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1951-03-06 第10回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会 ———————————————— 昭和二十六年三月六日(火曜日)    午前十時三十九分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○昭和二十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和二十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 只今から公聽会を開催いたします。  公述人のおかたには御多忙のところ、おいで下さつたことを厚く感謝いたします。公述と質疑とで大体お一人三十分間くらいの予定でおりますから、そのつもりで一つお願いいたします。  全日本中小工業協議会中央委員長櫻田巖さんにお願いたします。
  3. 櫻田巖

    公述人櫻田巖君) 私只今御紹介にあずかりました全日本中小工業協議会委員長櫻田巖でございます。中小工業者の立場から昭和二十六年度予算につきましていろいろと検討いたしまして、ここに意見を申上げます。  大体中小工業者に直接関係があり、中小工業者のみの関係のある問題であります政府出資のうちの中小企業信用保險基金、それから国民金融公庫、この二つにつきまして先ず最初に申上げます。中小企業信用保險基金は本予算におきまして、十億計上されております。従いまして貸付金百四十四億に対する保險契約ができるわけでございます。併し、実際におきまして、先般の臨時国会におきまして五億円出資されまして、貸付金が三十六億の保險契約ができることになつておるのでありまするが、これは一月—三月が三十六億の保險契約ができるわけでありますが、その実績は、二月の二十五日現在の中小企業庁の調べを見ますると、全国で十件、その金額が一千四百万円しか成立していないのでございます。三十六億の保險契約ができるにもかかわらず、僅か一千四百万円が成立したばかりでございますので、これはこの信用保險制度そのものの再検討を必要とするのではないかと考えられます。即ち何ら資金源を与えないで、ただこの保險制度を持つたところで何ら意味がない。なお参考までに申上げますると、東京都の信用保險協会におきましては、一月中に二百二十六件、二億一千六百二十八万円の保証をいたしております。それに比べまして、僅かに先ほど申上げましたように十件で以て一千四百万円しか成立してないということは、これは制度の大いに再検討を要するのではないかと思うのでございます。この保險基金制度は、私ども全額保証を主張して参りましたが、制度となりましたのは七五%保証という、そういう点にもこの制度欠陷があるのではないかと思われます。この点におきましてはこの基金の大小、多い少いということよりも、むしろ制度を再検討して頂きたいと存じます。  次に国民金融公庫出資金でございますが、これが予算案では二十億となつております。回收金を合わせまして、本年度資金源は四十七億と、こういうことになつておりますが、昨年の国民金融公庫実績調査いたしましたところ、二十五年の一年から十二月までの申込件数が九万二百二十九件、その申込金額が百十九億七千七百十三万四千円、それで貸出しが成立いたしましたのが三万八千三百七十三件、その金額が三十四億五千五百三十一万八千円、約二八・八%ほどが申込をして、やつと借りられたという程度でございます。そうして年末の貸付残高は四万六百四十一件、残高金額で申しますと二十七億三千十二万一千円、こういうことになつておりまして、現在の出資金四十億でありますが、この四十億というのは表向きでありまして、庶民金庫の借入れ十二億を返済しておりますので、残高は二十八億ということになりますので、丁度、出資金全額が貸出されておるという現状でありますので、今後の貸出しということは、この今回予算に組まれております二十億と回收金の二十七億と合わせて四十七億が資金源であります。先ほど申しましたように、中小工業者の最も親しみのある金融機関どいうものは、この国民金融公庫であります。なお協同組合を作つておりますところでは商工組合中央金庫というのがあります。国民金融公庫こそ中小工業者の、小に属する部分の最も親しみを持つておる金融機関でございます。その金融機関に対しまして、余りにもこの出資金が少いように考えられます。先ほども申上げましたように、昨年度には百十九億を中小工業者資金を望んでおるのでありますが、僅かにその三割まで行きません、二八%ほどが希望を充たされたのみなんであります。でございますので、この出資金につきましてなお一段と御考慮が願いたい。なお出資金ばかりでなく、でき得れば預金部資金等をこの方面に廻して頂ければ、一層中小工業者の益するところがあるのではないかと考えられます。更にこの中小工業者の最も親しみのある国民金融公庫が、日本の各府県全部にあるわけではないのでありまして、全国に僅かに二十五カ所しかない、これは是非とも各府県に一カ所づつ作られまして、如何なる都道府県中小工業者も、十分に資金が得られるように御配慮が願いたいと存じます。  以上は中小工業者のみに関する問題でございますが、次に本予算を通じまして中小工業者関係のございます公共事業費、その他政府事業費につきまして検討いたしましたが、この予算におきましては、物価上昇程度をどの辺にお考えなつておるのでありましようか。最近二月末におきまする物価指数は、動乱前に比べまして二九%何がしということになつております。昨年下半期は非常に物価上昇がございましたので、その例といたしましては、六月以降に公共事業の入札は大抵予算超過なつております。これはお調べになればわかると思いますが、そのために今まで関係のあつた官庁に対しまして、予算超過の場合には、業者予算内の不当なる安値で以て押しつけられております。これは今後注文が、取れないといかんという心配からでございます。そして直接に、或いは大企業下請といたしましては間接に多大の犠牲を強いられておりまして、更に不当な安値で以て仕事を押しつけられますると、親企業の損失、これは下請である中小工業に対しましては代金の不払となつて現われて参ります。更に原料高によりまする運転資金増加のようなものが得られるどころか、むしろ再生産にも必要な運転資金さえ事欠くようになつて参りまして、更にこの運転資金すら、名目的な利益に対する所得税として取上げられているのであります。もはやこれ以上の出血というものは堪えられないと考えます。昭和二十六年度のこの予算の説明の冒頭におきまして、政府安定政策の実施と共に、久しきに亘つたインフレーシヨンが收束して、そして生産も又健実増加を示すに至つた、こう謳歌されておりますが、併しながら、この安定は中小工業者とその労務者との犠牲において行われたものであると考えます。従いまして昭和二十六年度予算におきまして、物価上昇を加味されまして、更に予算の組替えをなされますことを希望いたします。若しこれが不可能である、そう言うならば、速かに予算補正をお願いしたいと存じます。若し飽くまでもこの安定政策の旗印の下に本予算を強行なされるならば、公共事業費とか、その他政府予算に直接間接関係のあります中小工業者は壊滅するだろうと存じます。一方におきまして基礎原料生産者、これは主として大企業でありまするが、これは自由経済の下に利潤を上げておりまするが、その加工業者である中小工業者は、製品安原料高のために喘いでいるのでございます。例を鉄鋼と鉄でございますが、鉄とその加工品である、公共事業に最も関係の多い鉄骨橋梁というようなものに例をとつて見ますと、鉄骨とか橋梁というものは、工場製作の場合に原価の五〇%が鉄の値段である、鉄鍋価格であるというのがこれがもう数十年来の鉄則であつた。