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1951-03-08 第10回国会 参議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月八日(木曜日)    午前十時三分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) それでは只今から予算委員会を開きます。本日電車事故のために委員長がちよつと遅れますので便宜私代りまして司会いたしたいと思います。  これから総理大臣に対する各党代表質疑を始めるのでございますが、本日は社会党永井純一郎君、共産党岩間正男君、緑風会藤野繁雄君の三君に順次お願いいたします。永井純一郎君。
  3. 永井純一郎

    永井純一郎君 昨日総理に御出席願いまして、社会党を代表いたしまして御質問を申上げる予定をいたしておつたのでありまするが、実は私は総理に、その他いろいろな大切な問題があるのでありまするが、特に議会審議権並びに民主政治のありかたと申しまするか、これにつきまして、他の問題に及ぶ時間がなくとも徹底的に御所見をお伺いいたしますると同時に、私ども考えも申上げたい、こういうふうに私が一番初めに御質問申上げることになつておりましたので、非常に勢い込んでおつたわけでありまするが、林副総理がのこのことおいでになりまして、先立つて予算の不審査の際におきますることにつきまして、身代り釈明と申しまするか、そういうことがありましたので、このことについてはもう総理を更に追求するというようなことは、委員会といたしまして一応きまりましたので、そういうことはしないのでありまするが、私どもは先ず参議院議員といたしまして、特に二院制度におきまする参議院の特性に鑑みまして、物事を衆議院とは又違つて愼重に、まじめに、熱心に検討して行きたいということを考えておるのであります。特にこの前のお話の、総理の御答弁の中に、立場が違うからというようなお話があつたので私は非常にその点について遺憾に思つたのであります。これは立場が違う人が集つておるからこそ民主政治の、議会政治の存在が非常に有意義になるわけであります。立場の同じ人ばかり集つておればソ連のような独裁的な政治になつてしまうわけであります。そうならないようにありたいと思つておるわけでありまするが、特に我々の参議院におきましては、そういう議会におきまする審議権、或いは民主的な政治、そういうものを特に重要視するわけであります。この問題が若し根本的に総理考えが違うならば、私ども議会審議権の基本的な問題について違うならば、予算でありまするとか、法律案でありまするとかいう重要な案件を審議して行くことがすでに意味がないというふうにさえ考えておつたのであります。が併しこの点につきましては、あつさりと総理釈明を、身代りではありまするが、されたようでありまするし、又昨日におきまするこの問題についてのこの委員会での様子を副総理総理にお伝えいたしますと言つて帰りになりましたので、十分にお伝え願つたものと、こう私ども考えまして、私の党といたしましてはこの問題はもうこれで了承をしたということになると思うのであります。が併しこの前の、木村君が総理に対して質問をいたしました国際情勢見通しといいますか、推移、この問題はやはり、私どもがこの予算を、或いはその他の問題を考えますときに、特に参議院として愼重考えて行きますときには、やはりこれは木村君の御意見の通り、最も重要な問題であると私ども考えるのであります。これは例えば本年度政府が提案いたしました予算を見て見ますると、この予算は大体補正予算を作つたときに十五ヵ月予算構想で作られておると考えられます。この十五ヵ月予算のときに政府考えておつた構想というものは私どもにも大体推定ができるのであります。それはこの予算を編成する前提の問題として、国民の所得は大体一割程度増加して行くであろう、物価は大体横這いをして行くであろう、従つて朝鮮動乱はありましたけれども、一応これに関係は大してなく、生産力は大体順調に進んで行くだろう、従つて資本蓄積等も順調に推進して行けるというように大体こういう構想前提が十五カ月予算前提であつたように思えるのであります。ところがこのことは世界情勢推移、特に朝鮮動乱の与える示唆、影響というものを政府が非常に甘く見過ぎたということを今日我々は十分わかるのであります。というのは只今申し上げましたように政府が二十六年度予算を作る、つまり補正のときに作つた前提條件というような、今申上げたような事柄は根本的に今日くつがえつております。従つて政府考えました見通しは非常に甘過ぎたということをここに吉田総理みずから恐らくはつきりとおわかりになつておるはずであると私は考えるのであります。そういうふうに一口に本年度予算を見まするとすでにもはやこれを審議することすらが余り意味をなさないという程度のものであるように、私どもは一口に言えば見るのであります。が併しそういう今申上げましたようにそのように国際情勢推移なり見通しを付けることは勿論むずかしいと思いまするが、そのように必要な、少くとも予算を審議する上においては根本的に必要だということは今申上げたことでもわかる通りであります。そこで私はこの国際情勢の、木村君が御質問になりました見通し推移に関連をいたしまして是非とも私がと申しまするよりも国民が、簡單なことでありまするが知りたがつておることがありまするので、今日それを先ず総理にお伺いをしたい、こう思うのであります。と申しまするのは不審査の際にも幾度も政務次官の草葉君初め、事務のかたがたにも来てもらいまして、質疑応答を重ねたのでありまするが、その際の草葉君以下の終始一貫して言われましたことは、外務省は何ら国際情勢を判断する材料なり情報なりは持たないのだ、全くのつんぼ桟敷なのだということを同じようにすべての八が、外務省人たち言つたのであります。そこで国民が知りたいと思いますのは総理も同じようにやはりそういうようにつんぼ桟敷と申しまするか、そうであるかどうかということを先ず私は総理にお伺いしたい、こう思います。
  4. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。どういう意味合でつんぼ樺敷という言葉を使われたか知りませんが、意味合は思うにこうであろうと思います。従来と違つて外務省在外公館を持つておらないから、それで諸君の持たれる情報以上に、新聞雑誌等の研究による材料以外にないということを申したのであろうと思います。
  5. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこで私ども国民がますますわからなくなるわけでありまするが、総理も同じように在外公館等を持たないからいろいろな情勢を判断するところの材料はないということになれば、そういう状態に置かれておる政府の場合におきましては、私は講和問題等につきまして、恐らく、そういう状態にありまする日本政府といたしましては、考えられることは私はたつた一つしかないのじやないかということを考えるのであります。それはいろいろな材料を持つて判断するのでないのでありますから、日本立場からいたしますればどうしても、主張することはただ一つ平和への遂に通ずる要望主張だけをしておればいいということだけ以外には私は途がないというふうに考えられるのであります。従いまして全面講和だけを主張しておればいいのじやないかということを国民考えるわけであります。又国土を職場化する慮れのあるような基地の提供には応ずる気持はない、賛成しがたいという考え要望だけしかできないのじやないかというふうに考えるのであります。にもかかわらず総理朝鮮事変の前からも單独講和論、或いは單独講和的な主張をされて来ておつたように思うのでありますが、いろいろな判断すべき材料がないとすれば一八で愼重にお考えになつてその結果、そういう要望なり主張なりのほうがいいというふうにお考えなつたものと思うのでありまするが、どういう基礎で、そういう状態にある政府でありながら、全面的な講和を而も全面講和は望ましいとおつしやりながら、なぜそれを、他に判断する材料がないのでありまするから、懸命に国民と共に世界に向つて要望し、主張をされないのかここがわからないわけであります。その点をお示し願いたいと思います。
  6. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 今日外務省は勿論でありますが、国民要望するところは一日も早く講和を成立せしめて独立を回復したい、我々外務省として考えておることも実に一日も早く講和を成立せしめたい、お話のようにこれ以外に仕事がないと申せば仕事がないと申していいので、主なる仕事の重点はここにあるのであります。故にこの点に向つてできるだけのことをしておりますが、併し私の申すのは、初めからして單独講和若しくは少数講和でいいと言つておるのではない、只今お示しの通り全面講和ができれば結構である、併しながらできない場合にはたとえ一国といえども平和関係に入つてそして日本としてはこの一国に対しても、二国に対しても、独立国としての行動の自由を得たい、そう考えるのが当然で、これが常識であると思うので、何の材料もなくしてもこう考えるのが常識であると考えるのであります。故に全面講和希望するが、できれば一国といえども早く講和関係平和関係に入りたい。が併し何故全面講和を提唱しないか。今日日本占領下にあるのであつて外交の自由を持つておりません。希望希望として述べるとしても、行動の自由を持つておられない日本としては、全面講和のみを主張するというわけに行かない、できれば結構である、できれば全面講和で行きたい、併しながらそれができないというのであれば、一国といえども平和関係に入りたい、全面講和といつても多数講和といつても、対手国のあることでありまするから、対手国承知しないのにかかわらず、講和を或いは平和関係を押しつけるわけに行かないから、できれば申す以外に仕方がないのであります。
  7. 永井純一郎

    永井純一郎君 勿論外交のことでありまするから、対手国がありますと同時に占領下であります。その辺は我々国民もよくわかるのでありますが、併しいろいろの判断する材料がないのに、なぜできないということを前提にしておられるのかということについては、又ここに一般国民はわからなくなるわけであります。昨日の新聞でありましたかに、ソ連のマリクとダレス両氏との間に声明の応酬をやつておるようでありまするが、あのアメリカの国務省のスポークスマンの言つておることの中に、これも新聞だからわからないのだと又総理が言われればそれまででありまするが、アメリカ全面講和を実際一生懸命やりたいとなつておるのだ、だからソ連にも確かに相談をしたじやないかという意味声明をしておるのであります。ダレス氏はこの前ダレス吉田会議を済ましてお帰りになるときにも、そういう意味のことを言つてつておられるのであります。従つて国民は非常にそれを期待いたしておるのであります。それなのに、総理の従来の御答弁並びに只今の御答弁を聞いても、できないから仕方がないのだというふうに言われるので、なぜできないという判断をそれではしておられるのかということを聞きたくなるわけであります。その点一つ
  8. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私はできないと申しておるのではありません。できなければ、全面講和ができなければ、多数講和より仕方がないじやないか、全面講和ができないとは申しておりません。
  9. 永井純一郎

    永井純一郎君 それであれば政府として、占領下でありまするから、行動の自由はないかも知れませんが、要望希望をすることはかまわないわけでありますから、どこまでも平和の道に通ずる一途しか、日本国民としては今日それ以外のことは考えておらない、是非とも全面講和努力をしてもらいたい。国土が職場化する慮れがある基地一つ勘弁してもらいたいというふうに、なぜ政府がそういう希望を積極的になさらないかということになつて来ると思うのでありますが、その点は一体どういうお考えでありましようか、お伺いしたい。
  10. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今も申す通りできなければという話で、できれば結構であるという要望は、すでに議会においてもその他においても述べております。それから基地の問題はまだ問題になつておりません。
  11. 永井純一郎

    永井純一郎君 それではもう一つお伺いしたいと思うのでありまするが、総理国会におきまして、外交秘密秘密だというふうに相当大上段に振りかぶつて参議院の本会議でもいわれたのです。で私どもダレス氏が持つて来た七原則、これはいわゆる我々も新聞の知識でありまするが、これを見てもそう秘密だというほどのことがあるようにも思えないのでありまするが、一応それはそれとして、総理外交秘密秘密だと盛んに言われてそうしてそれと相対応するかのように、ダレス氏が帰るときにダレス声明が出されて、これに応じて吉田声明が出されたのでありまするが、その中に日米防衞協定などについては円満なる了解点に達した、或いは言葉が間違つておるかも知れませんが、満足すべき了解点に達したといつたような表現があつたのであります。で一方では外交秘密秘密だと国会で、これは世界に向つて言つているのと同じでありまするが、秘密秘密だと言いながら、一方ですぐ声明を出して日米防衞協定を含む下相談で円満な了解に達したというふうな発表をすると、私はその発表を見た瞬間に非常に下手な発表であるということを感じたのであります。これは必要以上に中共などを刺戟する虞れがあるのじやないか、非常にこれはまずい発表だということを私のみならず国民の多くが感じたのであります。それでその中に防衞協定等につきましては、国民の大多数の歓迎するところであるというふうな文句も入つております。これも私は非常にまずかつたと思う。今日国民の大部分は勤労大衆、農民、青年層婦人層、こういつたものが何とかして平和を維持して行きたいという、どこに行つて我々が演説をしましてもその一念に徹しておるようであります。非常にそれを希望しておる実情であります。それなのに秘密秘密だといいながら、一方では円満なる了解点に達したというような言いかたをして、必要以上に刺戟をしておるように思えると同時に、国民の大多数がこれを歓迎しておるというようなことは、これは事実と反すると思うのであります。総理が言われるところの国民の大多数と言われましたのは、どういう層を一体頭に置いて言われたのであるか、これは場合によつては、国民の大多数がそういうことを希望しておらないのでありまするから、非常に僭越な発表であるといわなければならないと思うのであります。どういう層を一体考え国民の大多数とおつしやるのかお伺いしたいのであります。
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 秘密秘密といわれますが、これは公開秘密かということに対する言葉であつて、何もかも秘密にするという意味合ではない。若しそれならばこれはソヴィエト外交と少しも変らなくなるのでありますが、すでに日本においては憲法にもある通り、條約は国会にかけるということで、秘密秘密というのは、公開外交か、秘密外交かという言葉に対する対句と御承知を願いたいと思います。故に私は参議院においてもそうはつきり申したと思いますが、外交には裏も表もある、表芸もあれば裏芸もある、楽屋内のこともある。楽屋内のことは話されないのが定法である。併しながら舞台における、何といいますか、舞台劇はこれは勿論公開もし、又公開することが、民主主義であり又それに対する意味合については十分説明する、これは私の説明を待たないことであると思います。一から十まで秘密にするというのが私の言う秘密外交ではないのであります。国民了解の行くように話することは、無論我々として努むべきである。その点については何ら私も誤解は持つておりません。併しながら、どの点まで発表するかということは、相手国話合いをしてやるべきものである。如何なる国際会議においてもコンミユニケは出すのであり、又経過については或る程度まで発表する、これは発表すべきことについて打合せた分を発表するのが、これが国際慣例であります。この慣例従つてダレス氏との間の話合についても、できるだけのことは発表いたしたのであります。その以外にこれは発表することはできない、こう言わざるを得ない。
  13. 永井純一郎

    永井純一郎君 折角総理がお見えになつているので、いろいろ聞きたいことがたくさんあるのでありますが、割当の時間が四十分かそこらしかないのでありますから、次に移りたいと思うのでありますが、私、もう一つ非常に重要なこれは問題であると考えるのでありますが、昨日、一昨日の新聞かに自由国家防衞計画に参加する際の、日本経済協力の能力の算出をアメリカから求められた、というような意味のことが新聞に出された。これは周東国務大臣がこの記事の終りのほうに談話を発表しておるのでありますから、恐らくこういうものが求められたのであると考えるのでありますが、即ちこのことは米国軍需生産拡大、軍拡の要請に応じまして、そうして日本産業生産力軍需に挙げて持つて行こうということになると想像する。つまり先般の吉田ダレス会談で、軍事的には今基地の問題は、具体的になかつたとおつしやいましたが、相当前からこの問題も論議され、新聞等の報ずるところでは、相当軍事的にも日本基地化するということが、常識的に相当はつきりしております。又経済的にもこういうふうにアメリカ軍需拡大要請に応じまして、日本産業経済力軍需に向けられるということになりますると、軍事、経済力ともにそういうことになりますると、それでは日本は今準職体制入ろうとしておるのか、ということの心配を国民が今日非常に持つのであります。つまり総理は、今日日本が準戰体制入ろうとしておることを肯定されるがどうかということを、ここで明らかに私はして頂きたいということを考えるのであります。附加えて申上げておきまするが、国民はこういうことになつてはならないと思つて、今日まで一生懸命にやつて来ております。そういうことに引摺り込まれることは困るということを唯一の考えとし、目標として今日まで来ておるのであります。安本長官はその新聞の中でこういうことになりますと、我が国産業界活況をもたらすであろうというようなことを言つておりまするけれども活況通り越して壊滅をしてしまうというようなことになつては大変なので我々が最も心配するところであります。この点総理大臣にここで準戰体制入ろうとしていることを肯定されるかどうかという点を明らかにして頂きたい、かように存じます。
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えします。が、日本政府としては日本軍需産業といいますか、米国軍備拡張に応ずる生産力というお尋ねであつたか、とにかく生産力の調査を求められ、若しくは要望されてはおりません。  それから第二に、今日準戰時体制であるかないか、準戰時体制ではありません、又そうも考えておりません。併しながら各国とも軍備拡張をいたしておるために、食糧とか必要原料等が、殊に軍需原料等が非常に欠乏しつつある。又需要に対してその供給が逼迫しつつあるということは事実であります。この原料確保或いは又原料の不十分、原料供給の不十分、これを補うのにどうしたらいいかということについては、政府相当考慮を悩ましておりますが、現在をもつて、或いは又近く準戰時体制に入るとは我々は考えていないのであります。お話通り成るべく戰争は避くべきものであり、平和を維持すべきであり、平和関係を持続せしむべきであり、この点は政府も同感であります。故に成るべく戰時体制に入らぬように努力をするのは勿論でありますが、今申しました通り軍需関係原料の不足が最も逼迫しておると考えられておりますから、これに対して原料確保をどうするかということについては政府相当苦慮いたしております。
  15. 永井純一郎

    永井純一郎君 時間があと二、三分しかなようでありますので、あと一つだけ特に総理お尋ねをいたしたいと思います。それは我が国の社会の民主化に根本的に重要な関係を持ちまするので、特に詳細に亘つて所管大臣に午後質問をいたしまするが、基本的な点について総理のお考えをここで明らかにさしておいて頂きたい、こういう意味で御質問したいと思います。  それは参議院におきましても、そのほうの委員会警察法改正をするという、大体意向がはつきりして来たようであります、それでこの前の参議院のほうの委員会で或いは地方行政委員会か何か知りませんが、大体国警長官か何かが大体の説明をされたと聞いておるのでありますが、これは大体の改正内容国警捜査権拡張と、それから中小の自治警察体の廃止という、大きく言えば大体そういう方向改正のようにとれるのであります。これは我々もこの警察法が実施されまして、大体三年たつわけでありまするが、その間において非常に不備の点、まずい点があれば、これは改正をしたらよかろうと思うのでありますけれども、御承知のように日本国民は長い間惡い警察制度の下に苦しめられて来た経験を持つております。特に勤労大衆がこの警察権の下に苦しんだ長い歴史を持つておるのでありまするが、従いまして、今日の警察法が持つておりまする性格原則は私は変えてはならないものだと思つておるのであります。と申しますのは、今日の警察法の持つておる性格の主なるものは、地方分権地方自治の精神に則つておるということが一つの大きな中心である。従いまして民主的なイデオロギーに立脚した警察制度でなければならないという、この大切な二つの柱があると考えるのであります。従いまして警察制度を変える場合には、この重要な性格に逆行するものであつては絶対にならない。それは国民の許さざるところであるというふうに私は考えるのであります。従つて中央集権的な傾向をおびて行くとか、或いは警察国家的なものになつて行くとか、警察力を国が統制するような方向に持つて行くというような方向であつては絶対に私はならない、このように考えておるのでございます。この警察法の基本的な原則を変えないところの改正しかやらないのだということを一つここではつきりさして頂きたい、こう思います。
  16. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、警察法民主化原則については政府は毛頭触れる考えはないのであります。ただ新警察法を施行して、その結果犯罪の捜査であるとか治安の維持の上から、或いは又地方負担の上から考えて見て不備と考え、若しくは改正を要する点のみを改正したいという以外に考えはないのであります。
  17. 永井純一郎

    永井純一郎君 只今お答えを頂きましたが、なおこれはそういうお答えを頂けば、それではこういう内容が私が今申上げた原則に反しておるのじやないか、逆行しておるのじやないかという問題がたくさんあるのであります。が併しこれは余り具体的な問題についてここで総理とやりとりをしましても、内容は十分におわかりになつておらないかも知れませんから、一応時間も来ましたから所管大臣等質問することにいたしましてこれで終ることにいたします。
  18. 佐多忠隆

    理事佐多忠隆君) 次に共産党代表質問として岩間君。
  19. 岩間正男

    岩間正男君 私は当面緊急した問題につきまして五、六点お伺いしたいと思うのであります。  その第一の問題は、日本の今進められておりますところの講和態勢の問題でありますが、この問題につきましてはダレス氏が来日されましたときにおきまして本国会におきましても十分に国民輿論を反映してこの輿論の反映をダレス氏にも伝えたい、こういうふうに思いまして当国会予算委員会におきましてもしばしば吉田総理の出席を要求したのであります。併し残念ながら殆んどこの要求は一回も満たされなかつた。こういうことにおきまして今日日本講和態勢はどういうふうになつておるか。すでにあれから一月乃至一ヵ月平の日子を費してそうして政府のとられておる方向というものがあたかも国民輿論であるかのごとく世論に反映されている面があると思うのであります。そうしてどんどんそのような既成事実が作られ、我々は一ヵ月或いは一ヵ月事前の様相を考え、今日の現状等を照し合せて見るときに、非常にそこに大きな食い違いを考える。なぜ一体国民の代表であるところの国会輿論を十分にあれに反映させるという方策を総理は避けられたか。こういう点に対しまして我々は非常に遺憾の意を表せざるを得ないのであります。そこで当然今から一ヵ月前におきまして繰返えされなければならん、確認されなければならなかつた問題は、ポツダム宣言の問題であります。このポツダム宣言に対して一体政府はどのように考えておるか、この点が非常に私はこの講和問題を決定する根本的な問題になるのじやないかと思うのであります。    〔理事佐多忠隆君退席、委員長着席〕  ところが過般の当委員会社会党の山田委員の質問に対しまして吉田総理は、單独講和が仮にできてその結果連合国の講和をしない、つまり具体的に言いますとソ連とかそれから中国、こういうようなところからこれに対しましてポツダム宣言の趣旨によつてこれは当然駐兵を求められた場合にどうするか、こういうような質問に対しまして、それはポツダム宣言の性格からいつてあり得ないだろう、そういう場合にはこれは自衞権を発動してもそれを決しなければならん、こういうことが答えられたのでありますが、この点で一体総理はポツダム宣言というものをどういうふうに考えられるか、軍にこれは占領降服條件としてそれを受諾するだけの條件であるか、更に占領後のいろいろな政策にこれは関連する問題であるか、更に講和内容にまで立入つたところの一つの公式なものと考えられるかどうか、その点について総理の見解を先ず質したいと思うのであります。
  20. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 講和後における講和内容その他とポツダム宣言とどう関係を持つか、これはポツダム宣言の中には講和條約後においてもなお日本が守らなければならん義務がありとするならば、これは講和條約の中に書入れられるであろうと思います。従つて講和條約が成立すればたとえそれが成る国との間に成立しても、連合国のうちの或る国と成立したという場合には、連合国として日本に課せられたポツダム宣言の内容は自然変つて来るものと考えられます。而してその内容がどう変るかということは連合国と或いはこれに参加しない国との間の関係でありまして、どう決定するかということはこれは極東委員会若しくはその他において自然決するところであろうと思います。
  21. 岩間正男

    岩間正男君 これはポツダム宣言は連合国の共同行為である、單独に一国だけがポツダム宣言の範囲から逸脱して講和を結ぶというようなことは非常に違法行為であると我々は考えるのであります。これに対しまして総理はどういう見解を持つておられますか。
  22. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 違法行為であるかどうかということは、いわゆる極東委員会において参加しない国、或いは参加した国との間の議論の目標となるでありましようが、我々としては関係はいたしません。
  23. 岩間正男

    岩間正男君 それに対して総理は、れははつきりした見解を表明される必要があると思います。併しこれに対しては恐らく御答弁がないと思いますから、それならばこれはポツダム宣言は降服條件を受諾した後におきましては、連合国全体とそれから日本との間の双務協約である。従つてそこにはお互いを拘束する義務がはつきりあるとこういうふうに考えますけれども、この点については総理はどういう見解を持つておられますか。
  24. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今も申した通り講和後においても日本が負うべき義務があるとするならば、それは講和條約の中に書入れられるであろうと思います。而して書入れられなかつた場合は講和條約とポツダム宣言の関係はどうなるか、或いは不参加国との間の関係はどうなるかということは、極東委員会において決定せらるべきものであつて、その決定を日本がどう考えるかということは又別な話であろうと思います。
  25. 岩間正男

    岩間正男君 ポツダム宣言を講和後の問題だけにされておるその総理の感覚を私は怪しむものであります。ポツダム宣言は講和が起る以前において日本としては果さなければならない、これに対して受諾した立場からこれに対する義務が発生しておるのであつてそれに対してどうするかということを私はむしろお聞きしたいのでありまして、現在私は、だから具体的にお聞きしますと、ポツダム宣言を受諾してそうして総理は常に全面講和は望ましい、こういうことを事ごとに言つておられますけれども、望ましいならばこれを実現するための努力をしなければならないのでありますが、果して日本政府は国務にも国内的にも努力しておる、そういう事実がありますかどうか。この事実を挙げて頂きたい。
  26. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) この事実はここに具体的に申上げることは国際関係にも影響いたしますから申しません。
  27. 岩間正男

    岩間正男君 併し望むといつており、国際法に規定されたポツダム宣言の明示するところを努力して、何で一体国際関係に影響するのですか。そういうことは我々をまるで子供相手にしたようなことになると思うのですが、これは当然努力さるべきであつてその努力をされておることをここに大いに中外に声明してこそ、日本のポツダム宣言を本当に貫くという精神が世界に了承されるのではないか。従つて平和態勢をよく守り、講和に対してもよい影響を与える。こういうふうに考えるのでありますけれども、なぜその点は御発表できないのでありますか。この点を伺いたい。
  28. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 発表することは講和の将来に対してもよくないと思うから発表いたしません。
  29. 岩間正男

    岩間正男君 それは発表することが問題でなくて恐らく発表できないのであろうと我々は考えます。例えば逆にポツダム宣言の精神に違反するような事実が非常に政府の対策にあるのではないか。例えば引揚問題、更に対中共輸出禁止の問題、こういうような面をとつてみましても、この政策が果してポツダム宣言の法の精神に合致するかどうかということは大いに問題のあるところである。又国内の体制から見て果してどうであるか、日本の現在の産業状態、それから国内の治安のいろいろな問題、労働者のいろいろな條件の問題、こういう点から考えて果してどうであるか。私はここで一つの例を挙げて見たいと思うのでありますが、これは最近国連におきましても、これに対して、例えば日本の労働條件に対しまして国連の、最近のことでありますが、経済社会理事会が日本の労働組合の政策に対して非難の決議を行なつておる。こういう事実が出ておるのでありますが、国際機関の国連においてさえもこういう事実が起つております。こういうことはポツダム宣言の中におけるところの日本の労働政策に対するところの條項が安全に守られていないことの証左であると思うのでありますが、このような国際的な非難決議に対して首相はどういうような責任を感じられておるか、この点伺いたい。
  30. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 若しお話のような違反行為があるとするならば、連合国或いは連合国総司令部から日本政府に抗議若しくはその他の処置をとられるでありましようが、政府はかくのごとき抗議その他は受取つておらない。
  31. 岩間正男

    岩間正男君 これはそういうよな一つの形式論の問題でなくて、日本政治相当している政府としてそういうような国際的な非難決議があつたということに対しまして、これは当然意見を述べられるべきものと思うのでありますが、恐らくこれに対する御答弁はないようでありますから、この点に対して甚だ遺憾の意を表して次に進みたいと思います。  要するに私はポツダム宣言は政府としては現在の段階でこれを倉重するのであるかどうかということを先ず改めてお伺いしておきます。総理はこのポツダム宣言に対しましては現在どういうふうにお考えになつておるか、飽くまでこれを尊重すべきものと考えておられるかどうか、この点をちよつと伺つておきます。
  32. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 尊重いたしております。
  33. 岩間正男

    岩間正男君 尊重されない事実を挙げたのでありますけれども、こういう点についてはどういうふうに考えられるか。
  34. 吉田茂

  35. 岩間正男

    岩間正男君 結局私は非常に総理のそういうような御答弁に対しては辻棲が合わないところが多く出ておると思うのであります。結局全面講和は望ましい、こう言いながらその努力が一向なされていない。むしろこれは一方におきまして現在の誰でもが知つておるような体制、つまり單独講和への体制を着々と国内、国際的にもこれを推し進めて、そして産業経済の体制の中にもそれを深く推し進めておる。單独講和をむしろ政府国民輿論とは別に、これを強力に推し進めるという方策としてこのようなことが、單に表面的には全面講和が望ましいと言われながら、進められておるというふうに我我は了解せざるを得ないのであります。こういう点で現在進められておるところのこの講和の体制に対しましてもつと国民輿論を強く反映してもつともつと根本的に、すでに既成事実がこの一カ月の間に随分推し進められたのでありますけれども、併し飽くまでもこれは民主的な立場から言いましたならばまだ講和締結までには間のあることであり、又いろいろな手続上の問題もあろうと思いますから、これに対して総理としては十全の努力をされるのがこれは当然であろうと思いますが、そういう点についてはどのようにお考えになりますか。
  36. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見は伺つて置きます。
  37. 岩間正男

    岩間正男君 それと連関しまして例えば全面講和を求める運動というものが非常に澎湃として国民の間に起つておるのでありますが、こういうものに対しましては、これは全面的にその意見を民主的に聽くというような態度をとりますか。これに対する彈圧のいろいろな体制について我々は見、聞いておるのでありますけれども、こういう体制に対して当然政府はそのような馬鹿げたことに対しましてはこれは取締をすべきものと考えますけれども、加何でしようか、この点は。
  38. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) かくのごとき議論に対しまして取締る考えは毛頭ないのみならず、取締つておりません。私は常に国会で申しておる通り、これは講和に対する国民の議論は自由であると申しておる。
  39. 岩間正男

    岩間正男君 我々は総理のそういうような意図とまるで反しておるような事態を到る所で見るのであります。それに対しましては、これはそうすると係官なり検察官なりそういうような係官の自分の勝手な解釈によつてなされておるのでありますか、これに対しましては、我々は徹底的に平和を護るので、これに対して反撃をすることは何ら差支えないものと総理はお考えになつていらつしやるのですか。
  40. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 言論を圧迫いたすつもりはないのであります。如何なる問題があるかそのときには、その問題の性質についてお考えなつたらよかろうと思います。
  41. 岩間正男

    岩間正男君 そのように了承しまして現在行われておるこの全面講和に対するところの彈圧に対しまして我々は処置すべきだと考えております。  次にお伺いしますのはダレス特使が帰られまして国務省に報告した、その報告書を見ますと、この報告書の第一條に非常に重要な問題があると思うのであります。それは米国日本本土内及びその周辺に陸海軍を駐在させる広汎な権限を保持することをダレス特使が示唆したのに対して、日本政府はすべての点で同意した、こういうことが報告書の内容として報道されておるのでありますが、日本政府がそれに同意した事実があるかどうか、この点について伺います。
  42. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは過日申した通り、勿論日本が外国から進撃を受けたら、防備のない日本の国が共産主義国からして進撃を受けたら、真空状態なつた場合に我々としては米国兵を駐在させる……、言葉は忘れましたが置くことの意思がある、これは誠に結構な話であるという話を言つただけの話でありまして、過日も申した通りダレス氏は交渉に来たのではないのでありますから、互いに話合つた程度でありますから、故に何らの約束もいたしておらない。
  43. 岩間正男

