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1951-09-27 第11回国会 参議院 水産委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年九月二十七日(木曜日)    午後一時三十七分開会   —————————————   本日の会議に付した事件水産物増産対策に関する調査の件  (漁業協定に関する件)   —————————————
  2. 松浦清一

    理事松浦清一君) それではこれより委員会を開きます。本日の会議目的講和条約調印に伴いましてアメリカそれから濠洲その他の国々との間に漁業協定が結ばれる段階に立つておりますので、外務当局の今日に至りますまでの漁業協定に関する準備或いは話合い、そういう程度経過をお伺いをいたしたい。それからもう一点は、講和条約の発効に伴いまして従来のマツカーサー・ラインというものが解消されることになるわけでありますが、今までのマツカーサー・ライン日本漁業一つ制限線であつたと同時に、もう一方の側から考えて見ますというと、一つ保護ラインでもあつた曾つて中共に拿捕された底曳乗組船員諸君が帰還をして参りまして、拿捕された当時、又向うに抑留されておりました当時の経緯等について証人として喚問をしたことがあるのでありますけれども、その際に陳述をされました抑留中の事情から考えて見まして、マツカーサー・ラインというものは現在の中共政府の関知せざる線である、東支那海全体は中国の領土だと考えておるので、ラインの外であろうが内であろうが見つかり次第拿捕するのだということを向うの官憲が言明されたということが証言されておるのであります。今まででもこれらの海域操業しておりました漁船が非常に苦境の状態にあるということはしばしば実際において我々聞いておるわけでありますが、若しこのマツカーサー・ラインがなくなつた後のそれらの海域における日本漁業が非常に危険にさらされるということになりますと誠に重大な問題でありまするので、それに対して水産庁はどのような方策を考えておられるかということを承わつて、国会としての研究の素材にしたい、こういうふうな目的で本日の会議は招集されております。外務省からはそのために西村条約局長水産庁からは藤田長官十川生産部長がお見えになつておりますから、これらの事柄について委員諸君の御質問を願いたいと思いますが、それに先立ちまして日本遠洋底曳網漁業協会代表者諸君がその方面における底曳漁業の実情、又将来の対策等についての希望につきまして陳情に見えておられますから、政府の今までの経過並びに所信を承わりまする前に、これらの代表者諸君陳情の趣旨を承わつたらどうかと思うのですが、如何でしようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松浦清一

