○
参考人(
深谷二郎君) 最終まで
争議が続きまして、
社会の
皆さんに大変な御迷惑をおかけいたしましたことにつきましては、心からお詫びを申上げる次第でございます。
先ず第一に、
当社の
客観情勢がどういうふうな推移の下にあ
つたかということを
簡單に申上げます。それは御承知の
通り北海道の
炭鉱労働という問題は、
終戰後極度の共産党の指導によりまして
相当熾烈なる
運動が展開されまして、これが昨年の
レツド・パージによりまして
当社におきましては
他社の率から申上げますれば、最も多い数学が……これは
皆さん又
社会の趨勢で、これが大体において
労働組合のほうにおきましては円満に推移いたしまして、その後約四年間に亘るところの
団体交渉の結果、
他社にもまだ全体的のまとまりのないところの
労働協約が、昨年の十二月に目出たく調印を見たというところにおきましては、
労働組合と
会社側の
考え方が、
戰後の熾烈なる反対の
現象から安定の
空気に移
つて来た。これは私らは誠に喜ばしい
現象と
思つてお
つたのであります。それに引続きまして今次の
賃金交渉は昨年の十二月末に第一回が持たれまして一月に推移したのであります。そして
労働組合並びに
会社側の
幹部の基本的な
考え方といたしましては、この問題を円満に
解決しようという基本的な精神が確約されてお
つたのでございますが、又山元に流れるところの
空気というものは
相当の
レツド・パージの出血もある
関係上、鬪わざる
民同に対する
空気を一回清算しなければ、今の
組合が今後の基盤に立
つて、大地に足をついた発展がなかなかむずかしいというような
空気は、これは
相当なものがございました。例えば
組合大会におきましても、昔は
会社側に、
組合員で何か
ストライキ等はやめるべきであるという者は、それは犬という言葉を似て表現されておりましたが、
レツド・パージ後の
組合大会におきましては鬪わざる
民同というもの、今の
幹部がこれを最も苦慮していたとうような
情勢がございます。これをやはり
団体の
組合運動の上から如何に是正して行かなく
ちやいかんか、そういうような
空気は絶えず私らも憂慮していた問題でございます。なお今次の
賃金交渉で、私は最も不思議に思いますのは丁度
当社の
事情だけを申上げて恐縮でございますが、
当社におきましても
経営は
相当苦しくな
つて参りまして、かねて二年前から問題になりましたところの
手塩鉱の廃止の問題、この両方の問題でいよいよ具体化されるところの問題になりまして、
東京で
暫らく一月から
交渉をいたしました。その一月七日から
東京で
手塩鉱の廃止問題について
団体交渉を持ちました。これがなかなか
結論に達しないので、私は一月二十日頃又
北海道に呼ばれまして、この
交渉をまとめて二月の四日に
歸つて参りました。その間に全体的の
賃金交渉がまだ話合いをしておりますが、これはなかなか
他社との
関連もありますので、この
解決の点まで行
つていない。で私が帰りましたときにおいては、七日から共鬪の無
期限ストをやるという
通告が来ておるので、私は直ちに呼んで、まだこの案の
交渉は熟していないじやないか、僕が
歸つてから一度もやらんじやないか、まだ
会社に案もあるから
一つやろうということを言いましたけれ
ども、そこはなかなか客観的な四
社共鬪というような形で、それを説き得なか
つたのであります。そして私の
考え方といたしましても、まあ四
社共鬪という炭労の線がいい、
組合運動の炭労の線が伸びて行くということは、結構でありますけれ
ども、併しながらこれが長期化すると、とんだ所からこまが出ると、これはお互いに国家的な線において自省しなくちやいかないというような
関係でよく申上げました。又
一つには今度の
労働組合は当初におきましては今度の
賃金交渉においては折角
労働協約もできたのであるから、
ストライキをやめろ、するんでない、
ストライキをしないで、
交渉に入れというような指令を以て、この四
社共鬪に出てお
つたのでありますが、これはなかなか……、四
社共鬪の中に入りますると、山元の決議とは反対の
方向に走らざるを得ない
状態に陷れられたのであります。それで山元における我々はお前らの代表にはストをやれという権限を与えなか
つたと、非常に批判をされて個々の共鬪というのは
相当窮地に陷
つたものでございますが、これは一応
組合の代表が、や
つた以上は止むを得ないということで、三日、その後の私の
組合の
事情を申上げまして甚だ恐縮でございますが、実際のことにおきまして、
組合においてそれならば三日だけは与える、三日以上はや
つては
いかんというふうな
実情にあ
つたのございますが、これもやはり炭労の
組織を割つ
ちやいかんという問題のために、遂に月曜まで延びてしま
つた。その間において山元においては我々と違うのをや
つた。それだけやるならば
最後まで三井の線までは取れ、取れなければ承知せんぞというような
空気が山元に漸次擡頭しまして、今後は
ストライキの期間が延びるに従いまして、山元は強くなるし、こちらのほうの代表というものは数次の
団体交渉を徹宵でやりましても、なかなかまとめきれないというような
状態でありまして、その途中におきまして、こちらが
賃金交渉委員長と私個人との間において
意見が一致いたしまして、三井の
