされるような場合には如何にこれを保存すべきであるか、保護すべきであるかという問題には、いささか頭を悩ましておりまして、成るべく通の人の意見を聞きたいと存じまして、いろいろ会議などを開いておつたのでございますが、これはまあ具体的なお話をいたしてもいいのでありますが、事実を申しますと、今日のところまだこれぞと申しまする名案に到着しておらんのでありまして、甚だお恥しい次第ではございまするが、なおこの研究を進めて行く覚悟でおるということだけを申上げるにとどめておかなければならんと存ずるのであります。それからユネコスの準備会が今御承知の通りできております。これは文部省で開きましたり、外務省で開いたりいたしておるのであります。私も委員の一人になれということでありまして、実は私甚だいろいろ委員会などに引出されまして、本職のほうが、文化財保護委員の職責を果すのに差支えが起りはしないかという心配もございますので、実はこれは御免こうむりたいということを申したのでありまするが、むしろ文化財保護委員長なるが故に、特にユネスコの委員の一人になれということでございまして、これに加わりまして、でき得る限り出席することにいたしておりまするが、私が事故がございまして、出席できませんときには、必ず局長なり、次長なりに出席してもらうことにいたしておるのであります。これらには、先ほどお話のありました日本学術会議のほうから出席せられておる人たちもございまするし、そのほかの重要な日本の文化団体からの委員も出ておられまするので、これらの諸君と協力いたしまして、文化財を守るという上におきまして、最善の策を講じて参りたいと存ずるのでございまするが、先ほども申上げましたように、これぞというまとまりました考をまだ持つことのできませんことを深くお詫びいたさなければならんのであります。
  112. 岩間正男

    岩間正男君 非常にやはり重要な対策でありますから、これにつきましては、各方面の意見を急速に検討されまして、適切な対策をおとり頂くことを切望したいと思うのであります。これは我々の漠然としたこういう対策についての要望になるわけでありますが、何と申しましても、この問題はやはり海外に日本の文化財が非常に流失しておるという最近の傾向の問題と関連させて、どうしても考えられねばならんと思うのであります。外国に疎開するという名目で日本の文化がどこに保護されるのでありますか、その保護先、更にそれによつてどういう散逸が起らないものでもないし、破損が起らないものでもない。やはり日本の民族の文化は日本民族の愛情によつて守るというのが私は根本原則になると思う。この点をやはり一番基本的におくことが一つであります。そうして海外に流出し、散逸し、破損するものを防ぐ、こういう基本的な態度が一つ。それと関連しまして、先ほどの戦争の問題でありますが、もう戦争をあらゆる機会に避けるという万全の努力と共に、やはりこの民族文化を日本の国土の中にこれを保存して、それによつてなお戦争を避けるというほうに最大の努力を尽して、こういうものと関連して私は行くのが基本的な政策になるのじやないか、こういうふうに考えられるのであります。何か疎開をしてしまつて、そのあとには戦争の危機が来るというのでは問題があべこべになるのでありますから、やはり我々は日本の平和を愛するという、この平和の裏付けとしてのこういうふうな民族の残した文化というものを飽くまでも守り拔く、このことは全く一体の問題だと思いまするので、こういう精神にやはり徹して、これは政策をお立てになることが最も重要な問題だと我々としては考えるのでありますが、この点について委員長さんの御見解を承わつておきたいと思います。
  113. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 只今の御質問でございまするが、我々といたしましても、戦争を回避するということ、これが文化財の保護の第一義と考えておりまするのであります。この点はかれこれ申すまですなく、すべての人々が皆持つておる考えと存ずるのであります。なお日本の文化財は日本人みずからが守らなければならん。こういう点も異論はないのでございまするが、この頃伝えられておりまするほど日本人の文化財はその海外には流出しておらんと私は考えております。この点はやはり早くかつ念頭にありまするので、博物館におりました時代から、係りの人々の報告をしばしば受けておるのでありまするけれども、海外へ出ておりまするものは案外少いように存じております。幸いにしまして重要文化財の大部分、もう殆んどすべてが日本に保存されておるのでありまするからして、今後の努力によりまして、これを持ち耐えることができるのではないかと思います。余りまあけちけちした考えを持たずに、或る程度までは外国に出すこともいいのではないかと考えておりまするし、又博物館におりました時代などは、私の解決を求めました場合には、この程度のものは外国へ出していいという判断を下したことなどもあるのでありますが、どうも何と申しましても重要な文化財は日本において保護し、日本の文化の発達に貢献したいと、こう考えておりまするので、この点には力を注いでおるのでございまするが、新聞などで非常にたくさん海外へ流出しておるかのように伝えられておりますが、どうも誇張が多いように存じまするので、この点は又本間課長あたりから、若し必要がございまするならば、詳細の御報告を申上げさせることにいたします。
  114. 山本勇造

    ○山本勇造君 このサンフランシスコの問題は、大分長くなつておりまして、ほかに質問したい人があると思いますから……。私はまだどうもサンフランシスコの問題は本当に腑に落ちないのでありまするけれども、いつまでもこれに引つかかつてると、ほかの質問ができなくなりますから、一応私ここで大体打切りたいと思います。ただ先ほど委員長の説明で、次官会議にかけた、或いは又専門審議会にもかけた、閣議も通つたというふうなあれで、形式的には確かにそういうふうになつているのでありますけれども、又私自身が聞きますところでは、次官会議のときでも、これは相当問題になつたように私は聞いております。まあ専門審議会でも、委員会できめてお出しになるというなら、それは委員会の責任なんだというふうな言葉もあつたようで、審議会自身にも多少僕はこの点について疑問があつたのであります。それは出すとか出さないとかいうことは、専門審議会の問題でないために、問題にはならなかつたのではないないかと思います。又閣議におきましても、文部大臣も殆んど喙を容れられないほど強いものになつているこの文化財保護委員会できめたことを、当然文部大臣としてはそれを支持しなければならない立場でやつたのでないかというふうななことも我々には考えられるのであつて、それらの文部省との関係を知りませんから、今日ここに大臣なり次官が来るならば、私質問したいと思つているのですが、何か今次官が衆議院に出てるとかいうことなので、後刻若し見えられたら、それらの点も尋ねて見たいと思つておりますが、余りに長くなりますし、又あなたがたの考えかたも決して間違つているというわけではなしに、かなり見解の相違とポリテイカル・ボードとしてのやりかたの問題なので、非常に強い委員会だけに、私はできるだけ慎重な態度を以てやつてもらいたい、何もこんなに急いでやることはないじやないかということに私はあれがあるのです。先ほど申しました通り、時期とやり方についてはなお私は疑問を持つているわけなんですが、くれぐれも私この際申上げて置きたいことは、保護委員会なるものはポリテイカル・ボードなんですから、このポリテイカル・ボードに対して、どこまで力を注がれまして十分に審議して頂きたい。どうも私はやはり回数や何かについてでも、これでどれだけの回数をこの問題のためにお使いになつているかというような点についても、少し私は問題があるのですけれども、あまり細かくなりますし、長くなりますから、又はかのかたの質問があると思いますから、この問題は一応打切ることにいたします。
  115. 高橋道男

