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1951-03-12 第10回国会 参議院 予算委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十二日(月曜日)    午前十時三十四分開会   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付)   ―――――――――――――
  2. 波多野鼎

    ○委員長(波多野鼎君) 只今より予算委員会を開きます。  最初に一、二申上げたい点がありますが、来たる三月十四日水曜日の午後二時半から三時半まで、一万田日銀総裁の出席を求めまして、日米経済関係についての報告を承わることにいたしております。御了承を願います。それでは質疑に入ります。木村君。
  3. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は先ず農林大臣にお伺いいたしたいのでございますが、申上げるまでもなくこの予算積算基礎米価とそれから賃金べースだろうと思うのです。そこで最近のパリテイ指数ですが、これは非常に変更したと思うのでございますが、二十六年度予算では御承知のように二十五年度産米一八二・二、二十六年度産来については一九五と、こういうふうにまあ計算されて、米価は二十五年度産米については五千五百二十九円、二十六年産米については六千百六円、こういうふうになつて、この基礎の下に予算を編成されたわけでありますが、最近のパリテイ指数はどういうふうになつておりますか。  それから最近の物価の上昇を織込みました六千百六円を計算した場合の一九五という指数は、それよりもつと上ると思うのですが、どのぐらいの御推定かその点についてお伺いしたい。
  4. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 最近の情勢パリテイ指数上つたのじやないかというお尋ね。それから又当初においては、予算面においては一九五という指数でやつておるが、現在上つてこれに対する予算的の措置がどうかということでありますが、現在のところまだパリテイ指数の確たる数字はつかめないのでありますが、十二月現在ではまだ一九五に行つてないように報告を受けております。
  5. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 十二月現在と言いますと昨年の十二月のことですね。一九五というのは本年十月の推定指数のわけです。それで六千百六円米価算定になつているのですが、昨年十二月で一九五になつてしまつた相当問題であつて、昨年十二月は大体一八二・二、この程度でなければならないのですが、常識からいつて相当つておりますので、補正予算を組むのにもうその点は計算しなければならないはずですが、最近どのくらいになつておりますか。事務当局でもいいのです。それから本年十月にはどのくらいになるか。私は少くとも二〇〇は突破すると思うのですが、最近すでに一九五見当になつて行つておるのではないか、そう思われます。今農林大臣の昨年十二月に一九五になつていないというのでは、これは予算算定基礎とは違いますからもう一度御答弁願います。
  6. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) まだ事務当局から聞いておりませんが、少くとも予算面通りの一九五で我々は推定いたしておりますが、併しあなたのおつしやる通り相当上るだろういうことは期待されておるのです。詳細の数字はわかりませんが或いは事務のほうでわかつておるかも知れませんが、事務のほうが来て確たるものがあつたお答えいたします。
  7. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その点大蔵省側ではどういうふうにお考えになつておりますか。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 廣川君がお答えした通りでありまして、十二月は一八八くらいになつておるようなことを聞いております。その後のものは聞いておりません。
  9. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはもう非常に私に怠慢だと思うのです。大蔵大臣の御答弁だと十二月に一八八と言いますと、もうすでに、二十五年度産米計算基礎よりも上つておるわけです。それで我々素人計算しても十二月は二二二、三〇になる計算です、現在から計算しまして。そうしますと六千百六円の米価では私に足りないと思うのです。これはもう今わかつておるのですから、そういう場合に農林大臣はこの米価をどういうふうにされるお考えですか。
  10. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 農家生産物農家の喜ぶ数字にしなければならんのでありまして、決してこのままにとどめて指数上つたとしてそのまま見送るというわけには私はいかんと思います。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますとパリテイ指数上つた場合には、大体パリテイ中心としてその他生産費等々を勘案して米価がきめられるわけですから、パリテイが上れば当然それに応じて米価が上る。そういうときに今度は予算が足りなくなると思うのです。そのときの予算はどういうふうにされますか。補給金を殖やすという形でやりますか、或いは消費者米価を又上げるとこういう形で行きますか、その点どういうお考えですか。
  12. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) その点はよく財務当局相談いたしまして無理のないようなきめ方をしたいと思います。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はその点どういうふうにお考えですか
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農林大臣が答えた通りでございまして、補給金を殖やしますか、或いはその代り消費者価格につきまして補給金を出すかという問題は前の委員会でも申上げたように相当研究すべき問題だと思います。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 補給金を殖やすという場合にこれはもう委員会で幾度も問題になつたのですが、すでに輸入食糧価格相当つております。予備審査のとき大体平均トン当り十ドルはなる、そういたしますと我々素人計算でも大体現在で二百億ぐらい補給金が足りないはずです。その場合どうしても補正を組まなければならない。大蔵大臣は大体小麦協定あたりに入れば補給金を殖やさなくてもいい、補正予算を組まなくともいい、或いは又輸入食糧の数量が多少減れば補正を組まなくてもいいというお話ですが、大蔵大臣はやはりそういうお考えでございますか。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは補正予算を組まなくてもいいというような気持言つておるのじやありません。それは皆さん計算なすつても三百二十万トンのうちで小麦を九十万トン予定しておりますので、入つたからと言つて補正予算を組まなくてもいいという数字は出て来ないわけです。ただそのアンノーン・ファクターがありますから今直ちに補正予算を組まなくともいいじやないかとこういう意味で申上げておるのです。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今直ちにということは、今国会に出すという意味なんですか。それとも併し今の情勢ではもう各方面に食管会計だけでなく、公共事業費関係も広範にこの物価騰貴に応じて予算を調整しなくてはならなくなつているので、むしろ至急に我々としては今国会に出すのが本当は良心的だと思うのでございますが、あの財政法にも事情が変つたときは政府はそういう補正を組んでいいのですから、決して政府面子がつぶれるということはないと思うのですが、そうしますと地方選挙後の国会においてはやはり出そうと、こういうお考えなんですか。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 補正予算を出す出さんは面子の問題じやございません。実際問題として木村さんにしても輸入補給金が足らんとおつしやるが、幾ら足らんかとこういうことをお考えになりましたらなかなかその計算はむつかしいと思います。而もその財源をどうするかという問題になつて来ますと非常な困難な点がある。面子の問題じやない。従いまして二百二十五億円もあれば輸入補給金相当期間賄える、情勢を見てからこれは若し増税をしなければならないというようなことになりますと国民負担相当影響がある。だから事情をよく見た上で補正をどれだけ組む必要があるかということを考えるのが私は適当だと思います。今十分な計算ができなくていい加減な予算を組んで行くときじやないと考えておるのであります。面子の問題じやございません。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大蔵大臣の言う通りいい加減な予算は組めない、これは大蔵当局としては当然でございますからその通りだと思うのです。併し国民としては早くその予算規模、これは細かくなくともいいです、規模というものを知りたいのでありますし、それが国民生活に重大な影響があるのですから、むしろ政府が大体こういう輪廓になるのだということは早くお示しになるのが当然です。それが予算賄いようによつてインフレという問題が起つて来ます。或いは又増税という問題が起つて来ます。或いは減税をするのを減らす、抑制する、こういうことも起つて来るのでありますから私は質問しているのですが、只今の御答弁ではこの予算編成に一番重要な、物件費算定に一番重要な米価算定において政府は何ら見通しを持つていない。現在こんなに変化しているのに持つていない、これは私は非常に無責任だと思う。パリテイの変更を聞いてもこれに答えられないという、こんな法はないと思う。予算の一番重要な基礎じやありませんか、我々素人考えても大体見当がつくわけです。計算基礎はしよつちう事務当局にやらして置かなければならない。二二〇を突破することはこれはもう明らかである。今の計算から行けばそうなつていいのです。これに対して補正を組むか、補正を組まないか、まだ分らない、そういうことは私は無責任極まると思うのです。我々今聞いておるのは国民が又消費者米価が引上がるじやないかということを心配しておることです。或いは消費者米価引上げか、或いはこれを補給金の増加だとすれば又増税になるじやないか、これを心配しておる。ですから私はこの点方向を明らかにしてもらいたい。消費者米価は上るか上らないか、政府は上げないというならば上げないと言明できるのですか、農林大臣は如何ですか。
  20. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 消費者米価を上げますと、すべての問題に影響をいたしますので、この消費者米価については我々は愼重に考えたいと思います。併しその半面農民に対して御迷惑をかけないようにしたいというのも我我気持であります。併し基準のことにつきましては物価庁その他と相談をいたしまして、我々は一般消費者大衆に御迷惑をかけないように成るべく努めたい、こう考えます。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、農林大臣は六体二重価格制、二重価格というようなお考えですか。
  22. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) はつきり二重価格とは申しませんが、それに似たようなことを我々は考えております。この食管特別会計に対するいろいろな問題も検討いたしておりますが、具体的なことはお答えするまでにまだ行つておりませんが、十分その点のところは当事者として目下研究中であります。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は根本の大筋はやはり消費者米価を上げるという方向で行くか、或いは上げないで補給金を殖やすと、こういう方向で行かれるお考えでありますか。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 重大問題でございますから只今お答え申し上げた通りにこれは検討を加えなければならん問題だと研究しております。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは大蔵大臣が何回もお答えになつておりますが、又総理大臣お答えになりましたが、この小麦協定に入れるような非常な可能性があると言われておりましたが、若しかあれに入れればどの程度予算が浮くかと推定しておられるか。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御承知通り、三段階になつておりますので初年度は十ドル近い減になりましよう。次年度、三年度になりますと大体二十ドルくらいの価格の引下になると思います。で、それによつてどれくらいになるという計算はいたしておりません。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは二十六年度予算に間に合うように加入できるというお考えですか。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは私が昨年五月に行きましたときにもそういう話をいたしまして、総理お答えなつたように或る程度條件をのめばよかつたのであります。その條件をのむ以外にいかんという異論がありましたので今まで延びております。受入態勢としては私はできておると思います。ただ木村さんのお話になりましたように、小麦協定に入る場合において日本は何トン小麦を要求するか、これによつても違うわけであります。今予算では小麦輸入は大体九十万トンだと思つておりますが、これが入るようになつて米代り小麦にするというようになつて参りますとおのずから、計算が違つて参ります。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はあてにならないものをあてにできるようにということは国民に対していけないことであると思うのでありまして、私はこの点について詳しく触れたくないのです。触れたくないのですが、理事会で否決された事情はあまり触れたくありませんから詳しくは質問いたしません。併しあの事情からいたしまして非常に困難になつて来ておる、こういうふうに考えるべきだと思うのです。それを国会答弁では大丈夫であるというふうにお答えになるから私は質問せざるを得ない。やはり相当困難である、二十六年度には間に合わないのだ、若しのめばこれは援助資金が殖えなければならないはずで、その後向うの小麦が上つておりまから、そういう事情でこれはなかなか簡單に行かない問題になつておると思うのです。あの当時からあの條件をのめばよかつたと思いますが、今事情が変つておるから、従つて私はああいうふうに有望であるというふうなお答えで、それで議員のほうもそうですかということで質問が済んでしまつては、本当に実情に合わないお答えで、無責任であると思いますので、私は非常に好まなかつたのですけれども、御質問したのですが、やはりこれは二十六年度にはあてにならない、こういうふうにお考えになつて対処すべきではないかと思うのですが、大蔵大臣如何ですか。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その点は見解の相違でございます。見通しにつきましては私は私の見通しでやつて行きたいと思います。併しいつ入れるかといことはこれは問題であります。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは結構です。入れればいいにきまつておりますから、政府としてもやはり入れるように努力して頂きたいと思います。  それから次にお伺いいたしたいのでありますが、公共事業費関係で特に災害復旧のほう、これは農林大臣は二十六年度において予算に盛られた事業量をこれは縮小されるお考えはないか。やはり盛られた計画通りやられると、こういう意思でございますか。
  32. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 物価騰貴やいろいろな資材不足等を御心配のようでありますが、成るべく我々はこの予算内において最大の効用を挙げて行きたい、こういう考えであります。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、やはりこの面からも予算は足りないと思うのです。どうしても足りないと思う。建設省から我々に配付された資料によりましても、資材値上り相当なものであります。それから我々に配付された予算説明書によりましても、公共事業のために使う資材相当たくさんにあるわけであります。鉄鋼にしても、セメントにしても、木材にしても、鉄鋼十九万九千トン、セメント百八十一万四千トン、木材一万石、而も資材値上り建設省資料によりましても相当値上りです。銅などは八〇%、鋼材三五%、相当値上りです。ですから、事業量を確保されれば、どうしても予算が必要であると思うのです。従つて補正の御要求はこれは当然されると思うのですが、その点如何でしようか。
  34. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 目標を達成するためには予算内においてはできないのじやないかというお話でございますが、さような場合には又これは財務当局と御相談申上げてやりたいと思います。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 さようなときにはという御答弁ですが、これまで予算委員会予備審査のときにもそうですが、本審査に入つてからも、どの議員情勢が変化しておることははつきりしておるのでして、予算をいつ出すか、どの程度補正が出て来るかということが問題の焦点なんです。そのときは、そのときはではそれでは我々は無責任だと思う。我々素人でもどのくらいの補正が要るかということは計算が出て来る。だからどの程度か、二割なり三割ぐらいは補正が必要ではないか、こういう御答弁をされるならいいんですが、ところがそのときはそのときはというのではあまり無責任である。政府は全くこの二十六年度の予算には自信がなくなつてしまつておるのです。今の御答弁を聞きますと、予算に一番大切なパリテイについて、お答えができない。今後どうしても補正が必要である。補給金によるか、消費者米価引上げによるか、それさえもお答えできないのです。これは地方選挙があるから今答えては不利であると考えるかも知れんが、私はそういうようなことではいけないと思う。私は幾ら聞いてもお答えがないが大体の方向を示す必要があると思う。あとになつて必ず私は消費者米価引上げが起ると思う。そのとき国民に対してあらかじめそういう政府方向を示しておく必要がある。そのときになつていきなりぽかつとやる、いつでも政府のやり方はそうです。これまで地方選挙を控えて、国会答弁も非常に政治的になつておる、政略的になつておる。併し参議院ではそういうわけにはいかないと思う。衆議院は絶対多数だからそれで済まされようが、参議院ではそうはいかない。この点は明らかなんでこれは義務だと思います。従つて、私は非常にしつこく聞くわけです。それで米価についても政府は何ら見通しを持つていない。明らかにパリテイ指数は、十月頃は二〇〇以上になる。二二二、三になる。今の計算で。このまま物価が上れば、二三〇ぐらいになることは明らかである。ところが今度の予算では一九五に組んでおる。而も農林大臣は昨年の十二月が一九五になつていないという御答弁では甚だ心細い。国民としてはもう少し真劍に検討されて、細かいところは大臣ではしようがないでしようが、大筋は掴んで置いで頂きたいと思う。  それからもう一つお伺いしたいのは、米と麦との比率の問題ですが、これまでの政府予算で大体わかつたのですが、麦を中心にして低米価政策をとつて来た、そういう政策は大体明らかになつて来ましたが、併し麦に補給金をやつて麦の値段を成るべく上げないようにして、そうして米の値段を麦の方に大体鞘寄せする、こういう大筋によつて成るべく低米価政策基礎として賃金の高騰を防いでおる、こういう方向をとつておりますが、その場合麦の値段を低くして過燐酸肥料を上げたら、農民は非常な苦境に立つと思う、過燐酸肥料値上りはどうですか。補給金問題についてはこれだけは農林大臣補給金考えるというような昨日か一昨日か御同様を御答弁を頂いておつたのでありますが、過燐酸補給金についてはどう考えるか、或いは過燐酸価格についてはどう考えるか、これについて、お答え願いたい。
  36. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 麦作について過燐酸の大事なことは御承知通りであります。これは多分、池田君も安本長官含みのある答弁をしておられると思うのでありますが、我々といたしましてもこの問題については重大な申入をしておるようなわけでありまして、これを農民が余り驚かない価格に又納得行く価格に我々は持つて行きたい、こういうふうに考えておるのであるのであります。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は如何ですか。
  38. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 廣川君のお答えした通り只今検討しております。この問題については一昨昨日答弁しております。あれに変りございません。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこの問題について、やはり過燐酸の、補給金だけではなく、補給金政策というものもこれまでと変つて来るのじやないかと思う。いわゆるドツジ・ラインによつてこれまで大蔵大臣補給金を切る方向に来た、あれはドツジさんの言うのは竹馬の一つの足として切つて来た。アメリカ援助資金補給金に使う、こういうことはいけないといつて来た。併し今後においては補給金の問題は今日も新聞にありました通りアメリカ国家安全保障会議ですか、ああいうところで日本に対して下請的に軍需注文をどんどん出すということが、インフレの問題として真劍に考えなければなりません。将来それはやはり低物価政策はとりませんでしようが、物価を抑える一つ政策として補給金の問題はどうしても出て来ざるを得ないと思う。大蔵大臣はこれまで或いはいわゆるドツヅ・ラインでずつと補給金をやはり今まで通り削るという考えで、補給金は認めない方向で行かれるのか。或いは米の補給金は将来は食糧価格国際物価に鞘寄せすれば、これは撤廃して行くというお考えですか、補給金制度に対する大蔵大臣のお考えは今までと同じですか、今後の重要なる問題としてお伺いして置きたいと思います。
  40. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これもたびたびお答えしたことと思いますが、私の考えでは今までのような補給金はやめて行きたいという気持変りはございません。ただ過燐酸の問題につきましては、相当考慮しなければならん問題であるので、過燐酸上つたならばパリテイに非常な影響があるようにおつしやいますが、今パリテイ計算では過燐酸は二・二%、そうして三百五十円の過燐酸一俵が五百円になりましてもパリテイには一%しか響きません。そのときに三百五十円の分をどの程度に持つて行くか、即ち今百七十七割増で行つておりますが、これをどれだけの増で行くか、而うして価格引上げ補給金で行くか、或いは補給金を外してしまつて米価を上げてそうしてそれが消費者影響する場合におきましていわゆる食管のほうへの補給金で行くか、これは大きい問題であるのであります。併しこれは理窟はいろいろ立つようでございますが、今の過燐酸肥料での配給自体に問題があるときには、これは一時的な現象として補給金考えるほうがスムーズに行くのじやないかというような有力な議論もあるのであります。そこで私の考えとしては、今までのような補給金は成るべくやめて行きたい、併し例外もなきにしもあらずであります。而うして低物価政策言つては語弊がございまするが、イギリス流の、生産者のほうを高くして消費者のほうの引上げ財政負担によつて或る程度みるというような方法で補給金としても合理的に行く、これは価格政策としてももいいのじやないかということは実は十分考えなければならん問題でございます。そこで廣川農林大臣言つておるように、含みのある今までのような補給金で行くか、或いは麦の場合のように上げて消費者のほうを考えるかというようなことを研究いたしておるのであります。併し結論として今までのような補給金はやめたいという気持変りはありません。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでわかりました。この点実は安本長官にもお尋ねしたいのです、通産大臣見えておりませんから。この補給金の問題ですね、これは非常に重要であつて、成るほど今までの補給金大蔵大臣の言われる通り援助資金補給金のほうに使うということでドツジ氏から問題になつて来た。今後やはり補給金の問題は大蔵大臣の言われたように、低物価政策じやないけれども、物価騰貴を抑えて国民生活の安定のためにそういう制度もこれは考慮する余地があると言われたのですが、安本長官は如何ですか。丁度見えておられますから。
  42. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 物価政策に関連して今日の国際情勢のこともよく考えて、国民生活の安定ということを眼目に置きつ計画を立てる上において、只今大蔵大臣の申した通りに我々は政府相談をいたしております。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 補給金の問題につきまして大体まあ政府考え方はわかりました。今までごつちやになつていたもんですから、今までの補給金ということと、それから今後の補給金の問題とごつちやになつていたのですが非常にはつきりいたしまして結構でございます。農林大臣わざわざ一番先にお願いしたのですが、もう一つ農村の問題ですけれども、今後の講和会議を控えて、農村民主化というものは非常に重要なわけでございます。農林大臣も御承知通りです。それで終戰後日民主化のためにとられた政策は先ず農村における民主化、いわゆる農地改革、それから財閥解体であつたんです。最近折角講和がだんだん近ずいて来るにつれて、農村民主化というものは逆転する危険はないでありましようか。特に衆議院でしよつちう問題になつて参りました、これまでその農村民主化を逆転させる危險があるんじやないかといわれる農業資産相続特例法農業委員会法この二つが農村民主化を逆の方向に持つて行く法律じやないか。ですから衆議院においても参議院でも始終難航していますが、私は講和を控えて民主化という問題は非常に重要で、この民主化が逆転してはいけないので、こういうことが問題になる際にこれら二つの問題は逆転させる方向に行くんじやないか。この点どういうふうにお考えなんですか。
