○
国立国会図書館長(
金森徳次郎君) 今日お
手許に差出しておきました
昭和二十七年度
国立国会図書館予算概算書というこの
書類は実は
事務上のものでありまして、
大蔵当局といわば下打合せをいたしまする
書類でありまして、この辺のところで
大蔵省に一応持出しまして、
大蔵省の
事務のほうと交渉をして、大体話がまとまりそうに
なつたときに正式に
予算の
要求書を作りまして、そのときにはこの
図書館運営委員会に差出しまして、そこで正式に御承認を
願つて、それから
議長のほうへ
書類が行く、これが普通のやりかたでありまして、正式に出しますのは次の
本当の
予算が締めくくりがついて行く頃になるものと思います。現在今日お
手許に出しましたのはそこまで行かないで、もつと下相談として
大蔵省のほうへ向けて、実は
自分のほうではこういうような
考えを持
つておるがこれについて相談にの
つてもらいたい、こういう
気持の
書類でありまして、正式にいえばこの
委員会では一応はこういうふうにものが動いておるという御
了解を得まするだけであ
つて、それ自身について御
決定を願うというまだ時機には到達しておりません。
大蔵省のほうにこういう
書類を出すといたしますれば、とにかくこの
委員会で一応
様子を事実上御了知を願いたい、こういう立場であります。露骨に申しますると、どこの
官庁でもこの
段階に出しまする
予算は相当大掛りなものを出しまして、実際は大きなものを求めても小さなものしか得られない、まあ浮動的なものであります。そこで今日のこの
書類にありまするように非常にたくさん
項目に亘
つておりまして、大体
図書館の
一般的な
経費、或いはそれから更に小分けにいたしまして各種の
項目が掲げてあり、費目が掲げてあります。で、一々御
説明を申上げましも、結局それだけでは御
了解を願うには不適当でありまして、細かい
数字に亘らなければなりません。大掴みに申しまして
左側のほうの
数字、
左側から
二つ目の
項目にありまする
数字が、その各
項目についての
要求概算額であります。ここに書いてあります一番上のほうには九千五百八十万円というのがございまするが、これは
国会図書館の
一般的な
経費であります。特別な
仕事というわけではなくて、
事務をや
つて行きまするについてのいわば極く経常的な中心的な
経費という
趣旨のものであります。それからその次にありまする「
国会に対する
考査に要する
経費」と申しますのは、
国会からのいろいろな御
要求に応じたり、或いはそれを予想したりいたしまして
仕事をして行くというときに要る
書物も買わなければならん、いろいろな
書物というまでにならないような基本的な
文献も手に入れなければならんというわけで、二千九百九十万という額をここに計上をしております。それから一枚あけまして「
行政、司法各
部門支部図書館の
統括指導等に要する
経費」とありまするのは、御承知のように私
どもは
最高裁判所の
図書館を含めまして、十
幾つの
支部図書館を持
つております。これが今まではと申しましてもここ二、三年前までは各
官庁が
図書館を持
つてもよし、持たなくてもよし、又持
つておりましても
一つ一つが個別的であ
つたのでありますが、それがじつと見ておりますると非常に大切な施設でありまして、今日
日本の
行政がいわば
腰だめ主義と申しますか、いろいろと
意見が変
つて行く、しつかりした根底がないということは、結局内部の
調査の
組織が十分でない、こういうふうに
考えまして、各省でもそういうふうに
考えられておるようであります。そこでそういう
行政各部の
図書館をしつかり持上げてやるように、私のほうから
援助をするということが必要になります。
それから又この前ここでもお話が出たと思
つておりましたが、
地方議会、つまり東京都の
議会とか、神奈川県の
議会とか、愛知県の
議会とか、こういう
議会にそれぞれいろいろなこの
議会附属の
図書館を持
つておるわけであります。
国会について
国会図書館があると同じように、各府県の
議会につきましても、ささやかながら
図書室があることにな
つておりまして、これは
法律に根拠ができておりますけれ
