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木村禧八郎君 私は本案に反対いたします。
日本開発銀行を設けるという趣旨は私は了承できるのであります。
日本開発銀行法案の提案
理由の
説明によりましても、抽象論としては了承できるのであります。即ち我が国の
経済基盤を育成し、その将来における
自立を安定した基礎の上に招来するためには、重要基礎
産業の所要
資金、なかんずく長期設備
資金の
供給を円滑ならしめる必要がある。そういう趣旨から提案されたことについては了承できるのであります。なお長期設備
資金の調達というものが、
日本の
自立経済計画達成の上に、
日本の
経済復興のために非常に重要であり、現在
日本の
経済の一つの大きな課題に
なつておることは、これは周知の
通りであります。従いましてこの趣旨は、我々趣旨には反対するものでないのでありますけれども、これを具体化する中身を検討して見ますと、我々承服しがたい点があるのであります。特にこれは将来のことを
考えますと、非常に重要な機関でありまして、そうしてこういう非常に重要な法案を、会期が追
つてもう今日一日しかない、こういうときにこういうものを提案され併しこれを裏付けとする
予算はここに提出されたのでありますが、その点についても非常に私は遺憾であると思うんです。もつとこういう重要な法案は十分に準備して、そうして国会でも十分に各いろいろな角度から、これを妥当であるかどうか検討する余裕を与えなければならないのじやないかと思うのでありますが、非常に短期間にぎりぎりに会期が迫
つてから出されたことに対して、先ず遺憾の意を表さなければならんと思います。
それから次にこの法案に反対する
理由は、この
銀行の
性格について承服しがたい点があるのでございます。即ちこの
銀行は
復金を吸収することになるのでありますが、我々の見るところによれば、なぜこの
復金を吸収しなければならないか了解に苦しむのであります。
復金は
復金として一応整理を行いながら、それで
復金において
回収された
資金をこの
銀行のほうにこれを出資すればいいのであ
つて、若しそうしないとなると、これまで
復金融資につきましては、又
復金の吸収問題につきましては世上いろいろな疑惑を以て見られておる。事実そうでないかも知れませんが、この前ああいう事件もあ
つたのでありますから、
従つて復金の整理というものは、これはすつきりとしなければならない。
従つてこの
復金をこの
銀行に吸収するということについてはどうしても承服し
かたい。吸収しなくとも、
復金は
復金として整理をや
つて行きながら、
回収資金をこの
開発銀行に出資せしめれば、何ら私は支障はないと思う。にもかかわらず
復金を吸収することに
なつた。更に又この
復金を吸収することにより、
復金と
開発銀行との相違点が、これは
大蔵大臣も
説明された
通り、
復金においてはこれまで
委員会というものがありまして、その融資についても十分な監査といえば、これは
政府です、
政府がこれを監督することができたわけです。いわゆる紐がついてお
つたわけです。併しな、からこの
銀行になりますと、今度は一切紐をつけない。
政府の監督がなくなるわけです。
総裁及び
役員に任されるのです。その限りにおいては一応非常に融資その他は能率的になる点はこれは認め得るのでありますが、併しながら非常にたくさんの国民の金を、非常に大切な金を使うについて、全然紐をつけないで、そうして
総裁なり重役に一切
貸出しをさせるということになりますと、これは私は非常に弊害が出て来るのではないか。極論すれば、或いは
復金の二の舞ということが生じないとも限らないのです。従いましてこれまで非常に紐がついて厳重に融資され、或いは又その
回収も監査され監督されてお
つたのが、この
銀行に
復金が吸収されるとなるとそうでなく
なつてしまうのです。そこでこの
復金の
回収なり或いはこの新
銀行で
貸付ける場合、そういうものが紐つきでないとなると、これはどう
なつているのか、監督、監査の機会が非常に乏しく
なつて、国民の納得するような
資金の
運用を確保しがたいのではないか。こういうふうに思うのであります。こういうこの
銀行の
性格から見ましても、私は承服しがたいのです。
それから第三の反対