  44. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 平和会議後、折角民主化が非常に軌道に乗つた農村の状況が逆転するんじやないかというお尋ねでありますが、私決してそう考えておりません。あなたの御指摘のこの相続税の問題ですが、我々もこれを重大視しまして大蔵当局とも折衝中でありますが、特に森林の相続税或いは土地の相続税については、これはどうしても低くしなければならんという考えを以て折衝中であります。この点から逆転するというようなことのないように十分警戒したいと思います。それから農業委員会の法案の中にさようなにおいがするようなお話でありますが、何も決してそのようなことじやないのでありまして、今まで残つた、残務があの委員会おいてこれをやつて行くような仕組にいたしておりまして、むしろ却つてあれを通して私は農村のためになるものであると、こう考えておるのであります。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは議論になりますからそれ以上私はお尋ねしても無意義だと思うんです。併し明らかに私はこういう方面に日本民主化が逆転するんじやないかというような危險があると非常に感じますのでお伺いいたしたのですが、これは見解の相違になりますから。  そこで次にお伺いしたいのですが、農林大臣にもう一つお伺いしたい。最近のこの物価騰貴、それから今後現われるであろうインフレの高進、これによつて農村経済はどういう影響を受けるであろう、この点農林大臣としてはどう考えるか、それでこれに対してどういう対策をお取りになろうとしているか。我々の見るところによると今後インフレが高進して行くと、このインフレ防止対策を講じなければならん。そのインフレのしわがいろいろな点で農村に寄つて行くのではないか、こういう気がするんです。この点最近の物価騰貴、今後のインフレ高進による影響はどういうふうに影響するだろう、やはりシエーレはどんどんひどくなつて農村は又非常に苦境に立つんじやないか、農業の再生産は困難になると、こう考えるのですが、農林大臣は、これは大筋でいいんですが、どういうふうにお考えになつているか。
  46. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) インフレが高進する、しないという問題ですが、私どもは有能な大蔵大臣を持つておりますので、インフレ高進は必ず手際よくこれを收束させてくれると信じております。  それから農村にどうしわ寄せされるかということでありますが、これは農林省としましても農産物を我々はできるだけこの一般物価にならつて引上げて行きたいと思いますし、或いは又農村に潜在いたしている失業者も一般の需要の拡大によつてこれも忘足して行くというようなわけて、現在我々はそう大して心配いたしていないのでありますが、これは農村にのみしわ寄せさせないように極力我々は注意いたしたいと思つております。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ非常に農林大臣の御答弁は政治的な御答弁でどうも我々としても平仄が合わないのですが、極力とかいつていますが、現実にもうシエーレがひどくなつて来ていることは農林大臣御存じなんです。何もかも御存じなんで、そういう政治的答弁をされるので非常に困るのですが、少くともシエーレが拡大しつつあることは明らかです。麦を中心として成るべく米価引上げまい、こういう政策をお取りになつているんですから、終戰直後の農村と最近の農村とは経済状態が違うということは、終戰直後は食糧の絶対不足で闇米が非常に上つて農村はとにかく儲かつたのです。ところが今後私は食糧については、それはあの当時のようなあういう危機状態は来ないと思う。そうしますとシエーレは非常に拡大する、米価というものは余り上らない、或いは食糧については小麦中心として非常な強力な政策を展開されるでしようから、食糧は又上るかも知れませんが、絶対的不足ではない以上は前みたいには上らない。ところがほかの商品はあとで安本長官にもお尋ねしたいと思うのですが、いわゆる日米協力の線で相当上る。又国際物価値上りからも相当上る。シエーレは非常に拡大すると思う。その点これまでと違うと思う。もうすでにそういう兆候が現われておる。それから財政面では、公共事業費或いは地方平衡交付金でも大蔵大臣は余りお出しにならないようです。そうすると地方財政の負担になつて来る、きつとなつて来ると思う。金融面ではすでに日本銀行で高率適用とか、或いは量的な金融統制、又質的な、重要産業のほうの重点的な金融統制を現にやろうとしつつあります。そうすれば農村金融というものは非常に逆転して来ます。こういうふうに農村政策のしわが寄つて来ることは、明らかじやないですか、これに対して農林大臣は非常にのんきに考えておられるようですが それでよろしいと思われるのですか。
  48. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 決してのんきに考えておりませんので、(笑声)我我は愼重に検討いたしております。決して農村にばかりしわ寄せされると我々は考えておりません。農村生産物価に対しましても、指数が上ればやはり上げなければなりませんし、それから又農村に対する金融の面についても、これは今まで農地改革後において農村金融というものを全く度外視しておつたことに非常にこれは欠陥があるのでありまして、今度の長期金融を先頭といたしまして、民間金融がこれについて来られるように我々は考えて行きたい、こう思つておるのであります。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 金融の面について、成るほど政府は農漁村金融について六十億ですか、予算を取られることになつております。あれは前に預金部から出ていたのが出なくなつたのでその代りにやつたと思います。ですから積極的にあれは殖えたと解するのはおかしいと思いますが、これは議論になりますからあれですが、併し私は農村問題として一番根本の問題は、これまでと情勢が変つて来ておりますから、農村にそういうしわが非常に寄つて来るということは十分お考えになつて対策を講じて頂きたいと思います。これは希望いたします。農林大臣は、これで大体済みました。  それから次に、今度は大蔵大臣にお伺いしたいのです。大蔵大臣は我々に配付された予算説明書でも、それから今度の大蔵大臣が一番満足すべき予算であると言われた予算の特徴は財政規模の縮小ということ、これが非常に大きな中心になつておると思いますが、ところが二十六年度予算の財政規模は縮小しないと思いますが、大蔵大臣の意図されたところと反対の方向に来ておる、こう思われますが、大蔵大臣の主張された財政規模の縮小はどこに実現されておるかをお伺いしたいのです。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一般会計の歳入歳出が昨年度に比べて減つておるのであります。又各機関を通じましても相当な減少になつておるから財政規模の縮小である。而して金額は二十四年度に比べて二十五年度の減つたのが八百億近く、今度は七十億程度で少いが、日本の経済というものは非常に大きくなつたことを考えると非常な縮小になる、こういうことであります。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は税金のときは地方の税金も考えて国税のほうも調整した、又財政規模においては地方財政と一緒にお考えなつたかどうか。
  52. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国民負担につきましては切実に考えておりますが、地方の財政の大きさということにつきましては私は余り発言権がございません。而して先ほど申上げましたように、日本の経済規模のことから考えますると、たとえ地方財政の歳出歳入が殖えましても、私は全体的には縮小できると考えております。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今後の補正考えますと、財政規模は縮小しないと思いますが、今後の補正予算を入れても、これはもうすぐ次の国会でわかることですから、大蔵大臣はまだずつと続けられるのですから、はつきりして来るわけです。今後の補正を入れても財政規模は縮小しますか。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先のことは何とも申上げられませんが、私が財政演説で言つたのはそういう意味であります。而も附加えて申上げておりますように、国家経済規模の増大から申しますると、たとえ補正予算で或る程度殖えましたにしても、財政規模の縮小と言い得ると思います。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私は大蔵大臣の逃口上だと思います。今後のことについては無論大蔵大臣の責任ではないと思います。これは我々でもわからなかつたんです。正直国際情勢がこんなになるとは思いませんでした。それは正直に大蔵大臣言われてもいいと思います。今後のことについては、或いは財政規模は縮小させようと思つたけれども、情勢変化によつて縮小し得なくなるであろう、こういうふうに率直に御答弁されればわかるんですが、それでもなお財政規模は縮小する、こういうふうに言われておることはおかしいと思います。成るほど大蔵大臣は前に金額ということを言つておるのですから、それでもいい按配に二十六年度はちよつぴりでも金額は縮小をした、今までの大蔵大臣面子は立つた、今度は金額が殖えます。金額が殖えてやはり国民所得或いは生産規模、そういうものから考えれば、パーセンテージにすればやはり縮小する、こういうようなことはこれは少し私は詭弁に属するように思いますが、今後はやはり金額としてもこれまでのようないわゆる財政規模の縮小というものは困難じやないですか。
  56. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは財政規模の縮小というものは先ほど申上げましたように、前年度に比べていわゆる予算面の金額の見方、国民所得に対しまする一般会計の大きさ、いろいろな見方があると思います。形式的縮小並びに実質的縮小とは別個に考えなければならん問題だと思います。従いまして私は万が一形式的に金額が殖えたにいたしましても、国民所得の点から言つたならば、財政規模の縮小というものは或る程度言い得る問題だと思います。詭弁ではございません。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は恐らく金額についてもパーセンテージについても今後財政規模の縮小は困難になるんじやないかと思います。そこで私は次の問題をお伺いしたいのですが、大蔵大臣はいわゆるドツジ・ラインによつて一応安定した経済がどうなつて行くか、最近の日本のいわゆるインフレの状態、それから今後のインフレ見通しです。これが情勢変化によつて非常に私は違つて来たと思います。従来大蔵大臣はいつでも木村は二、三カ月ぐらい目先のことしか考えていない、それだから事情が違うんだと、こういうふうに言われておりましたけれども、私が前に質問したのは、朝鮮動乱後の日本経済の変化は量的な変化でなくて質的な変化は平和経済から国防経済のほうに質的に変つたんだから、二ヵ月、三ヵ月の変化でもこれば大きいということをこれまで言つて来た。不幸にして情勢はその通りになつて来ております。大蔵大臣はそういう質的な変化を遂げておる日本の今の経済、それから今後のインフレ見通し、これによつて財政規模が縮小するか縮小しないかが分れて来ると思いますが、これはどういうふうにお考えになつておりますか。
  58. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今の状態をインフレと言われておりまするが、私は必ずしもそう思つておりません。ただその危険性があるということは認めておりまするが、インフレの状態というほどにはなつていないと思います。急激に輸出が殖えて行く、而うしてこれに対するために急に輸入を殖やさなければならん、こういうことになりまして、通貨も或る程度殖えておりまするが、私は徐々にいわゆる好景気になつて行くとこう思い、又そういうふうにさして行くように努力いたしておるのであります。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は今後の日本情勢はいわゆる好景気になつて行く、先ずそういうふうに持つて行きたいと言われているのですが、最近の物価騰貴の原因を具体的に検討して見れば、そういうふうにはなかなかならないと思うのです。それで大体私はこれまでのインフレの原因は、朝鮮動乱後の特需の発生、輸出の増加、これが第一、第二が世界物価の高騰、これがまあ第二段階として現われて来ている。それからもう一つは二十六年度予算に関連して終戰処理費が援助費よりも多くなつて来ている、これもインフレ要因だと思う。それから今後のいわゆる日米経済協力によるインフレ要因というものが、これは今後のことです。こういうことが物価騰貴の原因になつていると思う。ですからこの四つの点について見通しがはつきりすれば、それが單に好景気と言われるようなあまいものであるかどうかがわかると思う。それで私はこの四つの点について具体的にお伺いしたいと思う。  先ず外為会計です、いわゆる輸出増進と言われまして、それがいわゆる貿易インフレと言われましたが、政府は外為会計をもひつくるめてそうしていわゆる中立予算、ニユートラルな予算と言われたのですが、これも全部ひつくるめて、対民間收支は支拂超過ではない相当の撒布超過になるのではないかと思うのですが、これはまあ本会議においてちよつと大蔵大臣に質問いたしたのですが、十分なお答えがなかつたのですが、私はいわゆる中立予算じやないと思う。それは大蔵大臣は無理にそういうふうに計数的に大蔵省かどこかでこしらえたと思うのですが、私は明らかに対民間收支においては、私は相当撒布超過、丁度二十五年度と同じようなことになると思うのですが、この点如何ですか。
  60. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 二十五年度におきましては、木村さんが一年前に非常にデフレ予算だ、こういうようなことを言つておられましたが、特需関係その他であなたの心配されたようなデフレ予算でなくて、結果は世界情勢の変化によりまして、政府関係ではインフレ予算になつて、即ち撒布超過になつております。併し二十六年度においては今度は木村さんはインフレ予算だと本会議言つておられましたが、とんとんに行くのであります。(笑声)それは数字事務当局から説明さしてもよろしうございます。だからインフレ予算とかデフレ予算と言いましても、これは当初においてはそういうふうに見方によつて違いましようが、世界情勢の変化によつてあなたのおつしやつたデフレ予算インフレ予算になつて来た。これはもう私も認めます。昭和二十四年度におきましてはかなりデフレ予算、これはもう仕方がありません。併し二十五年度はようやく回復していわゆる中立予算・均衡予算だ。当時は超均衡予算だというので非常に非難を受けましたが、実際は超均衡予算でなくて、相当撒布超過の予算になつて来ております。あなたは今度はインフレ予算と言われましたが、見ておつて御覧なさい。大体来年の今頃は大体いい予算なつた、こう言われます。(笑声)それはなぜかと言いますと、昭和二十六年度の八百億のインフレ予算なつたというのは、特需関係の輸出の増加、それから輸入ユーザンスの二千五、六百億円の金を日銀から出して、これで八百億円のインフレ予算なつた。併しユーザンスの期間が過ぎてスタンプ手形が決済せられるようになつて来ますと、相当なデフレ的な傾向になる、私はそういうような見通しで二十六年度は名実ともに結果から言つても均衡予算になると思います。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大蔵大臣只今そう言明されたことは、これは速記録に残つておりますから、又あとで討論の資料になると思いますが、二十五年度は大蔵大臣も御承知通り非常に彈力性があつたわけです。千二百億の彈力性があつたわけです。一般会計におきましても、見返資金勘定においても公債の債務償還というものがあつたわけです。その彈力性によつてインフレを防止した。それにもかかわらず貿易特別会計では撒布超過になつて来たのです。二十六年度においてはそういうような彈力性がないわけです。二十五年度は一千二百億もあつたわけです。そこで二十六年度はインヴエントリーファイナンスの五百億の捻出に非常に弱らされたわけですが、二十五年度においては一千千二百億もあつたから百億の捻出には弱らなかつたのですけれども、一十六年度はそういう彈力性がないからインヴエントリー・フアインナンス五百億を捻出するために名目的な減税に切替えたいというような実情だと思うのです。そういう彈力性のない予算、その場合この点が私は相当なやはりインフレ要因を含んでいる。一応大蔵省のいろいろな計算によれば、対民間、対日銀、対政府勘定を入れれば辻褄が合つてくるのです。併しながら対民間收支においては撒布超過になります。一千七百億くらいの撒布超過になるように聞いております、そうしますと、対民間收支、対政府收支は年度末にはそうなるかも知れませんが、そういう計算ですが、対民間收支において非常な撒布超過であつて、あと対日銀との関係でそれが入つて来ない、要するにこれが輸入の促進だと思う。入つて来ない場合には私は丁度二十五年度と同じような、二十五年度は相当の引上超過であつたはずのが撒布超過になつてしまつた。プランとしては、計画としてはそうでないのですけれども、実際面において明らかになつている。この点についてはこの国会でニユートラル予算であつて言つてしまう問題でなく、必ずこれはその点からも一つ崩れると思う。これは意見になりますから私はあえて又追求しても物別れになりますから、この程度にやめておきます。  それからもう一つインフレ要因として重大なのは、特需だと思うのですが、この特需の見通しについて安本長官はどういうふうにお考えになつておりますか。
  62. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) いわゆる特需関係というのは、大体朝鮮動乱始つて以来、そのほうに関する車輌或いは労務費、修繕費というものが出ておりますが、これは今の段階においては相当殖えましたが、ちよつと朝鮮関係では輸出の関係になるのじやないかと思つております。将来どうなるかということは、今後の動乱の動き方如何によりますが、私はこの点については一昨日も申したように、朝鮮関係は動乱が落着いたとしても、あとの復興とか処置のためには日本としてはその点については協力してやらなければならぬ点があるから、朝鮮に対する関係においての輸出関係はそう急速に減るまい、こう考えております。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最近いわゆる新特需として、或いは又別需というような言葉で言われておるもの、これはインフレ要因にならないかどうか。例えばナシヨナル・ベルク・キヤリア・コーポレーシヨン、あの会社がタンカー、新聞の伝えているところによれば六万トンタンカー二隻ですか、五万トン八隻とか、こういうようなものを造つている。そうしてその資材日本で賄う。例えばそれの円資金を日本で賄うということになると、これはインフレ要因になると思う。或いは自立の関係或いは八幡製鉄所の関係、こういうものは資材日本で使うということになります。又円資金で日本で調達するということになると、これは部分的ならいいと思う。併しもう日立については約十五億か二十億程度の運転資金が出ているやに聞きます。資材日本で使う、資金を日本で賄う、こういうことになりますから、相当インフレ要因になつて来ると思うのです。こういうようないわゆる特需の変形、こういうものは今後相当殖えて来るのではなやかと思うのですが、いわゆる朝鮮動乱直後起つた特需、そういうものは今言つたような別需という方向に変つて来る可能性があるのじやないのですか。この点安本長官はどうお考えになつておりますか。
  64. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お話の点については、まだ将来の問題について今確たる見通しを付けておりません。ただ私は今お話のような点が仮に部分的にあつたとしても、それに対するあとの補給といいますか、原材料の輸入等の関係が確保されて行くということが大事なんです。お話のように日本の内地の資材、資金を使つて、あとの補給がなければそれはもうあなたのおつしやるように金だけ撒かれて品物がなくなるということで、私はインフレの大きな要因になつて来ると思うのです。その点は常に私どもは考慮いたしておるのであつて、従来の朝鮮に関する問題にしたところが、輸出が増進されることにしても、常にその後の補給を考えて行くということで輸入に関するあらゆる手段を講じ、その促進に努めているのです。出たつきりで日本が空になるということを想像すれば、特需が殖えることは当然インフレの要因になることはわかりますが、私はそういうことをさせんように努力いたしておる次第であります。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その輸入見通しによつてどの程度の材料を補給してくれるか、それから結局輸入見通しなんですが、これに関連して政府のいわゆる緊急物資の備蓄の問題ですが、今度法律に出されておる緊急物資輸入特別会計ですか、この二十五億というものはどういうふうにお使いになるのですか。これによつて緊急物資の備蓄がどの程度できるか、その見通しについてお伺いしたいのです。
  66. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは備蓄の意味では考えておりません。どちらかというと回転基金的なものであるのであります。特殊の品物につきまして、政府輸入して民間に拂下げたがいいという物が想像されますので、一応こういう会計を作つておるのであります。繰返して申しますが、備蓄でなく年生三回転乃至四回転くらい動くのじやないかと思います。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは非常に今まで備蓄のためのいわゆる緊急物資輸入特別会計と言いますか、そういうふうに御解されておりましたが、そうでなくいわゆる特需を賄うための原料を向うから持つて来てくれてそれを回転する程度のもの、そうなりますと、今までの備蓄のためのいろいろな政策はどういうことになるのですか、どの会計でおやりになるのですか。
  68. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 特殊の物件につきましては、回転基金と申しますか、これは買つておる間は備蓄という意味でしよう。併し備蓄のための分じやない、それでお話のように備蓄にどこを使うか、政府は備蓄を自分の計算においてやる考えはないのであります。この食管特別会計で主食をどんどん入れておりまするが、これは備蓄と言えば言えるかも知れませんが、特に今までと違つて政府の会計で物を買込んで置こうという計画はいたしておりません。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは我々が誤解しておつたのか、或いは性格が変つたのか知りませんが、この緊急物資輸入特別会計というのは今後はどういうふうに発展して行くわけですか。今まで通りやはり置かれるのか、この機関が備蓄をやるようになるのかどうか。
  70. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 今後のことは今申上げられませんが、大体二十五億円でどのくらいできるか、国際情勢の変化によつて私は或る程度その外貨の借入金、外貨を借入れてそうして回転を多くしよう、或いは政府の預金の範囲内において政府の金を使おうということはインフレにならないから差支えないのじやないかという考えを持つてつたのでありまするが、とにかくこの際は二十五億円だけでやつて行こう、こういう結論が出ました。今後やはり情勢の変化によつて一般会計から二十五億円以上の出資をするということはなかなか困難で、若し情勢が悪くなれば外為会計から外貨を借入れる、或いは政府の当座預金を日本銀行に預けておるので、幾分かをこれに借入れて回転基金に使う、こういうことは考えられる余地がありますけれども、只今のところそれも考えておりません。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまでこの輸入が非常に重要だ重要だと言われましたし、今後の物価騰貴相当大きいと見通されるので、政府は備蓄輸入というものに非常に重点を置かれたわけです。ところが今のお話を伺いますと、この緊急物資輸入特別会計はそうでなく備蓄のためのあれではない、一部の特殊の資材輸入して、それが間接的に備蓄になるかも知れませんけれども、直接そうでないと言われますと、非常に今までの政策が買被られておる、実際はそういうようなことは政策として行われていないというように我我感じられる、成るほど二十五億円でそんなことはできつこない。食糧だけでもできつこないと思いますから、今後のやり方については大蔵大臣から一般会計から繰入れるかどうかは別だけれども、預金部資金或いは外貨等を借入れて、外為から借入れてやると言われましたので方向はわかつたわけであります。  それから第二のインフレ要因としてお伺いしたいのは、世界物価の動向ですが、これは我々としてもわからないのですが、非常に重大であるということは、もう一般の常識だと思うのです。そこで私お伺いしたいのですが、特需或いは輸出の増加によるインフレよりは、いわゆる貿易インフレ輸入を促進すれば一応時期的の信用インフレの状態はあつても、やがてはこれは落着くということは理論的にも証明される。併し海外の物価高はこれはどうやつて防止していいか、これを防げるか防げないか、それから大蔵大臣は今まで国際物価にさや寄せさや寄せと言つておりましたが、日本がさや寄せした場合には、海外物価より日本物価のほうが高くなつておるので、これまで日本物価の方が高くなつておる原因として、日本物価のあれが公定価格でグレー・マーケツトの数字じやないと言われておりましたけれども、常識としてどうしても基礎物資は日本にはないのですから、海外で十上れば日本で十一、十二と上るのは当然だと思うのです。国際物価にさや寄せすることは困難だと思う。国際物価が十上れば日本も必ず十一、十二と上るのは市場の関係から言つても、原料の配分関係から言つて日本よりそういうことがないのです。日本はますます国内ではそういう物の買漁りは世界市場より多くなると思うのです。ですから大蔵大臣のように国際物価さや寄論で行くと、これはどんどん日本価格騰貴は私は進むと思うのです。大蔵大臣はやはり依然として国際物価がどんどん上るのは仕方がない、さや寄せして行くよりしようがない、こういうふうにお考えかどうか。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済の脆弱な日本大蔵大臣として、世界の物価を抑える力はございません。而して我我は国際貿易に参加しております関係上、私はそれに附いて行くことは止むを得ない。私が国際物価にさや寄せと言つたのは、これは経済の原則でございます。特に私が言つておるのは、米価が少し安過ぎる、米価につきましてはさや寄論はときどき言つておるのでありますが、これは他の機会に申上げておるように、やはり国際物価に附いて行くよりほかに仕方がない。国際物価の上りようより成るべく下に下げたいというのが私の念願でありますが、大体お話のように日本の脆弱性から、品物によつては或る程度国際物価の上りよりも進んだのがございます。そこでお話の意見につきましては、できるだけ早期に安く入れようという考え行つているのであります。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、日本の経済は脆弱であるから止むを得ないというようなお話ですが、脆弱であるからこそ世界的なインフレの波をじかに被つちや困ると思うのです。これに対して政府は何ら対策を施そうとしていないことは、今までどなたに聞いても……、私はこれでいいかどうかと言うのです。国際物価がどんどん高くなるのは止むを得ないとして放任しておいていいかどうか。政府はこれに対して何らかの対策を、これによる国内価格騰貴に対する対策を講じないでいいかどうか。それで若しも講ずるならば研究して置かなければならないと思うのです。これまでは放任です。そうしたら国際物価が上るに任せていつまで経つても如何に輸入を促進しても国際価格は高くなるのですから、今までは輸入すればインフレは抑えられていたのですが、そうじやない、今度は国際価格がうんと高くなり始めてからは、今までの貿易インフレ事情が違うのです。貿易インフレのときは、輸入すれば物資需給の調整において物価が安定しますが、国際価格のだんだん上るのをどうして防ぐか。これは私は放任しておけないと思うのです。政府はこれに対して何ら対策を施そうとしない。国際物価騰貴は止むを得ない、やはりそういうふうにお考えでありますか。