    岩間正男君 話合程度ということでありますが、その後二月十八日ですか、ダレス氏が記者団との会見におきまして、これは日本政府から二つの文書を提出されたと言つてこれを紹介されておるのであります。この文書によりますと、第一條が只今のこの講和後の米兵の駐兵問題をはつきりこれは明記しておる。第二條はまあこの漁業権の問題のようでありますが、これは如何でございますか、こういう事実があるのですか。話合いの程度じやなくて文書を提出されたということがはつきりこれは記者会見の席上において表明されておるのでありますけれども、これは只今総理の御答弁とは食違いがあると思いますが、如何ですか、こういう事実がありますかどうか、お伺いいたします。
  44. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 只今申した通り話合いをいたしたのであります。互いに意見の交換をいたしたのであります。約束したことはない。
  45. 岩間正男

    岩間正男君 文書提出の事実ありや否や。
  46. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) そういうことはお答えいたしません。
  47. 岩間正男

    岩間正男君 これは全く日本という国は不幸な国であります。世界輿論はちやんとそういうことを誰でも知つている。ところが日本国民は聾桟敷だ。知らぬは日本人ばかりなり。こういうところに追込まれておつて総理はこれにお答えができない。これは一体どういう不幸なんですか。お答えできないということは私はおかしいと思うのでありますけれども、もう一度重ねてお伺いいたします。提出の事実ありや否や。
  48. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 話合いの内定についてはお話ができないということはしばしば私は申しております。
  49. 岩間正男

    岩間正男君 内容総理が守られておる一方から筒抜けじやありませんか。ダレス特使は帰られてその内容についてどんどん触れておる。我々は自分の国の最高責任者からその内容について話が聞かれない。そうしてほかの外国の使節からこういう内容について世界に公然と報道されて、その波及が我々の耳に伝わつて来るというのを総理は悲しいと思いませんか。これが吉田内閣秘密外交じやないか。こういう馬鹿げたことを……国民を馬鹿にしておる。我々は国民の代表としてこのことを伺つておるのでありますけれども、これに対して総理お答えがないという事実はこれは如何でございますか。もう一度重ねてお伺いいたします。
  50. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 答えるだけは答えております。
  51. 岩間正男

    岩間正男君 駐兵を望むという……それではまあ今のお答えがないので、これは非常に我々は国民の代表としても不満に堪えないところでありますが、それじや話を先に進めます。駐兵を認めるというようなそういう根拠はこれはどういう根拠からなされておるものか。総理お話によりますというと、真空状態日本の軍備を置いちやいかん。これは他国からの、外国からの侵略によつて危險である。これがまあ駐兵を認められるところの一つの理由になつているようでありますけれども、一体そういう侵略の事実は現在において認められないと、総理はこの前の先月二十二日の委員会におきまして、私の質問につきまして答弁されたことを私ははつきり記憶しておるのでありますが、これはおかしいのであります。こういう点は如何ですか。
  52. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 攻撃を受けた場合には、こういうだけの話で約束をいたした。互いに話合いをしてネゴシエートしたのではなくしてデイスカツスした。こういう場合はどうするかああいう場合はどうするかという話合をいたしただけの話で、ネゴシエートし、若しくは約束はいたしておらないのであります。
  53. 岩間正男

    岩間正男君 そういう架空の論議は総理の最も不得意とされるところであります。そういう場合にはこういう問題につきましては、この前もこれは触れたのでありまするけれども総理自身がこれは第九十国会のこれは答弁のなかにおきまして日本の過去の帝国主義はどういうことをやつたか、いつでも仮想敵国を求めておいて、そうして自衞のためだ、ためだというので絶えずこれを軍隊を殖やし、そうして基地を進めて行つて逆に侵略をした、これこそは危險である。こういうことを述べられておる総理の精神から考えますと、今の話は非常に奇妙なのでありますが、これはそういう事実を一体仮想の問題として論じていいですか。
  54. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私は少しもおかしい話ではないと思う。
  55. 岩間正男

    岩間正男君 おかしい話であるかないかということは、この論議を通じて国民が大きくこれは判断するだろうと私は思いますけれども総理自身はそういうこの侵略というものを認めていない。こういうなかにおきましてそういうような一つの駐兵というものを認める、而もそれが話合程度であるのでありますが、事実はだんだん具体的に進められて行つておる。こういうところが非常にこれはおかしいと思います。而もこの問題が国会に余り論議されない間に、実は殆んど既成事実のように進められておる面が非常にこれは問題である。そこで私はお話をもう少し進めたいのでありますが、この州兵、アメリカにおきましては最近州兵が二個師団三月の終り頃までに派遣される、こういうような問題が出ているのでありますが、これに対しまして総理はどういうこれは情報を持つておられますか。
  56. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 何らの通知を受けておりません。
  57. 岩間正男

    岩間正男君 この州兵の性格というものについては、これはどういうふうにお考えになつていますか。
  58. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 何らの通知を受けておりませんから知りません。
  59. 岩間正男

    岩間正男君 ここでも又日本国民が聾桟敷に追込められておるこの悲惨な姿を見るものであります。今の新聞がそういうことを毎日報じておるのであります。例えばここに読売新聞の三月二日の夕刊、これにロハート・マーチンの、つまり日本の州兵問題について州兵派遣の問題について一つの論説が紹介されております。これによると、この州兵というものは、これは占略軍的な性格であつて、むしろ戰略軍である。これはどういう場合を仮に想定しておるかというと、朝鮮から仮に国連軍が撤退しなければならない。これに対して日本基地をはつきりとこれは保障しなければならない、或いは又第三次世界大戰が起つた場合においてはこれはソ連の原爆基地を叩く基地日本、そうしてその原爆の基地としての日本確保するためにも非常に重要である。或いは又台湾に対するところの中共の攻撃が始つた場合に台湾にも派遣する、大体そういうような性格を持つところの兵隊であるということが論じられているのでありますが、こういう問題については、そうしますと、占領軍でない非常に性格の変つたこれは戰略軍の性格を帯びたところの軍隊である。こういう軍隊の駐在、海法というものに対しましては、ポツダム宣言下にあるからそれを忠実に履行するということを、さつき総理は言われたのでありますが、それを覚悟しておられるところの日本政府としては、当然このような問題については十分にこれは論議し、これに対してその性格を明らかにすることが総理の任務であると思うのでありますが、これについては全然知らん存ぜぬというような、頬被りで押し通される覚悟であるかどうか伺いたい。
  60. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府としては、何ら承知いたしておらないから承知しないと申すのであります。
  61. 岩間正男

    岩間正男君 政府が知らないだろが、国民は非常に知つて、これを憂えておるのであります。そうならば、これに関して当然これは関係筋に質すなり、これをなさるということが総理の責任であると思いますけれども、如何ですか。
  62. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 占領下日本において、必要とあれば連合国からして当然説明があるでありましようが、又通牒があると思いまするが、今日日本政府は何らの通知をも受けておりません。新聞の記事については、私は責任を負わない。
  63. 岩間正男

    岩間正男君 過般警察予備隊の武器貸与のことにつきまして、これは説明を聞いたのであります。その大橋法務総裁の説明でありますが、この武器のやり方は、最初何らの話がなかつた。ところがこれを不意に向うさんからキャンプに持つて行つてそうしてこの武器がもう一方的に貸与される、こういうことになつたということを聞くのでありますが、こういうやり方を又とられるわけでありますか。何らの通告もない。併し三月、三月といつてももうこれは二分の一を過しておるのでありますが、三月にはこういう事実が現われる、どれに対して何の事実も知らん。何らこれは我々はそれに対して努力もしない、こういうことで総理はここのところを過ぎて、国民の一体そういう要望を果されることができるとお考えになつておりますか、この点を伺います。
  64. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 連合国軍司令部が兵の移動については全責任を持つておるのであつて、この移動に対して、或いは今お話のような兵隊が来たとして、その性質は何かというようなことは我々は聞く義務はないのであります。これは占領軍として軍の機密なり、或いは又軍の必要に応じて処置するのであつて政府としてに干渉すべきことではないのであります。
  65. 岩間正男

    岩間正男君 やはり性格が大きく世界的に問題になつているから私は言つておる。占領軍が占領軍的な性格でない、そういうような点についてやはりポツダム宣言を守る日本政府としてどうするかと、ポツダム宣言との関連下においでお伺いしているのでありまして、こういうことがつまり全面講和を遅らせているところの一つの事実じやありませんか。そういう既成事実を作つて、そうして連合国の中でこういうような事実に非常にこれは反対的な究気が醸成されて来る、この結果却つて全面講和が如何に総理は口で望まれると言われましても、実現できないところの原因がある。だからそういうところに頬被りをされておる意図は、逆に言えばむしろ全面講和はこれはやらない、單独講和を推し進め、そうして成る特定国との間に緊密な経済上、それからあらゆる軍事上のそういう関係を結んでしまう、のつぴきのならないところの態勢を作り上げてしまう、いや応なしに国民を引きずり込んでしまうところの態勢をはつきりこれは意図してやられておると推断する以外に途がないのでありますが、我々はそういうふうに推断せざるを得ない。総理はこれに対して何か反撃の用意を持つておられますか。
  66. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 御意見は御自由であります。
  67. 岩間正男

    岩間正男君 それから、それと連関しましてもう一つ伺いたいのでありますが、最近、これも総理は先ほどそういう事実はないというような御答弁を永井委員にされたようでありますが、我々は聾桟敷に追込まれるわけにいかないので伺います。  日米経済協力の問題といたしまして、これに対して日本産業の軍事的再編成、こういう問題が大きく出ていると思うのでありますが、果して総理はこのことについて御存じないのかどうか、これを伺います。
  68. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 日本の経済としてアメリカの経済と一緒になつて互いに助け合うということは日本の経済のために必要であると思いますから、できるだけ協力をいたしたいと思うが、お話のような軍事協力という考えではいたしておるのではないのであります。日本産業復興のためにはアメリカの経済と互いに助け合つて行くというようにいたしたいと政府考えております。
  69. 岩間正男

    岩間正男君 政府はそのような調査を命じられた事実があるかないか、これは如何ですか。
  70. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは先ほど申した通り、かくのごとき事実はない。
  71. 岩間正男

    岩間正男君 そうするとおかしいですね、いろいろ新聞がそれを伝えておる。我々は例を挙げれば論証するにこれは厖大な何を持つておるわけでありますが、このような厖大な記録があります。これに対して毎日これを報じておる、殆んど日本経済新聞、朝日新聞、毎日新町、こういうような新聞産業経済新聞とこういうものが殆んどこれを系統的に報じておるのでありますが、こういう事実はプレス・コード違反ですか。
  72. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 新聞の記事に対しては政府は責任を負わない。
  73. 岩間正男

    岩間正男君 新聞について責任を負わないと言われるけれども、プレス・コードの問題について私は聞いておる。プレス・コード違反か。
  74. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 若しプレス・コードに違反しているとすれば、関係当局が適当な処置をいたすであろうと思います。そういう事実はない。
  75. 岩間正男

    岩間正男君 これは時間の関係からあとで安本やそれから通産の関係閣僚から詳細に伺うことにして進めたいと思うのでありますが、非常にこれは重大な問題だ。日本産業が大きくこれで変革する。産業構造が根本的に変つて来る、今までの安本の自立経済二年計画というものが二ヵ年に緊縮された。而も生産目標というものは非常に厖なものである。安本の三年間の自立計画よりも遥かに突破しておる。戰時中の昭和十六年の水準ぐらいに近い、而もその内容は殆んどこれは戰略的な、それから軍事的なもの、そうしてそれらを果すための基幹産業、電力とか、石炭、鋼鉄、こういうようなものの生産に関連したところの問題であります。而もそれによつて日本経済のこれは大きな負担がそこに出て来る。無論外資の導入も伝えられておりますけれども、その結果は厖大な軍事生産の方向にこれは大勢が持つて行かれてしまう。そうして当然そこにはこれは民需生産というものに大きな影響を受けざるを得ない。物資の欠乏がそこに起つて来る。それによつて実質賃金が非常に低下して来る。生活の物凄い破壊がそこに起つて来る。こういうような状態、而も生産の姿というものはアメリカの軍拡経済の一環としての日本の経済態勢が下請工場的な性格を持つて来る。而もそういう態勢が刻々とこれは進められておるんではないか。あらゆる面において進められておる行政機構改革の問題、或いは青少年の対策の問題、こういうような面につきましても、私は一々例を挙げて実は質問したかつたので、少くとも一時間は欲しいということを昨日の理事会におきましてもこれは要求したのであります。是非総理は次の機会にはもつと時間を持つてこの問題を本当にこれは日本の将来のために明らかにされる必要があると思いますけれども、この点について再出場を確約されますかどうですか。この点を伺つて置きたいと思います。
  76. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 必要があれば確約いたしますが、私も他に国事を持つおりまするからして、ここに時間の余裕があればということの條件を附してします。
  77. 岩間正男

    岩間正男君 昨日伺いますに、これは官房次長のお話であつたと思いますが。やはり総理はいろいろ広汎な国務を持つておられること、この点は我々も了承しております。併しながら少くともこれは長高機関であるところの国会の審議、声も予算審議等、重大な講和態勢を前にして重要なこの国会審議の機関におきまして、当然総理の出席順位はどうであるかと聞きますと、国会出席は第一である。この点ははつきりここで確認して置きたいと思いますが、まあいろいろ書飯等に人を呼んでおられる、或いはいろいろな人と会見しなければいけない。こういう問題もあると思いますが、国会の審議、而もこれは一ヵ月や半月前に通告されたものに対しまして総理は出席を……、先ず何をおいても出席をされるお覚悟を持つておられるかどうか、この点を伺いたいと思います。
  78. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 私としてはできるだけ出席するとお答えするより仕方がない。
  79. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 岩間君最後にして下さい。
  80. 岩間正男

    岩間正男君 時間が……。それでは伺いますが、この領土問題、最近問題になつておる歯舞の問題でありますが、この問題について総理はどういう見解を持つておられるか、その見解を伺つておきたい。
  81. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 質問の要旨がよく分らないのですが……。
  82. 岩間正男

    岩間正男君 つまりあの歯舞村の離れた五つの島、これが講和後においては日本に帰属になるように、そういうようなものを妥当と諦めるというようにダレス氏の話が記者会見の席上において話をされておるが、日本輿論の中でもそういうような動きが起きて来たと思うのでありますが、総理はそれに対してどういうように、現在どこに帰属すべきものと考えておられるか。その点を伺いたいと思います。
  83. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 政府としてはこれは当然日本国に帰属すべきものなりと考えて、その方向に向つて政府の率直なる要望は連合国に伝えております。
  84. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 岩間君後二分です。
  85. 岩間正男

    岩間正男君 もう時間がなくて甚だ尻切れとんぼのようなことになつて、非常に拙劣な質問のように自分は考えるわけでありますが、大体これは当然今戰時点領されておるんだ、そういうことが認められておりますか。  それからその次にこの基地が、大体歯舞の附近というものはこれは太平洋戰争時代の一つの侵略基地の範囲内にあるんだ、こういう事実についてはこれは総理は認められておりますかどうですか。
  86. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) とにかくこの島はいわゆる千島列島に属せざるものであつて、当然日本に帰属すべきものなりという主張を以て、連合国に政府要望として率直に述べております。
  87. 岩間正男

    岩間正男君 こういう問題は、これは全面講和の締結なしには非常に十分な解決はできない、こういうふうに考えられるわけであります。この問題の性格は非常にこれは排外的なシヨービニズムを挑発するような方向にこういう論が行われておるというならば、これは問題になるのであります。たしかこれは中村特派員の報道による新聞記事でありますが、この歯舞の問題が日本で非常に問題になり、そうしてそういう方向だけに論議が集中されて、講和本来の本筋が外れるというような危險性があるというようなことは、これはアメリカにおいても非常に注目されておることが報道されておるのであります。こういう点から考えまして、こういうような問題をもつと冷厳な事実、そうして更に日本の置かれておる立場、そういう点から十分に考え、そうして最も合理的な正しいところの講和の態勢を作るためには、むしろこういうような問題に対して、一つの連合国の成る国に対しまして敵対行為を煽つたり、それからこれに対するところの惡感情を煽るというようなことに利用される、そういうような点におきましては、三十七万の引揚問題、或いは中共の漁船の拿捕事件、こういう問題と性格を同じうするような我々は事件だと考えるのでありますが、こういう点について総理愼重な態度をとるお考えを持つておられるかどうか、この点について現在どのような対策をお考えになるか、お伺いしたいと思うのであります。
  88. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 愼重な態度を以て臨んでおります。併しながら如何なる態度をとつたかというようなことは申しにくい。
  89. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 藤野繁雄君。
  90. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 私は先ず講和問題に関して吉田首相にお尋ねしたいと思うのであります。  ダレス特使の来朝を機として講和條約の締結が促進せられ、又その問題点が漸次明確になつて来たことは喜びに堪えないのであります。又この点に関する総理大臣の御努力に対しては感謝の意を表したいと思うのであります。併しながらこの国の将来にかかる重大問題でありますから、全国民がひとしくその推移を注視しておる事実に鑑みまして、その取扱いは飽くまでも愼重を期し、いやしくも独断や偏見に陷ることがなく、虚心に全国民の声に耳を傾くべきものであるのであります。この意味におきまして、私は先に施政演説に対する質問演説において、講和問題は党利党略や、秘密主義を排して国会において十分論議を盡すべきことを要望したのに対しまして、総理大臣は広く国民要望や世論の趨向を考え、又国会とも十分連絡をとつて処理したいと答弁されたので大いに安心したのであります。勿論外交問題は、その性質上公開を憚かる点があることは十分承知しておりますが、でき得る限り率直に事の経緯と問題点を明らかにいたしまして輿論に訴え、又そのためには是非とも国民の代表機関である国会においては十分に納得の行く議論をすることができるように材料を提供してもらいたいと思うのであります。この点について重ねて要望いたしますと同時に、総理大臣の見解を承わりたいと思うのであります。
  91. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは私が絶えず申しておる通り講和問題については何らの言論の抑圧、若しくは制限をするということはいたさず、自由に論議し、又自由なる声に我々は飽くまでも傾聽するという態度をとつております。この気持は今後も一向変らないのでありますた。だ今お話のように、ダレス氏と話合つた、それはどの点までどう話したといつて詳細に話をせよ、これは隠すことは秘密外交と言われるかも知れませんけれども、これはダレス氏の立場もあることであります。或いは日本政府よりももつと複雑な立場におられるかも知れないのであります。連合国は十三ヵ国もあつて、その一々と話をせられなければならんのでありましようから、私が東京において極東委員会その他の状況を何にも知らずに、勝手と申しては語弊がありますが、自由に話をするということは、将来ダレス氏が日本のために最も満足すべき講和條約をこしらえるための支障になるということもありましようから、私としてはダレス氏と話合つて公表をしようという程度以外に申すことは、これは愼しむべきことであると思いますからいたしませんが、御趣意は私は全然御同感であります。のみならず国民の納得の行かないような講和條約が仮に結ばれたといたしましたところが、それは結局永続しない講和であり、又平和を目的とした講和條約であり、而もその條約が破れるということになれば、結局相手国においても常に日本講和條約をなそうとする以上は、国民了解しないがごとき内容を含む條約は締結されないと、今日の情勢から私は判断いたしておるのであります。
  92. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 次に、講和條約の締結が近いうちにできると思うのでありますが、私などが憂慮に堪えないのは、戰争の犠牲になつた遺家族の現状であるのであります。全国八百万人にも及びますところの遺家族の大多数は、一家の床柱であるところの者を失つたために、人生の光明を失いながらも精神的に物質的に何ら顧みられることがなく、窮状のまま暗い心にとざされておることは重大なる社会問題であり、我が国の再建復興に一抹の暗影を投じておるものと言わねばならないのであります。戰歿者の多くは志願して戰争に出たのではなく、徴兵制度によつて動員せられ、その犠牲になつたのであります。而して最も平和を願い、戰争を呪うものはこの遺族であるのにもかかわらず、現実においては、社会的冷遇のまま放置せられておる状態にあるということは、甚だ遺憾とするところであります。この点に関しましてはすでに去る第五回国会中、衆参両院において、未亡人並びに戰歿者遺族の福祉に関する決議が満場一致を以て決議せられたのにもかかわらず、今なお問題は多く未解決のままに残つており、先月の二十三日東京で開かれた全国の遺家族大会においても、国家の温かいところの援助を求める血の叫びが挙げられたのであります。そこで政府において、これらの遺族に対する年金又は弔慰金を支出するようなこと、戰歿者に対する葬儀、その他慰霊事業について、一般文民同様の取扱をなすこと、生業扶助制度及び生業授産制度を拡充して、その適切なる活用を図ること、遺族の子女の育英に関して特別の考慮を払うこと等の措置を講ずることによつて、遺族は少くとも現在の冷遇から国民一般の平等の線まで持上げられ、遺族をして物心両方面に亘つて立直ることができるように考慮をして頂きたいと思うのでありますが、この点について総理大臣はどうお考えであるか、情のある御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  93. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたしますが、誠に御意見御尤もであります。政府としても同情に堪えないのであります。得べくんば適当な保護なり特別な保護なりも加えたいと考えておるのであります。ただこれには来歴がありまして、終戰直後軍人の遺家族であるが故に特別の保護をする、特別な待遇をするということは、軍国主義といいますか、当時の気持から申して当時の連合国の気持から申して、軍国主義といいますか、つまり日本の軍国主義に対する後始来というのもおかし女話でありますが、特に軍国主義に対して或いは特別な扱いをする、それはよろしくない、一般の生活保護法で保護すべきものである、特に軍人の遺家族であるが故に、戰争に関係したから特別な待遇を与えるということは同意ができないという経過があつて、今日に至つたのでありますが、併しながら今日連合軍のこの問題に対する気持も、相当緩和されて参つて来ておると思います。でありますから、政府としてはできるだけの保護を加え、若しくはお話のような手厚いことをいたしたいと考えております。併しこれに対しては即時にどうこうするということの結論は直ちには出ませんが、政府としては十分考えておりますことを御了承願いたい。
  94. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 第三番目には、国際小麦協定についてお尋ねしておきたいと思うのであります。国際小麦協定の参加見の通しはどういうふうであるか。この問題はあとで申上げますところの食糧政策の点にも関係があるのでありますが、外交にも関連いたしておるのでありますから、特にこの場合お尋ねしたいと思うのであります。現在の国際情勢、特に戰時体制の強化に伴いまして、備蓄、値上り、船舶の不足等の事情から、輸入食糧の確保に困難と不安が予想されることは今更申上げるまでもないのであります。即ち現在私などが審議しておるところの予算においても、輸入食糧の補給金は二百二十五億円を盛つてあるのでありますが、果して予定の通りに輸入が確保できるのであるかどうか、疑問なきを得ない状態であるのであります。而してこれに対して政府は、国際小麦協定に参加すれば、これだけの金でも何とかやれるだろうというような意見が述べられておるのであります。そういたしまするというと、国際小麦協定に参加するしないということは、非常に重大問題であるのでありますが、国際協定の参加について如何なる対策を現在講じておられるのであるか、又その参加の見通しはどうであるか、この点についてお伺いいたしたいのであります。
  95. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お話のように、この小麦協定に参加することによつて日本が現在よりももつと廉価な小麦を買い得るのでありますから、政府としては是非ともこれに加入いたしたいと思つております。又加入の交渉も甚だ順調に進んでおつたのでありますが、表決する最後の段階において、成る條件が満たされないといいますか、成る国が反対したがために、遂に加入は否決されましたが、大体の究気から申せば、加入を許すという究気であると思います。ただ二、三の條件或いは国の反対があつたためでありますが、この反対は強い反対ではないようでありますから、何とかその間に話が付くのではないか、少くとも次の機会において参加ができるように政府は十分努力いたす考えであります。
  96. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 次は、経済自立体制の確立についてお尋ねしたいと思うのであります。自立経済の確立に関しまして、政府の熱意や努力については施政演説その他において十分に私は了承したのであります。できるだけ早くこれを具体的に推進するように協力することもやぶさかではないのであります。ただその推進の階段或いは方法については、いろいろ要望や意見を持つておるのでありますから、以下これらの点についてお尋ねしたいと思うのであります。  先に私が質問演説において、自立経済審議会答申の三カ年計画についてお尋ねしたのでありますが、政府も十分愼重に審議し、具体化することに努力するつもりであると総理大臣答弁せられたのでありますが、この審議の結果はどうなつたのでありますか。閣議で決定せられたのであるか、或いは内閣の基本方針としてこの計画を実行せられるということを了承せられたのであるかどうか。次に特にその予算的、金融的措置についてどのように具体化しておるのであるか。併せて明確な御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  97. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 審議会の答申にいつては、成るべくその線に沿うように考えておりますが、その後御承知通り国際情勢は甚だ変転極まりないような状態で、問題は要するに原料の入手ということであります。ところが現在諸工業の原料その他は主としてアメリカにこれを求めるという状態で、ワシントンにおける各国の代表の最も努めておるところは原料の入手運動であるそうであります。従つて各国が競争して互いに原料確保しようといたしておる情勢にあるために、日本の割当も甚だ困難なような事態にあるように承知しておりますが、併しアメリカ政府としても日本立場を、日本の経済状態等についての報告その他によつて十分了承して、成るべく日本の復興を助けるような割当をいたしたいと連合軍司令部の代表等が盡力いたしてくれておるようであります。又日本政府としても要望は十分いたしておりますが、只今審議中だと思います。それからこれには船という問題もあります。かたがた問題はそう簡單ではないのでありますが、併し政府としては日本経済復興のためにも、又日本の現在の生活水準を維持するためにも、成るべく多く原料、食糧の確保をいたしたいと努力しておる次第でありますが、もう暫らく経たないというと、その努力の結果がわからないかと思います。併しできるだけのことをして審議会の答申に副うようにいたしたいと思います。予算その他の詳細については所管大臣にお聞きを願いたいと思います。
  98. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 次は、食糧政策の基本方針についてお尋ねしたいのであります。自立経済の推進の要は食糧の増産と電源の開発と船舶の拡充等、国内資源の開発、自給度の向上にあることは改めて私が申上げるまでもないことでありますが、特に食糧の増産確保国民生活安定と産業振興の基礎として施策と予算の集中を要望するものであります。而して国内食糧自給体制の確立に関しては、すでに昨年の七月三十一日に閣議において申合せがなされておるのでありますが、その趣旨は至極結構であつて、是非その通り実行してもらいたいと思つて非常なる期待を持つておるのであります。然るにその後の事態はどうであるかと申しますというと、食糧事情がやや緩和されたためにこの問題に対する進行が楽観を許さないような状態になつたのであります。一割増産には十分なる予算の裏付なく、一方においては麦の統制は廃止され、又その対米価比率は大幅に引下げられて行こうとしておることは甚だ了解に苦しむところであります。そこで国内食糧自給体制確立に関する閣議決定を今後もなお政策の根本方針としてその実現に努力せられる覚悟があるかどうか、先ずこの点からお伺いしたいのであります。
  99. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 方針としては確保する方針でありますけれども、その後の事態においていろいろな変化があつたがために、或いは十分でないところもありましようが、併し政府としては無論確保するつもりでおります。その方針で進むつもりでありますが、要するにこれは日本の農業は日本の現在の状態から申しても、一割増産とか何とか申しても、もう少し根本的の政策を講じなければいけないのではないか。例えば電源の開発による、或いは治水治山による、もつとも大規模において考えを直さなければならないかと思います。即ち外資導入等があるならば、電源の開発その他いわゆるTVAの業績に倣つて、灌漑その他、治水その他の方向にもつと根本的ないわゆる予算を、費用を、国費を余計にかけて、そうして一割とか二割とかというのではなくて、根本的の増産を図ることではないかと思いますが、併しこれは外資の導入ができてからの話で、仮定の話でありますが、得べくんばそういたしたいと私は考えております。
  100. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 この問題に関係して最も各方面から意見のあるのは、麦の統制廃止、それから対米価比率の引下げということが非常にやかましいのでありますが、これに対しては総理大臣はどういうふうにお考えであるか、この点も併せてお伺いしたいと思うのであります。
  101. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) これは少しぐ專門的になつて、私の答弁は怪しうございますから、所管大臣からお答えいたします。
  102. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 麦の統制撤廃につきましては、今日のところ基本の方針のもとにするつもりであります。ただ、今お話のように米麦の比価の問題でありますが、これは他の機会においても申上げましたように、必ずしも戰前における米麦の比価というものが適当であるか否かということについては、再検討の余地はあろうかと思います。戰前における食糧の中に占めた麦のウエイトというものが今日敗戰後における日本の食糧事情において、その食糧の中に占むる麦の割合とは非常に違つて来ておる。そういう点もあり、或いは国際的な価格の関係、或いは生産コストの関係というものから、戰前の比価そのものが必らずしも妥当であるかどうかということについては愼重に研究いたしたいと思つております。
  103. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 次は、農業協同組合の再建整備についてお尋ねしたいと思うのであります。今日の国際情勢下において、自立経済の達成を期する上に基本的な重要性を持つ食糧増産の確保は、農村と農民に課せられた重大使命であるのであります。この意味において、農業生産の向上と農家経済の改善を目的として設立せられました農業協同組合の使命も、又重且つ大なるものを加えて来たと言わねばならないのであります。然るに農業協同組合の現状は、自己資金の劣弱に加えて、指導の不適正、ディス・インフレ政策のしわ寄せ、農業会よりの引継ぎ資産、不良在庫品の手持等のために多額の資金を固定化し、その利払いに追われて本来の使命を十分に果し得ぬ状況にあることは誠に遺憾であります。併し今日の不振を招いた原因には、勿論農業協同組合自体の責めに帰すべきものがあるのでありますが、政府施策の拙劣に基くものが又少くないのであります。併しいづれにいたしましても、農民の自主的組織として、昨年来農業協同組合自体再建整備の運動を懸命に展開しておるのでありますが、自力再建にはおのずから限度があつて、食糧増産の重要性と緊急性がその時間知余裕を許さないことを併せてお考えをお願いしたいのであります。前国会以来農業協同組合の両建整備に関する政府の積極的な施策、その法的、予算的の措置の実現が関係者から強く要望せられて、今国会においても重要なる農政問題として真劔に検討せられておるのであります。即ち農業協同組合の事業資金として適正なる融資をなすこと、或いは固定したる資金に対する利子補給や、増証に対する配当保証をする等、目下自由党のほうを中心にいろいろの具体案が練られつあるのでありますが、まだ大蔵当局の十分なる了解が得らないために未解決のまま保留せられておるということは誠に残念に堪えないのであります。そこで農村問題について非常に深い御同情を持つておられる総理大臣がこの採決をやられるほかないと思うのでありますが、農協の再建整備について速急に法的、予算的の措置を講じて頂くお考えがあるかどうか、承わりたいと思うのであります。
  104. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 所管大臣からお答えします
  105. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 農協の再建整備につきましては、昨年来、農林省並びに大蔵省からいろいろな調査をいたしておつたのであります。最近ようやく調査がまとまりまして、その再建整備に関しまする具体案は数日中にでき上ると思つております。一万数千のうち二千数百の非常に経営困難な農業協同組合があります。何とかして再建することができるようにいたしたいと努力しておるのであります。
  106. 藤野繁雄

