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説明員(首藤新八君) 待望の
講和条約がいよいよ数日中に決定いたしまして、六年振りに我が国が国際社会の一員に復帰するということに相成りましたことは誠に慶祝に堪えないのでありまするが、併しながら仮に
講和条約が成立いたしまして我が国が独立いたしましても、結局
経済の充実がなければ真の独立国としては行き得ないと考えておるのであります。かような
意味合いにおきまして通産省といたしましては
講和条約成立を機会といたしまして、いよいよもろもろの施策を強力に推進いたしまして、以て
経済の自立を一日も早く完成いたしたいと、かような熱意を持
つておるのであります。
つきましてはこの
経済の自立は、やはり何と言いましても
輸出の振興でたければなりません。併し
輸出の振興はその前提といたしまして、先ほど小野委員が御指摘なされたように
生産第一主義である。更に又徹底した合理化の
促進であると我々は考えております。然るに現在の
日本の
経済の実相を見ました場合に、この
生産第一主義が果して円滑に行くかどうか、その前提になりまするところの電力、この面を考えた場合に、極めて憂慮すべき
状態にあるのであります。この
生産第一主義を貫徹いたしまするためには、その前提として電力並びに石炭の確保が絶対的条件でありますることは申上げるまでもありません。石炭につきましては、昨年の
生産量が大体三千九百五十万トン
程度であ
つたのでありまするが、今年は大よそ昨年
朝鮮事変勃発以来の
経済の推移から考えまして、四千四百万トン
程度で需要にマツチするであろうという構想の下に、それを必要とするところの施策を進めて参
つたのであります。然るに最近になりまして御
承知の
通り電力の値上に関連いたして、どうしても石炭の需要量が我々の推定数量よりも遙かに多量な量を必要とするということに相成りまして、大体六百三十万トンの石炭を確保しなければならん。而もこれは電力を確保いたしまするために絶対的条件でありますので、勢い当初の
生産目標である四千四百万トンから百万トンを追加いたしまして四千五百万トンを本
年度の石炭の
生産目標に変更いたしたのであります。かように時に多量の
生産を上げますることは、どうしても
政府といたしましてその増産確保に対する施策を強力に進めなければ相成りませんので、先般閣議におきまして輸送の確保、
資材特に坑木の確保並びに労力の確保、金融の斡旋、かような主なる対象を取上げまして閣議決定を見たのであります。その後の
生産状態を眺めますると、おおむねこの
計画にマツチするような
生産を上げておりまするのと、特に今月以降は増産期に相成りまする
関係上、大体明年三月までには所定の目標を達成するであろうというふうに考えております。然るに一方電力のほうは御
承知のごとく
只今豊水期でありまするにもかかわらず極めて窮迫した
状態にある。このまま推移をいたし、而も二カ月後に迫
つた渇水期の場合を考えますると、誠に憂慮しなければならん
状態でありまするので、一昨日公益事業委員会の幹部と通産省の幹部と会合いたしまして、これが対策につきましていろいろ検討いたしたのであります。そこでこの電力確保の対策も緊急対策と恒久対策の二つに区別いたしまして、緊急対策といたしましては、各電力会社の電力確保の方法におおむね欠陥があるやに見受けまするので、これを急速に是正いたしますると共に、更に通産省といたしましても必要の石炭を飽くまでも確保いたしまするために強力な行政措置を講じ、更にそれにても確保できないというような
状態に立ち至りました場合には、法的根拠によ
つて更に強度の確保を推進いたす、そこまでの実は決意を固めておるのであります。併しながら一方におきましてそれだけではまだ十分でありませんので、重油によるところの代替、これらも今日までの
状態を眺めますると、ともすれば電力会社が熱意を持
つていない。これは御
承知のごとく