  74. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際物価は我々の手でどうこう左右できないのです。併し国際物価が上るにつれて、それに余り先きに進まないように、どちらかといえばそれの低位にありたいという気持言つているのであります。何も政府が、国際物価を上り放題にして置く、これはその通りです。併し国際物価値上り日本の経済により以上の悪影響を及ぼさないようには努力はしておるのであります。国際物価と申しましても、個々の品物について言えば日本が非常に安いのもあるのであります。そこはでこぼこもありまするが、全体としてとにかく国際物価とかけ離れないように、そうして日本の経済が円滑、安泰に行くように施策をとつております。又何どきでもより情勢に応じた施策をやるということは考えております。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは国際物価即ち世界的のインフレの波をじかに被ることはよくないということについてはわかりました、政府の言う……。それに対しでそれじやどういうふうに防ぐ、どういうふうにして防ぐというよりも絶対に物価が上らないようにするということは、大蔵大臣の言われるように脆弱な日本としてはそれはできないと思うのです。その向うのインフレの波及をどうして防ぐか、影響を小さくするかというその対策です。どういう対策をお考えになつておりますか、お伺いしたい。
  76. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お話の点御尤もですが、これは私は政府としては物によつて考えて行くべきだと思つております。国際物価の上つて来るのに影響されて、それらの関連した原材料が日本に入つて来れば、当然それから起る生産されたもののコストが上つて来るが、その方向に向つてつたときに、国民生活必需物資であるものについては、できるだけこれは影響を少くさせるために、目下補給金の問題であるとか、或いは消費者に負わす場合に如何なる方法をとるかということについて、先ほど大蔵大臣も申しましたように、財政的の問題も考究中であるということは必要であります。従つて国民生活必需物資に関する価格については或いは財政措置等によつてこれは考慮をして行く、然らざるものについてはこれは再生産をされて更に輸出の方向に向い、その鉱工業関係に従事するものについてはおのずから生産指数が上り、賃金関係にもよい影響があるわけであります。これは物によつて価格の如何によりますか、上り方如何によるか、暫らく見ておつてもよい点があるのではないか。従つて残る問題は結局定額賃金所得者に対してどうなるかという問題だと思うのです。これらについても極端な値上り、できる限り生活必需物資等については今言つたような方向で、上らない方向の財政的措置をとるということは中心考えますが、これも程度によることでありますから、それが極端に動くというような場合においては、そういう方向に向つても権衡を失しちやならん。こういうすべての点について只今研究中でありますから、それを今どうするかということは今申上げられませんが、大体の方向として国民生活必需物資の価格に対する問題と、再生産されて来るものの問題、鉱工業関係のものというものは区別して考えて然るべきと考えております。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体政府政策、対策の輪郭は明らかになりましたが、一つは重要物資に対して補給金制度、これまでのと違つた意味での補給金制度考える。それから重要物資についてはこれは再統制という言葉はお使いになりませんでしたけれども、調整をやる。従つて再統制の問題、それから補助金の問題、これだけで対処できるかどうかということなんでありますが、この前にも私は周東安本長官にちよつと質問したのですが、関税の問題とそれから為替の問題です。私はどうしても為替相場をできれば調整しなきや私は困難だと思うのです。池田大蔵大臣は常に二、三カ月ぐらいのことを、変動を考えて対処してはいけないと言われますけれども、今後の、やはり最近の国際情勢の変化は二、三カ月月くらいの問題じやないかと思うのです。相当本質的に変つて来る。又日本の経済も恐らく地方選挙が済んで又国会が開かれる頃、決定的な方向がはつきり変つて来ると思うのです。従つてどうしても日本としては国内でこれまで相当自由経済をとつて来まして、これを統制の方向に、今部分的な統制の方向に行くようでありますが、私は為替をそのままにしておいて、そのままにしておいて国内だけで操作するというのには限界がある。どうしても私はこの為替の問題は調整によつて国際物価から来る騰貴インフレは抑止しなければならない、こう思うのですが、安本長官はどういうお考えですか。全然そういうことは問題にされたことはないのでありましようか。
  78. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) まだ日本の経済力の状況から見まして、今為替を変更する意思はないのであります。よく非常にアメリカの方の物価が上つて日本に外貨資金が朝鮮事変以後溜つて来た。この際もつと日本の為替を切上げたらどうかという議論が出たり、そのうちどんどん外国の価格影響されて日本価格が上るということになると、今度は切下げたらどうかというような話が出ますが、これは非常に日本の前途を憂うる方から見れば尤もなことでありますが、為替のごとき重要な問題を相当短い期間、激動する状況に応じて上げたり下げたり簡単にできるものではないと考えます。よほど日本の経済がしつかりして、金保有量もたくさん溜まつて来るということになつて、或いは切下げるいうような要求ができるかも知れませんが、まだ今の状況下においてはそんな強いしつかりした根拠に立つておらないのであります。日本の経済を自立した後に考えられれば考えられることかも知りませんが、日本の現在の状況下においては、為替をいじるべきものでないと考えております。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その為替に関する考え方は、安本長官は私は御理解ないと思う。先刻世界通貨基金で為替が問題になつたときには、脆弱な国には為替は変動させない代りに、新たに国際開発銀行というものを設けて援助してくれる、援助によつて為替相場を堅持する、据え置いて……本当は援助ができなければその為替相場は、その国の経済情勢の変化、国際経済の変化に応じて常にアジヤストできるようにするのが本来なんです。脆弱であれば脆弱であるほど、その国に適応した為替相場を作らなければならん。ところが国際通貨基金においては、為替相場を一律に制限しましたから、その代りとして、為替資金を援助しなければならなくなつた。ですから日本は為替相場をこれで変えないなら、援助がなければならん、それだけの。それをカバーする援助がなければ、為替相場を国内経済に応じてフレキシビリテイを以てやるのが本当だと思う。自由党の政策は私はおかしいと思う。これは衆議院において都留車人氏も公述されたそうですが、国内経済では自由経済、国際経済では為替堅持政策、国際経済と国内経済と遊離している。国際通貨基金で一番問題になるのはそこです。ケインズが問題にしたのもそうです。イギリスの問題にしたのもそうです。為替相場をどうして自国の有利にするか或いは為替相場に自分の国の経済を犠牲にするか、国内経済が大切か、国際経済が大切かという問題なんです。そういう意味から、為替相場に対するお考えはまるつきり私は御理解がないと考える。弱いから変えないのだ、それじや反対なんです。弱いからこそ、アジヤストしなければならん、変えなければ、それに相当する援助がなければならん。これは意見になりますから、私はこれ以上お伺いいたしません。併し十分こういう点は政府におかれましても真劍に御検討願いたいと思う。私はこういう重大なる、これから日本の経済の重大なる転換期に入ると思われますので、感情とか、党派的な利害で御質問しているのじやないのです。真劍にこの点、政府も、やるやらんにかかわらず、この問題は真劍に御検討願いたい。そうじやなければ私は、ドクター・フアインも日米経済協会の講演で言われているのでありますが、あの国際資源の買付競争から、今後の国際物価騰貴というものは、私はこれまで想像しているようなものじやないと思うのです。こういう意味で、国際物価影響については、もつと政府は本腰を入れて私は検討されんことを希望いたします。  それから次に、もう一つインフレ要因について、終戰処理費と対日援助の関係、これは一つインフレ要因になると思うのですが、終戰処理費の関係は今後どういうふうになるか。私はこれはインフレ要因と見るのですが、大蔵大臣はどうでしようか。
  80. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はあなたが、終戰処理費が対日援助よりも多くなるからインフレ要因になるという理由は、ちよつと呑み込めません。御説明願えれば結構であります。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 終戰処理費は我々に配付された予算案によりましても、政府計算では対日援助費が、円に計算しまして五百八十何億です。それに対してこの終戰処理費は一千百億、その差額は、これまでは終戰処理費は大体援助費と見合つてつたと思うのです。援助費に裏付けられたと思う。これは正確に勘定して見合つていたのじやない、実際において見合つていた。ところが今度は終戰処理費のほうが対日援助費よりも多いということは、その差額だけは日本の再生産に寄與しないところの財政需要が起つて来た、こういう意味であります、差額だけは……。成るほど過去を通算して見ますと、終戰処理費のほうが対日援助費よりも少い。併し年度にして見ますれば、確かに終戰処理費のほうが多いのでありますから、この点はやはり終戰処理費というのは、御承知通り用途です。これは間接には生産的になるかも知れません。あと兵舎その他を残して行つてくれれば、或いは道路を作つた場合、間接的には日本の再生産に寄與するかも知れませんが、直接には終戰処理費のほうが対日援助費より多い部分は、非再生産的な需要である、こう見るべきだと思うのです。それは大蔵大臣どういうふうにお考えですか。
  82. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は頭が悪いのでよくわかりませんが、終戰処理費と対日援助費の多い少いによつてインフレ要因であるかどうかという問題じやないと思います。そこで終戰処理費は一般会計のあれでございます。そう見るべきものだと思います。対日援助費は特別会計、そうしていつ使うかということが問題だと思います。そこであなたがお触れになつたように、終戰処理費は、大体計算のしようでございますが、軍の換算率でやつて行きます、即ち終戰直後に一ドル十五円、それから一ドル五十円、一ドル二百七十円、一ドル三百六十円の計算で行きますと、大体四十億ドルになります、時間のズレはありますが……。而して向うからの援助が合計で二十億ドルぐらいでございます。そうしますと、今まで終戰処理費のほうが少かつた時はインフレ、今度終戰処理費が多くなつて来ると、あなたはインフレと言うのですが、私はどうもあなたのおつしやることは頭に入りません。とにかく終戰処理費が援助費より多くなつたからインフレ要因であるというのは、私にはどうも呑み込めません。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは終戰処理費に対して、対日援助の裏付けが全然ない場合を考えればはつきりすると思う。例えば軍事予算が現われて来たならば、軍事予算を税金を以て賄つても、公債を以て賄わなくても、相対的なインフレになるわけです。日本生産物の中から、非生産的な用途にそれだけ振向けられる、それだけ価値が再生産的な流通面から脱落する、こういう意味インフレ的要因です。私は必ずしも赤字公債を発行しないからインフレになるとは言いませんが、私はそう見なければおかしいと思います。そういうふうに見て、輸出と特需と民需、こういうものの調整を考えなければおかしいと思うのです。大蔵大臣はこの点よくおわかりでないようでありますから、これ以上私は御質問いたしません。  それからもう一つの今後のインフレ要因ですが、これは今後のことに属しますから、私はそうはつきりしたことは無論言えないと思いますけれども、政府はこの際輪郭だけは明らかにして頂きたいと思います。これまで私は日米経済協力の問題について政府答弁されるのは、非常に困難な状態に置かれておりましたので、質問いたしませんでした。併しながら本日の新聞を見ますと、アメリカにあきまして、アメリカ国家安全保障会議、ここで日本にいわゆる軍需品の生産させるために、戰略物資の輸出をされることを許可した、こういう電報が入つております。UP特約の電報で、各紙に皆相当大きく取扱われております。而もその中では、こういうことに関連する国内の需要ですか、それからこういうような注文が相当早く来て、国内でも相当こういう注文を受けるであろうということを書いておりますので、これはそんな先のことでもないようであります。勿論電報でありますから、又政府に直接こういうことが来たのでありませんから、これについて直接どうこうと質問するのは当らないと思いますけれども、私はこの影響というものを考えて置かなければいけないのじやないかと思うのです。私はこれは非常に重要な影響が来ると思うのです。資材面からも、資金の面でも、或いは財政面においても広範な、又国民生活の方面においても広範な影響が来ると思います。政府はこれに対して相当の心がまえを持たなければならない。又これに対する対策とか、準備とかいうものを用意しなければならないと思いますが、これは勿論御覧になつたと思いますが、この影響をどういうふうにお考えになりますか。この点先ず安本長官に御質問したいと思うのです。
  84. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お話の新聞は私も今朝拜見いたしました。アメリカの高官がお話なつたということが出ておりますが、これはまだ別に正式に政府にどうこうしろというお話も来ておりませんから、私どもはこの点について、土台にしてお話を申上げるということは不可能であります。併し私ども恐らく今後といえども日本の経済事情等を考えずに無理押しに、命令的にいろいろなことがやつて来るとは考えません。私どもは常に今後のいろいろな変動に処して行く上におきまして、国民生活の維持ということを中心に置いて、すべての計画を進めて行きたい。従つて仮にいろいろな話が進んで参りましてもその心がまえを持つてすべてに処して行きたいと考えております。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 安本長官は、いろいろのそういうようないわゆる準戰時的な生産態勢が起つて来ても、国民生活水準の確保には全力を挙げたいと、こういう答弁なんです。そこでこれは私は非常に一番重要な、我々国民としては問題でありますので、重ねて御質問したいのですが、日本経済自立三ヵ年計画においては、国民生活水準を二十五年度八〇%、二十六年度から三%ずつ上げて二十八年度八九%まで上げる御計画だつたのですが、これは確保できる見通しでありますか。又確保されるように努力される御用意があるかどうか。
  86. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) いろいろな状況の変化が起つて来ると思いますが、併し私どもとしては最低線は確保、維持していきたいと、かように考ております。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところがですね、その線がすでに崩れていると思うのです。この点はもういろいろな統計資料で明らかであります。政府は今まで嘘を言つていると思うのです、国民に対して……。又悪く疑えば統計調査によつて、そういう点もあるやに、今までのような政府のやり方では私は誤解したくなるのです。CPIの作成にしましても、だんだん調べて見ますと、明らかになつたことは、生活水準の低い地域を調査対象に変えたということがCPIが下つた大きな原因になつたように、私たちの調査ではそうなりました。例えば杉並区などを調査対象にとれば、これまで杉並区は八割ぐらいの調査対象であつたのを、これを少くして、そうして江東区とか、或いはそういう下町のほう、これを調査対象にした。また全国的には人口の稀薄な所を調査対象に変えて行つた、こういうふうにすれば低く出るのは当り前です。併しその上に一月のCPIは、これはもう新聞も報じています通りに、非常な騰貴をしております。これまで生産財よりも消費財の値上りのテンポが遅かつたので、政府物価騰貴は大したことはない、大したことはない、こういうふうに言つておりました。ところがCPIは一月になつて非常な騰貴を来たしたわけです。東京都の消費物価指数は五・七%も騰貴しているのです。これによつて、これまで政府言つていたあの生活水準は私は維持できないし、崩れて来たと思うのです。これまでは成るほど生産財よりも消費財の物価騰貴がテンポがゆるかつたのです。最近は消費財の物価騰貴が生産財の騰賞に追付いて来ておる傾向を示しておるのです。これはもう非常に重大な物価の動きの変化だと思うのです。で長官は八〇%を維持するつもりだと思いますが、もう崩れておるのですけれども、まだ崩れておるとお認めになつておらないのですか。
  88. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 成るほど御指摘の点、昨年の十月頃までの状況と、そののちの状況は変つておることは事実であります。ただ私ども別に固執も何もしないのですが、あれから以後、主として工業賃金指数というものは、名目賃金指数が増加しております。併し価格騰貴があつたために、実質賃金、生計費の関係というものはいろいろ変わつて来たことは事実でありますが、今後の処置といたしましては、先ほどから申上げているように、輸入に関しましても、国民生活の重要部門であるところの食糧、或いは衣料品原料であるところの羊毛とか、綿糸とか、原綿とかいうものについて、特に数量的確保を図るということと共に、それらに対しては先ほど物価問題に対して申しましたように、価格についてもいろいろと今後の状況に応じて処置をいたしたい、こういうことが今後考えられております。そういう面と併せつ、私は国民生活に必要な物資の量、並びに価格についての処置等によつて、実質的な收入の増加を図らせるということが一つの狙いだと思います。そういうことによつて、私は先ほど申したような水準の維持に努めたい、一般的鉱工業生産については、生産指数が上つておる。これはあなたもお認めになつておると思う。生産指数は上り、物の量は殖えているが、一方極度に消費資材値上りその他で、供給が、或いは思惑によつて引込んだという関係、殊にCPIに影響した大きな点は、繊維製品が非常に大きなものである。そういう点を将来の施策としては考えておりますので、これはまだ将来ですからわかりませんが、私どもはでき得る限りそういう面についての措置を講じて、生活水準の維持に努めたい、かように考えております。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現状ではどうですか。生活水準は、このCPIですね、一月において東京都、何%ですか、五七%も騰貴しているのです。ですからこれは生活水準は私は一月においては下つた、こういうふうに考えます。安本長官はどうなんですか。
  90. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 今申しましたように一時的にちよつと下つておる恰好であります。それは将来に対する考え方として、只今申しましたような処置を講ずることによつて維持を図りたいと考えております。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはまあ新聞の伝えるところですから、やはり政府はわからんとおつしやるかも知れませんが、大体二十五年度の消費水準、生活水準は大体今後据え置いて余り上げない。上げないというのも、実際には上げようと思つても困難であると思うのですが、そうしてその余剰を以て日米経済協力態勢のほうにこれを導入する、こういうふうになるであろうと言われておるのです。で、安本長官はやはりあの自立三ヵ年計画のように、生活水準は上つて行くというふうに、国民にそういうふうに考えさせてよろしいと思うのですか。事実できないものを、できない相談のことを、又條件の変化によつて情勢変化でできなくなつたものを国民にそう言うことは、私は嘘を言うことだと思うのです。でその実際の問題を、事実のお見通しをお伺いしたいのです。
  92. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) これは自立三ケ年計画をお読みを願えばわかりますように、たびたびここでも御質問があつたときにお答えしておりますが、あの計画というものは、国際情勢の激動のさ中にあつて一つの基本的、総合的の計画を立ててあるのだ。事実このことの遂行は一にかかつて今後の情勢の如何によると書いてある。従つて東に私はよくなれば、もつと條件がよくなつたならば、もつと進んで上げられることもあろうし、又悪ければ下らざるを得ないということははつきり言つております。我々は併し政策としてはできる限り早く、又少しでもよりよく生活水準が上がるように努力はいたしたい。併し一応最低限に考え條件を満し得るとしても、あのくらいのことは二十八年までかかつてやらなければならないということを言つておるのであります。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで他の委員の質問に対しましても、安本長官は、今後の日米経済協力態勢と自立三ヵ年計画との関連を質問している他の委員に対しても、自立経済審議会の報告書というものは彈力性がある。そうして今後の経済政策の運営は日本経済を取りまく與件の変動に対応して常に彈力的に行われなければならない。こういうふうに言つてあるので、ちやんと逃げ道が作つてあるのだ。こういうふうに御答弁になつていますが、これは、自立経済審議会の報告書はそうであります。併し安本長官がこれを基礎にして国会報告された財政演説の中では、国民生活水準に関する限り、そういうことは言つていないと思うのです。それで我々は自立経済審議会の與件がこれは変化する。併しこれを基礎にして実際に組まれたのが二十六年度予算だと思う。それで安本長官の財政演説も、現実に即応して自立経済審議会のあれを取入れて演説されているわけです。ですからそれはその與件が変つたのではおかしいので、一応與件の変るということを前提にして、その條件を取入れて二十六年度予算も組んでおり、我々予備審査のときには、ずつと自立経済審議会のこの計画に大体従つで二十六年度予算も組んだ、これは実施計画であつて、ペーパー・プランじやないということを事務当局の人も言われまして、そうして我々も従つて三万年計画と公共事業費の関係とか、三ヵ年計画と国民生活水準の関係、いろいろずつと検討して来たのです。ところが安本長官の御答弁では、三ヵ年計画というものは何だか非常に頼りないものになつて来た。少くとも二十六年度に関する限りは実施計画なんですから、動いてはいけない。その後においてはいろいろ動くかも知れませんがそれは私は、安本長官はああいうふうにいい按配に、又当然でありましようが、あの報告書に彈力性がある一項が入つてつたからお逃げになつておりますけれども、私は二十六年度予算に関する限り、この八三%の、あの計画に盛られております国民経済水準、二十五年度八〇%、二十六年度昭和九―十一年の八三%、この線は飽くまでもこれは維持される考えかどうか。又その方面に努力ざれるかどうか、重ねてお伺いしたいのです。
  94. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 二十六年度に関しましての計画の遂行についても、でき得る限りその線に沿うてやることについては間違いがないのであります。併しその努力は情勢の変化によつて、変らざるを得ない情勢ならば、それに応じて措置すべきであつて、我々は先ほど十二月、一月の関係においてはCPIが下つたということについて、一時的の関係においてとにかく收入は上つたとしても、価格騰貴によつて実質的の收入が下つて来た、併しその間においてのCPIの食糧費の占める割台からその関係が変つて来たということはありますが、今後の状況によつてはそういう面があればあるほど、国民生活に必要な食糧とか、衣料原料とか一番問題になつた点について、量的な措置並びに価格に関する措置を考えて行くことによつて、でき得る限り維持したいと、かように考えておるのであります。
  95. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 木村君の持ち時間はまだ相当あるかと思いますが、一応十二時を過ぎておりますので休憩にして頂いて、午後続行することにいたしたら如何でございましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 波多野鼎

