○牧野
委員 私は
裁判所、検察庁の庁舎並びに敷地問題について少しくお尋ねいたしたいと存じます。
まず順序といたしまして
裁判所側からお尋ねいたします。
裁判所の庁舎の問題につきましては、最近とかく世論は批判的でありまして、私は
裁判所の権威のためにも黙過することができ得ない実情にありますので、あえてお尋ねする次第であります。先ほど大阪留置所の建築の問題について押谷
委員からも言われましたことくに戦災にあ
つた国民の住宅というものも復旧いたしておらぬ。
日本の経済状態というものも敗戦の結果ま
つたく破壊されまして、その混乱の中に国民は今日まで歩んで来たのであります。そして重税に苦しんで来ました。そのときにおいて各地方に、所々ではありましようが、
裁判所の建築が、まことにりつぱな、宏壯な建築がせられておるというようなことに対しましては、重税とそれから住居に悩むこれらの国民に対しまして、はなはだ強く刺激をしておるというような観があるのであります。なお今日におきましては、終戦後教育の刷新と文化の向上のために国民教育に六・三制をと
つたことは御承知の
通りであります。この六・三制の
実施につきましては、校舎をつくるについては全国の町村が非常な苦しみをしております。そして
国家もまた窮乏した財政のためにこれらに補助を満足に与えることもできない
立場にありまして、いまだにこれらの児童を収容する校舎がほとんど半ばにも達していないような実情にあるときに、
裁判所のみがひとりりつぱに方々にできるというようなことは、これは当然
一般国民をして
裁判所に対して不快の念を持つような結果になることは、いなみがたいことであろうと思うのであります。私は理想といたしましては、
裁判所に対しましては、やはりその威信と尊厳を保
つために、りつばな建築をせられることは望んでおるものであります。しかしながらこれらの建築をするにあたりましても、
日本の現在の
国家財政の上からよく
考えまして、その均衡を得てやらなければならぬ、また
一般国民の感情を刺激するようなことなくして、国民が心から納得する建築でなければならぬと思うのであります。外郭がいかにりつぱに建ちましても、国民が納得せずして、むしろ反感を持つようなことでありましたならば、
裁判所の威信と尊厳というものは保たれるものではないと私は思うのであります。ことに聞くところによりますと、がまんすればまだ使用できるような木造庁舎をとりこわして、新たに鉄筋コンクリートの本建築をしたというようなことさえあると聞いておるのでありますが、まことに今日の
国家財政の上から見ましても、国民感情から見ましても遺憾の点が多いと私は思うのであります。私たち
法務委員は
裁判所の威信と尊厳を保持するためには、でき得るだけの協力を今日までいたして来ております。裁判官の待遇の改善の問題においてしかり、また訴訟促進の問題、あるいは
裁判所侮辱制裁法等の問題につきましても、最大の協力をいたしたものでありますが、この観点から行きまして、
裁判所の庁舎のりつぱにでき上ることにつきまして、われわれは積極的な協力を惜しむものでは決してないのであります。ただ先ほど来申し上げました
通りに、やはり今日の国情、
国家財政というものを
考えて適当なる
処置をしていただかなければ、それが
裁判所のためにもならないことではないかと思うので今回質問いたす結果にな
つたのであります。もし私初めこうした国民の感情が誤解であると言いますならば、なおこの誤解を解くためにも左の諸点について明確なる御
答弁を願いたいと思います。
その第一点は
裁判所の営繕、つまり庁舎に関する来年度の予算並びに
構想、
方針等をお聞きいたしたいのであります。たとえば金額であるとか予定地であるとか、規模であるとか、基準がどうな
つておるかというような問題であります。それから第二点といたしましては、終戦後本年度までの営繕の実情がどうな
つておるか、土地あるいは建物、また金額、その規模等につきましてお尋ねいたします。第三番目といたしましては、将来の
構想がどうな
つておるか、この点をお聞きいたしたいと存じます。第四点といたしましては、戦争前の数年間の
事件件数と、裁判官その他職員の数と、終戦後における
事件件数と、裁判官その他職員の数がどういうふうにな
つておるかをお尋ねいたしたいと存じます。それから第五点といたしましては、新
憲法実施によりましては
裁判所と検察庁とが分離いたしましたが、その分離について、庁舎、敷地等についていかに取扱われておるかをお尋ねいたしたいのであります。
なお以上第一点から第五点につきましては、やはり検察庁に関しても同じでありまして、この点につきましては
法務府にお尋ねいたしたいのであります。以上御
答弁を得ましてから、さらにあらためてお尋ねいたしたいと思います。