交渉がまとまる二日前に私個人とこの代表の
意見がまとまりましたのが五時でございました。八時から九時までに正式の調印をしようと言
つて委員長が帰
つて行
つたところが、山元の代表が来まして三井と同じ線まで取らなければならんということで、折角の九時にまとまるという個人のあれがぶちこわされてしま
つて、遂にこのような長期の問題にな
つたのでございます。而もこの後にな
つてからの、この
賃金問題の今後の論争は、
皆さんにおいてはもう御承知と思いますが、標準作業量の問題について論争されたのでございます。これは標準作業量ということになれば御承知と思いますが、三十三年の十二月
協定のときにおきまして、二十三年の六月から九月の一〇%増しというものが採炭夫の標準作業量、これが
当社におきましては、これは私は
経営者側も少し責任は当然負わにや
いかんと思いますが、今日までそれが維持されないでお
つた。一七一%という標準作業量というものに上
つている。ところがここにおいて
会社側におきましては一七一%まで上
つておるということは、
経営努力によるパーセンテージが
相当あるんだ。
労働者諸君の努力もあるかも知れないけれ
ども、少くとも二十三年の十二月当時におきましては、
労資の間というものは必ずしも均衡のとれたところの形に、殊に
北海道においては残念ながら私はないと思われる節が
相当あるのでございます。そういう点から申しまして、この場合におきまして、ほかの
賃金水準を上げる上におきましても、あるべき
能率に改訂するのが当然である。むしろ今までは取過ぎていたという観点が
当社においては
相当あるのでありますが、この点においては
皆さんと私らは了解し合わにやならん。
炭鉱において
坑内外夫の賃下げなどという、
收入が減るなどという馬鹿なやり方は、これは本当に
石炭の
経営をする上においては、利口な手でないことは誰でもわか
つておることでございます。併しながら
坑内外のやはりバランスということも
考えなければ
いかん。而もそれが正当でないということであるならば、而も全体の
生活水準というものを維持しようというためには、ここで是正するのは当然である。その点の理論においては
組合も同一
意見である。ただ問題は、併しながら今までもら
つておるところのものから割かれるのは、減る形になるのは困ると、これが終始
最後まで付きまと
つた論議でございます。これが併しながら、成るほど
当社におきましても十七
炭鉱がありますが、この十七
炭鉱のうちの大体もう十以上のものは今度ので決して賃下げになりませんが、四つか、五つのものが標準作業量が五〇%までにな
つてお
つて、そのままの形でこの
賃金を組みますれば……夕張
炭鉱というものは
当社におきましては、これはどうしても
当社の中枢でございます。夕張の採炭夫の
賃金とほかの五〇%というところの
賃金と
組合せれば、今度は片方が非常に行過ぎております。これは
経営者にも責任は私は当然あると思います。割引しても一五〇にもな
つている夕張その他のずつとや
つて来ている所の
賃金と、その五〇にもな
つたところの
賃金と、組んだ瞬間において五十円以上の開きが出る。これは全体的にいえば、今までの取
つていたものから多少下るということはいけないことでありますが、併しながら全体の、
北海道だけに事業地があり、すべて
一つにまとま
つているところにおいて、折角の
賃金交渉が今までより減收ということでまとまりましても、今度は同じに働いて、而も
会社に一番貢献しているところの夕張あたりより、ほかが高くなるというふうなことになると、
組合だけは今までの
收入を確保するというとこにおいて
意見が一致しましても、必ず内部の
組合が馬鹿臭いという気持が起きて来るのは、前にもあ
つた例であります。そこで
会社におきましては飽までもこれは全体の企業努力によるところの
能率の上昇というものは当然見なく
ちやいかん。而も今後におきましては十分上
つて行く
見通しがある。彼らも上
つて行く。それで
当社におきましても一—三月だけは今までの形を認めてやるが、四月以降においてはあるべき姿に是正して、この難関を突破すべきであるというところに論議が盡きまして、
最後におきましては
当社はちよつと四月以降におきましては
賃金の面におきましては一%ばかりに下りましたけれ
ども、これを回復するために四月以降においては七—十二月の標準作業量の一〇五%をお互いの責任において一応これを確保するという確約ができまして、今度の
賃金交渉が遅れましたけれ
ども、この遅れましたのは日数は三日遅れておるような形でありますが、波状ストでありますので、三日だけ
当社は遅れまして、昨朝お互いに
組織と
組織が、私も
組合員も
最後の
交渉を五日間全部徹夜で通して、昨日の午前の五時頃に話がまとまりまして、八時に仮調印をしたというような
状態であります。
なお一言附加しておきたいことは、今度の
交渉におきましてこれだけの、十日以上のストが続行されましたけれ
ども、山元においては曾
つての
争議のときに見られないところの平靜さで、少しも政治的色彩がこの
相当十何日に及ぶ
争議にも起きずして、冷靜な態度で山元が
経過できたということは、今次の
交渉の私は特色ではないかと存じます。
大体
簡單に
当社の
事情を申上げました。
あとは御質問にお答えいたします。