○法制局長(奧野健一君) 今回の
講和全権及び
全権代理というものの性質につきましては、これは私は恐らく国際慣行上、普通であればいわゆる特命
全権大使等が当るのでありましようが、そうでありますれば、これは極めて明確に官吏であろうと思います。そうなりますと、特命
全権大使とありますれば官吏でありますから、
国会法三十一條との関連からいたしまして、
国会役員は同時に官吏たる特命
全権大使を兼ねることはできないと思います。併しながら
全権委員というものは国際慣例上認められておるものでありまして、これは恐らく官吏ではないというふうに
考えるのであります。併しながらいやしくも
全権委任状を持
つて條約に調印して参りますから、これは公務を執行するものであろうと思いますので、広い
意味において官吏ではないけれ
ども、公務員というふうに
考えざるを得ないと思います。そうしますと、これは三十九條の問題になりまして、三十九條のほうは広くすべて公務員について規定しておりますので、然らば三十九條の本文のほうのいわゆる公務員と見るか、或いは但書で
委員、顧問その他これに準ずる者というふうに職を持つ者と見るかという問題になるのでありますが、私
どもの
考えではこの本文のほうは
総理大臣、或いは
国務大臣、政務次官とい
つたような非常に官吏的な色彩の強いものを規定してお
つて、それを兼ねることはできないということに規定しているように
考えます。但書のほうは或いは臨時的、或いは顧問的、或いは諮問的な職責を持つ者で、これは時間的、その他仕事の上から国
会議員等の仕事を必ずしも阻げないものであるというふうに見て、この場合は
国会の
議決があれば兼ねてもいいというふうに規定されておるものと解釈いたします。そこでそういう
意味からいたしまして、
全権及び
全権代理というものは純粋の官吏的の性格ではなくして、どちらかと言えば、三十九條の但書に該当するものではないかというふうに
考えますので、そうして先ほど申しましたように官吏であるというふうには
考えられませんから、
国会役員であ
つてもこれは三十九條の但書の場合なりといたしまして、これは別に
辞任をしなくても両立し得るものではないかと法律的には
考えております。
参議院の前例におきましても、
委員長が三十九條の但書の職務に
議決によ
つて着いた場合もあると
考えております。そこで
委員長なるが故に三十九條の但書の場合に着き得ないというものではないと思いますので、純粋な法律の上から申しますと、役員といえ
ども官吏でない三十九條の但書のような職務に着く場合は
議決でよろしいのではないかと思いますが、いやしくも
国会の重要なる役員であるものが同時に
政府の行
政府の仕事に携わることは広い三権分立の憲法の
精神から申しますと、余り望ましいものじやないのじやないかというように
考えまして、法律論はとにかくといたしまして、実際の扱いとして或いはおやめにな
つてあられたほうが憲法の大きな
精神に副うように
考えております。