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1951-02-23 第10回国会 参議院 労働委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十三日(金曜日)    午後一時三十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○労働行政実情に関する調査の件  (炭鉱ストライキに関する件)   —————————————
  2. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 大変お待たせいたしました。只今から労働委員会を開会いたします。  本日は昨日に引続き、炭鉱労務者賃金、その他の労働條件に関し経営者側かたがたより参考意見を伺いたいと存じます。参考人の人選につきましては、昨日の委員会におきまして委員長に御一任願つておりますので、それに基きまして次のかたがたに願うことにいたしましたから、何卒御了承下さいませ。本日おいで下さいましたかたがたは、日本石炭鉱業連盟專務理事早川勝氏、三井鉱山株式会社労働部長山本淺吾氏北海道炭鉱汽船株式会社労働部長深谷二郎氏、以上のかたがたでございます。なお公報には三菱鉱業株式会社大槻文平氏がおいで下さることに記載されておりましたが、都合によりまして御出席にならないことになりました。それでは最初早川さんから炭鉱賃金、その他の労働條件に関し御発言をお願いいたしますが、時間は大体誠に相済みませんが、お一人十五分ぐらいにお願いいたしたいと存じます。
  3. 早川勝

    参考人早川勝君) 先ず最初に、今回の炭労関係中央四社の争議につきまして、重要な石炭生産を停止するに至りましたことにつきまして、経営者といたしまして誠に世間一般に対しまして申訳ないと思つております。又国会の皆様がたにも御心配をおかけ申上げましたことをここにお詫び申上げます。お蔭様でこの四社のストライキにつきましては円満に妥結を見るに至つたのでございます。今日の会議は、この問題を中心にしてのことと存じますので、私の立場上やや概括的に申上げて見たいと思います。  御案内と存じますが、石炭産業は、終戰後国家増産政策物価政策との間に立ちまして、非常な難澁な経営をいたして参りました。併し生産のほうにつきましては、戰後混乱期から逐年向上を見まして、当時一人の坑夫が一月に五トン乃至六トンなけなしであつたという能率が、最近では十トンにまでなつて来ておるという実情であります。併しながらこれを戰争中若しくは戰争別の石炭産業の当然あるべき姿に比較して見ますと、まだまだ非常に距離が遠いということは誠に残念に思つております。それはそれといたしまして終戰後炭鉱労働組合から統一賃金要求が出て参りました。従つてそれを受けて立ちましたのが手前ども石炭連盟でございます。この全国統一交渉を数次に互りまして約三年ばかり続けましたのですが、一昨年の秋、統制が撤廃になりまして、全くの自由経済になりました後、この炭労側連盟との間における統一賃金交渉というのは非常に難澁を極めまして、その後中央交渉を持ち、中央交渉が決裂、各個交渉に移るという段階を二期、即ち六カ月、六カ月、一年余りを経ておりますが、それで今回の交渉につきましては全然中央交渉を持たれずに、全く最初から各社交渉が行われたという点が今までの歴史を振返つて見まして、今回の紛議特徴であろうかと思つております。そして今度の論争につきましては各個交渉が行われたわけでありますから、それぞれ今年の、正確には今年の一月中旬あたりから双方の、労資間において一月以降の賃金問題が交渉の対象になつたわけでございますが、各社交渉でございますので、横の連繋というものが実はないようであるのでございます。と申しますのは、会社側にしましても内部でいろいろ打合せの協議をいたします。労働組合側といたしましても炭労本部内に一つの機構を設けまして、共同鬪争会議をやつております。そこでいろいろと問題を取上げ進路を諮つたり、いろいろ戰術的なあれもございまするので、各社交渉が非常に進みがたいような状態になつて、又各社交渉において成る一社が出過ぎますと、そのために却つてほかのほうに影響があるというので、これは組合側にも見られた戰略態勢でございましようが、なかなか進んで行かない。そのうちに一月が終りまして、二月に入り、組合側としてはたまりかねて実力行使ということになつたわけであります。従つて内容的に申上げますと、賃金交渉双方の案につきまして、本当に徹底的に議論を重ねることが割に少くて、かなりの開いたままの状態においてストライキに入つたということが率直に申上げられると思うのです。従つてストライキに入つてから、さて收拾するまでの間に、本当の取組をもう一度やるという段階が要りますので、私ども最初想定いたしましたよりも期間が長かつたということになろうと思います。それが大体の経過でございます。  内容につきましてでございますが、先ず経営者側の基本的な態度、考え方につきまして申上げまして、お話を終りたいと思いますが、今申上げましたように、石炭産業自立態勢をみずからの力で立てるという段階になりました関係上、従つて今までのまだ伸び進み得なかつたところの能率を向上させること、それから資本構成内容を改善すること、これが本来常時基本方針でございます。そこへ今度の労働組合からの要求が出て参つたのでありますが、従つて会社側方針といたしましても、やはり能率を向上させる点において問題を收拾する。いわばただ一つの血路は能率を上げて稼いで、そうして会社のほうの状態もよくなるし、組合のほうの收入もよくなると、こういうところに一致点を見るよりほかなかつたただ金はやれないという立場に立つてつたわけであります。一方組合側お話はお聞き下さつたと存じますが、私どもとして見ておりますところの組合收得状態でございますが、今回問題になりました四社の所属労働者といたしましては、大体において坑内夫につきましては月一万円以上の收得にすでになつております。それから坑外夫につきましては七、八千円程度收得になつております。これは基準賃金のほかにいろいろの附加給与基準外賃金ども含めたところの総收入で申しておるわけでありますが、その総收入坑内外平均が八千円乃至九千円がらみでございまして、大体一般製造工業收得水準というものよりも上廻つておるということを、我々は統計で知つております。そこで私どもはそういう賃金の実態を一応押えまして、なおこの四社は大会社でありますが、これらにつきましては相当の福利施設的の支出会社ごとにありまして、仮にこの四社等につきましていいますれば、月額一人当り二千円乃至三千円程度支出労働者のために賃金以外に出しておりまして、これによつて住宅のほうの問題とか、医療費の問題とか或いは水道代電気代とかいう生活施設に大体充当される経費支出されておるわけであります。それぞれ考えまして労働者生活というものも一応考えておるのでありますけれども、なお要求もあり、一般世間との関連考えまして、坑外夫のほうはまあ可能な限りベースを引上げるという方向に、そうして坑内夫のほうにつきましては稼げば收得が殖えると、こういう方向に、そういう内容賃金の案を提示して、一貫してその交渉に当つたということでございます。それが先週から今週にかけまして三井鉱山をトツプといたしまして、それぞれ交渉の結果妥結を見るに至りましたことは結構なことと存じておりますが、今度の争議についての特徴的な点を簡單に申上げますと、これは飽くまで自主解決を以て臨んだという点が特徴であろうと思います。この点につきまして偶然にも組合側経営者側とが意見が一致しておつたのでございます。それで組合側の意図を想像いたしますに、やはりレツド・パージ後の組合最初の大きな労働紛議でございました。従つてここにおいて非常に組織の力を充実するというチヤンスが今来ておるわけでありますので、この交渉が外からデイスターブをされることなしに、自分の組織の全力を挙げてこの交渉に臨む、そうしてその退け際を立派にして組織というものの確立を図るという考えもあつたろうと思います。そこへよそのものが手を出すということになれば、組織自身がゆさぶられるという危險があるからと思います。経営者側としましては、この自立態勢を立てて行きます関係上、今申上げました方針によつて能率を向上させるという方向において賃金を立てて行く。そうしてそれによつて両者がきちつと自主的に妥結しましたならば、妥結後の現場状態はその協定能率によつて非常に心持よく仕事ができるのであります。これをまあ変なことでほかから邪魔が入つてきまつたという状態になりますれば、そのあと生産態勢というものに非常な暗影を投ずるということを若干の経験を持つてつております。従つて我々は飽くまで自主的にやつたほうがいいのだ、それが又早速であり、結果もいいのだという判断でやつて参りました。その点につきましては、大体双方とも目的を達したかに考えております。極く概略でありますが、以上を以て一応私のお話を終ります。
  4. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは、御質疑は各参考人の御意見をお聞きしたあとで、一括していたすことにいたします。  次に三井鉱山株式会社労働部長山本浅吾氏からお願いいたします。
  5. 山本淺吾

