○木村禧八郎君 私は労働者農民党を代表いたしまして
政府提出の
昭和二十六年度
予算案に反対いたします。
反対理由を要約いたしますと三点であります。その第一、我々参議院の
予算案員は、実質的に参議院の意思を
政府提出予算案に反映できないという
状態の下において、
予算案を審議せざるを得なかつたという点であります。
〔理事平岡市三君退席、
委員長着席〕
言い換えれば、我々は
政府提出の
昭和二十六年度
予算案に対しまして、実際上修正もできなければ、否決もできなければ、そうかといつて審議未了にもできないという、誠に不合理な
状態の下で審議を余儀なくされたのであります。これは明らかに憲法第六十條の不備、欠陥を現わしたものと思うのであります。これまで憲法第六十條のこの不備、欠陥が現実に現われなかつたのは、衆議院を通過した
予算案が参議院に廻付されてからその年度末までに、その期間が三十日以間であつたからであります。今回の
昭和二十六年度
予算案は、初めて年度末までの期間三十日以前に参議院に廻付されて来たのでありましてこの三月二十八日、即ち、明日を経過してしまえば、参議院が衆議院と違つた議決をしようが、否決をしようが、審議未了にしようが、衆議院議決の
通りに
予算案が成立してしまうのであります。このために二十六年度
予算の審議に関しまして、著しい不合理と弊害が現われたのであります。その第一は、自由党が絶対多数を占めておる衆議院におきましては、年度末までの期間三十日以前に強引に
予算案を通過せしめようとしましたために、野党の審議が十分盡されていないのに、衆議院の自由党は絶対多数の数を以て質疑を打切つてしまいました。国民
生活に最も重大な影響のある
予算案に対しまして、国民の代表者をして十分に審議せしめなかつたという弊害が生じたのであります。この第二の弊害は、参議院に
予算案が回付される以前に、すでに実質的に
予算案が成立してしまつたと同様でありましたために、
政府は現実と全く遊離してしまつておる
予算案を涼しい顔で参議院に審議さしておいて、少しも責任を感じていないということであります。特に
政府の態度は、総理を初めといたしまして
関係大臣の出席が悪く、又
答弁は簡明に過ぎまして、或いは総理のごときは、
先ほど官房長官から陳謝の意思がありましたように、議員の
質問中に無断退席をしてしまう、こういうような参議院の審議を無視すみような
状態を呈しました。極めて遺憾な点が非常に多かつたのであります。このような実情の下にありまして、我々は国民に対して、
昭和二十六年度
予算案を真剣に、十分に納得の行くように審議することができたと言えるでありましようか。今回現われましたような
予算審議上の悪例は、今後の
予算審議の上にも重大な暗影を投ずるものであると思うのであります。我々はすでに占領下にありますために、
予算編成乃至
予算審議の上に制約を受けておることは周知の
通りであります。
予算審議に自主性がないことは周知の
通りであります。その上に更に憲法第六十條の不備、欠陥から制約をこうむるということになりますれば、参議院における
予算審議の自主性は殆んど地を払つて空しくなると思うのであります。速かにこの憲法の不備は是正されなくてはならないと信じます。このような不合理な
状態の下で審議を余儀なくされましたこの二十六年度
予算案には、原則として賛成できないのであります。
反対理由の第二は、この二十六年度
予算の裏付けと
なつております日本経済自立三カ年計画が実質的に崩れてし、まつているということなのです。周東安本長官に対しまして我々
予算委員は、この会議場を通じまして経済三カ年計画につきまして
質問いたしたのであります。形式的には、数字的には平仄は合つているようでありますが、更に我々検討いたしましたところによりますれば、
価格の面からと輸送の面からこの三カ年計画はもう崩れておるのです。そういう実情を十分に国民に知らしておらない。例えば輸送の面におきましては、二十六年度の