    ○委員長(波多野鼎君) それでは暫く休憩いたしまして、木村君の質疑を午後続行することにいたします。    午後零時十六分休憩    ―――――・―――――    午後一時四十七分開会
  97. 波多野鼎

    ○委員長(波多野鼎君) 休憩前に引続いて予算委員会を開きます。  木村君の質疑を続行たします。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 午前に引続いて質問いたしたいと思います。午前中にインフレの現状と見通しにつきまして政府に質問したのですが、要領を得なかつたわけなんです。まだ大蔵大臣にもこれに関連して御質問したいことがあるのでございますけれども、労働大臣がお見えになつておりますから、これに関連して労働大臣に御質問申上げたいと思うのです。  これまで我が国の現在及び今後におけるインフレ要因として、まあ特需とか輸出、特に特需については、今後の別需です、日米経済協力に伴う別需、そういうことが現われて来ることはこれはインフレの要因になる。又世界の物価高もインフレ要因になる。終戰処理費が見返資金よりも多いということもインフレ要因、こういうふうにインフレ要因を考えて見ますと、今後の日本インフレはですね、決して楽観できない状態にあるわけです。それで物価騰貴ももう相当の状況になつておりまして、現にこのCPIも一月においては非常に上りました。これまでは卸売物価が先頭を切つてつておりましたが、最近の注目すべき現象は、消費資材が上つて来たということです。そこで労働者保全、労働者保護の行政を担当しておられる労働大臣は、最近の物価騰貴に対して労働者を保護するという見地からどういうふうにお考えか。これから一番私は重要になるのは、いわゆる又物価が上れば賃金が上る、賃金が上ると物価が上る、こういうことは私は必然的に起つて来ると思うのであります。こういうインフレの面から見て、労働大臣は、これまで労働者はインフレによつて非常に大きな犠牲をこうむつたんでありますから、その労働の再生産を確保するという見地から、国民生活の安定という面から、この最近の物価高に対してどういう考えを持つておるか。そうして実質賃金が切下らないような、どういうふうな構想を持つておられるか、この点について先ずお伺いしたいのです。
  99. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答え申します。先刻来安本長官から縷々御説明を申上げておりまするように、国民生活の維持向上ということを計画の基調としてすべての計画を進めて参る、それによりまして国民生活の生活水準が低下せざるように、実質賃金の面におきましても向上を期するようにあらゆる努力を傾注するということをはつきり申上げられて、大体明らかにせられておると思うのであります。木村さんの御指摘の一月の物価情勢、私のほうは実はまた的確にそれを捕捉いたしておりませんが、十二月までの状況を見まするに、六月の朝鮮動乱後その影響を受けまして、八月、九月頃、この二ヵ月実質賃金の多少の低下を来たしております。十月、十一月には事変動乱の当時を上廻るところに回復をいたしておりまして、十二月はこれはもう異常状態でございますから、取上げることはできないかとも存じますけれども、一月の状態は十月、十一月の状態をほぼ持続をいたしておるのではないか。今後、安本長官が申されておりまするように、食糧或いは衣料の確保、同時に経済活動の活濃化に伴う賃金の向上、大体懸念ない状態で推移をしているのではないか。特に私どもの立場からいたしまして、そういう消費物資の確保と消費物資価格の安定については、特に強く安本、大蔵当局に要請もいたし、絶えず連絡をとつておるような状況でございまして、今後もこの点につきましては十分の注意をして参りたい、かように考えております。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 消費物価の高騰の問題ですが、これについてはまあいろいろ議論がありますが、ここで繰返すのはやめますが、九月からCPIを変えたということ、これも一つの問題ですが、要するに最近の一番問題は、一月になつて消費者物価指数が急騰したというところに非常に問題があるわけです。総理府統計局ですでに発表しておるんですから、それを御覧頂きたいのです。前月に対して五・七%という高騰を示しておるんです。そこでこれまでの傾向も問題でございましたけれども、最近一番問題になるのは、一月になつて非常にみんな心配したように卸売物価の高騰に遅れて消費者物価が今度は上つて来たというところに問題があるのです。ですから一月以前については問題はありますけれども、一応労働大臣の御答弁のようであるとしても、一月からの物価高騰というものは新たな観点から検討されなければならん問題です。非常に重要な問題になつて来ておると思うのです。五・七%も前月に比して高騰したということ、それでもやはり実質賃金が大体ほぼ同じと言えるかどうか。それから今後の物価騰貴の問題は、卸売物価、或いは生産財物価騰貴がこれまで問題になつていましたけれども、今後消費者物価騰貴が問題になるということを、これは示唆しておるものだと思う、暗示しておるものだと思うのです。ですから労働大臣は当座逃れだけでなくで、この問題は相当重要な意味を持つておるんです。一つの示唆なんです。ですからこういう傾向対してどういう手を打たなければならんか。それから先ほど食糧、衣料を確保すれば大体において実質賃金は確保できるであろうというお話ですが、それに対してどういう手をお打ちになるお考えか。その大局については、労働者の実質賃金を切り下げないという方針については、これは反対だと誰も言いつこないんですから、問題は具体的な対策、それが実際に効果的だかどうかが問題になるので、この点について、労働大臣は今通り一遍の話で、安本長官大蔵大臣におんぶして、この前も私はお伺いしたいのですけれども、やはり労働行政を担当する労働大臣としてどういうオーソリテイを以て、みずからの権威を以てどういうふうにしなければならんか。今後の消費者物価の注目すべき高騰に対する対策、それから衣料、食糧確保に対する対策、食糧にだつていろいろな問題があります。今後消費者米価も上げるというような問題について、これをどうするかという問題です。こういう点について、そういういい加減な通り一遍の答弁では困るんです。具体的にこの二つの問題に対する対策をお伺いしたい。
  101. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 物価賃金の関係について、私どもいい加減に考えているというようなことは絶対にございません。絶えず安本、大蔵関係当局と連絡をとつて、先ほど申上げましたようなことが具体化せられるように要請をいたしておりますから、その具体的方法についてはそれぞれの関係当局からお聞き取りを頂きたいと思います。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全く労働行政を担当する大臣として御答弁になつていないと思うんです。労働省としてはこういう考えを持つているという対策がおありになるわけです。それを実行する面については、それぞれの行政官庁がありますからそうでありましようが、それじや全然労働問題に対して、それから労働再生産の上からも労働者を保護する、そういうことに対して何ら指揮権がないというふうに断定するようほかないんです。殊に自由党内閣の一番の欠点は労働行政にあると思うんです。今後一番重要な消費者物価騰貴、衣料、食糧を確保して実質賃金を切下げないようにする方策について、ただ大蔵省或いは安本と相談してやる、そんな心細い御答弁では満足できないんですが、これ以上御質問しても同じことになる。要するに労働問題に対して真劍に労働省は考えてない、こういうことを断定するよりし方がありませんから、その問題については、これ以上御質問しません。質問する勇気を失うわけです。  次にもう一つ重大な労働問題についてお伺いしたいんですが、最近の例の臨時工の問題です。これを労働大臣はどういうふうになつているか、これが非常に殖えております。朝鮮動乱後の日本経済の一つの特徴は、生産価格は非常に上りましたけれども、雇用指数が上らない、雇用が殖えないというところに非常に大きな問題があると思う。而も雇用は臨時工という形でこれが激増している。安本調べに明らかに出ております。労働大臣はこの臨時工の問題をどういうふうにお考えか。9本来ならばこれは労働者を保護する労働基準法の違反にならないかどうか、労働行政の上から言つて、それと予算していると思うのですが、この点について御見解を承わります。
  103. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 臨時工の問題が基本法に違反するかしないか、臨時工にいたしましても、基準法は適用せられておりまして、基準法違反ではないと思います。なお臨時工が漸次常用に転用せられて参りますということは、これはもうお認めになつて頂けるだろうと思います。試用期間として臨時工の制度を持つておるということは、けだし止むを得ないことではないかと思います。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただ止むを得ないというだけで、今後それをだんだん本工にして行つて、臨時工では労働保護の恩典に浴し得ないのです、いろいろな厚生施設、会社のですね、そういう意味で非常にこれは低賃金、労働強化をされていると思うのすが、ただ止むを得ない、それで放つておくわけですか。
  105. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 臨時工が常用に転用せられて、雇用状態が安定するということは、最も望ましいことだと存じまして、無論そういう方法をとつてつたわけでございます。併しながら常用として雇用するまでの一定期間を臨時工として使用するということ、も、これは止むを得ないと言いますよりも、或る場合には当然じやないかとも思いますが、それによつて労働搾取が行われておる、低悪な労働條件が課せられているというように見るべき性質のものではないと思います。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、非常に重大だと思うのですが、労働省は労働者の保護ということについて、これは積極的に考えるべきじやないかと思うのです。それで先ほど法律に違反しないと言つておりますけれども、その精神から言つてこういう制度は望ましいことですか。望ましくないことは明らかでありますから、何か労働基準法を改正して、そうしてそれを保護するというような考えを持たれるのは当然だと思うのです。それをただそういう過渡的にこういうものが出て来ても、仕方がないというのでは、余りに無責任過ぎると思うのです。一体労働者保護ということを、労働行政を担当している労働省がお考えになつておるのであるかどうか。そのかけらもないように今の言葉では伺えるのですが、何か労働基準法を改正して、そうしてそういう人にも労働保護を與える、こういうことを何かお考えなつたことでもあるのでございますか。
  107. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) その点は無論基準局長、事務局長においては研究はいたしておると思いますけれども、結論的に申上げるというようなものはございません。ただ基準法の実施の跡を見ましても、非常な窮屈な形に置いておつて、労使双方共に相当不便を感ぜられるのでありますから、何もかよ法律を以てびしびし制限的規定を強化して参りますことは、結局労使双方のために、多くの利益をもたらすものではないというように考えております。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私ほ講和を前に控えて、一番重要な前提條件としては、経済の民主化にあるはずなんでありますが、労働面においてこういうような実情であることは、果して日本の経済民主化の精神に合致するものかどうか、私は疑いなきを得ないと思う。殊に労働保護を担当されておる労働者におきましては、こういう労働者保護、或いは経済民主化の面について非常に怠慢であり、認識を欠いておることを非常に潰憾と思います。こういうふうに臨時工がだんだん殖えて行くことは、一つの労働強化の方向になるのですが、この一つの例として、臨時工の問題ばかりでないのですが、労働者の災害が最近非常に殖えておることは御承知通りであります。ところが労働者の災害についての政府の調査が、これがまちまいなのはどういうわけでしようか。例えば鉱山局においで調査いたしますると、労働災害が減つておるのです。ところが労働省の調査によると、労働災害が殖えておる。而もその労働災害の殖えておる内容を見ますと、作業場の労働災害が激増しておる、パーセンテージから行きまして……。これはもう労働強化の結果であることは明らかであります。どういろわけで、同じ政府の調査において、片方では労働災害が減り、片方では労働災害が殖える、これはどういうわけですか、労働大臣にお伺いいたしたいのです。
  109. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 統計機関の不備ということも無論あると思いますか、労働省でとつております統計は労災保險の運営の面からとつておりまして、私はそのほうが正しい、そのほうが正しいといと何でございますが、実際に即応しておる数字になつておると思います。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私は認めます。ところが問題なのは、鉱山局のほうです。鉱山局の中におきましては、恐らく二十四年度にあれは坑内安全何とか法というのですが、あれを実施しましたから、その手前上、鉱山の労働災害が減るように統計を作らなければまずいというので、作られたのかどうか、とにかく私はおかしいと思うのです。私は労働省のほうの、これは災害保險の対象になるのですから、そんな杜撰な調査じやないと思う。すでに予算を伴うわけですから、鉱山局のほうはどういうのですか、余りに政策的のように見えるのですが、多少増加の割合が少なければいい、傾向が違うですから……。片方は減つて片方は殖えておる、我々は一体どう判断していいか、同じ政府の統計において、こういう結果が出て来る、どう判断してよろしいか、非常に苦しむのでありますが、この点通産省のほうから御意見を伺います。
  111. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) お答えを申上げます。細かしい統計を私は見ておりません。持つておりませんが、併し生産量に対して減つたというデ一夕が出ておるのではないかと思います。鉱山局としては、何も自分らが安全保安をやつたから減つたのだという言い現わし方に利用したのではなかろうと思います。但し只今申上げましたように、細かしいデータを持ちませんが、取調べましてあと申上げます。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは通産省のほうで、よく労働省のほうと打合せて見まして、傾向が違うのですから、多少のパーセンテージなら問題はないのですが、どういうわけでこういうように違うかということを明らかにしてもらいたいと思うのであります。  それから労働大臣にもう一つお伺いしたいのですが、労働災害がこういうように殖えて来る。これはやはり労働ですが、今後の問題です、今後の問題として、政府はいろいろまあ立場上もあると思われるのですが、日米経済協力と関連して、今後又非常に日本の産業の或る部面については生産増強政策が行われると思うのです。これに対して労働大臣は、労働行政の面からどういうふうにお考えか。これまで一 番日本の労働問題として困難なのは、住産のカーヴが非常に上つているのに応じて、雇用がそれに吸收されないという面があると思うのです。この点は何回も労働大臣とあれいたしましたが、これまでは輸出産業のほうに失業者は吸收これるという考えであつたか、それほど吸收されない面が歩うたのですか、今後そういういろいろな、いわゆる軍需産業的な方面に相当吸收される可能性があるのかどうか。若しああいうことが本当であるとすると、今後の失業の面にも関連して来るのですが、失業問題はどういうふうになるのか。その点、この際お伺いして置きたいと思うのです。
  113. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 労働災害が殖えつあるという傾向、これはどうも否定し得ないと思います。それは一体どうするかということになりますと、職済活動、産業活動が相当盛んになつて来ておりまして、これは或いは施設の改良を要すべきものもあるでしようし、或いはこの労務管理のほらの面において、かない終戦後ルーズになつておりました面もありまするし、或いはこの勤労、労働に対する心構えというようなものも相当そういう面で禍いをしていると考えなければならんのでございまして、併しながらこの災害の国民経済に與えている損害、労働者個々のかたがたの不幸は申すに及ばず、全体として相当大きな国民的ロスを重ねつあるわけでございますから、私どもといたしましては、むしろ労働行政の中心課題として産業災害の撲滅を目標として一つ努力をいたしたいと、こういうつもりでおるわけでございます。なお、朝鮮動乱後経済活動は盛んになつて来たけれども雇用の面は改良せられん、相当労働の生産性は向上しているのに、というお話でございますが、大体その通りでございます。ただ、併し、先般も申上げ、又木村さんもよく御承知のように職業安定所の窓口を通じて見まするのに、昨年の八月を頂点としまして、雇用関係はこれはまあ、著しくとは申上げられませんが、ともかく堅実な改善の足取りを統計の上では示しておるわけであります。常用の求職者数にいたしましても、昨年の八月は八十九万七千、ちよつと九十万という求職受付をいたしておりますが、昨年の十二月には六十八万五千人というようにかなり大幅の減少を示して来ております。これは無論的確につかんでいると思いますけれども、細かいことは後にしまして、ともかくも職業職線にこれだけのかたがたが吸收せられておるということははつきり申上げられると思いますが、なおこの求人の関係から見ましても、昨年の六月十四万六千というのが、七月十六万、八月十九万、九月二十二万、十月二十三万、十一月、十二月二十四万というように常用求人の面におきましても、ともかくも一歩々々向上した足取りを示しておるわけでございまして、今後更に産業活動が活溌になつて行く様相を示しつつあるわけでございますから、この傾向は私は今後相当幅広く改善せられて行くのではないかと期待をいたしておる次第でございます。以上御答弁申上げます。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 労働災害につきましては、今後更に相当問題が起ると思いますので、一層……只今労働大臣は労働行政の中心課題として取組むというお話でございましたが、これはもう真剣に考えて頂きたいと思います。  時間がございませんので、大蔵大臣に次にお伺いいたしたいのですが、税金の問題です。税制の問題についてお伺いいたしたいのです。今度の税制改革の目標としては、第二が減税にあり、第二が負担の公平化、課税の適正化、第三が資本蓄積、この三つにあると言われておりますが、大蔵大臣は減税されたと言いましたけれども、最近の状態、物価騰貴の状態を見ると減税にならなくなつて来たことが非常にはつきりして来ましたが、それでもやはり大蔵大臣は減税になるとお考えかどうか。即ちこの前二十五年度の補正予算を出されたときに、所得税の改正に関連しまして勤労者の税負担がどうなるかと、これに対して詳細な資料を大蔵省から我々のところに配付されたのであります。その当時米価引上げと減税との比較において、結局独身者の六万円の人は一・七五%の減税になる。八万円の人は一・六一%の減税になる。大体において最高二・三%程度の減税になると言いましたけれども、先ほど申上げましたように、一月から消費者価格が非常に上つて来た。五・七%も上つて来ているわけです。こういう事情考えれば減税になつていない。実質的にこれは明らかです。もう計数的に出るような状態になつて来ているのです。従いまして減税か減税でないかということを議論しても仕方がないのでありますが、今後やはり実質的にこういう計数上はつきりした減税でないということが出て参りましたら、大蔵大臣は改めて補正を組むような場合に、もう一度税制の問題についてお考えになる御用意があるかどうかです。即ち基礎控除なり或いは扶養控除なり或いは又勤労控除その他税率の問題、こういう点について條件が変たならばお考えになる必要があるかどうか、二十六年度においてそういうお考えかどうか、お伺いしたい。
  115. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 木村さんはどうも観念が我々と違つてでおるようでございますが、先の国会で臨時的に所得税の軽減をいたしました。所得税の軽減をした場合において米価改訂による支出の増加を賄い切れるか切れないかという表現でありますが、所得税の軽減は一体税金の軽減をして、それから米価上つたときに所得税の軽減で上つたものを全部吸收し得るか、し得ないかという問題がありますので、そこでその表をこしらえたわけなんです。従いましてその表とは違つて非常に米価が上つて所得税の軽減以上に暮し向が悪くなつてもこれは減税は減税なんです。従つて税金を上げても暮し向がよくなつたか悪くなつたかという問題と、減税の問題とは違うんですから、それははつきりして頂きたいと思うのです。でよく午前中のそのCPIが上つたつとか、非常に苦しくなつたとか言つておられますが、私の計算では昭和二十四年を一〇〇といたしますと二十五年、昨年の十二月の数字はこれはまあ異例でございしますから申上げませんが、昨年の十一月は労働者の賃金は名目賃金が二割五分上つております。CPIは昭和二十五年を一〇〇といたしまして九七・三、そうすると実質賃金昭和二十四年を一〇〇といたしまして一三四・一と実質賃金相当つておる。そうすると今年の一月の分は正確なCPIが出ておりませんが、これがたとえ一三九・七、八になりましても、昭和二十四年を一〇〇といたしました場合においては一〇〇・九くらいになつておるんです。それで私は昭和二十四年頃よりはよくなつておる。だから物価上つたといわれるときに一般の賃金はどうか。工業賃金の平均はどうなつたかと申しますと相当つておる。去年の十一月一万円を超えておる。十二月は一万三千四百円になつておるのであります。賃金が上つて来れば物価が或る程度つてもいい。こういう点を一つの新字ばかりを見ずに、ずつと御覧下すつたらいいと思います。
  116. 波多野鼎

    ○委員長(波多野鼎君) 木村君。最後にして下さい。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは最後大蔵大臣に伺いますが、大蔵大臣は減税と負担の軽減とは違うという話ですが、それでは私は余りにそれは国民をだますようなものじやないかと思うのです。減税は何のためにやるのかというと、負担の軽減のためにやるんです。その点は成るほど減税には違いはないでしよう。それは私は否定をしておるのではないのです。それが負担の軽減になるかならないかを問題にしておるのです。国民はそれを皆問題にしておるのです。負担の軽減にならない減税というものは、国民は興味を持たないと思うのです。而もその減税はCPIの上りよつて減税になつておらない。民間の労働省の收入は殷賑産業では上るかも知れないが、公務員については上らない、明らかに減税でなくなる。而も二十六年度予算、今度の補正によつて米価が又上るかも知れない。消費者米価が上るかも知れない。そういうときにこれを考えないということについては、重大な問題が私は起ると思うのです。これは政府国民をだますものだと思う。これについては議論になるから私はもうやめまして、時間かございませんから、最後法人の減税について私は大蔵大臣に伺いたいのです。資本蓄積の一つの方法として法人に対する減税をやられたことはもう周知のことでありますが、それについても私はこの日本における法人の実体というものから考えれば、これはもう非常な合法的な脱税になると思うのです。モス歳入課長は日経連の租税研究会に行つてですね、資本蓄積は大切かも知れませんけれども、合法約脱税を認めるような資本蓄積に対しては、これは否定すべきだ、こういうものは認めるできではないということをはつきり言つておるのです。日本の法人は外国の法人と違つて、商法上では法人であります。商法上では株式会社、実体はそうではないのです。日本の法人は実体は個人会社なんです。皆合資会社とか合名会社、株式会社以前の形態が日本においては多いのです。そういう日本のいわゆる名前だけ商法上の株式会社といわれるものを、実体的な法人株式会社のように見て、これを全体として今度国会に提案されておるような広汎な減税を行うということは、これは非常な脱税を合法的に許すということなんです。これまで大蔵大臣は所得のあるところは必ず税を取る。前に朝鮮車変に動員されるいろいろな海員諸君の給與に対して、大蔵大臣は所得があるから減税しないということを言明した。法人に対しては、どうして法人に対してのみそういう資本蓄積は、まあ名目として、これの名によつてそういう脱税、合法的脱税を認めるような減税はすべきではない。そんなに資本蓄積が大切なら、最近における法人の利益というものは大切なものである。社内留保するならいいんですけれども、これは社外配当をしておる。非常にたくさんの配当しておる。増配どんどんやつておる。それならばなぜ配当を制限しないか。それならばそんなに資本蓄積が必要ならば、私は配当を或る程度まで制限してこそ、初めてそういうことは国民が納得できると思う。ところが、会社のほうにはどんどん再評価或いは積立金に対する減税をする、こういうような広汎な減税措置を講じて、そうして配当のほうほどんどんできるように放つて置くということは、私は資本蓄積にならない、余りに非民主的な税制改革だと思う。税制改革の一つ考え方は負担の公平と言つておりますが、大蔵大臣は必ずしも税負担の公平の理論に囚われないということは、これを意味しておると思うのでありますが、日本の株式会社というものはそんなものじやないので、経済形態は個人企業と違わないのが大部分です。こういうものに対して一律一体にこういう法人税の減税を行うということは、私は大幅に脱税を合法的に認めるものであつて、私はこれは非常な租税の公平の理論だけじやないと思う、租税の実際からいつて負担の公平というものは逆転してしまう、如何に経済民主化を民自党が叫んでも、現実において租税制度においては非民主的な方向に逆転しておる。この法人税の課税の問題について大蔵大臣はどういうふうにお考えか。
  118. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣国民をごまかしておるというお話でありまするが、私は正直者の一人であります、嘘は言わないのであります。あなたはCPIが上つて来たから、これは増税だと言つておられますが、それならば一昨年に比べて昨年のCPIが下つたから、この次は減税、その次は増税、こういう議論は成り立たんと思います。国民負担ということは国民租税負担であります。物価上つたから生活が苦しくなる、ならないということは負担の問題ではない、我々国民負担は租税制度であると考えておるのであります。物価は今月は止つた、来月ほ下つたから増税だ、減税だということは財政学上ないだろうと思います。次に法人税につきまして、あなたのお話は、法人税を非常に軽減したと言われますが、今の法人というものは、個人の延長なんだ、従つて昔のように独立の経営主体と見ずに、個人の延長だとして考えておる、今度の税制改革でモス歳入課長がどう言つたか知りませんが、この法案についてはモス課長は初めからタツチして十分知つておるはずであります。合法的脱税を認めておりません。法人については配当が高率だと言われますが、最近の会社の利益の中で何割を配当しております、戰前の配当は割とか、一割五分と言つております。併し今の資産再評価をやつたら固定資産が相当多くなつておる。利益の何割を配当するか、利益率二十割のところが三割とか四割くらいの配当だ。だから決して高率の配当ではございません。従つて今の状態からいつて私は会社の配当を制限しなければならんという実情にはないと考える。
  119. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今まで政府当局の各大臣からいろいろと御答弁がありましたが、非常に不満足、殊に再度大蔵大臣物価と税との関係については、関係なしと言われましたが、基礎控除とか、控除の問題は物価と関係なければ意味はないのです。こういう意味において非常に満足です。そういう理論の展開の仕方こそ、私は国民をだますものと思うのですが、時間がございませんから、私はこれを以て質疑を打切ります。
  120. 池田宇右衞門

