○
公述人(野村克子君)
只今御紹介にあずかりました野村でございます。私は二人の子供の母でございまして、毎日あくせくとお台所の用事にその日その日を送
つておりますものでございます。従いまして、こういう今回の
予算であるとか、広く
日本経済一般の問題につきましては、日頃別に勉強いたす機会もなく、全くこういう方面におきましてはずぶの素人でございます。従いましてこれから今度の
予算に対して申上げますことは、たくさんいらつしやいます專門家のかたがたがお聞きになれば恐らくちぐはぐな、或いは間違つたことを一ぱい言うような、大変お聞き苦しいようなことになるかも知れないのでございますが、その点あらかじめ御寛容頂きたいと思います。私も台所をあずか
つております家庭の主婦の一人として、そういう見地から今度の
予算の説明書を読まして頂きまして、それに対しまして自分の思いましたことを概括的に申上げたいと思います。
先ず最初に今度の
予算では、私たちお台所をあずか
つておるものとして一番心配しておりますのは
物価の
上昇でございますが、このことにつきましては今度の
予算では十分今後の
物価の
上昇ということについての処置がとられていないのではないだろうかということを
感じたのでございます。成るほど私たちがお台所で使います消費財の小売
価格というものの
上昇率は、
生産財に比べまして成るほど緩慢でございます。昨年の六月から十二月にかけての消費財の、特に
食糧でございますが、
食糧の
上昇率というのは二・七%でございます。これはお米の値段がそれほど上
つていないので
食糧一般の
上昇率がこのように二・七%ぐらいにとどま
つているのであろうと思うのでございますが、ところがこの
食糧が十二月を境として一月、二月にかけましてもの凄く上
つているのでございます。例えて卑近な例を申しますと、お味噌
一つにいたしましても、お味噌百匁につきまして昨年の朝鮮動乱のときにはお味噌が十五円で買えたのでございます。その十五円のお味噌が、十二月には十八円となり、
只今は百匁二十五円いたしております。よいお味噌になりますともう三十円もいたしております。それにお塩につきましても大体昨年の六月、十二月、本年の二月と、その
上昇率を見てみますと、八十二円五十銭、百五十円、百六十五円、又豚肉を見ましても大体十二月から二月にかけまして百匁につきまして二十円ぐらい上
つております。お米の闇の値段は百四十円を前後いたしておりまして、それほど上
つておりませんが、このようにしまして主食を除いた重要な副食物というものの
上昇というものは、十二月以来非常に急激に上
つております。それから衣料につきましても、六月から十二月にかけましては、大体五三・八%の
上昇だそうでございますが、十一月から現在に至りましては、更にそれが三〇%から三五%上
つております。特に純毛品の値上りは五〇%以上にこの僅かの期間に上
つております。それに日用品、私たちに
関係の深い石鹸にいたしましても、もう十二月から
只今まで一個について大体五円、それ以上上
つております。それに又お台所用になくてはならない紙でございますが、これは一締め年末に買いました紙、二百二十円くらいの紙が
只今三百三十円に
なつております。このようにいたしまして、最近の
物価高ということは、お台所をあずかります私たち主婦にとりましては、
本当に頭痛の種なのでございます。一体今度の
物価高の原因はどこにあるか、これは先生がたに申上げるまでもなくよく御存じのことでございますが、海外の各国が第三次世界大戰に備えての軍備拡張をしている。そのために戰略物資を買溜し、或いは又今まで輸出していた品物を出さなくなる。そのために又船舶が非常に逼迫して来るというようなことのために、その上更に私たちにと
つては十二月六日における中共
貿易のストツプというようなことも原因いたしまして、今度の
物価高の原因の震源地、根源地というものが、海外の軍備拡張にあるという点に非常に大きい特徴を持
つているのではないかと思います。でこんなにして例えばこの今まで入
つておりました
輸入が非常に円滑に入
つて来なくなるし、又これからも