    理事松浦清一君) よろしうございますか。異議ないものと認めまして日本遠洋底曳網漁業協会の副会長伊東猪六君の発言を許可いたします。
  4. 伊東猪六

    参考人伊東猪六君) 私副会長伊東猪六でございます。私ども協会のものとしましては、一体講和後に以西底曳網如何ようになるか、こういつた問題で非常に心配をしたり、又期待をかけたりいたしておりまするが、私ども業者のものとしましては、どういうふうになるのだといつたような問題については、何ら決定案を与えてくれるものがなく、誠に実は焦躁を感じております。従いまして長崎、福岡、下関にこの協会としましては三地区の支部を持つて、三地区連合役員会というものがございます。そこで先般福岡で三地区連合会を開きまして、この問題について自分たちとしていろいろお願いを申上げなければならんこともあるがどうしようかという協議から、結局この問題は地方でかれこれ協議して見たところでいたしかたない問題だし、一つ中央行つて、そして連合役員会を開いて、幸い会長周東会長でございますが、東京にいられるわけだし、山崎副会長東京だから、東京で開いて、そうして対策を練ろうじやないかということになりまして、昨日東京開会をいたしまして、その開会の結果によりまして各御関係筋のほうへお願いを申上げることにいたしておりましたところ、幸いに本委員会で私ども陳情をお聞き下さることをお許し下さいまして誠に有難うございます。かいつまんでお願いを申上げる次第でございまするが、項目といたしましては本来実は永年業者として希望をいたしておりますることは、マツカーサー・ライン撤回と申しますか、撤廃と申しますか、それを非常に期待いたしております。この問題につきましては、実は昨年の春から業者が総司令部そのほかに対しまして撤回と申すよりもむしろ拡張をして頂きたい、そうして操業区域を拡げて頂きたい、こういう運動を続けて参りまして、或る程度司令部天然資源局水産課あたりでは何とか拡げられるのじやないか、こういつたよう業者にも或る程度期待が持てるような口吻を漏らして頂いておつたようでございまして、大体拡張される時期は昨年の十二月の五日頃じやないか、こういつた予想を持つてつたのでございまするが、到頭その問題はいろいろ特殊の事情と申しますか、朝鮮の事変関係も起つたことでございますし、こちらの総司令部といたしましては、私どもの聞いておるところでは大体拡げてやろう、こういつたような御気持であつた、ところがワシントン政府へ届いて、それは待てというようなことになつて拡がらなかつたというような結果になつておりまするので、業者といたしましては狭い地域の中で操業をしなければならんことになりまするので、非常に苦しんでおりまして、何とか一つ拡げて頂きたいという期待を持つておりながら歯が立たずにおつたのでございます。で今度の講和調印に対しましては、調印後には一つ何とか拡げて頂けそうなものだといつたようなことで、身勝手な話でございまするが、期待を持つておりましたのでございます。先般七月に私どもやはり連合役員会東京で開きまして、その筋へいろいろとお願いを申上げましたときには、多少の何か批准が済まなければ効力が発生しないから、効力が発生すると共にマツカーサー・ラインがなくなるのだ、こういうふうに聞かされてはおつたのでありまするが、それ以前にいわゆる調印から批准までの間に何かの機会で拡げてなくなる、こういつたようなことの機会がありそうだといつたよう期待を持つて、実は帰つておりました。調印は済みましたが、調印前に私どもが実は一つ東京行つて又重ねてお願いをしようじやないかという業者からの希望もございましたけれども、これは自重しておかなければならんかというので、調印の済むまでは実は何もせずにおつた次第でございます。それで調印になりましてから一日も早く行つて一つ何とかして頂くということにお願いしようじやないかというのが業者希望でございます。それからこちらへ参りまして昨日の会合の結果、いろいろ御関係のお役所の御意向なり何なりも多少伺つて見まして、私ども気持はいなかを出ますときの気持東京へ来ましてからの気持といたしましては多少変つております。それはマツカーサー・ライン撤回という問題は、これはひとり以西底曳網マツカーサー・ラインだけでなしに、全体のマツカーサー・ラインの問題になることであるからして、ひとり底曳網業者のみが底曳網制約を受けておるところのマツカーサー・ラインをこの際拡げて頂きたいとこういうことをやることは面白くないのじやないかといつたような実は私自粛的な感じを持ちまして、この点はまぐろ漁業なり或いはすべてのこの日本海洋漁業マツカーサー・ラインの問題に帰着することであるからして、特に底曳網の問題だけを取上げて御審議を願うということでなくして、一括して撤回して頂くという運動に参加して行こう、同調して行こうということに実は考えております。そこでこのマツカーサー・ラインの問題はどうか一つ配慮によりまして、できるだけ早く撤回して自由に海洋漁業ができまするように御配慮にあずかりたいと存じます。それで、ただマツカーサー・ラインの問題と、それから次に起ります問題は海域におけるところの治安の問題でございまするが、底曳網漁業操業しておりまする以西底曳区域ではもうすでに皆様御承知の通りだと思いますが、再三不法拿捕事件が起つております。この問題は韓国から拿捕せられる問題、それから中共から拿捕せられる問題、中国、今の台湾関係から拿捕せられる問題、まあ三つに分れておるわけでございます。それで韓国の問題は幸いにして総司令部の非常なる御尽力によりまして、大体船は帰つて参りました。まだ帰してもらえないものは李承晩政権が成立たない、成立しない前に拿捕せられたところの船が帰つて来ないものが残つておりまするけれども、その後の拿捕せられた船は大体帰して頂いております。それから台湾のほうの関係は、これ又実は現在船が帰つて参りませんものが二十九艘というものが向うへ、台湾へ取られたまま帰つて参りません。これは乗組員は全部帰してもらつております。それで中共の問題は実は非常に私どもの歯の立たない状態にございますので、現在までにこの二十七隻中共に拿捕せられておりましたわけでございまするが、最近その上に九月の八日から今日までに更に又六艘の不法拿捕事件が起つております。この拿捕事件の問題につきまして非常な不安を感じております。できるだけ一つどもが安心して操業できるような方法を講じて頂きたい。その点につきましては、結局政府の力で一つ保護して頂くということより私どもには考え方がないのでございます。そこで水産庁なりそれぞれの保安庁なり、いろいろの御関係におきまして保護方法については御研究願つておることだと存じまするか、今日までに出ておりましたところのものは、実は監視船であつて不法拿捕に出て来るところの海賊的行為をやつて来るものに対して保護の能力を持つていない船だと私どもは思いまして、実は甚だ安心ができないのであります。で、どうか一つ一日も早くあの海面において私ども海洋漁業底曳網漁業保護して頂く方法をお立て願いたい。それにその方法といたしては、いろいろ私どもも、ああして頂いたらいいだろう、こうして頂いたらいいだろうといつたよう考え方もございますけれども、これはいわゆる考え方であつて、御決定下さることはすべて皆予算の裏付関係がなくちやならない問題のみでございまするので、政府のほうで一つ御立案の上適当な方法をお立て願いたいと存ずる次第でございます。聞きますところ水産庁あたりでは新らしく優秀な保護目的とした船を御建造下さるというような御計画もあるように伺つております。非常に心強く感じてはおりますものの、これから船を造つて頂くというようなことでは火急の間に合いませんので、将来におけるところの永久の保護対策は立てて頂くと同時に現在を保護して頂く、こういつた方法につきまして特別の御配慮にあずかりたいと、こう二段に考えております。  次に実はマツカーサー・ラインの問題で、いろいろの制約が今度法律的になつておりまして、罰則なり何なりができております。政令三百六号、こういつた問題は甚だしく実は業者といたしまして困つている問題になります。一例を挙げて申しますというと、仮りにマツカーサー・ラインを幾らか違反事実がありまして、そうして摘発を受けるということになりますると、その底曳網の生命であるところの漁業許可がこの罪の軽重にもかかわらずともかくも処罰せられたるということによつて漁業許可がなくなることになつております。従いましてこの処罰せられたところの漁船というものはもう底曳網として復帰することができ得ない状態になつております。これらのごときはやはり悪いことをしたという問題におきましても情状の問題もございましようし、幾らかそのときの事情によりまして多少お加減の判断ができ得られるような制度に変えて頂きたい。これも三百六号の改廃と申しますか、廃止せられますれば問題はないことでございますが、どうしても存置されなければならんということであるならばさように裁量のできるようなことに御配慮を願いたい。なおもう一つの問題は漁船底曳に対して、五十トン以上の船に対しては無線設備をしなければならんということによりまして、或いは政令に基きまして無線設備をいたしました。無線設備をいたしましても実はその無線通信士が足りない。無線通信士が足りないためにまあ無理をして通信士を雇つて来て、そうしてやつている。こういうような事情でございまするが、無理でも都合のつく場合にはよろしうございますが、最近に至りましていろいろな需要関係がございましようが、私の聞き及びますところでは国家警察あたりで超短波の設備を大体いろいろな面になされて、通信技術員がいろいろな点において必要になつて来るというようなことで、通信免状を持つた者が海を止めて陸へ上る、こういつたような点もございまして急に足りなくなつている。昨日も実は水産庁の御当局意見を聞いて見ますと約三百人ばかりの通信士がたりない。そこで業者対策といたしましてはできるだけ一つ講習会なり何なりを開いて、そうして短期養成という建前をとつておりますけれども、なかなか無線免状というものは英語が入るという関係がありまして、そう急に試験を受けて免状を取るというわけに行つてない事情がございまして、少くとも六カ月なり一年なりの講習を必要とする、そういう場合に一体現状においては、どうなつておりまするかというと、政令によりまして、無線通信士が乗つていないと出帆ができないというような関係で、船が立往生をしておるという事情にございますので、従いましてこれらのごときは三百六号の政令が改正せられまして、どうしても絶対数が足りないような通信士の場合においては、何らかの特別のお取扱いができるような途が開き得られれば誠に結構だと存じます。或いは又私どもとしましては法規はそのままとしても、運営の面においてでもこの窮状を抜けて、そうして一航海なり何なり、事情止むを得ないものとして通信士がなくても一航海の漁が許される、こういつたようなこともお計らいを願いたいものだと、こういつたようなことをこの三百六号に関連いたしましては感じておりまするので、実際面において文書がそういうような関係になつておりますると同時に、又政府のお取扱いがそういうことになつております関係上、非常に窮屈である、もう少しゆとりのあるようなことにお計らいを願いたいと存ずるのであります。次はいわゆる前に戻るようでございまするけれども拿捕船返還といつたような問題でございます。中共に先ほど申上げましたように現在すでに最近に六艘拿捕せられ、現に二十七艘取られて、乗組員だけでもまだ帰らない者が百三十人かちある、こういう事情でございます。従いまして何かの直接御交渉の手はないとしたならば、間接方法によつてでも一つせめて私どもとしましては人だけなりとも早く返して頂きたいという希望を持つておりまするのでございます。この点につきましても特に一つ配慮を願いたい。台湾のほうの関係は、これはもう完全に終戦後に起つたところの問題であつて、私どもの船を仮にマツカーサー・ライン内外にかかわらず捕まえてそのまま船を取上げる、こういう筋合いのものでないということを痛切に思うのでございます。どうか一つその点につきましては幸い最近においては中国関係台湾日本話合いができやすくなつておるというようなことにも聞くのでございます。又この点については総司令部水産担当部あたりでも大変に心配をしてお骨折りを願つておりますものの、まだ帰る埒があいておりません。聞いておりますところでは二十九艘のうちの四艘だけが行方不明で、あとの船は現在中国に現存しておる。それで一日も早くその船を帰して頂くように御配慮を願いたい。重ねて要約いたしますれば、中共に取られておるところのものはせめて人なりとも早く帰して頂きたいという問題、台湾には船を至急に帰して頂きたい。人は全部中国のほうは帰つております。大体お願いを申上げたいところの筋は大綱さようなものでございまするが、業者といたしましてはそれに附帯はいたしておりませんけれども海洋漁業といたしまして挙げて全体に亘る問題でございまするが、若しお許しがあるならば具体的にお願いを申上げますけれども、これは海洋漁業の全体に亘る問題だからこの際は、例えば指定遠洋漁業許可料を徴収せられるといつたような問題で、底曳網漁業についてのみという意味でなしに、指定せられた遠洋漁業に対しては漁業許可料な課せられる。これは国の法律によつて皆さんがたがお取りきめになつておる状態でございまするから、これを今私どもお願いを申上げることは筋違いかも存じませんけれども、二十七年度から負担しなければならんというようなことになつておるので、業者は非常にこれに対してどうして払おうかということを心配をいたしておるような状況でございます。これらはひとり私どものほうの底曳だけの問題ではないのでございます。特にその点も併せて御免除ができれば御免除願いたい。漁区制約を受けておる、更に新らしい税がかかるというようなことになりますることは非常に困るのでございます。どうか一つよろしく御配慮にあずかりたいと存ずるのであります。そのほかにいろいろとお願いを申上げたいこともありますけれども、小さい問題でありますので、この程度お願いを申上げたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
  5. 松浦清一

    理事松浦清一君) いろいろ御事情はよくわかりまして、ラインがなくなつたあと関係海域漁船に対して保護船を増強をしてというところは若干問題のあるところでしようが、それだけで解決するかどうかということについても問題があるでしようが、爾余の問題につきましては我々の委員会としましても今までおつしやつておられたような方針で努力を続けて来たわけでありますから、委員諸君も御異議ないと思いますので、御期待に副い得る結果が得られるかどうかわかりませんが、その方向に向つて努力を申上げたいと、そう考えます。それから冒頭に申上げましたように、これらの漁業協定等の問題についての経過説明を願うわけなんですが、特別の事情をこちらから申上げない限り傍聴なさつても結構ですし、随時お引取り願つても結構であります。
  6. 青山正一