    池田宇右衞門君 来年度予算の特色として掲げておる政府の狙いはおおむね妥当であつて政府の意図は諒とし、その努力を移とするところであります。然るに政府のかかる意図及び努力にもかかわらず、政府の方針に対する世論の批判はなかなか嚴しいものでありますので、政府はこれらの批判に対して納得のできる説明をなし、理解を與え、以て協力を求むることが肝要であると考えられます。かような意味合いからここで、二、三の問題について質問を試みたいと存じます。  第一は、食糧の需給についてであります。伝えられるところによれば一九五一年米国会計年度における外国食糧の輸入は、今後の見通しによれば二百八十七万トンがせいぜいであり、而もこのうち昨年七月から十二月まで六カ月に輸入せられたものは約九十三万トンであつて、残りの約百九十四万トンが本年一月から六月までの六カ月に輸入せられなければならないことになつております。去る一月二十六万トン、二月三十三万トン、三月四十万トンと、輸入についても好調を辿りつつありますが、静かに内外の事情を見るときに、多大の困難が伴つておると考えられるのであります。幸い今後二百八十七万トンが予定通り輸入されたとしても、本年六月から七月に持越される手持量の推定は、前年同期に比べて約百万トン近くの減少となると言われておる。かかる先行困難の見通しにおいて、今後の食糧需給に関する政府の楽観的見解及び食糧管理の緩和方針に対して、世論は政府の反省を求めている声が高まりつつあるのであります。ついては次の諸点に関し安本長官大蔵大臣及び農林大臣から政府の責任ある、国民の納得の行く答弁を求め、国民をして拠るところあらしめたいのであります。政府の食糧管理方式の検討は、本年六月末までの見通しについて行われているようである。果して然りとせばかかる重要な問題が、かような目先の見通しに基いて行われていることに、そもそも問題があると言われておるのである。そこで内外諸情勢が急転換し、且つ今後の成行きの見通しが至難なときにおいて、なお政府がかねての方針を堅渇して、食糧統制方式を大幅に緩和せんとするその根拠をなす今後における食糧需給の長期見通しを明示されたいのであります。昭和二十六年度食糧管理特別会計において、外国食糧の輸入価格は、一トン当り平均小麦九一・四ドル、大麦七三・六ドル、米一三四・三ドルとして、これに基いて価格補給金二百二十五億円が計上せられている。然るに本年一月における外国食糧の輸入価格は、一トン当り小麦は最低九四・三ドル、最高一〇二・二五ドル、大麦は最低八六・四三ドル、最高九〇・三ドル、米はシヤム米で最低一五一ドル、最高一五九ドルであつて、計画に比べて著しく騰貴しているのであります。これについて予定の数量を買入れるとすれば、提案予算では経費が不足することとなり、又提案予算によれば予定の数量の買入れができないこととなる虞れがある。昭和二十五年度既定予算及び昭和二十六年度提案予算案について、その辺の事情及びこれが調整に関する方針に如何に御処理なさるか、輸入原価の高騰の結果、価格差補給を据置くとせば、国内における主食の消費者価格引上げなければならないこととなります。問題は一般物価、延いて賃金給與ベースに及び、又国内の消費者価格引上げを阻止せんとせば、補給金の増額が必要となるわけでありますが、これについても前同様実相及び方針を明らかにせられたいのであります。この問題に関連して大蔵大臣は、たびたび国際小麦協定に加入すれば安く輸入ができる旨答弁せられているが、昨今のような国際情勢において、国際小麦協定の存続性、我が国の加入の可能性、加入したとして我が国に割当てらるべき数量等について、政府の所見及び見通しをお伺いいたします。  政府は去る一月一日から麦製品クーポン制を実施したのであるが、実施後月余にしてすでにこの制度の崩壊が伝えられている。即ち地方によつては、押麦に対する需要が殺到し、その需給の均衡を失し、配給上混乱を来たし、政府の食糧政策の不備、杜撰を唱えられつありますが、それが延いて本年産の麦類の集荷にも暗影が投ぜられると思いますが、政府においてその実相を如何に認識しておりますか。その対策として如何なる準備が進められておりますか。  政府は本年産麦から供出制度を廃止して、自由販売とし、政府においては六十キロ当り小麦及び裸麦千五百七十八円余、昨年より僅かに七十円高であります。四十五キロ当り大麦千十五円余、昨年より僅か二十六円高、これで八百八十万石買上げせんとしておるのでありますが、最近、食糧事情、アルコール原料事情、飼料事情及び物価事情、特に飼料用米糠や「ふすま」が六十キロ千百数十円の高値を示しているとき、果して予定の買入れが実行可能と考えておりますか。予定通り買上げができなかつた場合、食糧需給調整上の対策如何、若し予定通りの買上げを実施せんとすれば、一つは強制供出制度の再現の虞れなしともいたしません。或いは買入れ価格引上げを必要とし、いずれにしても先ず重大な結果を招来することとなるが、これに対する政府の所見及び方針をお伺いいたします。  次に、政府は目下興農増産運動を提唱し、米麦の一割増産を計画している。政府は、一割増産は従来の増産運動と異なつて予算の裏付けのある経済的基礎に立脚したものであると言つております。然るに本年度産米の増産計画は、予算的裏付けのあるものといたしましては、土地拡張、改良で約三十万石、種子消毒で約五十三万石、病害虫防除で約四十五万石、保温折衷苗代で約二十六万石、計約百五十五万石で、三%の増産に過ぎないことになつております。これに対し政府の御所見をお伺いいたします。  第二は飼料の問題についてであります。畜産の振興を図ることの必要は今更言うまでもないことであります。而して畜産振興のためには、先ず以て飼料の供給を豊富且つ円滑にしなければならないのであります。政府は昨年四月一日飼料配給公団を廃止して、飼料の統制を撤廃することにしたのであるが、その際当時の諸情勢を勘案して、米糠と大豆粕の二品目だけは飼料需給調整規則によつて、これが配給及び価格の統制を継続していた。併しこれらも又本年一月一日から撤廃するに至つた。統制が撤廃されるや、各種飼料の価格は急激な高騰を示しました。即ち米糠及び大豆粕の小売価格は今年一月の指数は、昨年飼料配給公団廃止当時の公定価格を一〇〇として見れば、米糠は二〇八、大豆粕は一九入とはね上り、とうもろこし一二五、ふすま二二九と、いずれも著しい値上りであります。最近における飼料入札価格を見ても、六千キロ当り米糠一月納三百九十五円、二月が千百三十円、大豆粕千九百八十円が三千七百二十円にはね上つている状態であります。その上飼料は特殊需要者に偏在し、中間商人の思惑に利用せられ、元値に比べて実需者価格は非常に釣上げられ、飼料の真の実需者は容易に飼料が手に入らず、又手に入るときも非常に高いものを手に入れなければならないことになり、この結果は食糧が飼料に転用せられ、又家畜の増殖が抑止されることとなつて、まさに畜産の危機と言わなければならないのであります。政府はこの事態をどう認識しているか。かかる事態に対して如何なる対策が実行せられ、又準備せられておりますか。政府における飼料の拂下げを実需者団体に対して優先的に行い、中間取扱者の思惑を排除し、適期に適正なる価格で実需者に供給されるよう措置する意思はないか。飼料の輸入に対して、もつと力を入れる必要があると思うが、政府の方針と見透し如何。国際価格の現段階においては、飼料農産物であるこうりやん及びとうもろこしの輸入に対しては暫く関税を免除ずる必要があると思われるが、政府の所見をお伺いいたします。  第三に肥料の問題についてであります。農林省は去る一月十日「最近の肥料需給状況」と題して肥料白書を発表した。これによれば、昨年八月乃至本年七月、即ち昭和二十五肥料年度における肥料の需給は、窒素肥料硫安換算、前肥料年度からの繰越五十万六千トン、生産百九十九万七千トン、供給計二百五十万三千トン、これに対し消費二百十九万トン、輸出十一万六千トン、需要計二百三十万六千トン、翌肥料年度への繰越十九万七千トン、燐酸肥料燐酸換算、前肥料年度からの繰越二十九万九千トン、生産百四十四万五千トン、供給計百七十四万四千トン、これに対し消費百五十七万トン、翌肥料年度への繰越十七万四千トン、加里肥料四〇%、加里塩換算前年度からの繰越十三万トン、期間供給二十二万五千トン、供給計三十五万五千トン、これに対し消費三十五万トン、翌肥料年度への繰越五千トンということになつていて、年間需給については一応均衡を得ていることになつている。併しこの内容を点検すると、そこに種々な問題があるように思われます。  その一、二を拾つて見ると、以上の需給は公団手持ち、窒素肥料四十五万トン、燐酸肥料二十三万トン、加里肥料十三万トンを見込んでの上のことである。若し仮に公団手持ちがなかつたとすれば、翌肥料年度への繰越どころか、却つて窒素肥料二十五万三千トン、燐酸肥料六万トン、加里肥料十二万五千トンの不足ということになる。勿論これは繰越が全然なかつたという極端な仮定に立つているが、併し肥料の供給は甚だ楽観を許さない事情にあることは否定はできない。又農林省の計画によれば、本年一月から七月まで毎月、翌月へ相当な繰越を余して、需給は余裕神々たるもののようであるが、併し最近の実情は需要が旺盛であつて、全く品がすれの様相を呈し、価格む甚しい高騰を示し、各十貫一叺当り硫安約八百四十三円、過燐酸約四百三十一円、加里塩約千二百十三円であ、つて、法外な高値を唱えつあります。  これらの現実に当面して次のことについて冬主管大臣から説明を求めた  い。  本年八月を以て始まる来肥料年度の肥料の需給計画はどんな見通しを以て、どんなふうに策定されつありますか。燐酸鉱石、及び加里塩の買付及び蔵入はどんな状態であつて、今後の見通しはどうであるか。肥料需給の現況に鑑み公団手持ちの肥料を速かに、又安く且つ消費農民に直結する団体を通じて放出することが、当面喫緊の要務と認められるが、政府の方針は如何なされますか。国際情勢の現況に鑑み、燐鉱石及び加里塩の輸入を促進し、長期間の需要に応ずる備蓄々行うことが急務と思われるが、政府は如何なる方策をとりつつありますか。食糧の国内自給を増強して、農家経済の作興に資すると共に、民生の安定を期するためには、食糧生産の根源である肥料の供給を、廉価且つ豊富ならしめることが最重要であります。然るに過燐酸石灰について見れば、若し燐鉱石の補給金が廃止せられると、船賃の高騰と共に、これが価格は一躍五割以上もはね上ることとなり、加里肥料についても同様な状態である。ついては昭和二十六年度においても、燐鉱石及び加里塩の補給金を継続する必要があると思うが、政府の方針は如何であります。継続するとの方針を承かりましたが真実でありますか、重ねてお尋ねいたします。  第四は農業災害補償制度の拡充についてであります。我が国は颱風地帯に位し、その地形が南北に細長く、且つ地質が不安定なため、自然的災害を受けることが極めて多く、我が国の農業の維持発展を図るためには、災害の防止と共に、農業災害補償制度を整備することが極めて肝要である。農業災害補償制度を整備するためには、先ず以てこの制度運営の母体である共済組合及び共済組合連合会の健全なる育成発展を図ることが必要である。然るに共済組合連合会は本制度が創設れたときと、その後では事情が変化し、これがために制度上の不備から、目下二十数億円の事業不足金から生じ重大な危機に逢着しているので、この不足金を整理することが当面緊要な問題であります。而してこの不足金は政府の企画によるこの制度上の不備に基くものであるから、国においても万般の処理を行うことが当然であつて政府に対していろいろ要望されておるのでありますが、これに対する政府における作業はどの程度まで進んでいるか。又いつ頃完成し、実施せられることになりますか。決定が遅れれば還れるだけ不足金は増加して来るから、至念処置せられたいのであります。以上につき関係大臣各位から明快なる御答弁を願います。
  121. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お答えいたします。食糧に関する統制を計画通り外すかと、こういうことであります。お尋ねは麦の問題であろうと思いますが、只今のところ従来の計画通り外して差支えないと、かように考えておる次第でありますが、それは一面におきましては、輸入に関する食糧の数量の確保でありますが、二十五年度におきましてもいろいろ故障はありましたが、最近の状況におきまして大体二百八十万トン前後は確保できる見通しがつきましたし、来年度におきましては御承知のように三百二十万トン只今計画いたしておりますが、これもたびたびいろいろな機会に申上げておりますように、政府といたしましては、今後の激動に処する日本の経済体制を確立する上において種々の事案が出て来るかと思いますが、併し常に国民生活の安定、維持ということの線はしつかり確保して行きたいと思いまするので、それに関連する食糧並びに衣料上原料等の輸入は特段の力を入れ、関係方面とも相談をしておるから、見込みはあり得ると期待をいたしておる次第であります。もとより今お話の中にありましたように、価格が国際的な影響を受けて上る、又国際間における買付け競争の結果買付けにくくなりはしないかという御質問は、尤もでありますが、併し只今申しました食糧輸入に対して優先的に考えて行きたいと思います。日本に割当てらるべき数量くらいのものは全体から見ると比較的少いものでありますから、その点は確保できると思いまするし、池田君からもたびたびの機会に申されておるように、我が国として国際小麦協定へ入りたいということを考えておりますが、これは種々の事情で、むしろ従来は或る條件日本が呑むことによつてこれは許されたものであります。日本としてはでき得るだけ早い機会において加入することによつて輸入の数量並びに価格の安くなるような努力を続けて行きたいと思います。従つて今の価格が上昇すれば、当然予算内における補給金の問題が足らなくならないか。従つて予算を組まないかという御質問でありますが、これも大蔵大臣が弁明しておりますように、只今のところあらゆる手段を使つて、例えば国際小麦協定に参加することによつて輸入価格を上げるとか、いろいろな手を打ちつ、できるだけ先の見通しをしつかりつかんでからでないと、これは軽々に数額は組めません。若し殊に必要になれば、そのときになつてよく全体の事情を考慮し、どのくらいの額かということになつたときに研究したいと言つております。これは私ども政府の一体した意見でございます。  それから食糧に関連しての肥料の問題、これはお話通り、生産には最も重大な関係を持つものであります。来年度の生産計画及び具体的な輸入数量については、事務のほうからお話を願つたほうがいいと思いますが、その際特にお話の、過燐酸の原料で亙る燐鉱石の輸入乃至その他の問題から価格が上昇するにつきましては、今朝ほども大蔵大臣が申されましたように、これはとくと考慮いたして、今後における補給金の問題等も考えて、肥料が円滑に、且つそう高くならんように考えて行きたいという考えであります。大体私から答弁するのは以上であります。
  122. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 麦の価格のことでございますが、あんな安くて一体八百八十万石売つてくれるかというお話でございますが、希望があれば買うということにいたしております。併し麦作農家のことを考えまして、価格の点については、これは十分相談いたしたいと私たちは考えておるのであります。  それから増産計画のことでございますが、農林省は非常に正直でありまするから、非常に内輪に見積つておるのでありますが、一つの例を以て見まするというと、病虫害の損害だけでも三百万石と推定されるようなことも言われておるのでありまして、それ一つを極力皆で防いでもそれだけの増産になる。予算は少くとも農村の諸君の努力によつて必ず一割は増産してもらえると、こう考えておるのであります。  それから統制を廃止したことについてのお話でありますが、これは最も有効に、最も効率的に物を動かす、物に動いてもらうということで、これをやつておるのでありまして、決してこれは海を渡つて這い出して行くのではないでありまして、国内にあるのでありまして、能率的に動いてもらうということで、統制は既定方針通り廃止いたすのであります。廃止いたしましても、決して十月三十日までの基本配給量二合七勺、その後の米の基本配給量一合五勺については、御心配ないようにいたしておるようなわけであります。  それから飼料についてのお話でありますが、これは投機的なことからいたし多少偏在いたし、いろいろな問題を起したのでありますが、政府の手持ちいたしておりました相当量のものを、あなたのおつしやる通り、系統団体を通して最も適正な価格で流すようにいたしておりまして、もう日ならずして農民のほうに現品が渡ることになつておします。  それから肥料についてのお話でありますが、これも全くあなたのおつしやる通り農村にとつては大事な問題であります。それでこの肥料価格の上らないのは、又幾分これを抑えたいという考えから、肥料公団の清算事務下、管理いたしておる肥料を放出いたしまして、大体三月までで全部放出し切る予定でありまするが、これもあなたのおつしやるような価格農民に、特に偏在しないように、北海道から九州まで割振つて偏在しないようにして売つて行く方針であるのであります。それから共済組合のことでございまするが、各府県連合会等で焦げつきに なつておる二十億程度の金、これにつきましては目下大蔵省と折衝中であり まして、極く最近に案を練つて御検討 願ういようになろうかと考えております。
  123. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 私は総理大臣に対して、財政経済政策の基本問題に関して御質問申上げたいのでありまするが、なお 人運輸大臣にも同様御質問申上げたいのでありまするが、今日御出席があり ませんから、総理大臣に対する質問並びに運輸大臣に対する質問は、次回御出席の機会にいたしたいと思うのであります。  私は主として財政、金融、経済政策の基本問題につきまして、関係の諸大臣に御質問申上げたいのでありまするが、先般ダレス特使が参られまして、講和も近く成立の時期が迫つておるのでありまするが、その際にも明らかにせられましたことは、政治的に完全な自主権の回復をいたしますためにはどうしても経済の自立が必要である。これはもうひとしく何人も認めるところでありまするが、その経済自立計画の規模と構成に関しましては、先般自立経済審議会において政府に答申せられ、政府も大体その答申案を基礎にして二十六年度の予算案を編成されたように思うのであります。これは先般の総理大臣の施政演説並びに安定本部長官の演説の中にも、大体その点が窺えるのでありまするが それらの点につきましては只今触れませんが、現在の情勢から見まして、例えば総合予算の均衡であるとか、或いは財政規模の縮小であるとか、或いは又国民負担の調整を図るために大幅に減税するとか、或いは又民生の安定とかいうことに対して、政府相当の努力を佛つて適切な施策をこの予算案に盛つておられますことも、又よく了承いたすのであります。殊に動乱後の国内物価騰貴が海外の上昇率をややもすれば上廻らんとする情勢に対して、均衡予算の基調を堅持し、インフレに対してこれを防止する策を講じ、そうして一面において生産の増加に対して相当な努力を佛つておられることも了承いたすのでありますが、同時にかかる計画は当然に、刻々に激動いたし棄する国際情勢の推移に即応いたして、機動的に且つ彈力的にこれを適当に運営すべきであるということは当然であります。これに関しましては、先般来この当委員会における安定本部長官の御答弁の中にもありましたのでありまするが、私はあえて政府政策に対して批判せんがための批判を加えるということではなくして、この基本計画策定後における日本経済を取巻いておる客観的な情勢、いわゆる與件、こういうものの変動に対応して当然に基本計画からのいわゆる偏差と申しまするか、ズレと申しまするか、こういうものを適当に修正して、それによつて当面の経済政策なり財政政策が合理性を持ち、又効率性を持たなければならないということは又当然でありますが、これに対して先般安定本部長官は、他の委員の質問に対して、計画は單に審議会の答申に過ぎないのである、政府としては答申を受けただけであつて、具体的の方針は今後に属するという御答弁があつたのであります。もとよりこの具体的な数字とか或いは又その他の計画等は、そのときどきの情勢に対応いたしまして、政府が適切な方策をとられることは当然でありまするが、併し大体私はこの安定本部長官の演説を仔細に検討いたし、なお又自立経済審議会の答申案を検討いたしますると、大体において審議会の答申案を政府の方針としてとつておられますることが了承されるのであります。その点につきまして、後ほど具体的に安定本部長官にもお伺いいたしたいのでありますが、当面の客観情勢の変化に対応して、政府はそのとられんとする財政経済政策に対して、当然に最も機動的にして且つ彈力的な措置をとらるべきものと思うのでありまするが、これらの点に対する政府の心構えと申しまするか、基本的なお考えをつ先ず以て承わつて置きたいと思うのであります。
  124. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) お答えします。基本的な、総合的な経済自立の方針を審議会において立てて、その大綱において政府がそれをとつておることはお話通りでありますが、国際情勢の変化に応じつ、それに対して機動的に施策をときのよろしきに応じつ、而も先を考えつ処理して行くということは、当然の心構えであります。
  125. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 大体政府のお心構えを基本的に承わつたのでありまするが、私は特に政府は大体において自立経済審議会の答申を基礎にして、その後におけるいろいろな客観的な情勢の変化がありましようが、大体審議会の答申案を政府施策の基本に置いて昭和二十六年度の予算を編成されておるということを、只今の御答弁によつて了承いたしたと解釈いたして、次の質問を続けたいのであります。  先ず第一にこの自立経済計画を立てられました前提條件には、仮定又は期待に基く数字相当あるのであります。それについては最もわかりいい事例を挙げたほうがよいと思いますが、例えば自立経済審議会の答申案によれば、昭和二十八年度の目標年度、これに対しては後ほど御質問申上げたいのでありまするが、一応昭和二十八年度の目標年度において生活水準は戰前の八九%、鉱工業生産は一三一%、貿易の規模を十七億ドル、こういうふうな目標の下にいろいろ計算が立てられているのでありまするが、安定本部長官の演説においても、又大体さような線で以て種々の政策を立てられていることが表明されておるのであります。さてさような経済自立の目標を達成する前提條件の中でて一番緊要なことは、生産の確保ということでありまするが、なお又国民生活の安定ということでありまするが、さような目的を達成するための食糧その他生産に必要な重要物資の確保に一番何が基本的な要件かと申しますと、日本の現在の地理的、或いは経済的の條件から申しまして、かような重要物資を如何にして外国から輸入するかということであります。この重要物資の輸入の確保ということが一番基本的な要件でありまするが、さような基本的要件を確保いたしますためには、どういたしましても外航船舶の確保ということが必要であるのであります。経済自立の目標年度たる昭和二十八年度においては、これらの必要物資の要輸入量は、いわゆる重要物資のみをとりますると、二千二百七十万トンと算定されておるようであります。それから石油類が四百七十万トンでありますが、これに対して政府は現に船腹拡充のためのいろいろな政策をとつておられまするが、仮に年間三十五万総トンの新造をいたし、或いは改造をいたし、その他いろいろな施策を講じて、そうして漸く昭和二十八年度において外航船舶確保の量は、大体百九十三万トン程度であります。その際に石油は多少まだ要輸送量と船腹との関係が一般貨物に比してシーリアスではないのでありまするが、食糧その他生産原料等の重要物資については、両者の関係は極めて憂うべき比率を示しているのでありましてこれら重要物資については、日本船によつて運ぶ率が僅かに三割八分であります。いわんや現在における国際的ないろいろな客観情勢によつて、船腹の確保はますますむずかしくなつてつているのであります。食糧その他の重要物資が石油を除いて二千二百七十万トン、それを確保いたしませんと、国民生活を最低限度確保できない。なお又いろいろな再生産も確保できない。而もそのうち漸く三割八分しか日本船を以て運べない。現在の国内情勢においては、船腹の確保は非常に困難であります。いわんや資金その他の関係において、船腹の拡充は現在非常なデツト・ロツクに直面しておるのでありますが、僅かに三割八分しか我々の力によつて運べる量がないということ、このことに対しては、経済自立の達成上大きなウイーク・ポイントが認められるのであります。更に電力につきましても同様のことが言えるのでありまして、昭和二十六年度以降相当量の電源を開発いたすという計画になつております。それによつて昭和二十八年度においては約三百八十八億キロワットを確保する、こういうふうな計画でありまするが、これにも資金的に、或いは又その他いろいろなウイーク・ポイントがあると思うのであります。而もさような計画を確保してもなお且つ年間三十億キロワット内外の不足量があるというようなことでありますから、日本の生産産業を確保いたすために一番基本でありまする船腹或いは電力についてさような問題があるのでありますから、当面いたしておる国際情勢の変化ということを考えなくても、大体昨年のこの自立経済計画が策定された後の、極く最近における国際情勢の変化は別といたしましても、さようなウイーク・ポイントがある。これに対して政府は、どういうふうな考えで以てこの激動する国際情勢の変化に対応して日本の再生産を確保し、又国民生活の最低限を維持されんとするのであるか。詳細な細かい点はいずれ分科会等において御質問申上げまするが、基本的なお考えを一応安定本部長官から承わりたいと思うのであります。
  126. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 御意見は御尤もであります。輸入の確保が第一であり、その裏付けをなすものが外航船の増強であります。経済審議会において計画を立てました当時は、いろいろな條件に阻まれて、やや外航船確保の時期が遅れて小さかつたと思います。    〔委員長退席、理事佐多忠隆君委員長席に着く〕 最近の事情等を勘案して政府におきましては、御承知のように関係省は外航船増強についてあらゆる手を打つておるのでありまして、従つて新造船の計画も当初よりも殖やし、又買用船、又A型戰時標準船舶の改造というような面に向つて、従来の計画よりもこれを繰り上げて急速に進めるように考えておる次第でありまして、資金等の見合いもありますが、相当量本年度内、上半期内には相当量の船ができ上る、かように考えております。詳しい数字は又申上げますが、初めは本年度で百五万トンぐらいできると思つておりましたが、恐らく四月一日現在においてタンカー船を入れて八十万トンぐらいのものになり得るのじやないかということも、政府の意のあるところを十分示すところであると思います。  電気等については御指摘の通りであります。これはいろいろ電源開発というような計画等も考えられますが、何と申しましても年限がかかります。若しいろいろな状況が必要とするならば、どうしても不経済であるかも知れませんが、火力発電に関する設備を進めることが一つの方策であろうと考えて、これらの点についても研究を進めております。
  127. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 この電力の問題もそうでありまするし、船舶の問題もそうでありまするが、これは政府においてもいろいろ努力をされておるが、ただ通り一遍の政策では、なかなかこれは達成できがたい問題でありまして、詳細の数字等について更に申上げたいのでありまするが、時間が非常に極限されておりますから、この電力及び船舶に関しては現在の政府のとろうといたしておりまする政策、計画では、到底私は自立計画の達成はもとより、国民生活の最低限の維持は非常に困難であるということを申上げて、詳細の点は次の機会に譲りたいのであります。私は先ほど申したように、現在この当面いたしておる国際情勢の非常な変化、殊にこの極めて最近の変化いたしておりますことを除いても、さような計画の前提條件にいろいろな問題があるということを申上げたのでありますが、殊に今日の新聞を見ますると、米国の国家保障会議においては、日本に対する重要物資の輸出の制限を除いたということであります。これは当然に私は今後日本の産業機構に対して非常な大きな変革をもたらすであろうと言わんよりは、変革を当然に要請する大きな要素を持つておると思うのであります。先般来日米経済協力に関する問題に関しましては、政府におかれてもまだ公式に何ら関係方面、或いはその他より要請はないという御答弁に終始いたしておるのであります。私もあえて国際情勢の問題の機微に触れて御質問申上げようとも思いませんし、これ又先ほど申したようなふうに、積極的に政府の施策に建設的な意味において協力いたしたいという意味で御質問申上げるのでありますが、私はかような現実の情勢に対して、又現在の国際情勢の現実から見て、日米経済協力ということは私は当然これは起つて来る問題じやないか、又起らざるを得んのじやないか、又起ることが日本の経済の再建、日本国民生活の確保という点において当然これは考えらるべき問題であつて、これは政府は決して御遠慮の要らぬことじやないか。先般総理大臣もこの席においてこれに対して考慮さるべきものであるということを述べておらるるのでありますから、私は政府がいろいろな具体的の問題につきましては、なお今後の問題でありましようけれども、かような情勢に関して、この自立計画に対して基本的に、まじめにいろいろな検討を加えるべき時期に至つていると私は思うのであります。いわゆるこの経済自立と、それから世界平和のための協力というような問題の調整、これは或る部分におきましては相反しまするし、或る部分におきましては相一致すると思うのでありますが、この自立と、それから協力との調整をどういうふうにお考えになるか、その基本的のお考えに対して一応伺つて置きたいと思うのであります。
  128. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) 私どもはたびたび申上げておりますように、日本の弱い経済、資源的に国内において恵まれざる日本として、日本の経済の自立を達成するについて、アメリカの援助協力を求めることは当然であります。往々にしてアメリカとの協力ということが、軍事協力というような恰好に誤解をされることを私どもは恐れるのでありまして、そういうことでなければ当無将来協力を必要としましよう。又現にいろいろ新聞に出たことをおつしやいましてございますが、今の新聞等を私も拜見しましたが、まだアメリカ政 府においてもいろいろな方針、方策というものがきまつておるわけでははいようでございます。従つて政府において正式な何らの話も受けておりません。併し私どもは将来日本の経済を途行するために、今のお話のような事柄が仮に あつたといたしましても、その調整というものは、日本国民経済の維持安定ということが先ず中心である。而して、協力すべきものについては、日本の工業力、或いは労働力というものの余りがあるわけであります。そういう点に おいて協力することができれば結構だと思います。
  129. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 当委員会においては初めて当面の問題である日米経済協力に関する政府の基本的なお考えを承わつて欣快といたします。然らば、巨細の数字において御質問は申上げませんが、さような情勢に対して何らか政府考えなくちやならんということは、一応只今の御答弁によつて承知いたすのであります。でこれは本日の新聞にありまするようなことが起らなくても、日米経済協力ということがなくても、この日本の経済の自立は、私は当然に昭和二十八年度を目標とするということじやなくして、この計画に彈力性を持たす、或いは又日本の経済再建 を本当に促進するという意味から、私は二十八年度の目標を少くとも一年とか、或いは一両年早めて、そうして現在当面いたしておりますいろいろな問題を至急に解決する、例えば電力の問題、船舶の問題にいたしましても、これを解決いたしませんと、あらゆる生産計画が立ちません。通産省あたりでいろいろな輸入計画を立てておられるけれども、船舶の問題、その他或いは電力の問題が解決いたしませんと、この計画は全く画に書いた餅のごときものでありますから、さような意味で私は当面の国際情勢日本の置かれておりまする姿から見て、当然にこの計画の繰上げといいまするか、そういうことを考えなくちやいかんということを考えておつたのでありまするが、たまたまその後の国際情勢がかようでありまするから、私も目標年度を、今後政府政策をとられる際において、少くとも昭和二十七年度を目標年度として、この計画の修正というものを再検討される御意志があるかないか。なお又その際当然に私は二つの相反するものがあると思うのでありますが、即ち一面においては水準を上げなくちやいかんということが当然であります。又一面におきましては、国民生活の最低限度の確保ということが当然に要請されるのでありますが、生活水準を確保しつ、一方において生産水準を相当に増大しなくちやいかんというような面を、如何にして調整されんとするのであるか。いうまでもなく経済自立といいますのは国際收支の均衡、国内自給度の確保、それから生活水準の維持向上ということでありまするが、この三者がこの新らしい情勢に即応してどういうふうに調整されるべきであるか、これは非常に大きな問題であると思うのであります。最近問題になりまするのは、生活水準を適当の年度の基準に据置いて、これによつて生産水準 を引上げるということがよく言われるのでありまするが、そういう点に対して基本的にどういうふうにお考えになつているか、お伺いしたいと思うのであります。
  130. 周東英雄