    藤野繁雄君 次は、物資の需給調節と物価安定についてお尋ねしたいと思うのであります。現政府が自由経済を主眼として不必要な統制を廃止し、経済の復興安定を推進して来られたことは十分に了承しております。併しながら朝鮮事変を契機とする諸外国の戰時体制、強化に伴いまして、基礎資材、重要物資が不足し、或いは値上り傾向があるために、海外依存度の高い我が国におけるところの受ける影響はけだし甚大なものがあるのであります。特に昨年以来の物価騰貴は産業政策の上からも又国民生活の上からも到底このまま放置することは許されない状況にあると思うのであります。そこで政府としてこの現実の事態に即応し、基礎的な重要物資に対する適切なる調整措置と物価安定の施策を講ずべきであると思うのであります。国民の関心も又この点にかかつておるのであります。この点に関して或いは自主統制、或いは直接統制と、いろいろ論議せられて、向うべきところが明らかでないために混乱を招くことを憂慮するのであります。今後経済政策の基本といたしまして、如何なる構想、乃至は方針を以て進めらるる考えであるか、その具体案について総理大臣に承わりたいと思うのであります。  次には統制が必要な場合の根拠といたしまして、臨時物資需給調整法のような戰時中の総動員法の身代りともいうべき非民主的の法律をそのまま延長せられることは、これまでの政府の方針にも矛盾すると言わなければならないと考えるのでありますが、これを改正される意思があるかどうか。更に又自主統制に関連いたしまして、強く要望せられておるところの事業者団体法、或いは私的独占禁止法を緩和せられる用意があるようにも承わつておるのでありますが、この点はどう処理せられる考えであるか、総理大臣の明確なる答弁をお願いしたいのであります。
  107. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 主管大臣からお答え申上げます。
  108. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えします。物価並びにその他統制の問題についてお尋ねですが。物価につきましては、今日の状態といたしまして、上るから直ちに統制するということは、いいとは思つておりません。私どもも根本原則としては現在の事態に即するにおきましては、何といたしましても物の生産を増加し、而してこれに関連して必要な物の輸入を促進するということに中心を置いて行きたいとかように考えます。そのとき常に御意見が出ますのですが、今日の国際情勢から外国に依存しておるもの、そのものについては国際物価が影響して高くなるということをおつしやいますが、同時にすぐにこれを統制へとおつしやいますが、私どもは、今の状態は外国から原材料が入つて来る限り、その原材料について国際的な影響を受けて価格が成る程度上ることがあるとも、物をすつかり入れて生産を増強するということができれば、それから次の関連性における値上りというものはそう恐るべきものでないとこう考えております。むしろこういう工合に無理に抑えることは非常に不合理であり、非能率的で、且つ品質を落すというような面から考えられて然るべきものでないと考えます。併し今お話のように、その中でも重要物資等についてはおのずから現在の状況からいたしまして、国際的な割当というようなことが起ることは必至であろうと思います。そういう面について、これを徒らに自由に放置しておくことによつて、思惑等が介在して有効需要のところに向かわずして、ただ価格が吊上げられるということは本意ではありませんし、真に有効需要のほうに行くように必要があれば用途指定、使用制限というような恰好において今後必要な制限を加える必要があるかと、かように考えておりますが、原則的に申しまして、価格が上るからすぐに昔のような統制に復活するということは考えておりません。それから今関連して臨時物資需給調整法についてのお尋ねでございますが、これは只今申しましたような、必要最小限度において重要物資等について使用制限等を行う必要があるとすれば、当然その根拠を必要としますから、臨時物資需給調整法の期限の延長は只今考えております。又それに関連して事業者団体法、独禁法の改正お尋ねでございますが、これらの法律というものは、成るほど日本の過去における経済界における独占的な傾向を民主化することには相当役立つたと思います。併し今日民主化された経済界の状況を基にして成る程度すべての自由の制限ということ、非能率的な、官僚的な統制だけで行くということは必要でないのであつて、むしろ原則は中心を政府に置きましても、その発動に至る際においてできる限り民間の意向を尊重するような方針がとれないかということについては只今検討中でございますが、近く何らかの結果が出ましたら、この法律の改正に御協賛を仰ぐために手続をとるつもりであります。
  109. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) それでは午前中の会議はこれを以て終りまして、暫らく休憩いたします。午後は一時から、再開いたします。    午前十一時五十九分休憩    —————・—————    午後一時二十一分開会
  110. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 休憩前に引続いて予算委員会を開きます。午前に引続いて各党代表質疑に入ります。
  111. 永井純一郎

    永井純一郎君 大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。先ず資本の蓄積の点についてお尋ねしたいと思うのでありまするが、政府予算説明書を拝見いたしましても、又蔵相の財政演説におきましても、資本蓄積の点に非常に力を入れておられるのであります。それで政府言つておられる資本の蓄積というのは、大体大きな資本企業等を対象にして考えておられるのではないかというふうに、この予算説明書を見ても見えるのであります。法人の積立金課税の廃止を初めといたしまして、償却費におきまする特別増加償却等を認めて行こうとしておるのでありまするが、私どもが一方考えまするのに、国民一般の民間の資本の蓄積を図るということが非常に大切であると考えるのであります。これは今日中小企業、或いはやはり企業体としては零細な農業、これらの弱小企業もやはり今日重要な経営の転換期にあるわけであります。従つて施設の更新なり経営の合理化なりをするために、資本の蓄積は当然必要でありますし、又そうさせることによつて政府が言う生産の増強並びに貿易の伸張に協力させるというようなことにとつても必要なわけでありまするが、政府のこの予算を通して見ておりますと、そういういわゆる中小企業者や農業者のような、こういう弱小企業者の資本の蓄積に対しては殆んど意が用いられておらないというふうに見えるのでありますが、これらの資本の蓄積をどのようにして推進しようとしておられるかを先ず伺いたいと思います。
  112. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 資本の蓄積は、お話しの通りに現下の財政金融問題といたしましては最も大切なことでございまして、これにはできるだけの力を入れております。大資本の蓄積ということばかりを考えておりません。国民全般に蓄積して頂きたいのであります。減税をいたすのもこの意味でありますし、又償却年限を延しますのもこの意味であるのであります。ただ中小企業、農業のほうは余りに数が多くて、そうしてはつきり見えないというだけで、考え方といたしましては、非常に考えておるのであります。
  113. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういう中小企業でありますとか、農業等に対しても考えておるのだ、減税等がそうであるというようなお話も今あつたようでありますが、この減税は大蔵大臣がいつも言われますように、二十五年度補正予算で六十四億だか五億を減税した、又本年度も六百四十三億でありますか減税をするのだということを言われるのだと思うのでありまするが、これは併し、政府説明をしておられますように、税法上の減税だということを政府も明らかに言つておられるのであります。従つてこれは一応数字上は減税になるのかも知れませんが、この税法上の減税というのは、実は我々がここで論議するよりも国民のほうがよく知つておるのであります。つまり国民の間では水増し政策だと、こう言つておるようであります。税法上の減税というよりも水増し政策だと、こうまあ一口に言うのであります。これは米の供出以来、政府が盛んに行いました数字上の取扱の一つの方法であるようでありますが、私どもが資本の蓄積等に関連して考える減税というのは、そういうのではなくて、税が生活費に食い込まない程度まで来て、それから先が初めて減税ということになると言わなければならないと思うのであります。これは惡口を言うわけではありませんが、この前の参議院予算委員会かで金持と貧乏人、米と麦との関係を蔵相は言われたそうでありまするけれども、そういう金持の人たちは税法上の減税でも我慢するといいますか、有難がるかも知れませんが、零細な業者或いは多くの国民の大衆から見ますると、生活費に食い込まないところから初めて減税ということになるわけであるように私は考えるのであります。これを例えば例をとつて、数字を挙げて見たいと思うのでありますが、例えば農業者を例にとつて見ますると、御承知のように日本の農業経営は、非常に家族労作による気の毒な経営状態にあるわけでありますが、この人たちが蓄積して行くためには、いわゆる農家経済の余剩というものが先ず生れてそこから公租公課を払つて行き、そうして更に残つた分が純余剩になりまして、それが家畜でありますとか、農機具でありますとか、或いは更に進んでは土地改良等にも投資して行くということになつて行くのであります。ところがこれはたしか安本の調べであつたと思いまするが、この農家経済の收支の概況を見て見ますると、二十年には七千四百円の黒字が出ておるのであります。三十一年は一万四千円ばかりの黒字を出しておる。二十二年には一万二千円ばかり、二十三年はかなり多くて三万円ばかりの收支の黒字を出しておりまするが、二十四年からは御承知通り非常にシエーレの関係等があつて赤字に転落しておるのであります。一万四百円の三十四年は赤字になつておりまするが、この傾向は、二十五年、二十六年に至りますると更に非常に激しい傾向になりつ今日あるのであります。こういつたような数字でありまするから、到底今蔵相が言われるような、考えておるのだとただ言われても、これらの業者の資本の蓄積ということは当然できない、困難な実情は、こうした数字が示しておるのであります。そこで私どもがこの予算を通じて見て、殆んど政府は中小企業者なり、農業者等の資本の蓄積ということは言うておるけれども、全然考えておらないのだ。殆んど頭にないのだ。併しはつきりそういうわけにも行かんからいろいろなことを言つて説明をするということではないかという心配が、これは当然今申上げたような数字を検討して行くと出て来るのでありまするから、どういうふうにして、ではこういう中小企業なりその他の弱小企業者の資本蓄積を促進して行つて、そうして政府が意図する生産の増強に一緒に協力させ、更に貿易伸張に資せしめるというような策を一体お持ちになつておるのか、或いは全然実はそれはもう今日の場合考えておらないものだと言われるのかをお伺いしたいのであります。
  114. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) どういうところでお調べになつたか存じませんが、昭和二十一、二、三年は非常に農村は黒字で、二十四年、五年からは赤字になつておるというお話でございました。併し税の方面で申しますると、御承知通り昭和二十四年の当初予算では中小企業、農業者関係を主たる分とする申告納税は、当初予算千九百億円ございましたが、補正で千七百億円に直し、收入は千三、四百億であつたと思います。昭和二十五件度におきましては、当初予算は千五百億円の收入予算であります。それを千百七十億円に補正をして減らしました。実際は私は千百七十億円が、一千億をちよつと超すくらいではないかと思つております。こういうふうに税は予算面でも減つております。実際も減つているのであります。農業者につきましても、昭和二十四年の全国農家の負担される税金は大体四百数十億円に計算されておりましたが、昭和二十五年は私は二百億を切れると思つておるのであります。こう考えて見ますと、我々のほうはかなり農業或いは中小企業のほうにも減税をいたしておるのであります。又一方中小企業或いは農業者のやります零細な貯金、例えば郵便貯金等に対しましてもかなり累年伸びて来ておるのであります。銀行預金も伸びておりまするが、郵便貯金の伸び方なんか相当あるのであります。而も又簡易保險とか、或いは厚生年金とか、郵便年金におきましてもおのおの百数十億円ずつ殖えて来ておるのであります。私は全体といたしましてやはり減税をし、そうして零細な預貯金等が伸びておることを見ましてもかなり資本の蓄積は、急速ではありませんが徐々にできておると確信いたしております。
  115. 永井純一郎

    永井純一郎君 私が調べた数字はたしか……私も今ちよつと覚えていないのですが、たしか安本の数字であつたと思いますが、預貯金等は、これは農村の場合、非常に時期によつてもでこぼこがあります。それで二十二年、三年の非常な黒字と蔵相は言われますが、これはそのところから又公租、公課なり、寄附金なり、いろいろのものを出して行つて、農業経営の改善或いは中小企業者の企業の改善というような点にまで投資して行くということにはなかなかならないのであります。これは又経営の状態をいろいろ調べたものがありまするが、そういうものから当然そういう結論を出し得るわけでありまするが、今の蔵相のお話ではただ税金の総額とか、或いは貯蓄の総額とかいつたようなことについて大ざつぱにお話になつたのでありまするが、私が言うのは、それから先更に経営の合理化なり、近代化に向うために資本の蓄積ということが問題になるわけであります。今蔵相が言われるように、今日そのままで貯金があるからそれでいいというような議論は、資本の蓄積をして経営の合理化なり近代化に向うという段階までに行かない議論と言わなければならないように私は思うのであります。更に一歩を進めてもう一つ具体的な問題をお聞きしたいと思うのは、零細な商工業者の集まりで作つておるところの企業組合というのがある。ところがこの企業組合を私どもは是非とも育てて行きたい。そうしてこういう協同の力でよりいい品物を作り、或いは販売できるようにして振興させて行かなければならないと思つておるのでありまするが、私はここで先ず初めに通産大臣にお聞きして置きたいのでありまするが、この企業組合の取扱が、大蔵省と通産省では非常に違つておるようであります。ところが政府は法律でこの企業組合を育成しようと思つてつたのが、これが根本の方針であろうと思うのでありまするが、ところが大蔵省のほうの、税務署のほうの取扱は、これを今日殆んど法人として扱わないというやり方を昨今やつておるようであります。そのために折角今できて、これは極く最近でき始めた組合であります。伸びようとするところを法人として大蔵省が、税務署が扱わないために、潰れかかつたり、潰れたものが非常に多い実情にあるのであります。これは中小企業者の立場から非常に遺憾と今日されておるところであるのでありまするが、先ず私は通産大臣に、この企業組合をどういうふうにして実際育てようとしておるのか、その点を先ず先に聞いて見たいと、こう思うのであります。
  116. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) この育成に対しましては、今のような問題もいろいろあるかと思うのでありますが、これは折角できたものであるから育成をして、そしていろいろの障害あるところはよく除去するように努めて行つてこれの育成によつて、そうして中小企業者の共同施設或いは共同の金融などに役立つようにして行きたいと、こう思つております。
  117. 永井純一郎

    永井純一郎君 只今通産大臣からお答えを頂いたのでありまするが、もう少し具体的に実はお答えが欲しいのであります。と申しますのは、これは非常に今日切実な中小企業者の問題でありまするし、特に通産省としては、そういうことでなく、もう少し熱心にこの問題を取上げ、そうして大蔵省と折衝すべきところはもう少し十分に折衝をして頂きたいと、私案はこう思つておるわけであります。そこで共同施設なり共同金融ということは、勿論いずれの組合にいたしましても当然の一つのことでありまするが、今一番大切なことは、やはりこの組合に対して適正な課税をしてやるということが、今日は一番大切な実情になつておるのであります。ところが税務署の取扱は、税の立場からこの企業組合に対する十一原則とか、十原則とか何とかいう一つの方針を持つておりまして、その中に現金操作を完全にやらない場合には法人としては取扱わないというようなことがあるわけであります。これは大蔵省と通産省はどういう話合いをしておるかわからないのでありまするが、末端の大阪あたりの国税庁なり或いは税務署長なりではさつぱり話がわからないのでありまするが、現金操作を例えば完全にしておらなくとも、相当大部分の組合員の現金操作を組合がやつておるという、そういう今、段階にあるわけなんです。だんだん成長して来まして、完全にしておれば勿論当然法人として扱うわけでありまするが、併し今成長の途中ですから、まあだんだん現金操作が殖えつある、だんだんいい形になりつつあるというところに持つて来て、完全にやつておらないからといつて法人として全然扱わないというようなやり方は、これは私は通産省としてはとても堪えられないところではないかと思うのであります。その辺を一つ通産大臣のお考えを先ず承わりたいと思うのであります。
  118. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 今の税の問題でありまするが、これは細かしいことはよく調査いたしまして善処をすることにいたしたいと思います。
  119. 永井純一郎

    永井純一郎君 これは末端の取扱ですから、或いは大蔵大臣も詳しくは御存じないかも知れませんが、私の考えでは、この企業組合というのは、各人の業者の経営の主体であることを認めないということになつておるわけであります。併しそれが今発達の途中ですから、完全に組合で一本に收支の現金操作を一遍にすぐできるということは困難だと思うのです。併し今それが順次全国的にできつつあるわけであります。その間税の取扱上全然法人として認めないのだということでなく、これを育成するという意味から、そこらの税の取扱方について、相当彈力性のある、実情に副つた取扱をするお考えをお持ちにならなければ、これは育成することができないと思うのでありまするが、その点について大蔵大臣から一つお答えを願いたいと思います。
  120. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 企業協同組合を育成して行くことは、通産大臣のお答えなつ通りであります。而してこれがえてして脱税の具に供される場合がありますので、お話のような十か十五のいわゆる法人と認めるか、認めなくて、個人の企業体として見るかという標準を通産省と相談してきめたということを私は聞いたととがあるのでございますが、これは事実問題でございまして、今の現金操作を完全にやつているかどうかということも、一つの標準でございましようが、いろいろな標準からこういうことはやるべき問題と思います。私も実際問題としまして手にかけたことはございません。要すれば政府委員によつて答弁をさせたいと思います。
  121. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 今政府委員が来でおりませんから、後刻呼んで答弁させます。
  122. 永井純一郎

    永井純一郎君 後刻でも結構ですから、これは是非一つ大蔵大臣と通産大臣と、中小企業というのは非常に多いのですから、話合いを願つて、事務当局に任せないで、これは任せると非常に事務的になつてしまつて、脱税でないのに脱税だ脱税だという傾向に行きがちですから、これを育てるという意味で、育成するためにはどういうふうにしたらいいかという大きな見地から一つ御相談を願つて、十分考えて頂くということに一つして頂きたい。これで私一応この問題についての質問を打切ります。  その次に、資本の蓄積とからんで当然、中小企業との問題が今のような問題がありまするし、今度は農業者のほうの問題になつて来ると、どうしてもこれが農産物の価格、特に米価の問題になつて参るのです。これはこの前の臨時国会におきまして、私は大蔵大臣に質問をいたしましたところ、大蔵大臣は国際価格に鞘寄せするという方針だ、それに変りはないということを、そういう御答弁を頂いておるのであります。で若しこの際、更に従来から池田蔵相が言つておられる通り、米価の設定の基本方針を、国際価格に鞘寄せするという方針をとられるといたしますると、この予算書にもありまするが、大体、食糧の輸入価格はアメリカの小麦で着港トン当り九十七ドル見当で組んであるのであります。ところが今日はすでに百ドルを溝かにアメリカの小麦は上廻つておるわけでありまするが、国際小麦協定に入る云々のこともありまするけれども、これは今直ちに入つても本年度予算にはなかなか間に合わないわけです。そこで蔵相が言われるように「補給金を減らす方針、国際価格に鞘寄せする方針、補給金を減らして、少くとも今日の場合二百二十五億という輸入食糧の補給金は殖やさないと従来言つておられるその方針をとれば、当然価格の高騰した輸入食糧によつて政府の払下げ価格を非常に上げなければならない。従つて消費者の価格も上げる、又生産者価格にいたしましても、今日すでに二十六年度予算に組んでおる米価は、六千百六円でありますが、そのパリテイ指数は一九五でありましたか、これがすでに今日もう突破しそうだという状態にもあるわけでありまするが、当然ここに非常に大きな問題が起つて来ると思うのであります。このことによつて更に物価の上り工合に拍車をどんどんかけて行くということになりまして、この問題が今日のこの二十六年度予算を根本から揺がしてしまうということになると考えられまして、非常に重大なポイントと私考えておるのでありまするが、先の臨時国会答弁されました通り、やはり今後も国際価格に米価は鞘寄せする方針を堅持して行かれるかどうか、その点を一つお伺いしたいと思います。
  123. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 日本世界経済と繋がつております関係上、それは好むと好まざるにかかわらず国際価格に鞘寄せらるべきものであるのであります。併し米、麦のような重要なものの価格を直ちに国際価格に鞘寄せするということは、これはいろいろな点で摩擦を多くするのでありまして、徐々にそういう方法で進んで行くという私の方針には変りはございません。なお補給金の問題につきまして、他の機会に答弁したと思うのでありますが、小麦協定に参加いたしまするならば、その効果は直ちに現われて来るのであります、併し小麦協定に参加いたしましても、御承知通りその年によりまして価格がだんだん変つて来る、初めは八十ドル程度になると記憶いたしておりまするが、それにいたしましても船賃の値上り等によりまして、当初予算に組んでおります価格ではなかなか入つて来ないのはお話通りであります。この点につきましてどうするかという問題は、小麦協定にいつ入れるかということと、船賃がどういうふうになるかというこの見通しがつきましてから考えて何ら遅いことはないと考えるのであります。
  124. 永井純一郎

    永井純一郎君 そうしますと今の御答弁の趣旨は、国際価格に鞘寄せするという方針には変りはないのだということと、船賃なり国際小麦協定の問題を勘案いたしまして、そういう問題の見通し相当付いたときに処置したい、つまり蔵相の御答弁から推測すると、船賃なり、これは日本の船をできるだけ使うようにするという意味だと思いますが、そういうことによつて安くして行くということによつて、やはり補給金等は、余りここに組んである予算を変えなくてもやつて行けるだろうという見通しと見てよろしいのですか、どうですか。
  125. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 変えなければならないときには変えるということであります。
  126. 永井純一郎

    永井純一郎君 変えなければならないときには変えるというお話でありまするが、それは国際価格に鞘寄せする方針というその方針とはどういう関係になるのかお尋ねいたします。
  127. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 国際価格に鞘寄せすると言つたということは、徐々にそういうふうな措置をとつて行くというのであります。従いまして今のところでは米、麦につきましても既定の方針でやつて行く、そうして輸入補給金が足りない、即ち予定通り三百二十万トン入るときに、そうして予算で組んでおる九十数ドルの小麦価格が百何ドルになるということを見まして、そうして見通しが付いてから、足りない場合におきましては殖やして行く、今の二百二十五億円で済む場合にはそれをそのまま変えずに行く、そういうことであります。
  128. 永井純一郎

    永井純一郎君 徐々にではあるが、国際価格に鞘寄せする、こう言われるのでありますから、いずれの場合を考えて見ましても、国際価格に鞘寄せするならば補給金を殖やし得る場合はないじやないか、その点を一つはつきり、これはもう予算のそれが根本に、先程申しまするように物価との関係のこれは当然課題になつて来ると思うのでありますから、その基本方針を私は今お伺いしておるのでありますが、その点をもう少し明らかにして頂きたいと思います。
  129. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 国際価格に鞘寄せすると申しましても、一挙にできないことは御承知通りであります。米にいたしましても、一昨年は三千七百円、昨年度は四千二百五十円、本年度は五千五百三十九円と、こう上げて、只今の予定ではこの秋の米は六千なんぼ、こう計画しておる、だんだん近寄つてつております。又小麦にいたしましても、三千七百五十円というのは大体六十八ドルでございます。而して小麦協定の最低値、前の三年度の最低の分は七十一ドルであつたと思います。小麦のほうは大分近寄つて参りましたが、米のほうはまだまだ近寄つておりません。これは徐々にとにかく先程申上げましたように国際価格に行くのが経済の原理でございまするので、国内の経済事情を見ながら鞘寄せして行く、こういうのであります。而して一遍に国際価格に鞘寄せしたならば二百二十五億円も要らないことになると思います。併し徐々にして行く場合におきましては、即ち今の米価で入る場合においては、外国の米、麦が上つて来ればその差額が多くなるから二百二十五億円では足りなくなる。どのくらい足りないかということについては、もう少し見通しを付けないと計算がしにくいと、こういうことになります。
  130. 永井純一郎

    永井純一郎君 大体わかつたような、わからないような話になつて来たわけです。勿論徐々に国際価格に鞘寄せをするのだというそのお考えはわかるのです。が併しいずれの場合にしましても、徐々にしろ国際価格に鞘寄せして行くのならば、補給金が殖える場合はないはずのように思えるのでありますが、その辺は一歩譲つて、含みを持つて、実情によつて補給金を殖やす場合もあるのだということであろうと思いますが、併しもう一つ考えなければならないことは、国際価格に鞘寄せ、鞘寄せ言つて、それを根本的原則として蔵相はいつまでも捉まえておらますけれども、今米の問題を言われましたが、ビルマ米でもその他シャム米にしても、これは統制している価格であります。向うの国で統制品である、国が統制している商品の米でありまして、価格としては政策的な価格であるのでありまするから、国際価格に鞘寄せするという蔵相の経済の原理といいますか、考え方の場合は、自由にあるところの価格の場合だけにしか私は意味がないように思うのであります。米の場合を余り考えるのは私はおかしいのじやないかというふうにも考えるのであります。まあいずれにしましても、今の御答弁でどうもはつきりしないのですが、補給金はいずれにしても二十六年度の二百二十五億は殖やすこともあるということにとつていいのかどうかお尋ねをいたしたいと思います。
  131. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先ほど申上げたので御了解して頂けると思いまするが、補給金なんというものは釘付けにされるものではございません。外国の米、麦の値段によつてつて来るのであります。又国内の麦の価格を変えることによつても変つて来るのであります。又数量が動くことによつても変つて来るのであります。私は今のところでは予定よりも外国の小麦の価格が上つて来ましたので、三百二十万トン入れるとすると、小麦協定に参加するとか、或いは船賃の問題がありましても、成る程度出さねばならんような事態が来るのじやないか、こう予想いたしております。
  132. 永井純一郎

    永井純一郎君 それではそういう程度にして置きまして、次に更に私は進んで、特にこれは生産者の米価についてお尋ねを大蔵大臣と安本長官と農林大臣にしたいと思うのでありまするが、これは非常にむずかしい問題でもありまするが、この前の国会のときにも、どうも結局は蔵相と農相と周東国務大臣との答弁はやはりばらばらのことを言われたように思えるのであります。二十六年度のこの予算で六千百六円でありまするか、そういうことに一応きまつておりまするが、これは併しパリテイ計算からいつても、今日はもうむずかしい。この価格ではどうかということがすでに言われると思うのでありまするが、私はここで特にこの半価を設定する、これは農業者の、農業の資本蓄積の問題の基本に触れる問題でありまするから、この農業生産者の米価を設定する基本的な方針を一つ大蔵大臣、安定本部長官、農林大臣がばらばらのことを国会を通じて国民に言われたのでは非常に困ると、こう思うのであります。そこで考えられますのは、これは経済安定本部自体の資料を私調べて見たのでありまするが、大体二十四年から二十六年度の間の分配国民所得の推計というのがありますが、これによりますると、農業と鉱工業との関係が出してありまして二十四年を一〇〇にすると、農業は二十六年には一二九、そして鉱工業は一三二というふうに安本自体がシエーレの拡大することを予想しておるようであります。こういう点から米価に対する政府の基本的な考え方を考えて見ますると、いつかこれは安本長官が車中談だか、或いは農業者の団体の代表者に対してであつたか、米価は低米価政策で行くのだ、併しながら財政の支出においてこれを補うようにして行きたいのだというような趣旨のことを言われたというようなことを聞いておるのでありまするが、こういうシエーレの拡大の傾向を、明らかに農業と鉱工業とのこの国民分配所得の推計においてしておるのでありまするが、それではやはり政府考えるところの生産者価格はいわゆる低米価政策というようなことを基本として行くのかどうか、ここを一つ先ず安定本部長官からお伺いしたいと思います。
  133. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 安定本部長官はまだ出席しておりません。今要求しておりますけれども、すぐ参りますから、大蔵大臣から先に答弁して頂きませんか。
  134. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは、これはまあ安定本部長官のほうに先にやつてもらわんと工合が惡いことと思いますが、まあ蔵相のお考え一つ……。
  135. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 安定本部長官が低米価で行くのだということを言われたかどうか存じませんが、これは低米価といつても、経済というものはそういうふうに無理なことはできないものでございまして、我々は農家がやつぱり立つて行くように、而も国民相当の部分を農業者が占めておるのでありまするから、採算がつき、増産が刺戟されるような米価できめなければならないと思います。なお今の状態から申しますると、先ほどからも問題になつておりますように、外国の場合に比べますと、甚だしく米なんかは高くなつておるのであります。私の考え方としては、生産者に対しまして、低米価で行くのだということは考えられんことじやないかと思います。ただ消費者のほうにはそういうことは言われるかもわかりません。それでイギリスにおきましても、相当の生産補助金と申しまするか、買上は相当高く、そうして消費者には安く売るのだ、こういうような方式がありますが、買上は安くするということは言えるものではないと思います。
  136. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) どうですか。安本長官答弁を待ちますか。すぐ来るのですが、それとも続けますか。
  137. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは今の答弁は安本からもらうとして、蔵相にもう少し、そこで低米価ということはまあ言えないのだというお話でありますが、私が申上げるのは、言う言わんでなく、実際において今言うように絶対額的には価格は上るのですけれども国民の分配所得の推計等から行けば、シエーレがだんだん拡大することを見ておるということから言えば、絶対額は上るけれども、相対的にはいわゆる低米価になつておるということは事実農業の指導者は考えておるのでありますから、そういうことを実際上認めなければ止むを得ないということで政府言つておるのではないか。それじやいけない、こういう私は意味なんでありますが、これは安本長官から答弁を頂くとして、もう一つ根本的な問題といたしまして、米価設定の根本的な問題として、国際価格を先ほどから議論をしておる。單に鞘寄せするということではなくして、私は米価の問題は、一等初めから言つている資本の蓄積の問題としてこれを取上げなければならん。つまり生産者価格の設定の基本方針というものは、国際価格に鞘寄せするのだとかしないのだという議論ではなくして、農家所得を如何なる水準に置くかということが一つと、そうしてそういう農家の資本の蓄積をどの程度まで認めるかという根本の政府の限度というか、考え方が私は米価設定の基本的な問題になつて来ると思うのであります。この点をどういうふうに、特に重要な予算編成なんかをやられる大蔵大臣が、一つ考えておられるかというこの問題についてそれでは大蔵大臣から御答弁を頂きたいと思います。
  138. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 米価はやはり農家の生計、又増産等を考え、而もあらゆる物価との関係等を考え合せてきめられるべき問題だと思います。農家の資本蓄積をするために、不当に高い米の値をきめるわけにも参りません。又低米価で生産意欲を阻害するような無茶な安いものできめて行くべき問題でもありません。全般的の経済施策と兼ね合せてきめられるべき問題だと考えます。
  139. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 永井君、安本長官が出席されました。
  140. 永井純一郎

