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1951-08-18 第11回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年八月十七日  若林義孝君が委員長に、池見茂隆君、小西英雄  君、庄司一郎君、玉置信一君、坂口主税君、受  田新吉君及び林百郎君が理事に当選した。     ————————————— 昭和二十六年八月十八日(土曜日)     午前十一時十分開議  出席委員    委員長 若林 義孝君    理事 池見 茂隆君 理事 小西 英雄君    理事 庄司 一郎君 理事 玉置 信一君    理事 受田 新吉君 理事 林  百郎君       青柳 一郎君    足立 篤郎君       菊池 義郎君    北川 定務君       佐々木秀世君    高橋 權六君       中山 マサ君    小林 信一君       岡  良一君    堤 ツルヨ君       今野 武雄君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君         大蔵政務次官  西川甚五郎君  委員外出席者         外務事務官         (管理局在外邦         人課長)    上田 常光君         外務事務官         (管理局引揚課         長)      吉岡 俊夫君         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      上田 克郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  在外公館借入金に関する件  在外資産に関する件  海外同胞引揚問題に関する件     —————————————
  2. 若林義孝

    若林委員長 これより会議を開きます。  本日は海外同胞引揚問題に関する件並びに在外資産に関する件について議事を進めることといたしたいと思うのでありますが、この前に前国会において皆様方の御審議を願いました在外公館借入金の処理に関する件について、政府側より発言を求められておりますので、その説明を承りたいと思います。西川大蔵政務次官
  3. 西川甚五郎

    西川政府委員 先国会におきまして在外公館借入金の返済に関する準備の法案をつくつていただきまして、一番最近の臨時国会においてその支払い方法すべてを法律化いたして提出するようになつてつたのでございます。先国会を終りまして、早速レート審議会をつくりまして、政府側より四人、引揚者より六人の審議会委員をお願いいたしまして、二十数回にわたりましてレートの問題について審議いたしました。先週におきましてその結論が出ました。全員満場一致をもちましてその換算の率を決定いたしました。ちよつと速記を止めて……。
  4. 若林義孝

    若林委員長 速記を止めてください。     〔速記中止
  5. 若林義孝

    若林委員長 速記を始めて。
  6. 足立篤郎

    足立(篤)委員 ただいまの御説明について質問したいと思います。委員会ですでに方針がきまつたということでありますので、この委員会意見がましいことを申し上げるのはどうかと思いますけれども、ただいまの説明を聞いてみますと、南方では米が生産をされるので、米が比較的安いから日本とは比較にならないというようなお考えから、米を基準にとらないという御説明でありますが、一方北方の場合を考えますと、私も終戦後一年間満洲におりましたけれども、満洲では米は生産されておりません。しかも日本人はたくさんおる、需要は非常に高いということから、米だけが不当につり上つたという現状をどうお考えになつているか。一方私どもはたけのこ生活をしたわけでありますが、われわれが売ります衣類その他家具類はきわめて安い価格で引取られておる。場合によれば洋服と米一升を交換するというような時代さえもあつたのであります。また米以外のものにつきましては、日本人だけが特に必要とするものは、足元を見られて非常に高く売りつけられましたけれども、一般満洲国の満洲人が使いますものはそう高くなかつたというような記憶もございます。また法幣が入つて参りましたときの状況考えますと、満洲国中央銀行券は厳然たる重みを持つてつた日本が。パーパーという保証をしておりました従来の関係からして、非常な重みを持つていた。国民党軍が来まして、法幣パーで交換をするように強制されましたけれども、依然としてたしか十三対一くらいの割合でしか実際に中国人が引取らなかつたというような状況も記憶いたしております。そういつた満洲における特殊な状況をどのようにお考えなつたか、さらに御説明いただきたいと思います。それと、委員会においても特に意見かあつたという御説明が今ございましたけれども、そこまで厳格に支払いを制限するような換算方法をとりました場合に、当時の日本の円の価格と現在の円の価格とどうお考えになるか、この問題をある程度解決しなければ、外地におきまして非常に辛酸をなめ、しかも引揚げて参りまして、なおかつ今日苦しんでおります引揚者の身にとりましては釈然としないものが残ると思います。せつかくここまで好意ある対策を講ぜられて来たのでありますかり、ここでいま一歩御考慮をいただきたいと思うのであります。このような点についてどうお考えになりますか。以上の二点について御質問申し上げます。
  7. 若林義孝

    若林委員長 速記をやめて……。     〔速記中止
  8. 若林義孝

    若林委員長 速記を始めて……。
  9. 足立篤郎

    足立(篤)委員 今の御説明ではどうも釈然としませんけれども、私意見として申し上げておきます。今の御説明だと、昭和二十一年の六月が満洲におけるピークだという御説明、これはなるほど計数的にお調べになればそうかもしれません。しかし昭和二十一年六月は満州の引揚げが始まつておる。私は錦県におりました関係上、もう五月のうちに引揚げてしまいました。南方—南方というとおかしいのですが、満洲の南部地区には、相当日本人終戦前後集結して参りましたし、私ども熱河方面からの難民、あるいは盤山付近難民等が錦県あたりへは相当集結いたしまして、この難民対策のために公館借入れ行つたのであります。ですから南部地区における借入れは大体昭和二十年の秋に行われておるわけでありますが、その当時の状況を思い起しますと、満洲中央銀行券価値が非常に高かつた。ほとんど日本の円とかわりないと私は記憶します。この時代に、自分の生活を切り詰めても同胞のために、公館に金を供出してくれた人たちの好意を考えますと、今の計算の方式ではどうも納得できないのであります。私の考えを申し上げれば、これは朝鮮及び満洲、日本貨幣価値をリンクしておりました地区については、少くともその後の円の価格の現在に至るまでの変動を考えますれば、こういつた点を考慮に入れますと、当然パー計算でなさるべきじやないか。それを手の込んだ方法で、しかも不確定な要素、相当な無理のある要素で、何を好んで引揚者の利益を害するような算定をわざわざしなければならぬかということについては、私は釈然とし得ないのであります。これをパー計算をして、そうして最高五万円なり十万円なり、今の財政とにらみ合せて切るということならば、まだ話はわかりますが、この点はとくとひとつお考え願つて、今後の善処をお願いしたいと思います。意見として申し上げます。
  10. 若林義孝

    若林委員長 午後一時から再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午前十一時五十三分休憩      ————◇—————    午後一時二十六分会議
  11. 若林義孝

    若林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  上田外債課一長に質問のある方はございませんか。
  12. 庄司一郎