ども、実際はうつちやり放しでありまして、その
組織というものはかなり貧弱であり、
仕事の
連絡も
一般的にはよそとついていないようであります。これに対して何らかの
連絡を図るということが
国会図書館の任務ではなかろうか、これはここでも
議論の出たことでありすすが、
余り立入つてこれをするということは事実できませんけれ
ども、何かこう
友だち甲斐といいますか、
友だち甲斐よりも少し深入りを、いたしまして、国家としての
世話をし得る
部面はよそでやるところがございません。でまあこの点我々の
図書館でやろう、そういう
予算が少し頭をここに出しております。それからその次の
一般国民に対する
考査奉仕に要する
経費、これは普通の
仕事といえば普通の
仕事でありますが、
金額がかなり高ま
つております。一億四千四百万円ということにな
つておりまするが、これは常識的に申します
図書館の
仕事ということに当ります。これ以外の
国会に対する
サービス等は普通の
図書館の
仕事ではございません。ここに掲げておりまするのは、
一般に申しましての
図書館事務ということに当るものでありまして、本を人に読ませるということとこれに附随する多くの
事務に属しております。それからその次に丁度この紙の分れ目にな
つておりまするところに、
国際図書交換に要する
経費というものが出ております。これは普通の
図書館ではやらないことでありまするが、私
どもの
図書館は世界の諸国と対立する
一種の
外交機関というほどでもございませんが、
一種の外交的な
意味を持
つておりまして、
日本の
書物を
外国に送
つてやる、
外国の
書物を我々のほうに送
つて来るという
関係におきまして、まあ
世話係、
郵便局に類似するような
仕事をしておりまするが、これが
文化交流の上に非常に大切なことでありまして、現在は
アメリカとは非常に密接にや
つております。政府ばかりではなく、
アメリカの多くの
大学、その他
研究機関と密接にや
つております。
ヨーロツパ大陸のほうはそんなに筋道が
通つてや
つているわけではございませんけれ
ども、併しユネスコとの
関係においてもや
つておりますし、ベルギーな
どもや
つておりますし、
イギリスな
ども或る
程度にや
つておりまして、そんな
関係で一昨年でありましたか、一万冊以上の
イギリス出版物を我々のほうに只で寄贈をしてくれたということもございまして、こういう面において次第に
経費が高ま
つて行くのであります。殊に
郵便料、
運送料というものが、今まではいろいろ
便法ございました、
便法というのは
日本が管理せられておるということに伴いまして、
外国向けの
運送がいろいろ
便法があつたわけであります。併し独立の色彩がはつきりして来るにつれまして、なかなかそういう
便法はございませんので、結局
運送費を我々のほうで按配しなければならないということになるのであります。その次の頁の中の大きいスペースを持
つておりますところに、
上野図書館の
管理運営に必要な
経費というものが出ております。これは
上野の
図書館を
如何にすべきかということが実は非常に大きな問題でありまして、
赤坂の
図書館のほかに
上野の
図書館、この
二つ並んでいる、これがどういうふうに措置せらるべきものかということにつきまして、
国会図書館法の中にも或る
程度規定がございますけれ
ども、なかなかこの
実行をいたしますためにはむずかしい問題がございまして、このむずかしい問題というのは、
国会図書館という大きな
建物ができる、こういうことが先決問題でありまして、それができません限りは
図書館の
書物の必要なものを中心の
図書館に移して行くというようなことができませんので、結局今日見送りの状態にあるということであります。それにもかかわらず
上野の
図書館を発達させなければなりません。そこで
経費を六千九百万というふうに組んでいるわけであります。それからその同じ紙のもう少し下へ
行つて細かい欄にな
つておりまするが、そこに
営繕工事に必要な
経費というのがございまして、そこに一億九千四百七十七万九千円というものがございます。この字数は非常に少い字で現わされておりますけれ