理由は、先ほどいろいろお伺いしましたが、
資金計画が全然ないということです。
復金とは違いまして、機動性を持
つて、今後非常に激変する
経済金融情勢に対応して民間の
金融機関の補助的な機能を果すという、その趣旨はわかるのでありますけれども、蓄積
資金が非常に乏しい
日本におきまして、その
資金の使途というものは非常に有効に、効率的に使われなければならないのであります。これに対して、全然
資金計画がない、こういう
資金計画を我々聞くことなしに、この案に賛成することはできないのです。そのためにいろいろな支障が生ずると
考えられますので、この
資金計画が全然ない、又非常にラフでいいからどの
産業にどの程度に貸すのか、こういうラフな計画でもあるのではないかという
質問に対しても、全然ないと言われているのでありまして、こういう無責任な計画に対して、我々は計画というよりも、計画が全然ないと、こういうような
法律案並びにそれに対する
予算案には我々は承服することができないのであります。それから最後に最も我々が承服できない点はこの人事の問題であります。この
銀行の
性格が先ほど申上げましたように、全然
政府の監督がなくなり、それで紐がつかない、それから
資金の計画もない、一切これは
総裁及びその
役員に任されるということになりますと、その
総裁と
役員の人事が非常に重要に
なつて来ると思う。若しその
総裁なり或いは
役員が、これが不当な
資金の
運用をすることになりますと、これは重大な弊害が生ずる。先ほど申上げましたように
復金の二の舞を生ずるかも知れないのでありまして、従いまして若し、
銀行のいろいろな
性格上、或いは
資金計画の上に割り切れない不明朗な点があるのでありますが、それを補う意味においてこの人事、この点をしつかりすれば、そういう欠陷は除けるかも知れないが、その一番重要な人事におきまして、これは
総理大臣が任命しまして国会がこれを承認しなくともいいということに
なつておる。伝えられるところによりますれば、小林中氏がこの
総裁になるやに伝えられております。
大蔵大臣に
質問いたしましたところ、内定とか確定とかいうことは言えないけれども、交渉はしておる。併しながら先方で引受けるかどうかはわからない。こういうお話でありましたが、大体小林中氏にきまるように観測されるそうしますと、小林中氏は非常に政党色が濃厚な人でありまして自由党色の濃厚であることは、これはもう周知の事実であります。こういうような人がこの
総裁になりましたならば、この
資金の
運用の仕方はどうなるでありましようか。
大蔵大臣は人物さえ立派であれば、政党色があ
つてもかまわないというお話でありますが、これは以てのほかであります。それで曲解すれば、この小林中氏は自由党色が非常に濃厚でありますから、それを通じてこの
日本開発銀行の
資金の
運用が、自由党
資金部のような形に
なつてはならないのであります。そういう危険も我々感ぜられる。そういう危惧を感ぜられる。ですからそういうような危惧を感ぜられるような形でこの法案を作るということはこれは最も悪いのでありまして、もつと明朗にするのならばそういうようなことはないと、こういうのならば、なぜこの
総裁を任命する場合、これを国会が承認するという形に持
つて行けないか。そういう立派な人であるならば国会でも勿論これは反対しないと思う。こんなに重要な法案でありながら、そうしてそれは一に
総裁によ
つてこの
資金の
運用がきまる、こういうような形に
なつておるのに、この
総裁の任命が国会の承認を得ないでもよい。
総理大臣の任命だけでよい、国会の承認を得ないでもよいこういうような私は形においてこの
資金が
運用されるということは、どうしても国民として我々承服できがたい。
以上の
理由によりましてこの
開発銀行を設ける趣旨は誠にいいのでありますが、その中身が、実体がどうしても我々は承服できない。而もこの
開発銀行の
資金を調達する上におきまして、それが延いては
金融が、非常な大企業本位に流れ、偏してしま
つて、中小企業とか
農林金融とかを、直接ではありませんが、間接にこれをやはり圧迫する。こういう危惧も我々は持
つておるのでありまして、先ほど
大蔵大臣や
政府委員から
説明は一応伺いましたが、まだ十分我々納得できないのであります。こういう
理由を以ちまして本
予算案に遺憾ながら反対する次第であります。