    国務大臣周東英雄君) ちよつと景気がいいので、ついでのこと一足飛びに三カ年計画を繰上げて、一年か二年早くしてやつてしまつたらどうかというふうに窮えるのですが、これはなかなか私はそう簡單に物事は行かんと思うのです。日本の敗戰後における打砕かれた経済を復興する、経済の自立を図るのは、もとより来年からでもすぐ自立させるというような計画に持つて行くことは望むことであります。併し單に貿易收支の尻が均衡を得ただけではいかんのであります。国民生活の水準を上げつ、貿易收支を均衡せしめるということを考えますときに、成るほどいろいろな国際情勢の下に工場生産というものが相当上げられておる。これだけ日本の富が殖え或いは景気がよくなるのかも知れませんが、その点については、これと違つた、偏頗にはらんように他の産業についても同じように考えて行くということが必要であります。それには日本相当の原材料が入つて来て、相当に鉱工業が殷賑になり、その余得というものが廻つ、て、農村、漁業その他の弱い方面に潤い得るように、並行的に行かなければならんと私は思う。それほどやるためには、一足飛びにやるためには、あらゆる條件がすべてこちらの言う通りに動いて来なければならん。あなたが御指摘の船の問題にいたしたところで、自立計画よりも繰上げて、造船を急ぎ、改造を急ぎ、買用船をやつておりますが、これもなかなか本年中にそう急いで……、推進がどこまで行くかということが問題であります。いわんやこれを自立経済八〇%、八九%、一〇〇%というふうに上げつつ一年の間にやるということは、なかなかこれはむずかしい問題だと思うのです。併しお話の趣旨はよくわかるのですから、我々はできる限り早く自立を達成する、即ち国民生活水準を上げつつ、貿易の收支をもう少し大きな数字においてバランスをとるようにすることを望むのであります。それじやすぐにそういうふうに計画を変えて行ける、こう断定するまでの域にはまだないと思います。
  131. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 只今お話を承わつておりますると、結局そう簡單にいろいろな計画が変えられないというお話のように承わつたのでありますが、而もなお艦舶、或いはその他に対しては、現実の情勢に即して適当な修正をしておるというお話にも承わつたのであります。さようなことを承わりますると、やはりこの計画そのものは、現実の情勢に即応して適当な修正をなし、そうしてこの計画をして完全ならしめるという政府の御方針のように了承いたすのであります。それに関連して私はお伺いいたしたいと思うことは、この日米経済協力態勢の強化の具体的な今後の問題につきましては、先ほど申上げたようにあえて触れませんが、いずれにいたしましても、今日の新聞にありまするような米国の日本に対する態度、従つてそれを受けとめまする日本の経済界、産業界の姿から見まして、生産規模の急激なと言いますか、相当大幅な拡大ということが当然に要請されると思うのであります。従つてそれに関連いたしまして特需、或いは輸出の増加によつて、なお又それに当然伴いまする資金の需要、更に又それに伴いまする收益力の増大、従つて又これに伴つて惹起されるであろうインフレーシヨンということが一応考えられるのでありまするが、政府はこの間に処して、一面においては生産を増強し、又一面におきましてはインフレーシヨンを防止しなくてはならない。この相反すると申しまするか、或いは見かたによつては楯の両面であるかも知れませんが、この両者をどういうふうに調整されようとするのであるか。私はこの際大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うのでありまするが、さような観点よりして、いわゆる均衡予算というものをこの現実の事態に対処して、どういうふうな程度において調整、又は修正せられんとするのであるか、特に物価の安定、生活水準の確保、そういう点についてどういうふうにお考えになつておるか。なお又当然にファイナンスが検討されなくちやいかんと思いますが、而もそのファイナンスそのものは、日本の現在の経済力から見ましてそうあり余つたものではありませんから、自然に資金の産業投資を計画的にする必要があるのじやないか。その際に、例えば信用の規正をいたしますとか、或いはそれに類した政策をとられるのでありますかどうか。なお又先ほど申したようなふうに国民生活の最低限度を維持いたしますることが、再生産を確保いたしますることと共に重要な問題でありまするが、現在の日本のいろいろな客観的の情勢から見まして、重要物資、食糧、そういうものに対して、政府は何らか新らしい形、新らしい意味における補給金制度をとられんとする意図ありや否や、そういう点についてお伺いをいたしたいのであります。
  132. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日米経済協力の問題が先般来ここで論議されておるのでありますが、安本長官の言われております通りに、まだ具体的の問題に我々は接していないのであります。でどういうような規模で、どういうような態度に出て、どういうようなやりかたで…、いろいろなことが我々全然わかりませんので、従つて生産の増強がある、資金の面がある、それによるインフレ関係はどうなるかということにつきましては、はつきり答えができないのであります。生産の増強も望ましいし、悪性インフレには絶対にしないようにやつて行かなきやならんと思うのであります。今ここでそういう我々の理想……考え方だけの問題でなしに、具体的に何を、経済協力になつた場合の陣容をどうするが、こういう問題は少し早いのではないかと思います。併しいずれにいたしましても、根本は周東長官が言われているように、生活水準は下げない、上げつつ生産の増強をやつて行くというのが私は理想だと思いますし、上げることを、そういう生活水準は上げつやつて行く方針で協力を考えなきやならん。お話通りに生活水準が下つてはあり余る労働力もこれはうまく使えようはずがないのであります。ですから私は国民全体がよくなつて行く、そううことで進んで行かなきやならんと思つております。
  133. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 私はそれに関連いたしまして次の問題を主として通産大臣にお伺いいたしましたのでありますが、先ほど来たびたび申しておりますように、日本の経済が自立いたすための最も基本的な要件は、必要な重要物資の輸入を確保いたすということでありますが、それらに対して通産大臣から、日本の必要といたしまする重要物資の輸入計画を承わりたいのであります。なお又それに対する輸入確保の対策……対策の具体的な問題につきましては、後ほど時間がありますれば具体的に御質問申上げますが、一応重要物資の輸入計画に対して、極く基本的の問題を通産大臣よりお答え願いたいと思います。
  134. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 御承知通り我が国といたしましては、何といたしましても、原材料を大体海外から輸入いたさなければならん。当局としては、常に確保することをモツトーとして進みつつあるのであります。辛いに一般的に鉄鉱石、粘結炭その他製鉄に要するものも、或る程度見通しはついておるりであります。綿花につきましても、これも今年度の買付も大体において順調に行き、羊毛についても、これも殆んど確保しております。又原料塩に対しましても、これに代るのにアメリカ塩を以て大体見通しはついておる。ただそれには船舶の不足があるので、適当な時期に、適当な量が内地に入つて来るかどうかということに対しては、少なからざる不安を持つのでありますけれども、幸いに買用船等の進捗によつて或る程度これを確保し得るという見込がつきつつあるのです。さように御了承願います。
  135. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 只今通産大臣の御答弁がございましたが、通産大臣の実際にお考えになつておるのは、さようにあらずして、実際現在の貿易物資の輸入に対しては、通産大臣としては非常に苦慮されておるんじやないか。それは現実が証明いたすのでありまして、かねて通産省が発表されておる二十六年度の計画におきましても、現在日本政府相当努力されておる船腹拡充の計画を以ていたしても、昭和二十六年度以内において相当量の食糧その他の重要物資の輸入の確保はできないということに相成つておるのであります。これはむしろ通産大臣を初め通産省のかたがたが機会あるごとにむしろ訴えられておられるのであります。通産大臣只今の御答弁程度のことで以て私は当面を切抜けることはできんと思うのであります。それらの詳細に対しましては時間がありませんから省略いたしますが、大体この自立計画におきましても、その他の計画におきましても、輸出は大体市場の見通し基礎にして策定せられ、輸入は大体輸入期待量を基礎にしてやつておるのでありますから、その前提條件に欠陥があれば、その計画そのものが非常な蹉跌を来たすのであります。で私はこの昭和二十六年度の輸入計画、殊に重要物資の輸入計画については非常な危惧を持つておるのであります。私はむしろ通産省の立場に立つて危惧を持つておるのでありますが、それらに対しては他の機会に譲りまして、ここでは二、三の重要な点について御質問を申上げたいのであります。  その第一は、中共からの輸入物資の他地域への転移問題であります。昭和二十五年度第四四半期におきましても鉄鉱石、粘結炭、大豆、塩等の中共からの予定輸入物資の他地域、それも北米、地中海とか、相当遠距離よりの輸送に転移しなければならんものがあるのであります。又昭和二十六年度におきましては、通産省の発表によりますと、約三百万トンほどあるということでありますが、そういうものに対して通産大臣としては、その輸入確保に本当に確信がおありであるかどうか。この点をお伺いしたいと思います。
  136. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 中共貿易に対しまして、中共から在来輸入しておりましたところのものが、他の地区から入り得るかどうかというようなお話かと思いますが、中共の貿易は、戰略物資の輸出を許可せぬということでありますので、ただ全部をとめるというわけではないのであります。従つて或る程度の輸出がありますので、現在におきましても、或る程度のものは入りつつあるのであります。併しながらこれは殆んど補足的なものと見るよりほかない。従つてその他のものに対しましては、各地に手を伸ばして輸入計画を作らなきやならん。そういう構想の下に、アメリカに対しては鉄鉱石、或いしは粘結炭の供給をお願いし、又インド方面、或いはフィリピン方面に対しても或る程度の了解を得て、そうして現在予想しておりまする四百万トンの鉄鉱に対しては、ほぼ見当がついておるのであります。又大豆に関しましても、これも油脂原料で必要なものでありますので、これは幸いにアメリカから相当量が入つて来るので、私は只今のところでは先刻申上げました輸送面さえ解決いたしますならば、これは私は至難なことじやない。こういうふうに考えるのであります。
  137. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 私がお尋ね申上げておりますのは、輸入をいたすにはいろいろな問題がありまするが、一番のネツクはやはり輸送の問題、即ち船舶の問題でありますから、この確保なくしては如何なる輸送計画も画餅に等しいということを申しているのであります。船腹が確保できればという前提の下に立つて、確保できるということでは、御質問を申上げておりまする趣旨から申しまして御答弁にはならぬのであります。私はこの昭和二十六年度は、結局船腹の問題で以て通産省の考えられておる中共よりの輸入物資の他地域への転移の問題、更に又予定せられておりまする千四百万トンの重要物資の確保が困難となるのではないか。政府は現状を以てすれば三百六、七十万トンの物資が輸入が不能になるとのお見込のようでありますが、私は情勢によつてはもつと殖えるのではないかと思うのであります。これらに対しましても別の機会に質問いたしたのでありますが、この際私がお尋ねいたしたいのは、従来輸入資金の問題として一番効果を挙げ、又通産省におかれても相当それを活用して輸入促進を図つておられた自動承認制でありますが、最近外貨が非常に手薄になつた関係上、これを廃止するというふうに了承いたしておるのでありまするが、これらに対してどういうふうにお考えになつておられるか。我国の手持外貨はこの二、三カ月の間に一億ドル以上減少いたしておる。而も現在信用状の発行の残高は約六億ドルでありますから、相当ある。而も一面輸出の信用状のついておるのが僅か二億五千万ドル程度しかない。こういうふうな情勢に対して、而も一方においては輸入の要請が非常に強い。いわんや国際情勢の変化によつてますます強くなる。我が国の現状においては而も輸入の確保は絶対命令である。通産大臣は、これをどういうふうに調整をされんとするお考えであるか。国際信用を勘案し、輸出状況を見合つて輸入を調整されるのであるか。なお又その際においては外貨を勘案してされるのであるか。或いは又国内資金を勘案してされるのであるか。外貨の減少という事実に対処して今後の輸入確保の問題を通産大臣はどういうふうにお考えになつておられるか、お伺いいたしたいのであります。
  138. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 一昨日でありますか、停止されました自動承認制であります。これは一―三の予算相当上廻つたので、その筋の示唆もありまして、今月一ぱいこれを停止して、来月は四月一日から又新らたな予算で発足することができると考えておるのであります。或いはそのために重要物資の輸入に非常な支障を来しはせんかということでありますが、鉄鉱石その他重要物資に対しては、特にGHQのほうにお願いをして、或る程度の許可を得たいと交渉中であります。
  139. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 私はこの輸入資金の問題は相当重要だと考えるのでありますが、先ほど木村委員でありましたかの御質問の中に、この輸入資金に対する緊急物資輸入基金特別会計の運用に関して、大蔵大臣が、大体二十五億円の範囲において当面何とか行けるであろうというお話がございまして、或いは必要によつて外貨の買入れとか、或いは政府預金の範囲において適当の見通しをつけるというお話がありましたが、大体二十五億円で廻転をいたすといたしまして、如何に廻転いたしましても、それを以てしては現在の世界情勢の変化に対応して私はなかなかそのテンポが合わないと思うのであります。大蔵大臣のこれに対する御所見は、先ほど他の委員に対する御答弁によつて承わりましたので、通産大臣にお尋ねいたしたいのでありますが、通産大臣は、果してその程度で以て輸入確保ができるとお考えであるかどうか。この点を承わりたいと思うのであります。
  140. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 二十五億の廻転資金はこれは特需用に限つてありまするのでこれはそれで大体賄えると、こう考えております。
  141. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 私は特需に対しては、大体その程度で或いは行くかも知れませんが、私は先ほどの輸入に対する外貨の手簿に対しても何らかの資金的な方策がとられなければいかんのではないかという問題に関して御質問申上げたのであります。時間も迫りましたので、その点は打切りまして、なお又私は運輸大臣に海運政策、造船政策等に関して御質問申上げたいのでありますが、今日御欠席でありまするから、これらの問題に関して通産大臣大蔵大臣、安定本部長官にも、運輸大臣お話を承わつた後において御答弁を願いたいと思いましたが、それらの点は本日は省略いたします。  ただ一点大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、船腹拡充の重要でありますることは、もうすでに異論がありません。それに対して大体現在運輸省を中心にいたして考えられておるのは、当面の緊急対策としてはもとより貴船、改造、沈船の引揚げ等が必要であるが、やはり海運政策の大本としては新造を中心とすべきである。それに対して或いは大蔵省と申しますか、大蔵大臣と申しまするか、政府の財政資金等についても、買船とか改造とか、さようなものに対しまして使つた後において、若しも余つておればそれを新造船の建造に使うというようなお考えであるやにも聞くのであり、この点について大蔵大臣のお考えを承りたいのであります。船腹拡充の基本的な方針について現在の各省間に多少意見の相違があるように思うのでありますが、この点に関しては運輸大臣に先ず伺つた上でお尋ねいたしたいと思つたのでありますが、この際大蔵大臣にこういうような点に関して御所見を承りたいのであります。
  142. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 海運政策の基本は、お話通りに新造船が最も望ましいのでありますが、物資不足の我が国におきまして、而して時間を要する新造船ばかりというわけには行かんと思います。従いまして緊急の対策といたしまして、スクラツプにする予定であつたものを改造し、或いは又買用船を計画いたしておるりであります。而して財政資金のほうは、御承知通り見返資金から来年度百十五億円出すことになつております。而して最近買船の問題として貿易特別会計の余裕金を使つたらどうかという議論が多いのでありますが、私は他の席でも申上げましたように、政府の金を以て船を買うということは御免こうむりたい。金額も五十億とか何とか言いますが、たとい二、三十億でも政府の金であれば御免こうむりたい。民間の資金でおやりになるならば、その資金の尻は預金部その他で見よう。こういう考えでおるのであります、船舶公団その他の今までの経験から申しまして、只今のところ私の海事金融に対する気持は以上のごときものであります。
  143. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 只今海事金融に対する大蔵大臣の基本的なお考えを承わつたのでありますが、先日の大蔵大臣の財政演説の中にもたしかあつたと思うのでありますが、海運とか電力とかいう基本産業に対しては、その重要性から見て、見返資金の融資であるとか、或いは又預金部資金の活用をいたすということを言つておられるのであります。もとより只今お話は、預金部資金をそのままその形において、又その性質のままにおいて融通いたすのではなくて、預金部資金のオペレーシヨンによつて、市中金融の形において出すという話でありますから、船舶金融としては形が如何ようにもあれ、その目的を達成されたらいいのでありますが、ただこの点については如何にヴオリウムを與えましても、現在の市中銀行のオーバーローン、殊に船舶に対するオーバーローンの見地から申しますと、さような政府の方針に対して形の上においては了承いたしておるようでありますが、事実はそうでないのでありまして、これは大蔵大臣の御承知のように、今回買船の資金として五十億円内外市中銀行が協力いたして出すということに相成つておるのでありまするが、併し相当の無理があるのであります。殊に私はそれに関連して貿易特別会計の問題に触れたいと思うのでありますが、通産省は、貿易特別会計が大体五十億円内外残つておる。それに対して運輸省は、低性能船舶の買入れ余裕金十億円を加えて船舶融資特別会計を設けたいとの意見であり、通産省としては、貿易特別会計の剰余金を以てダイレクトに船舶を買つて、それで以て輸入の促進を図りたい。こういうふうに両者の意見が違つているのであります。更に又大蔵省は、只今大蔵大臣お話のように、ダイレクトに財政資金を使うのにあらずして、財政資金を一応オペレーシヨンいたして、その繰作によつて市中金融の枠を広くして、それによつて船舶金融をするという方針をとつているのであります。このようにこの問題に関して三省間におのおの意見の相違があり、貿易特別会計があるとかないとか、又その使ひ方等に関して未だ関係各省の間に意見が一致いたしておらんのでありますが、それに対して先ず通産大臣言つておらるるように果してあるのかどうか、それに対して責任のある御答弁を伺いたいと思うのであります。
  144. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 貿易会計の残りが五十億あるかないかというお話でありますが、私ども詳しいことは存じませんので、事務当局から聞くと、それだけあると言うし、又大蔵当局は、それは見解が違つておるから、ないのだというようなお話であります。これは両省でよく協議すれば、幾らあるかということはおのずからわかるでありましようが、ただ問題は、只今大蔵大臣の言われたように、国家資金で船を買うとかどうかという点に帰するのではないかと思うのであります。金額が幾らあるということに対しましては、先刻申しまするように、通産当局で計算するとそうなる、或いは見方によつてないとするほうも成り立つかも知れないのでありますが、通産省側としてはあるという結論に立つておるのであります。
  145. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 この問題を解明いたすためには相当の時間を要しまするから、他の機会を持ちたいと思いまするから、この問題は一応打切りますが、いずれにいたしましても、こういう重大な問題に関して各省間に意見の相違がある。そのために現在最も緊急を要する買船が遅れているということは、国家的見地から極めて重大なことで、海運業者は国際市場に船を求めて、ボンドを積んでオツフアをいたしているのであります。それに資金がつきませんと、国際信用の問題にもなるのであります。一日遅れれば一日遅れただけ国家の損失であり又その信用にも関することでありますから、かような問題に対しては、政府間において至急に調整をせられて、そうして、政府としての一貫した政策を至急にとられることを要望いたしたいのであります。なおこの問題は重要でありますので、別の機会を持ちたいと思うのであります。私はこの際先ほど大蔵大臣お話がありましたような、コンマーシヤルに乗らない、而も国家の要請に基くものに対しては、何らかの形においてこれを財政資金による金融措置を講ずることが当然であると思うのであります。戰後における我が国の経済金融政策の欠陥は、長期企業、特に国家的の要請から重要性を持つておりまする長期企業に対して長期金融機関がないということでありまするが、さような点から一応あらゆる経済の自立ができますためには、国家の要請ということに対しての資金措置は、これは財政資金でなすべきものであつて、ダイレクトに出すということは、これは平常な経済が回復した場合に初めてそうであるのであります。でありますからこの間のいろいろなことにつきましては今申上げませんガ、さような見地から、私は見返し資金が現在千億以上ありましよう。なお又先般この委員会における大蔵大臣の御答弁におきましても、短期証券に対して相当の見返し資金による保有額がありますが、なお又経済再建費七百五十数億というものがまだその使途が決定されておらんということでありますから、現在基幹産業として一番大事な電力、船舶に対しては、先ほど申上げました見地から、至急これは適当な活用をして、そしてこれは單に海運業者のためということだけでなくして、国家的にこれを拡張するという、ことが、私は一番国全体からいつて適当ではないかと、そう思うのであります。勿論関係方面の他においていろいろなことがありましようけれども、私は日本の経済の再建は、却ち世界の平和に通ずるのでありますから、この点に対して更に政府の努力を要請いたしたいのであります。ただそこで一つ私は大蔵大臣にお尋ねいたしたいと思うのは、財政資金の私企業に対する支出総額が決定された以上は、仮に船舶金融に対して、これも昨日でありましたか、大蔵大臣の御答弁の中に、第七次造船に対応するあとの七十億円が増額されれば……大体これは政府の非常な努力によつて増額せられたのでありまして、これは非常に多とするのでありますが、この増額された見返資金の七十億円に対応する預金部資金というのは、本年度の私企業に対する預金部資金の融資の四百億円から当然に減額さるべきものであるということであります。これは一応尤もでありまするけれども、少くとも船舶、電力というふうなものは、非常に国家的な要請から見て重要性に応じて融資されたものでありますから、一方において増額されたが、一方において当然それが予見されております船舶とか電力に対する融資から減らしたということになりますと、何もならんことでございまするから、この点は問題のあることは了承いたしておりますが、何とかこれは将来そういうようなことになりませんようにいたしたいと思つておりますが、それは対する大蔵大臣の御所見は如何でございましようか。
  146. 池田勇人

