○国務大臣(山崎猛君) 先月二十四日、
桜木町駅
構内における
国鉄電車の
事故につきましては、先日
参議院本
会議場において御
報告申上げましたけれ
ども、主管大臣といたしましては、一刻も早く緊急御
報告を申上げたいということを
考えております。丁度議会が休会中でありましたために、その機会を得ず今日に至
つた次第であります。申上げることも重ねて申上げるようでありますが、そのために百六名の死者を出し、九十二名の
負傷者を出したと申すことは近来稀な悲惨な出来事であり、
遭難者は勿論、
負傷者、その
関係遺族の
かたがた、これに対しては、如何なる言葉を以て表現してよろしいかに苦しむほどの、全く痛恨極まりない事柄であります。のみならず、そのために一般の、
国鉄電車を利用される大衆に対して、非常な不安感を抱かしめるというようなことになりまして、影響は非常に大きか
つたということを
考えております場合には、実に返す返すも遺憾至極であり、申訳ない出来事であ
つたと痛感、恐縮いたしておるような次第であります。これにつきまして、その直後に私
どもは、
国鉄総裁と会見いたしまして、その応急の処置について相談をいたしたのでありますが、第一に
遭難者及び
負傷者に対して、十分の慰露、慰藉の
方法を講ずる。第二段には時を移さず、
事故の起りました真相を確実に把握して、そうして直ちに応急の対策を講ずること。第三には、同時に一般
国鉄電車等を利用する乗客に対して、不安感を拭い去るように努力する、と同時にそれぞれの
電車の中において、非常の場合に応ずる
方法を指示するというようなことを
考えました。第四番目には、同時にこれはひとり
国鉄電車と申さず、
国鉄の運営しているすべての交通機関に対して、将来に亘り、全面に亘
つて安全度を確保し、同時にこれを引上げるということについての、至急
調査の手配をする。これはひとり国有鉄道ばかりでなしに、運輸省は又鉄道監督局をして別個の角度、監督官庁の立場から技術的に
調査並びにその対策を立案するというようなことを取進めることにいたしたのであります。ただ
事件の起りました真相を最も早く把握するということにつきましては、その現場における機械的設備に対する推断は技術者として
専門家がなし得るのでありますけれ
ども、これを
操作し、
運転した当事者が数名身柄を検察庁の取調べのため拘束されておる
関係上、機械的のあり方と人間の動きとを結び併せて本当の真相を掴み出すということが未だにできずにおるような次第であります。この点は勿論検察庁における拘束の日限はおのずから限度があることであり、検察庁のほうでも非常に努力してや
つておられるようでありますから、早く我々の真因
調査の一番大切な当事者について当時の
状況をつぶさに取調べるという機会が與えられることと
考えておる次第であります。更にこれは私
運輸大臣として今後の対策について
考えたその
一つでありますが、まだこれは具体的にその方向には進んでおりませんけれ
ども、運輸省のその機関をしてこの
調査立案の任に当らせるつもりでありますが、それは海難の場合におきましては海難審判所がありまして、船長なり、機関長なり、事務長なり、それぞれ実際の船に乗
つた体験を持
つた者及び学識経験ある者、同時に海上法規に通じた
関係者等によりて、起
つた事件を専門的の立場から判断して、審判して行くということにな
つておりますので、丁度これと同じように今日以後
汽車、
電車、バス、自動車、陸上のこれらの交通機関が
電車だけでなし、
汽車だけでなし、クロス・アクシデントとでも申しますか、
電車とバス、トラツク或いは自動車との踏切における衝突というような複雑な
事件も起りやすいのでありますから、これは單なる検察庁における、或いは裁判所における過失致死というような刑法からばかり論じないで、実際に即した審判を下して行くにあらざれば、当該
事故を起した責任者の判断においても誤まられたる判断に服さなければならん場合もなきにしもあらずと
考えるのみならず、将来の
事故を防止する上からもそのようなものによ
つて審判をして行くということが必要ではないか。丁度今日の場合のように急速に善後
措置を講じようと
考えても、その危険に当面した当事者たちが身体を他より拘束されて、直接これを拘束して当時の
状態を確かめるというような機会が與えられないようなことは善後
措置の上において非常に急速に処理しなければならないというような場合の不便もあるというようなことを
考えまして、
一つこれは具体案を急速に作りまして、陸上運送における審判の
方法を具体的に取進めたいという案を具して国会の
審議に付し、御
審議を願いたいと、こう
考えておるような次第でございますが、どうかこういうことによりましてできるだけ最善を盡して、希くば百六柱の霊魂をして、お気の毒ではあるけれ
ども、無駄にいたさないように善用して、一般大衆の
利益の上にこれを及ぼして行くように、禍を転じて福となすような方向に進める、これが幾分なりとも霊魂を慰め得る手段ではないかと
考えております。誠心誠意今後に努力したい、こう
考えておるような次第であります。
更に又いろいろ
電車そのものの構造、
車輌の構造、或いは路線或いは電線、これらにつきましても、勿論当該技術者は、安全なればこそその
運転を自信を持
つてや
つておるのでありますけれ
ども、神ならん人間の集まりでありますから、再三再四それに再検討に再検討を加え安全度を高めて行く。勿論これには莫大な経費を伴うことであることは勿論であります。併し如何に経費がかか
つても公共の機関としては完全なる安全度まで引上げるということがなければその責任はとれないのでありますから、従来安全ならばこそ安心して
運転をして参
つたという確信の下に立
つてはおるのであります。更に反省して一層そういう任に、運輸省は監督の立場から、国有鉄道は実際運営の立場から謙虚な気持で御批評を受入れて行くというような気持で、さように堅く信じておる最中でございます。勿論私が今ここで申上げただけで詳細を盡さないのであります。併し大体の方向は今申上げたような
考えであります。重ねて申上げますが、今回の
事件は全く申訳のなか
つたことであり、陳謝の言葉を呈するに苦しむような
状況であることを申上げる次第であります。