    青山正一君 ちよつと陳情者質問があるんですが……。
  7. 松浦清一

    理事松浦清一君) それではどうぞ。
  8. 青山正一

    青山正一君 講和条約の締結によつて果して以西底曳漁業が受ける影響は、締結すればよくなるか悪くなるか、その点について一つ業者自体気持を承わりたいと思います。
  9. 伊東猪六

    参考人伊東猪六君) お答えいたします。講和条約が締結せられて効力が発生いたしますれば、私どもは公海自由の原則に基きましてそういう漁区制約は受けないで済むことだと、かように考えております。若し日本国法におきまして別な面から制約がつけられれば別問題でございまするが、従いまして私どもが今まで心配をしておりましたマツカーサー・ライン以西底曳におけるところの操業区域は非常に拡大されるということによりまして非常に有利になることだと思えば間違いないところだと思います。
  10. 青山正一

    青山正一君 マツカーサー・ラインが外されることによつて皆さんの船が却つて拿捕されるような危険性が今まで以上に起きて来やせんかということを私ども心配しておるのですが、それに対するお気持はどうですか、ちよつと承わつておきたいと思います。
  11. 伊東猪六

    参考人伊東猪六君) それも観念論でございまするが、先ほどもちよつと委員長様から御報告になつてつたようにも思いますのでございますが、今まで中共に捕まえられて、そうして帰つた船員の話や何かからしますと、ラインがあるという問題については別にかれこれ問題にしていない、こういつた事情でございまして、実際面としてライン内外に出かけて来て捕まえておる、こういつたよう状態でございます。何か必要があつて取るならばともかく、大体においては被害程度と申しますか、拿捕せらるべき問題は自然漁区が拡張し、今まで行つていない所に漁船が行く、それが拿捕せられやすい、こういつたような面は出ては参るかとも思いますけれども、従来は支那側の行き方からしますれば、むしろ国家が拿捕するということでなしに、この戦争前にもうすでに支那というのは海賊的行為を以て何回も私どもとしましてそういう目に会つた漁船の実例がございます。従いましてこれれは漁区が拡がつたからケースがうんと殖えたとか、それからあのラインをそのまま漁区が拡がらないでマツカーサー・ラインがあるからケースが少いのだ、と言つて一概にきめられない問題じやないかというふうに考えられます。気持から言いますれば、成るほど深入りをする漁船が出まして、或いはそういう拿捕事件が多少殖えるという問題が起るかも知れません。
  12. 青山正一

    青山正一君 先ほどのお話によりますと、この政令の三百六号に対しまして、五十トン以上の船に対しては無線設備をしなければいかんというふうなことになつておるわけなんですが、こういつた事柄からして、例えばその船に乗る通信員あたりは何かしら横暴を極めているというふうにも私聞いておるのですが、例えば船員との振合いの上において、例えば手当を余計よこせとか、或いは給料をこれほどぐらいにしなければいかんというふうなことで相当騒いでおるような向きも承わつておるわけなんですが、そういうことは事実なんですか、どうなんですか。
  13. 伊東猪六

    参考人伊東猪六君) それはお聞きの通りだとは思います。とにかく漁船経営仕組からして、むしろ歩合制になつておるという制度でもありまして、そういう関係になつて来るというと、漁獲高によつて経費を引いた残りが船員に分けられる、こういうことになつておりまするので、殆んど船主乗組員とは同一格にもかかわらず、この無線通信士協会と申しますか、そこで協議をして自分給与面はこれだけのものでなくちやならんというような、ひとり大きな給与を要望せられておる、そこで船内の統一上、実は船主として誠に困る、こういつたような事実もあるようでございます。そういう面がありまするが、それじや給与制度が片付いたならば通信士の問題は片付くかというと、私はそうじやない、やはり通信士の絶対数が足りないためにそういうような問題が起つており、船主といたしましては、五十トン以上の船に無線通信設備をしなければならんという問題については、これはむしろ進んでやるべきだという点においても皆理解を持つております。従いまして暫らく時間をおいて下されば、だんだん通信士の数が殖えて参りまするので、そのトラブルはなくなる、今臨時的の問題じやないかと、かように存じます。
  14. 青山正一

    青山正一君 この拿捕船返還のできないものに対しましては、例えば漁船特殊保険というような形で多少のものは幾らか返つておるわけなんですが、例えばこの船員中共とか或いは台湾とか韓国に拿捕された場合においてのいわゆる船員保険のような形のものは、これは殆んど全部船主負担になつておるのですか、どうなんですか、その点一つ承わりたい。
  15. 伊東猪六

    参考人伊東猪六君) 今のところ中共で百三十人の人がまだ返還されていない。この百三十人の人の家族給与船主負担をしております。それでこれは帰るまで負担する覚悟でおりますが、ただこれに関連しましては、実は船主も悲鳴を挙げております。いつまでも長くこれが帰してもらえないのだということになるというと、その給与を引受けて行かなければならん、それが非常に困難な関係上、実は今度の連合役員会にも問題に提案されたわけでございまするが、何とか一つつて来ないところの船員給与の面について国家で御配慮を願い、端的に申しますれば、船員の失業した場合においての失業保険手当が出る、こういつたような面でも結構なんだが、何か一つ国家船主負担を軽減して頂くようにして頂きたいものだ、こういう意見が大分出ております。けれども遺憾ながら、私ども不勉強でもあるし、又一向これをどちらにお願いして持つてつたほうがいいか、つまらんことを持つて来たと言つてさばかれても困るからして、ここ暫らく一つ協会の本部でこの問題をどうお願いしたらいいかということを研究しておいて、その案ができたならば重ねてお願いし直そうじやないかというようなことになつておる次第であります。
  16. 青山正一

    青山正一君 現在の以西底曳船の数が七百九十八隻、こういうふうに承わつておるわけなんですが、この事件の面から、或いはその他いろいろな状況から考えて見て、皆さんの考えとして少し多いと思いませんですか、どうですかその点についてお伺いしたい。
  17. 伊東猪六

    参考人伊東猪六君) これは別に連合役員会協議した問題ではございませんから、或いは連合役員会意見としては当つてないかも知れませんが、私伊東としての考え方を述べさして頂きたいと思います。大体においてこの隻数問題につきましては、御承知の通り九百何十艘とあつたのが制限されて七百幾らになつておりますが、もともと水産庁があれを御許可になりましたのは、日本人が台湾を根拠にし、或いは朝鮮、或いは上海、こういつたようなところを根拠としてやつておりましたところの漁船数、日本在来の漁船数を基本にしておきめになつたように伺つております。従つて操業区域が何らの制約を受けなくなれば、許可の総数が九百幾らであつたものが一応七百幾らに減つたからといつて、今日の実状といたしましては多過ぎるとは私は思いません。
  18. 青山正一