輸入計画、パルキー・カーゴー、嵩ばつた荷物において千四百万トンの計画であります。これに対して船舶は三百三十六万四千重量トンを必要とするのでありますが、すでに船舶においては百九万六千重量トン不足しております。従つて積荷においては三百大十七万四千トンを超えるものが不足するのであります。三三%の不足であります。千四百万トンの
輸入計画に対しまして三三%、船舶カーゴーを通じて、荷物を通じて不足している。これでどうして自立三ヵ年計画ができると思いますか。もう二十六年度のしよつばなにおいてこれは崩れているのであります。このことを国民に明らかにしておらない。あたかもあのペーパー・プランが二十年度
予算裏付に
なつているがごとく
政府は
言つておりますが、実際は崩れておる。そういたしますと重大な影響が現われて来ます。
政府は三ヵ年計画におきまして、国民
生活水準を
昭和二十五年度におきましては
昭和九—十一年の八〇%、二十六年度は八三%、二十七年度は八六%、二十八年は八九%、約九〇%にまで達成する。こういうことを
政府は公約しております。国民はここに一縷の光明を認めておるのであります。現在
生活は苦しいけれ
ども、徐々に三ヵ年計画に基いて我々の
生活水準が上つて行くということに一縷の光明を認めておる。にもかかわらず、もうしよつぱなの
昭和二十六年度におきまして、すでに船腹の不足から三ヵ年計画がもう崩れておる。従いまして
政府の言うところの国民
生活水準の確保は困難に
なつておる。本年、二十五年度において
昭和九——十一年を一〇〇として八〇%の
生活水準を維持すると
言つておりますけれ
ども、それさえすでに崩れております。最近の物価騰貴、CPIの騰貴によつて崩れていることは周知の事実であります。このように
昭和二十六年度
予算の重大な裏付と
なつている自立経済計画がここに崩れている。従つて私はこの
予算案に反対せざるを得ないのであります。
更に反対の第三は、この
予算案が現実と全く遊離してしまつておるということであり、更に今後ますます遊離の度合が深まる公算が大きいと、こういう点でございます。この
予算案の現実遊離は、先に申上げましたように、自立経済計画がすでに崩れておることも
一つでありますが、その次には、
政府が二十六年度
予算の特色として、
先ほど各
委員が指摘いたました総合収支の均衡を保ちつ財政規模の縮小に努めるということ、或いは国民負担の調整、軽減及び資本の蓄積の促進を図るために大幅な減税を織り込んだこと、こういう特色を
政府は挙げておりますけれ
ども、これが現実と違つておるのであります。即ち総合
予算の均衡といいますが、実際は均衡はとれておりません。対民間収支におきましては、一千億以上の支払超過であります。この点につきまして
政府は財政法二十八條に基きまして、国会に、
昭和二十五年度及び
昭和二十六年度の国庫収入見込というものを我々に配付しております。ところが我々に配付されたこれを見ますと、実際には違つておるのです。その数字は実際違つておるのです。従いまして私はその数字の訂正を要求したのであります。
政府の総合収支の均衡を保つておるというその一番基礎の数字であります、基礎数字はこれは訂正を要求したのですが、未だに我々に
提出しておらないのです。これは
政府にその確信がない証拠であります。あつたら
提出して頂きたいと思う。恐らく
政府はこれはできないと思います。実際においては、本当は収支珍衡ではなく、支払超過になるために、
昭和二十五年度も二十六年度もなるために、我々に本当の数字をここに示すことができないのであります。未だに
提出しておりません。これは全く確信のない証拠であると思います。更に財政規模の縮小につきましては、
先ほど各
委員会からも指摘がございましたが、中央、地方を通じました財政規模におきましてはこれは殖えておる、一般会計だけでなく、財政規模という場合には、地方財政も含まなければならない、中央、地方を総合いたしますれば縮小に
なつていないのであります。又一般会計の
予算規模の縮小につきましても、
先ほど社会党の佐多
委員も指摘されましたが、当初の公約と反しておるのであります。この矛盾を隠すために
政府は財政規模の縮小という意味を、国民所得に対する一般会計の割合であるということに意味をすり変えたのです。財政規模の縮小とは、常識から