輸入というものは、今までのようにスムースに行かないのではないだろうかというふうに、素人の私にも
考えられるのであります。例えば最近の
輸入の動向を見て参りましても、綿花、原毛、塩、人絹パルプ、
小麦、大豆、砂糖など、そのほか私たちの日常生活に非常に
関係の深い
輸入物資の動向を見て参りますと、その
輸入物価の
上昇は、昨年の一月を一〇〇といたしますと六月には一
○四、十二月には一四一、更に二月一日現在で
平均一八六に上
つております。こんなにして私たちに
関係の深い
輸入物資の
物価がどんどん上
つて来ております。これが国内にも響いて、私たちの台所にも響いて来るのは当然なことでございます。それに戰争準備のために船舶が非常に逼迫して参りますから、船賃の値上げということも非常に大きい原因をいたしておるわけでございます。驚いたことには、この船賃というものは、私たちの
輸入いたします品物の大体五〇%から六〇%、七〇%をこの船賃というものが占めているということを私ちよつと雑誌で知りまして、実に驚いたのでございます。このように船賃というものは非常に私たちのお台所の品物の値段と大きな
関係を持
つているということ、この船賃というものはどんなに朝鮮動乱を境として上
つているのだろうか、素人なりに私
調べて見たのでございますが、非常にこれも上
つております。例えば
日本向けの海上運賃、バンクーバーの穀類が
日本に参りますには、昨年の四月は一トンにつき六ドル五十セントでございました。それが昨年十一月には九ドル二十五セントくらい、更に今年の二月になりますと十六ドル五十セントにも運賃が上
つております。更に又バンコツク米、お米のほうでございますが、これはやはり昨年の四月、十一月、本年の二月と足取りを辿
つて見ますると、一トンにつき四ドル三十セントが六ドル、更に十一ドルに上
つています。つまりこの
予算が
編成されました当時の十月或いは十一月から比べまして、ここ四カ月の間に運賃が二倍に
なつておる。こういうふうな
関係でございますから、
輸入物資の
物価がこんなに上る、運賃が上
つておりますから、これが私たちのお台所に響いて参りますのは当然でございます。こんなにいたしまして、お台所をあずか
つております主婦は非常に
物価が上ることを恐れておりますが、一体今後
物価はどんなになるだろうかということが私たち主婦の頭痛の種なんでございます。恐らく今後の
物価の
上昇の見通しということにつきましては、それぞれ專門家にお任せいたさなければならないのでありまして、これはやはり第三次世界大戰の危機というものが去らない限り、世界における
物価の
上昇ということは、或いは急激に、或いはじりじりか、どういう形をとるにいたしましても、大戰の危機というものがなくならない限り、
物価の
上昇というものが今後続けられるのではないだろうかと思うのでございます。このようにいたしますと、私たちは一銭の物の値段も上らない、全然
物価の
上昇ということを勘定に入れないでさえも、
只今私たちのお台所というものは非常に苦しいのでございます。毎日こういう立派な議会で御生活していらつしやいます議員さんには、なかなかそういうところがわか
つて頂けないのじやないかと思うのでございますが、
本当に私たち
国民の生活は、一般消費者の生活はこの際大変でございます。例えば
東京都庁が昨年の十月に四・七人の労働者の生活の実態
調査をいたしておりますが、この人たちの
調べによりますと、四・七人の生活で、これは少し多いと思うのですが、一万三千二百七十三円ぐらいの生活をいたしております。このように数字を申しますと、ははん、そうかで終
つてしまうのでございますが、一体四・七人ぐらいの家族で一万三千二百七十三円ぐらいの生活内容というものはどういうものかということをもつと具体的に申しますと、これは理論生計費を一〇〇といたしますと、こういうふうな生活というものは理論生活費を一〇〇としまして大体五〇%ぐらいに当るところの、人間としての生活以下の、動物的な生活であるということです。例えばもつとそれを具体的に申しますと、この理論生計費一〇〇と申しますのは、どういうことを基準に言
