○淺沼稻次郎君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、昨
日本会議場においてなされた、
講和條約
草案作成に至るまでの
経過報告に関する総理大臣の
外交演説に関し、次の数点について
質疑を試みんとするものであります。
われら
日本国民が待望しておりました対日
講和会議は、いよいよ九月上旬、
米国サンフランシスコにおいて開催されることになりました。
講和会議は、言うまでもなく戰争に対する終止符を打つことであります。
民族独立の
機会であります。戰争によ
つて失われたる
国家の自主性を回復することであります。われらは、この
講和会議を前にいたしまして、過去六箇年間に
日本はいかようにかわつたかということをはつきりつかみ、反省をいたしまして、将来に対処する必要があろうと存ずるのであります。
すなわち、
わが国は、終戰と同時に
ポツダム宣言受諾という客観的な事実と、
国民の戰争に対する鋭い批判の上に、平和と無血の間に偉大なる変革を遂げて今日に至つたのであります。最近になりましてから、反動的な空気が濃厚にはな
つておりますけれ
ども、政治的には、天皇の持
つておりました統治権の大
部分を
国民が掌握いたしまして、
主権在民の大原則を打立てたのであります。
経済的には、旧財閥の解体が行われ、事業者団体法、独占禁止法、集中排除法の制定によりて、資本家の
活動にある
程度の
制限を加え、労働者の団結権、団体交渉権、罷業権が憲法で保障されるに至つたのであります。農村においては、封建制度打倒のための農地の改革が行われました。また憲法の大改正を行いまして、平和憲法を制定して、その
前文において「
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の
関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであ
つて、平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と
生存を保持しましようと決意」をし、憲法九條においては、「
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戰争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを
放棄する。」「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。国の交戰権は、これを認めない。」という戰争
放棄の規定をいたしまして今、
日本には一人の兵隊もございません、一つの武器も持
つておらぬのであります。身に寸鉄もまと
つておらないのであります。
ただ、この六箇年の間にかわらざるものがあるのであります。それは無條件
降伏條件に
調印をいたしました
日本の国でありまするから、やむを得ないとは存ずるのでありますが、まだ
日本は
連合国の管理の中に、あるのであります。占領が継続されておるのであります。しかしながら、われらは、同じ
民族として北海道、本州、四国、九州並びに周辺の小島の上に
日本国家として
地域血縁社会を形成し、二千数百年にわた
つて運命を共同にして生活して参つたのであります。戰争には敗れたのでありますけれ
ども、一日も早く
日本の自主性を回復し、
日本のことは
日本人同士できめて行きたいという自主
独立の
精神は、われら
同胞の心かちの念願であつたと思うのであります。
講和会議は、
日本が
連合国の管理下から離脱し、解放せられ、占領を離れ、自主
独立の
国家として国際場裡に再出発する
機会でありまするから、われわれは一つの感激を覚えるのであります。しかしながら、一方
世界には、
国際連合必死の
努力にもかかわらず、戰争の姿を見るのであります。平和か戰争かということが全人類の大きな課題にな
つております。われわれは、この戰争か平和かという課題の中に
独立と平和を求めて進んで行かなければなちぬのであります。わが
日本国の
外交の基調は、わが
講和会議に対する
態度は、
国家の
独立と、
世界平和と、さらに
国民生活安定を基準にして、これに対処して行かなければならぬと思うのであります。(
拍手)私は、かかる基本的
態度をもちまして、
講和会議の
内容について二、三の点を
質問して参りたいと思うのであります。
まず
講和会議の
見通しに関する問題であります。
講和会議は、昨日も報告がありました
通り、米英を中心にして進められて参
つておるのでありますが、最近ソ連が参加することを明確にいたしました。われらは、
日本の
安全保障の上にも、
経済自立の上にも、
日本と戰争した相手国全部との間に、いわゆる全面的な