然るに昨年の十月になりますと、原価におきまして鉄鋼価格が五五%を占めて来た。本年の二月に参りますと、更に鉄鋼価格が六二%になつておる。更に本日も新聞に出ております通り銑鉄補給金を撤廃されまして、将来の四月、五月、六月の八幡製鉄の建値を見ますと、四万三千円のべース、マル公四万三千円、即ち三五%値上げということになつております。ですから如何に原料価格の値上りということが、中小工業者を圧迫しているかということがおわかりになると思います。でございますので、ここにおいて銑鉄補給金の撤廃というようなものも御考慮を願いたいと思います。基礎原料生産者、即ち鉄鋼とかセメントとか非鉄金属生産者は、では自由経済の下で以て果して正当な利潤を上げているでしようか。大企業が独占的に生産をしております基礎原料で、中小工業者は非常に不当に不利益をこうむつておる。これが非常に最近多くなつております。即ち中小工業におきまして注文を取り、所要資材原料メーカーなり問屋なりに先物の契約をする、ところが原料メーカー並びに問屋は、契約当時の価格よりも現物を引渡すときの価格が高い場合には契約を履行しない。こういうことが最近しばしば行われておりまして、この面におきましても、中小工業が非常な不利益をこうむつておるのでございます。私ども戰争中外国雑誌を、前金が残つているからと送つてもらつた例もありますが、商業道徳頽廃と言えば頽廃かも知れませんが、或いは独占企業の横暴と言えば横暴かも知れません。この場合適正な、公正なこういう企業との契約の履行が行われるように仕向けるための、公正な調停機関を設けて頂くというようなことも考えられるのではないかと思います。  以上のようなわけで、基礎原料生産者である大企業利潤というものは、必ずしも正当ではないと思います。若しもこの安定政策を固持して、そうしてこの本予算を固持されるならば、基礎原料価格と、それから鉄道運賃電力料というようなものの統制価格、並びに配給の公正ということも考慮して頂かなければ、中小工業は非常な圧迫を受けるのではないかと思います。電力の再編成の後の電力会社の重役などの顔触れよりも、むしろ再編成後の電力料がどうなるかといようなことを速かに研究すべきではないかと存じます。特にお願いいたして置きますことは、安定政策の下にこの予算を強行されたならば、中小工業というものは、昨年度以上の出血のために壞滅をいたします。従いまして若しも強行されるならば、幾多の中小工業を救済する施策を施して頂きたいと思います。  以上中小企業信用保險基金並びに国民金融公庫、それから公共事業費間接に直接に繋つておりまする中小工業問題につきまして申上げまして、私の考えておりまする意見を終ります。
  4. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 御質問のかたがあつたらどうぞ。
  5. 東隆

    東隆君 只今お話になりましたうちで、国民金融公庫とそれから信用保險のほうの関係のことはよくわかつたのですが、商工協同組合金庫ですね、この関係お話では余り高く評価されておらんということになります。私は中小企業者に対する金融、こういう面を考えたときに、この面を私は相当強めて行かなければ本当意味における中小企業者には金融の途が開かれんのではないかと、こう考えます。市中銀行その他によつて金融は、もとよりむずかしいし、又新らしい制度によつて勿論出しますけれども、これも個人取引の形で行きますれば、資金はなかなか出ると思えません。そんなような考え商工協同組合金庫ですか、この関係は、私は将来とも大きく重点を置いて行かなければならんものと、こう考えますが、御意見は如何ですか。
  6. 櫻田巖

    公述人櫻田巖君) 只今のお尋ねの商工協同組合金庫商工組合中央金庫だと思います。商工組合中央金庫は、確かに中小工業者に対して十分とは申せませんが、金融機関として中小工業者は非常に利用しております。ただこれが協同組合を作らないと、商工組合中央金庫から借りられないのでございます。で、その協同組合の、事業協同組合信用協同組合、それから企業組合とございますが、事業協同組合というものがなかなかその中小工業者がうまく運営ができないのでございます。それで商工組合中央金庫から借りる場合に、共同の保証をする、連帯保証をするというような場合、最初借りるときには馬鹿に皆乗り気になるのでございますが、いざ保証ということになると二の足を踏むというようなことがございまして、事業協同組合がなかなかその足並が揃わないのでございます。これは中小工業者として大いに反省せなければならんことでありますが、そんなわけで商工組合中央金庫との結び付きがなかなかできない。中には非常にうまく行つた事業協同組合は、大いに商工中央金庫を利用しております。
  7. 東隆

    東隆君 今の場合に私は重点を置いて、やはり協同組合を通して資金を借りると、こういう形をとらんければ、中小企業家はこれは立つて行かないのじやないか、こういうことを考えるのですが、私は。それでそのほかにいろいろの途を開けば開くほど、恐らくはこの協同組合による途は非常に弱体化して行くんじやないかと、こういうことを考えるのですが、勿論協同組合作つて資金の融通を受ける。こういうことはむずかしいことかも知れませんけれども、併し中小企業家が生きて行く唯一の方法はやはり協同組合じやないかと、こう考えるのですが、如何ですか。
  8. 櫻田巖

    公述人櫻田巖君) お説の通りでございまして、私ども協同組合運動というものをやつておりまして、非常に努力はしておるのでありますけれども、遺憾ながら、まだ中小工業者の中にお山の大将が多いのでございまして、そのために足並が揃わないのであります。その協同組合の線に行くのが本当だろうと思つております。  なお見返資金の問題でございますが、あの見返資金は、非常に中小工業の枠が余つておるというのも、やはりこれは市中銀行協力協調融資でございますね。それができないためだろうと思います。あの線はうまく行つたら非常に有効なのでありますけれども、遺憾ながら市中銀行協力がないために、見返資金を余すというようなことになつております。
  9. 高良とみ

    高良とみ君 先ほどお話の中に、地方中小企業者国民金融金庫を利用するのに不便があるようなお話があつたのでありますが、その意味がどういう点であるのであるか。政府国民に出しましたものによりますと、やはり東京、大阪、名古屋、兵庫、福岡、山口等相当出ております。北海道も随分出ておるようですが、どういうところに困難があるのでありますか。
  10. 櫻田巖

    公述人櫻田巖君) 私のところへ参りましたのでは、富山県から非常に、是非とも富山県に作つてくれという希望が出ておりました。現在、最近二十五カ所でございますので、各府県一つずつないわけでございます。
  11. 高良とみ

    高良とみ君 ここに出ておる表によりますと、富山県なども貸出しを受けておるようでありますが、そういうふうにしまして地方へいろいろな中央仕事を持つて行きますと、それだけ又地方に向う費用が要るわけでありまして、そういう点で、現在の機構を余り費用をかけずに国民金融金庫を便利にする案がおありになつたら伺いたいと思います。
  12. 櫻田巖

    公述人櫻田巖君) 国民金融公庫の貸出しは、これは申込みますと、面接をしまして、それから実地調査をするわけであります。その実地調査をするのには、遠くの所から実地調査に来て頂きますと、これは大変な費用がかかるのでございます。そうしてそれじや貸出金額はと申しますと、僅か最高が百万円でございまして、平均から行きますと、十億とか、十五億ばかり、十五億が一番多いのでございます。そういうところを他の府県から調査に行かれますと、非常なし費用がかかりますし、これは何も店舗を設けなくとも、これは他の銀行代理店のような形で各府県に設けられてもいいのじやないかと考えます。非常に貸出す金額が少いのに対しまして、今調査に行きますと、非常な費用がかかるのであります。   —————————————