言つて予算額の絶対的縮小を意味するのであります。事実が違つて来ましたから、
政府は最初は
予算額の絶対額の縮小と
言つておきながら、しまいには国民所得に対する比率が減ることが財改規模の縮小であると、こういうふうに
説明して、すり変えて来てあおる、これは一般常識でありまして、誰に聞かしても財政規模の縮小という場合には、
予算の絶対額が縮小することである、国民所得に対する比率が縮小する場合には、註釈をつけなければならないはずであります。このように
政府は財政規模の縮小に対してこれをすり変えて、ごま化しておると我々は見ざるを得ないのであります。
次に国民負担の軽減と
言つておりますが、これを更に
政府が
言つております資本蓄積のための大幅な減税とは矛盾撞著しておるのであります。資本蓄積を名目とし、これに便乗する法人、高額所得者に対する大幅減税及び大規模の合法的脱税の容認は、国民負担の軽減のための減税を犠牲に供しておるのでありまして国民の税負担の不小平をますます深めるのであります。特に国民負担の公平を期するために設けられました富裕税の申告
成績が著しく悪いということは、国民の納税思想に重大な悪影響を及ぼすと思うのであります。富裕税二十五年度におきまして二十億、申告されたのが未だに三分の一である四万五千人の人数、これに値しても申告した人は極めて少数であります。このようにすでに
予算編成当時におきましても、二十六年度
予算は実際と遊離してしまつておるのであります。更に二十六年度
予算が現実と遊離しておる点は、具体的には支出面に
はつきりと現われております。
昭和二十五年十二月十六日に米国が非常事態宣言を発表しました以後における国際物価の急騰に基く著しい国内物価高を織込んでいないのであります。
政府は朝鮮動乱による物価騰貴は職込んだと
言つておりますが、或るほど昨年十二月までにおける物価騰貴は織込んでいると思うのであります。併し、今日までにおける日本の物価騰貴は二段階を経ておりまして朝鮮動乱が起つてから昨年末までと、アメトカが非常事態を宣言した後における物価騰貴と、特にアメリカが非常事態を宣言した後における国際物価の騰貴は著しいのでありまして、我が国の最近の物価の騰貴はこの影響を受けているのであります。ところが、この二十六年度
予算にはその著しい物価騰貴を織込んでおらないのであります。安本の総合市場物価指数によりますれば、
昭和二十五年六月二十四日、即ち朝鮮動乱直前を一〇〇といたしまして、本年三月十日現在では一六六、即ち六割六分も騰貴しております。このために、
予算編成の前提となるべき米価の算定の基礎であるところのパリティ指数は、二十六年度産米につきましては二二一五から二三〇ぐらいになる見込でありまして、この二十六年度
予算に織込んだパリテイ指数一九五・五との間に一%以上もズレができてしまつているのであります。更に食糧
輸入価格は、
政府当局の
説明におきましても、現在においてすでに
予算単価よりもトン当り平均十ドルも高く
なつているのであります。現在すでに十ドルも高くつなている。このような
状態のために食糧
輸入補給金、公共事
業者費、地方財政平衡交付金に著しい不足を生じまして、当初計画が実行できなく
なつているのであります。従つて
予算の根本的組替えを行わなければならない
状態にもう
なつているのであります。特に地方財政平衡交付金、或いは地方債の起債については、当初
予算においてさえ地方財政
委員会の勧告との間に大きな、約九億の開きがあるにかかわらず、更に最近の物価騰貴を考慮に入れますれば地方財政の不足は更に大きくなりまして、そのしわは地方の教職員、或いは農民に大きく寄せられることになるのであります。このように二十六年
予算はいよいよますます現実から遊離するように
なつて来るのであります。
更に、二十六年度
予算案が現実と遊離しておりまする具体的な面、歳入の面にも現われております。つまり税制改革が、国民所得の著しい変化に対しまて、ますます適合しなく
なつているということであります。要するに減税による国民負担の軽減は、
先ほど各
委員の指摘いたしました