    ○高橋道男君 私は時間の関係もありますから、国宝の再指定の問題、それから正倉院の問題、それからもう一つ福島県尾瀬沼の問題について御質問を申上げたいと思います。文化財保護法の施行に伴いまして、国宝の再指定が行われ、すでに第一回の発表があつたのでありまするが、それについては決定の基準になるものもお定め頂いておるのでありますが、具体的にこの国宝として再指定されたものと、それから基準になつておるものと比べて見ますると、やはりこの基準になつておるものは相当抽象的にならざるを得んと思うのであります。国宝自体がそれぞれ個々の価値を持つているわけでありますから、おしなべての基準を規定することは、これは困難なことだと思うのであります。そういうことからして、結果からいたしますると、次に第二回、第三回と指定が殖えるわけでありまするが、結果から見ますると、この前に国宝になつたものと、将来国宝に指定されるものとが全く同一になつてしまうのじやないか。勿論それは価値の上から言つて同一になることは至当であるかも知れませんけれども、そうなつた場合には、結局労力を二倍に使つておるというような結果にもなると思うのでありまするが、私が考えて、一応想像しておるような国宝の再指定が前のものと同じようなものになることがあるのかどうか。そういう何かあらかじめの方針でもあるのかどうか。これは定められた基準と相照してお考えのほどを先ず承わりたいと思います。
  116. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) この点でございまするが、我々は初めから重点主義をとりまして進んで行く考えを持つておりまするので、これまで国宝に指定されておるものをすべて新らしく国宝にするというようなことはございませんで、我々といたしましては、件数を減らして、そして真に文化財として最も重要なものを、国宝として異存のないものに対して十分の保護を加えて参りたい、この方針で進んでおる次第であります。
  117. 森田考

    説明員(森田孝君) 先日お配りしました国宝重要文化財の指定基準を適用いたして考えますと、我々の局の専門家の見通しでは、従来の国宝の三割程度があの選定基準で新らしい国宝になるだろうという見通しを持つておるのでございます。
  118. 高橋道男

    ○高橋道男君 従来の国宝の三割程度を指定されるという一応の御見当をお持ちのようでございますが、それならば指定審議潮間を成るべく短かくして頂いて、その指定期間を成るべく短かくして頂くということが、従来国宝を持つておるかたがたが、場合によつてはこれは国宝になるかも知れない、或いは国宝から除外されるかも知れないという懸念も持たれると思いますので、従来の国宝であつたものは、すでにはつきり所在も所持者もわかつておるわけでありますので、その審議期間を成るべく短かくして頂くようなことをお考えになつておるかどうか、これを重ねて伺います。
  119. 森田考

    説明員(森田孝君) 成るほど御尤もなお話でありますが、御承知の通り、以前に指定いたしました国宝の台帳が戦災で焼けております。新らしい台帳はその前の台帳の写しを基礎にいたしまして、目下調整いたしておるような状態でありまして、数は少いのでございますが、選択範囲は広いわけでございまして、その範囲の広いものを全部調整して見ませんと数がはつきりしません。そういう意味で確かに外部から見ますと遅れているような恰好に見えるのでありますが、あらかじめ事務当局なり、その他で頭からピツク・アツプしてやるのでなく、一応全体の台帳から整備して、そのうちからやつておりますので、時日を要するような点があろうかと思いますが、御了承願いたいと思います。
  120. 高橋道男

    ○高橋道男君 余り細かなことはお尋ねできないと思いますが、只今国宝の指定に関連いたしまして、正倉院の御物の問題もございますが、御物という言葉を使つていいかどうか知りませんが、これは私は国宝として最高のものではあるまいか、全部がそうであるとは言えないかも知れませんが、大部分は大事なものであると思うのでありますが、これが保護法によつて対象となるべきものであるのかどうか、或いは先ほどから山本委員がおつしやつたように、ポリテイカル・ボードという立場からは、こういうものの扱い方についても相当の責任があるように思うのでありますが、正倉院の御物の扱い方につい、保護法の施行法との関連を委員会のほうでどういうようにお考えになつておるか、お伺いしたいと思います。
  121. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 正倉院の御物に関しましては、これは宮内庁に委員会ができております。安部能成氏を委員長とする委員会ができておりまして、これが專ら当つておるのでございますが、無論これも只今お話のありましたように、日本最大の文化財でございますので、当然文化財保護法の適用を受けるべきものであると考えられるのでありまするが、何分歴史を尊重しなければなりませんので、宮内庁方面と折衝いたしまして、いろいろ只今協議を重ねておる次第でございまして、その結果決定いたしましたならば、又御報告申上げたいと存じます。
  122. 山本勇造

    ○山本勇造君 今の国宝につきましてちよつとお尋ねいたしますが、旧台帳が焼けてしまつたというお話でありますが、今までのあれによりますと、旧国宝のあれは六千九百三十三点というふうに出ておりますが、このうち焼失してしまつたものやら、何かがあるかと思いますので、大体それによると、およそ七千点ほどに考えられますが、そんなものでございますか。それから同時に重要美術品のほうは八千三百大十九というように計算が出ておりますが、これを八千数百と見ると、両方まぜると一万五千以上に上ると思いますが、大体そんなものでございましようか。
  123. 森田考

    説明員(森田孝君) 七千四百八十でございます。
  124. 山本勇造

    ○山本勇造君 国宝は七千四百八十点、それはここに出ておるのより多いですね。それから重要美術のほうは…。
  125. 森田考

    説明員(森田孝君) 正確な数字を持つて参りませんでしたが、大体山本委員の今言われた数字に近いと記憶しております。
  126. 山本勇造

    ○山本勇造君 それで先ほどのお話だと、約三割程度に絞り上げるとすると。そうすると、二千数百点くらいになる、こういうお考えですか。
  127. 森田考

    説明員(森田孝君) 私の申しましたのは、一応この間お配りいたしました国宝指定基準から眺めると、三割程度になるであろうという見通しを持つておるというので、三割程度に初めからするつもりで選定するのではないのであります。この点御承知願います。
  128. 山本勇造

    ○山本勇造君 もう一つついでに伺いたいのは、国宝というのと重要文化財というのと保護の仕方をどういうふうに変えるか、その点をちよつと私伺つておきたいと思います。
  129. 森田考

    説明員(森田孝君) この点まだ詳細な具体的な問題については、例えば予算についての補助の割合をどうするとか、或いは管理費用をどうするとか、或いは防災関係施設費用をどうするか、例えて申しますと、仏体のAクラスといつては語弊がありますが、国宝と重要文化財とではその保存設備なり、防災設備なりで補助の仕方が違つて来るのであります。かような意味においての違が当然出て来るものと考えておりますので、具体的に防災設備について重要文化財はしない、国宝に付するというふうにはつきりと区別を設けるということはしませんで、重要文化財につきましても、なお重要なものについては、例えば保存設備について考えるというふうに一応いたしております。国宝につきましては、無條件に防災設備、保存設備を優先的に考えるということしか現在取扱つておりません。
  130. 山本勇造

    ○山本勇造君 国宝に指定するからは相当に国家で保護しなければいかんと思いますが、今の御説明だと、どの程度にするのか、重要文化財との関係も、ただ幾らかの程度の差があるだけで、或る程度以上には特にわからないのですが、これは選ぶ以上相当に考えておかなかつたら、選ぶ際に困りやしないか。簡単に三割に絞るとしましても、二千数百点となる。それをどういうふうにやつて行くのか、それらの点僕は委員会としてよほど考えておかなければならんと思いますが、若し考えておらなければ甚だ遺憾と思いますので、急速にそれらの点を考えて、あとどれだけ選ばれるか知りませんけれども、よくその辺のところをちやんとさしてもらわないと、折角国宝だ、国宝だと言つても今までの国宝と同じことで、ただ名前だけ付けた、猫によだれかけをくつつけたようなもので、何の価値もないのではしようがないので、その意味で今度の文化財保護法というものは、相当に費用というところから立法しているから、その点は十分に是非考えてほしいと思います。
  131. 森田考