    庄司委員 きわめて簡単な一点だけお尋ねしておきたいと思います。それは在外公館借入れの問題に関しまして、政府は一口五万円までは支払いを声明されておるようでありまして、従いまして五万円以上のものは打切るというようなことに了承しておるのでありますが、たとえば百人あるいは二百人の人から団体的に借上げをされたというような性格のものはどういうお取扱いになるのでありますか。単位が二人の場合ははなはだ明瞭に了承しておりますが、団体的のものもあるやに伺つております。そういうものはどういうお取扱いになるのであるか、簡明にお答え願つておきたいと思います。
  13. 上田克郎

    上田(克)説明員 ちよつと速記をとめていただきたいと存じます。
  14. 若林義孝

    若林委員長 ちよつと速記を中止して……。     〔速記中止
  15. 玉置信一

    玉置(信)委員 私の御質問申し上げることは、大蔵大臣及び外務大臣に御質問申し上げるのが本旨でありますが、本日は国会のいろいろな事情で御出席も無理と思いますので、ただいま御出席になつております政府委員説明員からひとつお答え願いたいと思います。  それは八月十五日の第九回引揚者全国大会におきまして決議されておりまする、私有財産尊重の問題につきまして当局にお伺いいたします。引揚者立場からいたしまして、私有財産尊重してもらいたいということは当然の要求であろうと思います。またこれの補償によつてのみ生きることができる立場に置かれている関係上、この叫びはまつたく非痛なものがあるのでございます。そこでいろいろ決議はされておりますが、前段申し上げました私有財産尊重ということについて決議されておりまする件を読み上げてみますと、草案第十四条、第十六条の規定は、明らかに私有財産没収であり、連合国陸上における私有財産没収国際法上の原則を否定したものと解せざるを得ない。かくのごとき非行は、国際取引の安全をまつたく破壊するものであり、国際法違反である。従つて連合国私有財産尊重原則に立脚し、関係条項日本国政府による補償義務規定すべきである。かように決議をいたして、この私有財産尊重に対し強い要望をなしておるのであります。ところが八月十三日に、これは各紙に出ておつたように思いますが、手元にあります新聞朝日新聞でありますが、この新聞報道によりますと、大蔵省では来る二十一日か二十四日ごろの閣議に諮つて決定する予定である云々ということで、そのうちに日本人在外財産補償の項におきまして、大戦によつて失われた厖大な日本人在外財産補償することは財政的にとうてい無理なので補償しない方針である。かように報道されておるのであります。この報道を見た引揚者の各位は、非常に失望しておるとともに、この問題についてはまた相当な運動が展開されて来ると思うのであります。もつともこの新聞報道の内容によりますと、大蔵大臣調印式に臨まれて帰国されてからはつきりするようにも書いて、多少余韻が残されておるようではありますが、しかし先ほど申し上げましたように、補償しない方針であるということをここに明らかに報道されております点において、私どもこれを見のがすことができませんので、この点についてはたして大蔵当局はいかように考えておられるか、まず第一にこの点をお伺いしたいと思います。
  16. 若林義孝

    若林委員長 ちよつと速記を止めて、     〔速記中止
  17. 若林義孝

    若林委員長 速記を始めて……。玉置君、政務次官が見えましたから、もう一度お尋ねになつていただきたいと思います。
  18. 玉置信一

    玉置(信)委員 それでは外務政務次官が見えましたので—実は先刻来私有財産尊重の件に関してお伺いしておるのでありますが、それでは繰返して申し上げます。  実は八月十五日の第九回引揚者全国大会におきましていろいろ決議をされたうちに、私有財産尊重すべしということについて次のような決議がされておるわけであります。重複しますが一応申し上げますと、草案の第十四条、第十六条の規定は、明らかに私有財産没収であり、連合国陸上における私有財産没収国際法上の原則を否定したものと解せざるを得ない。かくのごとき非行は、国際取引の安全をまつたく破壊するものであり、国際法違反である。従つて連合国私有財産尊重原則に立脚し、関係条項日本政府による補償義務規定すべきである、かような私有財産補償要求すべく決議が行われておるのであります。先ほども申し上げたのでありますが、草葉政務次官におきましては、過去毎回の国会におきまして当委員会において、他の委員諸君はもちろん、私も数次にわたりましてこの財産尊重その他財産問題について、引揚者輿論を基調としたところによつて、私見もまじえて当局に要望したことは御承知の通りであります。そこでこの補償問題につきまして、これまた先ほど実は申し上げたのでありますが、私の手元にあります朝日新聞の八月十三日付報道によりますと、大蔵省におきましてはこの在外財産補償は現下の財政上から見てとうてい無理であるから、この補償はしない方針であるということを発表したかどうか、新聞社側のあるいは六感で書かれたかどうか、とにかく報道されておるわけであります。かようなことが引揚者の間に相当大きな反響を呼びまして、今日あくまでもこの私有財産に対しては補償してもらわなければならぬという輿論がほうはいとして一層高まつておるわけであります。私ども立場から考えてみましても、この問題はかかつて引揚者生活の基盤になるものでありまして、これが補償されるかされないかによつて、非常に引揚者の将来に暗くなる面と明るくなる面が出て参ることは申すまでもないのでありまして、従つてこれは要求全般を満たすということはとうてい今日の日本国財政からいつて不可能であることは、私もよく了解しておりますが、政府はこの際これに対しては補償しないというようなことでなくて、補償する方法最善努力をなし、大蔵大臣講和会議に出られて引揚げて来られた後において方針をきめるということであるようでありますから、その際にひとつこの希望を達成するように、外務省当局としても大いに力をいたしていただきたいと思うのでありますが、草葉政務次官はこれに対していかなる御見解を持ち、将来どういう考えで対処せられるか、この点について御所見をお伺いしたいのであります。
  19. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの在外資産取扱いにつきまする日本国講和条約によりますると、ただいまお話のありましたように、多くは没収する形に相なつております。ただ取扱い方は割譲地域日本軍が侵入しました地域、その他の連合軍地域、あるいは中立国、これらによりまする処分の方法はおのおの違つておりまするが、しかし大体といたしましては、割譲地域の中で、朝鮮を除きましたところは、効力を発生いたしましたときに当局日本とが相談することと相なつておりますこと以外は、お話のように没収という形に相なつておるのであります。そこでイタリア平和条約につきましては、イタリアがこれをある程度補償するという条項が入つてつたのでありまするが、今回の日本平和条項には、そのような条項はないのでございます。しかしこれは考え方によりましては、むしろ一歩進んだ考え方であるとも考えられるのであります。むしろ今回の条約そのものが、いわゆる信頼の講和であり、和解の講和であるという意味において、日本はある権力の制限という形でない形において結ばれると考えます場合に、在外資産の問題につきましても、イタリアの場合は、連合国がこれこれを補償しろというので取上げたという形を、今度の日本条約には、それは全然触れておりませんので、これらの問題につきましては、将来国内問題としてなし得る余地が残されておるのである。従いましてこの問題につきましては、十分将来日本政府は、経済的なあるいは実際的なすべての観点から考えてどうするかということで問題を解決し得る立場に相なつておると存じます。お話の根本的な私有財産に対しまする肯定という点は、従来とも国際法的にも、国内法的にも、十分尊重して参らねばならない点であります。今後政府におきましては、大きな問題としてこの取扱いについては十分国会等意見を対照しながら慎重に進むべきものだと考えております。
  20. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいまの草葉政務次官の御答弁を拝聴いたしまして、はなはだ意を強うした次第であります。私どもの狭い知識においての見解も、大体イタリア状況等から見まして、飛躍したもののように考えておりましたので、政務次官お話のように、国内的な問題として処理できるであろうということを想像しておつたわけであります。ただいまの政務次官の御答弁のごとくに、今後大蔵当局とも横の緊密な連絡をとりまして、ただいまの御意思のようにひとつ最善の御努力を払われるよう特に要望いたしまして、私の質問を打切りたいと思います。
  21. 若林義孝

