○
説明員(
田中榮一君)
只今の御
質問につきまして私から御参考までに
事件当時の概要を申上げてみたいと思います。
皇居前
広場において
メーデーを実施したいという事柄につきましては、先ほど
官房長官からも
お話がございましたごとくに、すでに一カ月以上前から
警視庁側にも総評の幹部、中央
メーデー実行
委員会のほうからあそこを使用さしてもらいたいという御希望があ
つたのであります。警視片側といたしましては、現在あの
場所が厚生省の
国民公園管理規則の上から
メーデーその他の
政治運動等に使用できない建前にな
つておりまする
関係上、あそこを使用することは恐らくできないだろうと思うから、できれば
一つ他の
場所を是非
一つ使
つてや
つてくれんか。他の
場所とい
つてもほかにないけれ
ども、上野公園であるとか、或いは芝公園であるとか、或いは又明治神宮外苑であるとか、まあそうしたようなところもあるのであるが、どうだろうかということをまあ相談的に申上げたのでありまするが、総評側といたしましては全然その
意思なし。
皇居前
広場以外では
メーデーは行わんという強い
意思表示でありましたので、むしろ
メーデーというのは、華かにや
つたほうがいいじやないか。ついてほ明治神宮外苑が若し狭ければ
警視庁側において
進駐軍とよく折衝してあの
場所も使えるように
一つ努力するからというので、私
どもの係官を
進駐軍側のほうへ出しまして、あの
場所の使用方を承認を願
つたのでありまするが、
進駐軍といたしましてはあの
場所に相当な施設をいたしております。従
つてその施設を撤去せなければ使用できませんので、なお是非撤去して使用さしてくれということをお願いいたしましたところが、非常に理解を以て、
メーデーに対して理解を以て協力して頂きまして、よろしい、それならばすべての施設を撤去して、又終
つたならばそれを元に復旧してくれれば使
つてよろしいというような承認を得ましたものでありますから、そのことも更に
政府のほうへ連絡をいたしまして、外苑使用の場合においては
進駐軍側の施設を撤去しても
進駐軍は使うことを承認してくれたのであるから、若し
皇居前
広場以外でやるとするならば、大衆を收容するにはここ以外にはなかろうと思うからして、是非外苑を使用するようにお願いしたいということもかねて
政府にはお願いを申上げてお
つたのであります。そこで
政府とされましても、
皇居前
広場以外とすれば明治神宮外苑以外にはないのでありますので、あの
場所は使
つては困る、他の
場所を使用することをということを
政府並びに
警視庁側から私自身もすでに二回に亘りまして総評側にそのことをはつきり前以て申入れてあるのであります。又
政府側におきましても総評側に
皇居前
広場は使えんからということをはつきり申入れしてあ
つたのでありまするが、遺憾ながら総評側とされましては
皇居前
広場一本調子で進んで、他では絶対やらんというような御
意思だ
つたようであります。そこでなお曾
つて警視庁のほうへ
皇居前
広場を使用するという届出のようなものを総評側が御持参したことがあると思うのでありまするが、これも成規の手続でないからというので、これを一応お返ししたのであります。そうして一方飽くまで
皇居前
広場を
メーデー会場として強行するというような話を聞いたのであります。若しそうなるといたしますと、非常に
政府としましては厚生大臣があの掲所を使用してはいかんという不許可処分にされておりますので、若しそうだといたしますと、非常に
皇居前広掲におきまして不詳
事件が発生をいたしますので、
警視庁といたしましては非常に憂慮いたしてお
つたのであります。
ところが四月二十七日
メーデー会場問題に関する連合国の最高司令官の声明によりまして、総評側におかれては
皇居前
広場における中央
メーデー中止を正式に決定をされまして、更に二十八日の実行
委員会に引続きまして、二十八日の午後一時半から東交会舘において開かれたる総評の席上におきまして、中央
メーデー中止に代るべきものとして三日の
憲法記念式典には一日の動員と同じ人員を動員することを決定されまして、具体案としては
メーデー実行
委員会において決定することとしまして、直ちに総評速報第九号によりまして根こそぎ動員をしろという動員を下部に流されたのであります。更に又五月一日総評号外にも同紙の記事を掲載されまして、下部機関に流されたのであります。それから越えて五月一日の午後二時から総評本部は高野氏、柳本氏ほか十名内外の参集の上で、午前十時次のような問題を具体的に決定されたのであります。午前十時
皇居前
広場に集まること、プラカード、小旗、
組合旗を持参すること、
吉田首相の祝辞の際喚声を上げて、更に式終了直前に
メーデー歌を歌
つて、そうして揃
つて退場するという方針を決定されたのであります。それを直ちに総評速報第十一号を以て下部
組合側に通達をされたのであります。
かような点を我々は聞き知りまして、
警視庁側としまして、これをそのまま放任して置くということになりますると、いろいろの点につきましてトラブルを起す可能性が非常に多いのでありまして、
警視庁側としましても十分
政府と連絡をとりまして何らかの方法でこうしたことをできるだけ避けたいというような希望からいたしまして、
警視庁側としまして
最大の努力をいたしたのであります。
先ず、五月二日の午後二時に
警視庁の警邏部長室に都下の主要
新聞の記者及びラジオ放送記者の来集を求めまして、式典参列者に対しましては、プラカードを持参しないように、又集団示威行進、若しくは