経済的に余り希望せんかとも考えまするが、今日のこの非常事態を考えた場合、さような安易な考え方にあるものをむざむざ放任するわけには参りませんので、この際強力に重油の代替を推進するということも強く申出いたしたのであります。更に又できるならば各電力会社が、それぞれの適当な石炭の山に投資なり或いはこれを買収するなりして、そうして今後石炭確保に万遺憾なき方法を講じてもらいたい。更に又各自家発に対しましてそれぞれこれが増強を推進いたすような方法をと
つて頂きますると共に、通産省といたしましては炭鉱の自家発に対しまして相当余裕があるかのように見受けておりまするので、この面をできる限り発電力を強化いたしまして、むしろその強化した分を他の方面の補充に充てる。そうしてそれによるところの損失に対しましてはできるならば補償までいたしたいというところまで考えて、現在それに対する施策を進めておるのであります。恒久策に対しましては先ほど来安本並びに大蔵省等々からいろいろ対策について
内容の御
説明がありましたから省略いたしまするが、併し
生産官庁でありまする通産省といたしましては、どうしても
経済自立を達成いたしまするためには電力の開発、電力の確保を国策の最優先すべきものである。
従つて外資その他のことをいろいろ巷間伝えられておりまするけれ
ども、現在のような
世界政治
情勢の緊迫から見まして、かような外資というものが急速に実現するかどうか、甚だ疑問を持
つておるのでありまして、かようなはつきりしない外資に頼
つて荏苒日を暮すというような愚策はやめて、この際如何なる方法を以ても電力の確保を前提に、最優先的政策として取上げたい、これを通産省の
方針といたしまして、
政府内部並びに党の本部にそれぞれ申入れいたしておるのであります。如何にもしてこの際対策を一日も急速に実現いたしまして、そうしてあらゆる
生産態勢が電力のネツクによ
つて目的を達し得ないという、この遺憾な
状態を脱却いたしたいという強い信念に燃えておるのであります。これがためには今後本委員会に対しましてもいろいろ御指導と御
援助を仰がなければならんというふうに考えておる次第であります。
更に
貿易の
促進でありまするが、先ほど申上げましたごとく、
経済の自立は
貿易の
促進以外にはありません。そうしてこの
貿易の
促進に対しましては、先刻
委員長からも御発言がありましたが、先般日英
支払協定が新たに締結されまして、この面ではスターリング地域に対するところの
輸出は今後相当
促進するであろうという期待を持
つておりまするが、一方におきましてこれがために
ドルの不足を来すのではなかろうかというような危惧を持
つておりまするので、それにはそれに対するところの対策も考えて行かなければできにくいから又きめる。
講和条約ができますればこれを動機といたしまして各国との間に新しい
貿易協定を締結いたさなければ相成らんことにな
つておるのでありますが、それぞれの新しい協定に対しましてはこの
貿易促進、
日本の
貿易促進という点に重点を置きまして、できる限りこの目的を達成するような条約を締結いたしたい。かように考えてそれぞれ事務局におきましては準備いたしておりまするが、日英
支払協定の
内容等につきましては、担当の事務局から後刻詳細に御報告を申上げたいと存じております。
更に先ほど小野委員の言われましたごとく
生産第一主義でありまするが、これも無論
生産第一主義でなければなりませんけれ
ども、併し
生産は相手あ
つての
生産でありまして、相手のないのに徒に何でもかんでも
生産するということはこれまた無駄なことであります。そこで通産省といたしましては、成るべく需要の多いもの、これらを重点的に取上げまして、そうしてこの際これらのものを対象として増産をいたしたい。そしてそれは昨日の本委員会において問題になりました肥料の増産でありまして、これは農林省のほうでは肥料需給調整法案というものを御構想なさ
つておりまするけれ
ども、併しながら現在の自由
経済で人為操作をやることが適当であるかどうか。又や
つた結果がうまく行くかどうかという点になりますると、我々は甚だしく疑問を持
つておるのでありまして、結局
生産を増強いたしますることが、何もかにも、いろいろの問題を解決する一番効果的な対策であり、同時に又これによ
つてできる限り
輸出を
促進いたしまして