    若林委員長 暫時休憩いたします。     午後一時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十六分開議
  22. 若林義孝

    若林委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  ただいま外務政務次官がお見えになりましたので、引続いて質疑を許します。岡良一君。
  23. 岡良一

    ○岡(良)委員 外務政務次官お尋ねを申し上げたいのでありますが、それは先般来留守家族の代表の非常に切実な運動、また政府当局のいろいろな御配慮が効を奏しまして、やつとどうやら第六条のb項において、日本国軍隊の郷里への復帰が明文としてうたわれておるのであります。ポツダム宣言の第九条においても、日本軍人は武装解除され云々ということで、家庭への復帰が一応約束されておりますが、実は私どもこの引揚げの問題については、単に未復員者だけではなく、未帰還者を含めて在外同胞一般についての引揚げ留守家族といたしましても、われわれといたしましても、要求しておりますが、この条文によりますると、日本国軍隊、いわゆる未復員者の範疇に属する人だけがうたわれておるということで、多少老婆心かもしれませんが、これはやはり在外同胞一般についての—日本引揚げについての今後の努力運動、あるいは対策等については、在外同胞一般にこれは適用されるものと外務省としては解釈されておられるかどうか、この点を一応伺いたいと思います。
  24. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいまの御質問の点につきまして、いわゆる捕虜戦闘要員だけであることは国際法規上当然でありますが、しかし現実におきましては、いわゆる軍隊以外の一般邦人が抑留されておる事実があるのであります。また従来ともこれに準ずる軍属その他一般人軍隊に準じて、あるいは捕虜あるいは抑留というような場合を予想して、陸戦法規その他国際捕虜条約、一九四九年等の条約のずつと後段において、一般人も含めてこれに準ずる取扱いをいたしておるのでありますから、この第六条のb項に、今回新しく入りました軍隊帰還という中にも、従来の国際法的な観念を含んで一般邦人を含めておると私どもは了解いたしておる次第であります。
  25. 岡良一

    ○岡(良)委員 さらにこれは将来の問題ではありますが、せつかくこの条項が新しく加えられましたので、この権利にのつとつて、あるいは権利の上に立つて、具体的に今度はいよいよ引揚げ促進について政府としても手を打つことに相なつておるのでありますが、どういう手を打つべきか、またどういう構想草葉政務次官としてはお持ちであるか。こういう点についても、留守家族あるいはわれわれも非常な関心を持つておるのでありまするが、この機会に構想をお漏らし願えればたいへんけつこうだと思います。
  26. 草葉隆圓

    草葉政府委員 引揚げ問題が幸いに皆さんたちのたいへんな御熱望と、国民並びに留守家族の方々の熱望が反映いたしまして、今回最終案に一項を挿入されましたことは、まことに御同慶しごくに存ずる次第でございます。つきましては、今後具体的の引揚げ促進の問題につきましていかようなる方法をとり、また現実にいかようにこれを取扱われるかという問題につきましては、まことに切実な問題でありまして、私ども政府といたしましても、また留守家族国民皆さんとともに一日も早く悲願が満足されることを熱望いたしておる次第でございますが、具体的の問題といたしましては、いろいろな角度からこれを取扱つて来なければならないと存ずるのであります。幸いに一方におきましては、国際連合総会におきましてこれを取上げて参つておりまするし、いわゆる三人委員会におきましても過般来これが審議を続けられて参つて来たのでありますが、しかし関係各国捕虜の送還についての協力を要請することについて、その回答を待つために現在しばらく休会をいたしたと伝えられております。従つてしばらくの間は三人委員会休会のまま続けるのではないかと存じまするが、これに対しましても、日本政府国民とともに、三人委員会が一度日本国に来られまして実情をつぶさに調査をされることを、実は熱望いたしておる次第で、そして国際連合のこの方面におきまして、一歩具体的に着々と進められますることを要請いたしますると同時に、また一方幸い今回の日本に対しまする平和条約におきまして、一項がはつきりと挿入いたされました関係で、関係署名各国日本実情に対しまする十分な理解と支援とを得まして、なお帰らない状態にありまする国国日本国民熱望を入れて、すみやかに帰すように関係各国に強く要請をいたすことも当然今後政府努力いたすべき点だと存じております。また講和条約効力を発生するまでもなく、従来とも続けておりました方法によりまして、それぞれの関係方面を通じて、関係国にできるだけ引揚げのできまするような、従来努めておりました方法を一層強力に進める。かれこれ勘案いたしまして、なし得べきあらゆる方法を総合的にとりながら進めて行くことが必要であると考えております。またその他につきましても、いろいろ具体的に御検討、お考え等をお持ちの場合は、今後とも十分御連絡をいただきまして、私どももその御意見尊重して進めて参りたいと存じます。
  27. 岡良一