講和が結ばれることが望ましいと主張して参つたのでありますから、ソ連の参加は一つの明るさを加えたと思うのであります。しかし、一面
会議の複雑性を増したことも注目しなければならぬと思うのであります。ソ連の参加は
アメリカの招聘に応じた結果でありますが、ソ連が、いわゆる四箇国方式をやめて
アメリカの方式に賛成を表したとも見えるのであります。米ソの
講和條件の
内容には非常なる差異がございます。これがいかように調整されるか、あるいはソ連がいかような出方をするか、またインド、インドネシア、ビルマ、フィリピン等アジア諸国がいかようなる
態度をとるか、大きな課題でなければならぬと思うのであります。これに対して
政府はいかなる
見通しを持
つておりますか、この際お伺いしたいと存ずるのであります。
また米英両国は、中国の
講和会議参加に関しては、
国民政府を選ぶか、あるいは中共政権を選ぶかということは、
日本に選ばしめるといもことにな
つておるのでありますが、これは中共
政府を承認しておる英国と、中共を侵略者と規定しておる
米国との不一致なるところを、
日本に決定を求めておるのであります。従いまして、この決定には無理があると思うのであります。これに対して、吉田総理は、その当事者としていずれを選ばんとするか、この際私は承
つておきたいと思うのであります。
さらに、
日本をめぐる
国際情勢は、
日本の平和と
独立のために検討しなければならない大きな課題であろうと思うのであります。ソ連が
講和会議に出席することに
なつたが、米ソ二大陣営の対立というものは深刻なものがございます。朝鮮の動乱は未解決であります。戰争が完全に終結をしない間に新たなる戰争の芽ばえを見るのであります。冷たい戰争の中から熱い戰争の姿を見るのであります。この
国際情勢の認識をはつきりつかまずしては
講和会議に対処できないと思うのでありますが、この
国際情勢に対する総理大臣の見識を私は伺
つておきたいと思うのであります。(
拍手)
昨日、吉田総理は、
講和條約の最終案には和解と信頼の
精神が貫かれていることを高調されました。また和解と信頼が根本方針とはいえ、
日本が
敗戰国であるということもこれを考えなければならぬ、こう言われたのでありまするが、まさに私はその
通りであろうと思うのであります。しかしながら、この原則を私
どもは認めつつ、今われわれ
国民の聞かんとするところは、ただいま
北村徳太郎君によ
つていちいち聞かれたのでありまするが、まだ十分なる
答弁を承るわけには参りません。
第一には
領土に関する
事項でありまするが、
領土については、わが党は、昨年の九月、
講和條約の内客に対する
要望書を決定、
領土に関しては、
連合国の共同
宣言が指示したように、
連合国が
領土の拡張を求めない原則と、
住民の
意思に基かない
領土の変更はこれを行わない原則を尊重の上に、南樺太、
千島列島、歯舞諸島、色丹諸島、沖縄島を含む南西諸島、小笠原島諸島、硫黄島、大東島、鳥島諸島などの帰属が最終的に決定することを
要望し、これらの島々が
日本に所属することは、
日本民族の平穏なる生活を保つ上に欠くことのできない基礎的條件たるとなして、これらの諸島と
日本本土との
歴史的関連、
経済的緊密性から
日本の
領土権を主張して参りました。
しかし七月十三日に発表されました
草案には、見るべき改革が行われておらないのであります。そこで、われわれは、さらに
要望書を作成いたしまして、
政府並びに
関係諸国に要請をして参つたのであります。すなわち、われわれはヤルタ綱領の責任を負うべき根拠を発見することができない。
従つて歴史的、地理的かつ
民族的に根拠ある南樺太及び千島諸島の
領土権が
日本に確認されることを
希望する。なお歯舞諸島並びに色丹島は北海道の一部であることをわれわれは確認するものであります。(
拍手)北緯二十九度以南の
琉球諸島と、孀婦岩以南の
南方諸島、小笠原島、西ノ島、火山列島、それらに沖ノ鳥島、南鳥島の諸島は
歴史的に
わが国土であ
つて、これらの
地域の
住民は純粋に
日本民族であ
つて、その
住民は
住民投票によ
つてその所属を決すべきことを決議しておるのであります。
同胞の熱望にかんがみて
日本の
領土権が確認されることを
要望する、こういうような
要望書をつくりまして、
政府にも提出し、
関係諸国にもこれを提出して参つたのであります。
しかるに、
領土問題に関して、吉田総理大臣は、第二條の規定と第三條の規定を対比いたしまして、第二條の規定に、千島、台湾等の領域に対してはすべての
権利、権原を
放棄することにな
つているにもかかわらず、南面諸島その他
南方諸島の処理を規定する第三條には特にこのような規定がない、こう言いまして、
米国が行う戰略的管理を條件として、これら諸島と本土との交通、
住民の国籍上の
地位その他について
住民の実際的
措置が