  13. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) よろしうございますか。  では次に武藏大学経済学部長鈴木武雄さんにお願いいたします。
  14. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 鈴木武雄でございます。私は広い問題について意見を述べさして頂きたいと思います。問題を次の三点に整理いたしまして申上げたいと思います。  その第一は日本経済の今後の見通しと関連いたしまして、この二十六年度予算案は、果して安定性を持つた予算、換言しますならば、客観情勢の変化に伴つて、十分これに適応して財政面からの効果を挙げて行くことができる予算であると言うことができるかどうかという問題であります。  それからその第二は、日本経済当面の課題である資本蓄積との関連におきまして、この二十六年度予算案は、果して十分にその促進的効果を挙げ得るかどうかという問題であります。そうしてその第三は、一般国民が何よりも最大の関心を抱いております国民生活の安定と向上ということに対して、この予算案はどれだけの積極的乃至は消極的な影響を及ぼすかという問題であります。この三点につきまして、以下時間の許します限り私見を述べさして頂きたいと思います。  先ず第一の問題でありますが、私見の結論から先に申上げますならば、新予算案は、国会においてまだその審議が行われております現在において、すでに早くもその客観情勢とのずれが余りにも顯著であるということであります。これは一つ感じ、或いは印象といたしましては、もはや誰の目にも明らかなことでありまして、国会における予算案審議が低調であるという新聞などの非難も、時たまたまダレス特使の来日などがありまして、講和問題に関心が集中されたというような関係もありましようが、実は予算案そのものが、すでに当面の政治、経済情勢から余りにも浮き上り、置き去られた、いわば形骸化したものになつているということ、どうせ間もなく補正を必要とするような予算案を、真面目に審議するだけの張合がないということによるところも非常に大きいと考えられるのでありまして、この点まあ新聞などの非難もありますけれども、私は国会に対しましても御同情申上げる次第でございます。(笑声)  それでは漠然たる感じ印象という程度でなしに、具体的に、如何なる点で予算案はすでに客観的情勢から浮上つてしまつて、大きなずれを来たしているかということにつきまして二、三指摘させて頂きたいと思います。その前に、例えば最近大いに論議されております我が国の講和後における自衞乃至は再軍備の問題は、これは好むと好まざるとにかかわらず、若しそれが具体化されることになりますならば、その規模の如何にかかわらず、又その装備その他に関して他国の援助が行われるか否かにかかわらず、予算補正を要することはこれは申すまでもありませんが、併しこの問題で現在の予算案のいわゆる浮上りでありますとか、ずれでありますとか、そういうようなことを云々するのは、これは少しく行き過ぎであつて、又政府に対しても酷であると存じます。こういうそれこそいわば仮定の問題が予算案に全然予定されていないのは、これはむしろ当然のことでありまして、これこそそういうことになりましたときに予算補正すべき性質のものであります。従つてこの問題につきましては、この予算案としては、講和との関連におきまして変質いたしますこの終戰処理費千二十七億円というポケットがあるということで、只今のところではよいと思います。その代りに、私は以下に取上げます諸点につきましては、この終戰処理費はもはやポケット的な予備費的な役割を期待しないほうがよいという前提を置かせて頂きたいと存ずるものであります。従つて二十六年度一般会計予算におきましては、いわゆる法定外債務償還費はもはや計上されておらず、終戰処理費が今申しました意味におきましてポケット的役割を期待し得ないといたしますならば、この彈力性を期待し得るものとしまして強いて挙げますならば、本来の予備費十億円のほかに、若し貿易の状態が、変り又貿易金融政策の変更があつたといたしますならば、外為会計への五百億円繰入れのいわゆるインヴエントリー・ファイナンス、それから日本輸出銀行への出資五十億円等、合わせまして約六百億円内外に過ぎないと思うのであります。而もその大部分をなしますこの外為会計への五百億円のインヴエントリー・ファイナンスは、形式上は一応今申しましたように彈力性があると言うことができますが、実際には後に申しますように、不足することこそあれ節約財源にはなり得ないと考えられるのであります。で、尤もこの政府の握つております資金といたしましては、そのほかに、つまり一般会計経営財源のほかに見返資金、今度の予算で千百九十四億円、預金部資金千五百五十億円、貴金属特別会計が保有しておる金額は、これが約七百億円くらいあると思います。それから約五億ドル、邦貨に換算いたしまして千八百億円と伝えられます手持外貨などがあり、更に必要とあれば回收を強行するか乃至強化することによりまして、資金化することのできる各種の既存の政府投資資産がありますが、これらの政府資金の動員は、いうまでもなく資本的支出のために利用さるべきでありまして、経常的な経費の不足の埋め合せに使用さるべきでないのであります。  そこで私は、一般会計予算におけるいわゆる彈力性というものは、この予算案における税制でありますとか、或いは公債收入に依存しないとかいう歳入政策の建前を前提といたしますならば、自然増收でもありません限り、彈力性は極めて小さいもので、即ち予算以上に、或いは予算外支出の必要が今後生じました場合には、増税乃至新税の創設か、或いは公債依存かが必要になるものといたしまして、お話を進めて行きたいと思うのであります。  そこで予算案客観的情勢から大いにずれておると考えられます第一の点は、価格調整費、即ち補給金予算であります。この予算は二十六年度二百二十五億円でありまして、輸入食糧に対する補給金一本となつております。これはドツジ氏のいわゆる竹馬の足としての当然の運命であるとは言えますが、そうであるといたしましても、輸入食糧補給金を存続いたします以上、この程度予算額を以てしては、すでに新年度に入らない現在の情勢からいたしましても、輸入補給金制度そのものの目的を果し得ないことはすでに明らかであるということが一つ。それから今後の日本経済の動向を考えますときに、補給金を單に竹馬の足として、ひたすらに切断する方向に進むことができるかどうかということがその二であります。前者の点につきましては、予算案編成の際の輸入食糧單価見積り、即ち予算單価と現在における実際の輸入單価との開きがすでに相当のものでありまして、今後一年間の平均を予想いたしますならば、一層大きい開きとなるだろうということ、従つて三百二十万トンの食糧輸入計画計画通りに行われるとしますならば、この予算額では大いに不足するということであります。即ち予算編成以後における食糧国際価格騰貴、なかんずく船運賃騰貴の結果、CIF輸入單価において、先月初旬の相場は、小麦について十ドル乃至十二、三ドル、大麦について約二十ドル、予算單価をすでに上廻つておるのでありまして、米につきましてもビルマ、シャムなどの産地価格は、すでにCIF予算單価を上廻つておるのであります。現在においてすでに然りでありますから、四月から伺う一カ年間の輸入單価といたしましては、当然もつと大きな開きが予想されるのでありまして、三百二十万トンの輸入計画量が確保できないという場合は別問題でありますが——それは又それで重大問題であることは言うまでもありませんが、確保するといたしますならば、輸入食糧補給金は約二百億円以上も不足するということになると思うのであります。国際小麦協定の加入が許されますならば、比較的安く輸入ができるといたしましても、輸入食糧補給金がこの予算額では、相当額不足を来すということはもはや疑う余地がないと思います。  