    ○岡(良)委員 大分前のことですが、やはりソ同盟の国内において強制労働の事実があるということが国連でたしか問題になつて、その事実の有無について、やはり調査団のようなものが組織されて、ソビエトの国に行つて、実態を調査しようというところまで進んだところが、結局ソビエトの方ではヴイザをくれないということで、この委員会は何の仕事もなくたな上げになつたということを私記憶しておるのですが、これは今度の国連委員会においても同様なことになるのではないか。おる、おらないというのは水掛論で、実際の確証をつかむということになれば、たとえばレナ河の流域のようなところにはほとんどキャンプがないということで非常に議論されておるのであるが、実際そういうところまで出かけて行つているかいないかということをたどつて行くという努力が必要であります。まずわれわれとして一番先にその可能性が気にかかるが、そういう点についてはどうでしよう、草葉さんあたり何か確信がある見通しがありましようか。
  28. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御質問のように実はこれはたいへん困難な問題であり、同時に重大な問題であろうと存じます。一方は数字によつて三回発表いたしましたように、これこれの人以外にはいないという状態であります。私ども日本といたしましては、十分現地におきましてはいるということを主張し、また同時にいる留守家族がおられるわけでありますから、従いましてこれは先般国連三人委員会が発表されましたように、まつたく人道的な問題として—決して政治的なほかの問題ではなく、まつたく人道的な問題として、そしてまた同時にたいへん困難な問題ではあるが、解決し、進められて来なければならない問題でございますから、まことに私どもも困難な問題とは存じますが、現にわれわれの同胞の中に、帰る日を待つておる幾万の留守家族があるという状態でございますので、この実情を訴えながら、人道的にも強く叫びをいたして進めて行くことが何よりも必要ではないかと考えるのであります。
  29. 岡良一

    ○岡(良)委員 とにかく一応人道を守る、あるいは人権を尊重するという建前から、国民留守家族の切実なる要求によつていよいよ講和条約においては一項が挿入されて、権利としてこれを主張する。これを権利として主張するという場合には、やはり事実の裏づけというものがなくては、これは権利として正当な主張たり得ないということで、その事実の確認ないし確証ということについては、今外務次官も申されたように、きわめてわれわれとしても現在のところ心もとない状態にあるということは非常に残念だと思いますが、私どもも名案がないので、この点はよほど政府としても強力に、勇断を持つて善処される必要が今後あると思う。それからこれはソビエト同盟ではなく、中共地区にも—先般総合雑誌の中央公論でしたか、存外同胞のルポルタージユという一文で見ますと、十一万六千ばかりの邦人が中共地区にまだ残つておる、その中には軍隊に徴用されておる者がどれだけで、あるいは技術者として留用されておる者はどれだけで、あるいは浮浪児なりあるいは妻となつておるというような者がどれだけと、かなり数字をあげた説明がありまして、もちろんこれの信憑性についてはわれわれもはつきりそうであるとは申し切れませんが、こういうような方々の引揚げについては、特にその大きな部分、留用されておる二万数千の人たちは、配船の問題等について日本政府としても何ら成案がないというようなことで、それができるまで新中国の建設に残つてもらいたいということで、いろいろ慰留されておるということも、まことしやかなニュースとして聞いたのでありますが、そういうような事実について、あるいは外務省の方で何らかの情報を入手しておられますか。
  30. 草葉隆圓

    草葉政府委員 中共地区に残留いたしておりまする同胞につきましては、いろいろとお話のように情報があるのでございます。今月の月刊雑誌にもいろいろ載つてつたのを読みましたが、数字等におきましては、情報としていろいろありますが、具体的に調査をいたしましたのは、先般引揚白書と俗にいわれておりまする内容で発表いたしました状態であります。従つて現実に中共からの手紙も相当参つておりまするし、また最近まで約三百二、三十名の個人引揚げせられた方々から情報を得まして、お話のように相当の方々が、なお彼の地におりまする状態やに存じております。従いましてこれらの同胞を一日も早く引揚げるような状態に持つて参りますのには、何といつても根本問題は、中共政府引揚げに対する理解と協力を得ることが大事だと存じまして、実は前々から関係方面を通じまして、中共との国際関係にありまする国々等の手を経て、日本の船を持つて迎いに行く、いわゆる集団引揚げ等の方法を交渉して参つておる状況であります。しかしこれがまだ話がつき得ない状態であります。まことに残念に存じておりまするが、そういう方法につきましても、今後一層努力して参りたいと存じております。
  31. 岡良一

    ○岡(良)委員 なおまだ帰らざる同胞に対してこうして苦慮しておる、焦慮しておるのは、わが国だけではなく、御存じのようにドイツもイタリアもある。特にドイツは未帰還者が百五十万人と称して、先般私どもがたずねましたときにも、政府国会もあげて非常に焦慮しておるようです。そしてドイツの国会もこの問題に非常に熱心で、レークサクセスまで行つて国会を代表して出席しておるヘルバート氏なんかも、ぜひとも日本講和条約が締結され、あるいはまたわれわれも戦争終結宣言等によつて自由なる立場を得るならば、この問題は国連において米ソの政治的な葛藤の中において問題がいろいろともみくちやにされるよりは、いつそすつきりした形で当事圏が手を握つて、広く世界の輿論にも訴えて、公正な解決と引揚げ促進努力をしたいというふうなことを申しておりましたが、これは非常に私どもも正しい、また適当な処置ではないかとも考えております。幸いにドイツも戦争終結宣言を受けて、自由諸国との間においては対等な立場を獲得したようでありますが、日本もこの講和条約を通て捕虜規定も明文化されておるのでありますが、日本政府としても、あるいはまた国民、あるいは留守家族の代表等がやはり百五十万人の未帰還者を抱いて焦慮しておる西ドイツ、あるいはイタリアを含めての当事国が、しつかり手を握つて情報の交換もやり、あるいはまた世界の輿論に対する工作等についても、いわば共同的な形で働きかけて行くということも、この際非常に必要ではないかというようなことも実は考えたりしておるのであります。草葉さんはどういうふうにお考えになつておりますか、お聞きしたいと存じます。
  32. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は先般国際連合の三人委員会についてのアメリカの報道によりましても、日独合せて約百万以上がいまだ抑留されておると報道されておつたように記憶いたしておりますが、お話のようにドイツは日本と同じような状態にあるようでございます。いろいろな点を十分今後考慮いたしまして、御意見の点に対しましては処置を進めて参りたいと存じます。
  33. 庄司一郎