通りにいよいよますます名目的となりまして、実質的にはむしろ増税と
なつてしまつているあります。例えば
政府は七百億円の税法上の減税によりまして米価の
消費者価格の引上げを考慮に入れましても二、三%の家計負担の軽減となるという資料を我々に
提出いたしましたが、東京都の
消費者物価指数CPIは今年一月当時において
予算編成当時よりもすでに一割以上も上昇しておるのでありまして、基礎控除、扶養控除が物価騰貴に応じて引上げられない以上、明らかに家計負担は増加するのであります。而も、時局的に最も多くの所得増加をもたらしておる法人、高額所得に対しまして、むしろ大幅減税をするという矛盾がなすなす現われるに至つておるのです。法人税の軽減につきましては各
委員がこれまで指摘いたしましたが、すでに
政府は二十五年度
予算におきましても至れり盡せりの保護をいたしております。例えば地方税におきましては、これまで所得割の課しておつたのを、所得割をやめてしまいまして、例えば百万円も地方税を納めておつた法人は、今度は東京都ならば千八百円でいいと、こういうような著しい軽減を行うように
なつておるのであります。而も法人に対しては累進課税を二十五年度はやめてしまいまして、三割五分の比例税だけであります。その上に今度の税制改革におきまして
政府はいわゆる資本蓄積ということに名を借りて便乗をいたしまして、法人の通常の積立金課税を廃止する。再評価積立金の資本繰入を今年度中に実行する。これなどは前のシヤウプ勧告において三年間資本に繰入れてはいけないと
なつておつたのを繰入れてしまつて、而もこれに対して配当をする。こういうことをやろうとしておる。又先に再評価を行わなかつた者、或いは再評価が不十分であつた企業に対して更に再々評価の途を開く。そうして資本の減価償却をうんとたくさんやらしてやる。固定資産の償却年限を一般的に短縮する。こういうふうに資本に対しては、至れり盡せりの保護をしようとしておる。ところが時局的に見て最も所得が増加しておるのは、この法人であります。更に又時局的に見て最も多くの所得増加をしておるのは高額所得者、配当を受けておるような
人たちであります。そういう
人たちに大幅な減税をするのであります。而もシヤウプ博士が合法的な脱税であるとしてこれを取締らなければいけないと
言つておる預金利子に対する課税、いわゆる預金の源泉選択課税を認めようとしておる。これは一種の合法的脱税を認めることである。貯蓄増強上必要であるからこれは止むを得ないと言いますけれ
ども、若し貯蓄増強上この源泉選択課税が必要であるならば、合法的脱税はどうして押えるかいうことを
政府は具体的に示すべきである。富裕税の課税につきましても、銀行預金についても
政府はこれを調べようとしたのであります。その
法律まで作つておきながらこれをやめてしまつた。そうして申告税にしましたから、
先ほど申上げましたように、富裕税の申告は実に
成績が悪い。こういうように法人とか、或いは高額所得者に至れり盡せりの保護をしておる。而もこれを資本蓄積の名によつて行
なつておる。成るほど資本蓄積は大切であります。そんなに資本蓄積が大切ならば、資本に対してそういう積立金の課税を廃止したり、再評価を認めたりして社内にたくさん蓄積させた場合、これをどんどん社外に配当増加によつてこれを分配してしまうことを禁ずべきであります。最近の事業
会社の配当増額は著しいものであります。配当は御承知の
通り不労所得である。その不労所得の配当に対しては二割五分、税金からこれを軽減しておるのであります。こういうふうにして勤労所得、額に汗して働く所得に対しては課税を重くして、いわゆる不労所得、寝ころんでいても懐に入つて来る、そういう
人たちに対して二割五分を配当から軽減する。而もその配当の元になるところの資本の蓄積、社内保留、再評価、こういうものに対しては非常な減税をするというような著しい矛盾を犯しておるのであります。これは
政府がいうところの租税負担の公平化、或いは国民に対する税負担の軽減というものと全く矛盾しておる、この点においてもますます二十六年度