    青山正一君 よろしうございます。
  19. 松浦清一

    理事松浦清一君) ほかにございますか。  それでは西村条約局長から漁業条約の内交渉といいますか、そういう経過を説明して頂きたいと思います。
  20. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 私の返答は極めて簡単でございます。御質問のような内交渉はないということだけでございます。従来平和条約問題に関連いたしまして漁業問題も無論問題になつたことがございます。その都度国会における総理の演説又は外務省の公表といたしまして、関係文書と共に全部公表いたしておる次第でございます。それ以外何もございません。サンフランシスコ会議におきます事柄につきましては昨日の夕刻、サンフランシスコ会議の解説といたしまして三十頁足らずの印刷物を発表いたしてあります。どうかそれを御一読願いたいと思います。会議におきまして論議いたされました事柄で、日本人として一応承知いたしておくべき事柄は全部網羅したつもりでございます。そのうち漁業の面におきまして発言を見ました国はカナダとノルウエーとインドネシヤの三国でございます。カナダは簡単に漁業問題について、成るべく早く平和条約第九条に規定する協定を結びたいということを申したのでございます。インドネシヤも同じく第九条に予定されておる漁業協定を締結する意思が日本にあるかどうかということを質問の形で意見陳述の際に申述べたのでございます。それに対して吉田全権は、七日夜の受諾演説の中で、自分がこの演説を書き終えた後でインドネシヤ全権がこの会議で二つの質問を出された、一つの問題は賠償であるし、第二の問題は漁業の問題であるが、その二つの質問に対する自分の答えはイエスであります。このイエスという私の返答が、同じ問題を抱えている国の代表の懸念に対しても御安心を与えることになるように望みます、というようなことを附加えられた次第でございます。ノルウエー全権が取上げた問題は特殊の問題でございまして、これは、最近の情報によると日本政府のほうでは南極洋に出漁する捕鯨船隊の増強を考えているということを聞いた、併しこれは非常に心配だ、日本政府のほうで慎重に考え直してもらいたい、こういうお話があつただけでございます。議場以外で私どもが接触して話を聞いた限度におきましてもそれ以上は出ておりません。私どもの回答はいつも、日本は平和条約を受諾した以上は第九条に規定している漁業協定、これを果す所存であるという以外に出ていないわけであります。問題はすべて今後の問題になつておりまして、まだ具体的に話合いその他は始まつておりません。いわんや内交渉その他があろうはずもございません。以上の通りでございます。
  21. 秋山俊一郎

    ○秋山俊一郎君 只今の西村条約局長の話によりますと、まだ諸外国との漁業協定と言いますか、協約というものが何ら緒についていないというようなお話でございますが、私ども新聞で承わりますと、日本とアメリカ、カナダの三国に対する漁業協定が十月頃に締結されるのではないかということも新聞などで承わるのでありますが、そういう問題も今お話のように何ら緒についておらないのでありますか。又そういう問題に対する外務省とそれから水産庁、この中枢関係当局如何ようにこの問題を取扱つておられますか、承わりたいと思います。
  22. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 新聞の報道よりも私どものほうの説明を御信頼願いたいと思うのでございまして、アメリカ、カナダのほうで太平洋の漁業について日本と協定を結びたいという希望があるということは私どもよく存じております。そういう希望があればこそダレス、吉田総理の書簡の交換ともなつたわけであります。最近十月頃になりまして先方からそういう意味で日本に来られるという話を聞いております。無論その段階でございまして、問題は今後にございます。いつ頃協定ができるか、そういう見通しなどはまだ立てておりません。
  23. 秋山俊一郎

    ○秋山俊一郎君 水産庁のほうでは別に御用意はありませんか。
  24. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) アメリカ、カナダとの漁業協定、これは只今条約局長からお話のございましたように、あちらから使節団が参られてそのときに具体的な交渉に入るだろうと思います。これは例の吉田、ダレス書簡で大体アメリカ、カナダがどういうふうなことを欲しておるか、又それに対する日本はどういうふうなことを考えておるかということが、大体その根本的な原則は明らかになつております。それを、今後他国のいろいろの国と漁業協定を結ぶ場合にこれが悪い前例とならないようにどういうふうにやつて行くかという技術的な面が残されておる。勿論私ども内部では外務省のほうとも、又業界方面でも非常に関心を持たれていろいろあちらが出て来る態度を予想し、それに対するこちらの意見をまとめるとかいうことでいろいろ準備をいたしております。
  25. 秋山俊一郎

    ○秋山俊一郎君 大体現状については了承いたしましたが、今水産庁長官のお話のように、先ず日加米三国の漁業協定が最近取上げられるような様相でございますので、この協定の内容如何は非常に大きな今後の加盟国との間に関連を持つものと我々も深い関心を持つておるものであります。たとえて申しますと、我々は仮に他国の領海を侵すという意思は毛頭持つておりませんけれども、そこに極端に言えばマツカーサー・ラインのような非常に思惑の違つた線が引かれる、それを両方が承認するというようなことが、例えば単にアメリカとカナダと日本の間にされるとしますと、その他の国ともそれが前例となりまして非常に広い範囲を制約されるということになりますと、或る面においでは日本操業区域が非常に狭まるというような結果を憂えられるわけでありますので、今後この協定を結ばれるにつきましてはそういう点を特に御考慮を頂きまして、その線を引かなければどこまでも日本漁船は外国の沿岸まで突入して行くのだというようなことでないことを十分了解をして頂きまして、形式的にさような条約を締結されないように十分外務省並びに水産当局お願いを申上げておきたいと思います。勿論今後にかかる問題でありますが、さような問題が起ります場合には我々にも一言知らして頂きたい、かように考えておる次第でございます。希望として申上げます。
  26. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) ちよつと私の答弁を補足さして頂きます。私が吉田、ダレス書簡に言及いたしまして、あの書簡でアメリカ、カナダなどが日本漁業協定を結びたいという意向であるということははつきりいたしました、こう申上げた次第でございます。あの書簡の意味はもう一度読んで下さいますとよくわかりますように、平和条約ができたならば漁業協定を至急締結するということが前提になつております。その意味で交渉を始めますということが第一段階であります。第二段階は、平和条約が発効後、その予定されている漁業協定ができるまでの間、日本は国際法上持つている権利を放棄することなく、一九四〇年時代に出漁していなかつた所には出漁いたしませんというところが第二段でございます。でございますから、あの書簡によつて何も今後話合いで締結されるべき漁業協定の原則というものはちつとも規定されていないという辺を誤解ないようにお願いいたしたいと思います。只今秋山委員が御懸念になりました点は、私どもとしても十二分に同感と言いますか、いたしている点でございまして、そこにいろいろ実際問題として話合いをするときのいろいろな困難性があろうかとも考えております。秋山委員の御懸念の点は、水産庁は勿論のこと、外務省としても十分に気を付けておるということを御了承願いたいと思います。
  27. 秋山俊一郎

    ○秋山俊一郎君 もう一つお尋ねしておきたいのは、この漁業協定が結ばれました際に、やはり国会の承認と申しますか、批准ということを求めるわけになるかどうか。
  28. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) ちよつと協定ができて見ませんとはつきりした御答弁はいたしにくいと存じますが、常識的に考えまして、日華漁業協定、日米華漁業協定というものが仮にできたとするならば、恐らく国会の承認を必要とするであろうということは極く常識的に答えられると思います。かように考えております。万事は併し実際話合いによつてできるものと、こう思います。
  29. 青山正一

    青山正一君 これは条約局長が非常にお答えにくいことかも知れませんが、当面の問題として講和の締結される国の中に、ソヴイエトとか、中共、北鮮とかの関係が全然入つていないわけですが、差当り以西底曳漁業ですね。これはマツカーサー・ラインの撤廃とか、講和条約の締結によつて、その基準の決定次第、これは成し遂げられることだろうと思うのですが、そういう際において、やはりどうしても相手国が中共であり、或いはソヴイエトであるというような関係からして、或いは北鮮であるという関係からして、やはり業者が自己の責任下にこれは出漁するというようなことになるのですか、どうなるのですか。例えば今年度の予算に、来年度の予算におきましても、水産庁が二十億の予算を出しまして、或いは六隻の優秀監視船をおいて監視の面に当らすと、こう考えておりますけれども、もうこういうような恰好になりますと、非常に業者の責任下において出漁しなければならんということになるわけですが、例えばこういう席上にこういうことを申上げることはどうかと思いますが、安全保障条約などで海上の点までこれを考えていらつしやるかどうか。この点についてちよつと伺いたいのですが、如何でしようか。
  30. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 今度の平和条約にはソ連は参加いたしておりません。中国も参加いたしておりません。従つて今度の平和条約の発効によつて対ソ連関係、対中国関係については何らの解決が与えられません。そういう状況の下において以西底曳漁業の実態がどうあるべきかというところに帰着しますが、この問題は極めて困難でございまして、今日私から御答弁申上げられるだけの自信もございませんし、材料も持ちません。そういう時期が至りましたならば、きつと関係当局におきましては、十分研究の結果適当な措置をおとりになるであろうと考えるだけでございます。この程度で御容赦願いたいと思います。
  31. 松浦清一