つているかと申しますと、成年男子の一日のカロリー二千四百カロリー、蛋白質、軽労働者に必要な最低限として八十五グラム、それから被服として例えばワイシャツが年一着、シャツ二年に三着、ズボン五年に二着、ズボン下一年に一着、冬服五年に一着、セーター三年に一着、オーバー五年に一着、たばこ一日七本、お酒が一月五勺、こういうふうな低いスタンダードを基準として
考えたところの理論生計費でございます。こういう理論生計費を元にしましてすら、現在私たちの暮しというものはその理論生計費の五〇%を前後しているくらいの非常に低位なものであるということを知
つて頂きたいと思うのであります。
それから最近私たち主婦の間で非常に大きい問題に
なつておりますのは、配給米が、お米の配給が来たときにすぐにお金が払えない、こういうことは皆さん御存じであるかどうか知りませんが、私の近所の配給所で
調べて見ますと、最近の私たちの近くのお米の配給所では、大体一千四百二十八世帯を対象にいたしておりますが、お米の配給を持
つて行
つてすぐお金をくれるのは約この半分です。一千四百二十八世帶のうち六百八十四世帶は殆んどいつもお金がないために、あとから取りに来るというような実情だそうです。ここの主任さんが、だんだんこの率が殖えて参
つておりますと言
つて、この主食の配給すらも取れないということが
国民生活の実態であると思います。もつといろいろこういう点具体的に申上げたいと思いますが、こんなにいたしまして、私たちは今後の
物価の
上昇、一銭も
上昇しないということを仮定いたしてすら、こういう生活をいたしておりますのに、今後
物価がだんだん上
つて行くならば、どうなるだろうかという不安が、非常に主婦の中に大きく動いております。
こういうふうに見て参りますと、こういう観点から今度の
予算を拜見いたしますと、先ず第一にその今後の
物価の
上昇ということが
予算の面に組入れられてないということの端的の現われは皆さん誰もが申されると思いますが、あの
価格調整
補給金の打切りでございます。これがたつた二百二十五億に切下げられておるというような点、それからもう
一つ端的にそれが現われておりますのは、あの
公共事業費の面において現われておると思うのであります。仮に調整
補給金二百二十五億と算定いたしておりますが、
先ほども申しましたように、この
予算が
編成されました当時は十月の
物価を基準とされているそうでございますが、この
予算説明書のC・I・Fですか、
小麦の
平均価格を、例えば米国、オーストラリア、パキスタン、カナダ、アルゼンチン等から参りますあの
平均価格を出しますと、この
予算説明書によると大体九十ドルでございます。これが昨年十月
予算が
編成されましたときの
小麦の
輸入平均価格でございます。ところがこの
小麦が今年の二月一日では百一ドルに上
つております。お米につきましては、
予算説明書に書かれておりますお米の
輸入平均価格はC・I・Fで百三十八ドルでございます。ところがこれが二月十日には百六十一ドルに上
つております。
輸入価格がこんなにいたしまして
小麦は十月から二月までに一トンについて十一ドルの
上昇を見せておりますし、お米は同期間におきまして二十四ドルの
上昇を見せております。こういうふうにいたしますと、今後一体お米或いは
小麦は一トンについて何ドル上るか私はわかりませんけれ
ども、仮に二十ドル今後上ると仮定いたしましても、もうすでに三千二百万トンの予定量を計算いたしますとここに二百十億円の狂いが出て来るのでございます。一体この
予算説明書に、その二百十億円を、どういうふうな形でおとりになる予定なのか、それは
補給金を増額するのか、或いはそれとも私たちの消費者
価格を釣上げて、その足らずまいをおとりになるのか、そういう点に私たちは非常に不安を覚えるのでございます。そういうようなことは
公共事業費についても申されると思います。成るほど昨
年度の
予算に比べますと、
公共事業費は昨
年度見返
資金の分を入れますと、今度の
公共事業費は昨
年度に比して三十五億減に
なつております。而も又昨