後者の点につきましては、昨年九月、二十六年度予算政府原案閣議内定を見た際に問題となりました、銑鉄補給金の廃止に代る銑鉄助成金というものは、この最終決定予算案には取上げられませんでしたが、いわゆる外からのインフレ波及の防止の必要と関連いたしまして、基礎原料輸入価格を調整するという新たな観点から、昨今銑鉄、燐鉱石等に対する新補給金制度なるものの構想が、各方面でかなり行われておるようでありまして、伝えられますところによりますれば、政府も日米経済協力のために、先の自立経済三カ年計画の修正乃至補強とも言うべき、緊急経済政策二カ年計画の急遽立案を進めておるということでありますが、この新計画には新補給金制度なるものが、織り込まれておるということであります。そうしてその財源としては、輸出税及び超過利得税が考えられておるということであります。私は今この新補給金制度なるものの是非については何とも申上げませんが、そういう制度をとるというのでありますならば、銑鉄補給金と燐鉱石補給金は、この三月末で廃止になることでもありますから、できるだけけ連続性を保たせる必要もあつて、早いに越したことはありませんし、又これはもはや予算の量的不足の問題ではなくて、補給金政策及び補給金予算の立てかた、そのものの質的変化の問題であり、当然予算補正の問題だと言わなければならないと思います。  予算案ずれの第二の点は、公共事業費予算であります。公共事業費は本年度予算より七十五億円弱の増加であり、且つ災害復旧資金額国庫負担が新予算案では廃止となりまして、三分の一を地方団体の負担とする旧来の制度を復活させているという点から申しましても、この地方負担の関係は、地方行政委員会議の勧告によりまして、その後の閣議決定では約四分の一ほどの地方負担になるようでありまして、その点多少の改善でありますが、中央地方を通ずる公共事業費予算額は、本年度に比べまして約六%程度の増額ということにまあなつております。併しこの予算編成当時の予算單価が、或る程度の中を見込んであつたといたしましても、その後今日までの物価上昇、及び今後一年間に予想される物価上昇考えますときに、そうして公共事業費の対象となりますこの鉄鋼、セメント、木材などの資材におきまして、特に物価上昇率が激しいということを考えますとき、この程度予算額を以て、果してこの予定計画通り公共事業を遂行し得るか否か、甚だ疑問だと言わなければなりません。先ず不可能と断じても恐らく過言ではないと思います。不景気、有効需要の不足で、鉄鋼、セメント、木材などの資材がストツク、滯貨となつているときならばいざ知らず、現在のような状態におきましては、いわゆるケインズ的な景気政策としての、公共投資政策の意味は殆んど存在しないのでありまして、従つて私は現状の下におきましては、必ずしも公共事業費の増額論者ではないのでありますけれども、戰時中及び戰後における我が国土の荒廃と、頻発する災実並びに災害復旧の不完全というようなことが、互いに原因結果の惡循環をなしている現状を考えますときに、成る程度公共事業費というものは、これは人間の最低生活費にも比すべき、いわば国土の最低生活費であると思います。これだけは国民も成る程度の負担を我慢して確保することが、結局国民自身のためであろうと思うのであります。で、この予算案における公共事業費金額では、予定の事業量の先途は不可能であります。従つて予算補正して増額するか、さもなければ事業量を予定計画よりも削減して、国土の最低生活費を一層小さくするか以外にはないであろうと思うのであります。  なお、公共事業費予算のこのずれは、地方財政にも大きな影響を持ちますが、これと関連いたしまして地方財政平衡交付金が予算計上額一千百億円で、第二次シヤウプ勧告の、余剩財源六百億円以上の場合、平衡交付金千三百億円という線とは非常に遠いのであります。又、地方財政委員会が地方財政平衡交付金法第六條に基きまして内閣に勧告した交付金の総額千二百十億円よりも百億円以上少いということは、地方財政との関係におきまして、この予算案がなお非常に大きな不安定な要素を残すものであると思われるのであります。  それから予算案ずれの第三点は、外為特別会計へのインベントリー・ファイナンス五百億円の予算であります。これはいわゆる貿易インフレを財政面から抑制する手段であり、ドツジ氏の構想における、外からのインフン波及を遮断するための中立財政政策の主眼であることは申すまでもありませんが、この五百億円の算出基礎となりました国際收支の見通しは、外貨受取が輸出十一億ドル、特需一億八千万ドル、貿易外一億八千万ドル、計十四億六千万ドルであるのに対しまして、外貨支払が輸入十三億二千十七百万ドル、貿易外五千五百万ドル、計十三億八千二百万ドルでありまして、差引外貨受取超過七千八百万ドルとなつております。この邦貨換算額二百八十億円が、外為会計の為替買上げによる円貨支払超過額でありますが、これと日銀ユーザンスによる資金不足とを見込みまして五百億円を、租税等の経営財源で賄うことによりまして通貨膨脹を阻止するという計算であります。ところが昨年下半期における外貨の受取超過の実績は二億六千六百余万ドルに上つたのでありますが、これは明らかに昨年六月末に勃発いたしました朝鮮動乱に伴う新情勢によるものであります。この傾向は恐らく今後も続き、外貨受取超過の中はますます大きくなるとも考えられます。他面輸入促進の確保のために、輸入金融の円滑化に努力が払われるといたしますならば、五百億程度インヴエントリー・ファイナンスでは、そもそもインヴエントリー・フアナンスの目的であるインフレ抑制には効果がないと考えられるのであります。即ち外為会計からの円資金払出超過が巨額になるといたしますれば、そうしてインヴエントリー・ファイナンス方式による財政的相殺方策を貫徹いたしますとするならば、恐らく相当予算増額を必至とするでありましよう。尤も最近におきましては輸入確保のかけ声に促がされて、又何でもかんでも輸入金融ならば優先的に円滑化するという傾向に恵まれまして、輸入金額の上では予想以上に伸びております。これは価格にかまわず輸入が行われておるということ、又例えば台湾のバナナの輸入に対してもユーザンスが行われておるというような事情からでありまして、(「もう少しゆつくりやつて下さい」と呼ぶ者あり)時間に限りがありますので、十分、言いたいことがたくさんあるものですから……、数量的には必ずしも楽観すべき状態ではないということ、又本当に必要な原料物資が大量に輸入されておるというわけではないということを注意すべきでありますが、ともかくこの金額の上では輸入は最近かなり伸びております。一—三月の輸入実績は、予想外に買い進まれまして、八億ドルに達する模様でありますので、四—六月の外貨予算は、資金繰りが苦しくなりまして、四億五千万ドル見当にとどまるらしいというようなことが言われております。それかあらんか、外為委員会では、二十六年の年間輸入は、海外物価の値上りやそれから備蓄輸入を見込みますと二十二億ドルに達するにもかかわらず、輸出は十七億ドル見当と見られますから、むしろ大巾の輸入超過が予想されるとしまして、講和後に予想されますところの国際通貨基金への加入でありますとか、或いは外債の利払等に伴う外貨の必要額をも考慮いたしまして、早くも我が国のドル・ポジシヨンの前途に楽観を許さんものがあると見ておるようであります。若しこの外為委員会の最近の見通しが正しく、輸入超過による外貨の支払超過が生ずるといたしますならど、今懸念されております輸出超過に基く国内通貨膨脹の原因は解消し、問題は專ら日銀ユーザンスを含めた輸入金融の面に移行することとなるわけでありますが、若しこの輸入金融が現状より引締められますか、或いは輸入物資の如何による、輸入物資の区別による質的統制が行われるといたしますならば、そんなに輸入超過にはならないでありましようし、又それでも輸入超過になるほど輸入を促進するといたしますならば、現在の予算案に計上されておりますインヴエントリー・ファイナンスとは違つた意味のものではありますが、やはり五百億円以上の財政資金が必要でありましよう。