    説明員(森田孝君) 私の申したことにちよつと語弊がありますけれども、方針としましては、国宝といいますと、例えば修理保存についても全額補助、それから重要文化財については従前通り七割乃至八割の補助というような、方針としてはそういう方針は書いてありますけれども、併し予算上それが実現できるかどうかということに、これこれの努力があるという意味でちよつと申上げたので、少し言い足りませんでしたので補足いたしておきます。
  132. 山本勇造

    ○山本勇造君 御物の問題、これは非常にデリケートな問題で、さぞかしあなたがたのほうも面倒だと思うのですが、やはりこの問題は重要、何と言うのですか、専門審議会か、あのほうでも出ているやに私聞いております。それで国宝を選ぶのであつたら、先ず第一にあれを考えなければならなかつたのではないかと思うのでありますが、併し先ほどお話したようにデリケートな問題もありますのですが、一体宮内庁のほうと、それから文化財保護委員会のほうとどのくらい交渉があつて相談なり、お考えになつておるか、それを一つ承わりたいと思います。
  133. 森田考

    説明員(森田孝君) 申上げます。実は委員会委員長並びに委員と、只今委員長から御報告になりました宮内庁における正倉院の調査委員会の主立つたかたがた並びに宮内庁の主立つたかたがたとの懇談会が向うの要求で実はあつたのであります。そうしてどう取扱うかということについていろいろ懇談があつたのであります。それから更に専門審議会での議論の結果をも参考としまして、私から向うの宮内庁の次長に対しまして、早急解決についての懇談を数回いたしたのであります。その結果宮内庁のほうにおきまして、これが今後の調整についての一応基準と覚書の交換をして、それに基いて処置をして行くというように話をきめまして、目下宮内庁におきまして、その覚書の草案を宮内庁側で作るという話合で、それをお作りになつているのが現状であります。で、私のほうとしましては、それができ上り次第、双方で更に十分協議をし、そして又適当なほうとの相談も必要であれば、その場合に相談をいたしました結果で、取扱いの基準を定めて行きたいというように考えております。
  134. 山本勇造

    ○山本勇造君 法制局の第二部長が見えておりますので、御物というものの考え方は、法的にはどういうふうになるか私わかりませんが、一方で国宝、一方で御物という、この国宝と御物はどういう関係になるのか、やはりはつきりさせておいたほうがいいような気がいたしますので、この際僕は一つ法制局の見解を承わつておきたいと思います。
  135. 岸田實

    ○法制局参事(岸田實君) 御物につきましては、文化財保護法を制定いたしますときに、すでに一応問題といたしまして検討したのでございますが、まだ私としても十分に突込んで完全な研究を遂げておるとは思いませんが、大体の只今まで研究いたしました程度におきましては、これは国有の財産、広い意味におきましては国の財産ということに現在においてはなるのではないであろうかと思つております。ただ御物という言葉に示されますように、天皇の宝という意味がありまして、普通のいわゆる国の財産とはかなり違つた内容もございますけれども、法律的には純然たる天皇の財産というものではなくて、やはり公人たる天皇に属するところの財産、これは広く申しますと、国の財産ということになるのではないかというふうに思つております。文化財保護法を立案いたしましたときに、国有の財産につきまして、国有財産たる重要文化財、国宝等の取扱いにつきまして詳細な規定を設けておるのでございますが、その際にも御物もその中に一応入りまして、文化財保護法の適用を受ける対象になるという見解の下に私ども立案いたしたのでございます。大体さようでございます。
  136. 山本勇造

    ○山本勇造君 大体それでよくわかります。勿論私はその国宝に指定されたからと言つて所有権は移動するわけじやないのですね、仮に誰か個人が持つているものでも、国宝に指定されたつて所有権は別に移動しないのですからね、正倉院の御物のような、この第一級の国宝であれば、いわば国宝第一号というふうなものに指定されるのが至当のような気が我々には思えるのです。又専門審議会でも、それに類するような意見が出たのは承知しているのですが、それらのことについてでは、宮内庁とはどういうふうな交渉になつておりますか、どうも何だかさつきの点は僕は何か書付けとか何とかというのははつきりしない。
  137. 森田考

    説明員(森田孝君) つまりそういう場合の、一応御物を例えば指定いたした場合には、これが現在の御物の管理は宮内庁でいたしておるわけでありますね、それに対して今度は文化財保護委員会においても指定しますというと、これに対してのいろいろの命令権なり、指示権なり、或いは勧告権というものは与えられるわけなんですね、その結果調整をどういうふうにして行なつて行くかということが、同じ国の官庁でありますから、その官庁間においても或る程度のやはり申合せと申しますか、こういうものが必要になるわけであります。その申合せをどうするかという点において一応向うの希望條項を作つておいて、そうしてそれを我々のほうと協議の上申合せ條項をきめて行こうという意味の申合せ事項を向うで今作つているという状態であります。
  138. 山本勇造

    ○山本勇造君 結局個人が持つてつて、出品命令を受けたとしても、何らかの理由で今出品できないという工合に断わることもできますね、殊に正倉院のように勅封になつているものを取出すといつたつて出せるものではない。幾らでも仮に向うから言つたとしても断わることは何も何でもなくできるものなんですね、所有権に何らのあれを及ぼさない。つまりデリケートといえばデリケートですが、そんな奪うとか、何とかという問題は入つていないのですから、委員会が一致になつて話すれば、宮内庁で十分わかるだろうと思うのですがね。この点がどうもまだ十分じやない。
  139. 森田考

    説明員(森田孝君) 仰せの通り、所有権には変更ありませんが、管理権に相当の修正が加えられるわけです。その点は結局一応話合できめて行こう、こういう意味であります。
  140. 高橋道男

    ○高橋道男君 次に福島県の尾瀬沼の問題でありますが、尾瀬沼は恐らく名勝天然記念物かと思うのであります。ところが電源開発の問題に関連しまして、最近非常に焦点化されて殊に最近の報道が正しいといたしますれば、通産省か或いは建設省の関係から、司令部か、アメリカの関係当局に依頼して、開発の問題についての調査を依頼したというようなことを聞くのであります。これは大きな開発事業でありますから、そういう調査に着手して見通しを得れば、恐らくこの電源開発の有数な場所として施行をされるのじやないか、そういう場合に、こちらの関係の法律によつて原形の変更に関して相当その強制権はあるといたしましても、別の圧力によつて必らずしもこちらの主張が通らないというようなこともあり得ると思うのであります。それでほかの関係当局、関係省において、そういう具体的な調査が施行されるに関して、文化財保護委員会として何らかの対策なり、或いは連絡なり、そういうことを将来の問題としてとつておられるかどうか、そういう問題についてちよつと……。
  141. 森田考