希望される余地あること、こう解されまして、あたかもこれらの
領土に対しまして
日本の
主権がまだ残
つているかのごとき印象をわれわれに與えたのであります。ところが、本日北村君の
質問に対しましては、すでに
領土権はなくな
つているのだ。それで、昨日われわれに與えた暗示というものは、今この席上においてそれが否定されている結果にな
つていると思うのでありまして、私は非常に遺憾と考えるのであります。そこで、
政府が将来に一つの光明があると確信をいたしますならば、
政府独自の考え方か、
関係方面と話合いの上の解釈であるか、この際承
つておきたいと思うのであります。(
拍手)
領土に関する
国民の感情は、特別深刻なるものがございます。今週の処置によ
つて日本から離れまする人口は、約百十万を数えておるのであります。この百十万の
同胞が、かりに一時的にしろ、
日本の行政と
日本の国籍から離れて参るのであります。現に現地にある者、またこれら諸島の出身者にと
つては、まさに深刻な大問題にな
つておるのであります。
奄美大島は、十四歳以上の者が
住民投票を行いまして、九九・八%が
日本に帰属を念願しておるのであります。私は先日
奄美大島の老政治家にお目にかかりましたが、その政治家は、
自分の代において、あらゆる
努力を拂
つて日本帰属のために
努力をする、さらに
自分ができなければ息子に、息子ができなければ
子孫に、そうや
つて、あくまでも
日本とともにや
つて参りたいと
言つておりましたが、まさに深刻なものがあろうと思うのであります。小笠原、硫黄島の諸君は、いまだに島に帰
つておらないのであります。
領土権の問題は、その取扱いいかんによりますならば、
講和をいたしました国と国との間に大きなくさびを入れることになるのでありまして、愼重なる
態度をも
つて扱わなければむらぬと思うのであります。その関連について、吉田さんのお考えを承
つておきたいと存ずる次第であります。
第二には
安全保障に関する点でありまするが、われらは
独立後、
日本の安全保証については、第一には、国連の強化により、
世界平和と各個の安全が保障されることを望んでおるのであります。第二には、
日本の国連加入が
関係諸国の
努力によ
つて急速に実現を期せられ、
日本の
安全保障は、国連の平和的規模による集団的保障を
要望しておるものであります。第三には、当面の
安全保障は、
国際連合総会の決議による具体的処置を
要望して参
つておるのでありまするが、
政府は、
日本独立後、占領軍撤退に伴う
日本防衛、治安維持のために、
アメリカとの間に
日米安全保障條約を結び、それにゆだねるよう昨日報告されたのであります。総理は、
平和條約
調印直後
日米間に
締結する
安全保障條約については、本年二月の
ダレス特使との
会談で、双方との間にその
構想に関して
意見の一致を見出すことができた次第はしばしば
説明した
通りである、こう
言つて、さらに繰返して、
日本は
軍備がないから、自衛権はあ
つても、自衛権を行使する有効な手段がない。
世界には今日なお無責任な軍国主義の跡を絶えない。こういうような情勢の中で、
平和條約が成立しても占領軍が撤退した後、
日本に
真空状態ができると危險である。かかる危險に備えるため、
日本は外部からの攻撃に対する防衛手段として、
日本に合衆国
軍隊の
駐屯することを
希望する。この
日本の
希望にこたえて、合衆国は平和と安全のために、
日本と
日本の近辺に
軍隊を置こう、という
構想であります、こういうぐあいに報告されて、しかも先ほど北村さんからも言われたのでありまするが、しばしば報告されたとい
つておるのであります。寡聞にして、われらは聞いておらないのであります。
また
安全保障條約は、
日本からの
希望で
アメリカ軍隊が
駐屯することになるようでありますが、今日に至るまで吉田総理はこれを
希望し来つたと報告しております。吉田
個人が
希望することは別でありまするけれ
ども、一体
日本国民及び
日本国家が、いかなる機関において
希望したかということを、私は伺いたいと思うのであります。(
拍手)われわれは、これがために
国民投票を行つたということを聞きません。また
国会の審議に付せられまして、そうして
国会において審議されたということを聞かないのであります。まさに
独善、独断
外交といわざるを得ません。昨日の
演説で批准
條項がついておるということはわかりましたが、その
駐屯の
期限、費用、
駐屯の場所等について伺
つておらないのであります。
駐屯は
期限がないと言われております。もし、かかることになり、
日本の防衛がある
特定国によ
つてなされるようになりますならば、
国家の
性格を変更する結果にな
つて、重大なる問題であろうと思うのであります。(
拍手)私は詳細なる
説明を求あなければなりません。