これを金融面における信用膨脹を以て賄いますならば、やはりインフレとなるからであります。若し備蓄輸入相当程度行われるのでありますならば、輸出超過の場合と違つた意味におけるインベントリー・ファイナンス、即ち財政による手持品金融が必要となるわけであります。  以上このように客観情勢との関連におきまして予算案を分析して参りますと、予算案がすでに客観情勢との関連におきまして大きなずれを来しておるということは明らかであります。これは予算案編成が、中共の朝鮮動乱介入以前に行われました当然の結果だと思われますし又そのことは必ずしも予算編成当局乃至政府の見通しの無能と言うことはできません。事ほどさように最近の客観情勢のテンポは何人の予算をも許さない早さで激変しておるのでありますが、それならそれで、少くとも年頭の国会休会中から先月末くらいまでの間に、政府は最近の新情勢を織込んだ補正第一号の予算編成すべきであつたと、私は思うのであります。このような急テンポで進展する客観情勢の下におきましては、本予算案と併行いたしまして補正予算案国会提出することは、決して政府の面子にかかわることではなくて、むしろ国会及び延いて国民の権威を尊重することであり、国会及び国民に対して親切なことと私は思うのであります。形骸化した予算案、間もなく補正が必至であることのすでに明らかな予算案国会に提案することだけで手を拱いていることに対しましては、国民の代表たる国会は、何らかの意思表示があつて然るべきではないかと私は存ずるのであります。  次に二十六年度予算案資本蓄積との関連であります。資本蓄積ということは、今や我が国経済の至上命令となつておるようでありますが、自立経済審議会の自立経済計画答申におきましても、自立経済計画達成のためには、資本蓄積を強力に推進することが絶対の要請とされるといたしまして、先ず個人の貯蓄増加企業の自己蓄積などの民間資本の蓄積促進を第一義としなければならないが、我が国経済の現状においては、それだけでは資本蓄積は量的に不足を生ずる見込であるから、これを補うために財政による資本蓄積を図らねばならない、こういうふうに述べておるのであります。明年度予算案は、我る意味では自立経済計画のこうした資本蓄積への要請を織り込んでおるとも言うことができます。即ち池田蔵相の財政演説によりますというと、二十六年度における一般会計、見返資金資金運用部等、政府資金による長期産業資金供給額は九百七十六億円で、二十五年度の六百五十六億円に比し三百二十億円の増加であり、このほか今度の予算案には問い合いませんでしたが、全額政府出資による日本開発銀行の設置ということが構想されており、更にいわゆる税法上の七百四十三億円の減税による国民負担軽減、法人積立金課税の廃止、再評価積立金の資本繰入れの二十六年度中実施、再々評価の実施、固定資産償却年限の短縮、特定の新規設備に対する三年間五割の増加償却の容認、預貯金利子の源泉選択課税の復活、生命保險料及び保險金に関する課税上の優遇措置などを内容といたします税制改正案が国会に提案されておるのであります。以上は民間資本の蓄積のための財政措置でありまするが、公共事業費及び公共企業の建設置、電気通信、国鉄というような公共企業の建設費と公共事業費、これを国家資本の蓄積と見ますならば、そこには人件費も含まれてはおりますが、国家資本の蓄積は、私の計算によりますというと、一般会計公共事業費千百六億円、住宅金融公庫へ出資五十億円、資金運用部よりの電通国鉄を除きます投資が八十五億円、電通特別会計の建設費二百四十七億円、この中には資金運用部からの百三十五億円を含んでおります。それから国有鉄道の建設費三百十二億円、この中には資金運用部の百億円と一般会計の二十億円を含んでおります。合計いたしまして千八百億円に達します。尤もこの地方財政投資はその中に含まれておりません。これは二十五年度当初予算における該当額千七百六十四億に比べまして大した増加ではありませんが、そこで二十六年度における資金計画によりますというと、産業設備資金は二千四百六十四億円ということになつておりまして、その供給源は、第一が、企業自己蓄積資金、第二に株式、第三に社債、第四に金融機関貸出、第五に見返資金企業投資、第六に農村漁業特別会計となつておりますが、このうち財政資金と民間資金との割合はどうなつているかと申しますというと、今申しました第五と第六、つまり見返資金企業投資と農村漁業特別会計、これが財政資金であることは申すまでもありませんが、例えば第四の金融機関の貸出というものの中には資金運用部の金融債引受などの財政資金が含まれているはずであります。そこで先ほど申しました池田蔵相の財政演説における政府資金による長期産業資金供給九百七十六億円、これが全部産業設備資金になるといたしますならば、産業設備資金における財政資金の割合は三九・六%となります。従つてこのほかに、前に申しました公共投資による国家資本の蓄積千八百億円を加えますというと、国家資本の蓄積を合わしましての実物資本の形成に向けられる全長期資金のうち、財政資金の占める比重は約六五%となりまして、全資本蓄積において占める財政資金の比重というものは極めて大きいと言うことができるのであります。若し日本開発銀行が二十六年度中に比較的早い時期に創設せられることとなりますならば、この比重は更に増大することとなるわけでありますが、それを無観するといたしましても、残り三五%の民間資金は、これは国家資本の蓄積には全く動員せられないのであります。曾ては鉄道公債、電話公債を初め、道路公債に至りますまで民間資本の国家本蓄積への動員が相当大きかつたことを思い起しますというと、今日では全くの逆でありまし、むしろ財政資金に支援せられて、民間実物資本形成の一部にこの民間資金が参加しているというに過ぎないのであります。而もこのような民間資金の蓄積すら、前に申しましたように、減税その他の租税措置を必要としているということを知らなければならないのであります。  ところで資本蓄積は、言うまでもなく国民所得の中から充当されねばなりませんが、この国民所得は又個人消費と財政消費にも支出されなければならないのであります。そこで国民所得の支出配分上、資本蓄積と個人並びに財政消費とは両立しないものでありますが、若し個人消費を余り犠牲にしないようにして、即ち国民生活水準を、例えば少なくとも自立経済計画の二十六年度八三%、二十八年度八九%の線に維持しつつ資本蓄積を進めようといたしますならば、どうしても財政消費を削減せざるを得ないわけであります。そうして自立経済計画は、御承知のように資政消費を削減して、この分を民間資金の蓄積促進のための減税と、財政資金による投資とに振り向けることによります国民生活水準の向上、それはまあ二十八年度八九%というふうに、決して十分とは言えませんが、その国民生活水準の向上と資本蓄積とを併進させると、こう考えているのであります。ところが先ほど分析いたしましたように、財政消費は今後一層増加する公算が大きいのでありまして、即ちせめて自立経済計画における国民生活水準の線だけでも確保しようといたしますならば、財政投資が削減されざるを得なくなる。それは民間資本形成か国家資本形成か、いずれにしても資本蓄積を阻害せざるを得ないのであります。かくて資本蓄積国民生活水準の不十分とはいえ向上との併進ということは不可能となりまして、いずれかを犠牲にしなければならない、二者択一に追い込まれざるを得ないと思うのであります。  そこで第三の問題点といたしましての国民生活水準との関連における明年度予算案の問題であります。今次税制改正によります七百四十三億円の減税が、国民負担の軽減をもたらし、その限り国民生活水準の向上に資するものであることは申すまでもありません。