    庄司委員 ただいまのことに関連して一問だけお許しを願います。  最近宮城県の留守家族あてに中国から参りました手紙によりますと、旅費さえあれば帰国ができるという悲痛な手紙を私はこの目で見て参りました。そこでただいままでも本委員会等においては、しばしばかような問題が論議の的となつてつたのでありますが、何らか適当な方法で、旅費がないためだけに帰れない気の毒な同胞に対して、すみやかに政府が旅費を立てかえる、あるいは一時支給する、かような方法を具体化して、それらの同胞をすみやかに帰国させることができるような措置をとつてもらいたい。こういうふうに念願しておりますが、この点何らかうまい方法がないでしようか。
  34. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は引揚げにつきまする旅費は、これは従来とも集団的に日本が船を持つて参りました。食糧、衣料一切を準備しまして、いつでも出せる準備を常にいたしておるくらいでございます。従いまして本人に負担がかからぬようにして引揚げをするという方法で最初からいたして参つておるのでございます。ただ個人引揚げの場合の旅費につきましては、実はことに中共地区から最近帰られました状態をずつと三百数十名を調査いたしますと、地区によりましても違いますし、御承知のように旅費と申しましても、一定の便船があつてつて来れるという状態がほとんどないのであります。こういう関係で、現に実際の問題としてなかなか困難であるという状態でございます。一定の便船が、ことに日本が国交を回復しまして、定期船が参りまして、その船等が十分日本状態を了承してくれてやります場合には、これは方法はいかようともあり得る立場がとられると存じます。先般も私も留守家族の方から、一千万円ほどの金をというようなお話も承り、多分船をみずから雇つてつて来れるという状態の場合を予想されてのことではないかと思いますが、なかなか困難であろうと思います。また現に個人引揚げで帰つていらつしやる場合の旅費等につきましても、あるいは香港等の銀行等を通じて連絡するという方法もあろうと存じます。しかしこれは何ら実際的に確定的な、有効的な方法がとられない心配がありますので、この道がいいという道は、現在の状態においてはなかなか困難だと考えております。従来とも帰られました状態は、あるいは向うのそれぞれの公の機関から、おるいは同僚の力によつて、あるいはみずからの蓄積その他によつてお帰りになつたような場合が多いようでありますが、今申し上げましたように、定期船とか便船というものの一定したものがありませんので、まことにこの点実際の問題として行う場合には、ほとんどこちらから処置をすることが困難な状態にあることを、たいへん苦しんでおる次第であります。
  35. 若林義孝

    若林委員長 ちよつとこれに関連いたしまして、去る三月六日付でアメリカ合衆国政治顧問あてに戦争捕虜問題に関しまして歎願運動をいたしましたについて、国際連合社会局事務次長代理エゴン・シユエルプ氏より委員長あてに手紙が参つておりますので、この際関連いたしておりますから御報告をいたしておきます。   拝啓 アメリカ合衆国国連代表部より当方に伝達された一九五一年三月六日付アメリカ合衆国政治顧問あての戦争俘虜問題に関する貴方の書簡につき一言申述ぶるは私の欣快とするところであります。第五回国連総会における決議に基いて設立された俘虜に関する特別委員会は一九五一年七月三十日に開催される予定であり、該委員会は該委員会に委任された仕事を最も効果的に遂行するための諸手続を決定するはずであります。該委員会はその任務を遂行するに当つては、入手し得るあらゆる情報を入手活用するは勿論であります。私は賢明にして公平なる人物中より精選された委員をもつて構成された同委員会が戦争俘虜問題の満足すべき解決のためにあらゆる人道的な方途と努力を講ずべきことを信じて疑いません。    敬具    一九五一年七月十一日     国際連合社会局事務次長代理         エゴン シユエルプ  日本国衆議院海外同胞引揚に関する  特別委員長    若林 義孝殿これはただいまの岡君の御質疑その他に対しての関連事項といたしまして、御報告をいたしておきます。次に今野武雄君。
  36. 今野武雄

    ○今野委員 草葉政務次官お尋ねしたいのでございます。先日総持寺における懇談会の席上で、事実が問題であるということをおつしやられた。それから国連三人委員会が十二月まで休会するという新聞報道も、やはりこの事実を確かめるためというふうに私は了承しておるのであります。それでやはり引揚げを待つておられる方々も、総持寺の席上でも、事実があやふやじや困るという意向を皆さん漏らされておつたようであります。そういう点から、事実についてやはり依然として問題であると考えましてお尋ねするのでありますが、ひとつ簡明にお答え願いたいと思います。  第一に終戦の当時、ソ連側から日本側に対して捕虜の名簿を記載しておるトランスフアー・ペーパー、これは引渡すということを書いた引渡書と、それからその名簿、こういうものを日本側に対して引渡しておるということがいわれておるのでありますが、このことの事実の有無をまずお答え願いたいと思います。
  37. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは多分引揚船が参りまするときに、そのときそれに乗る人たちの名簿、これはその都度その都度もらつておるのであります。そうじやなしに全体としての、ただいまお話のような名簿というのは、従来から日本政府は受取つておらないのでございます。
  38. 今野武雄

    ○今野委員 なぜ私がそういうことをお聞きしたかと申しますと、いわゆる引揚げ基本数なるものが発表の時期によつて非常に違つておる。特に私、自分で数字をいじくる商売なものですから、非常に気になつたのは、昭和二十一年の九月二十四日の発表によりますと、基本数が二百六万九千六十三名ということになつております。それからわずか十六日ばかり離れた、同年の十月十日付の発表によりますると、それが二百六十九万六百三十八名というふうになつております。これる比較してみますと、ちようど六十二万数千の違いがありまして、しかもその数字が非常に、偶然ではありましようけれども、九月の発表の数字の二の次のゼロを除いて、そして一つだけずつと桁を繰上げて、一番しまいに八という字をくつけると十月の発表になる。こういうような非常に奇妙な—これは偶然ではあるかもしれませんけれども、非常に奇妙なことが出ている。わずか二週間かそこらの間に、引揚げ基本数というものがそんなにかわるべきものじやないと私ども信じている。確固たるものであると信じておるのでありますが、そういうものが六十数万もかわつている。こういうことから見ると、いろいろな数字の基礎になるものが、従来から非常に私どもあいまいなように考えておつたのですが、何かたよりないじやないか、こういうように考えられるわけであります。なぜこの二週間そこそこの間に六十万ふえたか、その間の事情がおわかりでしたらお知らせ願いたいと思います。
  39. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今の具体的な数字は、私手元に持ちませんので、あとで調べまして、ひとつよくお答えをいたします。
  40. 今野武雄