ども、今日特に
皆様がたの御支持を得たい、或いは御
援助を得たいと
考えておりまするのはこの一行であります。つまり一億九千四百七十七万九千円という額を計上いたしまして
営繕工事に必要な
経費として出しておりまするが、こういう簡単な書き方というものは
趣旨を貫きません。まあこれはお
役所風にできておりますけれ
ども、正確に申しまするとこの中に一億一千七百万円という
数字が含まれております。その一億一千七百万円というのは、将来の
国立国会図書館の庁舎を造るに必要な
経費であります。そのほかの八千万円ばかりはこれはいろいろ小さい
建物、現にや
つておりまするような小
工事、小修繕ということに当てはめておる
数字でありまして、それは極く日常のものでありますが、今申しました一億一千七百万円というものは、我々の
中央図書館が今後
如何にして建設せられて行くかという
根本の問題であります。そこでこの
中央図書館のことを一応申上げなければなりませんが、この我々の
図書館が
法律できめられましたのは、
昭和二十三年の二月でありまして、
昭和二十三年の二月に
国立国会図書館法という
法律が
議会を通過いたしました。併し
法律ができましても実質上の
図書館ができるわけではございません。そこでこの二月に
法律が生れましたときには、実は何にもなか
つたのであります。
建物もなければ
書物もない、これに必要な職員もなければ、これに必要な
経費もない、こういう
建前で全く紙の上にこれに生れて来たわけであります。その生れて来たものをどうして充実して行くかという
段階になりますると、ほかのことはいろいろ
工夫がつきまするけれ
ども、
建物がなければ何ともしかたがない。
図書館のような
活動体は、結局先ず第一に
建物が必要であり、そこの中に
書物と人を置くことによ
つて動き出すというものであろうと思いまするが、
建物が得られる余地はなか
つたのであります。それで何とかしてこの
建物を得ようというためにいろいろ
目算を立てまして、例えば今の
特許局というものですか、あの辺の
建物を
図書館に充てたらどうか、こういうような
議論もあ
つて、若干の努力はされたのでありますけれ
ども、結局よその
建物がそう気軽に手放されるということはございません。で、とかくしておりますうちに今の
赤坂の
建物、つまり旧
赤坂離宮というものが、とにかく何かに使うべきものである、こういう空気が現われて来まして、そこにも
幾つもの申込はあ
つたのでありまするが、併しその当時はいろいろの経緯があ
つて、あの当時は
法務庁と言
つておりましたが、
法務庁があそこにできるということでありました。そこで
法務庁との
話合いになりまして、あの
建物を
二つに区分して、半分は
法務庁で使う、半分は
国会図書館のほうに使う、こういういわば約束のようなものができまして、正式の
建前といたしましては、半分は
内閣で使う、半分は
国会で使う、こういうふうに
決定をされました。
内閣で使うという
部面が
法務庁が使うという
実行の形となりまするし、それから
国会で使うという部分が
国会図書館が使うという
実行上の形に
なつたわけであります。だけれ
どもそのほかに
あとから
弾劾裁判所ができるというようなことによりまして、幾分中にほかのものが加わりましたけれ
ども、大体そんな形で来てお
つたのであります。これはどつちかというと止むを得ざるに出でた無理な道行であります。そのうちでも
法務庁のほうは一年間や
つておつたら
本当の
建物ができるから
あとは
国会図書館で自由に使つたらよかろう、こういう、これは正式なものではございませんが、当時の
鈴木法務庁総裁でございましたか、これとの間の私風の
話合いでそういうことがきま
つておりましたけれ
ども、併しなかなかそういうふうにも行かないので、ずるずると
現状になりました。
現状になりまして三年半ばかりの経験の後にどういうことが現われて来たかと申しますと、もう何としてもこの
図書館の
建物ができる運びにならなければ責任を以てこの
図書館を
運営することは絶対に
見込がない、こういうようないわば絶壁に身を押し付けられたような形にな