    理事松浦清一君) ほかに御質問ございませんか。
  32. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 僕はちよつと材料の関係で腰掛けたままで……。そうするとあれですか、今度政府調印して来られた平和条約の第九条に基いて今後締結されるところの腹案その他があるか、まだ現実に全然交渉しておらないというわけですか、交渉はしておるけれどもその内容は今発表できんということになるのですか。僕はマツカーサー・ラインがどうなるかということが聞きたいのですけれども……。
  33. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 私のお返事は交渉もまだいたしておりません、まだ腹案もございませんということだけであります。
  34. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 撤廃してもらうように努力しようとする考えはあるのですか。撤廃される法律的根拠というような何か考えられますか。
  35. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) このマツカーサー・ラインは当然平和条約が効力を生じますれば完全な独立国になるわけでありますから、従来のいわゆるポツダム宣言に聴く政令関係に出ておりますそういうようなものは、当然解消してなくなつて来ると私どもは解釈しております。併しながらそれ以前におきましても私ども気持といたしましては、できる限り早くかような点がなくなりまして、自由に操業されることが望ましい。従つて我々としてはそれ以前でも適当な機会をとらえましてこれに努力いたしたいと考えております。
  36. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 わかりましたが、現在ございますエーブルですか、ベイカーとかキングとか横文字の演習区域というのが、そういうように規定されている広大な地域もこれは講和条約が済めば撤回されるように努力し、且つそういう見通しを持つておられるでしようか、どういうものでしようか。いわばマツカーサー・ラインの中のマツカーサー・ラインというものですね。これはどうなんでしようか。
  37. 藤田巌

    ○説明員(藤田巌君) 御指摘になつておりますエーブルだとか、チヤーリーだとか、いろいろの名前が付いておりますのは、例の演習区域ということで、演習をいたします場合に、その期間漁船が出入りいたしますと、いろいろ危険がございますので、それがまあ差控えることになつておる区域であります。この問題はこれは私は、今後いわゆるほかの安全保障条約の関係がどうなりますか、そういうような関係と結付くものであろうと考えるのであります。併し私どもといたしましても、やはりこれは漁業の実情から考えまして、極力日本の漁民の生業に支障のないように、やはり区域の緩和、或いは場所の移動なりというようなことを考えて行きたいと考えております。
  38. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それじや将来のことは条約局長は説明できんとおつしやれば、過去の問題をちよつとお尋ねしたいのですが、マツカーサー・ラインはどういうような形でマツカーサーがきめられたものですか。米英、どういうふうの折衝できめられたものですか。或いは水産庁長官でも結構です。我々が今後この問題を考えるために正確なことを知つておきたいのですが、というのは、もう一つ第二の質問も一緒に出すと、アメリカの上院の水産分科の委員長のマグナソン氏が、マツカーサー・ラインは連合国が戦略上の必要があつて設けたものだから、講和条約が結ばれても撤廃はできんだろうということを語つておられるのですが、そういうことと関連させて、このマツカーサー・ラインがどういうふうにして設定されたかという過去の事実を明確に知つておきたいと思います。
  39. 十川正夫

    ○説明員(十川正夫君) マツカーサー・ラインは今現在の常識では、日本漁船操業区域の外側をきめた線というふうに誤解されやすいのでありますが、併しこれは誤解でございまして、日本漁業自体があの線内で操業を禁止せられておるわけではないのであります。と申しますのは、現に南氷洋の捕鯨船が許されておりますし、それからして母船式まぐろ漁業が許されておりますし、その他特別な許可を受けて日本漁業はできることになつておるわけでございます。ただマツカーサー・ラインが設定されましたのは、あれはむしろ日本漁船の航行の包括的許可でありまして、あの範囲内で日本漁船が航行いたします以上は、特別に個々の航海について許可を得ずして航海ができる個々の航海の包括的許可をマツカーサー・ラインによつて……その外側をマツカーサー・ラインによつてきめておるのであります。それでありますから、その主たるものは、航行の取締が主になりますわけであります。結果におきましては、日本漁船操業することができる包括的区域の許可が、日本漁業活動の外延におおむねなつております。日本漁業、その関連上から申しますと、日本漁業のできる外延という意味ではないわけであります。
  40. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一つ……。どういう国際的関連においてきめられておるのでしようか。戦略的なものがあるということを現にアメリカのマグナソン氏も言つておられるようでありますが、そういう点は如何でしようか。
  41. 十川正夫

    ○説明員(十川正夫君) 先ほど御説明申上げましたように、日本漁船の航行を取締るために、占領目的のために連合国がきめられたわけであります。
  42. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 連合国ですか。
  43. 十川正夫

    ○説明員(十川正夫君) そうです。
  44. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 どういうような折衝できめられたということは知つておられないのですか。アメリカ、イギリス、どこどこがこれにどんなふうにして決定されたかということは御存じないのですか。
  45. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) これはたしか私の承知いたしておりますのでは、極東委員会の指令に基きまして、そのいわゆるデイレクテイヴに基きまして、国内的にそれを更に受けて、政令三百六号ですか、そういうようなことであります。
  46. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると、あれですか。実際の見通しとしては、講和条約が仮に批准され、各国が効果を発生したとしても、若しも第九条に基く関係の個々の、或いは集団的な条約で解決されなければ、マツカーサー・ラインそのものは、たとえ今回の平和条約が批准され、効果を発生したとしても、何ら解決されないでそのまま残るのですか。条約についての正確な解釈に基く……。
  47. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) これは先ほど申上げましたように、講和条約効力を生じますれば、そのときにおいて日本は独立国となるわけでありますからして、従来極東委員会のデイレクテイヴに基くいわゆるポツダム政令というものは、これは当然廃止になる、かように考えております。
  48. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると消えるという見解ですか。
  49. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) さようでございます。
  50. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それは条約局長も同じ意見ですか。……それではソヴイエトと中国とについては、九条に基いては交渉ができるという見解ですか、できないという見解ですか。
  51. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 九条によつて無論話をするというわけには行かないわけです。ソ連は平和条約に参加いたしておりません。中国もたしか同じ関係であるかと思います。だだ韓国だけが九条の利益を受けられることになつておりますので、条約関係は結び得る、こういう関係になるわけであります。
  52. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そうすると今回の締結によつては、このずつと非常に問題の大きなトロール底曳などの問題が、ソヴイエトと中国に関する限りは未解決のまま残るということですか。解決されないで残るということですか。今後は努力の途がないということですか。そのことを一つはつきりしておいて頂きたいですね。
  53. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) ソ連と中国との関係においては、今度の平和条約において解決されないということは、先刻御答弁申上げた通りであります。この問題を解決するために努力するかしないかは、いわゆるそのときの政府の政策如何によるわけであります。独立国として判断すればよろしい問題でございます。
  54. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それで政府はどういう方針を持たれるのですか。
  55. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 条約局長として、政府の方針を答弁する立場にございません。
  56. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 水産庁の長官はどうですか。
  57. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) 非常にむずかしい問題でございまして、この際私の意見を申上げることは差控えたいと思います。
  58. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それから次にお尋ねしたいのは、公海における自由漁業の問題ですね。これは今度の自由漁業の立場がとれるという見解ですね、従つて……。独立国になるのだから……。如何ですか。公海における自由漁業というあの問題ですね。原則的に公海における自由漁業はこの今回の条約が発効して来れば独立国になるのだから、公海における自由漁業はとれるという御見解ですか。
  59. 藤田巌