外貨を獲得する。これが先決問題であるというような考え方から、この際肥料の増産を第一に取上げたい。もう
一つはアルミニウムの増産であるけれ
ども、これ又肥料と同様に取上げたい。これは御
承知のごとく
日米経済協力の線からも相当今後需要が
増大するであろうことが想像されまするし、又現実にそういう気配もいたしておりまするので、今後アルミニウムの
生産には格段の努力をいたしたいというふうに考えておるのであります。
更に又プラント
輸出でありまするが、先ほどこれも小野委員からプラント
輸出が行き詰
つており、
輸出銀行は開店休業の姿にな
つているという御意見でありまして、成るほど出発当初から考えますると、いささか現在は中だるみの
状態にな
つておりますけれ
ども、これは御
承知の
通り鉄鋼
資材が非常に昨年から暴騰したことと、これがこのプラント
輸出を阻害している一番大きな原因であります。そこで先般来この鉄鋼
資材の
価格に対しまして、特にプラント
輸出に必要とする
資材は格段の
価格で提供してもらいたいということを主なる鉄鋼業者に折衝いたしているのであります。大体了解を得ておりまするから、今後は或る
程度安い
価格の
資材が入手できるであろう。もう
一つはプラント
輸出を阻害しておりました原因は、いわゆるこの長期の貸付でありまする
関係上、果してこれの回収ができるかどうかという点にありましたので、今回
輸出信用保険の
内容を拡大いたしまして、このプラント
輸出を、長期の回収が十分に保険できるような制度を作りたい。これは来るべき臨時国会にこの法案を提出いたしたいというふうに考えているのであります。更に又プラント
輸出促進のためにはどうしても現地にそれぞれのミツシヨンその他を派遣いたしまして、そうして親しく現地の首脳部或いは業者と折衝いたしまして、又先方からミツシヨンを迎えて、
日本国内の各工場を詳細に向うに観覧させまして、そうして
日本の工業力の実態或いはその技術の実態等々を詳細向うに認識させることも又プラント
輸出の大きな効果的対策であるというふうに考えまして、先般来東南アジアに必要とするところのミツシヨンを派遣いたしているのであります。同時に又先方からもできる限りミツシヨンを迎えたい、幸いに
講和条約も成立いたしまするので、この機会にこれらの施策を強く推し進めて参りたいというふうに考えておるのであります。又先ほど申しましたごとく
輸出の振興は
生産第一主義であると同時に、又徹底した企業の合理化であるということを申上げたのでありまするが、この合理化のためには要するに設備の更新或いは技術の導入、或いは又金融面の斡旋等々、この企業の合理化に必要とするところの施策を推進することにいたしておりまするが、設備の更新は実は前国会にこれを御提案申上げまして、御協賛を得たいといろいろ準備いたしたのでありまするが、どうしてもいろいろの
関係、特に一般財政的な
関係から提案が不可能であ
つたのでありまするが、近い機会にこれをどうしても国会に提出いたしまして御協賛を得たいというふうに考えておる次第であります。そこで大体この
講和後の新らしい対策でありまするが、概略を申し述べまして、詳細はそれぞれ事務局の担当官から御
説明いたすことにいたしまして、次に補正
予算の問題につきまして御
説明いたしたいと存ずるのであります。
補正
予算は先ほど大蔵省政務次官が申されたごとく、まだ最終的な決定をいたしておりません。併し現在折衝の
過程にありまするが、その間通産省
関係といたしまして折衝を続けておりまする主なものは、
貿易特別会計の残務処理で四億九千六百三十三万七千円、これはビーコフ
関係、或いは
朝鮮向け食糧、及び
輸入諸掛りの未払分に対する見合いの経費であります。その次は
輸出の信用保険制度の拡充、先ほど申上げましたごとくプラント
輸出に対する保険をやりたい。又その他今日までの信用保険では、
輸出の振興上まだまだ非常に範囲が狭い気持がいたしまするので、今後はメーカーまでこれを拡大いたし、例えば不需要期にある場合に、
生産者に対しましても需要期まではそれに対しては保険をつける、貸付をする、金融をするといういろいろの範囲を拡大した保険法を次の国会に提案いたしたい。そうしてこれがためにどうしても五十億の基金を必要といたしますので、いろいろ折衝いたしたのでございますが、取りあえず現在の