    参考人山本淺吾君) 今早川さんからいろいろお話がありましたのですが、三井鉱山会社におきます団体交渉、その経過、それから終結につきまして簡單に要約して申上げます。  ほかの会社と同じように、昨年は一月—十二月、一ヶ年間の協定が成立しておつたわけであります。それで十二月一杯で協定が切れるというので、十二月に私どものほうの組合から私ども会社要求が出たわけであります。それは簡單に申上げますと、坑内六百四十円、坑外三百三十円、日額にしましてそれだけを要求する。そのほかいろいろ附帯條件がありますけれども、そういう要求がありました。前回の協定は、坑内日額にして三百四十三円、坑外二百十六円という額であつたのであります。要求書が出ましてから交渉が始まつたのは一月の半ばであります。尤もその間期末手当の問題、或いは労働協約問題等を毎日のごとく折衝いたしておりましたため、組合側といたしましても賃金交渉に十分打ち込んでこれを進めるということは困難であつたのであります。私どもは大いに受けて立とうという立場におりましたので、やりたかつたのであります。そういう事情であつたので、一月の中頃から漸次交渉が進展して参つたのでありますが、なかなかどうも熱が上らんと申しますか、外廻りばかりしまして中心になかなか入つて行けないという事情にありました。これはどういう理由かと言いますと、ほかの炭鉱会社の、大きい会社組合のお附合いがあるのであります。四社共鬪と言いますか、共同鬪争の形であつて、そういうところでお互いが手を組んで行こうじやないか。こういう協定ができたのでありまして、そのために一社が抜けがけの交渉もできない、常に相携えて同一歩調で進むというような形になつておりますので、例えば私の会社だけで労資が非常に早く交渉を進めて行くということは、実情において困難だ。それからもう一つは四社共鬪においても同様でありましようが、私どものほうの組合自体も非常な大きな要求をしておりましたが、実際はどこできめるかというきめる度合、それについても何らの考え方も持つていなかつた。一言にしてはそういうことに私は観察をしておつたのであります。どこできまるかということを、結局は会社側から搾るだけ搾つて最後に四社で眺めて見て、四社の組合で眺めてこんなところか……、それからだんだん交渉を続けて行つて適当なところで手を打とう、こういう見通しのように我々は考えたのであります。それでこれでは我々はできるだけ早目にいいところで解決したいとは考えておりましたけれども、やつぱり條件が熟さないと交渉ことはうまく行かんのでありまして、私どもは時期を如何に熟さしめるかということについて非常に苦慮しておりました。それから最近の期末手当の問題でもそうでありましたが、最近の要求事項については、相当大きな問題につきましてはストライキを……、かねて何日からストライキに入るぞ、それまでに色よい返事をしろ。こういう建前に、合いずれの交渉もなつて来ているようであります。今回の場合も数日間を置いて、たしか三日でありましたが、三日に団体交渉の形におきまして、どうも会社側の言うことは我々は全面的に不服である、で七日から行動の自由を保留する、こういうことになりまして、而も七日から争議に入るぞ、こういう通告も受けたのであります。まあ簡單に言いますと、非常に早くからストライキに入るということを呼びかけて、どうだどうだということであつたのでありますが、これは従来の事情から見ますとそういう場合にストライキに入る前に、適当に手を打つてくれるだろう。又手を打つほうが我々としても結構だろうという考え方もあつたのであります。併しながらさつき申上げるようになかなか妥結度合というものが見通し困難である。それからまだ成熟しない。それからストライキに入つてもこれはどこまで行くかわからんが、適当な解決方法はあるだろう。こういう見通しでその間団体交渉という形式ではないけれども、適当に接触を保ちながら交渉を続けたのでありますが、不幸にして七日から入つちやつた。その間我々といたしましては、いろいろの施策を似ちまして提案をしたのでありますが、さつき申上げるような見通しから一顧だにしなかつた。こういう実情であります。私どもは昨年の期未手当をきめました際に、新賃金につきましては、構想といたしましてはできるだけべース・アツプをしよう、それから又諸般の観点から増收を図るように策定しよう、こういう約束をしてあります。その約束に基きましてべース・アツプもし、それから又増收を図ることに案を出したのであります。その案につきましても一顧だにしなかつた、こういう関係であります。それから七日からストライキに入りまして、その間も我々は常に接触を保ちながら、早く妥結するように努力をして来たのであります。そこで鉱山会社はほかの会社に比べまして、ちよつと今回は特殊性があつたのであります。と申しますのは、昨年のレツド・パージ以後経営が非常に困難である。レツド・パージ以後は出炭は月約五十万トンくらい出しておりますが、五十万トンを捌くことが漸くであつて、それ以上の増産は到底困難であるという客観情勢一つある。それから今の炭坑の施設で一人当り何トンを掘り得るか、こういう常識的な能率というものが一応考えられる。そうした場合にその一定の能率で以て定められた五十万トンというものを出炭するためには、人が何人いたらいいかということは、一応算術的に出るわけであります。多少いろいろ條件はありますけれども。そう眺めた場合に約八千五百人くらいの人が冗員であるという結論が出るわけであります。この冗員をどうするか、これは私ども幾ら業績がよくなりましても冗員を貯えて、そうして経費が、いわゆるコストが上つて石炭の値段が高くなつては恐縮でありまして、従つて冗員は解雇しなければならん、こういう立場におきまして如何にこれを処理するかという問題を考えたのであります、一番手つ取り早い方法といたしましては、これは企業整理であろうと思うのであります。併し企業整理はなかなか混乱を招きまして、又労資関係もなかなか厄介なことになりますので、一応の案といたしまして、退職者を募集しよう、こういうことを考えたのであります。そうして通常の退職手当のほかにプラス・アルファを差上げることによつて、何人か希望者は退職して、勇退して欲しい、こういうことを考えて、労働組合との間に協定を作りまして、その協定の下にそういう施策を推進したのであります。大体我々の考えでは三千人乃至よくて四千人くらいの勇退者があると、かように考えておりましたが、次に来たる企業整理を非常に憂慮してくれたかと思うのでありますが、結果におきましては一万二千数百名の人が勇退したのであります。そういう特殊の事情があります。その結果非常に穴があきまして、要所々々に適当な人を配置転換をしなければならん。それから又人に代るのに優秀な機械を以て置き替えなければならん、いわゆる高能率高賃金に早く移行するように努めたのでありますが、一時一カ月乃至は一カ月半は多少操業の上には混乱を来たしたのでありますが、幸いに一月の半ば以降二月になりましてからは、殆んど一万数千人がやめましたけれども出炭を維持しておるような状況にあるのであります。このためには相当大きな施策考えて来たのであります。人のほうも多少やめ過ぎたので、特別な縁故者だけを募集して入れた。こういうこともあるのでありますが、それで約二千人の人をカバーして、差引き一万人の人がやめた、こういうことになるのであります。それで一万人の人がやめたために、一カ月幾ら浮くかという問題でありますが、約一億三千万円の金が浮くわけでありまして、労働組合諸君といたしましては我々は協力して、そうして而も出炭相当つておるのじやないか、そうすれば手取賃金は……一億二、三千万円のものは余つてしまうのだから、我我に配分していいじやないかという考え方がそこで起るわけでありまして、私は当然だと思います。ところが、それはさつき申上げるように、人の代りに機械を置き、それからいろいろの新らしい施策を行う、こういうことによつてこれをカバーして行くのでありまして、その余つた金が全部労賃のほうに廻るというわけにはいかん。而も今まで石炭鉱業は非常に哀れな状態であつた資本を食い潰して来た、こういう状態であつたのであります。なかなか施設を完備して行くということが困難である。いわゆる採掘現場だけを整備するというほかに、坑道の掘さくを着々やつて行かなければいかん。その金が十分出なかつた。こういうような関係で、非常に不十分な状態操業を続けて来ておつた。こういうような関係もありますので、そのほうにも相当金を廻さなければならん。それから更にいろいろの物価が、例えば鋼材にいたしましても、爆薬にいたしましても、坑木にいたしましても、相当はね上る。このために相当の金を注ぎ込まなければならん。月額にしまして、我我会社で約五千万円の金を投じなければならん。それからさつきの機械を置き替えるために約五千万円をこれに注がなければならん。それから退職手当を十四億五千万円ばかりのものを出す。これをいつ如何にして償却するかと、こういう問題があるわけであります。そういう問題は今後の問題でありますが、一応組合側といたしましてはそういうまとまつた金があるから、これはよこせと、こういうことが考えられまして、ほか様よりも熾烈な要求が行われたと私は考えておるのであります。それでその点は我々もわかる。従いましてさつき申上げました昨年の暮の約束に基きまして坑内外とも相当増收を図るごとく第定しよう、又ベース・アツプもしようと、こういうことで施策をいたしまして折衝を続けたのでありますが、途中いろいろの問題がありましたけれども、十七日の朝漸く解決したのであります。その結果といたしましては基準賃金的なものとして考えた場合に、昨年の六月から十月までの五カ月間の実績平均から見まして、今度きめました協定能率が約一〇%上るだろうという見通し、これは確実に上るだろうと私は考えております……もつと上ります。そういう前提の下に計算をしましたいわゆる基準的な賃金におきまして坑内夫が前の実績は一万二千六百六円であつたのが、一〇%上昇した場合の坑内夫が一万四千三百五十三円となる。坑外従事員は同様に八千二百五十円であつたのが九千四百八十円となる。全坑夫平均で行きますと一万五百六十七円であつたので一万二千六十三円となるだろうと、こういう見通しでありまして、ベース・アツプもやり又賃金の増額も図つたという結論に達しましたので、我々としては石炭鉱業の非常に貧弱な経営状況であるけれども、今申上げました相当の金を浮かした、一億二、三千万円の金を浮かした中から大幅に、この金は六千万円以上になると思います。その金をとにかく労働賃金のほうへ優先的に廻したのだ。従つて組合員諸君も大いに、これで一つ了承して下さいと、こういう考え方を私どもつておる。併し今の金額はこれは坑内におきまして二十二万、坑外におきまして二十五万、これは出勤率も非常に高い場合にです。そういう出動をいたしまして能率相当上げた、こういう場合の算定であります。併し私はそれだけの出動もやり又能率も上げてもらうということによつてのみ、我が社の石炭鉱業というものがどうやらやつて行けると、こういう今立場にありますので、これはこういう労働協約を作りました以上は、彼らにも責任を持つてつてもらう、こういうように私は期待しております。大体これだけにいたして置きます。