    説明員(森田孝君) 尾瀬沼の問題につきましては、史蹟名勝天然記念物、今更に念のためにもう一遍調べるように電話をかけさせておりますが、史蹟名勝天然記念物のいずれにも現在指定はされていないはずだと私は記憶いたしております。併しながら指定すべきものであるという考えは持つております。ただ指定の手続がとつてられないと考えております。というのは、あれは御承知の通り三つの県に跨がつておりまして、非常に指定に困難を感じたために後廻しにされたということを、これは文化財保護委員会のとききの前の話でありますが、聞いておりまして、それが未だにそのままになつておる。従つてむしろこの問題については、実質的にそういうものであるというので、我々も又文部本省の学術資料としての学術局の管掌と、それから厚生省のほうにおきますところの国立公園の関係の管掌と、この三つが協同いたしまして、建設省に設けれらております委員会におきまして、協同でこれが電源開発に関連しての事業の促進に対して、何と申しますか、抗議を申込んで、これに対して必要な又いろいろな工作を行うというような手続きを今までして参つたのであります。又各種のこの重要性につきましての国民の認識を新たにするための宣伝を行うというようなこともいたして参つたのでありますが、最近におきましては、私のこれは聞き覚えでありますので、間違いかも知れませんが、委員会におきましては、厚生省や文部省のほうのいろいろの関係者を拔きにして進められつつあるという、これは噂でありまして、速記して頂いてどうかということは問題でありますが、聞いております。本省におきまして、主として大学学術局のほうにおきまして非常に関心を持つておられ、これに協力しておるというような次第であります。
  142. 高橋道男

    ○高橋道男君 相当の連絡をとつておられることは結構でありまするが、今伺うと、これは天然記念物であるかどうかわからんということは、やはりこれにつききましての対策を遅らせることであると思いますので、事が意思と違つて運ばれて来た場合に、あのときああしておけばよかつたというような、あとで悔をよぶようなことがあつては困ると思いますから、成るべく早くそういうことがないように処置を講じて頂きたいということを要望して私は質問を終ります。
  143. 森田考

    説明員(森田孝君) 実は今の史蹟名勝天然記念物につきましては、これが管理者、所有者の同意を得るということになつておりまして、三県に跨がつておるので、三県の同意を同時に得ることが今までできなかつたからして、こういうことになつておる、それで又この問題が出たから、三県はますます、承諾しなくなつたというような報告を受けておるような状態であります。念のため申上げておきます。
  144. 岩間正男

    岩間正男君 先ほどの国宝の指定ですがこの指定件数が現在非常に少いのであります。この点は無論予算によつてこれは拘束されておるのですが、それからそれに関連してお聞きしたいのは、そういう予算というものを考えなければ……、ところがどの程度まで国宝に指定したいかというような調査とか、そういうようなものができておりますかどうか、そういう案があつたら、これはどこをどの程度までということを発表される、これは予算の今後の審議に非常に重要だと思うのです、で、そういう点から文化財保護委員会としてできておる成案のようなものがありましたら、これは発表して頂きたいと思うわけです。
  145. 森田考

    説明員(森田孝君) 今の点はそういうあれはないのでありまして第一次的には現在の重要文化財、従来の国宝でありますが、この資料を整えるという作業をいたしておるのでありまして、又同時に重要美術品の資料を整えまして、その中で重要文化財に出陳せらるべきものの資料を作つて参るという意味で、重要美術品の今まで指定されておるもの全部についての資料を調整しておるのであります。従つて事務的にはあらかじめこれとこれは指定してもらいたいという予定を作つてつていないのでありまして、これは実際上の問題でありますが、それでこれを抽き出すということはちよつと困難だと思つております。
  146. 岩間正男

    岩間正男君 困難だというのは、それはまだ先に行つてやられるという考えがあるというのと違うのですか、つまり我々当然現在あるものでどの程度まで、これは望ましい状態、つまり理想的な状態ではどの程度まであの予算が必要であるかということです。それを検討することが非常に今後の予算審議の上にも重要なんです。そういうときに、例えば国宝としてはどの程度まで指定したいのだという案があるかないかということで、すべては今後の予算獲得の根拠を見出すために重要じやないかと思うのです。そういうことが今ないとすれば、早くこれは作つたほうがいいのじやないか、無論日本の財政の事情では、それはなかなか達成されないと思うのですが、達成されなければならない、達成されない事情があればあるほど、やはり少くとも最低これだけの範囲内のものは必要なのだ、こういうふうな見通しがないと、我々としても今後の予算を獲得する闘いの上において、やはり根拠がないということになりますから、そういう点についてどういう考えを持つておられますか。
  147. 森田考

    説明員(森田孝君) それは概算的には従来の国宝のおよそ三割という見当を付けてやつておるわけであります。具体的にどれどれということはちよつと言えない、こういう意味のことを申上げます。ただ見当として三割程度だろうという見当を付けて仕事をしておるという意味でございます。
  148. 岩間正男

    岩間正男君 そうですか。やはりそれはあの予算をとる上には、何と言いますか、非常に根拠が弱くなる。三割程度と漠然としたものですから、それはやはり一応の成案でいいですから、お作りになつて頂きたい。我々はそういうものがありますと、今後の予算戦でできるだけそういう予算獲得の方向に行きたい、無論そういうことを考えておるものですから、これは事務的にやられるのはむずかしいでしようが、早くそういうような資料を整えられるということが私は重要だと思います。そうでないと、逆に予算の範囲内で縛られておるのじやないですか。現在そういう対策が反対になつていると思うのです。
  149. 高橋誠一郎

    説明員(高橋誠一郎君) 至急研究いたしたいと思つております。
  150. 山本勇造

    ○山本勇造君 それに関連して、どのくらいの期間で以て一万五千を選び上げるか、その期間の大体の見通しを伺いたい。
  151. 森田考

    説明員(森田孝君) 今或る程度審議会その他の予算を要求して、我々の要求が通ればもつと早まると思いますが、今年の程度の予算を目標にいたしますと、大体五カ年……。
  152. 山本勇造

    ○山本勇造君 そんなにかかるのですか。
  153. 岩間正男

    岩間正男君 五カ年……。
  154. 山本勇造

    ○山本勇造君 それは慎重にやらなければならんですから、むやみにただ早くやれということだけは私言えないのですけれども、併し一方からいうと、すでに国宝というものが、前の国宝がこれだけ、重要美術品がこれだけというようなものが新たに又出て来るかも知れないが、そういうので全く何もないところからやるのと違つて、ほぼ昔のものがあるのですが、勿論慎重にやらなければいかんのですから、決して私は早いことを望むわけじやありませんけれども、もう少しできないものでしようか。或いはこの頃のあなたのほうのあれを見ていると、大分宣伝のほうに力を入れて、サンフランシスコの新聞にあなたのほうの名前が出ていたり非常に結構なんですが、宣伝よりも文化財保護委員会の内容というものがちやんとできて、こういうものだということをしてから宣伝も無論やつちやいかんというのじやないのですが、少しそういう薬がきき過ぎておるように私には思えるのでありまして、どうか内容の充実のほうに力を入れてもらいたいと思います。殊に保護委員会は何といつてもしばしば申します通りポリテイカル・ボードなんですから、その点を忘れないで、この立法の精神を十分に生かしてもらうようにくれぐれもお願い申します。なおまだお聞したいことはあるのですけれども委員長のほうから、ちよつとあれがありましたし、若木君の質問もあると思いますから、一応私は今日はこれで打切ります。
  155. 岩間正男

    岩間正男君 もう一点お伺いしておきたいのですが、国宝から指定洩れになつたものとか、そのほかにいろいろな学術上重要な文献とか、そういうものについてやはりここで一つの対策のようなものを考えられておられると思うのですが、こういう点についても手を廻されることが非常に重要じやないかと思うのです。こういう対策を我々はいろいろ聞いておるのでありますが、どういうふうになつておりましようか、こういうものについて……。
  156. 森田考