予算の現実との釣合いをぼかしておるのであります。而も今後の国際的、国内的なインフレ要因を考慮に入れますれば、蔵入蔵出両面の現実遊離の姿がいよいよ激しくなる公算が大なのであります。これに対して二十六年度
予算は一応認めて、不足分に対しては次に補正
予算を組めばいいという意見が一部にございますが、こういう
考え方が私は財政法の精神に反しておると思います。なぜならば、第一に、二十六年度
予算案は、もう実行へ移す前にすでに情勢の著しい変化が生じて参つておるのでありますから、この
予算を実行する年度初めにおいて根本的に組替えるべきである。言うまでもなく
予算は年度初めにおいて一カ年の
予算を組むのであります。
予算案は
予算の一部を暫定的に組むというものではないのでありまして、本
予算は年度初めにおいて一ヵ年の
予算を組む。この組むに当つてすでに現実の情勢が全く変化しておる、こういう場合にこの三十六年度
予算を、これを一時的な、部分的な暫定
予算として審議するわけには行かないのでありまして、これは根本的に
政府が組替えて国会に出すのが常道であります。財政法の精神から
言つて常道であります。それを
政府が怠つたということは、地方選挙を控えて、或いは今後のいわゆる講和待ちというような情勢から、極端に言えばいいからかんな、情勢の変化にもかかわらず全く現実から遊離をした部分的な、而も暫定的な姿の
予算を我々に審議せしめた。従いまして補正
予算を組めばいいというような性質のものではないと思います。それから第二に、情勢の変化によつて
予算案は量的にも質的にも変化を余儀なくされた、即ち量的とは
予算の規模、金額の面でありますが、それならばただ補正
予算で
予算金額を殖やしたならば辻棲が合うかも知れませんが、そうでなく、質的にも変化を生じたのである。即ち国民の所得の配分
関係は、この時局的な、或いは物価騰貴を通じて根本的に変つている。時局的に潤おう人にうんと所得が偏在して、そうして時局的に潤おわない人に所得が非常に減少しておる。総体的に国民所得の偏頗が生じておるのであります。こういうことを基盤として
予算を
考えて、ただ
予算を部分的に継ぎ足したらいいという性質のものではないのであります。本質的にこれを組替えなければならない。これを
政府がやらないのは怠慢である。我々は飽くまでも組替えの要求をするのが当然であると思うのであります。このように
政府の二十六年度
予算案は、現実と遊離してしまうのであります。
反対の第三点は、
予算と密接な
関係にある金融の面であります。即ち特に
政府資金の
使用について
政府は非常な矛盾を犯しておるのであります。大体見返資金特別会計におきまして七百何十億の使途不明の
予算を我々に示している。それでこれを承認せよということは、これは国会議員を愚弄したものであります。国民を愚弄したものであります。何に使うのだかわからない
予算七百何十億を
予算に計上しているということは、そうしてこれを審議し、これを承認してくれということは、
政府に対して財政資金の
使用の独裁権を与えたようなものでありまして、民主国家においてこういうことを容認するということは誤りであると思います。この一点からも私は
政府はその責任を糾弾されなければならない、こういう非民主的な財政の組み方、
予算の組み方というものはないと思います。而も最近明らかになりましたことは、開発銀行に百億円、第七次造船に対する資金七十億円、こういう資金を見返資金から賄う。而も見返資金で賄つてその尻を百二十五億預金部資金のほうに持つて行こうとしている。言い換えれば零細な貯蓄による預金部資金を以て開発銀行或いは第七次造船のほうに転用するということなのである。そういうことによつて非常に地方財政が困つている、地方債の起債に困つている。そつちのほうには放つておいて、そうして開発銀行或いは第七次造船のしわが地方財政のほうに寄つて来ているのです。開発銀行の資金或いは第七次造船資金が不必要であるとは言いませんが、そういうやり方によつて財政資金を使うべきものではないと思います。預金部資金の、これは資金運用部資金の運用に対する違反であります。いわゆるマーカツト書簡におきましては、預金部資金は先ず第一に国債とか地方債とかそういう