    永井純一郎君 今の蔵相の御答弁は、私が聞いたことには触れておられないわけです。私が簡明に申上れば、米価設定の基本方針というものは、安本長官も見えたようでありますが、この前からの話でも、国会答弁でもわかりますように、農相、蔵相、安本長官は結局ばらばらの答弁をされておるのであります。そこで蔵相の言われる單なる国際価格に鞘寄せするとかしないとかいうようなことを米価設定の基本方針にすることがおかしい。それで私は農家所得を如何なる水準に置くかということ、どの程度まで農家の資本の蓄積を認めるか。つまり農業の合理化、近代化をどの程度までさせることにするかという、この根本的な方針を政府が持つべきだと思うのであります。その点に一つ触れて御答弁を頂きたい、こう申上げておるのであります。それでは安本長官からこの点について御意見を承りたいと思います。
  141. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたしますが、私と農林大臣、大蔵大臣との間において、米価決定について意見の食い違いがあるという御断定でございますが、そういうことはありません。そのことを申上げますが、先ず結論として、三大臣とも米価について従来ややともすると、低く目に決定されがちである、これを何とか筋道を立てて高くしたいということについて先ず三大臣とも同じ意見であります。而してその算定の方式であります、これについていろいろとおのおの立場を変えて研究をしたことは事実である。殊に大蔵大臣が国際価格鞘寄せの議論をされておることが全然間違いであるというような御断定でありますが、私は傾聽しておる。ということは、あなたも御承知のように、日本における食生活における麦のウエイトというものは、最近著しく変つておるということは、社会党も認めて米価の問題を言われておると思う。併しこの際において国際価格の問題が出て来るのはなぜか。日本に輸入される小麦の量というものが非常に多くなつておる。その小麦が食生活に与えるウエイトというものは大きいから、而も輸入によつて日本の食生活を大分補つておる現状からいえば、向うの価格に影響されるから、その点において成る程度国際的な価格も考えて見るべきじやないかというのも私は正しいことだと思う。そのこともいずれも何とかして筋道を立てて内地の麦だけを抑えるとか、食糧だけを抑えるということはおかしいから、一つ材料として考えて見ようじやないかという意見は、私は正しいものだと思う。又農林大臣が生産費を以て決定する一つの方式としてはどうだろうかということも、これも正しい。原則論として生産費計算というものは一つの大きな基準であるということは認めておる。併し現在のような生産費の調査方法によつてはこれはなかなか真実を押えることはむずかしい。これはあなたも農林省におられて御承知だと思いますが、曾つての生産費計算においては三千石ぐらい調査いたしましたが、そのラインをどこに置くかということで争いになつたことは事実である。そういう客観的のことを考えて今日政府においてどういう線に生産費を持つて行くことを考えるか、殊にその中に入つておる大きな労働賃金の見方においてまちまちであるのです、双方……。そういうことを以て一面食糧問題として、農業施策だけでなく、大きな国民大衆を控えておる、それに対する面から考えると、よほどそこに考慮をしなければならんのであります。工場賃金指数というものと、その近村における農村の労働賃金を考えるとき、いろいろそこにまちまちの問題があるというようなことを考えて理論的に正しいとしても、如何にして客観的な妥当性のある生産費を出すかということに困難性を持つておるわけです。そういう問題については根本的に研究することが必要だと私は思う。併しそういう意味からいたしまして生産費一本で行かなければならん。而もパリテイの計算の問題、これは今日こそやや安定の形に来ましたから議論が出ますが、刻一刻、一月、二月の間にどんどん物価が高騰して、農家の物価が追いつけないような現状においては、むしろ生産費という過去の形をとるよりも、その当時における物価のパリティという形でやるということは、農民に対して適正なものを与えるということにおいては私は一つの見方で正しいと思う。それが漸く物価というものが或る程度安定して来て、その際においてむしろ逆に農民が損をするという形になるからパリテイ方式についても研究を仕直すということでは一致しております。併し昨年度においてはその方式をいずれに定めるかということは一長一短でどうも決まらなかつた。そこでやはりパリテイ方式を建前としつ農家の收入の減にならないようにいろいろな面で修正するということを、これは手前味噌でなくて米価に対する深い考慮が払われておつて、低米価で進もうというようなことは考えておらないのであります。そういう関係におきまして、私は三大臣の間に、アジるために意見が違うということを言うのは結構だが、根本においては決してそう内容は違つておらんので、いずれも農民に対する価格の、今まで安定してなかつたものを如何に直すかということの熱意であると考えております。
  142. 永井純一郎

    永井純一郎君 今安本長官からお答えがありましたが、そういういろいろな事情は私よく知つているのであります。余りその内容について、そういう点を長く答弁をしておられますと、私の持時間がなくなるのであります、そういう内容については私はよく存じているのであります。私が言うのはいろいろな、今長官が言われるように実際問題としてこれを処理しようとするときに、理論的だけでは行かない問題が出て来るのはよく私も知つているのであります。その際に実際問題として処理せんとするときに農業方面にしわ寄せをするという問題が実際の処理問題として起るのじやないかということを私は言つているのであります。これは農業にとつては重大な問題である。アジるためにそういうことを私が言うのではありません。つまり米価設定の基本の問題に触れるとするならば、私は安本長官が実際にそういうことを言われたかどうか知らないのであるが、実際処理する場合に困るから、米価は一応低米価政策で行くけれども、財政的支出でこれを補つて行きたいという気持を持つてつて、そのことを言われたことがあるのじやないかという、これは確かにそう言つたというふうに言うのじやない。そういうことを安本長官が農業団体の代表者か何かに言つたということを私は聞いたわけであります。つまり私が言うところはここであります。実際問題として処理する場合に結局そういうことになる。農林省と安定本部におきましては、そういうことでは困るからといつてつても、農林省ではどこまでも生産費を中心に行く、ところが安定本部まで行くとややその点が実際処理する場合には弱くなつて低米価で行くが、財政的支出でこれを土地改良等の費用によつて補おういうことになる。ところが大蔵省に行くと肝心の財政支出が容赦なく切られるということに、実際問題として処理する場合になつているのじやないかということを私は裏から言つているのであります。従つてそういう措置を順次繰返しておつたのでは、そういう方針を政府がいつもとつているならば、農業の、言うところの合理化であるとか、近代化であるとかいうことが一体できるはずがない。一番初めから私は大蔵大臣に資本の蓄積の問題からだんだん入つて来て、この問題を言つているのでありますが、結局そういうことになつて来るのであります。そこで政府が持つ米価設定の基本方針としては、安本自身が六千百六円をきめるときに、二十四年から二十六年度の分配国民所得の推計において明らかに二十四年を百として農業が二十六年には百二十九、鉱工業が百三十二、明らかに安本の所得推計が認めておるのであります。そういう事実も、計数もあるわけであります。ここで米価設定の基本としては農家所得を如何なる水準に置くかということと、農家の農業の資本の蓄積をどの程度まで許すかという一応のこの問題についての基本的な方針を政府が持つてこれを基本として米価を二者の大臣がきめるということでなければいけないのじやないか。この点に対するお考えを伺いたいと私は言つておるわけであります。
  143. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えいたします。今お話なつたうちにあなたの聞き違いか何か知らんがありますからはつきり言つておきます。私どもは農家の低米価ということは言つていない。事実問題としても私は農家に対する関係においては或る程度できるだけ合理的な価格に持つて行く。今まで安過ぎた価格を上げるということはよろしい。併しその結果は消費者の関係に行くから消費者価格の決定においては何とかできれば財政的のことを考えるのがよかろうということも言つたことはあります。而して附加えて言うことは、暫定的の行き方としてはやはり米価についての価格を考えることは必要であるが、基本的な農業生産の面においては米の單価を上げるということよりも反收の増、生産性を高めることによつて農家收入の増を図ることに基本を置かなければ、戰争中からやられた増産をお願いするために止むなく価格を上げて、上げてという恰好に行つたことが経過的には止むを得なかつたにしても、基本問題を振返つて農業政策を立てる場合においては、そこに重点が置かれなければならんということを私は言つておるわけであります。この点私は恐らく同感だろうと思います。そこに農業資本蓄積の問題が多分に出て来るのであつて、私どもは飽くまでも農家の資本蓄積の面において弱い者を、財政の詐す限りにおいては土地改良その他農業資産における維持、保全、改良という問題に重点を置いて行くべきだと、かように考えております。二十六年度予算におきまして希望通り予算がまだできなかつたということは財政上の関係において……。政府といたしましては今後においてやはりそこに基本をおいて進めることに異議はないのであります。
  144. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 永井君、農林大臣も出席しております。
  145. 永井純一郎

    永井純一郎君 まあ一応これは議論すると、幾らももつと今のことに対しても私はたくさんに意見を持つのでありまするが、持時間が三時間のうち一時間はもう総理で使いましたのでなくなつておりますから、次に移りたいと思います。  インベントリー・ファイナンスの問題について、私はこの食管特別会計についてこれをなぜやれないのか。私は理論上やれるように思うのでありますが、それを大蔵大臣に伺いたいと思うのであります。先ほど消費者のことも考えなければならないのだ、米価の設定については……ということが言われた。で政府はこの前の米価審議会におきまして消費者価格を据置いておけという決議に対しましては、これを無視しましてやつぱり引上げたわけであります。ところがあの消費者の価格の中に食管特別会計の人骨費から、事務費から一切があそこにぶち込んであるということが、そもそも私は無理だと思う。そういう会計のやり方がある。それでこれは貴金属特別会計、この予算を見ますと貴金属特別会計なり、或いは造幣庁の特別会計なりいわゆる運転資金に一般会計から繰入れをされておるのであります。そこで少くともこの食管特別会計におけるところの人件費だとか事務費その他のもので適当なものに相当するくらいの額のものも若し必要があればもう少しこれを繰入れて、そうして消費者の価格を据置くという方向に持つて行く工夫ができないのかどうか。この点をお伺いしたいと思います。
  146. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 今の状態におきましても二十七億程度、二十七億でございましたか一般会計から繰入れておるのでございます。而して消費者価格をできるだけ安くするために一般会計から人件費その他のものも負担し允らどうかとい、ことは一つの議論のあるところでありまするが、今の財政状態から申しまするとできません。
  147. 永井純一郎

    永井純一郎君 私はそれでは、この辺で一つ資本蓄積の問題の結論をしたいと思うのでありまするが、この説明書の中でも謳つておりまするが、国民生活の安定と資本の蓄積を図ることをこの予算編成の一つの大きな特色だとしておるのでありまするが、私が今までいろいろ申上げた通り、それから帰結すると到底この国民生活の安定と資本の蓄積を両立せしめることはできないのじやないか。今日の場合、とどのつまりは勤労国民大衆の犠牲において、その生活を切り詰めることによつで大きな資本、法人企業等の資本の蓄積をして行く、こういうことになつてしまうのではないか。現にこれは国税地方税等を通じてそのことが、そういう資本の蓄積が行われつ私は考えておるのでありまするが、これは実際昨今いろいろ講演などに行つて町や村を歩いておりますと、税務署なり、或いは県の税務課のトラックが、徴税用のトラックが走つております。非常にこれに怯えておるような実情にあるわけであります。特に農業者や中小企業者の人たちが非常にこれに怯えておる。つまりこういう実情から見ても資本の蓄積というものが普通の中小以下の企業者やらその他の人々の犠牲によつて……、この予算等が考えておることは結局そういうことによつて蓄積するよりほかない。国民生活の安定と資本の蓄積を図ると書いてあるけれども、その両立は恐らく不可能じやないか。ここから私はやはりこの日本の防衞線が、防衞協定なんかやつてもこの辺から崩れて行つてしまう。で、やたらに共産主義者の活動を盛んならしめるような原因を作つておるというようなことになるような気がするのであります。蔵相は果してこの国民生活の安定と資本の蓄積を両立せしめ得ると思つておられるかどうか。そのお考えを承わりたいと、こう思うのであります。
  148. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは過去二年の事績を御覧下さいましても、三年前のときよりもよほど安定の度を加えて参りましたし、又資本も成る程度蓄積されたのであります。我々は過去二年の事績を推し進めて参りまして、国民生活の安定と資本の蓄積を続けて行きたいと考えております。
  149. 永井純一郎

    永井純一郎君 私はそういうふうには少しも考えないので、特に最近における安定の度合というものはないのでありまして、生活の指数等を見てみますると、生活水準が七十六ぐらいまで来ておつたのが、最近は七十を割る指数を出しております。これは政府自体のいろいろな参考の数字が出ておるのであります。今蔵相が言われることとは逆のコースを辿りつつあるということを申上げたいのであります。  そこで私は次に移りまするが、租税負担の公平という問題が私はもう一つあると思う。これはこの予算書を見ますると、予算書じやない、あれは大蔵大臣の財政演説の中にあつたと思いまするが、一層の減税を図り、法人個人を通ずる資本蓄積、余力の涵養に資する方針であります。特にこの際、徒らに租税の公平理論にのみ囚われることなく、産業の復興、経済の再建のため云々ということを、大蔵大臣が演説されたのであります。私はこれを読んで、お話を伺つて、徒らに租税の公平理論に囚われることなくという意味がどうしてもわからないのであります。これは一体どういうことを意味しておるのかということを私は蔵相にはつきり一つ答弁して頂きたい、こう思うのであります。これは近代におきまする税制度におきまして負担の公平、均衡を得るということが一番の原則でなければならんことはもう誰も知つておるところであります。にもかかわらず徒らに租税の公平理論に囚われることなくということを掲げられたのは、これは惡口を言うもいと思つても、曾つて大蔵大臣は中小企業者の十人や二十人死んでも構わん、政策のためには止むを得ん。又金持ちは米を食い、貧乏人は麦を食えということも言われたのでありますが、地方選挙も近寄つたからそういうことを余り言うと工合が惡いから少し無理でも我慢をしなさいということを、徒らに租税の公平理論にのみ囚われることなくというような表現で現わしたのではないかというふうにしかとれない。どういうつもりでこういうことを言われたか。この意味を私は知りたい、こう思うのであります。でこれはただ徒らに私どもが租税の公平を言うのでは決してありません。と申上げるのは、或る中等程度の県の実例を調べて見たのでありまするが、県が事業税を取るのに所得の調べをするわけでありまするが、これは大体税務署が持つておるところの所得調べに基いて、県は事業税の対象を調べるわけであります。これによりますと、この県では個人の一戸当りの平均が、事業税を納める対象となる人の平均が、八万四千三百十一円という数字が出ておるのであります。平均であります。方普通法人の一人当りの平均が十二万四千円という数字がこの県では出ておるのであります。これを見ると誰も納得しないのであります。この県はいわゆる糸へん、金へんというところの糸へんが相当活パツに活動しておる県でありまするが、そういう県におけるところの法人の所得が平均十二万四千円、個人の、主として中小企業者が対象になるところの所得が八万四千円そこそこということは私はどうしても受取れないのであります。こういう実情に実際あるのに、国民が租税の公平を言わざるを得んわけであります。徒らに決して言つておるのではない。実際にこういう実例があるから公平の理論に反しておる、不公平だと我々が言うのであります。こういう実情がある。今度のこの二十六年度予算を見ますと、歳入のところを見ますと、法人税は僅かに六十億しか殖えておりません。これは私は非常な過少見積だと思うのであります。こういうところから今申上げたような、この県の実例のようなことが結局出て来る。そこでいやでも租税の公平を言わなければならん。それをしも抑えて徒らに租税の公平理論に囚われるなというならば、お前たちは犠牲になつて資本の蓄積に……、大きな法人企業等の資本の蓄積に犠牲になれと言つておるということを言う人があつても私は余り無理じやないのじやないか、こういうふうに考えるのであります。この点一つ大蔵大臣のお考えを承わりたいと思います。
  150. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 勤労大衆を犠牲にしてというようなお言葉がありましたが、我々はそういう気持は持つておりません。昭和二十四年度の賃金、或いは消費者物価指数を百といたしまして昭和二十五年は賃金は二割上るし、消費者物価指数は下る、実質賃金は三割五分も上るという数字があるのであります。これはもう統計から出て来るのであります。我々は決して勤労者階級を圧迫するとか、いじめるというふうな気持は持つておりません。今まで過去二年間の我々の施策は大体成功いたしておるのであります。次に徒らに公平の理論に囚われずということは確かに使いました。私が財政演説にそれを入れたのであります。そのあとをお読み下さつたらよろしうございます。租税というものは飽くまで公平でなければならん。併し公平一点張りで社会政策とか、経済政策というものを全然度外シしちやいかない。これは財政学、租税論で言われておることなんであります。而して私が今回資本の蓄積として考えました主なる点は特殊の業態、重要産業につきまして特別償却を認める、こういうことは、儲かつたところのものにつきましてはそれが重要な産業であろうが、特別償却を認めるということは租税の絶対公平理論から言つたら横道であります。又資本の蓄積から申しまして源泉課税の制度を復活した。これは今の制度で申しますると、五十万円超過の人は利子をもらいますと五十五の率がかかります。而もそれが所得の基準になつて住民税にも影響して来る。それを私は金融界その他の要望に応じまして源泉選択をすれば五十でいい、こういうことにしたのでありまして、いわゆる総合をやめて、五十万円以上の人は得になりまするが、これは源泉選択制度を復活したほうが日本の経済復興に役立つというので、租税の公平理論に徒らに囚われずに五〇%の課税の源泉選択を認めたのであります。これを言つておるのであります。これは租税論としては当然なことで、それを今までのように公平一点張りで行くというあれではないのであります。経済政策を加味しなければいかんということを言つたのであります。  次に法人、個人の所得を云々されておられますが、法人におきましてもこれはぴんからきりまであるのでありまして、個人と何ら変らないような法人もあるのであります。どこの統計からそういうものが出て来るからというのじやありませんが、これは一人当りの平均で個人と法人とを云々するということは議論にならんと思います。
  151. 永井純一郎

    永井純一郎君 法人と個人との比較は議論にならんというお話はこれはおかしいのであります。大体個人で納めておるというものは、県におきましては具体的にわかつておるのであります。法人におきましても、例えば法人だけをとつて見ましても、十二万四千円ということが平均であるならば、これはむしろ最低であります。而して平均がこれでありまするから、最高もやはりこれだという理窟上なつて来て非常におかしい。これだけ取上げても何も比較をせんでもおかしい。そこで私は大蔵大臣に更に突込んでお伺いしたいのは、二十六年度の法人税の收入見込の六十億は適当であると思つておられるのかどうか、これを伺いたいと思います。
  152. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 適当であると考えております。不適当であるとお思いになるならばお示しを願います。
  153. 永井純一郎

    永井純一郎君 適当であるとお思いになるならば、どういう基礎から一体六十億が適当であるかをもう少し説明して頂きたい。
  154. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昭和二十五年度の法人税の收入は補正予算で五百七十億円と相成つたと思うのであります。実績はこれよりももつとよくなります。而して昭和二六年度におきましては所得は相当殖えて参りまするが、資産再評価によりまする償却がかなり増加して参りまするし、又償却固定資産の耐用單数を短くしてうんと償却ができるようにいたしますし、又重要産業につきましては特別償却を認めます関係上所得は殖えましても收入税金はその割合に行かない、こういう考え方で見積つたのであります。細かい数字につきましては後刻政府委員をして答弁させます。
  155. 永井純一郎

    永井純一郎君 細かな説明は事務当局からということでありますから、それではあとでお伺いすることにしまして、もう一つ大蔵大臣に伺つて置きたいのでありまするが、それは見返資金特別会計の中で公企業支出に九十億、私企業支出に三百五十億、これらについてはその内容を示しておるのでありまするが、経済再建費というのがあつて七百五十四億といろものが計上されてある。これは全然内容が不明であります。私どもがこの点について考えることは、若しこの経済再建費の七百数十億という大きな金が若し不生産的なものに使用される場合には、相当インフレの要因になつて来るのじやないか、インフレの要因になると思われる、心配されるようなものが、このほかにも例えば資金運用部の二十七年度への繰越し余裕金の四百三十億でありまするとか、或いは衆議院で銀行局長か誰かが説明されたとかいう話でありまするが、外為特別会計の二十六年度末には一千数百億の支払超過が……、民間に対して超過になる見込であるとかというようなこと、それから今日のドルの現下の状況から見ましても援助物資の入りが結局少くなるというようなことが考えられまするから、相当インフレの要因が、全体としては超均衡予算であると言つて置きながら、    〔委員長退席、理事藤野繁雄委員長席に着く〕  その内容を仔細に見ると、そういうインフレ要因を含んだ矛盾があるということが言えると思うのでありまするが、特にその使途を明らかにしないところのこの経済再建費の七百五十四億というものが不生産的なもの、例えば再軍備のような費用であるとか、或いは警察予備隊であるとか何とか、そういつたような下生産的なものに使われるということは政府の方針と逆行するものと考えまするが、この点一つその内容を、一体どういうものに使うのか大蔵大臣から明らかにされたいと思います。
  156. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 見返資金につきましてはお話通りに公企業に九十億、私企業に三百五十数億を見込んでおります。その他は経済再建費として七百億余りを予定しておるのでありまするが、これは内容がまだきまつておりませんから書いておりません。併し経済再建に必要なものがあり、而して出す時期が適当だというときには使つて参りまするが、今のところその名の示す通り経済再建に使うのであります。
  157. 永井純一郎

    永井純一郎君 これは経済再建費の名前に示すように経済再建に使うのであつて、その他の例えば私が質問しました不生産的なものに使わないのかどうか、それを一つその点を明らかにお願いしたいと思う。
  158. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) これは予算というものは、初めから不生産的なものに使うべきものじやないと思います。不生産的という言葉にはいろんなものがあるか弔知れませんが、御審議は経済再建費として御審議願つておるのであります。これはほかのほうへ使うのか。これは予算に書いてある通りに使うのでございまするから、御心配は要らないと思います
  159. 永井純一郎

    永井純一郎君 そういう意味で生産、不生産を言つておるのではないのであります。私が言うのは再軍備のようなものであるとか、或いはそういつた関係の、そういう意味の不生産的なものに使うためにリザーブしておるのではないかということを国民に明らかにここでしたらどうか、そういうことはなければないで結構であります。
  160. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 再軍備なんかは今吉出総理言つておられますように、我々は只今のところ考えていないと、こういうのでございますから、これからでも再軍備にこの金を使おうということはあり得ないと思います。
  161. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは時間の関係もありまするから、私は次に農林大臣に……、農林省の関係に移りたいと思います。この食糧増産関係についてでありまするが、今度の予算で大体政府がとつておる方針というのは非常にまあいろいろな政策について消極的であると思うのでありまするが、ただ一つだけまあ宣伝をしておるのは二十六年度予算の中で宣伝をしておるのは、この食糧増産は積極的にやるのだということを言うておられるのであります。これは廣川さんが御就任以来一割増産等を言われまして、まあ力を入れておられるのだと思うのでありまするが、この食糧増産では一枚看板の積極政策である食糧増産をするのに、どういう方法でやろうとしておるかということを検討して見ますると、まあこれは大体二通り考えられると思うのでありまするが、価格政策によつて生産を……、食糧の生産を増大させようという行き方が一つあると思うのでありまするが、もう一つは国が直接生産に資本を投下いたしまして生産の増大を図ろう、大きく言えばこの二つあろうと私は思いますが、政府は明らかに前者の価格政策によつて先ほどから大蔵大臣、安本長官と議論をしましたが、大体言つて、価格政策によつて生産の増強を図ろうとしておらないと、少くとも農民はそうとつておらないということは事実であります。そこで後者のほうの国の予算でやろうということに、財政支出を相当してやろうということになろうと思いますが、ところがどうもそれが非常に不十分であるように考えます。で、これは公共事業費とそれから農林漁業資金融通特別会計と、それから一般のこの増産の経費、この大体三通りで増産をやろうとしておられると思うのでありまするが、先ずそれでは公共事業費について検討して見ますと、大体農業関係の公共事業費が百二十億出ております。で、これは前年度より或る程度殖えておりますが、今日の物価の値上りを見て、これは予算全体に通じるものと思いまするが、恐らく殆んどむしろマイナスになつてしまうという状態であろうと思います。実際この農林省が、一割増産を廣川農相が唱えて、そしてこれを具体的に一つ実施しようということで計画した当時は、公共事業費だけで七百五十億ないと年々五、六百万石くらいずつの増産をして行くことが不可能だという数字が出ておつたようでありまするが、それが僅かに一般公共事業費では百二十億そこそこであるということになつておるのであります。尤もその他の普及事業でありまするとか、優良種苗の対策でありまするとか何とかいうこと、そういうようなものは殖やしておりまするが、公共事業費では恐らく当時でもこれだけのものでは、所期の目的は達せられないことは、これはもう議論をせなくてももう明らかなところであります。で先ほども安定本部長官にも言つたのでありますが、公共事業費で、まあ佐米価政策ではないと言われますが、まあそのことはそのこととして、公共事業費のほうでは大いに殖やして行くのだということを言われておりまするけれども、公共事業費のほうを見てみましても、実際これは二十一年から二十六年までを比較して見ても、だんだん減つて来ておるのであります。公共事業費の中における農業費の歩合というものは四〇%も二十一年、二十二年度においてあつたものが、だんだん減つて二〇%、一八・九%、二十六年度はやはり二〇%ぐらいにしかなりません。これらはやはり財政支出を農業のほうに余計やるのだ、米価のほうで農民が満足して、そうして増産意欲を刺戟してやるということは、なかなかそれだけの米価はきめ得ないから、財政支出で以てやるということが考えられまするが、その財政支出の中心をなす公共事業費でも、実際は年々減つているというような実情にあつて、食糧増産だけを非常に積極的にやるのだ、国内生産力の総体の中で、食糧だとか電力、特に食糧には力を入れるのだと言いながら、殆んど中途半端なものになつてしまつておるようにとれるのであります。これで廣川農相は本当にこれは本年二十六年度中に五百万石でありましたか知りませんが、増産できるというふうに思つておられるのかどうか、又実際所期通りの増産をするために、どのくらい公共事業費に使わなければならんと思つておられるのか、先ずその点をお伺いしたいと思います。
  162. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) 食糧増産について価格の面と、その他国費投入の点についてのお話でありますが、私どもといたしましても、公共事業費にたくさん組入れたいことは十分でありますが、現下の国内の経済情勢から行きましては、本年度予算においてはあのような額をやるより仕方がなかつたのであります。併し事業分量においては負担費の区別その他によつて、私は決して少くなつていないと思うのでありまするが、それから又その他に長期資金等も入れておりまするので、決して昨年度より少いとは私は考えていないのであります。又増産のことについてその他の面でありますが、軍に土地改良、公共事業費のみでは行きませんので、その他の種子の改良、或いは病虫害駆除その他の点も十分考慮いたしまして、目的を達成するように努力いたしたい、こう考えております。
  163. 永井純一郎

    永井純一郎君 そのお気持は勿論わかるのでありまするが、実際に最も政府が、これは自立経済計画の中でも、大きく食糧を取上げておるし、政府一つの最も積極的な政策の一つだというのに、公共事業費も実際は殖えておらない。増産を達しようとするのに公共事業費と、それから農林漁業資金特別会計と、それからその他の病虫害とか何とかの対策の一般の増産経費、この三つでおやりになろうとしておられるわけでありますが、その公共事業費も、先ほど年度比較も申上げましたように殖えておらない。又特別会計によるところのものも、これは資金を借りるのでありますから、そのことによつて農民が、自分が資金を借りて投資して、自分の危險負担でやつて行くだけの今日気持が農民にあるかというと、これはなかなかないわけです。と申上げまするのは、助成がついておればやるけれども、ただ資金だけをこういう特別会計のもので、低利で長期のものではありますが、借りてまでやるというところまで農民をこの政策は刺戟しない。こういう程度のものであるように私は考えるのであります。従つて公共事業費にいたしましても、この特別会計にいたしましても、非常に中途半端なものになつておる。私はどうせこの予算は、一番最後に結論として申上げたいと思うのでありまするが、このままでいかんことはわかつておる、今日もうすでにわかつておりますから、その際本当に一つの食糧増産のためには、大蔵、農林、安本の各大臣が、もう少し実際にできるような計画を具体的にして、それに必要な資金を注ぎ込むというようなふうにしなければいけないと思うのでありますが、それを一つここでどういうお考えか、いい加減にやればいいのだと思つておられるのかどうか、一つつておきたいと思うのであります。
  164. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) あとの結論のお話でありますが、いい加減にやるという考えは絶対にございませんので、機会あるごとに、国家資本の投下でき得るような措置を講じたいと思つております。
  165. 永井純一郎

    永井純一郎君 私は実は、この予算ではできないと思うから申上げているのでありまするが、これはまあできる、できない、やるつもりなんだというだけの議論になつてしまうので、私の持ち時間がだんだんなくなりますから私は次に移りますが、もう一つ農村で非常に関心を持つておりますることがありまするので、この点について農林大臣の御所見を伺つておきたい、こう思います。それは、講和後自主権が我が国に回復されました場合に政府が、農民にとりましては根本的な問題でありますところの農地改革を、御破算にしてしまうのではないかという心配を非常にいたしております。というのは、今日でさへ今日の政府は、この土地改革の緩和策をポ政令でいたしたのであります。価格の問題でありますとか、或いは強制譲渡の形を譲渡の関係にしたというようなことで、緩和をして参る一而も国会にこういう重大なることを諮らないでポ政令でやつてしまつた。非常に安易な方法をとり、安易な考えを、この耕作農民にとつて最も基本的な農地改革の問題を考えているように受け取れるので、農民は講和後自主権が回復された場合には、殆んどこれは自作農関係の調整法、そのものさえなくしてしまうのじやないかという危惧の念を持つているのでありまするが、この点を農林大臣から御所見を伺つておきたいと思うのであります。
  166. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) 只今お話の、講和後に自主権が回復した場合にあなたの御指摘のようなことはいたさない考えでおるのであります。継続しなければならんものは継続して行く考えでおるのであります。
  167. 永井純一郎

    永井純一郎君 私の持ち時間は何分までですか。
  168. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 三時四十分です。
  169. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは林業の関係についてお伺いをしたいと思います。昨今一番物資需給が逼迫しているのは、木材であると考えられるのであります。この数字を見ましても、一番木材が逼迫いたしております。で、安定本部の自立経済計画におきまして、この逼迫しておりまするところの木材についての輸入計画は、木材については何ら一つもないようでありまするが、二十六年度の木材の需結の数字を調べて見ますると、どんなに少くとも安本等で調べている数字を見ても用材の需要が九千二、三百万石は要るということになつておるのであります。これを極力縮圧してこの程度になると思うのでありますが、まあかなり下廻つて八千万石程度は是非とも要ると見ても、これに対して農林省が言うところの適正な伐採量は、せいぜい五千二、二百万石だ、こういつております。そうするとこの需給の差というものが二千数百万石という大きな差が出ております。これはこの状態をこのまま置いておけば、結局過伐になるということになつて来るのでありますが、ところがこれだけの過伐になる虞れがあるのに、昨今の状態としてパルプ会社でありまするとか、或いはその他の纎維関係の会社でありまするとか、昨今非常に山元で買付けの競争をやつておるのであります。むしろ買い占めをどんどんどんどんやつておりまして、御承知通りパルプ材或いは建設用材等につきましても、倍或いは二倍半三倍近くに去年の六、七月に比べてなつて来ておるのであります。それはそれだけ高く買つてもなお且つ今日間に合う。而もいわゆる経済林だけから伐り出さなくとも、相当離れた奧地のほうから伐り出してもなお採算が合うというような状態にありまして、ますます過伐の傾向が実際状態として現われて今日来ております。ところが政府のやることを見ておりますとちつともこれに手を打とうとしておらないように見えるのであります。聞くところによりますと、新らしい森林法を用意しておるということでありまするが、この国会の会期ももうそんなに長くないのに、そういう我が国の最も重要なこの森林関係の基本的な法律をまだ出して来ない。一方、木材なり、山のあらゆる状態は非常な荒れ方が予想されておるにもかかわらず、手を拱いておるというようなふうに見られるのでありまするが、私は新らしく作る森林法というものは相当国家管理的な性格を持つた相当強い性格を持つた法律でないと、到底今日の山を治めるという目的を達する法律にはならん、こう思つておるのでありまするが、なぜその森林法を一向に出して来ないのか。何かどういうところに障碍があるのか、大蔵省や何かといろいろ相談をしておられることと思うが、どういうところが一体この森林法を提案する障碍となつておるのか、この点を私は伺いたいのであります。
  170. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) 日本産業において、森林を対象とするり産業のほうが非常に勃興いたしておりまして、材木の消費、その他において将来危惧されるのじやないかというお話でありますが、これについては我々も重大関心を持つておるのであります。この消費規制と申しましようか、消費面の規制についてはいろいろ案を練つておりますが、第一に薪炭等に対しましても日本にたくさん余つておるところの亜炭を使うなり、或いは又パルプ業者に対しましても、今までのような品目のみではなく、鋸屑なり、或いは又その他のものを使うなりいたしまして極力この方面は是正したいと考えておるのであります。それから又それと相呼応いたしまして旧地林、開発等につきましても十分力を入れて行きたい、こう思つております。それから林森法をこの大事なときにどうして出さないのかというお話でありますが、これは極く最近に出す予定であります。一番今問題となつて研究いたしておるのは協同組合を分離する問題であります。これも日ならずして解決いたしまして、極く最近に提出いたしまして御審議を願うことになると思います。
  171. 永井純一郎