    ○説明員(藤田巌君) そうです。
  60. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 そういう御見解です ね。
  61. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) さようです。
  62. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 それから、それでは琉球列島とか、小笠原などのような今信託統治を予定されておりますね。あれについて、それに接近した所ですね。つまり接近した所で、公海における自由漁業の範囲がこのこういつた琉球、小笠原等の信託統治になつたものについてはどうなのでしようか。及び漁業根拠地というようなものをこれに作ることはできるのですか、作らないんですか。
  63. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) まだ信託統治にもなつておりません。どうなるかは将来の問題でございまして、日米間で話合いすれば必ず円満に解決すると信じております。
  64. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 濠洲とか、フイリツピン、南方諸国との関係はどうなりますか、漁業のほうでは……。
  65. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 平和条約第九条によりまして、漁業協定を恐らく結ぶということになるでございましよう。
  66. 松浦清一

    理事松浦清一君) もう兼岩君よろしゆうございますか、まだありますか。
  67. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 今日はこの程度にしておきます。まだたくさんありますけれども……。
  68. 松浦清一

    理事松浦清一君) ほかにもう御質問ございませんか。  それでは私からちよつと伺いたいんですが、西村条約局長はこの水産委員会に御出席を願うことが極めて少ないので、いろいろほかの委員会等に出席をされた御経験から、委員会というのは政府の施策なり、考え方というものを成るべく反対しようという建前から、糾明をし、穿鑿をするというようなことが心の奥底にあつたりする。そういうことも一つ関係になるし、それから又今外交問題については極めて重要な時期、デリケートな関係にあつて、且つ又条約局長の立場それ自身が非常に微妙な、重要な要素を持つた立場に置かれているので、なかなか委員会のほうでお伺いをしたいということがざつくばらんに話ができない点もあるかも知れませんが、今までおつしやられた事柄だけでは、折角委員会を開いて御出席を願つて、まだどうもピンと来ないところがある。で、それはまあ新聞の記事等は御信用にならないで、西村個人の立場から言つていることを信用してもらいたい、こういう話が先にありましたが、この九月十八日の東京新聞の報道によると、政府筋から聞かれる情報、それから最近の外電等を総合して、アメリカ、それからカナダというような国々と多角的な協定の形をとる準備が進められておつて、而も遅くとも明春、来年の春頃には調印される模様であるというようなことが報ぜられて、而も濠州、それからカナダというような方面の意図するところは、やはり日本漁業がその海域方面に積極的に進出するということは、自国の漁業、漁場が荒らされて、相当その被害をこうむる、こういうような立場からできるだけその制限を加えて防衛をしようという建前でカナダ、濠州等がおる。こういう情報も伝えられているというのですが、ここがその極めて重要な問題なので、今までの日本遠洋漁業というものが、この日本という国の建前から言つて、やはり遠洋にどんどんと出て行かなければ、日本近海だけでは日本のこの水産業というものは成立つて行かない。そういう建前に置かれておつたので、かなり積極的に遠洋漁業に今まで出ておつたのである。それが若し漁業条約の中で極度の制限を受けたり、或いは極度の圧迫を受けたりするような体制において条約を結ばれるということは、日本の将来の水産業にとつて極めて重要であると思う。まだ内的交渉を進めていないと、こういうお話であるのですが、もうすでに向うがそういう心がまえであり、又講和条約の第九条に基いて、当然これはなさなければならん事柄でありますから、現実の上において内交渉が進められておらんにしても、条約局としては、或いは又水産庁としてはこういう心がまえで臨まなければならんという心がまえはお持ちになつて準備を進められておると、こう想像されるわけですね。それなくしていよいよ協定が始まつた、相談が始まつた、これから一つ作文をやるんだと、こういうことじや間に合わんことは当然なんですから、そういう心がまえを一つ聞かしておいてもらつたら非常に都合がいいのじやないかと、こう思うのです。で、冒頭申上げましたように、今の水産委員会はできるだけやはり政府の将来に対処する方針と一致するような方向に努力をして行きたい、こういうことを考えてここにこの委員会に出席される政府委員の人たちを、そう穴をほじくり出し、あらを探し出し、傷めつけようとか、苦しめようとか、そういう考えでこの水産委員会というものは臨んでおらんわけです。そういうところは心を許されて、ざつくばらんに、若し政府のいう立場からでなしに、西村はこう考えておるということでもいいが、ともかくも公海漁業の自由というものはこれは確保しなければならないと、この信念で臨んでおられる、而もそれを確実に条約の上に盛り上げて行くためには、どのような方法において、どのような努力が払われるべきであるかというような心がまえだけは当然これは持たなければならんし、持つておられることと思うのですが、その所信のほどを一つ御説明を願つておくと参考になつたのじやないかと、こう思うのですが…。
  69. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 只今は委員長の非常な御鞭撻を頂きまして誠に感謝に堪えません。縷々御説明になりましたような情勢にあるということは、関係者の一人としてとくに存知いたしております。無論外務省だけが関係当局ではございません。最も深い関係のある水産庁もおられますし、又より以上に密接な関係を持つておられる当業者もございます。要するに日本としては平和条約後に来る漁業協定の問題は、正直に申しますと賠償問題に次いで来る大きな問題であるという印象を得ております。その点は昨日の総理の日商総会における演説でも、特に漁業問題に言及されたことによつて明らかだと思つております。そういうような次第でございますので、十分御期待に副うように無論平素から同僚と一緒に勉強いたしております。併し何と申しましても大変なむずかしい問題でございますし、相手国も相当数多ある問題でございますので、委員長並びに各委員の御期待のように、一関係官としての心がまえというような形においてすらもが、私どもの今持つている結論というようなものを御説明できないということは、どうか委員長並びに各委員の御了解を得たい点と思うのでございます。こういう問題につきましては無論できる限り正しいと信ずるところを飽くまで主張すべきでございますが、同時に又漁業という問題はもう今日の世界では一国単独の問題ではなくて、結局その公海に面している国乃至その公海に漁船を出している国の共通の利害関係問題でございますので、やはり国際協力という性質に帰する問題も大いにあると思います。そういうふうな問題の複雑性、又重要性というようなことを考えますと、つい適切な御質問を受けましても口が重くなります、卑怯になりますのはどうか御了承願いたいと思います。十分勉強いたして行くつもりでございます。
  70. 青山正一

    青山正一君 水産長官に聞きたいのですが、先ほどの兼岩委員の発言に対して、公海における自由は十分とれるというような御答弁でしたが、先ほど伊東陳情人から、五月八日以来三洋とか、広田、井上、太洋、こういつた船が六隻中共に拿捕された、講和が進むにつれまして、締結されたあとにそういつた問題が非常にたくさん出て来はしまいかということを非常に心配しております。そうした際にこの水産庁のほうでは、大体二十億程度で五、六隻の監視船を作る、こういう建前に進んでおりますが、一体公海における自由はとれるという際において、そんならば、以西底曳漁業には、今言つたようないろいろな拿捕問題が起きて来ますと思います。その際自衛権が果して発動できるかどうかという問題にもなろうかと思います。その点について一つお伺いしたいと思います。
  71. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) ラインが撤廃されました場合、私はやはり公海漁業は自由だと考えております。ただそこで操業をいたします場合において、恐らく中共との間に、中共は必ずしも意見は同一でないと考えまして、拿捕するという問題も起つて来ようと思います。これは私は率直に申しますると、こういうふうな問題というのは、これはやはり何と申しますか、漁業協定ができておれば、その漁業協定の定めるところによつて措置するということになると思います。漁業協定の定めのない場合等はこれはやはり勿論国際法の原則によつて処置するわけでありますが、その国際法の原則自体が又いろいろ各国によつて一様でない、こういうことでございます。結局は私はこれは実力の問題ということになつて来るのじやないかと思います。従つてどもといたしましては、やはりそれに応じましていろいろの紛争を起さない考に、できるだけこの紛争を避けるように水産庁といたしましても日本漁船保護或いは又取締というふうなものの態勢を予算の許す限り強化して行く、それから又水産庁だけでもなかなかこれは不十分であろうと思います。やはりこういうような点については、海上保安庁等とも連絡をする、更に又当業者自身の何と申しますか、みずから守るような組織というようなことについても、それぞれ考えて行くというふうな事柄でこれを解決をして行く。結局はこれが完全に解決されるのはずつと先の、いわゆる漁業協定その他国際関係が正常になりました場合にこれをはつきりさせるということに相成るのではないかと思つておる次第でございます。
  72. 青山正一