  6. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは最後に、北海道炭鉱汽船株式会社労働部長深谷二郎氏にお願いいたします。
  7. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 最終まで争議が続きまして、社会皆さんに大変な御迷惑をおかけいたしましたことにつきましては、心からお詫びを申上げる次第でございます。  先ず第一に、当社客観情勢がどういうふうな推移の下にあつたかということを簡單に申上げます。それは御承知の通り北海道炭鉱労働という問題は、終戰後極度の共産党の指導によりまして相当熾烈なる運動が展開されまして、これが昨年のレツド・パージによりまして当社におきましては他社の率から申上げますれば、最も多い数学が……これは皆さん社会の趨勢で、これが大体において労働組合のほうにおきましては円満に推移いたしまして、その後約四年間に亘るところの団体交渉の結果、他社にもまだ全体的のまとまりのないところの労働協約が、昨年の十二月に目出たく調印を見たというところにおきましては、労働組合会社側考え方が、戰後の熾烈なる反対の現象から安定の空気に移つて来た。これは私らは誠に喜ばしい現象思つてつたのであります。それに引続きまして今次の賃金交渉は昨年の十二月末に第一回が持たれまして一月に推移したのであります。そして労働組合並びに会社側幹部の基本的な考え方といたしましては、この問題を円満に解決しようという基本的な精神が確約されておつたのでございますが、又山元に流れるところの空気というものは相当レツド・パージの出血もある関係上、鬪わざる民同に対する空気を一回清算しなければ、今の組合が今後の基盤に立つて、大地に足をついた発展がなかなかむずかしいというような空気は、これは相当なものがございました。例えば組合大会におきましても、昔は会社側に、組合員で何かストライキ等はやめるべきであるという者は、それは犬という言葉を似て表現されておりましたが、レツド・パージ後の組合大会におきましては鬪わざる民同というもの、今の幹部がこれを最も苦慮していたとうような情勢がございます。これをやはり団体組合運動の上から如何に是正して行かなくちやいかんか、そういうような空気は絶えず私らも憂慮していた問題でございます。なお今次の賃金交渉で、私は最も不思議に思いますのは丁度当社事情だけを申上げて恐縮でございますが、当社におきましても経営相当苦しくなつて参りまして、かねて二年前から問題になりましたところの手塩鉱の廃止の問題、この両方の問題でいよいよ具体化されるところの問題になりまして、東京暫らく一月から交渉をいたしました。その一月七日から東京手塩鉱の廃止問題について団体交渉を持ちました。これがなかなか結論に達しないので、私は一月二十日頃又北海道に呼ばれまして、この交渉をまとめて二月の四日に歸つて参りました。その間に全体的の賃金交渉がまだ話合いをしておりますが、これはなかなか他社との関連もありますので、この解決の点まで行つていない。で私が帰りましたときにおいては、七日から共鬪の無期限ストをやるという通告が来ておるので、私は直ちに呼んで、まだこの案の交渉は熟していないじやないか、僕が歸つてから一度もやらんじやないか、まだ会社に案もあるから一つやろうということを言いましたけれども、そこはなかなか客観的な四社共鬪というような形で、それを説き得なかつたのであります。そして私の考え方といたしましても、まあ四社共鬪という炭労の線がいい、組合運動の炭労の線が伸びて行くということは、結構でありますけれども、併しながらこれが長期化すると、とんだ所からこまが出ると、これはお互いに国家的な線において自省しなくちやいかないというような関係でよく申上げました。又一つには今度の労働組合は当初におきましては今度の賃金交渉においては折角労働協約もできたのであるから、ストライキをやめろ、するんでない、ストライキをしないで、交渉に入れというような指令を以て、この四社共鬪に出ておつたのでありますが、これはなかなか……、四社共鬪の中に入りますると、山元の決議とは反対の方向に走らざるを得ない状態に陷れられたのであります。それで山元における我々はお前らの代表にはストをやれという権限を与えなかつたと、非常に批判をされて個々の共鬪というのは相当窮地に陷つたものでございますが、これは一応組合の代表が、やつた以上は止むを得ないということで、三日、その後の私の組合事情を申上げまして甚だ恐縮でございますが、実際のことにおきまして、組合においてそれならば三日だけは与える、三日以上はやつていかんというふうな実情にあつたのございますが、これもやはり炭労の組織を割つちやいかんという問題のために、遂に月曜まで延びてしまつた。その間において山元においては我々と違うのをやつた。それだけやるならば最後まで三井の線までは取れ、取れなければ承知せんぞというような空気が山元に漸次擡頭しまして、今後はストライキの期間が延びるに従いまして、山元は強くなるし、こちらのほうの代表というものは数次の団体交渉を徹宵でやりましても、なかなかまとめきれないというような状態でありまして、その途中におきまして、こちらが賃金交渉委員長と私個人との間において意見が一致いたしまして、三井の交渉がまとまる二日前に私個人とこの代表の意見がまとまりましたのが五時でございました。八時から九時までに正式の調印をしようと言つて委員長が帰つてつたところが、山元の代表が来まして三井と同じ線まで取らなければならんということで、折角の九時にまとまるという個人のあれがぶちこわされてしまつて、遂にこのような長期の問題になつたのでございます。而もこの後になつてからの、この賃金問題の今後の論争は、皆さんにおいてはもう御承知と思いますが、標準作業量の問題について論争されたのでございます。これは標準作業量ということになれば御承知と思いますが、三十三年の十二月協定のときにおきまして、二十三年の六月から九月の一〇%増しというものが採炭夫の標準作業量、これが当社におきましては、これは私は経営者側も少し責任は当然負わにやいかんと思いますが、今日までそれが維持されないでおつた。一七一%という標準作業量というものに上つている。ところがここにおいて会社側におきましては一七一%まで上つておるということは、経営努力によるパーセンテージが相当あるんだ。労働者諸君の努力もあるかも知れないけれども、少くとも二十三年の十二月当時におきましては、労資の間というものは必ずしも均衡のとれたところの形に、殊に北海道においては残念ながら私はないと思われる節が相当あるのでございます。そういう点から申しまして、この場合におきまして、ほかの賃金水準を上げる上におきましても、あるべき能率に改訂するのが当然である。むしろ今までは取過ぎていたという観点が当社においては相当あるのでありますが、この点においては皆さんと私らは了解し合わにやならん。炭鉱において坑内外夫の賃下げなどという、收入が減るなどという馬鹿なやり方は、これは本当に石炭経営をする上においては、利口な手でないことは誰でもわかつておることでございます。併しながら坑内外のやはりバランスということも考えなければいかん。而もそれが正当でないということであるならば、而も全体の生活水準というものを維持しようというためには、ここで是正するのは当然である。その点の理論においては組合も同一意見である。ただ問題は、併しながら今までもらつておるところのものから割かれるのは、減る形になるのは困ると、これが終始最後まで付きまとつた論議でございます。これが併しながら、成るほど当社におきましても十七炭鉱がありますが、この十七炭鉱のうちの大体もう十以上のものは今度ので決して賃下げになりませんが、四つか、五つのものが標準作業量が五〇%までになつてつて、そのままの形でこの賃金を組みますれば……夕張炭鉱というものは当社におきましては、これはどうしても当社の中枢でございます。夕張の採炭夫の賃金とほかの五〇%というところの賃金組合せれば、今度は片方が非常に行過ぎております。これは経営者にも責任は私は当然あると思います。割引しても一五〇にもなつている夕張その他のずつとやつて来ている所の賃金と、その五〇にもなつたところの賃金と、組んだ瞬間において五十円以上の開きが出る。これは全体的にいえば、今までの取つていたものから多少下るということはいけないことでありますが、併しながら全体の、北海道だけに事業地があり、すべて一つにまとまつているところにおいて、折角の賃金交渉が今までより減收ということでまとまりましても、今度は同じに働いて、而も会社に一番貢献しているところの夕張あたりより、ほかが高くなるというふうなことになると、組合だけは今までの收入を確保するというとこにおいて意見が一致しましても、必ず内部の組合が馬鹿臭いという気持が起きて来るのは、前にもあつた例であります。そこで会社におきましては飽までもこれは全体の企業努力によるところの能率の上昇というものは当然見なくちやいかん。而も今後におきましては十分上つて行く見通しがある。彼らも上つて行く。それで当社におきましても一—三月だけは今までの形を認めてやるが、四月以降においてはあるべき姿に是正して、この難関を突破すべきであるというところに論議が盡きまして、最後におきましては当社はちよつと四月以降におきましては賃金の面におきましては一%ばかりに下りましたけれども、これを回復するために四月以降においては七—十二月の標準作業量の一〇五%をお互いの責任において一応これを確保するという確約ができまして、今度の賃金交渉が遅れましたけれども、この遅れましたのは日数は三日遅れておるような形でありますが、波状ストでありますので、三日だけ当社は遅れまして、昨朝お互いに組織組織が、私も組合員最後交渉を五日間全部徹夜で通して、昨日の午前の五時頃に話がまとまりまして、八時に仮調印をしたというような状態であります。  なお一言附加しておきたいことは、今度の交渉におきましてこれだけの、十日以上のストが続行されましたけれども、山元においては曾つて争議のときに見られないところの平靜さで、少しも政治的色彩がこの相当十何日に及ぶ争議にも起きずして、冷靜な態度で山元が経過できたということは、今次の交渉の私は特色ではないかと存じます。  大体簡單当社事情を申上げました。あとは御質問にお答えいたします。
  8. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは御三人の参考人の御意見に対しまして御質疑のございますかたは御発言願います。
  9. 原虎一