    永井純一郎君 これは通産大臣か、或いは経済安定本部長官かどちらでもいいと思いまするが、まあこの法律は是非出してもらつてこういう事態に備えて行くということにしなければならないと思いまするが、同時に私は先ほど安定本部長官が将来の統制をどうするかということについて、ちよつと質問に答えて触れておられましたが、特に需給のひどいものについてはやるというような御趣旨のようにとれる。木材については今申上げましたように非常な過伐になる虞れが今日実情として出ておりまするが、木材の統制を近くやらなけりや私はならないのじやないかというふうに、状態を見ておりまするが、安定本部長官のお考えを承わりたいのであります。それと木材の輸入はやらないという……、この計画を見ると入つていないように思うのでありまするが、その点と二つ安本長官からお伺りいいたします。
  172. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 木材の問題については、只今すぐに統制をするというようなことを考えておりません。それはもう御承知のように木材に関しては、非常に多種多様、規格等が非常に多くて、これを統制をして、曾つて非常に弊害こそあれ、非常に実績がなかつたことはもう経験済みであります。そういう点から、只今そういうことを考えてはおりませんが、ただお話のようにかなり内地の山も過伐されておる上に、現在の状況から言うと、生産、過伐……、伐採量と生産との間に数量的マッチがありません。併しそれだからといつて急に可能伐採量の数字まで落すということも、これは産業の上から考えて不適当でありますので、順次過伐量を減殺させるというような方法をとりつ、一面人絹、スフ等の関係において使われんとする方法については、或る程度これは考慮を加える必要があるのじやなかろうか。それについてはやはり綿の問題を解決することが必要だ。纎維原料としての綿の確保がしつかりできますれば、おのずから内需関係においてはそれが埋合せがつくだろうし、同時に一部の輸出に関しましても、その点の制約ができることに見込みを立てております。一面に纎維原料の綿の確保に努め、輸入を確保するということと同時に、余りに値がよく売れるからといつて……日本における内地の山の伐採量を考えつつ、これ以上の拡大生産を考慮する余地がある、かように考えております。輸入の木材をやつたらということでありますが、これは要するにバルキーなものであり、且つかなり価格の高いものであります。その面におきましては、おのずから必要な他の物資との関係もありまするので、    〔理事藤野繁雄君退席、委員長着席〕 非常な問題になりますから、政府としては輸入は、木材そのものについての輸入は考慮に入れなかつたわけであります。
  173. 永井純一郎

    永井純一郎君 次に移りまして、漁業の問題を一つだけ伺いたいと思います。昨今御承知通り、この沿岸漁業は非常に不振でありまして、特に沿岸の零細な漁民のかたがたは生活にさえ困窮を来たすというような状態になつておりまして、生活保護法によるところの保護をしてくれというような申出が非常に殖えておるというような実情にあるのでありまするが、ところが一面沿岸漁業は非常にたくさんの漁村がある。濫獲は相当いたしておりまするし、魚族がだんだん減つて来ておるという実情は、私どももわかるのであります。そこで今政府がこういう沿岸漁業の整理調整をやろうというようなことでやつておられるようでありまするが、なおこのことについては総司令部からの覚書か何かも出ておつたようでありまするが、そこでこの沿岸漁業の整理をやるということに当りましてやはり一番問題になつて来るのがこの小型底曳類似漁業、この中には国なり、県なりの正式の許可を受けないで、漁民の人がまあ闇と言いまするかでやつておる。類似漁業の中にはそういうものもあるわけであります。そこでこの整理をするときに補償の問題が今盛んに起つて来ておりまして関係の漁民が続々水産庁に始終陳情に出掛けておられるという実情にあるのでありまするが、大体政府の今考えておるところのこの整理の方針を見てみますると、許可の正式にあるようなものに対しては補償金を出すけれども、そうでないものには、單にこの資金の融通というのでありますか、そういうことで済まそうというような方向のように伺つておるのでありまするが、これはなかなかそうういうことだけでは済まされない問題があるわけであります。というのは戰時中並びに戰後におきましても、ずつと昨今まで、政府並びに府県はそのいう闇のものにも油の配給をやつて、漁民の人に配給をしてそうして食糧に非常常に困つたためにどんどん獲らせた、獲つてくれということで割当をしたわけであります。そうしてこういう類似……、本当の機船底曳網漁業でないところの、今の類似漁業の漁業者の人々のほうが、実績を見ると非常にたくさんの供出をしてそうして補償金を今もらう対象になつておるような大きな底曳機船業者というものより、闇のほうがむしろ非常に多かつたというようなことがあつたわけであります。そこでここらは一つよく政府でお考えになつてただ、ちよつと転廃業するための資金を融通するということだけでは、恐らくこの人たちが失業者になつてしまつて生活に困るということは明らかでありまするので、転廃業には特に念入りにしてこの沿岸漁民の転廃業を完全にしてやるという方策を是非取らないと、この沿岸の漁民の人たちが生活に全く困窮してしまうという状態が来ると思います。そこで更にもう一歩進めて、こういう転廃業をしなければならないような漁民のかたがたの集りを、更に遠洋にまで持つて行つて、漁業ができるようなふうに、更に大きな資金の面倒を見てやる、転廃業をやるだけで放つぽり出すということだけでなしに、遠洋に更に出て行く、殊にそういう資金の特別の面倒を見るというようなことを何かしないと、この人たちが或いは農業をやるとか、或いは小さな小商売をやるといつてもとてもできないのでありますから、その点をどの程度にやるつもりで、今進みになつておるのか、お尋ねいたしたいと思います。
  174. 廣川弘禪

    国務大臣(廣川弘禪君) 沿岸漁業のお話でありますが、沿岸漁業が非常に現在苦境に立つておることは御指摘の通りであります。それにつけまして沿岸の魚族保存という声が非常に多く出て参つております。これについては司令部から示唆のあつたことも事実でありますし、その問題につきましては閣議の了解を得まして閣議で決定いたして、着々手を打つて行きたいと思いますが、特に御指摘の類似漁業でありますが、これについては或る方法を講じたいと思つて月下検討中であります。大体融資の面を考えておるのでありますが、それのみでは不満足であるというお尋ねでございますが、これについても、なお又愼重に我々は検討をいたしたいと思つております。
  175. 永井純一郎

    永井純一郎君 あと安定本部長官がおられまするから、安定本部長官に御質問をいたしたいのでありまするが、この自立経済計画を作られたのでありまするが、これはまだ恐らく閣議決定になつておるのか、なつておらないのか、何か大蔵大臣はそんなことを言つて、閣議決定になつておらないのだから、予算的の措置はまだ一つもやらないとか、何とかという答弁衆議院かであつたそうでありますが、その問題もあるのでありまするし、私この安定本部の作つた自立経済計画を見てみまして考えることは、これはまあ計画という字は付けてありまするが、これは單なる一つの調査書じやないので、いろいろな目標を揚げて、特に食糧、電力、船舶といつたようなものに中心を置いておるということはよくわかるのでありまするが、單なる目標を掲げておるという程度のものに過ぎないのではないか。これで本当にやつて行くという計画であるのかどうか、私にはちよつと疑わしいと思うのであります。と申しまするのは、この自立経済計画というものを作つておりまするが、これをどういうふうに実施して行くか、その実施の方策、それから実施主体、そういうものは何らあの中に計画がないのであります。例えば食糧を一つ取上げて見ますると、千何百万石か増産するのだ、二十八年までにやるのだというようなことが、一応目標として数字が掲げてありまするが、一方今日政府がやつておるところの食糧の生産計画というものはないのでありまして、だんだん外して行つておる。そうしてその他の統制もどんどん外して行く方向に今行つておる。一面では自立計画を作つてただ増産目標だけを作つたということになると、この増産目標を実際に達成する実施計画は一体誰が立てるのか。つまり中央の計画があるのだから、これを実施するための地方計画というものが具体的にずつと生産計画がある、その裏付にこういうことをするのだ、こういうふうにするのだということでなければ、私は計画にならないのじやないかと思う。例えば電力でありますとか、船舶にいたしましても、誰があの計画目標をどういうふうにして達成するかということは一つも出ておらないのであります。例えば船舶ならば政府のそういう計画に応じて、各企業体が更に具体的な案に則つた計画というものを立てて行くのかどうか、或いはただ政府はあの目標を一応ただ立てておるだけであつて、そういう企業体等に資金の融通だとか、斡旋ということだけをするという程度のものであるのかどうかを、私先ずこれは安定本部長官にお伺いしたいと思います。
  176. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 永井さん、よくあの発表されたやつがどこから出たかということを御承知置き頂きたいと思います。先ず自立審議会によつてこれが審議答申されたのであります。政府といたしましては、その審議会の答申についても、大体の方向としてはこれでよかろうが、これを具体的に取りまとめ、推進するについては、更に具体的に各関係省と相談いたしまして、刻々これを実行に移するということになつております。まだあれを政府はそのままやるということはどこでも言つておりませんが、形式的でありますが、少くとも自立審議会における一つの審議答申を受けた段階になつております。併し政府としては、今日の日本の経済を復興させる場合に当つていつも言われますように、各省、各産業、各別々にばらばらに、片寄つたちんばになつた計画を進められるということは非常に迷惑な話でありまして、そこに貧乏になつた国なら国として、その許される範囲内において、総合的な形において、而も調整ある形に進めて復興計疑を進めて行かなければ、これは殷鑑遠からず、戰争中におきましての陸海軍の争いによつて殆んど何もかも勝手な要求をして、ちんばな計画が進められたために、結局虻蜂取らずになつたということはよくわかつておるはずであります。敗戰国日本の再建には一つの統一ある総合目標が必要であるということは、これはもう何人も認めるところであります。而してその目標を立てるということは絶対に必要であります。その目標を立てましたが、あれにも断り書がありますように、これの実施に当つてはいろいろな條件がついておりますから、又国際情勢の変転、経済情勢の変転に応じて伸び縮みのあることは当然でありますし、或いはうまく條件が整えばあの計画以上に推進をいたしましようし、或る場合には具体的の問題に当つて條件が許されればこれが縮められるということがあると私は思います。一つの目標を定めるということが先ず第一に必要であるとして政府はああいう審議会の答申をやつたわけであります。具体的にすることは更に政府において実施に移す際において、それぞれの担当の省が推進するということであります。
  177. 永井純一郎

    永井純一郎君 それではもう一つ最も具体的なことは、これから又各省と相談してやるし、実施の方策等におきましてもこれからというお話がありましたが、もう一つ不審な点は、この中にこの計画と一応の方向ができておるのでありまするから、この計画の中でいわゆる中小企業者はどういうふうにこの計画と結びついて行くのかということは何らあの中に謳つてもなければ、ないのでありまするが、果してあの計画の中で中小企業はどういうふうに結び付いて行くのか、そうして振興して行くのか、その方向だけでも構想があるのならばお示しを願いたいと思います。
  178. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 総合計画の中におきまして中小企業ということについての特別なものは出ておらないということは、お話通りであります。併しあの審議会の答申の中の柱は、一つは輸出入における振興を図つて、貿易による必需物資の生産増強、それからバランスを合せるということが一つの形になつておる。又一つ国土総合開発、もう一つは食糧の自給度向上ということになつておる。その第一の貿易の振興ということに関連いたして日本の貿易産業といいますか、多くのものが中小企業が中心であること、御承知通りであります。今日大企業とか中小企業とか分けるということは、それは学問的にクラシフアイされることは結構でありますが、私どもは勿論日本産業復興に対する中心は大部分中小企業だと思う。従つて貿易振興に関して生産指数をどこまで上げる、国内の産業をどこまで上げねばならんかという一つの目標を示したのでありますが、その目標の下に個々の産業に対する計画が今後進められると思うのであります。その場合特に取出して中小企業とは言わなくても、多くのものが中核機関は中小企業であると私は心得ております。
  179. 永井純一郎

    永井純一郎君 そこでどういうふうに結び付くかくらいの構想がなければ私はおかしいと思います。今の御答弁ではさつぱりわからないのでありますが、中小企業というものがあの計画の中でどういうふうに結び付くかということを私は聞いておるのでありまして、中に書いてないのは止むを得ないとして、どういうふうに結び付くのかということが一点、それから産業別の人口配分計画というものが一応あるのでありまするが、この中で一番問題は、農業者の人口というものは二十八年度に至るも一つも減らないのであります。そういうことで果して日本の農業の振興ができるのか。これは根本的な問題であろうと思いますから、人口配分計画における農業の部分、それから中小企業計画は特別取立てて書いてはないというお話でありまするけれども、あの計画の中での中小企業の結び付き工合というものの一応何か構想か、目標でも私はありそうなものだと、こう思うのでありますが、その点を一つお伺いいたしたい。
  180. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) これは私は言葉で表わすことは非常にむずかしいと思いますが私がさつき申したのは、貿易産業に関する三分の二以上というものは、大体中小企業なんだ。貿易を振興するについて或いは陶業、或いは染色産業とかいろいろな問題につきましても、輸出される品目の企業というものは、多くの場合中小企業なんだ。そこへ中心を入れて生産指数を上げようとすることは特にあの中に謳つてある通り。而してそれを上げるためについて一面におきましては、現在における設備の改善、合理化、能率化というような問題は当然やらなきやならん問題であり、中小企業に対する金融というものは、資金計画の中にこれから考えて進められるわけであります。特にまとめてなくても、すでに発足した中小企業に対する金融機関の問題、例えばこの前の中小企業信用保險基金法案というようなものは、すでにそれらのことを考え併せつ金融の面を考えておる。私は今日の日本の現状において中小企業というものの育成が絶対必要であり、それは日本の貿易産業の中核をなすものである。而して貿易というものを振興させるについては、その面を中心に考えなくちやならんということで、あとは具体的に関係庁で推進するということの一つの目標を立ててあると私は考えておるのであります。  もう一つ人口配分の問題でありますが、あなたはどの統計を御覧になつたか知らんが、大体一応の目標は二十八年度においては人口総数の中に占むる農業者の割合は減つて来ております。私は、戰後の仮に昭和十年を考えてみますか、その当時大体人口構成の中に占むる農業の割合は四八%だつたと思う。そのうちいろいろな関係から五一、五三という恰好になつておる。これは異常な体系であります。やはり日本産業の構成といいますかが、戰時中及び戰後に鉱工業企業関係が非常に振興せず、萎縮しておりました。そのほうで吸收力がなく、すべてが農村に帰つたと思う。併し日本の農村における生産力というものは、本計画における農村開発の上から成る程度の吸收はできるでありましようが外国から帰つて来た者をすべて農村で吸收することは私はできんと思う。やはり鉱工業のほうにもつて行かなければならないのでありますが、幸いにして最近の状況は、鉱工業の占むる割合は、戰争直後、二十二年当時はたしか一七・八%だつた。二十八年頃には今の計画にいたしましても二〇%前後に上る関係に立つ。私はやはり、抽象的なんで恐縮しますが、確たる数字は持ち合せんにいたしましても、やはり農業関係は四五%前後或いは四〇%前後というものに農村人口構成を置きつつ、他の産業のほうへこれをもつて行くことが一つの目安でなくもやならん、かように考えて、あの計画といたしましても減つて来ておりますから、さように御了承願います。
  181. 永井純一郎

    永井純一郎君 減つて来ておると言われますが、それはあなたが御承知ないからそういうことをおつしやるので、実はあれは滅つても殖えてもおらない。同じ数字になつておる。そのことは相対的に少しも農業人口が減らないということになる。つまり農業経営の立場からは減らないということと同じことになるから、もう少し計画的意図をあの計画の中に入れるべきではないかということなのでありまするが、これはまあ一応これにとめるといたしまして、もう一つ安定本部長官に特におられまするから私はお聞きして置きたいのでありまするが、これはまあ非常に大きな方針であると思いまするが、自立経済計画について、私が今申上げましたように、どうもあの計画の中には、いわゆる経済民主化という方向と逆な方向に行く心配があるのじやないかということを私が結論として言いたいから、申して来たわけでありまするが、終戰以来わが国におきましてはいわゆる経済民主化ということを目標にして来ました。今日までだんだん来ておるのでありまするが、結局私の考えでは、経済民主化が行われて行けば、わが国の経済社会において中心をなすものは、都市におきましては中小企業者或いは多くの株主といいますか、そういうもの、地方におきましては自作農、耕作農というものがわが国における経済社会の中心をなさなきやならん。そういうものを育て育成して行つてわが国の経済の中心にするということが経済民主化である。それに向つて一生懸命にわが国は終戰以来進んで来ておるし、今後も経済政策の大きな方針というものはそういうふうでなきやならんと私は思うのでありまするが、先ほど来資本の蓄積でありまするとか、或いは二十六年度予算のことについて私が大蔵大臣やその他に申上げましたように、どうも逆な方向にうつかりすると、この自立経済計画が行くのじやないかという心配があるが、政府の根本的な経済民主化の線はどうであるのか。その点も安定本部長官から伺つて置きたい、こう思うのが一点と、これは午前中に外交問題と関連するので、総理にもちよつと伺つたのでありまするが、これは安定本部長官が新聞にも談として出ておられましたので、特に質問したいと思いまするが、新聞によりますると 自由国家防衞計画日本が参加する際の経済協力能力の算出をアメリカから求められておるという記事が各紙に出たのであります。このことは、私は結局総理にも申上げた通り米国軍需生産拡張要請に応じて、日本日本産業生産力軍需生産にどんどん向けて行くという方向寒行くことになると思うのであります。ところが一面におきましては、吉田ダレス会談におきまして軍需基地の問題が相当下相談ではあるが、固つておると思えるのであります。そういうことになつて来ると、軍事的にも経済的にも我が国は今や全く準戰時体制入ろうとしておるということになるように国民から見ると思えるが、それを安定本部長官は肯定しておられるのか、そういう方向にどんどん進むことを肯定しておられるのかどうかをお伺いしたいのであります。これは新聞発表になつて、安定本部長官の談として、おしまいのほうに、このことによつて我が国の産業界は活況を呈するであろうということを言つておられまするけれども国民はあの記事を見て、活況通り越して、壊滅するのじやないかという心配さえ国民が多くするのでありまするから、こういつたような準戰時体制に我が国が経済的、軍事的に入つて行くということは、これは国民が今一番望んでおらないことであるのでありまするが、総理の御答弁でははつきりしなかつたのでありまするが、この点を一つそういうことの算出の協力を求められたかどうかという点。それからそういうことに若しなれば我が国が準戰時体制に入つて行くということになるが、それを肯定されるかどうかいうことについて御所見を承わりたいと思う。
  182. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お答えしますが、はつきり申上げますが、政府としてそういう調査なりを求められたことはございません。いろいろ世間のほうで想像したりデマが飛んだりして新聞に書かれておるのでありまして、これは新聞社のかたがおいでになりましてもはつきり申上げます。私どもはそういうことを命を受けたこともなければ、私はそれについて発言をしたことはございません。  それから日本経済民主化についての問題であります。これは私は従来の日本の経済界における形がかなり大きな資本家といいますか、資本力によつて独占せられておつたということのあつたことは、その通りでありましよう。これが戰後において皆民主化されて来たいということについての効果は認めますが、併し民主化ということが、常に寸断し、小さい経済單位を作ることのみが民主化だとは私は考えておらんのであります。およそこれは運営でありましよう。従つて農地改革の結果において自作農創定ということは非常に結構でありまして、これは曾つてからの日本政府の政策である。併しなかなかそれが徹底してできなかつたことができたことは結構でありますが、その結果は零細化された小さな元の小作の形のままで土地を得たというだけであります。これでは実際の農家の経営は安定せず、又日本の必要な食糧の生産の上において必ずしもよい結果は生まないと思う。私はこの自作農化された形態に対して、もう少し農業経営がしつかり安全にできるような方策が今後つぎ足して行われて行かなければ、真の目的は達せない、かように考えております。それらの点については先ほど来農林大臣のお話もありましたが、今後できる限り各種の施策を、足らんところは補つて行きたいと考えております。
  183. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは次に移つて文教関係を文部大臣に質問をしたいと思います。
  184. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 永井君にちよつと御注意申上げますが、文部大臣はちよつと病気のため本日出席しておりません。
  185. 永井純一郎

    永井純一郎君 誰か見えませんか、政務次官か誰か……。
  186. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 政務次官もほかの会議に出ておりまして、まだここに出席しておりません。その問題だけ次に留保されますか。
  187. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは警察関係よ……。
  188. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 警察関係は法務総裁が衆議院委員会に出ておりますので、代りに国警本部長官が来ております。
  189. 永井純一郎

    永井純一郎君 それでは警察法改正についてお尋ねをいたします。これは午前中総理に根本の原則について政府の所見を質しておいたのでありまするが、警察法改正法案が本国会に提案されるようでありまするが、私が先ず総理に質した根本の問題を一応申上げて置きまするが、それは警察制度如何は我が国の民主化に根本的なつながりを持つ重要なものであるから、今日警察法が持つておるところの本質、性格を変えるような方向に行くところの改正であつてはならないということを申上げたのであります。それはどういうことかというと、地方分権地方自治の精神に常に則つておらなければならないということ、従つて民主的イデオローギーに立脚した民主的警察でいつもなければならんという、この二つの原則、つまり中央集権化されてはならない、国家警察的なものになつてはならないということであります。このことは何故我々がこれに非常に注意をするかと申上げますると、若し法案が出れば十分に愼重に検討したいと思つておりまするが、そういう警察国家的なな或いは警察権を国家統制の方向にもつて行きますると、多くの勤労大衆の最低の生活権の要求或いはそれに基く闘争等が強権によつて弾圧を受けたり、圧迫を受けたりする歴史を持つておりまするし、そういうことでは勤労大衆に折角ここまで来た民主国家の中で生活をしてもらうことが逆行して行くということになりまするので、そういうことではならないということを主張するわけであります。これについては、私が今申上げましたような根本の原則については、総理もその通りだというふうに言つて答弁をされたのでありまするが、従つてここでお聞きしたいのは、改正しようというところの内容は一体どういう点を改正しようとしておるのか、それを先ず伺いたいと思うのであります。
  190. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 法務総裁は他の委員会に御出席でありまするので、代りまして私からお答えいたしたいと思います。警察法改正問題は、政府といたしましてはまだ決定はいたしておらないのであります。御承知通り新聞等において相当論じられておるのでありますが、我々政府の事務部局を担当いたしております者といたしましていろいろ考えておる点があるのでありまして、それらの点が新聞に出ておるわけであります。従いましてさように政府案として決定をされますか、まだその段階には至つておりません。併しながら法務総裁の命を受けまして我々検討をいたしておりまする案の内容と申しまするのは、只今永井委員のお述べになりました通り、現在の民主的警察の性格を変更するという意図は毛頭考えておらないのであります。主要な改正点として我々検討いたしておりまする問題は、自治体警察が今日人口が当初設けられましたときよりも相当異動を来しております。この場合に自治体警察の警察官の定員をどういうように調整をするかという問題が一点、この点は警察法制定に関する元帥の手紙によりましても、自治体が警察の費用をみずから支弁するようになつたときには、その定員は自治体側みずからがきめるべきものであるというように書かれてありまするし、極めて至当な事柄であると考えまするので、自治体警察の警察官の定員は、自治体がその地方の実情によつて必要とするところによつて定める。従つて国の法律その他によりましてこの制限をしない。総数として今日九万五千という制限を設けておりますが、これも撤廃したらどうであるか、かように考えておるのであります。  次は中小自治体警察の存廃の問題でございますが、中小自治体警察につきましては、かねてからいろいろの論議がございます。財政負担の点、或いは警察能率の点、その他いろいろと論議の点があるのであります。只今考えておりまする点は、自治体、中小の自治体警察町村の自治体警察は町村の意思により、或いは町村の住民投票というような方法によつて存廃を決定することが妥当ではなからうかというように考えて研究をいたしておるのであります。  第三番目の点は、今日の警察法は自治体の区域内におきまする警察活動というものは一切その自治体の自治警察に委任をしてあるというような形になつておるのであります。これが何らかの理由によりまして当然捜査すべき事件、或いは当然鎮圧すべき事件の捜査、或いは鎮圧、或いは予防をしない。こういう場合にその当該の住民とされまして関心を持たない。むしろ捜査、鎮圧がされないほうがよろしい、こう望んでおられましても、国全体として或いはもう少し広い範囲で考えて見た場合に、それで放置して置いてよろしいかどうかという問題があるのであります。この点は今日の警察法の盲点ではなかろうかと考えておるのであります。この場合に自治体警察に代つてどういう方法で誰がやるか、とにかくそういつた場合にこれは放置をして置けない。これをどう解決するかというのが一点でございます。これに関しましては新聞等において伝えられておりまするのは、国家的な犯罪につきまして、当該自治体警察が当然行うべき捜査、或いは予防、鎮圧をやらないという合場に、国家地方警察が代つてこれを行うというような点を考えておるのであります。併しながらこれにつきましては国家的犯罪というものを限定をすることが果して妥当であるかどうか。いやしくも法律によつて定められた事柄を行わないということではそれは困るではないか。犯罪に国家的犯罪とそうでない犯罪との区別がないという議論もありますし、限定の仕方も非常にむずかしいという点がございます。  それから又国家地方警察をしてその事件を処理せしめますといたしましても、只今永井委員の述べられました通り、国家地方警察がむやみやたらに出て行くというようなことであつては、これは却つて警察法自身の精神を紊る場合も起り得るかも知れない。そこに何らかの調整機関といいますか、そういつたものが必要であろうという点を研究をいたしておるのであります。只今考え方といたしましては、さような場合に民主的に選ばれた、そうして又地方公共団体としてはやはり秩序の維持というものが、府県市町村にも適用をする潜在的な権限があるわけでありますから、知事の要求によりまして、さような場合に国家地方警察をしてその事件を処理せしめるというような方法が妥当ではなかろうかというように考えておるような次第であります。 なお国家地方警察の定員の問題もあるわけでありまするが、これらもまだ政府といたしましては、増員をするかしないか、増員をするとしてどれだけにするかということも、何ら決定をいたしておりません。警察当局といたしましては増員を要望をいたしておるのでございます。  なお国家地方警察が自治体警察に応援に出かけました場合に、又国家地方警察の要請でAの自治体警察がBの自治体警察に応援に出かけました場合、この場合の費用の負担につきましては、現在の法律では非常に不明確でありまして、法律解釈によりますると、むしろ応援要請を受けた自治体の負担というふうにも解釈ができるのであります。併しながら国家地方警察は自治体警察の力の及ばない場合に応援をするというそういう性格を持つ、そういう立て方になつておるのでありまするから、この場合にも費用の負担は国庫で負担をするのが適当ではなかろうか、かような点について只今いろいろと研究審議をいたしておる次第であります。
  191. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 時間が来ましたから一つ最後に……。
  192. 永井純一郎

    永井純一郎君 もう一つ……。今国警長官から内容の大体を伺つたのでありますが、これはまあ内容も少し私どものほうとしても検討をしたいのでありますが、今伺つたことから判断しますると、大体改正する捜所のなかで重要な事柄は国警の捜査権を拡張するという点が一つであるように思います。それからもう一つはこの中小自治体警察をその住民の意思によつて廃止するということになると思うのでありまするが、これはもうこの三点が私は非常に重要問題である。同時に先ほど申上げました警察法の根本精神に逆行する慮れが、この二つのなかには含んでおるということを考えるのであります。御承知のようにこの地方自治体警察はそこの住民の信託によつて自治的にそこの治安を守り、生活を守るという自治的にやろうというところに根本の精神があるのでありまするから、如何なる場合といえども国家警察の力がそのなかに入り込んで来るという方向は根本の精神には逆行しておる。その運用をまかり間違うときには、今まで日本の歴史が持つておるような非常にまずい権力の行使をする場合がしばしば出て来ることの心配がそこに出て来るのであります。そこで捜査権の拡張といつたような、或いは国家的犯罪と言われましたが、こういう問題については成るほど私も自治警で足りないところがあれば工夫を凝らさなければならんと思いますが、これは別途の方法、別途の機関でもつてそういうものはやつたらいいのであつて、自治体警察に国家警察の力が及んで行くというようなことでない方向でそれを私は解決する方法があると思うので、こういう内容については我々としてはどうも賛成しがたに点があるというように思うのでありまするが、今申されました国家的犯罪というのは一体どういうものであるか、或いは内乱でありまするとか、特別の、特殊犯罪、そういつたものを意味するように思いまするが、その内容をお知らせ願いたいと思うのであります。  それからもう一つのこの中小自治体を廃止する、住民の意思によつて廃止するという件でありまするが、これは若しこういうことを法律でした場合には、当然今日財政上非常に困難を自治体がしておることはこの予算を審議するに当つても一番これが文教関係等でも問題になつて来るのでありますが、いろいろな中小の自治体が恐らく財政の困難なために、自治体警察を廃止するということになつて、そうすると実際問題として大部分が国家警察によつて、国内の警察が国家警察になつてしまうというようなことにもつて行こうとするために、こういう内容も作つておるのじやないかということさえ心配になるわけであります。これは全く先ほど申上げました私が言う今日の警察法の根本精神を侵すものである、民主国家の行き方ではない。こういうふうに考えるものでありますから、こういう問題もそういう法律の内容をこれに盛らないで、そういう改正方向にもつて行かないで地方財政の財政の問題として処理して、そうしてむしろこの自治体警察を育成して、そうして民主的な警察制度を打立てるという方向政府としてはもつて行かなければならんのでありますから、こういう法律の内容警察法改正の中に盛るということは、明らかに警察の制度の今の警察法が持つ精神に逆行するということになるように思いますが、その点一つどういうふうにお考えなのかお尋ねいたします。
  193. 斎藤昇