さらに、
日本の再
軍備を伝え、
憲法改正を伝えておるのであります。
国民は、吉田さんの発言のその衣の下には、何らか
憲法改正、再
軍備の、いわばよろいがあるのではなかろうかという心配をしておるのであります。この点を明確に願いたいと存ずる次第であります。
日本の個別的、集団的自衛権に
制限が設けちれなかつたことは幸いであると私は思うのでありますが、自衛の方法や手段は、
日本が完全なる
独立後において、
日本人の
自由意思によ
つて決定さるべきものであろうと思うのであります。
さらに第三は
賠償の点でありますが、
賠償には具体的な限度や分量が規定されておりません。従いまして、條約
締結後、
日本みずから当該国との間に交渉をして規定いたすということにな
つておるのであります。七月十三日発表の
草案よりも、昨日発表されました
草案の方が強化されておるのであります。この強化されておりまする案をわれられが写本の
国民生活、
日本の産業について考えてみまするならば、実に重大なる結果を招来すると思うのでありまして、これには
日本国民としては愼重なる
態度をも
つて対処して行かなければならぬと思うのであります。戰争中に
日本が近隣諸国に加えた損害、苦痛に対する責任は重大であります。この責任が追究されることはやむを得ないと私は信ずるのであります。しかし、
講和條約成立後は一体どうなるかと考えてみまするならば、幕末よりも狭い
領土になるのであります。しかも三倍、八千四百万の人口をかかえてわれわれは生活をして行かなければならぬのであります。またわれわれは、資源が欠乏しておる。またわれわれの生産能力も、そう十分とは言えないのであります。かような点を体してこの
賠償問題に対処しなければならぬと思うのでありますが、これに対する
政府の
態度をお聞きしたいと思うのであります。
第四点は捕虜問題に関する
事項でありますが、これはわれわれの要求並びに留守家族の方々の要求がいれられまして、そうして
講和條約
條項の中に入るように
なつたのであります。まことに喜びにたえません。しかし、先ほど北村さんからも
質問がありました
通りに、
在外資産の問題が残
つておるのでありますから、この点について
政府は最大なる考慮を拂
つていただきたいと思うのであります。
第五は
経済自立に関する問題でありますが、
草案第十二條には、相互主義の原則が確立されておるのであります。しかしながら、今日の
日本の政治的
経済的実力からいえば、相互主義の原則が、ともすればゆがめられる結果となるのであります。現に英国は、
日本の海外
市場進出について微妙な利害
関係を持
つて、
日本に最悪国待遇を與えることを留保しておるようであります。また
わが国の戰後疲弊した資本力及び生産施設を考慮すれば、巨大な資本力と優秀なる技術を有する諸外国との平等なる
立場における競争はきわめて困難であります。万一、他国が
わが国に対して関税上の差別待遇をとつた場合には、
わが国の
民族資本は非常な苦しい
立場に立つのでありまして、われわれは
民族資本擁護の
立場から、これらに対する一つの手段を考えておかなければならぬと思うのであります。こういう
希望をわれわれは持
つております。
従つてわれわれは、
講和條約
締結に際しては、この貧弱なる
民族資本の擁護と、
日本の
経済の
自立ということについて具体的な考慮が必要であ
つてこれなくしては
国民生活の安定はないと思うのであります。これらの点について総理大臣の考えを伺
つておきたいと思うのであります。(
拍手)
さらに、現在
わが国と中国との貿易は杜絶状態にあるのであります。
わが国と中国とは、文化を交流し、
経済的にも有無相通じて来たのであります。
わが国は中国から製鉄用の石炭、鉄鉱石、油肥原料、塩等の輸入をはかり、
日本からは綿製品、機械器具、化学製品あるいは雑貨等を輸出いたしまして、
日本の
経済発展に資するところ大なるものがありました。この中国との通商杜絶によ
つて、一部の原料及び製品を
アメリカ及び東南アジアから仰いでおるのであります。これは私はやむを得ないとは存ずるのでありまするが、
経済の原則に反するものであるといわなければならぬと思うのであります。たとえば、以前はトン当り十一ドル三十セントでありました開らん炭を輸入して参つたのでありますが、これを米炭に切りかえるとすればトン当り二十九ドルでありまして、しかもそのうち十八ドルを船賃に支拂わなければならぬ。さらに船賃は、朝鮮動乱以来三、四倍はね上
つておるのであります。昭和九ー十一年における輸出金額の百分率をとらえてみると、
わが国のアジア近隣諸国に対するそれは四四でありましたのが、昭和二十五年においては一六、昭和二十六年においては一四とな
つておるのであり幸して、急落しておるのであります。こういう