    ○原虎一君 御三人の説明を承つたのですが、御三人の総合的な御説明から受ける印象と言いますか、感じというものは、早川さんの御発言によりますと、交渉が今度は自主的に解決した、自主解決をしたということです。我々はお聞して今後の立法上参考になる点を判断して行きたいと思います。問題は労働争議というものが争議に至らずに、自主的に解決するということが一番望ましいわけですね。ところが今度は争議になつてから、而も第三者或いは法律に基く調停機関のようなものの出動を望まないというようなことが言外に出ているのですね。これはどこに原因しているかということをお伺いしたいのです。
  10. 早川勝

    参考人早川勝君) 私から申上げます。今原さんのお尋ねの点でございますが、私どもとしても別段法律によつて設けられておりますところの調停機関を信頼しないというわけではないのですが、ただ先ほど私からも申上げましたように今度の争議一つの形の上の特徴として、十分に双方が論議をして、問題点、主張の食い違う点を明らかにして、それが鬪争の姿勢となつて突入したストライキではないのですから、非常に幅のあることで、どういう事情か、私の推測のような事情か知りませんが、組合ストライキを始めた。その段階において第三者の調停ということは私としてはむしろ問題が長引くばかりだ、例えばそこで成る種の調停機関に諮るということになりますと、もう一度一月の始めのような状態に戻つて、そうして鉄砲を並べてどんどん撃ち合いつこが始まるという状態に還る。それよりもむしろこういうふうに問題が始まつた以上は、ストライキそのものは好みませんけれども、その中で收拾して、両方が押して行くということのほうが早道であるという、こういう考えが第一でございました。もう一つの点は、これもさつき申上げましたが、双方が自主的に解決したほうが、あとで非常に双方の気持がいい、今も申上げました、ように、そういう状態で何ら社会混乱を起すというか、或いは感情的なもつれというか、そういつたものは全然なしに経過しつつある争議でございますので、これを我々の自分の力で処理するということのほうが結果において非常にいいのだ、こういう判断でございます。まあこれは戰略、戰術に関係があるわけでございますが、双方とも戰力というものの測定をいたしてストライキというものは始まると思います。それから考えましても、私どもは一定の見通しを持つて、これに向つてつたわけであります。ただその調停機関というものが何でもない場合に出て参りました場合には、これは却つて問題を複雑にしてしまつて、そこへ寄りかかつて行くような空気が当事者の間に出て来るということがあつてはまずい。むしろ私自身調停機関的な立場から仮に言うことを許されるならば、双方が成る程度相撲をとり疲れるとか、或いは片方が成る程度つて来るとかという段階などにおいて、始めて調停機能というものが達せられるのじやないかと、こう思うのでありますが、事実成る時期において中労委関係のほうから私にお話のあつたこともあるのでございますけれども、そのときにはむしろ問題を複雑にするよりも、もう一度御考慮を願つて、もう少し先にして頂いたらどうであろうかということを、私からお願いした事実はあるのでございます。そういう事情で私ども自主解決という線で出発し、自主解決という線で終つたというわけでございます。
  11. 原虎一

    ○原虎一君 具体的な問題でお伺いしたいのです。北炭は労働協約を結んでおるのですか。団体協約を結んでおるのですか。
  12. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 団体協約は昨年の十二月に四年越しの経過を辿りまして協約が成立いたしました。
  13. 原虎一

    ○原虎一君 四年かかつたというのは、この一番の論点はどこでございますか。
  14. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これはやはり経営権と労働権の問題でございます。
  15. 原虎一

    ○原虎一君 経営権の問題ですが、経理の公開と言いますか、そういう点はどの程度までおやりになつているのですか。
  16. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 経理の公開でございますが、このことにつきましては組合の必要に応じて、経理の人間が出まして懇切丁寧に御説明をするということでございます。
  17. 原虎一

    ○原虎一君 早川さんにお伺いしますが、あなたのお役目というか、お立場から言うと労働組合意見を聞きますと、炭鉱労働組合労働協約を結んでいることは稀れだと、こういうように労働者は言つておりますが、どこに難点があるのですか。
  18. 早川勝

    参考人早川勝君) 実は労働協約と申しますか、あの総則各論を持つてちやんと体系的になつた労働協約を作つておる所は実は少いのであります。少い事情は一昨年の夏頃までは大体割合に行き渡つてつたのでございます。併しながらあの法律の改正と共に期限が切れまして、それで無協約状態が一応出ておるわけでございます。一昨年の五月ですか、法律が変りました際から無協約状態になつておる、それまでは相当の協約があつたわけです。ところが、その後組合会社側との間で労働協約についての交渉、折衝が行われておるわけでありますが、なかなかそれがまとまらない。なぜかと申しますと、組合側の主張する点はともかく、或いは点というよりも態度は、前のように序論、総論、各論で組立てられたような綜合的な法典のような労働協約を主張して、而もその中には、それまでに盛られておつたところの内容というもの、既得権というのですか、全部普通それが網羅してある。ところがそれは全石炭系のものにつきましては、いわば今その組合はございませんが、当時の全石炭系のものにつきましては、それは差別の指導によるというような形になつておりまして、その無協約状態の中で新たにこしらえます際には、どうもそれ自身は余りに大がかりのものになつてしまつて呑みにくい。それで各経営者は、私のほうで特に指導したわけではないが、各会社経営者はやはりやれるものからやつて行こう。例えば賃金の協約にしても、又は休暇休日の協約にしても、雇入れの手続にしても、又解雇の基準にしても、そういうふうにきまつたものでなしに一品料理でやろうという傾向が強くなつた。事実その方針につきましては、だんだん進んで参つておりまして、それがだんだん集大成されて本当に完全になつたものに井華鉱業がございます。ここにおられる三井鉱山では人事、解雇基準の問題等につきましても正々堂々と協定を作つてやる。それがだんだんに植えて、範囲が広くなつて、又協約でなくて一つの慣行ができて、双方が納得し、このほうがよいという問題が事実上でき上つた。それが協約とか、こういう方向に進んでおりまして、これは末弘、中山両博士も昨年夏頃からそううい指導を一般にやつておられるように聞いておりますが、私もそれのほうが実際的ではなかろうかという感じを只今は持つております。
  19. 原虎一