    政府委員(斎藤昇君) 私先ほど御説明いたしました点が不十分でありましたために誤解をお招きしたのではないかと恐れるのでありますが、国警の捜査権の拡張というようなことは毛頭考えておりません。只今説明をいたしました通り、当該自治体警察の区域内で、或る犯罪について何らの措置が行われない、これでは治安の維持上困るというような場合に、知事の要請で国家地方警察に処理をするようにという要求があつた場合に、国家地方警察がそこに出かけて行つて処理するというようにしたらどかということを只今考えておるということを申上げたのであります。従いまして捜査権の拡張でも何でもございません。  それから国家的犯罪というものはこれは非常にきめにくい。犯罪の名称を通常国家的犯罪というものは、こういうものだということが挙げられましても、併しながら犯罪の行われる内容、背後関係というようなものから考えまして、罪名で区別をすることが相当困難であるという点もありまするので、いやしくも知事がどの犯罪であろうと、これでは困るというように認めた場合には、国家地方警察をして処理をせしめるようにいたしたらどうであろうか。従つて犯罪の種別はしないほうがいいのではなかろうかというように、只今考えておるということを申上げたのであります。  町村の自治体警察の存廃の点につきましては、かねがね各地方市町村或いは県会のかたがたその他からも、相当の陳情、要望が出ておるのであります。我々といたしましては、これをそういつた情勢に応える意味から、地方住民の意思によつてこれを置くか置かないかをきめるというのが最も民主的であろう、かように考えておる次第であります。一度廃止をきめましても、又後に持とうではないかということになつた場合には、又置けるようにするのがよろしくはなかろうかとかように考えておるのであります。  中小自治体警察の財源の裏付は平衡交付金を以ていたしておるのでありまするけれども、これをもつと増額してはどうであろうかというお尋ねでございまするが、これはできればそれも私は結構な方法であろうと考えます。併しながらすでに御承知通り従来ならば、二、五名の警察官、或いは四、五名の警察官で十分治安の維持のできましたような小さい町村の自治体警察の場合にありましても、独立した一つの警察を持とうということになりまするためには、やはり相当の人数がどうしても必要ということになるのであります。従つて成るほど国庫から金を頂戴するならば、地元民自身の負担としては軽くなるでありましようけれども、いずれにいたしましても何らかの形における国民の負担であることは間違いがないのであります。そういう点から考えますると、平衡交付金にもおのずから限度があろうかと考えるような次第であります。我々といたしましては、自治体警察の少くなることを特に企図しておるというようなことは全然ないのであります。先ほども申しましたように、自治体警察の定員自身も制限を撤廃をいたし、自治体の必要とする限度で置くということにいたしますれば、或いは警察は置くけれども、警察官の数を少くして、財政状態に合うようにして行くという方法も私は相当とられるであろうと考えます。この際はその自治体警察の要求があれば、国家地方警察が応援に出かけて、事件を処理する途があるわけでありまするから、そういう方法も考えられると思うのであります。それらの方法は自治体に自由に選択をされるような途を開くほうが適当ではなかろうかとかように考える次第であります。
  194. 岩間正男

    岩間正男君 私は先ほど永井委員もちよつと触れられ、又午前中の質問の中でも、吉田総理にもお尋ねいたしたのでありますが、この日米経済協力問題、これがやはり本委員会に、予算委員会における審議の中でやはり我々は当然大きな関心を払わなければならない問題だと、こういうふうに考えておるのであります。  先ず通産大臣にお伺いしますが、ここに安本長官がいられますと、安本長官に先にお伺いしたいと思つたのでありますが、今見えられませんので、取りあえず通産大臣にお伺いして履きますが、先ほどの米国政府から総司令部を通じまして、日本政府に対しまして調査を命ぜられた、こういろ事実があるのでありますか、ないのでありますか。この点先ずお伺いしたいと思うのであります。
  195. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) お答えいたします。さようなことは私は承わつておらんのであります。さよう御了承願います。
  196. 岩間正男

    岩間正男君 閣僚として、承わつておらないということと、あるかないかということは全然それは違うと思うのでありますが、まあ非常に重要なポストになつておられる横尾通産大臣として、当面これは自分の管轄の問題でありますが、あるのでございますか、ないのでございますか、重ねてお伺いいたします。
  197. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 只今承わつていないと申しましたのでありますから、ないのであります。
  198. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと午前中も私は総理に伺いましたところがない、只今も永井委員から安本長官に伺いますとこれもない、こういうことになるのでありますが、これは非常に私は重大な問題だと思います。それは政府の政策と輿論との関係において非常に重要であるということは、そうしますと先ほど周東長官の御返答では多分これは新聞はデマと想像で作つたんじやないかというようなことが言われておる。そうしますとこれは当然朝日新聞、それから今日の毎日新聞なんかはわざわざ社説を掲げております。そうしてその社説の中を見ますというと、「アメリカ日本の工業能力の報告をもとめたのは事実である。約六十種の生産品に対し、現有設備の完全利用を基礎にし、必要な原料、資金を供給するとしたら最高生産はどれほどか、の調査がもとめられた。」はつきり毎日ほどの大新聞が社説で取上げておる。そのほかに我々の、これは関係した一部分を集めましても、例を挙げてみますというと、これは厖大なものになります。二月十六日における朝日新聞、それから二月十八日の毎日新聞、それから二月十九日の日本経済新聞、二月二十二日の産業経済新聞、それから二月二十八日の日本経済新聞、それから二月二十八日の朝日新聞、それから三月三日の夕刊朝日、それから三月一日の日本経済新聞、それから三月三日の日本経済、それから三月七日の日本経済新聞、三月八日の日本経済新聞、それから今日の毎日新聞と、まあ我々の目についた範囲だけでもこれだけのものが而もトップ記事として紙上これを扱つておるのであります。こういう事実に対しましてこれは事実でないとしますと、それに関連した報告が紙上出ておるのでありますが、これはプレスコードの問題が出ると思うのでありますが、政府は当然こういう事態に対しまして取締をなされた事実があるかどうか、伺いたいと思いますが通産大臣如何ですか。
  199. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私先ほどはつきり申上げた通り新聞かたがおいでになつたときにもはつきり申上げた。政府はそういう命令を受けたことも、政府がそういうことを出したこともないことははつきりしております。
  200. 岩間正男

    岩間正男君 従つて私はプレスコードの問題として聞いておるのでありますけれども、こういう事実に対しまして、当然これはプレスコード違反になるのであります。取締をなされた事実がありますかどうかお伺いしておるのであります。
  201. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私どもまだそこまではいたしておりません。
  202. 岩間正男

    岩間正男君 私はそういう取締の事実を聞いたことはございません。従つて取締がされていないとすればこれは実事あるのだ。こういうふうに認定せざるを得ないと思うのでありますが、これだけの重大問題で、而もこれは日本の将来を非常に大きく変える、そうしてこれは世界のやはり輿論に大きな影響を持つ問題であります。こういう問題に対しまして大新聞がトップ記事を掲げておる。こういうことに対して取締をされた事実はない。こういうことでありますならばこれは事実こういうことを認めておられると、こういうふうに解釈せざるを得ないと思うのでありますがその点これはどうですか。周東長官どういう見解を持たれますか。
  203. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 取締りをしなければそれが事実だと認定されるのはあなたの自由でありますが、私どもは実際の下において政府も命令を受けたこともない。又出したこともないので、それに対してまだ責任を負う、或いは取締りをせんならんというところまでまだ考えておりません。
  204. 岩間正男

    岩間正男君 これだけの重大な問題がこういうふうにしていろいろな新聞で取上げられて問題にされ、それから又外国のやはりいろいろな論説なんかの間でも、これは相当大きく問題になつていると思うのであります。今ここで例を一々挙げませんけれども、その事実を政府だけが御存じない。国民はこの問題についていろいろな論議をしている。こういう事実は甚だこれはおかしい、滑稽だと思う。これだけの問題に対してプレス・コード違反の問題でもこれは取締りをしない。これは何ですか、共産党の機関紙に類似した平和の声ですか、あれにちよつぴり何か書くというとすぐにそれに対して彈圧を与える、これは何だ。こういうのはあの公平の観念から見てどうですか。まあそれはいいです。それは胸に思い当るであろうから、それをあなたたちは胸で考えて見ればいいんだ。そういうようなことでは我々は無論了承できません。それから私は伺います。これは国民が少なくとも、これは数百万の読者を持つてそうしてこの問題について皆これは関心を持つている問題として私は伺いたい。事実があつたとか、ないとか狸答弁に対しては我々はもう問題がない。それは政府立場としては当然そういうことを言わざるを得ないというような情勢があつて、言われないであろうというふうに考えられるのでありますけれども、それではやはり私は済まない、こういうふうに思いますからこれから質問を私は展開いたしたいと思いますからこれに対して十分確信のある御答弁を私は頂きたい。まず第一にこの二月十六日の朝日新聞によりますと、大体こういうように、軍需関係の所要原料を輸入し、日本で賃加工する下請を建前とするところの日米経済協力について問題にされておつて、その内容として「一、米国日本において必要な生産を行わせるため原材料日本供給する。この資材は原則として他に流用できない。一、政府はこの生産に当る工場を指定し、さらに原料の輸入から生産の完成、製品の引渡しまで一貫しての統制方式をきめる。一、生産品目としては特殊鋼、非鉄金属(アルミニユームを含む)ボールベアリング、火薬……」いわゆる戰略的な物資、それから「なお賠償指定工場の大幅な動員も認められることになれば、製品の範囲はさらに拡大されると見る向もある、」こういうようなことが報ぜられているのでありますが、こういうような事情に対しまして、これは政府は調査をされておりますかどうかどうですか。この点伺いたいと思います。
  205. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 政府といたしましては常に日本の経済の復興、自立の達成のために必要ある調査はいたしておりますけれども、今お話のような点についてまだ具体的にやつておりません。
  206. 岩間正男

    岩間正男君 更にその調査を命ぜられた内容として、これは三点挙げられているようでありますが、遊休施設はどれだけか。それからそれを稼動するための資材資金、これはどれだけ要るか、更に米国要請に応えるにはどれだけの設備、資本と原料材料を要するか。この三点について調査を命ぜられたということは、これはまあ誰でもが知つているところの事実だとこういうふうに思うのであります。従いましてこれに対しまして遊休施設の内容それから稼動のために要る資材資金の額、更にそれをどのようにして調達するかというような問題、それから更に新たに米国要請に応えて、どれだけのこれは設備、資本、原材料を要するか。こういうような問題について、これは安本では相当の調査を持つておられるとこういうふうに思うのでありますけれども、この点について伺いたいと思います。先ず第一に遊休施設はどれだけあるか、どういうふうにつかんでおられますか。この点伺います。
  207. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 繰返して申しますが、あなたそれは事実だとおつしやるけれども、これは私は一番よく知つておる。アメリカ政府なりこちらにおられるGHQのほうから政府に対してそういうようなものの調査を命じて来たことはございまん。
  208. 岩間正男

    岩間正男君 それはあなたはないとおつしやるのですが、併し私はここで仮にない、あるという問題を離れても、それを聞くところの自由を持つているわけであります。ですから安本としてはこれは当然遊休施設をどれだけ、こういうふうに調査されてこの大体の一つの外貌だけは持つておられると思うのでありますが、その程度でも結構でありますが、これについて伺いたいのであります。
  209. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 今具体的の数字は持ちませんし、まだ積極的に調べておりませんからお答えいたしかねます。
  210. 岩間正男

    岩間正男君 どうもこういう問題についてですね。恐らく準備をされなければ間に合わないと思うのでありますが、それを持つておられない、これを出されないというのはこれは非常に怠慢だと思うのであります。それでは資金資材の面、こういう面は如何でいございますか。
  211. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 遊休設備を全部稼動する必要があるとすれば、それに対して必要な資金の調査もいたしますけれども只今そういうことに対して具体的に進めておりませんから、それに必要な資金のことはまだわかつておりません。
  212. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと大体全然そういうような構想について答えられないというようにこれは決定されておるようでありますが、併しそういうことでは甚だこれは重要な問題だけに問題にならないと思うのであります。そこで更に伺いますが、新らしい経済体制に即応してそうして当然これはアメリカのそういうような要請に応える態勢、そういうものでこれは政府においては緊急経済政策というようなものがこれは考えられておるというふうに思うのでありますが、こういう点は政府としてはその後の情勢に適応した一つ構想を持つておられるのであるかどうであるか、この点伺いたいと思います。
  213. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私どもは激動する国際情勢に処して臨機応変に処置すべきことがあるとすれば、それはやらなければなりませんが、絶えず情勢を見つ研究をいたしておることは事実でありますが、まだ具体的にこれをどうするというところまでお話する時期になつておりません。
  214. 岩間正男

    岩間正男君 どうも根本的にそこのところが食い違つてくるわけでありますが、全部それではなんですか。この新聞記事を否定されるわけですか。私は今挙げたのでありますけれども
  215. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 先ほどから繰返しておりますように、アメリカ政府から日本政府に何もこういうことについての明示も提出の要求もまだありません。
  216. 岩間正男

    岩間正男君 それではこの問題と連関して、ダレス特使と一緒にこれはアメリカの国防動員局生産課長のニブロ氏が来朝された事実があると思うのでありますが、このニブロ氏と政府の間にこういう問題について話合はなかつたのでありますか、その点伺います。
  217. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ございません。
  218. 岩間正男

    岩間正男君 それでは私はどんどん質問を続けるよりほかないわけであります。何でも知らない、こういうようなことで国民をつんぼ桟敷に追込んで行く、こういう決意をされて政治的な現在の段階では何も答えることができないのだ。こういうふうな態勢を取つておられるようでありますが、我々の聞くところによりますと、ニブロ氏がGHQ経済科学局補佐官のモロー氏と一緒になつて軍需工場の調査をやつている。取りあえず日本製鋼の室蘭工場、神戸製鋼の調査、こういうものを調査しており、そうしてその中で大体調査事項としては外資の受入状況、それから第二としてはアメリカの物動計画と日本産業構造をどうマッチさせるか。第三の問題は直接日本業者への直接発注、いわゆる新特需と称せられるものをどうするか、第四の問題としては統制方式、この統制方式について非常に検討して、これは物量統制方式をとる。第五としましては、技術と資材の優先的割当について、こういうような條項でニブロ氏は調査のために参つておられるという情報を我々は得ておるのでありますが、この事実について政府は知つておられるかどうか。そうして又こういうような状態に対しましてはどういうふうに考えておられるか承わりたいと思うのであります。
  219. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 岩間さんは早耳だから御存じだろうと思いますが、この間の新聞で、今何と言われましたか、モロー氏が、ニブロ氏か何か覆面の経済使節ですか、来ておるという話があるが、そういう事実はないと新聞発表されておるのであります。従つて私はそういう人は来ておいでになつておるということも知らんし、交渉を受けたこともございません。
  220. 岩間正男

    岩間正男君 どうも情報機関を持たない政府だと言わざるを得ないのでありまして、何のために厖大な、一体そういうような調査資料とかそういうものをお持ちになつているのであろう。而も安本として非常にそれは怠慢だと思うのです。知らない、知らないでそれは済まないと思う問題でありますが、こういうことは非常に問題だと思います。  それでは次に伺いますが、在日アメリカの商工会議所会頭の名士が、或る某新聞の記者に語つて日本に国防生産方式をやらせるべきだ、これはアメリカの指示によつてやらなければならない。そうしてその場合に最も重要な問題は原材料確保が一番重大な問題である。それで現に八幡では、八幡の日鉄では、現にそういうような方式でやつておる。こういうことが学術会議においても問題になつた。そうして八幡では百億の外資が近く入つて、大量の技術者がアメリカから近くやつて来ることになつておる。こういうことをこの先ほど申しました名士が語られた、こういう事実があるのでありますが、こういう問題と先ほどの政府に対する調査の問題というものはまるで符節を合せるように一致する点があるのでありますけれども、こういう態勢についても、これは長官は御存じないとおつしやるつもりでありますか。
  221. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 商工会議所のかたがそういう意見を発表されたというようなことはあるかも知れませんが、併しアメリカにおいてもいろいろ意見を発表する人があります。アメリカにおいても日本に対するやりかたについて甲論乙駁、いろいろありまして、そういうふうな一人の意見を以てどうこうするというわけには参りません。
  222. 岩間正男

    岩間正男君 二月十八日の毎日新聞によりますと、先ほどの調査の命令に対しまして、関係閣僚、即ち安本、通産、大蔵、こういう人たちを中心として閣議が持たれ、そうして上層部で緊急この作案をやつた。案を作つた。そうして安本としてのトツプ・レベルというものが作られた。そういうことが言われているのでありますが、そういう事実があるかどうか、そのいわゆる最高生産水準なるものは、どのようにこれは安本としては押えられておるのですか。この点を伺いたいと思います。
  223. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 新聞というものは、御承知通りニユースのために、努力されてニユースを集めようとする、併しその中にはときどき思い違いのこともありましよう。全部新聞に言われておることがその通りだというわけではないのであります。私どもは絶えず今日の事態に処するために経済閣僚会議をやりまするけれども、併しそういうことをまだ議しておりません。
  224. 岩間正男

    岩間正男君 私も新聞が全部事実を伝えるものではないということははつきり申上げることはできると思います。併し相当の事実を伝えるものだということは言えると思います。又それで午前中の吉田総理答弁におきましては、日本は、大体新聞情報程度のものを以て、これは日本の今、海外の情報を知る以外にはないのだ、こういうことを言われている。従いましてこれは新聞情報というやつは、国内の世論とも関係しまして、非常にやはり重要性を持つものであります。そういう点から私は、飽くまでこれは知らぬ存ぜぬという意向で以て周東長官は進められようとするのであるかも知らんのでありますけれども、我々が、世の中でこの問題が論議されているのでありますから、これに対して政府ははつきりどのような一体見解を持つておるかということを、この国会の審議を通じて明らかにする義務を持つておるのであります。そこでお伺いしますが、いわゆる安本のトツプ・レベルなるものによりますというと、大体これは六十一品目について検討し、石炭が大体五千万トン、鋼鉄が六百万トン、鋼塊が九百九十万トン、アルミニウムが十一万トン、こういうような量について一つの作案をされたと聞いているのでありますが、その事実はございますか、ございませんか。
  225. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) これは私は先ほども申上げました通り、そういうことはありません。いろいろと想像でお書きになる結果が、輿論に与える影響というものに対して遺憾の点のあることははつきり申上げますが、只今のようなことはまだございません。
  226. 岩間正男

    岩間正男君 その後、これは昨日だつたと思いますが、日本経済新聞によりますと、更に総司令部側からメモランダムが出されて、それに対して日本の緊急経済政策なるものが回答された。こういうような一つの、実際のこれは生産目標まで示されておるのであります。これによりますと、大体日本の自立経済三カ年計画というものとこれは比べまして、非常に大幅に目標が高められているのであります。大体その例を挙げて見ますと、電力においては三年計画では三百五十万キロワツト、これがその後、向うさんから示されたメモランダムでは五百万キロワツト、これに対して緊急経済政策では四百二十六万キロワツト、石炭においては自立経済計画では四千六百万トン、これがメモランダムでは五千万トン、これが緊急経済政策では四千五百万トン、鉄鋼においては自立計画では四百万トン、それからメモランダムでは五百六十万トン、それが緊急政策では四百二十万トン、鋼塊においては自立経済では六百二万トン、それがメモランダムでは九百九十万トン、緊急経済政策では六百万トン、銅は三年計画ではこれは八・五万トン、これがGHQのメモランダムでは十一・四万トン、緊急経済政策では九万六千トン、アルミニウムにおきましては、これは三年計画では大体三万五千トン、これがメモランダムでは十一万四千トン、緊急経済政策では五万六千トン、セメントにおいては五百五十万トンの三年計画が、メモランダムでは六百八十万トン、緊急経済政策においては六百二十万トン、その他いろいろこの項目が拳がつておるのでありますが、この一覧表を見ますというと、これは安本の作文的な自立経済計画ではありますが、この基礎が殆んどこれは変つて来る。而もこれを二カ年の間に達成する。こういうようなことを、三年を二年に縮めて、大幅にここに一つの生産計画を変更する。こういうことが報ぜられておつて、これが論議されておるのでありますが、この内容は如何ですか。
  227. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) もうたびたび申上げておるのですが、私はそういう今日重大な時期にあるということは言いますよ。余りに法外な数字が出ているので、馬鹿々々しくて、私らは打消す何もないのであります。併しお話でありますから私はそういうことはないと申上げます。とにかく凡そ考えて御覧なさい、鉄鋼生産を一千万トン造ろうなんて、そういうことが日本の今の設備でできるかできんか、日本の曾ての兵器を造つていた頃でも、鋼塊というものはフルに動いても六百万トン足らずです。而もそれは東亜共栄圏とか何とか言つて、ほかで原材料である鉄鉱石や粘結炭がたくさん取れる、そういうときに、今から千万トン造れるか造れんか、あなたがもう少し常識的にお考えになつてもわかります。そういうようなことをやられて、国民生活が窮屈になることは私はしたくない。そういうことは向うも無理なことを言うて来るはずはありません。従つて私はそういうことはいろいろな想像で、何が出て参るか知りませんが、政府から、政府に対しましてそういうことはないというのでありますから……ありません。計画はしてないのであります。その点に関するお答えとしては、それはないとお答えするより仕方がありません。
  228. 岩間正男

    岩間正男君 それはないとお答えになるのは自由でありますが、私はやはりこういう問題について先ほどから申したように、世の中で論議されておる問題ですから、これについて質問するというのも又自由であろうと思うのであります。だから安本長官は、それを明らかにされればよいのですから、私はこれを続けたい、こういうふうに考えるわけです。  そこでこういう厖大な計画をやつて行けば、資金の面で非常に大きな問題になるのでありますが、大体我々の計算では約五十五億ドルぐらいの厖大なものになる。それでそういうことになりまするというと、これは当然外資導入の問題が起つて来るのでありますが、こういうような一体話がないのであるかどうか、こういうことは全然政府に対して今までそういう話がないのであるかどうか、こういう点を伺いたいと思います。
  229. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ありません。
  230. 岩間正男

    岩間正男君 それからそれについて外資を受入れるやりかた、更にこちらの受入れ態勢、こういうものについて問題がこれは出ていると思うのであります。例えば今日の産業経済新聞によりますと、やはり開発銀行の問題が非常に現在、これは池田蔵相ですか、昨日も向うさんと、関係者と会つて、この問題について打合せをされた。そうしてそれが、非常に将来やはりこのような外資の一元的な受入態勢、これを強化するのだ。そういうような性格を持つたところの開発銀行について或る種の了解を得た。こういうことを言われておるのでありますが、ころいうことについて、これは蔵相から事実を確かめたいと思います。
  231. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 昨日のマーケツト将軍との定例会見で、開発銀行のことにつきまして打合せをいたしました。先ほど来あなたがいろいろなことを言つておられるようですが、我々はそういうことでなしに、もう前から開発銀行の設立ということを話合い中でありますので、その問題につきまして協議をいたしたのであります。
  232. 岩間正男

    岩間正男君 周東長官は先ほど、とにかく今の情勢について今後変化はあるかも知らん、そういうようなことについてはこれは絶えず研究しておると、こういうような話があつたのでありますが、これはこういう点から考えて、現在持つている安本の三カ年自立計画というやつは、今後そういうような変更が見込まれておるかどうか、この点はどうでありますか。
  233. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 先ほども申しましたように、委員会の答申の内容につきましては、方向は一応ああいう目標を定めております。而してあの一番前書に断りがしてありますように、今後の情勢においては増減伸縮あるものと考えております。そのことと今のお尋ねのことは別個に考える、初めからそういうことで考えております。国際情勢の変化等によつて思う通りに行かん場合もある、又うまく輸入等が推進すれば案外早く進んで行くかも知れんということを初めから断り書してあります。
  234. 岩間正男

    岩間正男君 これは大体その程度答弁で、いつでも先に行つて伸縮自在だ、こういうようなことで、この予算期を頬被りで通られるというような決意のように見えるのでありますが、併しこの問題は恐らくこういう形では黙過できない問題だと思うのであります。そういうことはやはり今までの、この前の補正予算の審議のときにもそういう問題が起つておるのであります。朝鮮事変の影響をどう見るか、こういうような問題のときに、それはそのときまである、こういうことで、見通しのない政策、そういうものでこれは予算が組まれておつて、そのあとにやはり大きな変更をしなくちやならない、こういう問題が起つて来る。もうすでに二十六年度予算におきましては、もう近い将来に必らずこれは補正しなくちやならないというような大きな問題が出ているのでありますが、而もその大きな底流をなす……、日本国民がいつの間にか……、これに対しまして知らないでおる。或いは又政府筋が今申しましたように、この問題に対して知らぬ存ぜぬというような形で、実は暗黙のうちにぐんぐんと体制は強化されておる。こういう事態が非常に起る。そうしてそれが全く既成事実となつて、のつぴきならないところになつてから、何とも止むを得ないのである、そこに追い込まれたのである、こういう形で以てそれが国民の前に出される。こういう政策というものは、非常にこれは危險であり、有害であるというふうに考えざるを得ないのであります。こういう点から今のこの知らぬ存ぜぬというようなやりかたにつきまして、我々はやはりできるだけこの問題について、予算審議の中でこれを明らかにしなくちやならないのでありますが、こういう問題が、恐らくこれはずつと近い将来、すでに現実的にこれは起つている。單に私は近い将来とか何とか言つているのでなくて、実は着々と起つているのだということをここでなお申して見たいのであります。例えば新特需の問題であります。特需の問題が、これは現在特需というものが何を作つておるか、そうして、その性格は何であるか、こういう点についてもこれは後ほど申上げたいのでありますが、更に最近新特需というような名前で呼ばれるような特需の問題が起つておる。こういうような状態については、これは通産大臣に伺いたいのでありますが、これは新特需がどういう形になつておるか、これらの発注の工合とか、それから品目、こういうものについて伺いたいと思うのであります。
  235. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 代つてお答えしますが、新特需というような特別の名前を私は附けておらんのであります。恐らくそれは通産大臣も同じお答えでありましよう。あなたは強いて一つ前提を置いて、そのほうへすべてを集中して御質問でありますが、私どもは先ほどから申上げているように、ないことはない、そうして政府といたしましては激動する今日の情勢の下においても、常に国民生活というものに対する激変を与えないように、これを中心にすべての施策を立てて行きたいと考えておるわけでありまして、そうあなたのように一方的にお考えにならんほうがいいのじやないかと、私は思います。
  236. 岩間正男

    岩間正男君 まあ、これは論議を通じて、歴史的に見てもらえばわかることであります。一方的だのとあなたはおつしやいますけれども、戰争が起るだろう、こういうような論議、こういうような国民に対する警告を、一体どこの誰がやつたか、その当時、こういう国会の論議の中にそういう問題について触れたことは余りなかつた。併しそれが二年、三年後に振返つて見るときには、誰が一体この問題をつかみ、そうしてそれを国民に対して警告をしておるか。こういう問題は歴史的にこれは国会の審議を通じて糾明されればわかることであります。私は強いてそれをそういうほうに持つて行つているのじやない。従つて事実問題として、こういうような輿論として、すでにもう既成事実のように、知らぬは政府ばかりなりというふうな恰好でこういう問題が論じられているから、この問題に対しまして、国民の代表としてこれは政府に聞いているのです。何も別な方向に、私の構想した方向にものを持つて行こう、こういうような意図によつて、これはなされているのじやありません。でそういう点からやはり政治である限りは、これは一つ国民の水先案内でなきやならないのでありしまて、これに対して見通しを持たない現在の情勢ではなかなか答えられない、ポツダム宣言下にある日本情勢では、こういう問題については答えては工合が惡い、又そういうような政府性格である、そういうことのためにこういう問題が、非常にこれは大きく民族の不利益になる問題が、等閑に付されるということは重大問題であると私は考えるのであります。で、そういう点から大体現在のとういうような態勢につきまして私は考えるのでありますけれども、これは経済協力については、ダレス氏と吉田総理の間に或る種の原則的な了解がこれはなされた。こういうことは天下周知の事実だと思うのであります。而も又吉田総理は、一方におきまして再軍備は、これをやらないのだ、経済情勢が許さない、こういうことを言われております。併しながら問題は、再軍備の問題よりも、日本産業の形がどうなるか、それが軍需生産がどうなるか、殊にもうアメリカの軍拡経済の一環としての日本、この日本の置かれているところの産業の形が実際どういう一つの構造をとるかということは、非常に重要な問題であります。そういうような重要な中で、今言われましたところの下請工場というような形で以て、而も厖大な、昭和十六年度あたりも匹敵するような厖大な生産水準を目標にして、そういうような産業構造がとられて行くということによつて、これは基本的に平和産業は梗塞せざるを得ない。やはり同じように新聞での情報でありますけれども、これは平和産業においては二十五年度の線で押える、こういうことを言つておる。併し政府考える自立経済の線は、これがもつと強化されたいわゆる緊急政策というような、こういう方向においては、恐らくこれは平和産業は二十五年の線ではとても押えることはできない。恐らくもつとこれは大きな影響を受けるという形で、ここにどうしてもこれは生活必需品の欠乏が起つて来る。従つて戰時インフレが発生して来る。同時にそれによつて得た実質賃金の低下も起つて来る。これが人民生活の上に大きく破綻を起して来る。こういうような点を我々としましては考えざるを得ないのであります。  曾てあの太平洋戰争をやつた、そうしてあの馬鹿げた戰争によつて多くの犠牲に曝されたところの日本国民としましては、又こういうような経済態勢、こういう態勢がすでに作られて、既成の事実としてもう止むを得ない、その止むを得ない事実にまで追込まれて、経済態勢が着々と強行されて、そうしてのつぴきならないところに日本の経済は置かれ、そふしてそのあとに再軍備を論じたとしても、当然その経済態勢の中からは再軍備は自然にこれは結論として生れて来る。こういうところが吉田総理の狙いであるかどうか、吉田内閣の狙いであるかどうか、もつと国民の中に明らかにして、この経済態勢についても協力態勢についてもこれを明らかにして、そうしてポツダム宣言によつて日本は全くその途を行かなきやならない、これは既成の事実なのでありますが、今日一般にこれは変更されて、すでにもう輿論というものが、そういうものを、ポツダム宣言を今云々するのはすでに古い、こういうことはもう時代感覚に合わない、一月間のこの変化というものは非常に大きいのでありますけれども、そういうところへずるずる持つて行く、そういう対策の一環としてこういうような政策が全く頬被り的に、これは知らぬ存ぜぬというような形で以て進められて行くということは、非常にこれは重大な問題であると私は指摘せざるを得ないのであります。果してこれは二カ月、三カ月、半年後に恐らく、長官が今わからん、知らぬ存ぜぬ、そういうことはない、こういうような一つ政治的試みで以てこの問題が進められて、半年後に歴史が進展する、時間が進展した後にこの事実を本当に見て、果してこれは歴史が批判すると思うのでありますが、そのときもあなたはあのとき知らぬ存ぜぬということを言つたのであるということを断定するだけの勇気を持たれるかどうか。この点は周東長官並びに横尾通産相に対しまして、私今日このときにおいて念を押して置きたい。はつきりそう言われるものであるかどうか。そのときだけはうまく過ぎて行く、あとはどうなれ、もう既成事実はでき上つておるのである、日本の戰時協力態勢はできて、そうしてこれは米国軍拡経済の一環としてのつぴきならない、何ともならない態勢になつたのであつて、そうなればそのときは、もうあとは野となれ山となれ、こういうことであつては、私は政治的責任というのはこれは問題にならない、こう思うのでありますが、こういう観点からしまして周東長官は一体果して三カ月後、半年後にそれを繰返すことができられるのであるか、確信を持つておられるかどうか、その点伺つて置きたいと思うのであります。
  237. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 岩間君が憂国の熱誠を披瀝されたことに対しまして敬意を表しますが、私今日政府から、政府に対してそういうことは言つて来ておらないということをはつきり申上げる。これらの点は事実でありますから、事実を以てお答えいたします。
  238. 岩間正男

    岩間正男君 政府だけからでなくつて、例えば財界方面というような形でこれは出ておる事実がありますかどうですか、これをお伺いしたいと思います。
  239. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 財界方面から出たか出ぬか、私はよく知りません。
  240. 岩間正男

    岩間正男君 通産相の決意を同時に伺つて置きたいと思います。
  241. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 先刻から安本長官から申上げた通り、ないものはないと申上げるということに対して、何か疑いを生ぜられることは、甚だ遺憾に存じます。
  242. 岩間正男

    岩間正男君 私はそのことをお伺いしたのじやありません。私は半年後、三カ月後において、そういうふうにないものはないと捨てて置いて、併し既成事実ができたそのときに、はつきり本当に確信を以てそういうような決意をですね、半年後にも、これは歴史に照しつも、はつきりそういうような事実を言われて悔ゆるところがないかどうか、この点を参考のために伺つておるのであります。
  243. 横尾龍