    説明員(森田孝君) 指定洩れと申しますと、ちよつとどういう意味でございますか。
  157. 岩間正男

    岩間正男君 指定から外れたものですね。国宝でなくなる、そういうものとか、それから文献類のようなものですからね。つまり無形文化になりますか、そういうようなもので、相当重要な、例えば我々二、三聞いたところでは、島原の某文庫の著名な切支丹関係コレクシヨン、京都の某神道家の神道関係の貴重書群、旧堂上華族、大名の全般に路がる所蔵資料、こういうものが非常に散逸しておるということを聞いておる、こういうものについてはやはり直接の対象にはならないのかも知れませんが、無形文化とか家術資料という立場から、これも併せて考える。やはり今の機関の中ではそれをやるのは少いですが、無論大学の研究室やそういうところもやつておると思いますが、総合的にやはり国家機関としてやるには、一応対策として考えておいて頂くのが非常にいいのじやないか、こういうふうに考えております。
  158. 森田考

    説明員(森田孝君) 只今の国宝と言いますよりも、むしろ重要文化財、国宝と重要文化財につきましては、とにかく文化財保護委員会側の管理なり、責任を持つてこれの保存を図るということができるのでありますが、重要文化財からも更に洩れたものにつきましては、目下各都道府県に対しまして、都道府県の文化財保護條例というものの制定を慫慂いたしておるのでありまして、これが目下数十県において研究せられ、その中には草案ができまして、すでに都道府県の議会にも提案することになつておる県もあるのでありますが、そうして県の指定の文化財というものができまして、そうしてその県の指定の文化財として県においてこれが保存なり、或いは活用を図つて参るというようにいたして参ろうと思つて、目下これが慫慂に努めておるようなわけであります。なおその無形文化財の問題につきましては、文化財保護委員会が成立いたしましてから、先ほど申上げましたように基本調査に忙殺されていまして、今まで調査資料が御承知の通りに一つもないのでありまして、なお都道府県におきましても、やはり半数は一応の報告が参つたのでありますが、なお他の半数においては現在においては更に調査を進めておるような状態でありまして、今後これが調査を進めて、委員会においてはしつかりした台帳を整備いたしまして、その上で専門審議会において保存すべきもの、助成すべきものの撰択の基準は得てありますので、具体的にそれで選んで頂いて手を着けて参りたいというふうに考えております。
  159. 加納金助

    理事加納金助君) 文化財保護につきましては質問終りましたか。
  160. 山本勇造

    ○山本勇造君  一応今日はこれだけにとどめておきましよう。あなたのほうのあれもあるようだから……。   —————————————
  161. 加納金助

    理事加納金助君) 只今教科書発行及び検定の件について若木君より発言を求められましたが、許可することに御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 加納金助

    理事加納金助君) 御異議ないようでありますからどうぞ。
  163. 若木勝藏

    若木勝藏君 私はこの際、教科書対策の問題につきまして、実は文部大臣の出席を要求したのでありますけれども、お見えにならないというので、政府委員のかたがたからちよつと伺いたいのであります。  この問題は、私は第九国会の文部委員会においても質問したのでありまするが、結局父兄の声といたしまして、非常に教科書が高くて困る、一年生でも四百円或いは五年生あたりになると八百円というふうなことになりますと、それがたくさんの子弟を学校に送つておるところの父兄になりますと、千数百円に及ぶということになつているのであります。その点につきまして、これは何とか教科書を安くしなければならないということを私は考えておつたのであります。一方父兄の方面におきましては、そういう声があると同時に、発行者側の方面の声を聞きますというと、これは結局供給を円滑にやるためにはいろいろの支障がある、いわゆる金融方面などの支障も非常に多い、こういうことが言われておるのであります。そういう点から文部省としても考えられたのでありましようが、先ず今度の来年度予算に教科書公社の設置を考えられて、そうして予算に四億円を組んでいる、そうして大体教科書会社八十社の金融援助を、これを以て目的とする。先般の会計課長の予算の説明においてはそういうことであつたのであります。そこで会計課長のお話によりますというと、大体月二十六億を要するものに対して、預金部の資金からこれを借入れて、そのうち十五億程度は融資したい、こういうような説明があつたのでありますが、この点につきましては、局長さんのほうでどういうふうにお考えになるか、もつと私は確かめたいのであります。その点について……、
  164. 關口隆克

    説明員(關口隆克君) お答え申上げます。大体後段のほうの公社に関係しましたことを先に申上げます。  公社の名称が適当かどうかということについては問題があると思つております。まあむしろ金融公庫とか、金融金庫というのが差当り妥当ではないだろうかと思つておりますけれども、先ず最初の腹案としては、公社というのが適当だという答申と言いますか、意見と申しますか、出たのでありますが、その意見は、文部省にございます教科書用図書検定調査審議会という教科書に関する万般のことを相談する審議会がございます。その審議会のほうでそういうような案が出て参りまして、一応我々のほうとしては、取急ぎその案を元として、最初の予算を一通り組んで見たのであります。中味は会計課長が先刻申上げましたのとほぼ同様でございます。併しこれは先ず一応の案でございまして、このことについては大蔵当局等ともなお折衝を続けております。その概要を申上げますと、何分にも利が高く行きますので、安い利で以て金融をすれば、それだけ教科書製造原価も安くなります。又お金を借りることについて、現在では短期の金融が主でございますから、二月或いは三月ということで借替え借替えで、このようにするということでは事務上にも支障を起しておりますので、年間の計画を立てて、その計画に基いて金融が進行して行くということであるならば、そのほうの神経を使つたり、苦労したりする点もなくなりますので、よい教科書を作るについて、会社側としても全力を結集することがしやすくなるのではないかというように考えております。併しいずれにしましても、お金を借りて貸さなければなりません。貸す元をどこに置くかと言うと、これは一般の普通の市中銀行の融資或いは日銀の普通の資金の融資ということでは困難がございましたので、俗に言う資金運用部資金と我々申しておりますが、郵便貯金関係のほうの大蔵省のほうで管理しておられる金のほうから低利で融通をしてもらう、低利で融通されたものを公社と申しますか、公庫と申しますか、そこで一応預かつて、それを必要な会社に必要な時期に必要な額だけ貸付ける、その間に若し普通の利と言いますと、まあ九分五厘くらいというふうに聞いております。資金運用部から六分で貸して頂いて、それを九分五厘で渡すとするとそこで三分五厘という利が出て参ります。その利を事務費に当てて行くという考えでおります。ただ初年度だけは、最初お金を借りて貸付けて、事業が始まりますまでの間の三カ月なり、四カ月というものは、これはお金が一文もなく経営しなければなりませんし、それに対する準備費或いは事務所であるとか、諸度調弁といつたような金額、いわば資本金に類する金額も当初要ることであります。又資金を貸付けるについても、とにかくそこに何らかの資本のないものには貸付けることも非常に困難かと思います。一応一般会計のほうで、要するに主計局の査定をする一般の予算として四億程度のものを若しもらえるならば、それを初年度の最初の資金に当てる、年度末に返し切れない資金を返すまでの間のやり繰りの、次年度に繰越すというのを勘定しますと、四億あれば十分であるということから、一般会計の予算の要求としては四億を一応しておるのであります。併し我々経理のことについては甚だ申訳ないのでありますが、微力でありますし、なかなか事柄もよくわかりません。併し大蔵省としましても、お金を貸すほうは資金運用部のほうの関係の銀行局、一般会計のほうは主計局、両方に今御相談をしております。こちらのほうで他のいろいろ実例もありますが、そのほうと睨み合せて御相談つた上で、何とかこのことはものにいたしたいと考えております。なお預金部のほうのお金が早くたくさん貸して頂ければ、いわゆる最初の資本金に当る四億なるものはもう少し減らすことができるのではないかというような考えも出て来るのではないかと考えております。大体現在のところでは教科書審議会の研究された案に基いて、一応事務的に整理をしまして、大蔵当局その他の関係筋と事務的段階において折衝中でありますということで、予算案としましては、省議決定の上一応あの案を用意いたしました。大体現在までの概要はさようになつております。なお最初のほうの値段の問題でありますが、値段につきましては、教科書でどうしてもこれだけは必要だという教科書はそうたくさんはないのですけれども、学年が進むにつれまして、いろいろと参考書的な意味の書物がいろいろ殖えて参りますので、それらを十分に使つて行くと、お話のように相当高い金額になつて来るかと思います。それから一年、二年などは色刷りを使う関係で、きれいな教科書を作つて行くということもありまして、殊のほか低学年も、案外費用がかかります。只今のものを安くするためにはどういたしたらよろしいか、いろいろな議論もございますが、何しろ作ることを安く作るということが第一でございます。それから正確な部数を知るということが第一であります。御承知のようにこの夏には展示会をいたしまして、予約募集をいたしましたところが、その責任の筋々からもらつた資料を決算してすつかり集計いたしまして、これによつて用意したところが一割余の残本が出て来てしまつた。これは責任の筋から来たものですから、いい加減なものではないのでありますけれども、結局品物を引渡すときになつても一割の残本ができた。一割残るということはそもそも利益がないということでありますから、一割の残本を埋めるということについては相当の経済上の負担になる。かようなことも教科書業者を苦しめることになる。先ず何としても正確な必要部数を知るということが第一であります。それから一つの教科書がたくさん出るようになりますと、値段がぐつと安くなつて参ります。現在のところでは二千何百種というような教科書が出ておりますが、併し展示会等をしてだんだんやつて行きますうちに、それからその中でそうむやみにたくさんなくともよい、大体こういつたところでよいということで落着いて来ていい教科書が出て来るんじやないかそういう工合にいたして教科書の種類が減つて来て、一種類の教科書の部数がたくさん出るということになつて来れば値段は見る見る安くなつて来る。なお差当つて現在の状況ではそういうことはなかなかむずかしいことであります。教科書の種類もむしろ殖えております。教科書業は非常に困難だと言いながら、昨年は七十社でありましたが、今年はほぼまあ八十社になります。他の企業との比較においては或いは教科書も利益はないかも知れませんが、確実であろうということから、このことに関係する人が殖えて来ております。これはこの仕事が非常に困難だと言いつつ発行者が殖えております。ちよつと今変つた状態にあると思います。これらのものを落着かせて行くにはどうしたらいいか。私どもとしては第一着手に部数をはつきりすることと、それから金融を楽にすること、これは先ず差当つて必要なことだと思つております。値段等につきまして御入用がございましたら、又改めて数字をとりましてお手許に差上げたいと思います。なお来年度の教科書として本年註文のありましたものはすつかり今数がわかりましたので、それぞれの教科書について註文部数をかけて、それで非常に詳細な原価計算を今いたしております。ほぼでき上りつつございますので、最近のうちに平均価格等についても御報告できようになると思つております。
  165. 若木勝藏