    ○原虎一君 北炭の深谷さんにお伺いいたしますが、四年間揉めた労働協約、その原因は経営権の問題が一つ。そうすると、北炭ではこの問題はどういうふうな線で妥結しておるのですか。
  20. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 私らの今までの労働協約は二十二年の真盛りにできた労働協約、これはもう非常に天下から非難されるようなお恥かしい労働協約でありましたけれども結論は物事を今までは労働組合の了承がなければ、人事の異動も何もできない労働協約であつたのであります。今度はお互いに協議する。協議はするけれども、それが駄目な場合においては紛争処理機関にかける。それと同時に、紛争処理機関でも駄目な場合には一応会社側がその人事を行うのだ。会社のあれによつてそれだけの手続をやつたあと会社方針でやる。それに不満があつた場合には紛争処理にかけて、その紛争処理が駄目な場合には、もう最後には彼らの労働組合が持つておるところの最終の権限を発動するというふうなところでまとまりまして、これは私自身が三百何回の団体交渉をいたしました。
  21. 原虎一

    ○原虎一君 紛争処理機関は労資間の承認するものでやつて、いわゆる私的に作られているのですか、いわゆる労働委員会にかけられているのですか。
  22. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これはですね、私ら先ほど争議のときでも自主解決というものが唱えられていましたように、当事者のあれは、先ず自主的に考えるのが当然であるというので、この人事の問題、人事権とか、こういう経営権の問題につきましては、双方で必ずこれはまとめるんだという基本原則を両方で確認し合いまして、そうして第三者を入れないところの紛争処理機関にいたしまして、これについては各方面に、どうせ自分らでまとまらんことならば、自分らだけではできないじやないかという議論も相当ありますが、何かこの人事権やなんかで、第三者にそういう経営権を委ねるということは、この本来の観点からどうもまだ割り切れんものだと考えられますので、とにかく両方において、この問題については両方で一つ必ず解決するということを基本原則で確約して、いろいろな三段階に亘る紛争、自主的な紛争処理の方法を決定したわけです。
  23. 原虎一

    ○原虎一君 重ねてお伺いしますが、労働協約の中の賃金問題に関する條項に、能率の上昇によつてやはり賃金がスライドして行くという協定はなかつたのですか。
  24. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これは低額者につきましては、もうその期間が、賃金協定期間というものは、そう長くございませんから、ございません。但し請負業者というものは、賃金能率の上昇によつて一つのカーヴを以て上るという一つ協定になつております。
  25. 原虎一

    ○原虎一君 三井さんのほうにお尋ねしますが、大体今度問題が起きましてから、両者の折衝というものは、回数にいたしますとどのくらいですか、ストライキになるまで……。
  26. 山本淺吾

    参考人山本淺吾君) それは正式の団体交渉という、いわゆる角ばつた、相対峙してやつたというのは五回ぐらいのものです。個々にいろいろ折衝した……、これは私は一つ団体交渉だと思うのですが、数十回に上つております。
  27. 原虎一

    ○原虎一君 その数十回、昨日北炭の組合の代表に聞きましたが、北炭では六十回近く折衝したと言つております。事実回数がどういう形のものを入れて六十回になつたかは別といたしまして、相当折衝を行われておつたようですが、この点はどうですか。
  28. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 私らのほうは、私が殆んど交渉しておるんですが、丁度ほかの問題で僕がおらなかつた期間もありますが、今度のストライキに入るまでは、とても私らのほうはそういう回数はやつておらんのです。殆んど、私はどうでしようか、二回ぐらいか私は出てないと思います。最後には僕が帰つて来て、まだ会社の案もあるから、これをまだまだ君やろうじやないかと言つても、まあ私らの四社共闘のあれもあるから、而もそのときはつきり私に言いまして、私のほうは三井にしても十回やるべきであるという案を出したんだ。十日までもう少し……、あの日は四日でありまして、十日までは我々はもう少し精力的に交渉して、十日になつてもきまらん場合はストライキをやろうということを言つたけれども、そのときはここに山本さんもおいでになつて恐縮ですが、三井さんのほうは四日からやろうじやないかということで、それだけ進んでおつたのかも知れない、それで中をとつて七日ということになつた、これは事実です。私自身においては、鬪争においては、まだ団体交渉も今度……私狐につままれたような感じでおるのです。まだ会社案を出すんだと言つておるにもかかわらずストをやるということは変だ、さつぱり僕は、実は今度の交渉を予定五日ぐらい前から始めて、今までのような最後段階交渉で入つてつたようなぎりぎりのところまで行つたような、その辺ストライキをするならストライキをするという意味もわかるけれども、どうも今度は解せない点が私だけかも知れませんがあるのでございます。これがやはり四社共闘という、四社共鬪であるにかかわらず、而も賃金案というものは、各社交渉でありますから、各社事情によつて多少違う。併しながらただ大手筋というものに囚われておるところの、一つの今度の争議の特色じやないかと思われます。
  29. 原虎一

    ○原虎一君 そうしますと、まあ北炭における労組側の折衝の回数と、あなたの言われるのとは大分違つておりますが。
  30. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これはちよつとお話中ですが……。私自身は空いておりますから、ほかの人間が交渉はやつても、やはり十遍やそれくらいはあると思います。
  31. 原虎一

    ○原虎一君 私はそういう回数の細かいことをお聞きするのは、折衝、交渉にどれだけの熱意があつたかという問題で、交渉を重ねておられるのに、何回も交渉をやつておられるのに、まあ妥結最後案は九十何円というものが引上げられているようでございますが、その間に出て来るものは、五円とか、十円とか、二十円程度のような折衝の過程があつたように聞いているんです。で、その間にあつて折衝するというだけが問題でなくして、経理上から納得せしめるという問題、労働者側に納得せしめるという問題、従つて経理上から数字的にどの程度しかしげられないというような問題、こういうものが、十分責任ある人たちが折衝されておつたのかどうかということについてちよつと疑問がある。今の深谷さんのお話によりましても、失礼ではありますけれども、労働部長のあなたが責任を持つて折衝されたようにちよつと感じたんです。事実はどうなんですか。
  32. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これは表面の形は私があれでやりますけれども、絶えず全重役があらゆる検討を加えて、必ずその後におります。それから重役も出ております。
  33. 原虎一

    ○原虎一君 具体的に申しますと、組合の代表と折衝される場合におきまして、会社側としては、会社の代表の立場としては、どういう地位のかたが出られますか。
  34. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これは常務も出ておりますし、それから必要のときにおいては会長も出ております。それから常に重役も出ております。それからこの交渉委員長は私がなつております。
  35. 原虎一

    ○原虎一君 私どもがまあ今度の争議を見て、又皆様がたの陳述をお聞きいたしまして、こういう点が看取されるのでございますね。具体的に申上げますと、御三人とも言われておりましたいわゆる民同としての炭労、これがいろいろな点かち批判を受ける。例えば昨年の争議の、或る意味においては失敗ということの批判を受けて、鬪わざる民同として不活撥だという批判を受ける。従つて今度は組合側争議をやらなければ收まらないのだ、こういう見通しの上に立つて、あなたがたはこの問題の対策を立てられたのじやないか。戰術を立てられたのじやないかということを、昨日から私は組合側意見を聞いて見ましても、今日御三人のお話を伺つても、率直に申しますとそういう感じを受ける。そうでないならば私はやはりこういう時局重大なときに労働組合ストライキをやつて、あれだけの賃金を上げ得たことが組合組織確立にはいいと考える人もあるかも知れませんが、そこまで至らずして調停機関で解決ができたら、なおよかつたかも知れないという考えはできるのであります。それは労働者の利害関係ばかりでなしに国家的、社会的から見てそうなるわけです。我々微力ながら立法に関係いたしておる者としては、なぜこれがああいう大きなストライキ、二十万からの者がストライキをやることが少くとも中央労働委員会にかからずして行われるということを、如何に自主的折衝で、数日間の罷業で済んだということは幸いでありますけれども、それだからあれで完全だとか、あれでいいのだということにはならない。どこに法的欠陷があるか、或いは中労委というものの運営に欠陷があるのかということを考えなければならない。どうも先ほどから伺つていますと、今度は民同労働組合側は何か一遍やらなければ解決せんのだから、決して初めから妥結点の案を出してはいかん、やつてからぐつと案を出して解決したほうが早いのだ。こういう戰略があつたと、失礼ですけれども玄人筋から見れば見えるようなところが多多あるのじやないかという感じを受けるのです。それならば私はこれに対して御証言を求めようとは思いません。私どもは昨日も労働組合側諸君意見を聞いて見ましても、第一に労働協約が十分に結び付いていない、それから経理の公開に信頼が持てないという点がある。組合側としては確かにそれがあるのです。それから炭管法によらなくて、経営参加で形の上においても弱くなつておる。あつてもなきがごとしと、こういう点があるということなんかも起因しておつたと思いますが、結論的にはどうも私が今申しましたように、鬪わざる民同という批判に対して、労働組合は戰うのだという一つの威力を示すのだということの見通しを付けられての戰術が立てられたのじやないかという気がいたしておるわけです。これはやはり私は、そういうことのないように将来中労委の権威を一層つけることに、お互いに考えなければならないのじやないかというような気がいたしましたわけであります。これはお聞きするというよりか、私どもの六感で申上げておる次第であります。
  36. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ほかに御発言のかたはございませんか。
  37. 片岡文重