年度のいろいろな工事が残
つておりますが、この残
つております工事のために、五十四億というものが今
年度予算から流用されるそうでございます。こんなにいたしますと、もうこれですでに五十四億と昨
年度予算との
開きの三十五億減を加えますと八十九億というものがもう本
年度予算の中から消えちやうわけなんです。それにいろいろな資材が
騰貴いたしますから、恐らく本
年度の
公共事業というものが、
政府が予定されます事業分量を完遂いたしますためには、到底この
予算ではできないのじやなかろうかというようなことが言われます。このことは同様にしてもうあらゆる
予算費目のことについても言われるのじやないか。このように今後の
物価の
上昇ということが、二十六
年度予算の中に
考慮されていないということ、その不安感を私たちは覚えるのであります。従いましてこういう
予算でいいだろうかというふうにこの
予算に対して私たちの信頼感というものがそれだけ薄らぐのじやないだろうかと思うのでございます。
この
予算書を読みまして第二に私が
感じましたことのポイントは、
政府が産業
資金に対してお貸になる援助額に対して、民生安定とか文教方面への援助
資金のウエイトが余りにも軽過ぎはしないだろうかということを私は
感じたのでございます。産業
資金への援助というものは、何ですかむずかしい言葉で言いますと、
資本蓄積というのか何か私はそういうむずかしいことはわかりませんですが、ともかく私はこの
予算費目から、一体産業に
関係ある費目をずつと拾い取
つて見ますと、その合計が幾らになるだろうかということを自分で計算したのであります。外国為替
資金、或いは貴金属、それから農林漁業
資金、緊要物資
輸入基金、
日本輸出銀行、
日本国有鉄道、公団への損失補填等々、
一般会計の中からそういう費目を拾いまして、そのトータルを自分で出して見たのでございます。そうしますと、そのトータルが六百七十九億に
なつて、全
予算の大体一〇%を占めております。それから更に特別会計のほうを見ますと、見返
資金が殆んど産業
資金に廻されておりますので、私は驚ろきました。見返
資金の公
企業支出に九十億、私
企業支出に三百五十億、それから経済再建のために七百五十四億というように、とにかく見返
資金の費目の殆んどが産業
資金に廻されております。それから
資金運用部特別会計、この中でも
金融債に対して四百億という
貸付がなされております。それで国鉄、電通を合せますと、六百三十五億というものが
資金運用部特別会計から出されております。私はこの
一般会計と特別会計と合しまして産業に用いられる額が一体幾らになるのだろうかということを自分で出して計算いたしましたところが、私の計算によりますと、それが大体二千五百八億ぐらいになるのです。こういう費目について、嚴密にそれは産業
資金ではないかとか何とかいろいろな御
意見があるだろうと思いますが、私は素人でよくわかりませんが、素人なりに拾
つて見てそういう計算を出して見たのでございます。それでは一体私たちの民生安定、文教及び科学の振興のためにどれほど
政府からお金を出して頂いておるのかと思いまして、又そういうものを拾
つて見ますと、社会政策的な経費、住宅
関係経費、文教費というものを合算いたしますと九百二十九億になるのでございます。それを
先ほどの産業への
貸付と申しますか、援助額というものとの比率を比べて見ますと、この民生安定、文教のために用いられる額というものは、産業へ
政府がお
貸付けになる、援助なさる額の大体三七%に私のそろばんではなるのでございます。これは勿論昨
年度の
予算から見れば、民生安定、文教のために随分
政府が今年は奮発して頂いております。その御努力に対しましては、非常に感謝するのでございますが、私は慾が深いかも知れませんが、まだこれでも足りないような気がするのでございます。その民生安定、文教の面につきまして、極く常識的な観点から各費目について一瞥いたしますと、先ずこの民生安定に用いられております生活保護費の問題でございますが、これも
政府は昨