    大蔵大臣池田勇人君) 先ほどの貿易特別会計の余裕金でございまするが、先ほど通産省と大蔵省のあれで検討の結果、三十五億円程度あるそうであります。併しこれは現金ではございません。急に売つてしまえばその程度の余裕財源があるというだけで、投資に向けられる現金には今年度内にはございません。そこで私はここで申上げますが、そういう現金があるかないか、三十五億とか何とかという問題でなしに、政府が外国の船を買つて民間に貸付けるという仕事はしたくない。今のような状態であつても、民間でやつて行つてもらいたい。それは民間の資金につきまして、山縣さん御承知通りに、今から四、五カ月前は銀行は三割しか出せない、見返資金は七割出してくれということを私どもは全部挙つて関係方面に言つたのですが、聞かれない。その結果を見ますと、民間では、向うは十分出せる、今度第七次造船につきましても二十万トンはとてもむずかしいと言つておりましたが、民間のほうは三十万トンに相当する大きな金融をつけたというふうに聞いておりますが、こういうことから考えて、民間においてそれだけの余裕がないかということにつきましては、もう少し私は検討を加えてやつて行かなければならん問題だと思つておるのであります。それから第七次造船で七十億円足らずでございまするが、それを預金部から出す。そうすると預金部からの資金予算の四百億円が減るとこれは困るということでございまするが、私は只今予算の説明その他で言つておると思いまするが、日本銀行の相当大きい信用供與によりまして通貨も殖えております。そこで見返資金の千億円を置いておく。それから預金部のほうもまだ預金或いは郵便年金等がわかりませんので、計画としては四百億円にいたしておるのでありますが、金があるからすぐこれを使うということは、これは危険であります。金があつても、余り出し過ぎてだぶつくということになると、インフレの誘因になるのであります。そこで私は今の資金計画では、日本銀行の輸入ユーザンス等の関係で、今の通貨は大体横這い程度にしたい。そうしてこれが輸入ユーザンスの期限が来まして、日本銀行が非常に引上げ超過になつた場合におきましては考えねばならん。通貨の收縮から事業資金の枯渇という場合においては考えなければなりませんが、今のところにおいては、大体昭和二十六年度の資金計画としては、見返資金千億円を来年度に置く。昭和二十七年度に置く。この千億円に経済再建費の七十億円があるのであります。そこで昭和二十五年度におきましても債務償還、見返資金から五百億円するという予定であつたのでありますが、この五百億円の債務償還をいたしますと、一般市中銀行の公債を消化いたしますとだぶつきます。そこで日本銀行の公債を消化したらどうかという問題であるのでありますが、昭和二十六年度から見返資金の財源が少くなりますので、償還をせずに翌年度に繰越すという処置をとつたのであります。これはインフレチエツクの道具にいたしておるのでありますから、年度経過の状況によりまして考えなければならん問題だと思う。同様に預金部の四百億円につきましても、或いは船に出しても、減らさなければならん。四百億円減るということもあり得るのであります。ただ今の計画としては、二十六年度は大体全部を通じてとんとんに行く。とんとんに行くという計画なら、見返のほうから出せば預金部のほうから減らす。こういう関係になるのであります。
  147. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 最後に一点更にお尋ねいたして私の質問を終りたいと思うのでありますが、従来財政と金融との調整の問題に関しましては遺憾の点が多かつたのであります。その後政府においてもこの点に留意されて大分改善されて来たのでありますが、なお遺憾の点があるのであります。さような点から見て、今回議に上つております、今政府において大体構想を描いておられて、或いはこの国会において上程されんといたしております開発銀行でありますが、これの今後の構成なり或いはその運営のようしきを期しませんと、折角の政府の施策がその目的を達せぬということになるのでありますが、私は、開発銀行は、伝えられるところによりますると、債券の発行が許されぬというようなことにも了承いたすのでありますが、この点は如何でありますか。折角の機構でありますから、何とか日本に一番欠けております長期金融機関として完全なものにいたしたいと考えるのでありますが、その点如何でありますか。  なお又融資の対象は、従来伝えられておりますような消極的なものではなくして、積極的に重要産業に対しての長期金融機関としての実を備えるように相成るものでありますかどうか。それに対してお伺いいたしたいと思います。  なお又殊に船舶金融はいろいろな問題がありまするが、船舶金融或いは電力に対する金融というものは、相当重点的に考えらるべきものと期待し、又了承いたしたいと思うのでありますが、その点に対して大蔵大臣の所見をお伺いいたします。
  148. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本開発銀行につきましては、只今関係方面と折衝中で、ございまして、早ければ今週中、遅くとも来週中には提案できることと私は期待いたしておるのであります。他の機会に申上げましたように、出資金が余り小さくても、仕事の分量が非常に少いし、又債券の発行が認められなくとも非常に分量は少うございますので、出資金を多くするか、或いは債券の発行を認めるか、こういうことで今折衝いたしております。債券の発行を開発銀行に認めましても、その引受先はやはり預金部の金融債にかかると私は思つております。一般市中から開発銀行が債券を発行して資金を吸收するということは、他の債券発行に影響するところが多いようでございまして、一般市中からの新しい資金の引受ということは只今のところ考えておりません。而して開発銀行の業務の範囲につきまして、見返資金で計画しておりますところの水力発電、或いは造船の計画の金を開発銀行のほうで引受けてやるということは、私は只今のところは考えておらない。将来はそうなつて来ると思いますが、二十六年度においてはそこまでは考えておりません。而して又今まで市中銀行の長期資金の肩代りに主として限るというふうな問題につきましても、私はそう強く考えなくてもいいんじやないか、出資の額によりましては新しい方面への新規の貸出もやらせるようにいたしたいと、こういう考えで今進んでおるのであります。
  149. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 最後に一点だけ簡單に御質問申上げたいのでありまするが、先ほど来縷々御質問申上げ、又所見を申上げておりまする通り、現在の、この船腹の確保は、これは基本的の問題として国家的の要請であります。それに対して只今大蔵大臣お話なつたように、或いは安本長官、通産大臣お話のように、あらゆる施策を講じて船腹の拡充を図つて行かなければならんのでありますが、さような国家的の要請があり、又すべてのものがそのことを認めておる。その半面において船腹の拡充に対して非常な制限をし、又チエツクをするという政策政府において同時にとられておる。例えばかねて問題になつております船舶に対する固定資産税、或いは事業税でありますが、これらにつきましては具体的の問題でありますから分科会に譲りますが、ただ現在一番要請されておりまする、又大蔵大臣も非常に御努力されて、先般これに対する市中金融の途がついたのでありますが、その買船をいたす際における輸入関税であります。従来は一総トン当り二十円二十五銭であります。殆んど無税でありました。それが今回の改正によりますと従価一割五分であります。大体買船の契約をいたさんとしておるものは古い船で二億円乃至三億円、少し新らしい十年とか十五年のもので四億円或いは五億円でありますから、その従価一割五分でありますと、輸入税が四千万円とか五千万円かかるのであります。現に政府の許可を受けた船がありますが、それらはかような重税のかかるということを予想していないのであります。而も買船は国家の要請によつているのであります。業者は自己のリスク・アンド・アカウントによつているのであるからそれは勝手だということになれば別でありますが、私はかような重税といいまするか、国策の一番要請いたしておりまする線に沿わないそういう措置は、少くとも特例として考え直さなくちやいかんじやないか。輸入関税に対して私はいろいろな政府のお立場等を了承いたしまするが、何らかの形においてこれは是正されるべきだという固い考えを持つておるのであります。これに対して大蔵大臣はどういうふうにお考えでありますか。政府の現在の立場をよく了承いたしておりまするので、あえてその詳細は御答弁を伺おうと思いません。むしろ将来政府におかれても何らかの形において、これらに対して適当な政策をとられんことをむしろ要望する意味において御所見を伺いたいと思うのであります。
  150. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 従来の輸入関税は主として重量税を使つております。トン幾ら幾ら……トン二十円でないかと思います。大豆なんかも一石一円八十銭の輸入で、殆んど輸入関税としてはナンセンスである。今回只今衆議院のほうにおいて審議なさつております関税定率の改正におきましても、従価税によつて……従いまして非常に高くなるように見えるのでありますが、一割程度のものならばまあ大体負担し切れるのではないかということで、原案は一割五分の課税になつております。併しこれはやはり国会で十分審議を願いたい問題だと思つておりますが、只今私といたしましては一割五分程度輸入税は負担して頂く案になつております。
  151. 山縣勝見

    ○山縣勝見君 その他重要な問題について総理大臣並びに運輸大臣等に聞きたいことがありますが、当初に申上げました通り次回に出席を待つて御質問することにいたしまして、私の質問はこれで打切ります。
  152. 山本米治

    ○山本米治君 もう大抵の問題が出しがらになりまして、余り味もないことに、與党であつてみれば余り強いわさびを入れることもできず、(笑声)誠に質問はむずかしいのでありますが、従来と余り重複しないように、又仮に同じ問題にいたしましても少し角度を変えて若干の問題をお尋ねして見たいと思うのであります。  第一にはブレトン・ウツヅ協定の参加の見通し如何という問題であります。講和がいよいよ近いと伝えられております。政治的に国際社会に参加するわけでありますが、当然経済的にも国際社会に参加しなければならんのであります。もとより貿易再開以来事実上は一歩々々国際社会に入つておるんでありますが、これは正式のものでございません。講和ができましても今考えられておるような講和、それから今の国際連合の規定から申しますと、国際連合加入はなかなかむずかしいように伺つておるのでありますが、ブレトン・ウツヅ協定はこれと違いまして拒否権というようなものもございませんし、又先例によりましてもイタリーのごときも講和條約前に参加しておるのであります。この国際通貨基金制度も終戰後の世界情勢というものが予想以上に複雑になつたこと、又戰後の経済が非常に困難であることによりまして、当初の目的は必ずしも果していないようでありまするけれども、なお且つ長期資金、短期資金というものを受けまして、そうして日本の貿易の発展或いは経済再建ということをする上にどうしてもこれは早く参加しなければならんと思つておるのでありますが、その参加の見通しは如何でございましようか。先ず大蔵大臣の説明をお伺いいたします。
  153. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話通りにブレトン・ウツヅ協定に我々は早く参加したいという念願でおります。従いまして私も向うへ参りましたときも、幹部のかたやなんかといろいろな話をしたのでありますが、何分に只今のところ占領治下でございまして、講和條約がいつということもきまりません。従いまして政府を代表して代表者を送るわけには行かんというようなことが考えられておるのでありますが、調査につきましてもいろいろの資料を提供しております。又向うの理事者等におきましても日本の経済におきましても十分の検討は願つておるのであります。イタリーはお話通り講和條約前に入りましたが、講和條約の見通しがはつきりつきましためは三カ月以前だつたと思うのであります。そういう状況であります。私は基本的な参加に適しない事情一つもないと思います。ただ分何占領治下ということによつて困難ではないかと思います。
  154. 山本米治

    ○山本米治君 次には金の問題について若干お尋ねしたいのでありますが、このブレトン・ウツヅ協定へ参加するといたしますと、国際基金、国際復興開発銀行に参加の場合は出資額の二五%を金で以て佛込まなければならんということになつておるのでありますが、仮にこれを別といたしましても、金は通貨信用制度の最後の拠りどころとして非常に重要な問題であります。そこで一体日本には金がどれくらいあるか、仄聞するところによりますと百トン、一億数千万ドルというように聞いておるのでありますが、そのうち日銀所有、保有分が、或いは金資金特別会計保有、或いは両者の間に貸借関係もあるかと思うのでありますが、それらの関係を差支えない限り詳細に承わりたいと思います。
  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本政府の保有しておりまする金と申しますると只今のところ余りございません。昭和二十一年は一トン余り、昭和二十五年は四トン余りの国内生産でございます。二十六年度も五トン近くは生産する予定でおりまするが、生産された三、四トンのもののうち国内消費も半分近くありまするので、只今は貴金属特別会計で保有しておりまする金は四十七、八億円、五十億円足らず、ドルに換算いたしまして千五百万ドル程度であります。而して別に日本銀行の所有の外貨は大体一億二千万ドル程度と聞き及んでおります。この程度しかございません。
  156. 山本米治

    ○山本米治君 終戰直後日本へ参りました賠償使節のポーレー氏が昭和二十年の十二月八日でありましたか、日本を去るときに日本の金についてステートメントを発表したのでありますが、先ず日本の金はサンフランシスコへ持つて行く、そうして現所有者のあるものは、イヤマークの分でありますが現所有者に帰す、第二は進駐軍の費用に充てる、第三番目には賠償に充てるとうように言つたかと思うのでありますが、そうすると今日本の保有しておる金、実際問題といたしましてはこのサンフランシスコ行きは実行されていないようでありますが、この所有権は一体誰にあるのか、法律上の地位はどういうふうになつているのかという点を一つお伺いいたします。
  157. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 終戰直後にありました金、日本にありました金は日本銀行所有の外貨の一億二千万ドル以外に東南アジアのほうから持つて来た金もあつたように聞いておりますが、これはお返ししたことになつていると記憶いたしております。日本銀行の金につきましての所有は私は日本銀行の所有であると考えております。而してこれは日本銀行の金庫内にありますが、関係方面の管理に属しております。而して今までにおきましても、綿花回転基金にはこれが担保になつたことは御承知通りであります。
  158. 山本米治

    ○山本米治君 そのポーレーのステートメントとどろいう関係になりましよろか、そこをお伺いしたいのですが……。
  159. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は昭和二十一年、終戰直後のポーレーの声明書を読んでおりません。従いましてどの程度の権威があるか私は存じておりません。
  160. 山本米治

    ○山本米治君 次に先ほど申しましたように、金は通貨信用機構の最終の拠りどころとして非常に重要なものであります。尤もケインズ氏は金崇拜は野蛮時代の遺物だ、こう言つておりますが、現実の問題として金は非常に重要なんであります。そこで産金の政策についてお伺いしたいのでありますが、今どれくらい出ているか、先ほど四、五トンくらい産出されているように言われましたが、この産金額のほかに産金政策、どういうような政策をとつておられるかということをちよつとお伺いしたい。
  161. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話通りに、私は金は非常に大事にしなければいかんもんだという固い気持を持つております。従いまして昭和十五、六年頃には多いときには三十トンを超えたと思いまするが、これはそういうふうに急激に増産はできませんが、通産省の予算に探鉱費、その他を計上し、又有望な金山につきましては長期資金を出すような気構えで金融機関を督励いたしているのであります。今後ともとにかく金は国際的に申しましても最も大事なものでございまするから、増産につきましては十分な努力をいたしたいと思つております。
  162. 山本米治

    ○山本米治君 金につきましてもう一点お伺いしたいのでありますが、最近国際的な緊張というようなことに関連しまして、又世界的なインフレ不安ということに関連しまして、ヨーロツパその他では非常に金の取引が盛んになつているようであります、極く最近も、昨年平均の三、四倍に達しているということでありまして、価格も世界的な標準であるところの一オンス三十五ドルに対して四十二、三ドル、ところによれば五十ドル近くもしているということであります。又日本におきましても金の闇取引がありまして、一匁千五百円といつたような、公定と言つていいかどうかわかりませんが、これに対しまして二千六、七百円もしている、ドルに直しますと五十数ドルという、まあいわば闇値を呼んでいるようでありますが……尤も日本には金の取引というものは割合に少いと思うのでありますが、こういう事情に対してつどういうとになつているか、或いはそれに関する御所見を伺います。
  163. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話通りに、政府の買上値段は一匁千五、六百円だつたと思つております。而して一昨年頃はこれが三千円くらいの呼び値でありましたが、昨年の初め頃或る国が相当金を国際的に売出したというので、国内的にも千五、六百円の買上価格に近く千七、八百円まで下つたということも聞いているのであまりす。最近くそれより高くなつたと思いまするが、これは私はこちらにおきましての取引もございませんし、又アメリカがあの公定を保つている以上これに乘つかつて行くよりほかにはないと思つております。従いまして昔のようにアメリカ市場よりも少し安目に買上げておつたのを、できるだけそれに近寄らすような方法で産金を奨励して行きたいというふうに思つております。
  164. 山本米治

    ○山本米治君 次には現在の日本経済の状況を、政府当局は好景気と考えておられるか、インフレーシヨンと考えておるかという点であります。もとより経済社会上の容貌というものは余り正確でないのであります。或るときの状態を或いは好景気だとか、或いはインフレーシヨンだとか言つて一つの言葉でスタンプル押してしまうのは誠に困難でありますが、ただ重要点をどういうふうに認識しておるかということで、政策にも関係して参りますのでお尋ねしたいと思うのでありますが、私は少し輸出インフレの傾向があるのじやないか、こういうふうに考えるものであります。若しそうだとするならば、この新年度予算というものが非常に中立的、均衡的にできておるわけでありますが、これでいいかどうかという問題に関係して来るわけであります。今までの経過を見ますと、御承知のようにドツジ・ライン以後の二十四年度予算、二十五年度予算はいずれも超均衡だと言われております。そうして二十四年度におきましては大体政府資金は年間千億近い引揚超過になりました。日銀の信用調節によつて相当カバーいたしましたけれども、なお且つかなりのいわゆるデフレの様相を呈した。二十五年度の予算も当初におきましてはやはりいわゆる超均衡予算でありまして、千億くらいの引揚超過になるという予定でありましたが、例の警察予備隊の設置、或いは貿易資金特別会計の関係から、逆にむしろ年間では数百億の撒布超過になるのじやないか、こういう状況になつておるわけであります。只今申上げましたように、二十五年度予算が超均衡でありましてさえも貿易の面から金が出まして、むしろインフレ的になつておる。いわんや二十六年度予算は初めからニユートラルな予算として組まれております場合に、それでいいかどうか、少し甘いのじやないかという気がするわけであります。無論このインフレになるかどうかという問題は財政の面からだけではなくて、金融とも総合して考えなければならん。財政がデフレであれば金融でこれをカバーする。財政がインフレであれば金融でこれをカバ一するという手があるわけでありますから、両方補なつて総合して判断しなければならんと思うのでありますが、何分にも今日におきましては国民経済における財政の規模が大きいのであります。これを金融で受止めてカバーするということがなかなかむずかしい。それも金融の面から資金を安易に出すという面のカバーならばなしやすいのでありますけれども、財政がインフレなつた場合に、金融で、これを全体としてインフレにならないように引締めるということはなかなか困難である。こういうわけで私は二十六年度の予算、超均衡という言葉は俗語でありますけれども、どこかに相当なゆとりがなければインフレになる危險があるのじやないか、こういうふうに考えるわけであります。そのゆとりといたしまして、或いは講和問題が近く起される、その場合には終戰処理費がなくなる。これなどがゆとり、彈力源となるかとも考えられるのでありますが、又いろいろ国際情勢考えますと、それらも必ずしもそうは言えないかも知れない。こういう意味におきまして、私はこの二十六年度予算が一応表面は中立的であるけれども、本当にこの貿易の面から今年度予算のごとく予想外に金が出るという場合に、これを受止めるだけの強靱性といいますか、彈力性があるかどうかということに若干の疑問を持つのでありますが、この点に関しまして御所見を伺いたいと思います。
  165. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 結論から申上げますと、昭和二十六年度は政府関係におきましてはニユートラルな、いわゆる大した撒布超過、引揚超過もない、こういう計算でおるのであります。過去を振返つて見ますと、お話通り昭和二十四年度に引揚超過になり、二十五年度は当初は超均衡予算と言われておりましたが、貿易関係で八、九百億の撒布超過になると想像いたしております。而うしてこれは輸出が先ず伸びて、そうして輸入があとから伸び出して来た。こういうので日本銀行のユーザンス関係で一時的に伸びておるのでありますが、これがユーザンスの期限が来て、又それがスタンプ手形になりましても相当の資金回收が七、八月頃から行われるようになりますので、これは大体五百億円のインベントリー・ファイナンスをして行けば絶対賄いがつくのではないかと考えております。
  166. 山本米治

    ○山本米治君 そこで丁度そのインベントリーの問題に関連するのでありますが、二十六年度の国際收支の問題を伺いたいのであります。この二十五年の暦年の輸出を見ますと、八億二千万ドルでありまして、前年の五億一千万ドルに比べますと、六一%殖えております。若し特需中の商品の部分、即ち一億二千八百万ドルと加えますと、昨年中の総輸出は合計で、九億四千八百万ドル、一昨年に比べますと、八六%の増加になります。一方輸入は九億五千万ドルでありまして、一昨年の九億五百万ドルに比べて僅か五%しか増加でない。即ち一口に申しますと、輸出増八割六分、輸入増は五分、僅か五分であります。これで大体貿易としてはほぼ均衡したわけでありますが、これをほぼ貿易が均衡ということは大ざつぱに申しますと、アメリカの援助関係だけ外貨資金が浮くということになるわけであります。そこでこのほかに貿易外收支の問題もありますが、要するに昭和二十五年度の国際收支、二十五年度でありません。暦年の国際收支を日銀の外国為替統計で見ますと、受取が十億八百万ドル、支拂が六億七千七百万ドル受取超過三億三千百万ドル、即ち三億以上の外貨が溜まつたわけであります。こういうふうに見て参りますと、この昭和二十六年度の見通しでありまするけれども、只今申しましたような数字と又この中に含まれておりますところの傾向というようなものを総合して考えますと、二十六年度の国際收支というものは相当受取超過、又外貨が殖えるのじやないかと考えるのであります。無論最近は政府は大童で輸入増進をやつており、又事変の関係もありまして、非常に輸入ができておる。従つて第一・四半期ぐらいは或いは支拂い超過になるかとも考えられますが、二十六年度全体としてはやはり相当な外貨の受取超過になるのじやないかと想像するのであります。ところが政府が本年の予算基礎にいたしておるところの数字を見ますと、外貨の受取は十四億六千万ドル、支拂が十三億八千二百万ドル、受取超過七千八百万ドル即ち二百八十億円ということでありまして、これに日銀のユーザンスの関係などを入れまして、結局五百億円こういうインベントリー・ファイナンスをやつておるわけでありますが、只今申しましたような見通しから申しまして、むしろこの五百億円では足りないじやないか、若しそうだとするとここに貿易インフレの根源があるのであります。野党の諸君、なかんずく木村禧八郎君のごときは、常に声を大にして政府インフレを警告しながら、このインベントリー・ファイナンスにつきましては、これは昨年、一昨年の債務償還費と同様に、これは超均衡の要素であるとして反対しておるでありますが、矛盾も甚だしいものだと私は考えておるであります。若しインフレを懸念するならば、この外国為替資金特別会計のこの点を問題にしなくちやならんと私は考えておるのであります。そこで私は間もなく大インフレが来るとは思つていない。今問題になるのは貿易インフレの懸念が多分にある。そうして貿易インフレというものは終戰後日本が体験したような敗戰に伴うイソフイに比べると、たちは大分いいのでありまして、無論歴史上にもいろいろ例があります。第一次大戰当時は、その直後のスエーデンとか、或いは日本もそうでありましたし、最近のイギリスもそうだつたかも知れません。このスエーデンや日本の例を見ましても、輸出インフレ程度というものは、物価が三倍前後になる程度であります。敗戰後のインフレの何百倍、何千倍に対しましての三倍前後の割合でありますが、敗戰インフレとは違うのであります。なお且つこのインフレの懸念のある、これに対しましては、スエーデンのごときはカツセル教授が金排斥政策をとつたのでありまして、輸出超過の結果として、金が流入して来る。ですから無制限には買わない。買う場合にも定価より安く買上げるという、こういうような政策をとつたのであります。又日本におきましても同様に、一般会計或いは預金部資金から十七億円も入れたのであります。そうして外貨を買つたわけであります。この十七億円と申しますと、今日の金にすれば何千億円というわけです。こういう何千億円という政府の財政資金を使つてこの外貨を買入れたわけであります。こういう経験が日本にもあるわけであります。そこで私はインベントリー・ファイナンス五百億円で足りるかどうか、この国際收支の見通しと関連して若干疑問に思うのでありますが、国際收支の見通しを伺いたい、最近又情勢が変つております。最も新らしい情勢を入れた国際收支の見通しを伺いたい。
  167. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際收支といたしましては、前にもお配りいたしました外貨の受取が、十四億六千万ドル、支拂が十四億三、四千万ドルと計画いたしておるのでありまするが、最近の情勢から、或る程度受取、支拂も増大するのではないかと思います。併し我々といたしましては、両方とも同じように伸びて行くというように措置いたしたいと思います。昨年におきましては、お話通りに三億ドルばかりの外貨の受取超過に相成つております。併し昨年末に比べまして、一月、二月の様子を見ますというと、輸入相当伸びまして、外貨のあり方は四、五千万ドルくらい減つております。上半期におきましても、私は相当輸入超過になるのではないか、こういう気持を持つておりまするが、全体といたしましては、やはり両方とも同じように伸びて行くような方法を講じたいと思つております。従いまして大体五百億円で賄つて行きたい、又賄えるだろうという見通しを持つております。この五百億円の問題につきまして、山本君のお話がありましたが全く同感でございまして、昨年の十月、十一月頃、インベントリー・ファイナンスを補正予算で百億円やる、或いは来年度五百億円やると言つたら、とんでもないことだといつて、非常な反対があつたのでありまするが、最近漸くわかつて、これはもう、財政施策としては当然なことだというようなところまで参つたのであります。これは山本委員が先般の補正予算の討論のときにおつしやつた通り、我々としてもやつておるのであります。この点が漸く国民の理解を得るようになつたということは、非常な進歩だと考えております。
  168. 山本米治