    ○片岡文重君 片岡でありますが、遅く参りまして大変恐縮でございます。三井さんのお話の途中から私伺いましたので、或いはすでにどなたからか御説明があつたかと思いますが、先ほど北炭でおつしやられた政治的背景がないということが、今次ストの特色であるということを強く御指摘になつておられたようですが、この点は全部今度の争議に参加された山について然りということが言い切れるでしようか、どうでしようか。
  38. 早川勝

    参考人早川勝君) 政治的という意味にいろいろございますが、もとより制限をいたすというつもりは最初からどこの労働組合も持つていないと思いますが、えてして今までの争議で、問題を解決しようとか、收拾しようというために、実力行使をやるグループの人と、社会混乱を起す、或いはいろいろなごたごたを起そうとする、長引かそうとする目的を持つておる人が事実あつたのであります。現在私が当面したこの四社のストについては、この後者のほうは全くなかつたということであります。そのことを政治的の意図はなかつたということでしたら、それは共通いたしております。
  39. 片岡文重

    ○片岡文重君 次にお伺いしたいのは、何か先ほどの北炭の御説明だと、能率の上昇しておるのは、組合側ばかりではない、つまり労働組合ばかりでなく、会社経営をそう改めたことに多分にあるんだ……、それを組合側に提出しなかつた、そういう処置をしなかつたことに経営者側としての責任のあるというようなお話でありましたが、では、会社側として能率を、組合側の協力によることをなくして、会社側経営方法によつて能率の上り得たという、何と言うのですか、措置と言いますか、手段と言いますか、会社側のとられた点、例えばどういう点がありましようか、又どういう問題についてそういつたことが言えるのか、それらの点についてお差支えなければ、多分に経理的な内容に入ると思いますが、伺います。
  40. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 例えば標準作業量を直すための企業費を幾らやつたかということに対しては、数字的なあれを持つて参りませんが、これは相当もう企業費を投じておる。それと同時に採炭方式の改善、施設の増強、それから各種の機械化をやつた。それから今までの機械の事項も減少した。こういうものはパーセンテージにとりまして、これから見ても、これだけの分は一三一、それは当然私は会社にも責任があると思う。というのはそういう施設をやつたときにその都度直して行けば一三一というしわ寄せが来なかつた。それを直す努力が、日常の努力が足らなかつたことは私は認めざるを得ない。その点だけが会社側においても、あらかじめずつと現在までにしわ寄せをしたということは、やはり自分ら顧みて、一三一のうち当然よく説得すれば、努力によつて而も協定の中においても、そういうふうな施設の改善や何かについては五%内外に、両方で協議して直すことができるという協定があつたにもかかわらず、それをやらずに二十三年十二月から現在まで、そのままやつたところに努力の足りなかつたところがあるということで、私は責任はやはり経営者にもあるのだ。これは直しておればもう一二〇くらいまで行つておりますれば、もう一〇%だけは問題になつておるわけです。一三一のうちに直すのが二〇というものがあるとして、直しておれば一〇%くらいは上つておらない。一〇%だけならば今度の賃金の値上りから見て、基準賃金を上げれば、これは今までの收入は、減收という減收は起きなかつたのです。
  41. 片岡文重

    ○片岡文重君 数字その他何というか、検討する具体的なものをお持ち合せがないとしますれば、それ以上お尋ねすることは意味ないかと存じますが、今の通りだと、当然その裏に結局組合側としての協力もいるということは、十分お認めになつておられると思うのですが、そういう場合に機械なら機械を新らしくする、設備を改良するという場合には、したときにはその見込能率について賃金その他について何らか改訂をするという、つまり何と言いますか、表現はわかりませんが、実態能率という点に影響を与えるようなものと考え施策をした場合に、工事を施した場合に、その上つた能率によつて賃金に影響を与えるような場合には、その賃金を公開するとか、或いはそれによつて能率が上つても公開しないのだという何か協定なり、団体協約が結ばれておりませんか。
  42. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) それは当然うういう施設改善の、そういうときには、五%以内においての上つたり、下つたりするのは自主的に改善するという協定があります。それ以上のときには三者協議会にかけて直すのだという協定があるのであります。
  43. 片岡文重

    ○片岡文重君 それは北炭だけですか。
  44. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これは全部であります。
  45. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうもくどくて恐縮ですが、その次に減收となるようなものがあるかのような今の御説明でありますが、これは減收の場合にはやはり別に……、昨日の委員会に私は出席いたしておりませんで恐縮でありますが、減收となつたものに対して、何か会社側として救済するような措置を講ぜられて、これは協定になつたのでしようか、それともそのままで協定されたのでしようか。
  46. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これは一番能率の上つておるのが私のほうでございまして、これは私が一番苦慮いたしたところでございますが、而も今後においては減收もこの賃金を組めば、例えば二十三年度のときに一〇%も上げた賃金、当時三百六十三円の賃金が現在においては四百円にも、五百円にもなつておるわけでありますが、能率によつて百三十となり、それと同様に今度の賃金も改訂すればこれは上がるという見通しを私は持つておるのであります。併しながらそれを急にやつちやいかんというので、一—三月の分は、一つ今までの分は保障してやろう、その代りその間にちやんと君らも会社側一つ整備して減收にならないようにやろうというところに、意見の一致を見たわけであります。
  47. 片岡文重

    ○片岡文重君 ちよつとはつきりいたしませんが、減收はあるけれども、それは一月から今までのやつは、その減收に対しては、例えば支払つた賃金を回收するようなことはしない、ということが一つおつしやられたのですが、それともう一つは、今後の賃金が現在もらつておるよりも、例えば一一〇%の能率なら一一〇%の能率しかない者がおつたとすれば、この人間は今後は今までよりも減收になるか、若しなるとするならばそれに対する救済はどう講ぜられておるか、これをお尋ねいたしておるのであります。
  48. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 四日以降でありますか。
  49. 片岡文重

    ○片岡文重君 そうです。
  50. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 四月以降は減收にならないのであります。それはなるにしてもお互いに両方の努力が足りないのだ、それはお互いの責任で負担しなければならない。
  51. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうもお互いに責任を負担しなければならないというお言葉があるために、減收になるということが裏付けされるような気がするのでありますが、私のお尋ねいたすのは、例えば一三一%の能率上昇に対して、これをべースに賃金が組まれておるからならないという御意見なんですか、それとも、私のお尋ねしておるのはそうではなくて一三一%に組んでおるからこそ、それまでの能率を上げ得ない者は、当然そういうものは数が少くて実質的に減收になるだろう、そういう者があるかないかということをお尋ねすることが一つと、ある場合にはこれに対して措置をおとりになつておられるのですかどうですか、こういうことであります。
  52. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これはなかなか……、ただあなたの言われるのは理論的には今までの一三一が協定で四月以後はないかも知れませんが、ない場合はこれからこういうふうに減收になるのじやないか、すでに炭鉱賃金能率給のあれというものはこれはなかなかそう簡單に、理論で行つては困る問題もあるのです。かなり技術的に見てこういうことの改善をどんどんして、もう今ではどこの会社でも競争の世の中でございますから、坑内施設の改善、組み方、人間の配置の改善とかいろいろどんどんやつておるのであります。そして四月以降になると、私らは四月以降でもう現に、今現在も減收には理論的にはなつても、実際的に減收にはならないという見込を、信念を持つておるのであります。ところがやはり相手があるからなかなか、三月まで保障するということになりましたけれども、四月以降はこういうことで絶対減收にならないようにもうどんどん直つているわけです。ただ素人のかたから見られれば、今一三一%をピークにしたならば後になつて殖えるのは能率が上つたから殖えるのだろうと…、そうでないのですよ。この最近の企業努力というものは、労働者も働く意欲は持つて来ておりますが、この企業努力の改善の方式には著しいものがあるのです。そうでなければ競争ができて行かんのですから……。この努力をただ能率が上れば皆労働者はおれの労働力の向上だから全部よこせと、又それを直し切れない経営のだらしなさもあるということを私は認めております。併し今後はいつまでもそれをやつてつたら潰れてしまいます。こういう施設を改善したからこれだけ直すぞというふうに、どんどんやつて行けば…。それでもなかなか労働者との間でありますから、十要求して行つても七ぐらいにしか、協議するのですから、ならないと思いますが、そういうところから言つても絶対減收にならんという確信を私らは持つております。それと同時に採炭夫、掘進夫があれしたときには、経営が成り立ちませんから、そういうところはよく割り切つていて、而もこれをやつているところにこれはなかなか苦心があるのですよ。
  53. 片岡文重