    ○今野委員 私今数字をあげました趣旨は、数字それ自身も問題でありますが、同時にそういう基本数なるものがいかなる確固たる基礎の上に立つておるかということをお尋ねしたかつたわけでございまするが、この基本数は必ず間違いのないものであるかどうか。その十月の発表の後にもかわつております。さらにまたふえております。はたしてそういうものは完全に間違いないのであるかどうか。その点納得の行くように、こういう次第であるから間違いのないものであるというふうに、ひとつお答えを願いたいと思います。
  41. 草葉隆圓

    草葉政府委員 今の二百万と二百六十万の点は、御納得の行くように資料をもちましてお話を申し上げたいと思います。
  42. 今野武雄

    ○今野委員 そういうように六十万も違いますと、しかもその上南方その他の方面からの引揚げについては、海外からの公式の発表というものを、私どもいまだ承つたことがないのでございます。もう引揚げは完了したということは、たびたび伺つておるのでありますが、その後また引揚げが出て来たというふうで、非常にわからない。そしていろいろなこの点について巷の説がありまして、百万残つておるとか、残つていないとか、いろいろなことがいわれている。そしてそれについての海外諸国からの公式な発表、幾らいて、そしてどうしてこういうような数字になつておるか、そういうふうなこともはつきり発表になつていないように私ども考えている。公式発表があつたかどうか、いつなされたか、その点もちよつとお伺いしたいと思います。公式発表ですから、どこどこの政府の、いつの発表というふうにひとつお伺いしたいと思います。
  43. 草葉隆圓

    草葉政府委員 それは七月か、いわゆる引揚白書と俗にいわれました引揚げ問題に関する外務省情報部長談で出しました、あれによつて総合的に発表いたしましたが、その前にも、全体の引揚ぐべき数と引揚げた数と、それに対してはおそらくこの委員会等でも、その都度その都度御発表申し上げたと存じておりますが、実はきようはその発表申し上げた資料を持ちません。私どももこの委員会等で、今回の船では何名帰還したとか、どうとかいうような発表をいつも聞いておりましたから、その都度発表したものと存じております。
  44. 今野武雄

    ○今野委員 いや、そういうことじやないのでございます。この間の引揚白書には、ソ連地区とか、中共地区とか、そういうところの発表だけであります。それからその前もいろいろな数字が出ておりましたが、根拠を、もつて、たとえばソ連の場合には、タス通信が政府から委託を受けてこういうふうなものであるということの発表を行つておるが、それと同じような何らかの権威ある裏付けを持つた、どこどこの政府の責任ある発表は一度も承つたことがないように記憶して、その後調べましたならば、やはり私の調べた限りではないように思われるのであります。そこで念のために承つているわけです。これは重大なことでございますから、たとえばアメリカの政府からこういう通告があつた、あるいは濠州の政府からこういう通告があつた。戦犯とかいろいろなことについては新聞紙上で伺つておりますが、全体としての引揚げの数です。全体でどのくらいおつて、そうしてどのくらい帰してどうだというような数字は一度も伺つたことがないように思われるので、その点を伺つているわけです。
  45. 草葉隆圓

    草葉政府委員 従来国会で発表いたしました以外に、司令部から正式に発表いたしました数字があつたと存じております。これは多分お調べになるとはつきりいたすと思います。
  46. 今野武雄

    ○今野委員 そうすると、私は司令部を信じないとかいうことじやないのですけれども、他国の政府がみずから責任を負う形で発表したのはソビエトのものだけだというふうに承知してよろしいでしまうか。
  47. 草葉隆圓

    草葉政府委員 私ちよつとその数字を記憶いたしませんので、ここでははつきり申し上げかねますが、従来司令部からソビエト以外も相当発表されたと記憶しております。きようはちよつと手元に数字を持つて参りませんでしたから、この点あるいは私の記憶違いかもしれません。
  48. 今野武雄

    ○今野委員 私も非常にうかつでございましたが、しかしやはり引揚げ委員としてそういうふうにうかつであつてはならなかつたのであります。外務省当局としては、司令部から発表したといつても、それはたとえばほかの国の政府の発表があつてそれに基いて発表したものであるか、こういうことは非常に重大なことでございます。ソ連が発表するいうことも非常に重大なことであり、アメリカが発表することも非常に重大なことであり、また濠州が発表することも非常に重大なことです。ですからこういう点についてうかつであつたということは私どももいけませんけれども、やはり外務省としても、そういうことを確実にいつでも答えることができるようになつていないと困ると思うのです。その点は私どもも協力しますけれども、ぜひとも次の機会には明らかにしていただきたい。私ども南方からのものについてもまだ確実なものを持つていない。それからさつき言つた基本数についても非常に疑いがある。こういうふうになりますと、それでしかも前に三十六万余おるという発表があつて、実は私ども共産党としましては、正直に申しますけれども、方々でもつて引揚げを待つておられる方々からつ込まれて、私どもよくわからないものですから参つた。骨身に徹して参つたので申し上げますけれども、こういう点が非常にあやふやです。これでは引揚げ運動を、日本国政府として、あるいは国民全体として進める上に非常に障害になるのではないか。そいうことではなかなかよその国の人が信頼してくれないのじやないか、こういうふうに思われますが、この間の数字に対しては、そういうことがなく絶対確実であるとここで言い切ることができるかどうか、この点をもう一ぺん伺つておきたいと思います。
  49. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は外務省ははつきりした数字を持つているのであります。ただ私がきよう持つて来ないだけでありまして、きよう実はそのお話があるということを前もつて承知しておりますと明瞭にお答えできたわけでありますが、頭の中の記憶だけでは不十分でありますので——資料は外務省にはつきりした数がありますので、この点はいつでもお答えができるのであります。従つて従来日本政府はいかにもあやふやで、現実の数字を持たないじやないかというような御印象をお持ちになりますとまことに困るのであります。決してそうではなく、はつきりした数字と調査とを持つているのであります。従来の関係からいたしますると、当該国のあるいは捕虜となりあるいは抑留をされるという状態にありました一般邦人、軍人等の手持ちのものを全部帰してくれ、国の権力をもつて押えるという状態には全然ないのであります。従いまして、今回発表をいたしました数字は、日本政府として、また外務省として責任を持つて発表いたした次第でありますから、その点はさよう御了承をいただきたいと思います。
  50. 今野武雄

    ○今野委員 もしそれが非常に確実なものであるなら、先ほど岡さんからもお話がございましたが、講和条約の今度の条項が入れられることによつて解決の一歩が踏み出され得る1捕虜の数とこの条項の適用を受けない一般邦人の数との区別はやはり確実にわかつておられると思うのでありまするが、その点を御発表願えないものでございましようか。
  51. 草葉隆圓