    ○山本米治君 次にユーザンスの問題でありますが、いわゆるユーザンス、私がここにいわゆるという言葉を特につけるのは意味があるのであります。実はユーザンスという言葉が間違つておるのだと考えておるからであります。日本では、どうも一般大衆に経済知識が低いためか、非常にしばしば間違つた言葉が使われる、無論間違つた言葉も全部の人が間違つたように了解すれば、それで通用するというようなものでありますけれど、やはり非常に困る場合がある。例えばその一例が平価切下げという言葉であります。二、三年前に、非常に平価切下げということが言われた。我々が田舎の隅々に行つても、爺さん婆さんまで、平価切下げということを言つておる、どういう意味かといえば、百円札を十円にするとか、或いは一円にする、こういうことを平価切下げと言つておるのでありますが、それは大変な間違いでありまして、平価ということには、金平価若しくは為替平価しかないわけであります。従つて平価切下げといこうことは為替相場に関係する用語なのでありますが、百円札を一円にすることを平価切下げと考えておる。それではそれで不便がないかと申しますと、当時イタリーなどでは本物の平価切下げがあつた。而も当時新聞は、同じ日の同じ紙面の中で、日本流の平価切下げのことを書き、又一方ではイタリーが平価切下げをやつたことを書いておる。こういう意味におきましては、私は言葉は間違つて使うということは困ると思うのであります。只今申しましたインベントリー・ファイナンス又然りであります。併しインベントリー・ファイナンスというのは、申すまでもなく、資産見合いの金融ということでありまして、その金融を銀行からつけようが、どこから借りようがかまわないのでありますが、日本ではたまたまドツジ氏が財政問題に関してそのことを言われたので、一般会計から繰入れることがあたかもインベントリー・ファイナンスの要件であるかのごとく間違つて伝えられておるのであります。まあ非常に困る。そこで私は本論のユーザンスの問題に来るのでありますが、このユーザンス、ユーザンスビルというのが問題でありますが、ユーザンス・ビルというのは申すまでもなく期限附手形であります。丁度これに対立する概念がアツト・サイトであります。サイト・ビル即ち一覽拂手形であります。そこで外国からの輸入手形は一覽拂であるか、或いはドキュメントの到着後若干期間支拂を待つてくれるのか、これがサイト・ビルであるか、ユーザンス・ビルであるかの違いであります。そうして日本の現在を見ますと、大体みんなアツト・サイトであります。一覽拂であります。あたかもユーザンスとは反対の一覽拂であります。外国に対する関係ではアツト・サイトですぐ拂わなければなりませんが、それでは貿易業者は困る、輸出業者は困る。そこでこれを国内措置で待つてやろうというところにユーザンスという言葉を使つておる。そこで日銀ユーザンスなどと言つておる。併しユーザンスの利益を與えるものは外国銀行でなくちやならんのでありまして、こういう意味におきまして、私は現在のやり方に対しユーザンスという言葉を使うのは間違いであつて、これは輸入金融に対する特別措置とも称すべきだと考えておる。少し横道が長くなりましたが、やはりこれは重要なものだと思つて言うわけでありまして、そこでこのいわゆるユーザンス制度は、御承知のように昨年九月の下旬から始まつておる、そうしてこのユーザンスの期限が大体三ヵ月から四ヵ月くらいになつておるのでありますが、これが非常に甘いのじやないかと私は思うのであります。それでその結果として、貿易業者がこれを生産金融等に濫用しておる虞れもないかと、こういうことを考えておるわけであります。輸入貨物が到着する、それを極めて短期間の間に処分してしまう、そうするともうすでに金を持つておるわけでありますけれども、ユーザンスにより、三ヵ月なり四ヵ月なり支拂が待たれる、輸出ビルですぐに現金になる、輸入のほうは三ヵ月も四ヵ月も待つてもらうと、こういうことになりますと、貿易業者の手許は非常にゆるやかになりますので、ついこれをメーカーのほうの金融に廻して来るという事業がないかどうか、こういうことをお伺いしたいのであります。 いま一点は、このいわゆるユーザンスの結果、日本銀行の信用金融調節機構というものが、全く麻痺してしまつておる、こういう重大な結果を招いておるのであります。最近日本銀行の貸出は千二百億くらいでありますが、そうして新聞にはこの数字しか出ていないのでありますが、実はいわゆるユーザンス制に基くところの外国為替貸付金、これは実質上日銀の貸出にほかならないのでありますが、これが二月の末日まで二千六百億と思うのであります。今はもつと殖えておると思います。これを合せますと、日本銀行の貸出は実に三千七、八百億になつておるのではないか、まさにそういうような、発行高におつつかずになつているのじやないか、こういう状態になつておるのでありまして、これがために日本銀行の通貨信用調節機能というものは、相当麻痺されてしまつておる。最近新聞によりますと、このいわゆるユーザンス制の改訂が問題になつておるようでありますが、この際大蔵大臣はこの世界にも類例のない、現在日本のいわゆるユーザンス制を普通の輸入金融方式に直すお考えがないかどうか、即ち輸入業者は銀行から金を借りる、銀行は、日本銀行から輸入資金を借りる、そういうふうに直す、その間に資金の調節の機能を幾らかでも回復するようにすると、こういうお考えはないかどうかお伺いしたいのであります。
  169. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ユーザンスの期限の問題でございますが、お話のように大体原則として三ヶ月、そして遠方の地域は四ヶ月くらいになつておると思います。当初きめますときに少し緩過ぎたという嫌いがありますので、再検討を加えております。例えば台湾から輸入するものであつて而も内地ですぐ金になるようなものにつきましては三ヶ月は勿論認めない。一ヶ月足らずくらいに出しております。又長期のものにつきましても、例えば羊毛等は価格も上りますし、そうして昨年の輸入数量の五割増くらいの契約でどんどん入れております。こういうものにつきまして、四ヶ月のユーザンスを認めてそうしてその後スタンプ手形にするか、或いはもつとユーザンスのほうを短かくして、そうして移り変るなら、その個々の品物につきまして三ヵ月、或いは四ヵ月につきましての再検討を今加えておるのであります。お話のような生産資金にもつと廻る、程度のこれは問題でありまするが、これを正常化したいというので努力しております。  次にこの外国為替取引並びに金融につきまして、根本的な改革の余地はないかというお話でありますが、我々私見といたしましては、できるだけ早くそういう通常の状態にやつて行きたいという気持を持つておるのであります。御承知のごとく昨年の八月項この問題につきまして議論いたしました。三者三様の議論でありましたが、私はあの当時から今の程度には私見といたしましては、余りあきたらなかつた。併し当座の場合として止むを得ず今の制度になつたのでありますが、今後貿易金融は相当重要なことにも相成つておりますので、又今のインフレの対策といたしましても根本的に検討を加えなければならんと思いまして只今研究中でございます。
  170. 山本米治

    ○山本米治君 非常に時間が少いのではしよらなくちやなりませんが、次に物価と為替の問題をお尋ねしたいと思うのであります。朝鮮動乱以後我が国の卸売物価は毎月大体三%前後のテンポを以て上つて参りまして、年末までに二三%上つておる、この間外国の物価、まあ例えばアメリカ物価は一〇%ぐらいしか上つていない。アメリカの卸売物価については多少問題もあるように伺つておるのでありますが、ともかくこの傾向を見るだけにはこれで十分だろう。即ち我が国の物価の上り方は外国よりも大分強いのであります。そこで第一の問題はもその現在の物価騰貴国際物価影響を受けておる、このことはもう問題ないのでありますが、日本騰貴率が外国以上である。そういう点から我が国の物価騰貴の原因として国際物価影響のほかに我が国独自の国内の原因があるかどうか、こういう問題でありますが、いろいろ国内見渡して見ましても無論インフレの要因がないとは言われないのであります。或いは思惑もありましようし、又先ほど申しました貿易に関する将来の懸念もあるのでありますけれども、只今までのところを見ますと、国内の原因は比較的少いようでありますが、即ち外国からの影響であつて而も日本のほうは外国以上に上つておる。こういうことなんであります。そこで若しそうだとするならば朝鮮動乱以後における我が物価騰貴率のうち、外国並の分は勿論でありますけれども、外国以上に上つておるということもこれはやはり国外的な原因である。そうすると、これはどういうことであるかと申しますと、結局運賃、保險料というものが異常に上つておるといろところに原因があるのであります。特に我が国のようなバルキーな物資を輸入する国におきましては、この保險料とか、運賃の関係が非常に強いのでありますが、そういうことで、結局輸入価格ということにはほかならないけれどもこの輸入価格を分折して見ますと、CIFのCは外国の物価騰貴からこれはやむを得ないと思いますが、IFが非常に上つておるということで、国内の物価は非常に圧迫を受けておる、非常に上つておるということになるわけであります。一例を運賃にとつて見ましても、例えばアメリカ小麦の一トン当りの運賃は、昨年秋頃は十一ドルぐらいであつた、これが最近では十八ドルになつておる。大体米を運ぶ場合の運賃も四、五ドルから十ドルまで上つておる、こういうように、まあ運賃或いは保險料も同様非常に上つておるのでありますが、即ち我が国の物価騰貴影響は、少くとも今のところ国内的には割合少い、專ら外国の影響であつて、而も外国の卸売物価騰貴率と日本のそれとを比べて見ると、日本のほろが遙かに強いということになつておるのであります。そこでこの問題が為替相場に展開するわけでありますけれども、こういうように我が国の物価騰貴というものが專ら外的な原因であるとするならば、これを緩和するために為替相場を切上げたらどうか、円を切上げたらどうかということが、紛績その他一部経済界に抬頭しておることは御承知通りであります。私大体為替相場というものは余り軽々に動かすべきでないという意見を持つておるのでありまして、この際政府は為替相場の切上げ意思ありや否やと、私はそういう愚問は発しません。政府はそういうことは絶対にないと言うにきまつておるからであります。私はこれを少し別の角度からお問いしたい、即ち現在の日本物価上騰に対して私が先ほど分折いたしましたような意見に対して、どういう御所見を持つておられるかどうか、それから又現在の為替相場は変えないほうがいい、そういうふうにお考えになるその根拠はどういうものであるかということをお伺いしたいのであります。
  171. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 外国の物価日本物価との上り工合につきましては、いろいろな調査がありますが、大体二月の卸売物価は、アメリカのほろは昨年の六月を一〇〇にいたしまして、一六・七%ぐらい、イギリスは一七。六%、フランスも大体それと同じでございます。而うして日本が二八%に上つておる。これは主としてあなたのお話のCIFのFが影響しておると思うのであります。このFの上りかたを考えまして、どの程度になつておるかということを検討いたして見ますれば、大体御意見の通りだと思います。併しながら日本物価だけは英米仏というよりも、ほかの方面へ相当輸出が伸びておりまするので、こういうものが或る程度影響があるのではないかと思います。従来他の機会にも申上げましたように、できるだけ我が国の物価上昇率が急激にならない、抑える方針をとつて行く考えでおります。次に為替相場、これは変えるか変えないか、政府は何と申しますか、変えないほうがよい、変えないほうがよいという理由について、どんな根拠であるか、これはあなたがお話になりましたように、為替相場というものは、そうときどきの様子によつて変えるべきものじやないということは、日本の経済の根底がとにかく三百六十円レートで今進んでいるからであります。
  172. 山本米治

    ○山本米治君 この点に関しまして、私は意見を持つておるのでありまするが、大分時間がなくなりましたので、私はまだ質問の半分にも至らないのでありますが、今日はこれで私の質問は打切ります。
  173. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 私は自立経済を推進する上において、今後蚕糸業は非常に大きな役割を持つものであると思うのでありますが、この蚕糸業の問題に関して今日まで一度も触れたことがないので、私は蚕糸業の問題に対して二、三質問をいたしたいと思います。御承知通りに蚕糸業は戰前において我が国の経済の上において極めて重要な地位を実は占めておつたのであります。戰前には一番多いときには桑園反別は七十一万町歩以上ありました。養蚕戸数は二百十六万戸もあつたわけであります。そうして繭は一千六百五十万貫をとりまして、そうして生糸の輸出高というものは五十六万俵にもなつてつたのであります。それが殆んど日本の総輸出金額の四四%というような、殆んど日本から輸出した外貨の半分は生糸でとつてつたような状態であつたのであります。それでありますから蚕糸業というものは我が国の国力を増進する上においては非常に重要な役割を戰前には持つてつたのであります。ところが戰争になりまして、蚕糸業は平和産業だということのために極度に圧迫をこうむつて、桑園に対しては強制的に奨励金まで出して減反を命じたのであります。それがために終戰直後の昭和二十二年には桑園反別は十七万六千町歩に減つてしまつた。繭の産額は千四百万貫というような極度の減りかたをいたしたのであります。ところが最近になりまして、食糧事情も非常によくなり、それから農作物の闇価格というようなものも殆んど最近はなくなつた。それがために農家としては確実な現金收入のある方面へ生産を集中しようとして、今日は各地とも蚕糸業は非常な期待をかけて参るようになつてつたのであります。又半面海外の生糸の需要というものは、最近に至りまして、非常に旺盛になつて参りまして、昨年度に取引した、つまり生糸を需要した国は二十ヵ国以上になつておるような状態に実はなつてつたのであります。こういう点から考えますと、何としてもこの際蚕糸業というものに対して、いま少し国家的に認識をすべきであるのではないかと私は考えるのであります。このような蚕糸業であつても、昨年一年度において輸出の金額というものは、総輸出額の八%、約一割に近い輸出金額を、これほど縮小された蚕糸業においても持つておるのであります。それでありますから、どうしても、この際自立経済の上からも、又農家経営の上から考えましても、この際蚕糸業を振興させるということは非常に緊要なことであると私は考えるのであります。ところで、この点に対して政府は蚕糸業をどういうふうにするとか、或いはどの程度まで持つて行くべきであるかというような目標というものが全然ない。最近においてはない。でありますから、この際に食糧事情の点から考え、又殊に蚕糸業というものは、桑を作る場所は畑作であるのであります。で、この畑作物というものが、ことごとく統制が解除された今日においては、相当各地方に今後どの程度の蚕糸業を持つて来るか、或いはどの程度のいわゆる桑園を作つてつて行くかということを、この際目標をどうしても明らかにすべきではないかと実は考えるのであります。この点に対して農林大臣並びに安本長官はどういうふうにお考えになつておりますか、承わりたいと思います。
  174. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 蚕糸が戰前における輸出品目の中で重要な位置にあつたことは、お話通りであります。戰後におきまして、農林省といたしましては五ヵ年計画を立てまして、その緒についたのでございまするが、その間食糧事情が非常に悪化いたしたために、実際の計画は実はうやむやになつておるようなわけであります。極く最近に至りまして、新たに計画目標を立てまして、そうしてこの重要な輸出品を又再び振興するような方途をきめておるのでありますが、その詳細な内容は今検討中ありまして、でき得る限りこれを助長いたし、併し單に畑作物が解除されたからといつて、食糧の重要なことは事実でありまするので、それと余り競合しないような方向に持つて行つて、そうしてこれを完成いたさせたいという考えで目下立案中であります。
  175. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 その次にお尋ねしたいのは、そういうようにお考えになつておるのでありますから、近く蚕糸業の目標というものが立つことだと思いますが、併しここに私はお考えを願いたいと思いますことは、今提案されております農業委員会でありますが、これは今後系統組織になつて、最下部においても相当今後は農地の点、或いは改良の点において重要な役割を持つものだと思うのであります。ところがだんだん調べて見ると、その農業委員会の中に蚕糸というものが除外されておるのです。これでは私はどうしても本当に合理的な蚕糸の推進というものはできないのじやないかという点が第と、それから第二には、今度いろいろ御心配になつてできました農林漁業金融の問題でありますが、これにおいても、蚕糸の現状においては、乾繭倉庫であるとか、或いは共同飼育所の建設であるとか、或いは共同稚蚕飼育所であるとか、桑園であるとかいう、長期資金を要するものが相当あるにもかかわらず、これから全然蚕糸が除外されておる。こういう点から見ると、如何にも蚕糸業というものが軽視されておるような感じを受けるのでありますが、その点に対してお考えを承わりたい。
  176. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 御存じのように蚕糸の問題に関しましては、比較的市中の金融が付きやすいことからいたしまして、只今おつしられたような機関からこれを除いておるのでありますが、将来はそういう機関の中にやはり入れなければならんかと考えております。
  177. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 その次にお伺いいたしますが、二十六年度の予算を見ますと、その予算の総額の中の大部分は生糸の検査所の費用、それから蚕業試験場の費用であつて、一般蚕糸業の施設に使われておる費用というものは極めて少いのであります。而もその少い経費がいろいろなものに分配されておる。ああいうことではとても私はこの蚕糸の推進なんということは考えられない。それで限られた予算であるから、金額はやむを得んとしましても、どうしてももつと重点的に、ここまで縮小した蚕糸業を殖やして行くにはやつて行かなければならん。それには何としても第一線に働いておる指導員の待遇を改善することが最大の急務であります。然るにそれは普通農事に比較しますと、五分の一に足らない計上をされておる。蚕糸業というものは、とにかく桑園を指導して更に蚕の飼育というものを指導せねばならんのである。聞くところによりますと、あの少いのは反別から割出されておるからだというような話も聞くのでありますけれども、これはその実態と非常に違つた考えかたでありますから、最も近い機会にいわゆる普通農事と同じに第一線の指導員の待遇を引上げるべきだと思うのでありますが、それに対して、大蔵大臣のお考えを聞きたいと思います。
  178. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 蚕糸業の重要なことはお話通りでございまして、我々といたしましても、できるだけ日本の重要産業でございまするから、その品質向上につきましては努力をし、指導員につきましても、適当な方途を講じておるのであります。どれだけ殖せというふうなお話かわかりませんが、事柄の重要性に鑑みまして、できるだけのことはいたしておるつもりございます。
  179. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 今のお答えはちよつと何んですが、普通農事と同じ程度にまで早急に一つつて頂きたい、こういうことなのであります。それからその次にお尋ねいたしますが、御承知通りに、生糸の価格は最近非常に異常状態を呈しまして、昨年の後半期には生糸の価格というものは、一般に物価上つたとかどうだとかいうような問題と、もうかけ離れた状態でありまして、昨年の丁年春繭の出廻りの六月頃には十一、二万円をしておつた生糸が、八月には二十万円になり、本年の二月には三十万円を突破する、いわゆる三倍というような価格に実は上つてつたのであります。そこでこの状態に対して価格抑制措置が講じられたのでありまして、これは二十五万円の基準価格を設けられたことは非常によかつたと思うのでありますが、併しそれはただ單に二十五万円の基準価格を設けられて関係業者に協力を求められたということであつて、その措置は放任されたことから見たら非常に結構なことだと思いますけれども、併しながらそういうことだけで、今後この価格措置というものが、或いは蚕糸に対する措置というものが行けるかというと、私はそれは非常にむずかしいものである。ただ單にその二十五万円ということは、内需生糸だけにそれは適用されるのであつて、輸出生糸、先約定物、それから輸出織物の原糸というものはそのままなのであります。そうしてこれを以て考えますというと、端境期中にもう生糸というものは二万俵程度より残つていない。生産されるものを合せても二万俵程度よりない、そういうことになると、果して輸出ということが優先的に行えるかというようなことなどから併せて考えて見ますと、これはこの際に政府としてとにかく根本的に一つ考えに相成る必要があるのじやないか、なおそういう価格の異常状態を来たしておるために、その裏面を考えると、養蚕と製糸の間には相当相剋摩擦が起る、又来年の、つまり本年の春繭の金融という問題は相当円滑を欠くのであります。これらのことを考えますと、何としてもこの際に適当なる方策を講じて頂かんといけない。若しこれがこの三倍というような価格が逆に現われておつたら、一体この頃はどういうことになつておるか、国家としても相当の大きな金を支出されなければいかないようなことになるのじやないか。それらを考えますと、この際に蚕糸対策というものを是非一つ考えを願わなければならんと思うのでありますが、それに対してのお考えを承わりたいと思います。
  180. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 糸価が非常な変動を来たしまして、海外の企業家を脅かすような価格になりましたので、政府は二十五万円台の基準価格を設定いたしたのでありますが、それのみではどうしもうまく行かんじやないかということでありますが、成るほどそれだけではあなたのお説の通りうまく行かないのでありますが、併し業者の協力を得てうまく行くように是非やつて頂きたい、こう思うのでありますが、それからそれに対する金融その他、或いは又今後の繭の買付け等については十分検討いたしたいと思つております。
  181. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 この蚕糸対策の問題は非常にむずかしいので、蚕糸が統制が除外されてから以来、業者間でも非常にやかましい問題で。いわゆる糸価安定策とか、或いは制高制低とかいうことが唱えられて参つたのでありますが、併し現在のような非常に生糸の生産量の少ないときに、而も制高制低であるとかいうような案を作ろうと思うと、それは一つの基準価格を作らなければならん。基準価格なるものは今日のような激動期になかなか誰が考えてもできない。昨年の実際を見ても三倍なんという価格が現われておる。どれを以て基準価格にしたらよいかわからんということになると、結局いわゆる生産費価格ということよりほかにないのであります。こういう国際商品を生産者価格というようなもので立てることは恐らく不可能であると思いますし、又若しできても僅か十五万俵内外くらいの生糸でそういう政策が立てられても、恐らくこれを運用するということはできないのじやないか、この際に私はどうしても養蚕、製糸を一体とした理念に基いて、この際に蚕糸業の安定策というものをお立てになる必要があるのじやないかと考えるのですが、その点に対しての御所見を伺いたい。
  182. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) お話の点は御尤もでありまして、先般アメリカにおいて蚕糸業者の会合の席上におきましても、その問題が強く取上げられたことは御承知通りであります。その後我々の手において糸価安定策或いは養蚕家も含め、製糸家も含めたこの糸価安定策を考えて立案いたしているのでありますが、なかなかそつちこつちにぶつかりましてうまく行かんのでありますが、これもあなたのお智慧を拜借して、こういう糸価安定の将来、製糸の将来、蚕糸の将来のためにこの糸価の安定の策を講じたいと考えております。
  183. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 大蔵大臣にお伺いいたしますが、本年の繭代資金というものは昨年に比べると、どうしても今から考えると四倍以上になると実は思うのでありますが、常に蚕糸業は非常に危險な仕事だということで、金融業者からは繭の金融に困難を感じているが、この点に対しては特別に一つ御心配を願わなければならんと思うのでありますが、何かお考えがありましたら、一つ承わつて置きたいと思います。
  184. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 糸価が通常の状態にありますときには、これは金融も楽だと思います。今お話のように、昨年の今頃は十二、三万円こういうのであつて、そうしてそれが上つても十四、五万円というならよろしうございますが、二十五万円もするということで、これを金融を付けて、而してその後の生糸の値がどうなるということを金融家は考えますから、いつも違つた見かたで困難な点があると思います。どういうふうにしてこれを切り拔けるかということは、金融界の意向或いは又製糸家の意向も聞いてきめなければならん問題と思いますが、いつもより厄介な問題だと自分は考えております。併しこれをどうするかというような具体的問題につきましては、今日実は初めて聞いたのであります。これはそういう相談に応じなければならん問題だと考えております。
  185. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 今一つお尋ねしたいのは、戰時中に蚕糸統制会社ができまして、その後蚕糸協会ができたのでありますが、それがいずれも清算を命ぜられて、そうしてこの清算において価格差益金というものを両方の会社で約八十七億ほどと思いますが、そうしてそれでなお現在蚕糸統制会社のほうでは糸価安定の資金として一億、それから蚕糸協会の清算剰余金というものが十二億八千万円ほどあると思うでありますが、これは僅か二千万円ほどの出資に対してそれだけの金が実は浮いている。これをこの際に何とかして、適当な措置を講じて、そうして蚕糸の今後における適当な対策の金に当てるべきだと思うのでありますが、今日一向その問題は進行していないようでありますが、これは農林大臣でありますか、大蔵大臣でありますか、何か至急に一つ考えを願いたい。業者のほうでも大体寄つて、それらのことに対しては相談が進行しているのでありますから、是非一つお願いしたいと思います。
  186. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) 隣りで池田君がとるよとるよと言つておりますが、これは大蔵省と折衝いたして、向うはとろうと思つているということで、こつちは糸価安定その他に使いたいと考えているんですが、又私のほうはこれはなかなか説得することに苦労いたしているのであります。これもあなたの構想のように使つてもらうことが我々の理想でありますが、極力大蔵省をこれから説得する考えであります。
  187. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 ちよつと私の申上げたのと多少違うんですが、差益金のほうは何でありますけれども、そうでなしに業者にいわゆる帰属している金が結局十三億八千万円ほどあるわけであります。それが結局は僅か二千万円の出資に対する金なんであります。業者のほろでそれを適当な方法で、来たるべき対策にそれらを資金として当てるということになれば、役所のほうでは適当な一つ措置を講じてもらいたいということなんであります。
  188. 廣川弘禪

    国務大臣廣川弘禪君) これも又税金をとりそうな恰好にありますので、この点についても折衝中でありますが、あなたの御期待のように我々はしたいと思つて努力いたしているのであります。
  189. 白波瀬米吉

    ○白波瀬米吉君 私の質問はこれで終わります。
  190. 佐多忠隆

    ○理事(佐多忠隆君) それでは本日はこれにて散会いたします。    午後五時九分散会  出席者は左の通り。    委員長     波多野 鼎君    理事            平岡 市三君            佐多 忠隆君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大島 定吉君            白波瀬米吉君            野田 卯一君            長谷山行毅君            一松 政二君            深水 六郎君            山本 米治君            山縣 勝見君            内村 清次君            下條 恭兵君            永井純一郎君            山田 節男君            吉川末次郎君            原  虎一君            若木 勝藏君            高良 とみ君            前田  穰君            深川タマヱ君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    厚 生 大 臣 黒川 武雄君    農 林 大 臣 廣川 弘禪君    通商産業大臣  横尾  龍君    労 働 大 臣 保利  茂君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       東條 猛猪君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省理財局長 伊原  隆君    大蔵省銀行局長 舟山 正吉君    厚生大臣官房統    計調査部長   曾田 長宗君    厚生省社会局長 木村忠二郎君    農林政務次官  島村 軍次君    食糧庁長官   安孫子藤吉君    通商産業大臣官    房長      永山 時雄君    労働政務次官  山村新治郎君    労働省労働基準    局長      中西  実君    物価政務次官  郡  祐一君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長川谷喜作君