    若木勝藏君 今のお話で教科書公社というふうなものについての構想はよくわかりました。文部省がとにかく安いところの教科書を子供に与えられるために、そういうふうな方面に一歩出られて予算の要求までせられたということについては私は非常に敬意を表するのであります。そこでこの教科書の対策というものは、今後の無償配給の方面から考えまして、私は非常に重要なものだろうと思いますが、そういうふうな方面から考えまして、一歩進めてただ単に政府のこの資金運用部資金を借入れるというようなことでなしに、政府資金をこれに支出する。そういうふうな点まで進められるところの構想があるかどうか、これについてお伺いいたします。
  166. 關口隆克

    説明員(關口隆克君) 只今のところでは一番無難な方法として資金運用部資金をお借りして、それをいわば又貸しするという方法が一番無難であろうと思います。なお一般の資金を繰入れて一般の会計のほうでやつて行くということの方法もあり得ると思いますが、差当り無難な方法としてはこれであるまいかと思います。併しこれもまだ関係筋の御了解を得るには或いはまだ多少の段階があるかと思つております。
  167. 若木勝藏

    若木勝藏君 なおそれに関連いたしまして、私も実務家とか、そういうふうな方面のいろいろ意見も聞いて見たのでありますが、何か教科書のページ数というふうなものがきまつておるようであります。大体最大限度のページ数が二百四十ページになつております。それを一年に三冊乃至五冊を出すというふうなことになれば非常に子供の負担が多くなるのでありまして、これは本当にそういうふうにきまつておるものでしようか。若しきまつておるとすれば、実際家の意見では大体最大限度百五十ページぐらいにいたしまして、これをせいぜい年間二冊ぐらいにしてはどうか、そうすると、年間三百ページということになります。そういうふうな意見がありますが、文部省として今これに対してどういうふうにお考えであるか。
  168. 鈴木秀三

    説明員(鈴木秀三君) お答え申上げます。その教科書のページ数を、只今お話がございました、これは受付けまする教科書ごとにページ数をきめておりまして、きめておりまするのは、一つには御承知のように紙が統制事情にございましたので、法外にたくさんの紙を使われては到底賄い切れない、切符を切るにも切りきれないというところから、最小限度その教科の内容の立場に立ちまして、せいぜいここまでだというぎりぎりの一番少いところで抑えた、その数を今日なお遵守しているような状態でございます。これは例えば小学校の国語で申しますと、一年生二百二十八ページ、二年二百五十六ぺージ云々というふうにきまつておりまするが、書方のようなものだと、一年から六年までそれぞれ六十四ページときまつております。ローマ字などは七十二ページ、それから又先ほどお話がございましたが、厚いものもあります。例えば高等学校等の歴史等になりますと、三百ページ、四百ページというようなものも出て来る。教科の性質からこれだけは是非必要だろうというぎりぎりのところをきめてあるわけです。今日これが行われておりまして、業者もこの範囲内で、それより薄くてもかまわない。それを大体適当の分重であるかという審査はいたしますが、審査に通りさえすれば、それ以下ならば何ページでもかまわない。それ以上出てはいけない。こういうことでやつております。
  169. 若木勝藏

    若木勝藏君 丁度検定課長さんがおられて、そういうふうな検定方面に関係して行きましたので、検定について一つ伺いたいと思うのであります。この検定問題につきましては、私は今日文部大臣に伺いたいのであつたのでありますけれども、いわゆる地方検定に検定を移すということが非常に重要な問題でないかと思うのであります。それらについては又追つて私はその機会を求めたいと思うのでありますが、ただ事務的の方面から申しまして、検定の際に何でも地方色を余り入れたものは認めがたい、好ましくないというふうな話があるのでありますが、若しそうであるとすれば、これは私は非常に今の教育考え方と逆な考え方でなないかと思うのであります。つまり教育委員会制度というふうなものができて、そうして教育が地方化されて来た、そういうふうな場合に、なお地方の子供がこの抽象的な中央に統一されるような一般的な教科書を使わなければならないという理由は私はどこからも見出だされない。例えば我々の国定教科書を使つたような時代におきまして、私は北海道の出身でありまするが、また春先の雪どけ水の流れているどろどろしたときに、咲いた咲いた桜が咲いたという教科書を使わなければならない。こんな話があるものではないないのです。それから又算数の教科書を見ましても、私も実際に算数を受持つて経験があるのでありますが、四分の一というものは季節のズレがある。例えば北海道において、「いちよう」の葉が殆んど散つてしまつて、何もないときに、「いちよう」の葉を数えなければならんようなものが出ている。そういうことをこの国定教科書の時代に我々は考えておつた。それが現在の検定制度になつて自由になつた場合に、やはりそういうふうな教科書をなぜ一体用いなければならないのか。これは北海道の実務者が非常に問題にしているのであります。こういうときこそ地方の実情に応ずるような、いわゆる地方色をも入れた教科書がなぜ出ないのであるか。現在においては出ておりません。やつぱり国定教科書と同じような一般的なものが多いのであります。而もそういう特色を現わしてあるというと、検定が通りにくいというふうな話があるのでありますが、これは何を根拠に一体そういうふうなことが行われておるか。私は検定規則を調べて見ましたけれども、何も検定の基準の中にはそういうことがない。果してそういうことは言われておる通りであるかどうか、この点伺いたい。
  170. 鈴木秀三