    ○片岡文重君 それは一三一%というのはですよ。それは少くとも平均なんですね。あなたのおつしやることはよくわかるのですよ。それは今日の企業経営もよくわかりますが、少くとも一三一%というのが平均である以上は、それよりも高く出る人もたくさんあるし、少い者もあるのは当然だと私は思びます。一三一%上げられるのは会社側経営に対する熱意と労働者の協力とによつて上げられると私は思うのです。併しながら上げ得ないものもあるわけですからね。それはお認めになられるでしよう。一三一%は平均なんですね。その前に平均に足らない、而もあなたのおつしやる場合に一三一%ということになれば、例えば一三五%の者は減收にならない。併しそれ以下の者は減收になるということはあり得ると思います。これはあなたのお話を聞くと、そういうふうな数は少いと思います。ですから、数も少いから、そういう面については考慮せんとおつしやられるのか、そういうものは絶対ないという確信はよくわかりましたが、若しあつた場合にはそれに対して会社としては最低は保障するということでおきめになつたのですか。その点お伺いしたいのです。
  54. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) その点につきまして確かに平均ですが、平均で一三一%と言いましたけれども一〇一ぐらいのところからあるのです。それをまとめると一三一ということになつて、まとめないのは一〇一から、或いはその下のものはもので保障して行くというふうになつております。而も今までの見当を加えて行けば、最後に行けば最後に行くほど十二月の能率と十一月と、それから十月九月と、こうやると過去に遡るに従つてずつと上つて来ているのです。平均でならしてその能率を一〇〇にするのですから減收になるわけはないのですが、それで自分が非常にいい能率を上げているのに逆のカーヴになつて来た。今平均をとつたら下るじやないかという議論はできますが、月々こういうふうに上つて来たものを、一つの例外なしにこうなつて来たカーヴを、この中の平均をとつてここで切るのですから、もうそれはここに入るのですから、決して減收にならないのですよ。
  55. 片岡文重

    ○片岡文重君 どうも議論になるようで恐縮ですが、議論ではございませんから一つお聞き頂きたいのですが、この一三一%というのはその年間の最高のものをとつているとおつしやられると、今後もやはりその最高に持つて行くことになるのじやないでしようかね、その点はどうでしよう。
  56. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 一三一というのはこれは七—十二月の実績平均なんですね。平均だから最高でないわけです。而も七—十二月を分析して見ると、七月よりも八月、九月、十月、十一月、十二月と漸次上つて来るのです。この七—十二月の平均をとるのですから、現在においてこの平均から見ればもう上のところにいるのを、平均のところに下げてやるのですから、下らないのですよ。
  57. 片岡文重

    ○片岡文重君 その説明はよくわかりました。それでは仮に例えば故意に怠けているとか、或いは故意に過失をしたとかいうことが原因であつて減收した場合はこれは別です。併しそうでなくて、おきめになつたシステムで減收になつた場合には、会社側としてどういう措置をなさるのですか。
  58. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 一応そのことのカバーについては、今度基準賃金も上りますし、それは一—三月までは会社一つ保障しよう、併しその後についてはそういうことはあり得ないと、又あり得ないように両方で努力するということに意見の一致を見たわけです。それはなぜというとあり得ないから組合も了承したわけなんです。
  59. 片岡文重

    ○片岡文重君 わかりました。では最後にもう一つお尋ねしますが、厚生施設の面について今これは各社のかたにお尋ねしたいと思うのですが、現在お持ちになつておられる厚生施設並びに厚生費にかけておられる会社側経費が、大体例えば病院なら病院で何人に対して病床が幾つあるとか、或いは医師が一人当り何人の従業員を負担しておるとか、或いは経常費にどのくらいのパーセンテージを支払つておる、支出しておるかというようなことについてお持合せございましようか。
  60. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) これは全国では大体一人当り延び四千円くらいになつておると思います。これは私詳しい数字でないのですが、併しこれは北海道に行きますと四千七百円から五千円近くも一人当りの福利費を会社支出しておるのです。労務費で……。
  61. 片岡文重

    ○片岡文重君 四千五百円……。
  62. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) 四千五百円から五千円の間です。
  63. 片岡文重

    ○片岡文重君 それはもう例えば病院とか、クラブだとか、浴場だとか、脱衣所そういつたものを一切ひつくるめておる経費ですか。
  64. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) それで北海道へ行きますと、焚料炭がこれは大体年八トン要るわけです。一人当り八トンくらいの焚料淡が北海道では必要なんです。それで会社は八トンはやりますが、その八トンの値段の一トン当り九十銭か一円でお話にならないような、そのあとの差額は全部会社で負担しておるわけです。そういうものとか、電燈とか水道、それから寮の賄費の補助とか……。
  65. 片岡文重

    ○片岡文重君 一切含むわけですね。
  66. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) ええ。それから、労災保険ですね、それから失業保險、健康保險の負担や何か一切を含めますと、月一人当りうちの会社で四千五百円から五千円くらいになり、又今度の災害保險のあれを殖やされようとしておるので非常に心配しておるのですが、あれなんぞどんどん殖えて来てちよつとほかでは見られないところの福利費……、実際の賃金は幾らに見るべきかというと、今度の協定賃金プラスの北海道手当、今北海道手当交渉をしております。今までで七百円だつたのを去年まで六百円が七百円になり、七百円を又殖やせという交渉を今北海道でやつておりますが、それだから今度のきまつた賃金プラスの北海道手当、プラスその福利費を足して、それが大体ほかの産業と見合うのです。ほかの産業も大体福利費はどのくらいかというと、千五百円から二千五百円くらいの見当なんです。それを足したので比較をしてもらわなければ困ると思うのです。
  67. 片岡文重

    ○片岡文重君 わかりました。ほかの社でそういう関係について早川さん如何でしようか、御記憶ございましようか。
  68. 早川勝

    参考人早川勝君) それは冒頭で私から申しましたが、北海道については特殊な事情がございますが、大手が二十社くらいですが、大体現状を見ますと一人の坑夫月額二千円乃至三千円はそういう厚生費といいますか、福利費的な支出になつておるようであります。尤もそれは会社支出額がそうなつておるのでありまして、これはもう東京市内におけるものに換算する場合には、もつと高く評価されてもいいのじやないかと思いますが、支出額は二千円から三千円というところが全国的に言われるのであります。
  69. 片岡文重

    ○片岡文重君 冒頭というお話ですが、あとで速記録なりを拜見いたしまして……。終ります。
  70. 赤松常子

    委員長赤松常子君) ほかに御発言ございませんか。
  71. 一松政二

    ○一松政二君 ちよつと伺いますが、石炭の大体の平均価格が、大体これはまあ私の勘ですが、戰前標準、満洲事変が起つてからまあいわゆる日本のあの基準、戰争前の五年とか言いますね、日華事変始まつて以来の値段に比較して見て、三百倍以上になつておるのだと思いますが、これが日本の産業の動力である石炭の値段の高いということが一つの大きな問題でありまするが、その当時と今日とは労働事情なり社会情勢もすつかり違うのですが、その当時石炭生産費に占めておつた労銀と今日の労銀の割合はどういうふうになつておるのですか。これはどなたからでもいいのですが……。
  72. 早川勝

    参考人早川勝君) その当時は労銀は大体コストの中で三五%から四〇%でございました。で一時戰後むちやくちやに膨れましてそのコストの中の六〇%近くのものになつておりました。現存五〇%前後になつて、まあ改善はしつつあるわけです。併し昔に及ばない理由は一人当り出炭能率がまだ低い。言い換えれば人が多いということが言えると思います。
  73. 一松政二