    青山正一君 この拿捕船に対しては漁船保険によつて、この恩典に浴しておるわけですが、これからこういうふうな拿捕船が相当あると思いますが、その船員の帰らぬものに対する負担は、現状においては船主負担しておるわけですが、今後こういつた問題が非常に多かろうと思いますが、その船員に対する例えば失業救済費とかこういつたものを考えておりますかどうですか、その点について伺いたいと思います。
  73. 藤田巌

    ○説明員(藤田巌君) 率直に申しまして、まだその点につきましての具体案は持つておりません。併し恐らくそういうふうな問題も当然起ることが予想されますので、やはり方法といたしましては、船員保険法の何と申しますか、改正と言いますか、或いは拡張と言いますか、そういうふうなことでこれを補なつて行くようなことがやはり国の制度としては一番手取早い、そういうふうに考えておりますので、先ずそういうふうな線に沿つてこの問題が何とか解決されないか、一つ至急に研究して見たいと思つております。
  74. 青山正一

    青山正一君 政令三百六号、これを改廃するとか、改めるとかいろいろ考えられますが、これに対して政府はどういうお考えを持つておられますか。
  75. 藤田巌

    ○説明員(藤田巌君) 政令三百六号の内容でありますが、問題がいろいろあるわけで、必ずしも各条項について一律には行かないと考えまするが、要はこのいわゆるマツカーサー・ラインの問題、それからマツカーサー・ラインに違反いたして、これが司法処分になりました場合に、当然許可の効力が切れると思います。それから先ほどお話のございました五十トン以上の底曳網漁船については、無線通信士を必ず置かなければならない、こういうような問題があると思います。これは必ずしも各条項とも一律に行かんと思いますが、やはり考え方としては、私どもはできる限り早く実情に副うように、日本漁業活動ができる限り円滑に行くような方法でこれの改正をやつて行きたいと、かように考えております。
  76. 青山正一

    青山正一君 来年度予算で二十億くらい取るような方針ですが、これはでき上るのは恐らく来年の末か、再来年になりはせんかと思うのですが、その間の期間を例えばほかからチヤーターするとか、何とかいう考えはないか、その点について御説明願います。
  77. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) これは専らこの予算に拘束されるわけです。従いましてその来年度の新造船、或いは又傭船の計画について相当量要求いたしております。やはり予算が取れませんと、現在以上チャーターすることは役所としてはできません。従いまして私どもといたしましては、できる限りそういうような面について努力する。更にもう一つは現在ございます水産庁独自の方針について改善を加える、或いは又海上保安庁、その他の協力も一つ仰いで行くというようなことで、できる限りのことをやつて行きたい、こう思います。
  78. 青山正一

    青山正一君 法案ができ上りましてから、例えば漁業の面について韓国とか台湾政府との合弁についてどういうふうに解釈するか、そういつた面について何かお考えがありますか。
  79. 藤田巌

    ○説明員(藤田巌君) これは私率直に申しますれば、やはり現在の以西底曳網漁船というものは、これは先ほどもお話が出ましたように、その当時外地から引揚げましたものも予定いたしまして相当殖えております。従つて今後又韓国なり台湾等で新たな漁船が殖えて行くということになると、やはり私は共同の入り合う関係で資源問題までも出て来るのではないか、理想的に申しますれば、お互いによく相談をしまして、合弁その他の形でお互いに足らざるところを補い合つて漁場維持に努め、お互いの漁場を必要を満たすような形、それをとることが一番望ましい、こういうふうに思います。
  80. 青山正一

    青山正一君 そうした際に権利料とか許可料というものを合弁のほうで、船があちらへ行つたという場合において、勿論こちらのほうの関係の権利料、許可料そういつたものは、政府で保証なさるおつもりがあるのですか。
  81. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) 政府で保証するということまでは考えておりません。
  82. 青山正一

    青山正一君 よろしうございます。
  83. 松浦清一

    理事松浦清一君) ほかに御質問がなければ私もう少しあるのですが、御質問ございませんか。……先ほどの漁業条約に関する心がまえというか準備に対する私のお尋ねに対して、できそうだけれども今言えない時期だと受取れるような御答弁であつたので、そういう事柄は非常に対外的にも、国内的というよりむしろ対外的にも微妙な関連があることと思うので、そういう外交上の秘密ということに対しては、我我賛成ができないのですが、現在の漁業条約の心がまえが、くだいて言えばよそに漏れては困るというようなことであれば、そういうようなことはおつしやらなかつたけれども、内容としてはそう出ておつたのですが、強いて殊更にとは思いませんが、併しそういう時期が近付いて来るに従つて政府筋からの情報によるという新聞記事がだんだんと多く散見されるようになつて来るのです。新聞関係のほうにはどんどん情報が流れて行つて、そうして、そのことを真剣に考え、方針を策定して行かなければならん水産委員会がその内容について承知をしておらない、こういうことでは甚だ困るのです。若しそのような内容が外部に出していいか悪いかの検討を行うということができるような状態になれば速かに私のほうから求めなくても、進んで一つ説明をするという態度をとつてらいたいことを条件にして、妙な条件ですが、大体は了承いたしましよう。それからもう一つ今までの質疑応答の中に大体輪郭は掴めたのですが、もう少し明確にならない点は、漁業条約の締結される国は講和条約調印をした国との関係であつて講和条約調印をされなかつたソ連とか中共とかいう国々との漁業条約というようなものは締結されない常識であるし、そのようなお話を承わつたわけなんです。そうすると日本漁業というものは結局北洋、北に伸びるか、西に伸びるかという以外に、南のほうは戦争前の経験からいつてもないことはありませんけれども、大部分の漁場というものが北洋から西の支那海を中心として動いておる、この漁場に出漁することが依然として非常に危険な不安な状態の中にさらされるということは想像にかたくないのである、若しそれがまあマツカーサー・ラインがなくなるものと仮定をして、そうしてもう少し外に日本漁船が出勤をして出漁しに行く、そうするとその危険の増大を防止するためにはどうすればいいかという問題が起つて来る、一つ方法としては日本保護船と言いますか、監視船と言いますか、そういう形で日本自身が保護のできるような船をこしらえて、そうしてその漁業が安全に行われるという対策をこしらえることも一つ方法であろうが、併し若し日本漁業保護の防備というか、それが堅固になればなるほど、向うのほうからの拿捕しようという目的と衝突するわけですね。実際問題として衝突するわけです。だんだんとそれを増強して行くと、結局漁場防備のために相当の国費が出されて、而も危険はその地点において増大して来るという可能性が、公算が極めて多い、そういうことになれば、そのときに智慧を搾つて最善の対策を講ずればいいのではないかといえばそれまででありますけれども、そのことまでやはり考えておかなければならんし、それから講和条約が締結されなかつた国とも何らかの方法において、せめてその同じ海域において漁業する国々との間には、漁業に関する点においても何らかの協定が結ばれることができないかどうか、こういうことについての対策なり、御見解を承わるというと、この点において非常に明確になるのだろうと思います。もう一つはアメリカとの安全保障条約、これは国会に賛否両論がありますけれども、今の現状から言つてこれは当然通過することが、批准されることの公算が大きいわけです。若しそういうことになれば、安全保障条約の中に、日本の公海漁業が安全に保障されるようなことか織込まれる可能性があるかどうか、又そのことによつて政府努力するお考えを持つておるかどうか、この点についての御説明を願いたいと思います。
  84. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 今度の平和条約に参加していない国で日本と戦争関係にある国は六カ国でございます。ソ連、ポーランド、チエコ、印度、ビルマ、ユーゴースラビア、この六カ国であります。御質問はこの六カ国の漁業関係をどうすべきかという問題でございましたと思います。この六カ国との関係は平和条約に規定がございまして、今度の平和条約と同一条件の、又は実質的に同一条件の二カ国の平和条約を結ぶようにとの考え方に立つております。ですから今度の平和条約が発効したあと暫らく事態の進展を見守る必要があるのじやないか、こう思うわけであります。今これらの国との漁業対策如何にすべきやとの具体策を立てておけばこれに越したことはありますまいが、やや現実的に言えば時間的にもう少し余裕を持つて考えてもよろしかろうと、こういう感じを持つものであります。又公海における漁業、漁獲との関連においての安全保障協定の内容を考えればどうかという問題は実は初めて提起された問題でございまして、今日までそういう問題を頭の中に入れて考えたことはございません。じつくり考えて見たいと思います。
  85. 青山正一