年度に比べまして、特に六大都市五人家族の生活保護費といたしまして四百十円の増額をされておりまして、誠に結構だと思うのでございますけれ
ども、よく
考えて見ますと、
先ほども申しましたように、お米はすでに小売
価格として一月から上
つております。それに、お米の上る率は僅かでございますが、
先ほど申しましたように、衣料品、味噌、醤油の上る率が非常に多うございますから、こういうふうなものを計算に入れますと、折角
政府が六大都市に住む五人家族に対し四百十円の増額をして下さ
つているのでございますが、実際にはこういつたものはみんな吹き飛んでしまうのであります。
政府の補助は、生活保護費のためにこれだけの増額をしていると、この
予算説明書の中でもそれを
一つの大きな特徴として御説明に
なつておりますが、受けるほうの側では、
物価の
上昇を計算いたしますとちつとも増額には
なつていないのであります。前ととんとんだと、或いはもつと
物価が
上昇すればそれよりも苦しくなるかも知れません。まあ受取る側といたしましては、折角経費を増額して頂きましても、少しも増額にはならんのであります。それから生活保護費と
関連いたしまして、未亡人の問題は大きな問題だろうと思うのですが、こういう点につきましても、私は
政府にもつと御
考慮願いたいと思うのです。未亡人は
只今百九十万ございますが、そのうち戰争未亡人は一五%、私は特にこの戰争未亡人に対しましては、
本当に国家がもつに丁重なる礼を盡して、この人たちの生活を保護して後顧の憂いなくその日を送らせるということは、国家の当然の義務であり、又私たち
国民の当然の義務であると思うのです。こういうことのために私たちの税金が用いられますならば、私たちは
本当に喜んで苦しい中からでも税金をお払いしたいと思うのです。未亡人百九十万のうち戰争未亡人一五%に対しては、もつと何らかの措置が特別にとられていいのではないかと思います。又十八歳未満の子供のある未亡人は、全体の未亡人の中で八八・四%でございます。そうしてこの八八・四%のうちの漸く一二%だけが生活保護費の適用を受けておるのでございます。ですから未亡人全体の中で生活保護費の適用を受けておる者の数は、極く微々たるものであると言わなければならない。では八八・四%の十八歳未満の子供を抱えた未亡人は一体どうして暮しておるか、働くにも子供があ
つて働けない、そういう未亡人の社会施設ということのために国家はどれだけのことをしておいでになるかと申しますと、
只今公立の乳児院という竜のは
全国でたつた六カ所しかないのです。それに又母子寮は
全国におきまして百三十五カ所、保育所が五百七十五カ所、助産施設が僅かに八カ所、こういうふうな社会施設の現状でございます。では一体未亡人全体の八八・四%を占める子供を抱えた未亡人は一体どうして暮したらよいのかということは、非常に大きな問題だと思うのであります。保育所に收容されております児童の数にいたしましても、公立と私立と合せまして、五歳未満の子供の総人口の僅か一・八%を收容し得るに過ぎない状態でございます。これは生活保護費について
関連して私の
意見を申上げましたが、この
予算説明書では、民生安定のために昨
年度よりも非常に大きいお金を出してそのために努力をしておると
政府がおつしやられましても、受ける側の私たちにとりましては、まだまだその御努力が何だかもの足りないように感ずるのでございます。こういうことは同様に、結核対策、或いは失業対策、住宅対策についても言われると思います。結核対策につきましても、昨
年度の
予算に比べますと、約十五倍の大きな
予算額を本
年度は計上されておりまして、非常に私たち結構だと喜んでおります。けれ
ども結核の死亡率は未だに我が国の死亡率の第一位を占めておりまして、人口一万に対しまして死亡率は一六・九%でございます。こんなに大きな死亡率を示しております。これを外国の死亡率に比べますと、デンマークにおきましては人口一万につきまして二・八人、アメリカが三人、英国では五・四人の割合でございます。
日本ではそれが十六・九人の割合で死亡しておるという現実でございます。そうして結核患者は、大体現在の推定数といたしましては、百四十万人あるのだそうでございますが、その百四十万人に対しまして、二十六