見地よりいたしまして、私は中国との貿易を考慮しなければならぬと思うのでありますが、これに対して
政府はいかなる
態度をとるのか、この点をお聞きしておきたいと思うのであります。(
拍手)
さらに第六点は、
講和全権選任にあた
つて政府のとりました
態度であります。従来
吉田内閣は、
講和会議はわが自由党
内閣の手で、ということをスローガンとして対処して参つたのであります。それは昨年、参議院議員の選挙当時、苫米地民主党最高委員長が東北地方遊説中、
超党派外交を提唱したところが、吉田総理は、苫米地氏に何がわかるか、勉強して来いと放言をされたのであります。また幣原衆議院
議長が
超党派外交を提唱されたときも、自由党は
至つて冷淡であつたのであります。吉田総理も非常に消極的であつたのであります。ところが、今回
講和條約
草案が発表されるや、突如としてわが党並びに民主党に働きかけ、
全権委員の選出まで依頼して参つたのであります。わが党は、
内閣の
態度の急変を
納得しかね、かつ
調印は行
政府たる
政府の責任において行うことが当然なりと信じて、お断りをしたのでありますが、民主党との間には、まだ交渉が続けられておるようであります。
アメリカの
超党派外交の提唱者である
ダレス氏は、その著「戰争と平和」の中において、
超党派外交を唱えるならば、飛行機が陸を離れるときに乗らないで、おりるときに一緒というのは無理であると
言つておるのでありますが、
政府の
超党派外交に対する
態度はまさにこの
通りであると私は言わざるを得ないと思うのであります。従いまして、いかなる環境よりかような変化に
なつたか、お伺いをしたいと思うのであります。
第七点は、臨時
国会の召集の時期と、
国会解散についてであります。私
どもは、去る七月の中旬、
共産党を除く野党連合の名において、第一には
講和会議を前にして
外交折衝について報告を求めること、第二には内外の諸情勢に対応する補正予算の提出と、二つの目的をも
つて、八月十日までに臨時
国会を開いてもらいたいと、憲法の規定に基きまして衆参両院とも定員の四分の一の署名を得て、臨時
国会の要求をなしておるのであります。
政府はこの要求に答えず、国
会議員中より選ぶ
全権委員の承認を求めるために便宜的
国会を開いたのであります。内外の
経済情勢に対応するため、米の消費価格引上げに伴う給與ベースの引上げ、
地域給の改正等々を含む補正予算提出のためには、いつ臨時
国会を開くか、お伺いをしたいと思うのであります。特に補正予算編成の中心にある大蔵大臣が
全権の一員として渡米せらるるようでありますが、これがために補正予算編成にさしつかえないか、また政務の参上にさしつかえはないか、私はこの点を伺
つておきたいと思うのであります。
またわが党は、さきに、
講和会議は
民族百年の大計を決する重大なる
会議であるから、
講和会議前に
国会を解散して
国民の輿論に問い、総選挙の結果新たに成立せる
内閣がこれを担当すべきであるとい
つて主張して参つたのであります。しかしながら、これは
政府のいれるところとならず、不自然にも二年七箇月も前に成立せる
吉田内閣が担当することに
なつたのであります。これはやむを得ないと存ずるのであります。
調印は
政府の責任において行うのであるが、批准前に
国会を解散して
国民の輿論に問うことが当然だと思うのであります。
政府に、はたして批准前に
国会解散の
意思があるか、この際問うておきたいと存ずるのであります。
最後に、
講和会議に首席
全権として出席せらるる吉田総理に、私は一言申し上げたいと存ずるのであります。わが
日本は、軍国的指導者のために誤れる戰争をしてこれに敗れ、無條件降伏をいたして今日に参りました。これは、だれか立
つて、やはり戰争の跡始末をしなければならないのであります。今は、吉田総理が総理大臣の
地位にある
関係よりいたしまして首席
全権として
アメリカに参るということは当然であると思うのであります。
従つて、私
ども心から御苦労様と申し上げたいのであります。しかし、総理大臣を筆頭とする
全権団は、何も
調印のためにのみ私は行くのではなかろうと思うのであります。聞くところによりまするならば、
講和会議の席上において、吉田総理は三十分間の発言の
機会が與えられておるということを承
つております。このときは、
外交的儀礼にとどまらず、
日本国民の
要望を率直に披瀝をいたしまして
世界平和を祈念する公平なる
世界の判断に訴うべきであると存ずるのであります。発言を通じて、
日本の
立場を
世界に訴うべきであると思うのであります。
以上申し上げまして私の
質問を終わたいと思うのでありまするが、
答弁によりましては再
質問の
権利を留保しておくものであります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