つて来たわけであります。もとより時間のゆとりはございますけれ
ども、
趣旨から言
つて行き道がなく
なつた、こういうことになりまして、どうしてそんなふうに
なつたかと申しますると、
理窟を数え挙げますれば五つでも六つでも出て来るのでありますが、極く簡単に筋を辿
つて見ますると、第一はあの
建物は
図書館に向かないのでありまして、あの
建物の中でどんなに努力いたしましても、能率的に
図書館を
運営することはできません。
閲覧案を適当に整備する、
書物の庫を作ると申しましても、何ともしようがないのであります。実はあそこは御覧下さいまするとわかりまするけれ
ども、
書物を出すのに読もうと思う人が本棚に
行つて自分の
書物を探して来る、いわゆる
開架式、本箱を開くと書きました
開架式、オーブン・アクセツスの式を採ると、こう
言つて外に向
つては宣伝をしておりますけれ
ども、その実はこの
方法以外にはあの設備で
はやりようがないのであります。
書物を入れる庫を無理にこしらえようとしても、それはとても不便でできることではございません。ですから、
開架式を嫌つたわけではない、それに賛成はいたしましたけれ
ども、
一つの
理窟は止むを得ざるに出ずるという妙な
要素も含まれているということも覚悟しております。でもう行き詰まりまして、結局
書物を置くところも無理をして
地下室を使う。よくないことはきま
つております。それから
廊下を
使つて少しでも空いておる
廊下があればこれは全く
事務室に区切
つて当ててしま
つております。私
どもときどき
心配をするのでありまするが、あそこにたくさんの
閲覧者が来ておるというときに、何か
天災地変というようなことがあり、これらの人が巧みに身を安全に外に持出すことができるか、それは
常々注意をいたしまして、そういうことの必要な
廊下は絶対に塞がないという
注意はいたしておりますけれ
ども、何しろ多数の人を受入れるようにできておりませんので、始終
心配はいたしております。それが
一つ。
それから第二の問題は、あの
建物をいつまでも使用するということにつきましては、私は
二つの欠点が起
つて来ると思
つております。というのは、中に従事しておる
人々の心の持ち工合というものに或る
程度影響を持
つております。何とい
つても
日本に他に類例のないような美しい
建物の中に住んでおるということは、
精神をよくするという
意味もありますが、
精神を一国の持
つておる
文化標準と違つたところに置くと、つまり住んでおるところに馴れまするというと、
気持の上にも何か
一般の
日本国民が
事務的に
仕事をするに適する
考え以外の
考えが出て来るのではなかろうか。直截簡明に言えば、それは
借り物、
自分たちの力量で住むというのでなく、
借り物に住んでおるという、その
文化の水準に馴れ過ぎておる。その
一つの現われは、私
ども如何に努力いたしましても、官僚的であるという非難を
図書館利用者から受けております。そんなことはない、どこに官僚的なところがあるかと言
つて聞きまするけれ
ども、やはり言われまするところに、あの
建物の持
つておる何か
精神的影響があるような気がしております。それに他のほうから
考えまして、あの
建物はいつまでも我々が持
つておられるとはちよつと信じにくいのであります。それは何とかして止むを得ない間は
使つておりたいのでありまするけれど、だんだん世の中がこう落ちついて来ますると、もつとよりよき使い途があるのではなかろうか。それは常識的に
考えまして、あの暗い精巧な
建物の中で
泥靴で入
つて書物を読むということは、破壊するわけではございませんが、自然的な破壊はどうしても起
つて来るのであります。
地方の人があそこを見に来て、人によ
つては立派な
建物だとこう
言つて感心はして帰りますけれ
ども、或る
人々は、ああいうところを使うのはけしからんと、こういう感想を持
つておるようでありまして、これの善覆いろいろむずかしいと思いまするが、まあ常識的に、ああいうところにお
つて生ぬるい
気持を起しておるべきものではない。これは百弊あ
つて一利なしと、而も
時代は転換すべきところに来ておると、こういう感じがするのであります。そこでまあこういうことを