年度予算では一万七千二百のベットを用意されておりますが、百四十万の結核患者に対して一万七千二百のベットを用意したということがどういう
意味を持
つておるか、それは必要とされるベットの一・二%を満たすに過ぎないというような現状でございます。そのほか住宅のことにつきましても、同様なことが言えると思います。住宅につきましては、大体一九四九年におきまして、絶対
不足量が三百五十四万戸だと建設省では申されております。ですから毎年四十万戸以上の建設が今後必要であると、建設省の資料を読みますと書いてございますが、これに対してまして、今度の国庫
予算では、住宅
金融公庫の
貸付と、それから災害復旧、
公共事業費の中から住宅費に廻される分を合算いたしますと、本
年度においては、大体その合計が五万九千戸増設されることに
なつておりますが、未だに絶対
不足量が三百五十四万ぐらいございますから、これにつきましては、まだまだその需要を満たす点では、折角のこれだけの
予算をお立て下さいましても、まだまだその需要を満たす上におきましては僅かなものであるということを、この際もう一度御記憶を新たにして頂きたいと思うのであります。それから私たちの住んでおります疊数が、一人当り
全国平均いたしまして、都市では三・二疊ぐらいのところに住んでおるのだそうでございます。これでは決して人間らしい生活ではないということになります。
そのほか文教
予算の面でございますが、これも大変増額して頂きまして結構なんでございますが、私たち会いますお母様がたから、もうひとしく言われますことは、せめて義務教育だけは国家で全額負担して下さるようにお願いして欲しいと、今日は
予算の公聴会に出られるのだそうだが、どうかその点を
是非伝えてくれということを私は近所のお母さんがたから懇々と申されております。私の近くの小学校に行きまして、その小学校の経費を私は
調べて見たのでございます。上北沢小学校というところでございますが、そこの二十四
年度の歳出を
調べて見たところが、総歳出が四百四十六万二千百十八円出ております。このうち、区からの補助が約九十一万くらいでございます。厳密に申しますと、九十万八千四百六十七円でございます。都からの歳出が三百五十五万三千六百五十一円に
なつております。そうしてPTA及び寄附というのが、二十四
年度におきましては八十三万六千八百四円でございます。そういたしますと、このPTA及び寄附から出ております八十三万六千八百四円というお金は、丁度区から出ております九十万八千四百六十七円というお金と大体において匹敵するのでございます。そういたしますと、この上北沢小学校で使われております消粍費、燃料費、印刷費、光熱費、水道費、通信運搬費、そういつた学校の経費というものの約半分を、PTA、保護者が負担しておるという結論になるのでございます。大体子供を一人抱えておりますと、どれくらい私たち子供のためにお金を出さなければならないかと申しますと、この小学校ではPTAの会費を四十円取
つております。学校の給食代が百十円から百四十円かかります。学級費が三十日かかりまして、一人の子供を小学校に入れるのにどうしても四百円かかります。ですから子供を三人抱えておりますと、千二百円というものが小学校に行
つている子供だけに使われる。千二百ばかりと皆さんお思いになるかも知れませんが、この間の衆議院の
予算委員会の
公述人をなさいました亀山教授の
公述を読みますと、こういうことをここで大きな声で言
つていいかどうかわかりませんが、自分は大学の教授として大体手取り一万八千円くらい取
つておる。恐らく自分は一番最高であろう。けれ
ども自分の同僚の中で書物を買うために收入の一割を割いておる者はもう殆んど稀だ、ということを
公述書の中で申されております。大学の教授ですら自分の收入の一割を書籍に当てることのできないような現実でございますから、ましてやもつともつと少い收入をもら
つております私たちの家庭から三人の子供を小学校に入れますために千二百円出すということは、非常に大きな負担でございます。ですからこういう面から、