    説明員(鈴木秀三君) お答えいたします。只今の点につきましては、検定基準というものを以ちまして申請原稿が出来ますと、それを裁定いたします。その検定基準というのは勿論前以て私どものほうの調査基準でもございますが、同時に作るほうから言えば、それに基いて作りたいということになりましようから、一切を申請者等に十分知らせるように官報にも載せまするが、我々のほうでも希望者には広く頒布しているものでございます。その検定基準の中には、国語にいたしましても、算数にいたしましても、どれにも地方差に応ずる幅があるかというのを検定基準の中に含んでおる。似たようなものでは、学校差に応ずる幅があるか、或いは施設の十分にない学校でも、十分にある学校でも、どちらでも使えるようになつているかというような問題がございます。或いは児童の発達、利口な子供、又多少智能の劣つている子供のどちらにも使えるように教科書ができておるかということ、そういういろいろな差に応ずるその一つとして、地方差に応ずる幅があるかということを検定基準の中の一つの項目として持つております。それが只今の御質問に答える條項になつて来るのではないか、その地域差に応ずる幅があるかということは、これは私の考えでございます。そういう意味でお聞きとり願いたいと思います。地方に検定が行かなければならん。又行つたらどうなるかということになると、少し別な問題になつて来ると思います。取りあえず地方に行くということが教育委員会にはきめてある。だけれども、用紙の事情が逼迫しておりまするので、取りあえず文部省で紙を儉約するという意味で、紙の配給を単純にするという意味で文部省で暫らく検定をやつて行こう、その段階におきましては全国を睨んだもので作りませんと、花しいろいろ地域差のあるものを作りますと、先ほど局長から申上げましたように、余りに教科書のバライエテイが多過ぎてしまう。従つて採択部数が少くなつて来るということは、どういうことかというと、逆に猛烈に定価が上つてしまうということにもなつて来るのであります。取りあえず文部省で暫らく検定をして行くという範囲内においては、この程度の地域差に応ずる幅があるか、こういう程度の基準は必要であるというようなことが言えるのではなかろうか、これは私一個の考えでそう思つておりますのでございますが、実情といたしましては、そういう地域差に応ずる幅があるか、こういうような検定基準の項目のある今日の段階におきましても、例えば理科などで現に九州、四国、中国この三地方からそれぞれ十名の編纂委員を出したのでありまして、三十名の編纂委員で以て編纂された教科書がございます。これは恐らく来年の四月から採択した学校生徒の手に渡ることと思います。これなどもそういう地域から編纂委員が出た、著者が出たということから、御推察が付きまするように、確かに地方色があると思うのでございます。ただ検定基準のほうではどの地域にも当てはまる幅があるかという基準がございますから、片方の地方色を出しながら、そこにウエイトをおきながら、なお且つ北海道でも東北でも、とにかく日本全体に通ずるような問題が一応取扱われている。そうして阿蘇山とか、或いはあちらの川とかいうようなものは一つの山と言えばそういうものがある。川と言えばそういうものが代表的な例として上つているというようなふうに書かれているのではないかと思います。そういう傾向のものも現に出ております。大体そういう事情になつております。
  171. 若木勝藏

    若木勝藏君 そうすると今の御答弁によつて私は地方的な幅というふうなことが一応基準で以て考えられるということになれば、先ほど私の質問したようなことは、そういうふうに流布されておるというようなことは逆だということになつて参りますな。
  172. 鈴木秀三

    説明員(鈴木秀三君) 花木先生がおつしやいましたが、私が承わりました範囲では、必ずしもそうなつておらないと思つておりますが。
  173. 若木勝藏

    若木勝藏君 余り地方の特色を出したものはどうも採用されないというような話を実際私も聞いているのでありますが、そういうことはないのですか。
  174. 鈴木秀三

    説明員(鈴木秀三君) ただ単に一つの地方だけに偏しておる、雪ならば雪ばかりで南のほうの話は何も出て来ないというような、例えば理科でも、国語でも、それだけだつたらそれは無理だと思うのであります。やはり北海道の人にも、南の九州のことも、四国のことも、少くもこれだけ狹くなつ日本の全体のことは教育のレベルとして知らしておかなければならない。そこを突いて地方色に幅があるかと、こう考えるのであります。こう上つて北海道、真ん中辺で信州あたり、下つて来て九州のほうの材料が出て来るということは審査の際に妨げないと私は思つております。
  175. 若木勝藏

    若木勝藏君 私はそういうふうに北海道に片寄つたものということについては考えております。それは算数につきましては、大よそ数理というものはコースがあります。これは北海道であろうと、内地であろうと変りがない。国語でありますというと、いわゆる形式の一つの系統がある。これは北海道であろうと、内地であろうと変りがない。ただ算数なら算数において、掛算を教えるにしましても、それは北海道の事実をとるか、それから内地の事実をとるか、私は実はこれは面白い話があるのですが、校長をやつてつたときに、二年生の教室に急に補欠に行つたところが、そこのいわゆる事実問題という中に、「はや」という魚が出て来た。ところが全然私はわからない、説明のしようがない。そういうことが国定でない今日においても行われておるということは、あの地域的に北に寄つているところの北海道、東北では、これは認めがたいことなので、そういう一つの系統をはつきりしておいて、そういう事実をこの北海道に適応するような、そういう教科書を作ることに対しては、これは検定が通らんかどうかという問題になる。そこの違い、私の聞きたいところは、それを厳密に、そういうものを織込んだものはオミットしてしまうということになれば、北海道の子供は実際「いちよう」の葉のないときに「いちよう」の葉を拾うような教科書をやつたり、或いは「はや」のいないところの北海道で「はや」の事実問題を取扱わなければならない。これは学習指導要領と全く逆行する。これは地方の地域によつて学習しなければならないというのは指導要綱にちやんとある。そうして教科書はそういう中央集権的な……、これは全く矛盾したものではないか。私はそう考える。その辺は検定課長さんなり、或いは検定に関するところの局長さんなりが十分検定する方面に対してはつきりした態度で臨んでもらいたい、こう思うのであります。
  176. 鈴木秀三