考えて行きますると、
近代図書館をやる上に不適当であり、而も四囲の
情勢から見てここは長く住むことができないと
考えますると、
如何にすべきかということになりまするが、これはもう何としてもその職能を完全に発揮いたしまするためには、この
国会の脇へ持
つて来て造るということを
考えなければこの
図書館に永久の生命は生れて来ないという気がいたします。
国会に
附属する
仕事をしながらこんなに離れておる。普通の
方法で行きますると小一時間もかかるというようなところでやるべき
理窟はございません。又
一般国民に
サービスをするという見地から申しましても、これはいろいろ
考えられまするが、併し非常に適当だとも言いかねるのであります。そこへ持
つて来まして、最近私
どもの
書物は非常に
分量が殖えて来ております。のみならず貴重な
文献を手に入れる機会もございまして、
分量が殖えると
倉庫を完備しなければならん。それから貴重な
文献が殖えますると、何としても絶対に
火事や
地震やそのほかの天然的な障害に安全であるような
工夫をしなければなりません。今のあの
建物は相当安全ではあろうと思いまするが、火災の危険がないかといえば、非常に完全であるとは言えないのでありまして、
図書館の理想、殊に
一つしかないというような
文献を集積いたしまする上に、あれではとてもいけないのであります。こう
考えて行きますると、もう
時代は来ておる、発展のためにも存続のためにも新らしい
建物ができなければならないということになりましよう。ところでもう
一つ考えますることは、現在到底あれでは堪え切れません。そこで
三宅坂の辺に小さいバラックをこしらえておりまして、毎年
予算の
工夫をいたしまして、若干ずつ二年間や
つております。それは従前残
つておる
倉庫を補修して書庫にする。これはもう
火事或いはその前の
地震によ
つて相当傷んでおります。それをまあ何とか手入れをして
使つておる。或いは又木造のバラツクを
造つて、これを
事務室に
使つております。併しだんだん規則がやかましくな
つて、あの辺は
不燃性の
建物でなければできないということになりますると、昨年の途中から、又本年に亘りまして
不燃質の簡易な鉄筋コンクリートの
建物をこしらえておりまするが、これも年に今後の
情勢からいえば四、五百坪ずつ
造つて行かなければならんと思
つております。これを仮に四、五百坪ずつ造るといたしますれば、
如何に安く評価いたしましても相当の
金額になるのでありまして、これを十年も続けておりますると、その
金額は決して軽く見ることはできません。大体本
建築を造りまするのも不
燃質小家屋を造りまするのも、よほどこれは接近した値段のものであります。と
考えますると、将来を慮
つて大抵のところで暫定的の
方法は打切りまして本質的な
建物に持
つて行くことが
経済の釣合いから申しましても当然なことであるとも
考えまするし、私
ども従前アメリカの
使節等から助言されておりました
方法を尊重しつつ、
本当のよい
図書館の
建物が欲しいということになります。それでここ二年ばかりその方向にいろいろ努力しておりましたけれ
ども、又
皆様がたの一方ならぬ御
援助を得ておりましたけれ
ども、まだ
日本では
図書館というものが認識せられていないせいもありましよう、今まではどうしても
大蔵当局の同意を得ることができなか
つたのであります。これは一面から
考えますると、多少は無理な点もあつた。というのは、
アメリカ使節の
計画によりますると、大体四万五千坪乃至五万坪の
建物を……、延であります。延ではありまするが、四万五千坪乃至五万坪の
建物を希望せられておるし、これを造りますると、今の物価では大体百億の
予算を要することになります。これを
日本の
現状から
考えまして、直ちに
実行に移すということは甚だしく空想的であるような気がいたします。そこでこの希望というものは或る
程度限定をして行かなければならんというときに、これはまあ
アメリカの
使節も予想しておりましたが、一度に造らないで、
済崩しに
造つて行く、こういう
考えが生れて来るわけであります。それから
図書館という
一つの