政府は
本当に文教、民生安定のために非常な努力を払
つておられることはよくわかりますが、こういう点をもう一度よくお
考え下さいまして、こういう面への
支出をもつと大きくして頂きたいということを申上げたいのであります。
それから小さなことに移りますが、この
預金部資金のことでございますが、
預金部資金の收入の大体半分というものは預金の増額から来ております。言い換えれば、私たちの零細なる郵便貯金、或いは保險というものからその收入の半分は賄われておるわけですが、当然この
預金部資金というものの運用は、大衆から取上げたお金でございますから、大衆の福祉のためにそれを還元するということが本道ではないかと思います。勿論消費
金融ということは、
金融の本道から申しますれば非常に危險ではございましようが、併しそれは何とかほかの面から操作して下さいまして、大衆から取上げたお金は大衆に返すということにもつと力を入れて頂きたいとお願いしたいのでございます。それから又小さなことでございますが、鉱工品
貿易公団の損失補填が十六億九千取
つてございますが、ああいう馬鹿げた早船事件でございますか、そういう事件のために起つた損失というものを
国民一般の税金の中から補填するということも、何かちよつと私たち理解できないような気がいたします。それに
終戰処理費も随分な額に上
つておりますが、
講和條約も本
年度中に締結されるのではないかと思いますと、若し締結された場合に、その残つた
終戰処理費というものは一体どういうために使われるのであろうか、そのお金が宙に浮きはしないだろうかということが、素人なりにも何だか不安に思われます。こういう点を思つたまま率直に申上げます。それに経済再建費として七百五十四億円が計上されておりますが、この
予算説明書では、経済再建費としてこれが具体的にどう使われるかということは書かれておりませんので、この点もう少しよくわかるように知りたいと思
つております。
その次に申上げたいことは、税金の点でございます。正直なところ税金のことに関しましては、私随分この
予算説明書を何回も何回も繰返して読んだのでございますが、正直に申しましてよくわかりませんです。この
予算説明書では、本
年度七百四十三億の減税と書いてございますが、よくこれが理解できないのでございます。で例えば
物価がこれからも上りますから、所得が仮に二十六
年度私たちが上るといたしましても、所得が上ればそれだけ税率も変
つて参りますし、それに当然必要な税金を払わなくちやならない。ところが一方
物価が非常に上
つておりますから、所得が上りましても、
物価が上
つておりますから、
本当に生活が苦しいということにつきましては、二十五
年度も二十六
年度も同じなのでございます。けれ
ども所得が上
つておりますから、それだけ税金を払わなくちやなりません。ですから結局私たちにとりましては決して減税に
なつていないので、まあ増税と言うていいかどうか知りませんが、決して私たちにと
つては減税に
なつていないということが言えるのじやないかと思うのです。それに本
年度の国税は、昨
年度に比べまして確かに五億円の減に
なつております。けれ
ども他方
地方税というものが、昨
年度に比べて今
年度は百七十八億増に
なつておりますから、差引私たち払う者にとりましては、国税であろうが、
地方税でありましようが、払う者にとりましては、百七十三億円の増税になるのじやないだろうかと思うのです。で私たちがこれ以上税金を取られますと、
本当にもうどうしていいかわからないのです。一体私たちが自分の実收入の中からどれだけ税金を国家のために払
つているのだろうかと私は不思議に思いまして、ちよつと
調べて見たんでございます。そういたしましたら、
昭和九年から十一年におきまして、実收入の約一%が租税公課のために払われております。けれ
どもこれが
昭和二十五年の十二月になりますと、実收入のうち一八%というものが租税公課のために払われているのです。而もこれが直接税でございまして、これに
間接税を含めますならば、私たちの実收入のうちの一体何%が