集団示威運動をしないように、その他銃器凶器等の危險物を持参しないように、静粛に式典に参列して欲しいというようなことを、都下の
新聞紙を通じまして一般の協力を求めたのであります。それからそれによりまして、同日の夕刊紙及び三日朝の朝刊紙にはそれぞれ右の旨が掲載されたと
考えております。又同日七時十五分及び九時五十分、NHKのラジオを通じまして、右と同様の趣旨の放送をしてもら
つたのであります。それから総評
責任者に対する警告といたしましては、五月二日午後二時三十分頃係員を総評本部に派遣をいたしまして、総評速報第十一号によるような行為に出た場合には、四月二十七日連合国最高司令官の声明に
違反する虞もある。又
都條例違反の虞れもあるについて、かかることのないように
一つ十分に御注意を願いたいということをお願いいたしたのであります。そのときは右の
警視庁側の意伺を受領したかたの姓名もここにはつきりわか
つております。更に五月二日午後三時三十分頃総評事務局長高野氏に対しまして、正式に警告を発するために、係主任の青木葉警部をして、総評本部に電話を以て、高野氏に恐縮であるが
警視庁に連絡したいことがあるからおいでを願えんだろうかと電話でお願いをしたのでありますが、出頭しないという
回答があ
つたのであります。止むを得ませんので出頭しなければこちらから
行つて連絡するほかないと、かように
考えまして、午後五時二十分頃総評本部に北村警部、総監代理の岡村警部を派遣して、正式に右の警告書を通達いたしたのでありまするが、更に警告書通達と同時に、口頭を以て詳細御注意を申上げたのであります。それから更にどうしでも高野事務局長に連絡したいと
考えまして、更に努力をいたしまして、同日の午後十時頃警邏部長名を以ちまして警告書を作成いたしまして、青木葉警部をして総評本部、北村警部をして世田ケ谷所在の高野事務局長に更に警告書をもう一本こしらえまして訪問させまして、その伝達をいたしたのでありまするが、残念ながら高野事務局長は、総評に関することなら会わないと断わられましたので、仕方がありませんので、北村警部は警告書を置いて行くと言
つて郵便箱にそれを入れて午後十一時頃辞去いたしたのであります。非常に短時間でありますので、十分に総評側に警告書の到達、その決定が不十分であ
つてはいかんとこう
考えまして、更に管下の各警察署長に指令通信を発しまして、総評系の単位労組にそれぞれ各署長を通じまして、右の警告を伝達いたしたのであります。そのほかに更に主要の單産に対しましては、電話を以て右の趣旨を徹底せしむる措置をと
つたのであります。
それから当日式典に相成りましたが、幸いにいたしまして式典のほうは大体無事に終了いたしたと私は
考えておりまするが、式典の始まる前にも主催者のほうにも連絡をいたしまして主催者のマイクを通じまして、以上のようなことを再三再四参列者各位に伝達を願
つたのであります。なお当日この総評速報第十一号の趣旨によりまして、單産において、或いは小旗を、或いはプラカードの類を持参した
労働者諸君もあ
つたようでありまするが、これは主催者側におきまして、篤と懇談の結果、これらのものは入口において預かるということにして、帰りにこれを取
つて行くということにして、それぞれ入口におい、てこれらのプラカード、小旗等は主催者側においてこれを預か
つたのであります。
警視庁側といたしましては大体右のような情報等がございまして、私
どももはつきりしたことはわかりませんけれ
ども、先ず何か起るようなことがあ
つては、式典そのものを乱すということがあ
つては、
国民的式典でもありまするし、又いろいろの点から支障を来たすと
考えまして、警察官を若干名動員いたしまして警戒いたしたのであります。
新聞紙に五千名と紙上に書いてありまするが五千名は出ていないのでありまして、これは毎年例といたしまして、制服の警察官で、学校に入
つておるものがあります。これがやはりそれぞれその式典に任意に参列いたすことにな
つておりますので、学校でありますから、成るべくまとま
つて式典に参列をしたほうがよかろうと
考えまして、警察学校の生徒約千九百名が式典に参列いたしたのであります。これはあえて今年だけでありませんで、毎年これは参列いたしておりますので、あえて何ではないのであります。そのほかに制服警察官で、これは式場の内外並びに交通取締り、その他に従事いたしました警察官が約千三百名くらいでございます。そのほかにいろいろこうした会場における混乱に乗じまして、又いろいろな
公安條例違反行為をなす虞れのあるようなことも聞きました。それらのものに対する警戒といたしまして、約六百名くらいの
私服警察官を会場の中に入れまして、十分に警戒をいたしたのであります。
それから当日の状況でございまするが、大体式典も終りに近づいた頃に一部の
労働者の
諸君の中で隊伍を組み、それからスクラムを組んで、
労働歌を高唱しながら会場から退散をいたしましたので、これははつきり集団示威行進、いわゆる
公安條例の規定いたしまする集団示威行進に該当する行為でございまするので、現場の警察官が直ちにこれを制止いたしました。その制止聞かざる者についてはそれぞれ逮捕をいたしまして、いわゆる
現行犯として逮捕いたしたのであります。その後の措置につきましは、先ほど
法務総裁並びに私から説明をいたしておるような次第でございまして、なお本件につきましては、一名だけ公務に対して公務執行を妨害した者があ
つて、それも合せて逮捕いたしまして、計三十七名を逮捕いたしました。