建物を果して
済崩しに造ることができるか。一匹の鯛を皿に盛るのに、
尻尾は
尻尾、腹は腹と分けて盛るという場合に、これが完全に
一つの鯛になるということが可能なものかどうか、この困難なる問題にぶつかります。けれ
どもほかのいろいろな必要を
考えて見ますると、分割して
図書館を建設して、而も或る時期のうちにそれが総合的に
一つの働きをするという
工夫はできないことはないと思います。徒らに大きな
建物を
一つ作りましても、結局実用の上においては手数ばかりかか
つてうまく行かないといたしますると、比較的小さい
建物をこしらえまして、それを
あとで適当に組合せて行きまして、若しできるならば、各
建物に特別な性質を與えまして、これは政治、
法律の
図書館、これは
経済、社会の
図書館であるとか、これは科学の
図書館であるとか、これは文芸の
図書館というようなふうに、科目に従
つて分けて行きまして、なお今日の
大学がいろいろな分科があると同じようにや
つていきますと、分業の
利益と総合の
利益が共に得られるのではなかろうか、いわゆる
衛星的図書館とでもいうような構想で行きまするならば、
分割建築もできるのではなかろうか、こういう
気持を持ちまして、今回
大蔵省に出しました一億一千万円の
予算は、
根本計画の大よそ三分の一の
計画を前提として
数字を
考えて見たのであります。一万五千坪の
建築をするといたしますと、今日の
目算では大体六千六百六十坪くらいの
見込が立ちまするので、
書物も三百万冊は入れられるということになろうと思います。
閲覧室も大体千五百人を楽に容れることができる。それから
議員のかたの
研究室も大体
見込みますると四百室くらいできるのでありまして、これはいろいろな御
意見もありましようけれ
ども、
議員のかたが
図書館を御
利用になるときにその
部屋に入
つてそこに
書物を貸出して置くといたしますれば、そこでは
図書館の中に
書物が置いてあることになりまするから、そのまま継続して必要な期間
利用することができる、ということになり、そして、若しその
部屋の構造を鍵を掛けて出入りをすることにしますれば、何人もこの
研究室に妨げを生ずることはできない、こういうことになりますると、
議会図書館としての機能が或る
程度まで、完全ではなくても、或る
程度まで出るような気がいたします。その際いろいろな
附属のものを
考えて見ますると、又ひとわたりの
計画は立つわけであります。それでまあ一万五千坪という
数字を念頭におきまして、今回
大蔵省に
要求いたしましたのは、それの基礎といたしまして先ず
土地を
ドイツ大使館の跡に
決定をするということ、それから必要なる設計をするということ、それから又あの
土地が
民有地を以て取囲まれておりますので、或る
程度民有地を買上げるということ、それから又あの
土地が大きな
建築に堪え得るや否やということにつきましては、物理的な
調査をしなければなりません。そういうような
経費も
考える、こういうような形で一億一千万円という金を計上したのでありまして、この中には具体的な
建築費はまだ盛込まれておりません。つまりほんの準備的な
経費を盛込んで、これでまあ
大蔵省の
様子を当
つておりますけれ
ども、併し恐らくこれはわかりません、わかりませんけれ
ども、非常に楽観的なというような
要素は実は
一つもないのでありまして、今後にも幾多の難局が現われて来るような気がしております。正直なところ私
どもが今日どうしてもかくありたいと思いますのは大きさの問題ではございません。又非常に急ぐということも言い切れませんけれ
ども、とにかく私
どもの
図書館が、
自分の
建物が実用に適する
程度に持つ、何も輪奐の美を極める必要はございません。
議会と国民に対して十分な
サービスができる、こういうことに着眼点をおきまして、それがすぐでなくてもいい、三年とか四年とかの間にどうにか役に立つ
建物ができればいい、これが重点でありまして、具体的な
数字は必ずしも絶対のものとは
考えておりません。でもこういうふうに若しそれが
本当の
図書館ができるといたしますと、今まで懸案にな
つております面倒な問題も自然に解決すると思います。懸案にな