間接税、直接税を含めて払うことになるであろうかと思いますと、何だか恐ろしくなるような気がいたすのであります。私たちは税金をお払いすることを決して拒否するものでもありませんし、
本当に喜こんでお国のために使
つて頂きたいと思いますが、やはりそれにも限度がありますので、こういう点ももつと
予算の面で……、それでは一体具体的にお前たちはどうしろというのだと聞かれますと、私にはわかりませんですが、こういう点を御專門家のかたがたにお願いいたしまして、
本当に
国民の減税ということについてもつと御
考慮を頂きたいとお願いいたす次第でございます。
最後に申上げたいことは、この
予算の
編成の基礎と
なつております
政府の政策に対して、二、三の私の
希望意見を述べさして頂きたいと思うのです。これは直接
予算と
関係がないかも知れません。併し
政府の政策というものは
予算を決定いたしまする基礎的な要件でございますから、これに対しても一主婦として自分の
希望意見を申述べさして頂きまして私の責を果したいと思うのでありますが、先ず箇條書的に申上げますと、成るほど二十六
年度予算では随分
日本の産業再建のために力を入れておいでになる、ということが素人なみにもわかるのでございます。それも非常に結構なことだと思いますけれ
ども、そういうふうに
日本の産業再建のために力を入れて下さることも結構ですが、それと同時にその産業を
本当に汗と油とを以てその産業の歯車を廻しておりますその産業再建の真の担い手であるところの私たち働く人間、働く人々、庶民階級の生活が
本当にそれと同時にもつと安定するように御
考慮願いたいということを真剣にお願いいたしたいと思うのでございます。それからもう
一つは、
只今警察予備隊とか、海上保安官等の経費が随分出ております。今度の
予算でも再び二千三百人の海上保安官の増員を予定されているようでございますが、私から申しますならば、こういうふうな経費というものは、国内の治安維持というようなことは、
本当にこういうことのために使われるお金があるならばもつと民生を安定するような面にそのお金を廻して頂いたほうが賢明じやないだろうかと思うのでございます。警察予備隊とか海上保安官というような経費というものは、いいますれば疾患部に出ました膿の上に膏薬を貼るようなものじやないかと私は思うのです。ですからそういう膿が出ないようにするためには膏薬を貼るということよりも、もつと根本的な対策、即ち平素からその人が十分に栄養をと
つて、そうして明るい衞生的な住居に住むということが病気にならない先決問題だと思うのです。ですから膿が出てしま
つてから膏薬を貼るというような、そういうような対策でなしに、膿が出ない前にもつと栄養が皆とれるような、そうして明るい家に住めるような民生の安定ということに留意した対策というものを根本的に立て直して頂きたいと思うのです。でなければ栄養は補給しないし、暗い家に住まして置く、そして膿が幾らでも出て膿の上に膏薬を貼
つて行くというようなことばかりや
つておりますと、国内の、苦しい
国民の生活それ自体の中からもうすでに治安が崩れて行くのじやないだろうかということを私は虞れるのでございます。ですからむしろそういうお金があるならば、できるだけ直接に民生の安定、未亡人を保護するとか、母と子の施設を守るというようなことにお金を使
つて頂きたいということを
是非お願いしたいと思うのでございます。それから私
ども主婦が恐れます
物価の
上昇という問題でございますが、これから一体
物価はどれくらい上るだろうか。非常に私たち主婦は不安でございます。併しよく
考えて見ますと、最初にも申上げましたように、今度の
物価の
上昇は各国が軍備拡張をするからこういうふうに
上昇するのでございますから、究極的にはこの
物価の
上昇の根原的な原因であるところの世界の軍備拡張ということに対して
日本は断乎として反対するというような立場を、政策をしつかりと立てる決意を
政府の皆様方にお願いしたいということを
希望いたしまして、私の非常に概括的な素人的な見解を述べさして頂いた次第であります。