方面に使つて、残りがあつたなら、余裕があつたならばほかの産業のほうに使つていいということに
なつているのです。而も地方におきましては地方債の起債が少いので非常に困難をしている。そういう場合に地方債の枠を拡げないで、その資金を開発銀行や第七次造船のほうにこれを移してしまう、具体的には形としては見返資金から出るような恰好に
なつておりますが、見返資金で持つておりますところの短期資金を、食糧証券その他を預金部のほうに持たして、そうして結局預金部のほうからそういう資金を賄うというような実情に
なつておる。
政府の金融政策、或いは
政府資金の
使用の姿はこういう形で地方財政にしわ寄せしておる。更に又いわゆる日米経済協力の体制の具体化によりまして或いは日立とかその他いろいろな
会社が注文すをるために
相当の資金
需要が起つております。こういう資金を調達するために日銀の貸出が中小
業者に対し、或いは農漁民に対する金融の枠が制限されて来る。
政府の金融政策は日米経済協力体制というものを実行することによつて中小
業者とか農民とか、そういうほうが犠牲に
なつて来る丁寧戰争中のように重点産業のほうに優先金融をする犠牲がすでに現われて来ておる。こういうような金融政策はこれは改めなければならないと思う。二十六年度
予算と密接不可分のこの金融政策におきましても、
政府は著しい非民主的な政策を行
なつておるのであります。こういう点からも我々はこの
予算にどうしても賛成することができないのであります。
私のほうの党といたしましては、二十六年度
予算の編成の基本
方針として、先ず第一に何よりも総合的なインフレ防止対策を立てなければならないということを主張しております。この総合的なインフレ防止対策が立たなければ、仮にここで二十六年度
予算をこれで編成して見ても、又これは現実と遊離してしまうのです。ですから二十六年度
予算を編成するためには、先ず第一に何よりも必要なことは、総合的なインフレ防止対策を講ずる。そのインフレ防止対策というのは、その
一つとしては海外のインフレを防止する措置を講ずること、
先ほど深川
委員からも主張がありましたが、海外物価騰貴を日本で防がなければならない、この措置は
一つもとられていない。更に第二のインフレ対策といたしましては、財政、金融経済全面に亘りまして我々が年来から主張しているところの社会主義的な統制を全面的に実行しなければならない、今こそそういうことをすべき段階にあると思うのです。そういう形においてインフレを防がなければならない。第三に輸出と民需と、それから特需と、これから現われようとしておりますところのいわゆる日米経済協力に基く新特需との調整を図りまして、国民
生活水準を、
政府の自立計画において示している
通り二十六年度において
昭和九—十一年に対して八三%をどうしても確保するという措置を講じなければならん。こういう総合的インフレ防止対策を基盤にいたしまして、歳出面におきましては新らしい物価情勢に対応しました
予算の全面的な組替えを行う。地方財政平衡交付金の増額を行う。民生安定のために給与ベースの引上げを行う。而もこれによつてインフレの悪循環を来たさないように
政府はこの歳出増加の財源といたしまして、歳入対策面におきまして超過所得税の増加を行うべきである。更に又資本蓄積に便乗するところの法人税の軽減や高額所得者に対する減税、これに反対するものであります。而も物価騰貴を通じまして国民所得が変化したのに応じて、低額所得者に対する税金の実質的な軽減を図らなければならない。こういう基本
方針に基いて二十六年度
予算は編成されなければならないと思うのです。詳細な具体策につきましては、時間がございませんので、又各位に御迷惑と思いますので、ここで述べません。省略いたしますが、我が党といたしましては以上の
予算編成
方針によりまして二十六年度
予算を編成しなければ、経済自立の達成もできませんし、国民
生活の安定は期し得られません。こういう意味から我我の
予算編成
方針と基本的に違うところのこの
政府提出の二十六年度
予算案に対して私
たちは賛成することができない。私は断乎これに反対いたすものであります。