    国務大臣(横尾龍君) 先刻からないと申上げたことに対していろいろと論議がなされるようでありますが、ないからないと申上げておりますので、その通り今でも固く信念を持つております。
  244. 岩間正男

    岩間正男君 非常に見事な決意を示されましたので、私もそれは今表明された範囲内におきまして、それではそういうふうに考えたいというふうに思います。  非常に疲れましたので、十分間休憩を願いたいと思います。如何でざごいますか。
  245. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 暫く休憩をいたします。    午後四時四十八分休憩    —————・—————    午後五時二分開会
  246. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 休憩前に引続いて予算委員会を開きます。
  247. 岩間正男

    岩間正男君 特別調達庁の政府委員に伺いたいたと思うのでありますが、この前資料としまして約四点ばかりこれは要求したわけであります。その中で、先ほど第一点の二十四年度と二十五年度の支払状況比較と、この表は頂いたのでありますが、そのほかにPD工場等の過去一カ年間の契約と二十六年度の見込、それから二十五年度のこの月別、その契約を月別に出した表、その次にLR関係の労務者について人員、内容、その向け先、それから第四点としましては農漁業の補償の問題でありますが、土地取上げ、それから漁業補償、こういうようなものはどうなつておるか、こういう資料をお願いしたのでありますけれども、これはいつ頃頂けますか。実は今日の審議までこれを頂いて置かないというと、我々は仔細にこれが検討できない。そうして又これを検討しなければ、今日私が質問いろいろ申上げる要点が出て来ないわけなんですが、これはいろいろ事情もあると思うのでありますが、この資料が頂けないという点について先ず伺いたいと思います。    〔委員長退席、理事石坂豊一君委員長席に着く〕
  248. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 前回御要求になりました特別調達庁関係の資料の点につきまして、第一の昨年度と一昨年度の比較表は差上げておるわけでございます。PD工場の分につきましては現在調査をいたしておりますが、これができました、その後軍当局のほうに、提出いたしますにつきましては承認を得なければなりませんので、目下調査中でございます。それから漁業補償及び農業補償につきましては、現在調査をしておりますので、今日まで間に合いませんことは誠に恐縮でありますが、なかなか調査に手間どります関係上、これも表が完成いたしました上では、やはり承認が必要と存ぜられます。それから労務者の給与、仕向け先、これにつきましては現在判明しておる部分もございますが、仕向け先につきましては、どこに向けたかという点を私どものほうで現在まで資料に取つておりませんので、府県別の労務者数を調査し得ることが精一ぱいでございます。併しこの点も特別調達庁といたしまして、国会に資料を提出いたしますのには、やはり手続上その方面の承認を必要といたしますので、資料提出の時期につきましては、成るべく承認になるように、早く提出できるように努力をいたしますが、目下のところ明確にお答えするわけには参らんことを御了承願います。
  249. 岩間正男

    岩間正男君 これはこの前もすでに申したのでありますけれども、この終戰処理費は非常にやはり大きな国家予算の割合を占めております。約一七%近くの割合を占めております。そうして又講和に連関してやはりこの審議は非常に重要性を持つておると思うのでありまして、こういう点からやはりこの使用状況、国民のつまり税によつて醵出されるつまり予算でありますから、これがどのように使用されておるかということは、非常にこれは重大関心を国民は持つておるわけであります。そういう点から是非これは国会の審議に間に合わせて頂きたい。すでにもうこれは十日ほど前になると思うのでありますが、そういう点から要求いたしたのでありますが、これがまだ間に合わない、併し大体国会の審議中には間に合うというようなお見込みでございますか、その点ちよつと伺つて置きます。
  250. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 国会の御審議に成るべく間に合うよう努力をいたします。ただ現状といたしまして、先ず調査そのものに相当手間どりますので、そのほうを急ぎまして、その次に軍の承認を取りつけるように我々は努力いたす考えであります。
  251. 岩間正男

    岩間正男君 もう一つは、これは池田蔵相に伺いたいのでありますが、今年度予算、終戰処理費の組み方もありますが、これは大体河野主計局長から輪郭だけ説明があつたのでありますけれども、一番大きな部分を占めておりますところの終戰処理事業費ですね。これの項目が昨年度はたしか国会の審議に間に合うように提出があつたと思う。今年度は併しそういうことになつていないのでありますが、これは当然政府が組まれるとき、そういうような内容について一応御検討になつた。その結果これはこれだけのものが要るというふうにして予算が決定されたと思うのでありますが、こういう点からこの資料が頂けるというふうに思うのでありますが、この点はどうなつておりますか、伺います。
  252. 河野一之

    政府委員(河野一之君) この点は岩間さんにこの前も申上げました通り、終戰処理費の予算の編成に当りましては、従来の実績等を徴しまして、その後における物価等の関係考え日本政府側として適当と認められる案を作りまして、関係方面と折衝いたしてその結果きまるのでございますが、きまりました総額の中におきまして、これを如何ように使うかという点について、なかなか意見の一致を見ないような点がございます。従いましてこの内容をはつきりお示しいたすというような段階には現在至つておりません。但しその内容につきましては、総額は動きませんのでありまして、その内容につきましては、従来ありました程度よりは相当金額、総額についても減つておりますし、大体従来とそう大して変らないというふうに御了承願います。
  253. 岩間正男

    岩間正男君 蔵相に伺いますが、この終戰処理費については一体そういうふうな資料も十分に出ない、それから内容もどうも明確に示されないというようなことが非常に多くて、これはどうも自主性がないのじやないか、この組みかたについては、自主性がないのじやないかということがしばしば問題になつているのであります。この点で蔵相といたしましては、終戰処理費はどういうふうに組んでおられるのでありますか、伺います。
  254. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) この前もお答えいたしたと思いますが、終戰処理費につきましては、私が一応検討を加えまして、そうしてこの程度が適当であるというので出しているのであります。
  255. 岩間正男

    岩間正男君 飽くまでもこれは日本政府の自主性において組んでおられるのでありますか。
  256. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) さようでございます。
  257. 岩間正男

    岩間正男君 そういうことになりますと、今の項目別のそういう内容が明らかにされないという点はどうも我々には納得が行かないのでありますが、これは日本政府の自主性において組む。そういたしますとこれは向うさんとも折衝されると思うのでありますけれども、飽くまでもこちらのこれに対する一つ予算的な見解というものは織込まれて行く、こういうふうに考えられるので、その内容について当然国会審議までこれを間に合わされるということが必要に思うのでありますけれども、これはどうですか。
  258. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 岩間さんよく御存じだろうと思うのでありますが、昭和二十五年度の終戰処理費の予算は、部隊別になつております。保管部であるとか、兵器部であるとか、或いは司令部であるとか、そういうふうにしておつたのでありますが、これは実行の結果に徴しまして、なかなか却つて不便が多い。つまり部隊の間におきまして予算金額を移動させるということがむずかしいというようなことで、又元の通りに二十六年度からはいたしておるわけであります。従いましてその間におきまして部隊の間、或いは事業費の内容等につきましていろいろ折衝と申しますか、いろいろなお調整を要する点がございまして、従いまして確定的なものをお出しできないのは甚だ遺憾でございますが、大体のところを申上げますれば、これも確定的の数字でないということをお断わり申上げますが、労務費が大体三百億程度、運輸費が六十七、八億、或いは物資の輸送通信関係で四十七、八億、その他借料……地代、家賃等の借料でありますが、これが九十三、四億、それからその他の作業費、作業費と申しますと、主としてL・Rの関係になりますが、それが二百十億、それから需品、つまり石炭とか資材等の需品でありますが、これが百七、八十億、設備費で約二十億、工事費でありますが、これは殆んど新規の工事はありませんで、最近よく御承知通り燒けますので、そういう関係で災害の復旧等で約三十数億というものを考えております。大体そういつたものでありまして、これは合計いたしまして九百九十九億というふうな数字に相成るわけであります。一応の我々予算を積算いたしました上におきましては以上の通りであります。なお細部において調整を要します関係上、只今のところその手続が遅れておるというふうに申上げて置きます。
  259. 岩間正男

    岩間正男君 この内容につきましては、まだもつと検討して、これは質問あとに廻したいと思うのであります。もつともつと我々の観点から質問しなければならない、そういう面があると思うのでありますが、只今示されました数量、こういうものについて、これは資料的に出して頂けますか。大体今お聞きしたのでありますけれども、併しそのほかにも、私だけじやなくて必要を感じておられるかたがあると思いますから。
  260. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 予算の際にそういうふうに見たのでありまして、これは確定的というふうになりますと又何でありますが、なおいろいろ調整を要しておりますので、できるだけこれは早くきめたいと存じます。きまると存じますが、その上そういうふうな資料を提出申上げたいと思います。
  261. 岩間正男

    岩間正男君 この点についての質問は保留しますが、その次に移ります。そこでこの予算に組まれた点については、もつともつと我々はその資料によりまして内容を検討したいと思うのでありますが、それ以外に地方財政とも関係するのでありますが、一種の終戰処理費と見られる費用が非常にあるのであります。例えばこれは衆議院の公聴会におきまして神奈川県の例が出ております。例えば神奈川県知事の証言の一部でありますが、「たとえば神奈川県のごとき場所で、道路が大きなトラツクが通るためにこわれる。言わずと知れた、これは朝鮮事変のために軍需品の輸送が盛んであるために起るのですが、たとえばその一例をとりますと、道路をだれが修理するかということであります。以前でありますとPDという方法がありまして、軍の責任者がちよつとサインすることによつて、どんな道路の費用も出たのであります。しかしながら今日においては、そういう方法はないのであります。これを建設省に持つて参りましても、大蔵省に持つて参りましても、金の出る道がないというのであります。しかしながら現実の道はこわれておる、しかもその道は神奈川県にあるということになりますると、もしこの道をほうつておけば現実に障害が起きる。またこれを直してくれということを要求されてから何日かかつても、なおかつ直さなければ、県の知事並びに道路の責任者はどういうことになるかということは、大よその見当がつくと考えまするが、」こういうような実に切々としたことを神奈川県知事から訴えられておるのであります。当然この結果、非常に不如意な地方財政からこういうような、つまり明らかでありますが、いわゆる軍輸送、こういうような事柄によつてつたところの道路破損を賄わなければならん。こういうような費用は全国的に見れば莫大な費用になると思います。従つて一千三十何億でありましたか、それだけの終戰処理費という枠を相当に出て来る。こういう問題が起ると思うのでありますが、こういう点につきまして一体国家補償を考えておられるのかどうか。それから特調のほうにおきましては、なぜ従前の通りPD関係というような方法でこれを補充されたのを、これをやられないのであるか。更にこれは岡野国務相に伺いますが、こういうものはやはり一つの地方財政需要どいうふうに考えられるのでありますが、こういう面につきまして、これは放任して置くのであるか。こういうような三つの問題を、かくそれぞれの係のかたから伺いたい、こういうふうに思うのでありますが、先ずこれは大蔵省としてはどういうふう考えられておられますか、伺います。
  262. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 占領軍が進駐いたしました当初におきまして、軍その他の関係の施設に参ります道路、それから特に交通の多かつた道路につきましては、たしか昭和二十三年まで終戰処理費で道路の改良をやつた例はございます。併しそのやりかたは一わたり済みましたものでありますから、現在ではそういうことをやめております。これは占領目的に協力するという意味合いから言いまして、これは国家財政の面でも、地方財政の面でも同様であろうと思いますし、その又道路の修繕関係というものがそれのみで起つたというがふうにも必らずしも認めがたい点がございまして、終戰処理費で直して、却つて非常に道路がよくなつたといういろいろな例もありまして、これをそのまま終戰処理費でするということは必ずしも適当でないではないかというような考え方で、現在ではやめておる次第であります。従いましてこの問題について国家補償というようなことは、これは考えておりません。
  263. 岩間正男

    岩間正男君 一応今のお三人から承わつてから私の意見を述べたいと思います。どうですか、特調では。
  264. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) PDを道路のために発出せられるよう特調側として何か策をとつておるかという御質問と了承いたしますが、PDの発出につきまして、私どもは大体においては軍の方針に基いて受動的であります。ただ、ときといたしましてはその要請が軍以外からありました場合に、その事業が道路であれば、道路補修という事実関係を調査いたしまして、PD発出が必要となる性質であると考えられました場合には、單にその発出かた要請いたしますが、只今の神奈川県の道路については、未だ十分の調査が届いておりませんので、若しPD発出が必要であるという状況が明らかになりました場合には、私どもも軍と折衝をいたすつもりでございます。
  265. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。戰時中道路が各県傷み放題に傷んでおりまして、そうして今おつしやつたような原因でなくても、地方団体は非常にこれを改良するのに困つておるような状態であります。只今お話の神奈川県の問題もそういうふうに脆弱になつて、若しくは傷んだ上に、非常に交通が頻繁になつて来たということでますます道路が惡くなつて、それを直すために金が相当要るということは、これは地方財政として非常に御同情に堪えないことでありますが、只今のおつしやつたようなことにつきましては、渉外関係がこれに起きておると我々は認めますので、特別平衡交付金を交付しますときにそれを考慮に入れまして、そうして幾分なりともお役に立たせたいと、こう考えておる次第であります。
  266. 岩間正男

    岩間正男君 先ずそれがこれで壊れたことはなかろうという、こういうお話でありますが、いやしくも一県の責任を担つておる県知事が、公聴会の席上ではつきりこう言つておる。「朝鮮事変のために軍需品の輸送が盛んであるために起るのですが」と、こういうことをはつきり言つておる。こういうものに対して、これはよほどでなければ言わない言葉です。こういうものに対して、これはそれだけではないというのは、現状についての認識が足りないのではないか。殊に相模原から横浜のほうに出る道路なんというものは、これは軍輸送の問題なんというものが非常に起つておる。これは果して終戰処理のために必要な輸送であるかどうか。これははつきり朝鮮事変のための輸送であるということを言つておるのでありますが、こういうことからしますと、これはどこで発出すべき性格のものと考えられますか。これは飽くまで日本政府の支払であるか、或いは又これは連合軍の支払と考えらるべきであるか。これについて、この点は池田蔵相に伺つて置きたいと思うのであります。
  267. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 事実の認定によつてきまると思います。終戰処理関係でないものであつたら向うから金をもらうことになると思います。
  268. 岩間正男

    岩間正男君 ところが事実はもらえないから、継子のようになつていたから、こういうことが訴えられておるのだろうと、こういうふうに思うのであります。これは岡野国務相は、これを平衡交付金の中で考慮すると言われておりますが、これは今まで考慮された事実があるのでありますか。それから大体こういうような問題が全国的にあると思いますが、こういうものをどれだけに見ておられるのでありますか。而も平衡交付金そのものは、そういうような紐付きはできないようになつておるのが建前であると思うのでありますが、これはどういうふうに考えられますか。
  269. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) 平衡交付金は御承知通りに十分の一を除けまして特別交付金ということになつております。併し、二十五年度は百五億ございます。その百五億というのは何のために特別という名前を附けておるかと申しますと、只今おつしやつたような特別の需要が起きた。又もう少し恒久的なことを考えますれば、寒冷地であるとか積雪地、こういう所であるとか、特別の災害が不測に起きたという場合に充てるための平衡交付金で、只今おつしやるようなことは特別平衡交付金を以て支弁する。こういうようなことに当てはまるわけでございます。
  270. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると朝鮮事変による輸送の場合問題となるのは、そういうような場合、これは特別平衡交付金でどういうようになるのであるかということが一点。そういう額が全体として特別平衡交付金の中でどれぐらい見られておるか。この点伺いたい。
  271. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 朝鮮事変が起きましてから、各府県の渉外関係の経費の増加状況も異つてつております。各府県から地方財政平衡交付金の特別交付金を配分する際にはいろいろな調べが出て参つておりますからして、これらを一々十分検討いたしまして、必要額を十分に充すわたけには参りませんけれども、数千万円の額を、こういうものを標準にいたしまして配分する方式を採用しております。
  272. 岩間正男

    岩間正男君 それから先の点は、第一点はどうですか、岡野国務相に伺います。
  273. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 各府県の数字を、集計した額を覚えておりませんけれども、ただ各府県から出て参つておりますものが、直ちに全部が朝鮮事変関係に基く増加財政需要だというように断定することもできませんので、お話のような数字を集計してお示しすることはかなり困難な問題じやないかというふうに考えておるわけであります。
  274. 岩間正男

    岩間正男君 この問題と性格がやや似ていると思うのでありますが、現在相模、追浜、横浜、三沢、こういうような所に対しまして、二十五年度四月からはどんどん金が注ぎ込まれて、一月頃まで工事が進められておる、こういう事実があると思うのでありますが、この工事費とそれから請負社名というようなものにつきまして、その内容を伺いたいと思うのであります。
  275. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 連合国関係の調達のお話でありますが、これは朝鮮事変関係のものはすべて御承知のようにドルの契約でやつておりますので、終戰処理費から出しておりませんので、終戰処理費の支出内容としてどういうものがその辺に出ておるかちよつとわかりかねます。
  276. 岩間正男

    岩間正男君 現実的に今申上げました相模とか追浜とか横浜、三沢、こういうふうなところは、これは特庁では立替払をやつておられないのであるかどうか、そうしてこれをやつておられるとすれば、どういうふうな資料によつて一体我々に明示されるのであるか、この点伺いたいと思います。
  277. 河野一之

    政府委員(河野一之君) そういう立替払は一切ございません。
  278. 岩間正男

    岩間正男君 特庁のほうはそれでよろしいのですか。
  279. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 只今質問の追浜飛行場等につきましては、立替払というものはございません。
  280. 岩間正男

    岩間正男君 これは特庁のほうではこれに対して全然何らの関係もしておられませんか。
  281. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 特庁でそうした方面にいたします事業は全部調達要求書、即ちPD、これに基きましていたしますので、立替の関係という性質の調達はいたしておりません。
  282. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると先のほうのがちよつと聞えなかつたのですが、PD関係は、向らからそういう要求が来るのですか。それについては全部それを調達して行く、こういうわけですか。
  283. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) PDによります調達だけをやつておるというわけでありまして、いわゆる立替という意味合いの調達はいたしておりません。
  284. 岩間正男

    岩間正男君 それでは立替の問題は又別の機会で聞くといたしまして、そういう今申しましたようなところ、こういうところに対しましては、これはそういうようなPDのいろいろな調達、そういうようなことはありますか、具体的に。
  285. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 非常に誤解をなさつておるように思うのでありますが、終戰処理費は飽くまでも占領目的のためでありまして、三沢とかそういうところでPDの調達はございません。併しながら朝鮮事変関係のものは、それは区別して、それは終戰処理費の支弁でないものとされておるのでありまして、PD関係は一切占領目的のためであると御了承願いたいと思います。    〔理事石坂豊一君退席、委員長着席〕
  286. 岩間正男

    岩間正男君 するとそういう内容についてこれは相当明細なきちんとした線が引かれなければ、私はこれは今の予算においては非常に拙いのではないか。立替払の問題も実は我々の聞いておるところでは、どうもそういう点が混同しておるところがあるのじやないか、これは特庁が惡いのであるか、それから関係方面がそういうところがはつきりしないのであるか、我々はまだ明らかにしませんけれども、こういう点については大蔵省並びに特庁におきましては、こういう建前をどのような方法によつてきちんとされておるか。例えば先ほどお話しましたように、全くこれは今我々としてわからないのは、占領の目的であるか、朝鮮事変の目的であるかわからない。こういう事態が起つておる。而も我々、はしなくも耳に挟んだのでありますが、いつかの特庁のこれは移転式におきまして、どうも非常に特庁は今度の朝鮮事変に対しては功績がある、こういうような挨拶が関係方面からなされた、こういうことを聞いておるのでありますが、そうしますと、そういうようなつまり御挨拶そのものの持つている性格、こういう点から連関しまして、私はこういう問題は、やはり重大な内容を暗示するものであると、こうふうに考えるのでありますが、そういう点について一体建前をどうされるか。飽くまでも日本の特庁であつて、皆さんもこれは人民の公僕だと思うのでありますから伺つておるのであります。この点を……。
  287. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 特庁の調達事務につきましては、調達要求書によらざれば一切調達ができないという覚え書に基きましてやつておりますので、それ以外の調達はやろうと思つてもやれない関係になつております。  それから移庁式のときの軍のかたの挨拶という点に触れられておりますが、これは軍のかたが如何なる意図で言われたかは忖度しにくいのでありますが、移庁式というような一つの社交的な場所でありますので、成るべく特庁の職員に対して好意を持つている感じをそこで披瀝されたものと思いますので、我々の仕事の性質まで決定する御趣旨の御挨拶ではなかつたと存じます。
  288. 岩間正男

    岩間正男君 そうしますと向うのPDのそういう要求がありました、それに対しましては、特庁としてはこの実態を確めてからそれを調達するというふうになつているのでありますか、それともこれは向うから又何か来ますというと、全部OKでこちらがやつておるのでありますか。そこのところどういう区別を、非常にまあこれは、こういうような状態の中ではそこのところの混淆が非常に行われやすい。どんなに気をつけても行われやすい。従いまして特庁としましては、この認定が非常に重要な問題だと、こういうふうに私は考えますが、誰がどういう方法によつてこれらの要求を取捨選択しておられるか、又現実と対照してこういうふうな認定をつはきりやつておられるか、これが重大な問題だと思うのでありますが、これは先ほどの御挨拶とも連関して来ることであります。
  289. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) PDの内容、事業の性質の認定につきましては、特庁は内容審査をいたしません。併し内容審査は、PDを発出いたします現在の在日兵站司令部に対しまして、総司令部のほうでPD発出に対してはアプルーバルを、即ち承認を与える建前になつております。従つてPD内容が国内の占領目的達成のために合致しているかどうかという判断は、軍自体、いわゆる兵站部自体の判断のみでなく、国内経済と照応いたしまして総司令部においても検討をされる。従つてどもは調達要求として出ましたものに対して、内容審査はせずに、その内容の実現にだけ努める、これが私どもの職分になつております。
  290. 岩間正男

    岩間正男君 池田蔵相に伺いますが、只今の特庁のこれは次長さんですかの御説明によると、日本政府機関では、その内容審査する機能がないようであります。こういうことになりますと、全部これは総司令部のほうのアプルーバルによつてOKという形になつて来る。我々はそういうような事態に対しまして、これは事態を疑いたくありません。併しながら、やはりこれは日本政府の責任において国民に対する責任があるのでありますから、そういう点から当然そういうものに対して、やはりこれは世界の問題にもなつておる点でありまして、国連軍とそれから占領軍と、こういう性格はやはり国際法規に照らして明らかにすると、これが又こういうようなことを日本政府においてはつきりするということも又大きな責任の一つであるというふうに考えるのでありますが、そういう機関をなぜ設けられないのであるか。若しそういうことになつて全部がこれは信ずるということはいいのですけれども、併し国民に対する一つの責任の点から言いますと、それは野放しにはできない問題だと我々は考えるのでありますが、蔵相はその点をどういうふうに考えられるか、これをお聞きしたいと思います。
  291. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私に関しますることは、終戰のために必要なる経費を審査いたしまして予算を組み、御審議を願いまして、而して予算が如何に使われるかにつきましては、その当局々々によりまして適当におやりになる、その結果は会計検査院で見ることに相成ると思うのであります。
  292. 岩間正男

    岩間正男君 そうすると、大蔵省はそういう権限内の交渉をされると、それから特調は殆んどそれに対しましてはこれは非常にお褒めを頂くというようなやり方で、殆んどこれは頼りというものがない、何と申しますか一つ日本政府国民に対して負つたところのこれは責任を果すような一つの頼りがない、こういう形で行われている。こういうことでは一体政府機関の中でどこがこの問題に対してタッチをするのでありますか、これはまあ実は吉田総理に伺いたい問題でありますから、吉田総理にもお聞きしたいのでありまするが、併しながら国家財政の総元締めであるところの池田蔵相に対してどうあるべきか、どうなけりやならんか、その点については或いはこれは五年間ばかり大きなミスをしておつた、こうお考えならそういう御答弁でもいいのでありますが、これはどういう機関を設けてどうするか、これははつきり承わつて置きたいのであります。
  293. 河野一之

    政府委員(河野一之君) ちよつと誤解がおありじやないかと思いますが、PDで出ますものにつきましては、おのおの單価がございます。例えば労務者については各地方々々で以て幾らの俸給を出すと、これは職種別賃金できまつておるわけであります。それから資材その他の單価につきましてもちやんとそこに合理的な基準があるのであります。この点につきましては、特調当局と関係方面ともいろいろ御協議になつて、そこに適正を期しておられると思うのであります。従いまして占領軍のほうからどういうふうにPDが出ますか、それについてはすでに合理的な基準によつてその積算がなされるのであり、従つて勝手に向うの言われるままに予算が使われているとは私は考えておりません。具体的の事例におきましてどういうようなものがありまするか、それは精査して見ませんとわからん点もありまするが、建前としては飽くまで適正にやつておる、そういうふうに私どもは信じております。少くとも大蔵当局はそう考えております。
  294. 岩間正男

    岩間正男君 誤解々々と言われますが、誤解じやありません。これはやはり重大な問題でありまして、この問題を明らかにやはりすることが、講和の近づいた現在の態勢において、日本の自主性との関連において非常に重要であると思う。なぜ私がそういうことを申上げなくちやならんかと申しますると、この前におきましても、例えば米国のこれは第八十一議会における下院歳出委員会におけるところの前陸軍次官ボルヒーズ氏のゲーリー議員に対する答弁があるのであります。日本に駐在せる軍隊は一食糧集荷や租税徴收などのことをする軍政班は、大部分廃止され、日本における軍部隊は目下戰時体制にあり、軍事訓練をやつておる。こういうことであります。これが又朝鮮事変が勃発しますというと、このけじめがますますわからなくなるということになるのであります。成るほど項目は組まれておりましよう。種目は成るほどこれはいろいろ事業種の内容は含まれておりましよう。併しながらこれの内容とするものを現実と照らし合せて、果してそういう種目によつて調達されたものがどのように日本の終戰処理、平和とそれから安全、こういうものを、ポツダム宣言によつて我々が世界に保障されたそういうものを、早くその目的を貫徹するために使われておるかどうかということを、我々が判定することが非常に重要であると思うのであります。こういう点から言いますと、そういう機関がどうも只今お伺いしたところではない、ないままにこれは一つの調達要求がありますというと、それが私はこれはさつきの特調のほうのお話のように、これは全部そういう形で、全部がもう何といいますか、全部OKである、こういう形になりますと、どこの線でそれを一体守つて行くか、これは予算審議、そうして現在税負担で苦しんでおる国民の代表としましては、我々はこの問題をやはり軽視することはできない。又講和を非常に望み、そうして全面講和の線、この線だけが日本にこれは世界的に公約された線でありますが、この線を守る問題と、この問題は非常に連関を持つて来ますからして、我々はそういう国民大衆の代表としましては、そういう線をもつと明らかにして頂く、これは国会議会におけるところの我々委員の任務でないか、こういうふうに考える点から承わつておるのでありますけれども、どうもそういう点について御明答がないようであります。重ねて池用蔵相に伺います。蔵相の御答弁を頂きたいのでありますが、この点については、こういうような非常にまあ建前がともするというと、これは混同されやすい立場にあつては、殊にこれは政府機関においてこういうものを峻別するところの適当なる機関を設けて、この問題を明らかにすることが重要だと思うのでありまするが、その用意を持たれるかどうか。この点について重ねて御答弁頂きたいと思うのであります。
  295. 河野一之

    政府委員(河野一之君) 朝鮮事変が起りまして、これに関連いたしまして、占領軍におきましていろいろな調達の必要が起つて来たことは事実であります。これは改めて申上げるまでもないのでありますが、この負担は終戰処理費、即ち日本国民の負担にいたさないために、関係方面におきましては非常な努力をされておるのであります。私どももその努力を非常に多といたしておるものであります。従いましてPDの問題でありますが、PDについてむちやくちやに何でもかんでもPDで出しておるということはこれはございません。事実としてございません。今まで飛行場におきまして、朝鮮事変関係で余計発着が起るといつたような場合におきましては、その部分を別にしてPDを出しておられるというふうに私承知いたしております。従いましてそういつた点につきまして、先ほど申上げました單価なり数量なりというものについては、PDを見まして、よく出される方と御相談を申上げて処理いたしておるというのも又実情でありまして、決して岩間さんの言われるごとく野放図にそのまま占領費として日本国民の負担にするというようなことは、絶対にいたしておらないことを御了承願いたいと思います。
  296. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今河野主計局長が答えた通りでございまして、問題は終戰処理費の中から、PDで出されるものを、新たに機関を設けて、そのPDが適正なりや否やということを審査する機関を設ける考えはございません。今まで通りで私は結構じやないかと思います。
  297. 岩間正男

    岩間正男君 だから蔵相が終戰処理費については自主性を持つておるというふうに御答弁になつても、残念ながら我々はそれを一〇〇%信用することはできないという事態が起つて来る。やはりこれは我々の重大な国民生活と深い連関を持つた問題であります。我我の聞くところによりますと、西ドイツにおきましては、やはり占領軍の終戰処理費のことが問題になつて、そうして国会におきましてはこれに対して調査委員会が設けられ、この使用の方法がどうもあいまいなところがある、果して終戰の事態に対してそれだけの予算が要るかどうか、この問題に対して調査委員会が設けられた。その結果綿密にこれを調査した。ところが大体それによつて、これは五〇%と聞いておるのでありますが、終戰処理費が五〇%に減らされた。こういうような事態が西ドイツにおきましては起つておることを我々は聞いておるのであります。こういう点からしますと、日本の現実は違うと蔵相はお答えになるかも知れませんが、併し日本の現実はむしろ近くに戰争が起つておる、そうして戰争と占領の状態のはじめがはつきりしないという形が起つておる、こういうことを考えますときに、日本の現実におきましてはもつともつとこれを明らかにするということが必要な問題じやないかというふうに考えられる。西ドイツなんかの例と比較しまして、我々はこの終戰処理費の運営につきましてはもつとやはり国民の代表としましてこれに責任を持つべきであり、政府もこれに対してそのような何らか機関のようなものを設けてこれをはつきり明らかにするようにすべきであると考えるのでありますが、もう一度重ねて蔵相は西ドイツなんかとの連関において、どういうふうにこういう問題を考えておられるのか、承わりたいと思います。
  298. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 自主性ということにつきまして御質問がありましたが、占領治下でございまして、終戰処理費のみならず、一般の経済施策等につきましてもこれは関係方面の同意を得なきやならん場合か多いのであります。かかる場合に、自主性があるかないかという問題につきましては、非常に議論のあるところでありますが、相談はいたしましても我々は我々の責任におきまして決定し御審議を願つておるのであります。而して次に終戰処理費の使い方につきまして、終戰処理費のどういう費目で使うのかということにつきましては、一応大蔵大臣として向うと相談をしてきめるのであります。併しきまつた予算の施行につきまして、それは終戰処理費に関係があるものだ、ないものだということを判断する機関を設けることは、私は今のところ必要はないのではないかと思います。次に終戰処理関係以外のことに使われる金が最近殖えて来た、これにつきましてどういう措置をとるかという問題につきましては、只今検討いたしておりまするが、まだその必要は只今のところないと考えておるし、従来からも終戰処理費收入として別に予算に計上いたしておるのであります。今まで通りでいいのではないかと思つております。
  299. 岩間正男