    説明員(鈴木秀三君) 一般にそういう極端なことはないと思うのでありますけれども、なお調査をいたして見まするが、今申上げました私どもの狙いといたしましては、地方差に応ずる幅がある、こう思つて頂いて、そしてどちらの地方の著者であつても、どういう御研究のかたであつても、申請した原稿はどなたからでも受付けるわけであります。そうして或る検定水準にさえ当てはまつておれば合格になります。従つて多い多いと言われる検定教科書も千九百四十六冊ございますが、それを理科で申しますると、大体一つの学年当り十種類くらいある。十種類もあつたらば、その中に多少北海道の先生の立場或いは九州の先生の立場に比較的近い特定な例もありましようが、全く北海道に無関係な材料もあるかも知れませんが、多少は近いものがその十種類程度のものの中から選んで頂けるのではないか、そういうようにバライエテイのあるものも出ますように申請者には常に呼びかけて、あらゆる機会に画一的なものではない、文部省に昔あつたものを真似したものではいけませんぞと言つて一生懸命に説得に努めておりますので、だんだん御希望に副い得るようになるかとも思うのでございます。
  177. 若木勝藏

    若木勝藏君 それでわかりましたので、私は最後に一点だけお聞きしたいと思うのですが、一歩を進めまして、或る出版者なら出版者がそういう北海道版というようなものを四分の一なり、五分の一を入れて、そうしてそういうふうなものを発行するといつたようなことになつた場合、これをお認めになるかどうか、この点……。
  178. 鈴木秀三

    説明員(鈴木秀三君) 只今のような北海道版、九州版という立場においては、暫らく原稿をお預りしないことにいたしております。まあ広い意味での全国的な立場と申しまするか、そういうものの立場に立つたものだけ今原稿を頂くことにしておりますこれは本当の私の気持だけでございますが、先ほどおつしやつたような地方検定が行われますれば、只今の御質問の問題はおのずから解消して行くと思うのであります。仮に地方検定というものがなしに、文部省検定で行くのだということで出発して、過去五年前、昭和二十二年に出発しておつたといたしましたなら、北海道版、東北版或いは九州地方、少くとも大体この九州版とかいつたようなものは採用することはできる、一つのコースとしてとらなければならないのじやないか。例えば生活の都会向き、農村向き、漁村向き、山村向き、生活圏で検定して行つて、そうしてなお北海道版として全国的に展望の得られるようなもので、北海道版というようなものが検定せられなければならないのじやないかということは、気持の中では持つておりますけれども、それを文部省の検定というものは一つの制約された、いわば私どもがお預りしている臨時の仕事のような気持でやつております。そういう形で…。
  179. 若木勝藏

    若木勝藏君 それで御意向はよくわかりましたが、これは今北海道の実務者にとつて、この間も私は全北海道の都市の校長さんがたの大会に出たときに、たまたまこの問題が出まして、何が故に我々はかくの如き一体教科書を使わなければならないか、これは尤もな話だと思うのであります。十分一つそういう点をお汲取り下さつて、私は北海道版を主張するものではありませんが、大綱は変えない、併し事実において子供の生活が北海道の生活なんだから、そういう特色が現われるようなものが出たら、その場合には十分一つ検定の方面においてもお汲取りを願いたい、そうしなければ北海道の教育は常に当てはまらない教育をして行かなければならんことになるのでありまして、この点を要望いたしておきます。
  180. 岩間正男

    岩間正男君 この前私が資料をお願いしておつたのは、教科書公社ができる、そうして金融をする、それによつて実際の生産コストがどれだけ安くなるか、この点について是非これは今後予算を検討するに必要ですから、これは急速に作つておいて頂いて、この次の委員会までに頂くようにしたい、その点どうぞ……。
  181. 關口隆克

    説明員(關口隆克君) なお大蔵当局の話がまだまとまつておりません。もう少し話が進行すれば、大体の結論は立て得るようになると思うのであります。
  182. 木内キヤウ

    木内キヤウ君 小さな問題かも知れませんが、すべての物価が上るときに、最も小学校の子供の教科書というものは親の負担であり、又関心を持つものであります。昨日の読売の夕刊に出ておつた問題でありまするが、饗応する意味において何かそこに上のほうに面白くない現象があつて、教科書の値段が上るのではなかろうか、上るんであろうというようなことが出ておりました。ああいうものを見ますと、大変にもののわかりません母親たちは、教科書というものに対して非常な尊敬の念が払えなくなるきらいがありますので、そういうものに対しましては、当局のほうではどういうふうに考えて頂けましようか。
  183. 關口隆克

    説明員(關口隆克君) 教科書は昔からとかくいろいろ問題になりがちな要素を含んでおります。終戦後検定本位に移行してからも、自由競争ということに任されましたので、殊更その点にもいろいろ懸念される点が多いわけであります。併し年々展示会をやりまして、而もその展示会に出しました品物は長くそれぞれの中心のところに保存して、そして研究できるようにしてありますから、形の上から言えば、一応問題が起らないでも済むような手配はしてあるわけなんです。併し何と申してもやはり自由競争という面が一面にございますので、その点でとかくの噂は絶えないというように聞いてはおりますが、併し業者のほうでも、これを余りやりますというと、共倒れになる。大きいところは大きいだけに又苦労が多うございまして、小さいところは小さいなりに又苦労がありますので、教科書懇話会というものをこしらえて、そこでお互いに或る程度の紳士協定を結んで、或る範囲をお互いに出ないように気を付けているということを聞いております。が併し又紳士協定の解釈次第、或いは腕つこきの人など行くというと、ときどき部分的には噂を聞くこともございます。その都度懇話会のほうでは自主的に解決して、お互いに余り妙なことのないようにということは努めておるように聞いております。それから価格がそのために上るかという問題でございますが、現在のところでは、却つて競争が激しいものですから、要するに非常に苦しくなつて来ておるものですから、価格を上げると売れなくなるという虞れがございますので、原価計算上何円何十銭まで付けられるものを、そこまで定価を付けておりません。むしろ原価計算の水準よりも少し低目に買いやすい値段に値段を付けて売つておるということになつております。そのために値段が上るということは現在のところない。却つてそのために既存の資本を食いつぶしておる、或いは業務整理をやつておるというふうに我々は見ております。なおお気付きの点がございましたら、御忠告頂ければ、早速そのほうへ手配をいたしたいと思います。
  184. 加納金助

    理事加納金助君) ちよつと速記をやめて下さい。    〔速記中止〕
  185. 加納金助

    理事加納金助君) 速記を始めて……。つきましては、水産、通商産業、厚生、法務、この連合委員会を開くについて証人の喚問をいたしますが、それにつきまして御異議ありませんか。喚問する証人の名前はお手許のほうにもうすでに出ておるわけであります。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 加納金助

    理事加納金助君) それでは御異議なきものとして進行いたします。時日は、水産は八月の二十八日午前十時、それから厚生は九月の三日午前十時、法務九月の四日午前十時、通商産業1のほうが九月五日午後一時であります。併しこの問題は、先般申しましたように、通商産業のほうが主導的に願いたい、かように申込んでおりますから、併せて御了承を願いたいと存じます。それではこれにて散会いたします。    午後四時四十八分散会  出席者は左の通り。    理事            加納 金助君            高田なほ子君            若木 勝藏君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            木村 守江君            荒木正三郎君            高橋 道男君            山本 勇造君            櫻内 辰郎君            矢嶋 三義君            岩間 正男君   国務大臣    国 務 大 臣 大橋 武夫君    文 部 大 臣 天野 貞祐君   事務局側    常任委員会專門    員       竹内 敏夫君   法制局側    参     事    (第二部長)  岸田  實君   説明員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    文部省大学学術    局長      稻田 清助君    文部省調査普及    局長      關口 隆克君    文部省管理局教    科書検定課長  鈴木 秀三君    文化財保護委員    会委員長    高橋誠一郎君    文化財保護委員    会事務局長   森田  考君