段階では次の臨時国会で十億だけは話合いができておるのでありまして、
あとは次の通常国会に持越すというところに現在行
つております。併しながらこの臨時国会で十億の財源が獲得できますれば、現在の基金十億と合せまして二十億になりますので、明
年度の
年度末までには十分に新らしい法案を
実施いたしましても、遺憾のない対策ができるというふうに確信いたしておるのであります。
更に商工組合中央金庫への出資といたしまして、現在二十億を要求いたしております。先ほど古池委員から国民金融金庫に対する大蔵省の出資並びに考え方に対する御
質問がありましたが、現在大蔵省と通産省との間に若干の意見の食い違いがあります。そこで大蔵省の主張する国民金融金庫は
政府機関である。財政資金を支出するのは飽くまでもそれは
政府機関でなければならんという
建前を堅持いたしまして、その方面に二十億を支出いたす。更に又見返り資金等から三十億を支出いたしたいという実は御意向を持
つておるかのように聞いておるのであります。そこで我々通産省といたしましては、国民金融金庫の性格は、いわゆる零細企業或いは又海外引揚者の生業資金等々を対象として、一種の社会的施策としての性格を持
つておるのが国民金融金庫であるという、片方の商工中金は少くとも中小企業を対象とした專門的金融
機関でございまして、その金融を必要とする度合から考えても、若し国民金融金庫のほうに二十億を出すならば、商工中金に対しましてはその倍或いはその何倍かを支出すべきが当然ではないか。更に又この国民金融金庫の現在の機構を、大蔵省の
説明を聞きますと、新らしく中小企業の制度を作るということでありまするが、それならば一層国民金融金庫に偏することの不合理を痛感するのでありまして、どうしてもこの商工中金に国民金融金庫よりも遙かに多額の国家資金を導入してもらいたいということを現在折衝いたしておるのでありまして、若しこれがどうしても最終的に不可能であるといたしますならば、運用部資金から百億前後をこの商工中金のほうに融通してもらいたい、これを強く現在要望いたしておるのであります。
もう
一つは自転車競技法の施行法を自転車産業の振興という面から、
政府の競輪によ
つて生じた国庫納金の中からこの際一億円を限りまして商工中金、或いは自転車産業のメーカーが取引しておりまする主なる銀行にこれを十カ年間貸付けまして、そうしてそれによ
つてそれぞれの銀行から業者に貸付けるという制度をとることにいたしておるのでありまして、昨年の国会で二億五千万円の御協賛を得まして、本年春から七つの銀行に分けましてそれぞれ貸付けをいたしておるのであります。これが非常に有効に使用されておりますので、殊に現在この自転車業界は不況に直面いたし、深刻な金融難に苦しんでおりまするので、相当額を大蔵省に折衝いたしたのでありまするが、目下のところ一億円だけ大体話合いがついておるのであります。
更に又地下資源の開発でありまして、これはこの委員会におきましても、今日までしばらく地下資源のために今後国家資金をできるだけ惜しみなくこれを使
つて、そうして地下資源の開発を
促進するということを申上げておりまするので、今回の補正
予算にいたしましても、一応そういう構想を持ち準備を進めたのでありまするが、性格上どうしても通常国会でなければならんという内閣の
方針が決定いたしましたので、やむなくこれらの問題は次の通常国会に提案いたすということにいたしておりまするが、地下資源の開発は先ほど申上げました
輸出第一主義並びに徹底した合理化と、これと併行いたしましてどうしても地下資源の開発に格段の施策をいたしまして、そうしてあらゆる地下資源の開発に邁進しなければならん。そうしてこれがためには惜しみなく国家資金を投ずる必要ありという考えを持
つておるのであります。先ほど申上げましたごとく、次の通常国会に対しましてはこれに必要とするところの経費を計上いたしたいというふうに考えておる次第であります。
大体以上非常に大まかな何でありましたが、詳細は担当事務局から申上げることにいたし、更に又御
質問に対しましてそれぞれお答えをいたしたいと存じます。