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参考人(
漆原光國君) 御紹介にあずかりました
漆原です。二十日に上京いたしました。最も生々しい
九州の
実情をお伝えして御
善処方をお願いいたしたいと思います。
先ほど御
説明ありましたように、
三井、
三菱、
井華、
北炭が今暁
妥結いたしましたので、一応
炭鉱ストは
解決したかの観がありますが、実はそうではないわけです。
九州におきましては、十三日以降
九州の
大手六社が
ストライキに入
つております。現在十日になりますが、
ストライキ続行中です。この様子を話しますと、先ずこの
炭鉱がどういう
地位を
九州で占めておるかということから御
説明いたします。この六社は北
九州を
中心にしたいわゆる
重工業の
原料補給炭鉱であります。
従つて良質石炭を採掘しておりますし、ただ問題が
九州にのみ
炭鉱がある
会社だ、こういうことで
地方的な
考えがありますが、
規模は全国の
大手の
炭鉱と匹敵するものであります。六社の現在
ストライキに入
つております
従業員総数が約四万五千です。一日出炭が一万六千トンであります。而もこの一万六千トンが八幡製鉄を
中心とする
重工業に向げられる
石炭である、こういうものを持
つております。これが未だ
解決されずに
ストライキを実行しておる。実に深刻な
ストライキの
様相を呈しておるわけです。それで東京で
大手の四社が
解決したのであるから、
石炭争議は
終つたのだということは言えないと思います。むしろそういうところに本当に
石炭危機が叫ばれるような
様相が出て来ておるのではないかと
考えておるわけであります。
それではこの
地方における問題がどうして
解決しないかという問題について一応御
説明いたしたいと思いますが、去年から
炭労は、連盟下において全国的な集団
交渉はやらないということをきめまして、先ず東京に本社がある
炭鉱、これを集団的に
一つ話合いをしようじやないか、
地方は
地方で話合いなさい、こういう線が出たわけです。それで
九州においては、
九州のいわゆる
大手炭鉱のみのこういう六社が集まりまして、それぞれの
会社に対して
団体交渉を申入れ、
賃金値上げを要求したわけです。ところが
会社側といたしましても、一応
経営者連盟の中でこういうグループを作りまして、話合いをし、その結果で
労働組合の要求に対して対処しておるという形がとられております。それで問題は個々の
炭鉱ではなくて、
石炭企業者の集団と
地方の
石炭産業労働組合との間の
交渉という形がとられておるわけです。
従つてこの問題は一社々々の
解決ということは至難であるし、政治的な大きな力を
一つお借りいたしたい、こういうような要素が
多分に含まれておる形であります。現在まで出されておりますこの六社に対する
会社側の
考え方並びに
組合側の態度等について、別紙プリントをお送りいたしました。「
九州資本別共同
鬪争委員会」という表題であります。その内容を極く
簡單に御
説明申上げたいと思います。これによりますと、現行に支拂われております
鉱員の
賃金、それから現行
採炭夫が一日に出炭しております
石炭の量、いわゆる標準
作業量と申しますが、これはいわゆる切羽で働いておる
採炭夫が一日に出す出炭の量なんであります。それで
坑内夫の
賃金に対しては、それぞれそこに出ておりますように、標準
作業量と言いまして、これによ
つてこれだけの量を働いた場合にはこれだけの三百六十三円を拂おうという
協定がなされてお
つたわけでありますが、これが
昭和二十三年の十二月
協定でありまして、以降本日に至るまで非常に
能率を挙げまして、
賃金のほうもそれぞれ
上つたよりな傾向がとられております。特に
能率が挙
つたという所は、一六〇%も
能率を挙げて、
賃金はどうやら
現状の線まで持
つて来たという形がとられておる次第であります。ところが今度
会社側は、
組合側の賃上げ要求に対して支拂おうという意図は、その三百六十三円に
協定されたときの
能率を挙げて取
つた金よりも低いものを支拂う、こういう案であります。それでこれを直しますと、今の
能率で働いても今の
賃金は取れない、こういう実績になるわけです。その内容が、
各社別には多少は違いますが、総体的に見ますと只今申しましたような結果になるわけです。
従つて組合側としては、先に御
説明申しましたように、
炭鉱賃金の五千四百円
ベースの改訂をしてもらわなければならんということが全く容れられない
状態にな
つて来ているわけであります。それで了承できるものではないということで、全面的にこれを拒否しております。
従つて九州における十三日以降の
ストライキがいつ
解決するかということも見通しがつかないような
状態に立ち
至つているというのが現情でございます。更に問題は、この
九州地方における
大手の
炭鉱の問題が
解決しなければ、どうしても
解決しないという小さな
炭鉱があるわけです。
従業員数にしまして、一万五千ばかりの
従業員がおりますが、この
従業員が十数日
地方の
大手が
ストライキをや
つているにもかかわらず、なお
解決しないというので
ストライキに入る気配が濃厚でおります。更に只今
三菱の
代表のかたから話されましたように、
日鉱と言いまして、
炭労とは組織が別でありますが、この人たちも同じように
会社の提案に不満であるということで明日から
ストライキに入ります。そうしますと全国の六割を占めます
九州の
炭鉱が、
大手を除いては全部出炭をとめるという形になりますので、これはただ
九州だけの問題ではなくして、全国の
石炭供給においては
相当な問題を惹起するのではないかと
考えております。只今申しましたような状況でありますが、この問題
解決については、一社ではできないということは舌足らずで
説明が十分ではないと思いますが、
労働組合側もそういうふうに
考えておる次第であります。それででき得べくんば議会等におきまして取上げられ、この
解決に御盡力願いたいと希望するものであります。
参考までに申上げますが、
ストライキの最終日における
九州の貯炭状況は約三十万トンしかないわけであります。三十万トンの貯炭を食い潰すには約一週間でこれが終
つてしまうという
状態でありますから、今から一週間争議が続げば
重工業における貯炭はなくな
つてしまうという
状態が生まれて来ております。そういう消費者における面並びに生産の重要性等を
考えますと、問題を早期に
解決しなければならないという
必然性が
考えられるのでありますが、今申しましたように、こういう
会社側の
考え方は、
炭鉱労働者として五千四百円
ベース据置きという苛酷な
状態に置かれることは
必然でありますので、まさに血を血で洗うような
鬪争が今後も繰返えされるであろうという公算が大であります。
只今御
説明申上げましたことで十分ではないかと思いますが、
九州の
炭鉱が
考えております問題を
一つお
考え願いたいと
考える次第であります。