    草葉政府委員 日本国政府がこの間発表いたしましたのは、留守家族によつて調べました総体の数についてであります。しかし具体的な実情はそれぞれ抑留しておりまする国が最もよく知つているはずであります。ただこの情報をくれませんので、やむを得ず日本政府はこれを留守家族によつて調査いたしたのであります。従つて、実は今回はこまかい内容の発表は差控えたのであります。いずれこれはその当該抑留をされておりまする国から必ずや帰してもくれるし、その内容も知らしてもらえると信じておりまするので、日本国内で知り得る最大限は、この五月一日現在では三十四万、これだけでありますと発表いたしたような次第であります。従いまして、現在それぞれの国にありまする者を軍人にどれだけ使つて、あるいは技術者にどれだけ使つているということだけは最も明瞭に知り得ていると考えております。
  52. 今野武雄

    ○今野委員 先ほどはすべての数字が確実にわかつておると言つておられ、今度はその確実なことは当該国が知つておるということになりますと、何だからよつとおかしいような気がするのですけれども、それはしかし言葉の行き違いかもしれません。われわれ確信を持つてやるにはやはりあやふやであるという印象がいささかでも残つてはならないと思うのです。そのためには、たとえば今度の場合でも、そういうように確信を持つてわかつておるなら、捕虜一般邦人との別とか、あるいは府県別とか、あるいは場合によれば新聞などにも書いてありましたが、一人々々の名前を出す。そうすれば国民全体の目に触れますと、今まで外務省でこの数人の方によつて調べたよりは、はるかに国民全体の目で調べられるわけでございまするから、従つてより国民全体が協力して正確なものができるわけになります。それによつて国民の総意を盛り上げるということにすれば、なおさら効果が多いものと私ども考えまするけれども、何ゆえにそういうことをせずに、何か奥歯にもののはさまつたようなことをなさるのか、ちよつと了解に苦しむのでその点を伺いたいと思います。
  53. 若林義孝

    若林委員長 ちよつと今野君に御相談をいたしますが、先ほど、まだきようはそのことが問題に出ると思わないから資料を持ち合せておらないというお話があり、相当つ込んだ御質問だから今度資料を持つて……。
  54. 今野武雄

    ○今野委員 そういうことをする意思があるかどうかということだけです。
  55. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは前会か前々会か、どなたかの御質問がありましてそこでも申し上げましたが、実は現在の段階ではあそこまでの発表が最も適当ではないかと存じまして、日本政府は実は発表いたしたのであります。もちろん一人々々の個表、これをずつとまとめまして集計したのがあれであります。そして御本人々々々、あるいは留守家族留守家族調査し、あるいはこちらから調査しましたものを留守家族にお伝えしたという状態でありますので、留守家族は死亡の場合も生存の場合も承知をいたしておられる。ただ国内全般に発表いたしまする際に、あのような形式をとつたのであります。全部をいずれ発表することが最もいいという機会においては、もちろん発表することに何らやぶさかではありませんが、しかし発表することによつて引揚げ促進を十分にするという意味においては常に発表しておるのでありまして、引揚げ促進の資料にし、引揚げ促進を来す材料として最も適当という意味においては、一般国民に、総数においてはこうだ、生きておる方は、大体日本で今知られる最大の方法では七万七千であり、死亡者は三十四万であり、生死不明の方は二万数千であるという全体の数字を調査して、申し上げて、個個については先ほど申し上げましたように、個人の家庭にはお知らせをいたしております。それ以上発表いたしますることは、むしろいろいろな場合を予想いたしておるのでありまして、従いまして、国民全体には全体の数字、それから御本人々々々に十分御了承を願うという方法が、現在の段階では最も適当ではないかというので、あのような発表形式をとつたような次第であります。
  56. 今野武雄

    ○今野委員 もう一つでやめます。ただいまの問題、資料の問題とも一緒にいたしまして、国民運動というからにはやはり国民の一人々々が納得して、そうして自信を持つて腹の底からや、なければ国民運動になかなかならぬものです。ですからそういう意味からすると、政府考えた有利不利という判断と、それからわれわれ国民の側に立つものとして考える有利不利という問題とは、おのずから見解の違いが出て来ると思うのであります。しかしこの点はやはり事柄を明らかにして運動を進めるというのが民主的でもあり、また世界にも筋が通る。国連やその他三人委員会もその問題のために休んでおるというのですから、そういう意味からぜひともこれを急速に発表していただくように措置していただきたいと要望する次第であります。  それからそれに関連してもう一つお伺いしたいことは、先般新聞紙上で井口次官の処分という問題が出ましたが、私どもは何のことかさつぱりわからない。ところがたまたま引揚げの数字その他の問題に関係しておるといううわさも立つておるのでございますが、このことははたしてそうであるかどうか。お答えしにくいかもしれませんが、ひとつお答え願えれば幸いだと思います。
  57. 玉置信一

    玉置(信)委員 今野委員質問に関連してごく簡単にお伺いします。その前に今野議員のただいまの御発言によりますと、われわれ国民運動をする上においてという言葉を使われましたが、これは何も今野議員の言葉じりをつかまえて反撃するわけじやないのですが、共産党の立場からいうと、この問題はすでにソ連政府がその機関紙タス通信を通じて発表したあの数字をあくまでも正当のものであるとして、あの根拠のもとに今まで論議を闘わして来た立場からすれば、ただいままで御質問された趣旨は非常に私は納得しかねる点があるのであります。従つてこれに対して国民運動をはたして展開されるかどうかということを今野議員にお尋ねしたいのであります。  そこで本論に入りますが、先般の新聞によりますとイタリアのソ連に抑留されておるものが—これはちようど日本と同様でないかと私は考えるのですが—発表された以外になお抑留されておるイタリア同胞が多数おることを、事実においてつきとめることができたということを報道されておつた従つてタス通信で発表された以外のもの、政府あるいは連合国側で発表された数字のものがおるのではないかということを、やはり私は今日確信をもつて見ておるわけであります。しかしあまりにこう共産党の諸君との意見の食い違いによつて、ソ連におる抑留者はあるいは中共に送り込まれておるのではないかというような想像さえもここにできるわけであります。かような状態で、私は今日この数字をあくまでも共産党の立場からつきとめて資料を得ようとする質問に対して疑義をはさむと同時に、今イタリアの例を申し上げましたように、わが同胞が相当おるのではないかと思うのでありますが、イタリアのこうした情報について日本外務省は何らかの連絡があつたかどうか、こういう点をお伺いしたい。
  58. 草葉隆圓

