○原虎一君 私が懸念いたしておる点はその点であります。これはちよつと横道に外れますが、ここに私の持
つております週刊労働、これは御
承知のように
労働省の中に編集部がありましてそして編集されております。従
つて或る
意味においては
労働省の責任において編集されておるとい
つても過言ではないと思います。それがその記事に責任を問うわけではありませんが、一般ら深く信ぜられる、こういう週刊労働という新聞が、先般の石炭争議の記事を書いて、御
承知のように十一日間に亙る罷業のために延二百八万人が罷業をやつたことになる。で八十万トン以上の減産を来たしております。この争議をこういうふうに書いております。「第三者を交えない労使の自主的
解決という争議の慣行を確立したことは今後の争議の在り方を示すものとして注目すべきであろう、」、而もこの見出しは「自主
解決の慣行確立」「労使
関係漸く正常化す」と、こう書いております。成るほどこれは中労委のお世話にならずに
解決したということから、その一点のみを取上げれば、自主的
解決で、この見出しの
通りに自主
解決の慣行を確立したという、こういう大きな三段抜き四段抜きの初号活字で書くだけの価値があるかと思いまするが、これは私に言わせれば皮相なる観察ではないか、成るほどストライキに
なつた、そうしてストライキに
なつたから中労委も介在しないで労使が直接交渉で
解決したことは自主的
解決だ、而も今後の争議の
あり方に大きな示唆となるというような書き方をしておる。これは一般の商業新聞でもこういう書き方は皮相だと私は思う。これは私はストライキを十日もやらないで自主的
解決が行われたならば、これ以上な全面を潰して書くべきだと思います。二十万人の炭鉱
労働者が十日間もストライキをや
つて、八十万トン以上の減産を来たして、そうして
労使双方直接交渉して
解決している。第三者の中労委が入らなかつたということは余りにほめるべきことではない。これは権力が発動されてストライキを彈圧したりなんかしたらけしからんことであります。そうでなくてストライキをや
つて、労使が直接交渉をや
つて解決付いたのは当り前のことであります。それが今後の争議の
あり方に大いに新らしい道を開いたというような
意味の書き方をすることは、
労働省としてはそれはどうかと思う。
労働省としてはやはり依然として、私は争議、ストライキに移る前に中労委にかけるべきものをなぜ掛けなかつたかというと、
労働省としては私は検討されるべきだと思う。私
どもは先般数回に亙
つて労働組合側と資本家側との代表者の出席を求めてここで経過の陳述を聞いたんでありますが、その我々の聞く点は、あれが十日間のストライキであの
条件で
解決付くものが、何故にストライキに入らなければならなか
つたのであるかということが、我々労働委員としては重要なる問題でありまして、その経過においてどちらがいい、悪いという問題は、これは他の者が然るべく
批判し、検討して
批判されるべき問題であります。その聞きました結果から見ますと、一昨年の争議のときにおけるGHQの示唆によりましてストライキをやめさせられた。そうして中労委にかけた結果が面白くなかつたということは何人も申しておる。で組合側の主張を聞きますれば、ストをやらなければ会社側は誠意を以て妥結
条件を出さない。例えば妥結
条件においては五十何円、六十円からの賃上げをいたしておりますが、その最初において、何十回か交渉している間においては五円、十円
程度しかの
賃金引上げを会社側は出して来ない。であるからして我々はもうストライキをやらなければ、会社側は誠意ある妥結
条件を出さないんだ。そこでストをやらざるを得なか
つたのだ。然らばなぜその場合に中労委に調停を申請しなかつたかという
質問に対しては、中労委に対してや
つても、同様にストをやらなければ会社側は恐らく六十円に近いところの賃上げを出して来ないということは見えすいてお
つたのであります。要約すればそういう陣述でありました。それから資本家側の
意見は、レッド・パージが行われて民主的労働組合の幹部は組合員から非常な強い
批判を受けてお
つて、戰う民同としての威力を示さなければならんのであるから、今度はどうしてもストライキをやるのであるという観察をしておつたという解釈ができる陣述であります。そしてこれは言葉の裏を言えば、どうしてもストライキをやるのであるからストライキは必至であるから、最初のうちに妥結
条件を出さないでストライキをやつた後に妥結
条件を出して、そうして
解決しようという肚だつた、こう言われても仕方のない陣述だと私は思います。こういう状態においてこそ初めて私は中労委が、権威を持つた中労委としてストライキに至らずしてこの調停をやるということが必要である。
労使双方とも今度のストライキでは中労委の世話になりたくないという
考えを持
つてストライキを……資本家側の陳述から推察しますと、ストライキは必至だからやらせろ、やらしてから
解決のできる案を出そう。労働組合のほうはやらなければ会社側は誠意のある案を出さないからや
つてしまえと、こういうふうにな
つておつたと、私は陳述から見て
考えられるのであります。そこで私はいわゆるこの新聞の書き方で、中労委というものに対する……中労委の任務というものが如何に重大なものであ
つて、これの機能を拡充して権威あらしめるものにしなければならんという
考え方は、少くとも私は週刊労働の編集の部にはない。ストライキはやらなければならんのだ、や
つてから自主的に労使が
解決したのだから、これは誠に結構なものだという書き方はどうか。先ほど私が大臣にお伺いした現在の中労委を以てしてその機能を十分に発揮し得るということは、責任の地位にある
労働大臣としてはいま少し御検討を願う必要があるのではないか。地労委も勿論必要でありますけれ
ども、中労委は御
承知のような基本
産業の根幹をゆさぶるようなストになるのでありますから、自立経済を確立するために非常に中労委の任務というものは必要だと思う。勿論顧みまして中労委を権威あらしめるために人を以てしたという感じはありますが、私は今日はそれも必要でありまするけれ
ども、
機構それ自体が全く充実して、そしてここの判定は間違いないのだということを社会に示すだけの実力を持つ中労委にしなければならんのではないか、こう
考えますのでお伺いしたわけであります。