    ○一松政二君 これを大体普通の、まあ普通と言つてもびんからきりまでありますが、大体常識でおぼろげに大体百倍、まあ繊維品などは別ですが、百倍から百五十倍、せめて二百倍程度石炭が落ち付き得る見込がありますかありませんか。つまり今五千円乃至六千円という石炭の鉱床における値段が、まあほかの物価が上れば当然上るのですが、そういう問題を別問題として、このコストの切下という問題が今の資本の充実と機械化によつて、もつとコストの下る見込がありますかありませんか。
  74. 早川勝

    参考人早川勝君) それは設備資本を投入して坑内の合理化を図ると申しますか、いいところへいい機械設備を投入して、最近新らしい方法もどんどんできております。そういう方法を以てすれば私は不可能でないという見通しを持つております。ただそれには時間と金がかかるということが前提になつております。
  75. 深谷二郎

    参考人深谷二郎君) それと同時に私らはコストは、石炭の値段は下げなくちやいかんということを痛感しておりますが、例えば昨年の期本賞与の問題でも炭鉱は千円を出すとか出さないとか大騒ぎしているのに、ほかの石炭を使つて製品を出す製鉄やなんかが一万円も平均に出せるというならば、やはりその炭鉱を……、今度もやはり又すぐ鉄材や何かの値上げで、トン当り百五十円の値上げがもうなつておるのです。そういうものも、一万円も出せるような鉄鋼やそういうものを上げないで、せめて炭鉱と同じように千円のボーナスで苦心をしてもらうようにしてもうわなければ、石炭の値段は当然下げなければいかんけれども、それと引続いてなおこの地下に働いている者さえ千円を而も争つてつており、向うが争わないで一万円ももらえるというのに私は矛盾を感ずるのです。而も又新聞を見ると鉄鋼を上げにやいかん、なぜ上げなくちやいかんかという理由は石炭であると言つておられる。けれどもじや労務者に対する賃金の面から見ましてそういう地上でやるほうがもう例えばボーナスでも十倍の差があつて然るべきかどうか。これは私は非常に疑問を持つておるのです。私はそれから見ればそういうところが一方円も出すならば、石炭の従業員にはまだまだやりたくて、現に地下に入つて、私らも地下に入つておりましたけれども、年がら年中鼻の孔を黒くしている人間には、やはりこういうふうに賃金鬪争では私はお前らいかんというようなことを言いますが、心の中にはまだまだ石炭の作業員には私は考えて頂かなくちやいかん面が国家的にあると思うのです。
  76. 一松政二

    ○一松政二君 深谷さんの議論はこれはなかなか容易ならん問題ですが、これは私も同感のことが非常にたくさんある。この世の中で儲けた人が、人の考え考えないでどんどんどんどんやつている。これは三井鉱山の山本さんお考えになるだろうが、亜鉛、鉛を出しているところのやり方なんかは殆んど法外です。そういう問題、今の深谷さんと同感ですが、まだ三井さんや北海道炭鉱のようないい石炭山を持つているほうは、まだまだ私は昨日申上げたように処理をしやすいのです。炭質が悪くてコストの高くかかるいわゆる中小の山、殊に九州の斤先掘でもやつているようなところは、これはもう今の問題に関しては非常な私は深刻なものがあると思うのです。それで今早川さんがおつしやいましたけれども機械化と合理化によつて日本の石炭能率も上げ、コストも切下げ得るパーセンテージがある。大体四百万トンから五百万トンの石炭が要るとすれば、そのうちの半分くらいのものです。あとの半分くらいは、今の労銀と販売値段、これは少し不景気が来ればこれは一番犠牲になつて売れないのです。その山に働く人及び経営者の問題が、私は今後自由競争になつて来て—番の問題になる。昔から問題でぐるぐる巡りをしているわけですが、恐らく労働組合としても、昨日伺つたところがやつぱり別個の行動をとつておられるようですが、丁度いわゆる中小企業の労働基準法の問題が付きまとつて、そうして而も浮沈の境を行つておる中小企業が、炭鉱には特に私はたくさん目につくと思うのですが、その矛盾をどうしたらいいか、或いは又それはどうすべきであるかというようなことは、日本の石炭鉱業界としてはいつも問題になろうと思うのですが、こういう賃金が四社協定なり、或いは四社の労働組合はそれで獲得した……。四社は大体同じような有力なかたばかりだからおよそ歩調を揃えて行かれるが、これに追いつかない小さな鉱山はそれがために非常な影響を私は受けるのだろうと思うのですが、そういう問題に対して何か御議論はありませんか。
  77. 早川勝

    参考人早川勝君) これは簡單に適者生存だと言つてしまえばそれまででございますけれども、併し現実に一松さんのおつしやいましたように、それで事業をやり、それで食つて行く人が多いのでございます。一口に大きく申しますと、自由経済時代になつて随分炭鉱の体廃止が行われましたが、今ございますところで、小さいほうは運転資金に困つております。それを当面の問題としては世話をして頂かないと、とてもやつて行けんだろうという炭鉱もかなりあります。根本的には今おつしやいましたように、優良な炭質を持つている大きい会社は何とかして切り抜けて行けるということになりましようが、どうしても成る種の保護と言いますか、助成策の要る部分の炭鉱が出て来るのじやないか、こういうふうに見ておるのですが、さて人ばかり頼らずに、自分もやらなくちやなりませんのですが、如何ともしがたい点は、炭質の問題なんです。小さい会社経営しておりますような炭鉱の炭の質はおおむねカロリーが低くて、売れ行きが悪いのでございます。ですからそれのために一つのそれらの炭を使うところの用途を新規に開発するということが、国の産業経済の全体の問題であろうかと思います。当面、その程度しか考えておりません。
  78. 一松政二

    ○一松政二君 この問題は、今日の点題とするには余りに大きく又、深刻でありますから、この問題は他日に讓りたいと思いますが、今の大体六千円前後の炭価ならば、いわゆる新鉱の開発にどんどん進むだけの余地がございますか、経営者として……
  79. 早川勝

    参考人早川勝君) それは残念ながら、現在すでに借りておりますところの復金、それから見返資金、市中銀行、それから関連産業に対してまだ返さなければならぬところの不義理がたくさんございます。これのほうに削られておりますから、多少バランスの上で黒字が出ましても、新鉱開発まではとても行かない。今も盛んにそのほうの手当を政府に対してお願いしているわけです。
  80. 一松政二

    ○一松政二君 それで、特に粘結炭の問題ですが、粘結炭は日本自身に非常に少いのだから、我々としても、現に今例に出された、製鉄業者は大西洋岸から石炭を持つて来ても、日本の石炭を使うよりは遥かに安いのだ、それで輸入を懇請し、相当な数量が予算にも組まれているのですが、それが今新鉱の開発だに容易でないような値段よりも、非常に安く日本に持つて来られる。而もアメリカは大体一週間のうちに三日か四日仕事をするだけで、少し能率を上げればすぐ貯炭が一カ月分も二カ月分もできるという国を控えて、日本の石炭産業があるわけなんで、いずれこれは労銀の問題を考えるにしても、石炭の値段を考えるにしても、国際貿易のことを考えると、いろいろの問題が起ろうかと思うのですけれども、特に私は労銀の占める割合を戰前と比較して見て伺つたのです。これはいろいろ石炭の基本問題に触れますから、今日は私は皆さんにお伺いするのはこの程度で打切つておきます。
  81. 赤松常子

    委員長赤松常子君) 他に御質疑はございませんでしようか……。それでは御質疑ございませんようですから、炭鉱賃金その他の労働條件に関する調査は、これを以て一応打切ることにいたしたいと思います。各参考人の皆様には御忙しい中を御出席頂きまして、有益な御意見を御開陳頂きましたことを厚く感謝申上げます。  なお、本日の議題には請願及び陳情に関する件が多数ございますが、これにつきましては別の機会に取扱うこととし、相当時間も経過いたしましたので、本日はこれで散会することにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  82. 赤松常子

    委員長赤松常子君) それでは、本日の委員会はこれを以て散会いたします。    午後三時十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     赤松 常子君    理事            一松 政二君            原  虎一君    委員            片岡 文重君            中村 正雄君            山花 秀雄君            早川 愼一君            堀木 鎌三君   事務局側    常任委員会專門    員       磯部  巖君    常任委員会專門    員       高戸義太郎君   参考人    日本石炭鉱業連    盟專務理事   早川  勝君    三井鉱山株式会    社労働部長   山本 淺吾君    北海道炭鉱汽船    株式会社労働部    長       深谷 二郎君