そうして公務員の給与水準引上げも、公務員のみならず、これまで公務員給与ベースに準じた給与に縛られておりました民間給与にも影響したであろうことは申すまでもありません。併し予算編成後の物価上昇と及び今後に予想される物価上昇は、今度の減税と給与水準引上げの効果を無意味にしてしまう公算が頗る大きいのであります。そこで若しそうでないようにするといたしましたならば、政府は、先ず第一にインフレ抑制対策に真劔な努力を計らねばならないわけでありますが、外からのインフレ波及の防止ということは、これは容易ならんことであります。而もその上に資本蓄積の至上命令が、前に申しました国民生活水準の確保との二律背反の激化によりまして、後者を犠牲にする傾向が強く出そうであります。それにいたしましても、若しいうところの資本蓄積が、平和的な方向において行われるのでありますならば、過渡的には国民生活水準が犠牲にされましても、やがて国民所得は増加して、結局国民生活水準の回復乃至向上をもたらすものと言えるのでありますが、若し非再生産的な軍需的方向における資本蓄積が強化され、そのために国民生活水準が犠牲にされる場合には、それは過渡的な犠牲とは言えないのであります。而も軍需産業の基礎となる重化学工業の拡充につきまして考えて見ますと、我が国の終戰後より朝鮮動乱直前までの経験が最もよくこれを物語つておりますように、平時経済の條件、環境の下におきましては、実に深刻な市場問題に当面せざるを得ず、それを糊塗して資本を維持して行きますためにはインフレ政策が不可避である。又それと同時にそれを收束するといたしましても、遂に徹底的足り得なかつたのでありまして、結局国民生活水準にいわゆる皺が寄せられたのであります。  ところで最近の動向をつらつら観察いたしますに、再軍備問題そのものにつきましては、なお論議があるようでありますが、日本経済の態勢そのもの、日本の産業構成そのものは、今や政治のほうを置き去りにいたしまして、一路世界軍拡経済の一翼に突入しつつあるようであります。このような意味と方向におきまして資本蓄積の課題は、いよいよ急務とされるに至りまして、伝えられるところでは、政府も自立経済三カ年計画に代る、或いはそれを補強する緊急経済政策二カ年計画を急遽立案中だということでありますが、この生産力拡充二カ年計画におきましては、自立経済計画の線における国民生活水準の僅かばかりの引上げ、向上をすら停止、ストップすることが考えられているそうであります。これも又伝えるところで、真偽のほどはわかりませんが、ダレス氏と会談いたしました某有力財政家、確かにこれは現役財政家にはこのかたに比肩する人物を私は容易に見出し得ないと思うほどのこの財政家は、間接税中心の財政政策をダレス氏に進言したということでありますが、これは確かに新情勢下における日本財政の血路が、再びインフレ政策に転落するのでなければ、この方向よりほかにないということを物語るものと言わなければならないと思います。いずれにいたしましても、それは国民の生活水準の切下げによる資本蓄積と財政消費を意味するものでありますが、このようにいたしまして多くの問題点を持つていたとはいえ、とにかくインフレの收束を第一議的に強調した限りにおきまして進歩的意義を持ちましたドツジ・ラインも、又同じく多くの問題点を持つていたとはいえ、間接税はインフレと同じものであるといたしまして、ともかく直接税中心主義を勧告いたしましたシヤウプ・ラインも、今や急速に崩壊せんとしつつあるのであります。二十六年度予算案は、インヴエントリー・フアイナンスや見返資金の使途、方法などにおきまして、なおドツジ的超均衡予算の性格を保有しているものと言うことができますが、従つてこの予算案そのものは、決してインフレ予算とは言えないと私は思うのでありますが、前に申しましたように客観的情勢との余りにも大きなずれのために、この予算そのままではもはやインフレ抑制の効果を果すことができない。而も客観情勢の圧力は、インフレ予算、若しくは文字通り大衆課税たる間接税に依拠した予算を出現させる可能性が極めて大きいように思われるのであります。すでに今次予算案におきましても、税制收正におきましても、これはさつき申しました法人積立金課税の廃止、再評価差額の早期資本繰入れ、預貯金利子の源泉選択課税等々、こういう税制改正におきまして、又災害復旧費の全額国庫負担を廃止したということにおきまして、又平衡交付金の不十分な増額におきまして、すでにこのシヤウプ・ラインは早くも大巾に崩されているのであります。かれこれ考えて参りますというと、国民水準の向上は、自立経済計画の線までもどうやら困難のように思われるのであります。国民の一人といたしまして、私はせめて自立経済計画の線までの国民生活水準の確保ということについて、国会がこの際特別の配慮をして下さることをお願いいたしたいと思うのであります。そのためにはやはりインフレを抑制するということ、それから財政消費の膨脹はできるだけこれを回避するということと、財政投資の増加による資本蓄積は必要でありますが、これをできるだけ非再生産的な方向における資本形成に向けない、こういうことが切に望まれるのであります。  以上を以ちまして私の公述を終らせて頂きます。
  15. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) どなたか御質問ございませんか。
  16. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 予算と現実とのずれの問題の第三点ですか、外為の問題のお話があつたのですが、その場合に五百億では恐らく不足するだろうという御意見と、それから実際今考えている緊急対策その他を考慮に入れると、むしろ入超が予想しているよりも遙かに多くなつて、外為の円資金不足は、今予想しているものほどうまくなくなるのじやないかというようなお話があつたのですが、この両者の食い違いの問題は、どつちのほうをあり得べき予想としてお考えなつておりますか。
  17. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 只今のところでは、私はむしろ後のほうの、相当輸入が行われるということがあり得るのではないか。必ずそうなるとは考えませんが、そういう可能性が相当あるのではないかというふうに考えております。日米経済協力の具体化とか、そういうようなこととも関連いたしまして、そういうことが或いはあり得るだろう。輸入がかなりあるということがあり得るだろうと考えておるのでありますが、併し若しもその場合には外為会計の円資金不足の問題は一応解消するといたしましても、その輸入が促進されますために輸入金融相当膨脹するというようなプロセスを通じまして、インフレの問題は、やはり相当警戒を要するものがあると思いますし、又それをやらないといたしますならば、ここで相当財政資金を動員することによつて、その輸入の促進を図るということをしなければならないと思いますが、その場合には、先ほども申しましたように、現在のインベントリー・フアイナンスとは違つた意味におきまして、五百億円などではきかない、相当の財政支出をすることによつて輸入を促進ずる。そういうことにならざるを得ないのではないか、こういう意味で申上げたのであります。
  18. 木村禧八郎

    ○木村禧八郎君 生活水準の問題についてちよつとお伺いしたいのですが、最近政府では、二十五年度は戰前の八〇%、二十六年度は八三%、まあそういうふうに想定しておりますが、この間予備審査のときに、政府に、それでは二十五年度八〇%になつているかどうか聞いたわけです。そうしましたら、農村が八五%になつて、都市は七〇%、平均して八〇%になつているのだと、こういう答えがあつたのです。ところがだんだん調べて見ましたら、この九月と十月との間にCPIの計算方法を変えているのです。それを又どうして変えたかを調べて見ますと、調査範囲をだんだん生活水準の低いところにとつている。例えば東京都を例にとりますと、この前、杉並が大体七〇%くらい調査対象になつたのです。それを二、三〇%に減して、あとを下町のほうの、だんだん生活の低いところに調査をされた。都市別にも、今度は人口のだんだん稀薄なところを選んで、人口の多いところは減して、そういう形において調査対象を変えて、それでCPIが下がつているように計算して来ているのです。それで物価を割れば、それで生活費を割れば、生活水準が維持されているように思われるのですが、実際そういう点についてはどういうふうにお考えなつておりますか。