    青山正一君 それに附随して……水産長官は、安全保障条約の関係です、その問題を結付けるお気持がありますかどうか。
  86. 藤田巌

    ○説明員(藤田巌君) 実は安全保障条約自体私自身が新聞で見る程度のもので、真相はなかなか知りません。でありまするからして、それと果して結付くかどうかもわからないのですが、併し結局漁業のほうではやはりいろいろ関心を持つ国が、或いはソ連であるとか、或いは中共、或いは又韓国であるとか、台湾であるとか、こういうような特殊ないろいろな事情があるわけであります。従つて私の想像ではやはりその安全保障条約にも結付き得ないものじやなかろうかと、こう思つております。
  87. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 私はその点はもつと用心深く考えております。是非もう一度皆様に安全保障条約の前文を繰返して読んで頂きたいと、こう思うのです。あの安全保障条約は前文に、よくわかりますように、外部から日本に対して来る武力攻撃に対して防衛の途がないから暫らく合衆国に日本にいて欲しい、アメリカが置いてやろう、こういう趣旨のものであります。私はだから公海における漁業の問題と関連をおいて考えないほうがよろしいと、こう思うわけです。もう一度安全保障条約、殊に今日もう事務局に来ておると思いますが、昨日私のほうで国会の事務局にお届け申上げておきましたが、サンフランシスコ会議の解説の中に安全保障条約は今度初めて公表いたしましたものですから、交渉の経過と内容、それから討議とアチソン国務長官の挨拶その他をできる限り平易に解説いたしておいたつもりでございまして、それで安全保障条約の目的も、できた基準も尽しておると私は考えております。
  88. 松浦清一

    理事松浦清一君) 安全保障条約をもう一遍読んでくれとのことですが、大体安全保障条約というものの文章だけは読んでおります。あれの裏に何かあれば別ですけれども、条約に現れている精神だけというものは大体掴みとつているはずなんですが、日本の国土が外国から侵略された場合のことで、そのときどうするかという具体的な措置というものは、これは行政的な措置できめられる、内容についてですね。そういうふうに理解しているのですが、それが間違つておれば別ですが、そういうことになれば、一体日本の国土の侵略というのはどういうところが侵略の線であるか、日本の国土に大砲をぶち込まれたり、日本の国土に上陸されたりするということだけが日本の国土の侵略ではない。やはり公海に出て漁業していることは日本の国土の延長であつて、その先端がやはり日本の国土である。こういうことの考え方から行けば、安全保障条約そのものの賛否ということは別問題として、やはり日本の事業場の一番端が公海で漁業しているということなんだから、そのことまでやはり含まれて安全が保障されるという態勢が適当ではないか。これは外交問題、安全保障条約だけの問題について、あなたがたは専門家だからできるかできないかは検討されているでしようけれども、我々はそういう気がする、国土の安全だけが保障されて、日本の国土を離れ、土地を離れて日本航海をしたり、漁業をしたりしている船の安全が保障されなければ、日本全体の安全保障ということができない。日本が自衛の力を以てこれを保障するか、或いは国連の安全保障によつて防衛するということを考えないと、国の安全だけを保障されても事業場の先端が保障されなければ安全保障にならんと、こう考えるのですが、間違いかどうかわからんのですけれども……。
  89. 青山正一

    青山正一君 それは考え方で、今までの実情は、拿捕された船は、中共ならば中共の船が五、六隻で武器を持つてそれを囲んでいろいろ拿捕したという状態ですけれども、今後も恐らくそういうようなことが非常に頻繁に出て来ると思います。例えば五、六隻の中共の船が拿捕して行くということがある場合において、そういうような考え方にどう又重点を置いて行くか。それから又そういつた業者に重点を置いて行く必要が私はあるのではないかと、こういうふうに考えております。そういうことの点について、あなたの考え方と少し考え方が違うわけです。どんなものでしようね、その点は……。
  90. 西村熊雄

    ○説明員(西村熊雄君) 先刻申述べた私の意見は変りありません。
  91. 松浦清一

    理事松浦清一君) ほかに御質問ございますか、如何ですか。
  92. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 よく問題になる公海の三浬と、それからソヴイエトロシアの主張している十二浬というような問題、これに対してどういう考えを外務省或いは水産丘のかたはお持ちでしようか。それをちよつと承わつておきたいですね。
  93. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) 従来日本政府としては、いわゆる領海の範囲は三浬というふうなことを、特に漁業の問題に関係して言つてつたはずです。従つて我々といたしましても、やはりそういう主張で行きたいと、こういうふうに考えております。
  94. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 主張されたとしても、これは相手国と話合いがつかなければこの問題は解決されたとは言えないように思いますが、如何ですか。
  95. 藤田巖

    ○説明員(藤田巖君) その通りでありまして、従つていわゆる国際法の原則というものも、必ずしも各国すべてが同意しておらんところがあります。従つてさような問題もあります。従つて最後の解決の場合はやはりこれは実際的の解決に待つと、こういうふうに考えます。
  96. 松浦清一

    理事松浦清一君) それでは御質問がございませんければ、散会してよろしうございますか。
  97. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 もう一つ意見があります。質問ではありませんが、議事運び方について、いいですか。
  98. 松浦清一

    理事松浦清一君) どうぞ。
  99. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 つまりこの漁業問題は非常に重大だと思いますが、日本の将来にとつて特に……殊に今サンフランシスコで調印されたものが仮に無事に効力を発揮しても何ら委員長の言われるように北洋漁業や、西の漁業もなかなか円滑に解決されない。こういうふうなこの委員会として大きな問題を持つわけでありますから、只今局長なり、長官なりは政府の一使用人として忠実にやつておるという非常に謙虚なまじめな誠に官吏として珍らしいくらいの人なんで、こういう人を相手にしておつても問題は明確にならない。外務大臣は何のための外務大臣であるか。外務大臣の出席を要求して、そうしてそのうちの漁業問題を十分に討議するように委員長理事の諸君のほうで運ばれることを私は希望したい。
  100. 松浦清一

    理事松浦清一君) 必要に応じては大臣の出席を求めることもございますけれども、今日の大体のこの委員会の準備は若し漁業条約が伝えられるように進められておるならば進められておる経過、それから日本政府としての考え方等の経過一つ聞こうではないか、こういうことなんです。それからマツカーサー・ラインがどうもなくなりそうであるが、若しなくなつた場合に一体北洋、それから支那海等において漁業をしておる漁船が危険にさらされる。それを一体どういうふうにしてその漁業を遂行させる考えを持つておるかということを聞こうではないかという委員会なんです。ここで委員会との出席を求めて随時やりますから、その点御了承を願いたいと思います。  それでは本日は委員会はこれを以て散会いたします。    午後三時三十二分散会  出席者は左の通り。    理事      松浦 清一君    委員            秋山俊一郎君            入交 太藏君            青山 正一君            兼岩 傳一君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    外務省条約局長 西村 熊雄君    水産庁長官   藤田  巖君    水産庁生産部長 十川 正夫君   参考人    日本遠洋底曳網   漁業協会会長  伊東 猪六君