    岩間正男君 自主性の論議をここで繰返す気持はありませんけれども、やはり我々は余りにルーズであつてはならんと思うのであります。我々は国民一つの輿望に対して応えなきやならん。政府もその通り日本政府である。我々は日本国会議員であります。それで成るほど占領治下ということはあると思いますが、その占領はポツダム宣言によるところの日本の平和体制、民主体制を打立てることにある。我々をして━━━━━━━━━━━━━━━━━というようなことにあるのではありません。従いまして飽くまでもこの終戰処理費の問題につきましても、我々はこういう問題をもつとけじめを明らかにして、そうしてポツダム宣言の線におけるところの占領目的というもの、こういう占領目的が十分に本当にこれは達成されておる線、我々はそういうものに対しまして希望をする自由を持つておると思うのであります。占領政策批判とかなんとかこれがいつでも問題になつて来ますけれども、我々は少くともポツダム宣言は單に我々を縛るところの線じやなくて、同時に我々に対しまして幾つかの基本的人権を保障しております。そうして又我々はその線においてはつきり自主性を持ち、そうして民主的な一つの人格を作り上げるというところに大きな、これは世界の機構が決定したところの任務があるのだ、こういうふうに考えるのであります。こういうことを考えるときに、自主性がないのだ、こういうようなことでは、この問題は解決つかない。日本人の長い間の隷属的な観念或いは封建性、こういうことからも来ておると思います。これは却つてむしろ関係方面で歯がゆいことがあるのじやないか、例えば三だけ要求したのに対してすでにこつちから気を取入つて、七、十というふうにこつちからもう取入つて行く、こういうような奴隷的な形がないかどうか、これが日本人の性格の中にありはしないか、むしろそのことは日本を占領しておる占領軍においては日本人に対して頼りない感じを持つのではないか。こういうことを考えますときに、はつきりやはり民主的な一つの人格として我々は立上る確信を持つ、そのことこそが占領政策に適合する、目的にはつきりかなうことである。一日も早くそういうような体制を私たちは作り上げることが必要だと思うのでありますが、ただ徒らにあらゆる問題についてそれに対して長いものには巻かれろ、泣く子と地頭には勝たれない、こういう形が現在日本のいろいろな問題を起しておるのじやないかというふうに考えられます。そうしてその責任者である政府自身が終戰処理費の問題なんかを通じましてもつと自主性を持つべきである。西ドイツにもそういう例があることでありまして、これはやはり当然国際法規の示すところでもありまするからして、我々はそういうような方法をとるべきじやないか、こういうふうに考えるのでありますけれども、占領治下においてはそういうものに対して何らの自主性もない、そういう内容について我々は検討する自由もないのだ、こういうふうに蔵相はお考えでありますか。この点重ねてお伺いします。
  300. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 自主性の問題につきましては、先ほど申上げた通りであります。あなたの御意見は御意見として承わつておりますが、我々は占領政策が適当にうまく行われていると確信いたしております。
  301. 岩間正男

    岩間正男君 それでは蔵相にお伺いしますが、その次に講和後において仮に日本でいつ講和ができるかわかりませんが、いろいろ観測されておるのでありますが、仮に年内に講和が達成されるというようなことになりますと、終戰処理費はどうなりますか。これは衆議院あたりでも多分今まで聞かれた問題だとも思いますけども、本院においてもこれに対する蔵相の御意見を伺つて置きたいと思うのであります。
  302. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 終戰処理費は占領治下のことであるのであります。従いまして講和ができましたならば、終戰処理費という費目はなくなることは当然と私は考えております。
  303. 岩間正男

    岩間正男君 費目はなくなるだけじやなくて、その額はどうなりますか。
  304. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 額は、費目がなくなれば、なくなることになるのであります。(笑声)
  305. 岩間正男

    岩間正男君 それはどういうふうに使用されるですか、そういう場合が起つた場合ですな。
  306. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問の点がわかりませんが、終戰処理費という費目はなくなるのでありますから、その額は計上しようがございません。零でございます。
  307. 岩間正男

    岩間正男君 現在計上しておる予算が、年度内にそういう講和情勢ということになれば、非常に余つて来るだろう、こういうふうに思うのでありますが、これに対してはどういう御意見ですか。
  308. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 年内に講和ができなくても、昭和二十四年度のように余ることはございます。それから年内にあつた場合におきましても、その講和の成立の時期ということによりまして額が違つて来るわけであります。とにかく講和が完全に成立すれば終戰処理費という費目はなくなつてしまうわけであります。
  309. 岩間正男

    岩間正男君 これはよく話に聞くのでありますが、やはり日本の再軍備問題とも関連して予備隊のようなものを非常に増強する、これは二十万にするとか、こういうような話を聞くのでありますが、そういう場合に終戰処理費がそちらのほうに使われるのじやないか、こういうようなことが、これは相当世上に言われておるのでありますが、これはういうことになりますか。
  310. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 予備隊増強のことなんか知りません。
  311. 岩間正男

    岩間正男君 これは特調のかたに伺いますが、二十三年度の決算報告書によりますと、青森三沢の飛行場建設のときですね、西松建設、これに対して三千数百万円の過払があるとしておるが、これに対して政府は五百万円しか取立てていない。これはこういう事実がございますか。
  312. 川田三郎

    政府委員(川田三郎君) 西松建設に関しまする只今の御質問は、二十三年度の会計検査院決算報告の件と承知いたしておりますが、過払金が三千万円ありまして、五百万円しか取立てていないという、そういう事実はございません。現在これは清算が完了いたしまして、取立てる分につきましては取立てが済んでおります。
  313. 岩間正男

    岩間正男君 大蔵大臣がお帰りになるそうでありますから、その前に一つだけ伺つて置きたいと思います。それはこの前河野主計局長に資料を要求いたしたのでありますが、つまり国家財政と地方財政を合算して、その中から重複分を引く、これは二十五年度二十六年度についての比較、これについての資料の提供を地財委のほうにもしたのでありますが、地財委と相談して出す、こういうお話でありましたけれども、これは大体できておりますか、資料がまだもらえないのですが……。
  314. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 資料の要求につきましては、私ずつとここに出ておりませんのでどういう要求があつたか存じません。所管の政府委員がお答えした通りと思います。
  315. 岩間正男

    岩間正男君 大体これは非常に面倒な問題でなく簡單な問題なんですが、大体どれくらい、どういう対比になりますか。我々は実はこれにつきまして数字を、大体二十五年度は国家財政、地方財政両方合せて重複分を除き九千四百六十五億、それから二十六年度は九千八百八十五億、こういうように我々は一応計算いたしておるのでありますが、大体こういうことになりますか。
  316. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) お話の資料を私ここに参りますに際して調べておつたのでありますが、少し不備な点がありますので、明日出したいと思います。  国庫の歳入のうちで地方から分担金として納入されたものはこれはやはり重複しておると思います。更に又、国から地方団体に支出される額はこれも重複して参ると思います。なお又府県から市町村へ支出される額は重複しておると思います。これらのものを差引けばいいと思いますが、明日提出いたしたいと思います。
  317. 岩間正男

    岩間正男君 これは資料をもらつて……詳しく出すと思いますが、大体大きな輪郭ではどのくらい、これは総額におきまして二十五年度より増額されておる、こういうふうに御覧になりますか。
  318. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 明日正確な数字を出して頂きましてお話さして頂きます。
  319. 岩間正男

    岩間正男君 大蔵大臣は退席されたようでありますが、この点私は又別の機会に伺いたいと思うのですが、つまり非常に国家財政の面におきましては財政規模が緊縮されている。そうしてまあ均衡予算だと、こういうことを言われているのでありますが、これは地方財政を加えない、地方財政を全く見込んでいない言い方であつて、地方財政を加えるときには、これは我々の計算によると約四百二十億増であります。その原因がどこから起つているか、この点が非常に大きな問題であると思うのであります。これは岡野国務大臣にお伺いしたいのでありますが、このような財政規模が非常に昨年に比べまして大体これは七%か八%近くこれは膨脹していると、こういうふうに……いや、それまで行きませんね、五%近くぐらい膨脹しているというふうに考えられるのでありますが、この原因をどういうふうに国務相は掴んでおられますか、伺いたい。
  320. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。御承知通りに中央の財政はだんだんと減つております。これはまあ価格調整費がなくなるとか、債務の償還がなくなるというような調子で中央の節約し得るような項目がございます。併しながら地方団体といたしましては、文化国家として再建しつつある途中でございまして、いろいろ先ほどもおつしやつたように戰時中に壊れたような道路を直すとか、又いろいろ荒廃したところの地方のいろいろなものを直すとかいうようなこともしなければなりませんし、同時に新らしい民主国家として文化施設もして行かなければならんということになりますから、地方財政はむしろ年々増加して行くと、こういうことになると思います。でございますから、中央の財政は縮つて参る形勢にありますけれども、地方はそういう意味で財政も膨脹して来るという傾向にあることは事実でございます。
  321. 岩間正男

    岩間正男君 そういう事実についてお伺いしたのではなくて、そういう膨脹している原因というものをこれはどういうふうに、まあいろいろ中央の行政が地方に非常に委讓されている、こういう形で、平衡交付金はそれほど殖えていない、こういう形におきまして非常にやはり財政規模が膨脹しているものがあると、こういうふうに思うのでありますが、こういうものをどういうふうに掴んでおられますか。昨年度性格と今年度の地方財政の性格の点で、そういう点の変化についてはこれは掴んでおられないのですか。
  322. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。詳しい数字の点につきましは政府委員から御答弁させますけれども、例えて申しますれば、税收におきましてもやはり百七十億殖えたというような調子になつております。それから又地方債もたくさん出ることでありますし、あとで数字を以つて説明させましよう。
  323. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 平衡交付金を一千百億円と見、又地方債の発行額を四百億円と仮定して参りました場合には、約三百五十億円ぐらい増加するだらうと、こういうふうに見込んでおります。
  324. 岩間正男

    岩間正男君 私の質問している点は、なぜ、財政需要が非常に増して来ているのでありますか、そういう原因ですね、国家財政のほうでは非常にこれは緊縮だと、これらは幾らでしようか、七十億ぐらい緊縮だということになつているのですが、地方財政のほうでは逆に非常にこれは膨脹している。そうして両方合せて見ましても全体の額としては、これは非常に大きな膨脹を示している。地方財政が特にそういうような膨脹を示した要因としてどういうものを考えておられるかということなのであります。つまり膨脹しているというのは事実なのでありますが、これに対して財政需要が非常に殖えているが、その財政需要が殖えているのは、国家の中央の行政機構が地方に非常に移管されている面がある。無論地方自身の財政需要が殖えている面もあるのですが、そういう面もあるのではないか、そういう点から考えましてもどういうものを要因として考えておられるか。この点を伺いたい。
  325. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 先ほど大臣からお話になりました通りだと考えておるわけでございますけれども、例えば文化的ないろいろな施設を国が行なつて参りました場合におきましても、それを実際実行いたしますのは府県なり市町村なりの自由になつて行く場合がたくさんあるわけであります。例えば結核対策の費用を国が計上せられました場合でも、二分の一を国が負担しまして、府県なり市町村なりがこれを実行するというふうな場合もございます。又国の公共事業の枠を拡充せられました場合におきましても、国の負担が二分の一なり三分の二なりでありまして、それらが府県なり、市町村において実施されます場合には、国の三分の二において増額になります部分と、市町村なり府県なりが三分の一の負担において増額になりまする部分もございまして、その増額が二重に拡大されて参るというふうに考えて頂ければよろしいと思います。
  326. 岩間正男

    岩間正男君 今述べられたほかに、やはり給与改善費とか年末手当とかこういうような面で国庫から何らの補助がない、こういうような面、それから先ほど申しました、これは一つの例でありますけれども、小さい例かも知れませんけれども、これとよく似た例がたくさん出て来ると思うのですが、何といいますか、さつきの道路修繕、こういうふうな費用、こういうような面が要因として考えられるのでありますが、こういう点で非常に財政需要が、中央から地方に行政が移管され又法令との関係で非常に義務的支出をしなければならん面が強化されている。それにもかかわらず平衡交付金が殆んど増額されていない。僅か十五億である。起債におきましても、これは仮に四百億と見まして、昨年度の起債の部分が三十億あるというふうに聞いておるのですが、そうしますと三百七十億、これは殆んど昨年と同じである。こういう形で行政移管の関係は非常に多いけれども、それに伴つたところの、つまり予算の保証がない、こういうことが明らかだと思うのであります。そこに非常に大きな財政欠陷が出て来る。地財委が出されましたところの百九億の交付金の総額というのは、遥かにこれより突破するのではないか、こういうふうに考えられます。例えば給与費、而もこれは現在の給与水準においてもそういうことが出て来るのでありますが、これは先に行つて非常に物価高、それによる給与改善という声が当然起つて来ると思いますが、こういうものに対する点、こういう点から税金で、現在又税金が非常に納まらない、この税金の問題につきましても、地財委のかたは見えておりませんが、この前資料をお願いして置いたのですが、つまり二十五年度分が五月までに全部徴收できるということの根拠、これは非常に今度の税改正にとつて、二十五年度の地方税を審議する上において非に重要だ思う、こういう観念で願つているわけですが、まだ……これはどうなつているのでしようか。
  327. 奧野誠亮

    政府委員(奧野誠亮君) 地方税の收入見込につきましては、月別の見込額を立てまして、資料として私は出したと思つておりますけれども、若しまだこの委員会に来ておりませんでしたら早急に督促したといと思つております。
  328. 岩間正男

    岩間正男君 これも検討してからですが、地方財政の税の徴收状況は非常に惡い、これは天下隠れのないと事実であります。又二十五年末におきましては約四二%という数字も先ほど政府から発表されたわけであります。こういう形で、これは神奈川県知事の先ほど挙げました公聴会における証言なんかによりますと、もう税金で教育費も賄えない、教員の給与なんかさえもこれは賄い切れない、こういう事情が出ておると思うのであります。そこでそれと連関しまして、現在赤字で予算が組めない、或いは市町村におきまして予算を組むことができないというような態勢が非常に起つておると思うのでありますが、こういう事態につきましてどのように地方自治庁のほうでは掴んでおりますか。もう大臣は帰られたのですか。
  329. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) いや、おりますよ。(笑声)
  330. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。今度各地方でいろいろ財政上困つておられるということを耳にいたします。いたしますけれども、まあ併し国の財政と地方の財政とはやはり合せて、結局平衡交付金なり補助金なりにいたしましても、どうせ出るところは国民の同じ懷でありますから、その意味におきましても、政府といたしましては、できるだけ国民の懷を軽減せせてやる、こういうような意味で全般的に見て政策を進めておるわけでございますから、平衡付金にいたしましても、財政委員会から相当欲しいというような要求がございまして、併し全般的に只今のような見地から見ますと、千百億で勘弁して頂かなければならん、こういうようなことであります。その意味におきまして、地方財政というものも相当緊縮して頂かなければならん、こう考えます。まあ只今の点におきましては、地方公共団体に対しては成る一部分においては来年度予算を組むにも相当骨を折つて苦しい思いをするということもよく知つております。同情に堪えない次第であります。でございますが、併し一旦、国家の地方、中央を合せた財政方針としてきめました以上は、できるだけ不用な需要、不急な需要というものを圧縮して、そうしてできるだけの範囲において来年度予算を組んで頂く、こういうふうに考えております。いろいろそういう方面に対しても細かい指導を財政委員会のほらからしておるような次第であります。
  331. 岩間正男

    岩間正男君 同情しておるというお話でありますけれども、これは同情よりも実際は交付金を多くやるとか、ほかにいろいろな税目を委讓するとか、そういう問題が起つて来るのじやないかと思います。平衡交付金がこういう状態ではますますこれは赤字で、財政が組めない、非常にこれはもう多くの町村がこのために苦しんで来ることと思うのでありますが、で当然これに対してむしろ平衡交付金よりももう税目を委讓してもらいたい。これも神奈川の例だと思いますけれども、大体国税と、それから県税を比較して見ますと、国税においては神奈川では二百三十七億、これに対して県税は二十二億一千四百万円、十分の一にも足らない、これで地方の自治を云々するということは、呆れたことだということを知事が明らかにされておる。もうこういう態勢が出ておるのでありますが、これは平衡交付金の性格そのものは一遍国家に吸上げて置いて、それによつて今度は地方財政を大きく支配して行く、そうして税收が或る程度まで達しなければ交付金はやらない、それから交付金についてもいろいろな條件が附いて来る、そうしてそれとの裏付はいろいろなこれは中央の行政の移管があつたり、それから特別交付金なんかでもいろいろな條件が附いて来る、そういうような一つのむしろ地方自治を推進するのじやなくて、地方自治そのものを、地方自治というような看板だけは掛けさせることによつて平衡交付金によつてこれを支配する、中央でこれを統制する、そういう性格が非常に大きいと思うのでありまして、本当のもう地方自治の面から言うならば、むしろ税目を委讓してもらいたいそれによつて本当の地方自治を図りたい。こういう要求が非常にこれは地方自治体の関係人たちの間から大きく起つておるのでありますが、これに対して今の平衡交付金制度と照らし合せて考えて、これは岡野国務相としてはどういう一体見解を持たれるのでありますか。こういうような要求に対しては、これは一体どんな御答弁をなされるのでありますか。
  332. 岡野清豪

    国務大臣(岡野清豪君) お答え申上げます。これは一つ了解を願いたいことは、地方自治の確立ということが今過渡期にある悩みでございます。と申しますことは、新憲法によりまして地方自治団体を非常に強化するという方向に進んではおりますけれども、税法もやつと昨年の春御審議を頂きましたことでございますし、又公務員法が二年も遅れまして昨年漸く通つたような調子でございます。又本当を申しますれば、税法と並進しまして地方公共団体の事務の再配分もできて来なければならなかつたはずでございますが、それも遅れております。でございますから私といたしましては、先般の税法は行政再配分の方向に向つて、その行政再配分をする趣旨に副うて根本的にできたところの税法であつたのでございます。でございますから、もう皆さん御承知でございましようが、市町村には割合に税種目、税源も整つておりますけれども、府県に対しては十分というほどのこともございませんので、お示しのように税收が非常に少くて平衡交付金で、或いは二倍或いは三倍ぐらいまでも大きいところになりますと平衡交付金でやつて行かなければならんような府県もございます。そういうようなことは、それはどういうわけでそういうことになつておるかと申しますれば、結局自治の確立がいびつに制度ができつつあるという過渡期の悩みでございますから、その点におきましては、我々としましてできるだけ府県殊に困つておる府県のほうに平衡交付金をたくさん廻すというふうにやつて行きたいと思います。併しながら何を申しましても、只今国民は税金の非常に高いことについて喘いでおる次第でございますから、十分この平衡交付金を廻して、そうして地方を助けて行くというわけには参りません。でございますから私は若しこれを端的に申しますならば、行政事務再配分の勧告をこれを実現いたしまして、地方公共団体の事務というものが立派に確立いたしました場合には、税法の改正も又止むを得んことかと思います。お説の通り税源を中央若しくは地方同士でもでございますが、お互いに入り繰りしまして、そうして大体普通の府県市町村は自分の税收で大体やつて行けるというふうに改正して行かなければならないと思います。併しこれは結局地方自治団体の本当の新らしい姿が確立してしまつた上のことでございますから、それまでは何とかいろいろ各府県に対し、又各市町村に対して御自分でいろいろ苦心をされて、そうしてこの過渡期を過ごして行つて頂きたい、こう考えておる次第でございます。
  333. 岩間正男

    岩間正男君 まあ地方自治に対しましてはいろいろまだ質問が残つておるのでありますが、これはあと一般質問のほうに讓りまして、外務次官と労働大臣がお見えのようでありますから、そのほうに質問を移したいと思うのであります。  それで外務次官に伺いたいのでありますが、これはこの前の厚生省に対しまして我々は引揚事務、こういうものを聞いたのでありますが、その対策の基礎である三十七万の、つまりソ連地区からの未引揚者、この数的根拠、これは全部外務省にあるのだ。そこでそれを基礎にしておるのだ。大体そのうち、なかなかわからない面もあるが、三十七万のうち六万ぐらいは死亡しておるらしい。三十一万ぐらいである。併しそうなんだけれども、併し実際は十五万を対象としていろいろなそういう仕事が進められておる。こういうことなんでありますが、これは三十七万の調査はどのようにしてやつておられるのであるか。それから相当な、これは多額の調査費が外務省のほうにおいて計上されておると思うのでありますが、そういう機構、それから調査方法、現在どのような成果を得られておるか、このようなことについて併せて伺いたいと思うのであります。
  334. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) 政府では今まで未帰還者の総数を三十六万九千三百八十二名と発表して参りました。この数字は終戰時におきまする戰闘或いは外国におりました、又外地におりました部隊及び邦人というものから引揚げて参りました数を差引いた数が三十六万九千三百余名。この三十六万九千の確実なる一人々々の数、状態を実はあらゆる方法で調査をいたしておるのでありまするが、現在まで判明いたしましたいわゆる個人々々の確実なる数は三十二万三千九百七十三名と相成つております。併しこれはソ連から実際の当時の捕虜、或いは抑留一般邦人なりの数を承知ができませんから、従つて日本で知り得る方法の最大の方法を以て調査する以外には方法がないのであります。ただ御承知のように或いは南樺太なり、満洲なり、朝鮮なりという方面におきましては、もう内地に親族身寄りというものがなしに、長らく永住をしておるような人たちが多いのであり、従つて内地だけで調査をいたしますということは、なかなか現在では至難なような状態になつておりまするが、幸いにいたしまして三十六万九千三百名の中で只今申しました三十二万三千九百七十三というこの数字ははつきりと確実に握ることができたような次第であります。で残りの数におきましても、実は府県等を十分督励いたしまして、なおこの約四万六千、四万五千余りの不明なる数字を内地において承知し得る限りの方法を以て調査するように進めておりまするが、国勢調査等におきましてもその方法を併せて行いましたので、だんだんと昨今におきましても数字が上つて来ておるような状態であります。
  335. 岩間正男

    岩間正男君 まあ調査方法を具体的にもつとこれは資料として提出して頂けば我々もいいと思うのでありますが、どうもこれは我々の非常に大ざつぱな類推でありますが、大体三十七万、こういうことになりますと、これは全国で一万一千町村が大体あると思われます。そういうことになりますと、約一つの町村の平均人数は約七千二百人くらいになると思います。それから又三十七万ということになりますと、その七千二百人の平均のところの町村に対しまして、大体三十一人ぐらいはどの村にももらなくちやならない。こういうことになるので、我々はそういう方法で自分の当たれるところだけ当つてつたのです。そうしますと、どこに行つてもこれは七千人で、そういうような数字が出て来ないのであります。例えば三万の町に行つた、市に行つた、そういうところでやはり噂に上つておるのが四、五人の程度である。どうもはつきりしない点もある、こういうような形で、どうも帰らないのは一人か二人である、こういうような数字にたびたび会う。そうしますと、どこかの町村におきましては厖大な平均値を割つたところが出て来なければならない。そうしますと、七千人の村におきましてやはり五十人とか、八十人とか未帰還者がなければならない村がある。そういうことになりますと非常に輿論があるわけです。一方で三十七万が国際的問題になつておる。こういうところにおきましては非常に輿論化されて来る。これは当然輿論が掴まえているだろうと思うのであります。ところがそういう事態に対しまして厚生省のほうにお聞きしますと、殆んどこれはない。外務省ではそういうような特別な物凄いこれは偏在したところがなければ辻褄が合わんのでありますが、そういうものをお持ちになつていらつしやるのかどうか。どうも三十七万というのはいろいろな点で眉唾じやないか。まあ最近聞いたところによりますとすでに死亡して、それが区役所のほうでは消している。ところがその死んだことがあとで友人からわかつたので区役所に行つて見ると、すでに消してある、そういうような人に対しまして最近は、今度はソ連地区に残つているのじやないかということでわざわざ調査しに来た実例というのが、私の近所で起つているところの事実であります。こういうような方式で若し調査が進められて行くとすると、これは架空な数字になるのじやないか。或いは又死んだのを全部ソ連地区にぶつ込んだならば話が合わないのでありまして、例えば、山脇元大将が濠洲から帰る……これは二月十九日の毎日新聞に出ているのでありますが、これによりますとまだ二百七十名が南洋地区には残つている、こういうようなことが出ている、これは全く一例です。こういうようなものも全部シベリアのほうに一緒にぶつ込まれますと大変なものです。何万何千かは全部引揚げたということを我々はしばしば政府発表として聞いている。然るに今日すでに終戰後六年たつて、そうして全くこれはまさか幽靈だと思うわけじやないのですが、こういう人が引揚げて来ている。そうしてまだ二百七十人名もおるぞと、そうして多くの人たちを連れて来ている。こういうような事態がはつきり南方では調査されている。ここに引揚問題の問題が一体ないのかどうか。つまり、私は午前中におきましても総理質問したのでありますが、これによつて一つの当然日本が置かれているところの……ポツダム宣言下の日本と連合国と、これは飽くまでも平等に我々は講和を結んで行くという態勢が、一国に傾き一国を敵対視することによつて、こういう事態というものが、全面講和の線が完全に崩れる、いや崩したいために、そういう態勢をとりたいために、むしろそういうようなものを一つの宣伝材料或いは障害物にして行つて、排外的な愛国思想を煽るために使つているのではないかと考えられるのでありまして、果して私の今申しましたことに、どういうような数字的な、真の科学的な根拠によつて次官は反駁されますか、その点を伺いたいと思うのであります。
  336. 草葉隆圓

    政府委員(草葉隆圓君) これは一昨年の五月のタス通信、又は昨年の四月二十二日のタス通信及び第三回国際連合、第五回国際連合委員会におきましての第三委員会におきまして、ソ連代表のアルチミニヤソ代表の発表によりますると、全部帰してしまつた、ただ残つているのは一千四百八十七名と、病気療養中の者九名だけだ、こういうのであります。併し今お話になりましたように……、私どもが今まで発表されましたところによりますると、確実にソ連で死亡したと認定いたしましてすでに通知を出しておりまする者が、五万七千三百五十五名あるのであります。併しソ連は、只今申上げましたように帰還者の数は、全部今まで帰りました数は出しておりまするが、死亡者につきましては今まで曾つてその数字を発表いたしておりません。従つていろいろな調査からいたしますると、ソ連におきまして死亡は、抑留中の死亡は相当多数あるということは、いろいろ参議院等における証人喚問における証言等からも、従来からよく考えられている点であろうと存じます。
  337. 岩間正男

    岩間正男君 時間がありませんので、これは私の許されました時間が来ましたので、この問題は單に三十七万という数をきめられた今の調査の根拠、やり方、こういうものについて、それからどういうような人数がこれに従事して、どういうような根拠によつてきめられたか、その点を資料としてお出し頂くことをお願いして置いて、私はこの質問は後に延ばしたいと思います。  それから保利労働大臣がわざわざお見えになつておられまして、今までお待たせして誠に申訳ない次第であります。それでこれは委員長においてあと三分ばかり頂いて、これで保利労働大臣に……質問を終るのじやありませんけれども、申訳ないので一点だけ是非お聞きして、あとに問題を残させて頂きたい。誠にこの点は済まないわけであります。それは、午前中も総理質問したのでありますけれども日本の労働政策に対しまして、国連の経済社会理事会が最近におきまして非難決議をしている。これは日本だけじやありません、スペイン、イランも含まれてありますが、政府の労働組合政策に対する非難がされた。そうしてリー国連事務総長からこれらの政府に注意を喚起するようにとの要求がなされた。こういうことでありますが、これに対しまして労相は、一体日本の労働対策そのものがその非難の決議に値いするものと考えておられるか、それともそうでないと考えておられるか。これはまあお聞きして見なくちやわからないのでありますが、その一点と、それから若し非難に値いするものだとお考えになるならば、これに対してどういうふうな責任を感じておられるか。どういうふうにこの点を一体改めて行こうと考えられているか。事は国連の決議であります。日本政府が国連に将来加盟する、そうして講和後におけるそういうコースをよく国民に示して行くのでありますが、国連からこのように非難決議がなされておる、ここにポツダム宣言とも関連があるのでありまして、非常に日本講和態勢を、或いは講和の時期について、やはり世界輿論からいうと非常に不利だと言わざるを得ない。こういう点について労相は一本どういうふうに考えておるか承わりたいと思います。
  338. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) お答え申します。只今の御質問の事柄につきましては、私ども新聞では拝見をいたしまして、事実の実態を非常に知りたく思つておりますけれども新聞で拜見いたしましただけで、実際はまだわかりません、何と申上げていいか……。
  339. 岩間正男

    岩間正男君 思い当られるところはないのですか。
  340. 保利茂

    国務大臣(保利茂君) 政府といたしましては、何ら思い当るところはございません。
  341. 岩間正男

    岩間正男君 それじやこの質問は継続して後日いたしたいと思います。
  342. 波多野鼎

    委員長(波多野鼎君) 先ほどの岩間君の発言の中に多少不穏当と思われるようなことが多々あつたので、後刻速記録を調査の上で、委員長で善処いたしたいと思いますから御了承願います。  本日にこれにて散会いたします。    午後六時四十一分散会  出席者は左の通り    委員長     波多野 鼎君    理事            石坂 豊一君            佐多 忠隆君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            櫻内 義雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            小野 義夫君            白波瀬米吉君            野田 卯一君            長谷山行毅君            一松 政二君            安井  謙君            山本 米治君            山縣 勝見君            加藤シヅエ君            下條 恭兵君            永井純一郎君            吉川末次郎君            若木 勝藏君            西郷吉之助君            新谷寅三郎君            高瀬荘太郎君            前田  穰君            菊田 七平君            鈴木 強平君            深川タマヱ君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   国務大臣    内閣總理大臣    外務大臣    吉田  茂君    大 蔵 大 臣 池田 勇人君    農 林 大 臣 廣川 弘禪君    通商産業大臣  横尾  龍君    労 働 大 臣 保利  茂君    国 務 大 臣 岡野 清豪君    国 務 大 臣 周東 英雄君   政府委員    内閣官房長官  岡崎 勝男君    国家地方警察本    部長官     斎藤  昇君    地方財政委員会   事務局財務部長  武岡 憲一君    特別調達庁次長 堀井 啓治君    特別調達庁長官    官房財務部長  川田 三郎君    地方自治政務次    官       小野  哲君    地方自治庁財政    課長      奧野 誠亮君    外務政務次官  草葉 隆圓君    外務省政務局長 島津 久大君    外務省政務局情    報部長     田付 景一君    外務省條約局長 西村 熊雄君    出入国管理庁長    官       鈴木  一君    大蔵大臣官房長 械永貞一郎君    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    国税庁直税部長    兼大蔵省主税局    税制課長    原  純夫君    農林政務次官  島村 軍次君    農林大臣官房会    計課長     伊東 正義君    農林省農政局長 藤田  巖君    農林省農地局長 平川  守君    食糧庁長官   安孫子藤吉君    林野庁長官   横川 信夫君    通商産業政務次    官       首藤 新八君    通商産業大臣官    房長      永山 時雄君    労働政務次官  山村新治郎君    労働省労働基準    局長      中西  實君    経済安定本部総    裁官房経済計画    室長      佐々木義武君    物価政務次官  郡  祐一君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君