  19. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 今のCPIの調査の対象が変つたということは、私も詳しいことは存じませんが、一応聞いております。今お話の点は私も同感でありまして、これは統計の資料というようなものによりませんで、私どもの日常のふところ勘定の体験から申しまして、確かにこの二、三カ月、四、五カ月の間に相当ふところ工合が苦しくなつたということは否定できないことじやないか、多くの皆様がたの御体験になつていることじやないかと考えております。
  20. 小野義夫

    ○小野義夫君 先生のお説によりますと、まあ大分二十六年度予算は、国際情勢から遊離しておるのであるから、これを絶対に遊離しないように、経済の実体に即するためには補正予算なり或いは組替えなりやる必要があるというお話でありますが、ところでこの情勢に応ずるように直ちに予算編成するならば、恐らく厖大な増額が必然的に現われて来ると思うのです。これは言い換えれば、国民の負担を増嵩しなければいかん。増税をやらなければいかんということにも聞えるのですが、併しこれは、増税は今後非常に私どもは、日本の経済、財政を健全にするためにはもう今後五年も十年も減税、又減税以外に国民の幸福を期待するようなものはないと、こう考えておる。それでありますから、只今のインフレ抑制のごときは、その方法手段でありまして、どこまでもこれは非常に大きな線として、我々が一つ尊重するし、インフレを抑制する線と国民の負担を軽減する線と、これは絶対的のものであると思うのです。そこでそういう意味から我々は非常に制約を受けておるのでありますが、これを実際に経済の実態に即するような予算、その他の措置でやつて行こうとすれば、或いは今のような一部におきましては自然増收、これは租税の増嵩によらずして、收入面の殖えて来るという点、これに対応するだけの支出を増大するということは、これは別段国民の苦痛とは申されないと思いますが、そのほかに只今のような財政支出を極力抑制するというお話を聞いたのですが、それらの点で、完全にこの非常に激動するところの世界経済に我々は対処し得るでありましようか。結論的に先生のお話を一言で我々にはつきり御説明願いたいと思う。
  21. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 私の見通しといたしましては、見通しと申しますのは、私が好むと好まざるとにかかわらず、客観的にそうなつて行く帰結といたしましては、財政消費の節減ということは不可能……財政消費の節減ということは殆んど実現せられないで、財政支出は非常に膨脹するのではなかろうかと、こういうふうに考えている。そこでそういうような情勢がわかつております際に、税法上とは申しますが、七百四十三億円を減税するということが、果して予算編成予算経理の上から申しまして、堅実なやりかたであるかどうか。これをこの取消すということは、これは政治的にもなかなか困難なことでありましようし、ともかくも減税ということは、今お話のように国民の切望していることでありますから、なかなかこれはむずかしい問題でありましよう。そこで結局逃げ道はどこへ行くかといえば、インフレ的な方法によつて尨大な財政支出を賄うか、そうでなかつたならば、先ほどちよつと申しましたような間接税方式によつてその財源を賄うか、いずれにいたしましても、直接税ということが結局無意味なつてしまうような解決方法に、見通しとしてはなつて行くのではなかろうかというふうに考えております。
  22. 小野義夫

    ○小野義夫君 そうすると、何かやはり増税によらざる間接の負担と申すという、どういうことか、例えばたばこが余計売れるとか、お酒がどんどん売れて行くから、それをたくさんこしらえるとかいうような方途に、消費経済の上に転嫁するという意味でございますか。
  23. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 新らしい間接税を作るか、或いは現在の間接税を増徴するか、そういう意味において、やはり、一種の増税でございますが、直接税を中心にして減税をやつて参りまして、それはそのままにこれを元に戻して、例えば、所得税の税率を引上げるとか、或いは成る程度引上げました基礎控除を引下げるとか、税制改正をやつて、税收入の増徴を図ることは、政治的にも非常に困難でありましようし、又、国民感情から申しましても、なかなかやりにくい問題であろうと思いますから、結局間接税の方面において増税する。それはやはり、税率を上げますとか、酒税とか、たばこの販売価格を上げますとか、そのほか或いは、綿織物消費税といつたようなものを更に新らしく復活させますとか、そういつた方法において増收を図る。或いはそれも困難であれば、インフレ的な方向に逃げ込むというような危險性が、見通しとしては予想されるのであります。
  24. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 資本蓄積国民生活安定の問題なんでありますが、財政消費と、資本の蓄積と、国民消費という三者連関の問題ですが、一応方式的にはそれらのものが相互背反するのですが、現在の日本の実情から考えると、資本の蓄積という点から言えば、例えば見返資金なり或いは預金部資金というようなところでは、これを一応貨幣形態においては相当なものが蓄積されている。見返資金なんかを資本の蓄積と言つていいかどうかはちよつと疑問がありますが、一応財政資金として使われるような形になつて貨幣の形ではそういうふうにちやんと蓄積されて行つているのだが、それをまあ、さつきお話の外為の赤字との問題の関連において棚上げをした、そうして有効に使わないと、生産的に使わないと、本来の意味での資本蓄積にしないというところに、むしろ、雇用の問題なり賃金の問題なりが関連して乗る。そういう意味ではむしろ資本の蓄積と言うか、蓄積された貨幣をもつと生産的に使うことのほうが、民生安定に寄与するのじやないかという感じがするのです。その点はどういうふうにお考えですか。
  25. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) この点はいろいろ議論のあるところでありますが、今の御意見につきまして、私として申上げたいと思いますことは、確かに今おつしやいましたような見返資金なりそれから預金部資金なりに相当の貨幣形態での資本の蓄積がありまして、これがなかなか生産的な面に活用されていない。いわばアイドル・マネー化している。そこにやはり問題があるのじやないかという御意見、これは確かに私も同感でございますが、併し仮にこれが活用されるようになりましても、先ほど私が申しました意見に非常に大きな変化を来すということにはならないと思うのでありまして、これさえ、このアイドル・マネー化している見返資金なり預金部資金なりの、いわゆる余裕金というものが生産的に活用されさえすれば、雇用問題も賃金の問題も、その他の問題もそれで解決されるのだとは、余りに楽観過ぎるのではないかというふうに私は考えるのです。むしろ今の問題は、私の考えといたしましては、市中銀行のほうでオーバー・ローンが行われておりますし、又それを可能にするような日銀の信用膨脹が行われている。