つておると申します一番大きい問題は、
上野の
図書館をどうするかということでありまして、
上野の
図書館は
法律の中であれは東京都に或る時機に渡すべきものであるということが書いてあり、まだよく規定の
趣旨はわかりませんが、少くとも表面的にはそういうふうにな
つております。国家で国家的目的のために金をたくさんかけて百年間育成して来たところの
上野の
図書館が、直ちに
地方団体である東京都の所属になるということは、私
どもどうしても
考えられないのでありまして、多分その
趣旨はあの
書物の中の国家的な
書物は
国会図書館に移せ、それからそのほかの部分、できるならば雅量を開いて東京都に移すべきものである、主たる狙いはあの
建物に重点を置いたのではないかと思いますけれ
ども、当時の起案者等にいろいろ伺
つて見ましてもそんなにはつきりした答えは出て参りません。要するに
法律が半殺しにな
つておりまして、もう四年もた
つて法律の規定を
実行しないということは甚だ心苦しいのでありまして、併しその根底におきまして
上野の
図書館を
如何にするかという問題をきめまする前提といたしまして、あそこにあります
書物の中の国家的な
書物何十万冊かを直ちに
中央図書館に移して、これを保存し整理するという問題があるわけであります。現在
建物がございませんし、余力もございませんのでそこまで行けない、そうなりますと疑心暗鬼を生じまして、
上野の
図書館と
中央図書館の間に何となく対立というわけではございませんが、他人行儀のような
気持も出て来る。これは悪いことでありまして、或る時機に或いは
法律を変えるという
考え方も必要にな
つて来るかも知れん、或いは
法律を変えないといたしますれば、技術的に今申しましたように実質的な貴重な
書物は本館に移す、
あとは
あとで適当な処理をする、こういう方向に進まなければなりませんが、何しろもう五万冊の
書物も置く所がない、いわんや数十万の
書物を置く所はございません。立ちすくんでおるようなわけであります。甚だ長く申上げましたが、我々の
図書館といたしましては、何らかの合理的な
建物を持つということが絶対の急務でありまして、而もすぐにできないことでありまするから、今年あたりからその第一の礎を置くということは私
どもの責任から申しますと寝ても醒めても心の悩みのもとになると、まあ形容し得るくらいのことでありますが、どうもなかなか前途に
見込があるがごとくにも思われません。一昨日衆議院の
委員会を開いて頂きまして同じような希望を述べて御
援助を願
つたのであります。御
援助をして下さるということであり、細かいことは別として新らしい
建物を造るように方針を進めるということは
委員会で議決していいのではないかということで、
委員会で御決議を得ておりませんが、その
程度であります。一両日前からラジオで東洋一の
国会図書館ができる、或いは新聞紙にどこかの通信から出たものと思いますが、東京の新聞ばかりでなく、
地方の新聞にも出ておりまして、昨日もCIEのドン・ブラウン氏に会い、カナダの代表のメーンジーさんに会いましたが、非常にいい
図書館ができるそうでおめでとうと言われましたが、私何もあれしていないので、
大蔵省に
予算金額一億一千万円……、それは
大蔵省に
書類を出したことは事実であります。前から絵図面を出しまして、ああいう夢を描いてお
つたのは事実であります。ああいうふうに具体化されたようなものを見ますと、何だか殊更に作為をしたようで虫がいいような
気持がいたしますが、心の中に希望することでありますけれ
ども、今日のところあれは全く私
どもの
仕事ではないのでありまして、ああいうふうになるように
一つ御尽力が願えたら非常にいいが、そこまで
考えていないわけですが、実情を述べまして、今日特にその点につきまして、御
意見のあるところを伺うと同時に、又これの
実行を促進する手段等がありますれば、私
どもももとよりこれの
仕事に当
つて行きますけれ
ども、ともかくこの
委員会の御承認を得ておかない限り私
どもとしては一歩も手出しをすることができませんから、そこで御
意見等をお伺いしたい、これが私の今日のお願いであります。