    草葉政府委員 さきの、情報をもらしたことによる処分云々ということをたいへん御心配いただきまして恐縮に存じますが、さようなことはないと御了承をいただいてけつこうだと存じます。  なおイタリア捕虜、大体六万三千以上と承知をいたしておりますが、これは国際連合等において、当委員会委員の中山先生も御出席になつて、いろいろそういう情報もあつたそうでございます。また国際連合を通じて私どもも承知いたしておるところでございます。  なおこの数字の問題は先ほどからるる申し上げましたように、国民運動といたしましてはこの全体の数字をもつて十分ではないかと存じでおります。また個々のものを発表いたしますことは、むしろいろいろの点でこれは慎重に取扱うべきである。現在においても留守家族の方々が熱心におやりになつておりますことは、実は私ども恐縮に存じておりますが、国民全体がこの運動に携わるという形がほんとうに引揚げを進めるものでありまして、そういう意味から申しましても、全体の発表をいたしまして、それによつて運動というものが最も必要ではないか、かように考えるのであります。
  59. 小西英雄

    小西(英)委員 引揚げ促進の問題について先ほど来同僚委員から質問になりまして、草葉政務次官の御答弁があつたのですが、あらゆる方法でこの引揚げ促進したいということですが、何か具体的に構想を持つておられるかどうか、それをお伺いしたい。  もう一つは行政機構の改革によつて引揚げ援護促進等についでの所管の監理局がなくなるようなうわさを聞いて、非常に留守家族の者が心配しておりますが、そういう点についてひとつお答えを願いたいと思います。
  60. 草葉隆圓

    草葉政府委員 引揚げの具体方策につきましては、実は先ほどもちよつとお答えを申し上げたのでありますが、なお現在私ども考えておりまする国連の協力—協力と申すよりも、具体的に国連で三人委員会を設置して進んでおられまする好意に対しまする力強い要望、あるいは今回の平和条約を中心にいたしました今後の日本国政府の活動、また従来もいたしておりました、ことに中共を中心にしました集団引揚げ、こういう方面、またその他の日本が国交を回復しましたあとにおける関係国の協力というようなことが強く考えられておるのであります。  今後の外務省の機構につきましては、実は占領下の機構から次の段階に移ります方法におきましては、いろいろ機構を考えて行かねばならぬと存じております。従いましてお話のような点につきましても触れて参ると存じまするが、そのために引揚げの問題を阻害するような機構の改革はいたしたくない、またいたすべきものでもないという考えのもとにいたしております。どうぞその点は御了承をいただきたいと存じます。
  61. 今野武雄

    ○今野委員 ただいま玉置さんから国民運動云々ということで逆に御質問を受けてたいへん恐縮でございまするが、私ども引揚げの問題に対してはできるだけ事柄をはつきりさせて、そうして自信を得てやりたいということは、これは前々から考えているところでございます。その点は決して人後に落ちるものではないということをここで申し上げておきたいと思います。特に先ほども申しました通り、ソ連以外の政府から自国圏内における引揚げ問題に対してはつきりした言明を得られること、これは南方から次々と引揚げて来られるありさまを見て、私どもはやはりぜひともしなければならないと考えておる次第でございます。それからもう一つ、先ほどのお答えでちよつと私不満だつたのです。というのは、井口さんのことについてお尋ねしたら、さようなことはございませんと言われましたが、新聞でもやはり情報を漏らしたということで一応いわれておりますし、また私も、井口さんはある少数の人方の会議でもつて、ソ連の数字はあれは正確なんだよということをおつしやつた、そのことが問題になつたんだというふうに聞き及んでおるのであります。そういうわけでこの問題は、今までやつて来た引揚げの問題と非常に密接な関係のある重大な問題でございまするから、これはもう少しはつきりした答えをしていただきたいと存ずる次第でございます。
  62. 草葉隆圓

    草葉政府委員 実は日本政府が発表しましたものはどうぞ信用していただいてけつこうでございます。確信を持つて運動をするためにどうかという念を押しての御質問でございますが、どうぞ御信用をいただきまして、確信を持つてひとつ引揚げ促進に御協力をいただきたいと存じております。  それから井口君の問題は先ほども申し上げた通りであります。全体としての問題の立場からでありまするから御了承いただきたいと思います。     —————————————
  63. 若林義孝

    若林委員長 この際過般城崎において行われました第九回引揚者全国大会におきまして要請と決議をなされたのを本委員会に提出されておるのであります。本委員会におきましてより検討をし善処することを委員長並びに理事各位に御一任を願いたいと思うのでありますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  64. 若林義孝

    若林委員長 ではさよう決します。     —————————————
  65. 庄司一郎

    庄司委員 大体委員長の御口吻で、本委員会も今臨時国会においてはこれで散会というような段階に参りましたが、この際講和条約草案の第六条b項等に、特に深い御了解と御同情のもとに引揚条項を編入していただいた国連当局、あるいは委員長が本委員会を代表して懇請されたシーボルド議長等々に対して適当なる時期において一応感謝といいましようか、あるいはごあいさつといいましようか、適当に御善処あらんことを要望してやまないのであります。  なおわれわれの同僚委員である中山マサ君は、大体国会議員団として今回の講和条約に、全権委員ではございませんけれども御参加なさるとのことでありまするから、委員長とされても、またわれわれ委員会としても、中山マサ委員に対しては、特に引揚げ促進の問題に関し、国際連合の三人委員会等に対して、本委員会が過般決議の上政府あるいはシーボルド議長等に要請された案件等をよく御委嘱なされまして、中山議員が、特にわれわれ特別委員会委員として御健闘くださることを要望してやまないのであります。よつて委員長よりも適当な機会に、中山マサ君に対してその御善処御奮闘を要望していただけるよう、ここに懇請してやまないものであります。
  66. 若林義孝

    若林委員長 ただいま庄司一郎君から御提案になりました趣旨につきましては、昨日の懇談会の申合せによりまして、それぞれ関係当局に各派代表の形式をもちまして感謝の意を表明いたすことにいたしております。  なお名誉ある全権団の一員の中に、本特別委員会委員中山マサ君が参加せられますことは、当委員会の使命の重大性が表明せられておると存ずるのであります。本委員会の意思、要望を、中山マサ委員を通じて、サンフランシスコ平和会議に十分貫徹し得るよう御善処を要望する方途を講じたいと思うのであります。なお委員会の意思といたしまして、中山マサ委員のサンフランシスコ並びにワシントンにおもむかれるだろうと思うのでありますが、御健闘を祈りまして、本日はこれにて散会をいたしたいと思います。     午後三時三十一分散会