こういう傾向がありますために、見返資金などのいわゆる放出がかなり抑制せられている。むしろ原因結果の関係から申しますというと、金融面における信用膨脹、インフレ傾向がかなりあるので、財政資金の面がそれに対抗するために締められている。こういうふうに見たほうがいいのじやないか。ドツジ氏が三度目の来日をいたしましたときに、金融界、財界のドツジ氏に要望いたしました意見の多くは、一致いたしまして財政資金が締められているから、つまり見返資金なり預金部資金なりに、今申しましたような余裕金が相当つて、これがアイドル化しているというような状態になつているから、金融界においてはオーバー・ローンが不可避になつているのだというふうに、原因結果の関係を、むしろ財政資金の面のほうに、運用の面のほうに、原因を帰しているというような議論が大部分であつたと思うのでありますが、私はむしろそういう議論とは反対に、原因結果は、むしろ金融面において或る程度の信用膨脹の傾向が観取せられるので、財政資金のほうが締められているのじやないか、因果関係はむしろ逆ではないかというふうに、それは今の日本政府が締めているわけではないのでありますが、そういう考え方で締められているのではないかと、こういうふうに観測しているのです。そこで或る程度余裕金がありましても、その中で資金の総量といたしましては、私は或る程度のものがやはり出ておつて金融面のほうのオーバー・ローンその他によつて成る程度……資金総量として見ればそう大きな、何と申しますか、蓄積にはなつていなかつたのじやないか、こういうふうに考えます。ただ問題は預金部資金とか見返資金とかいうような資金は、これはかなり安定性を持つた長期に運用することにふさわしい資金であります。これが全部が長期資金に運用されないで、何百億円というものがいわゆる余裕金として食糧証券その他の短期資金に運用されているということ、つまり短期資金に、長期資金としてふさわしいものが短期資金に運用されているということ、そうして市中金融機関というのは、これはむしろ短期商業金融、短期商業資金を專ら供給すべき機関が、その穴を埋めるために長期資金の供給をかなりやつている、そうしてそれが固定して、オーバー・ローンになつておる。この資金の長期、短期の分担の関係においてそこに間違いがある。顛倒している。そういう意味において預金部資金なり見返資金なりはああいう形において、ああいう短期運用の形を余り大きくしないで、これを長期に運用すべしという議論には、私は賛成であります。
  26. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 もう一つお伺いしたいのですが、政府が今度予算を組んで、総合資金計画を考えている場合には、政府がたびたび言つているように、財政に関する限りは中立だ、従つて二十五年度には一応財政計画としてはデフレを、引上超過を考えていたにかかわらず、結果においてはむしろ七百億の撒布超過になつて、これがまあインフレ的な結果をもたらしたのだ、そこでそれを是正するために財政的には中立にして、收支をとんとんにするということで、まあ一応の計画を立てていると思うのです。そこでそういう結果として年末、来年度末においては、大体原則としては通貨の増発をやらない、今年度末を四千五十億と予定して、来年度も大体原則としては増発しない。ただまあいろいろな計算上、百五十億くらいの赤が出るので、この程度の増発、従つて四千二百億円程度で来年はとめるのだというふうなことを言つておるわけですが、この点が、果して通貨量をこういうふうに原則としてストップして置くことが正しいのかどうかという点をお伺いしたのであります。というのは、生産相当二十六年度は殖える。それから更に物価騰貴も、少くとも結果的には物価騰貴があるし、それが外国からの影響である限りは、これを無理に抑えるということは非常な弊害があるのじやないか。そういう二点から考えると通貨は若干殖えてもいいのじやないか。そうすると、それを殖やすことを考えれば、少くとも財政においては若干の撒布超過をば考えても差支えないので、そうだとすると、さつき言つたような無理にアイドル・マネーにして置くというようなものを、もう少し解放して、生産的な方面に廻してもよいのじやないかということになるのですが、それらの点をどういうふうにお考えですか。
  27. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 今の通貨の問題でございますが、物価が上つたために通貨量が殖えるということは、これは何も積極的に抑制すべき性質のものでは勿論ないと考えられます。併し今お話の来年度末百五十億円ほどの通貨膨脹という、この資金需給計画の見通しは、やはりその百五十億円の通貨膨脹の原因といたしまして、あれは約百五十四億円くらいでございましたか、日銀の信用膨脹というものを予定いたしまして、それによつて資金需給の見合いがついているわけです。その百五十何億円かの日銀の信用膨脹が、百五十億円の通貨膨脹が、日銀券発行高の増発ということになつているというふうに思うのでありますが、今のこの物価騰貴が原因になりまして、その結果として通貨の量が殖えるという場合には、そのほかのいろいろな資金の供給源のアイテムの中で、例えば預金が殖えますとか、そういういろいろな点で、一般にレベルが、この資金量のレベルが、需給双方のレベルが上つて行くことによつて、結局通貨量は殖えますが、その需給の見合いが、日銀の信用膨脹によつて補なわれるという形になつているのでは、それはやはりインフレ的なものじやないかというふうに考えられる。そうして今年七百億円の撒超によつて生じました、この二十五年度の通貨膨脹ということの尻拭いが殆んど行われないままに、二十六年度も約百五十億円ほどの日銀の信用膨脹が見込まれざるを得ないという資金計画は、やはり成る程度、非常に私にとつては不安な感じがするのであります。
  28. 高良とみ

    高良とみ君 先ほど今の日本の現状からは、政府の線を飛び趣えて、産業方面において資金の日米協力態勢が確立して行きつつある。而もそれは再生産を含まないところの非再生産的な方前にこれら資金も労力も動員されて、又政府においても緊急生産力拡充計画のようなものを持つて行く傾向を、私どもも十分に認めておるのであります。ここにおいても十分に、大臣等に質問するのでありますが、はつきりした答弁を得られないでおるのであります。ついては私どもの深く関心を持ちますることは、日本の経済状態が戰後の痛手からどれだけ回復しておるかということなんでありまして、特にその中において、国民生活の水準を犠牲にせずして、生産力拡充に行けるか。或いは今後半年乃至一年間において国民生活は、すでに兆候が見えておりますように、物価高、物資の不足及び中小企業者、商店等の売り惜しみ、買い溜め等の、非常に弱体な状態によりまして、すでに脅威を感じておるわけであります。これにつきまして財政面から、果して国民生活を確保して行く、その最低確保の方策について、先ほど国土の最低生活費ということを言われまして、非常に面白く思つたのでありますが、それについて如何なる方策をして行つたらよいかということについて、お考えがおありになつたら伺いたいと思います。殊にインフレに対して食糧を海外から十分に買入れて、食、衣、住の国民生活の確保、つまり戰傷からの回復を先ず図りたいと思うのでありますが、それがいろいろな困難に直面しておる。それから中小企業者や小商店等が、組合運動によつて消費者と共に物価高を抑えて行く勇気があればよろしいのでありますが、大企業に押えられて、木材も上つた、鉄も上つた、すべて上つたから、我々も罐詰も上げるし、すべて消費財が、豆も味噌も、醤油も上げるというふうに、少しも国民生活に対する真劍な努力が見られない。こういう際に当りまして、我々国民生活を保持して行こうとする際には、如何なる方策を政府に要望されるか、具体案を伺いたいのであります。
  29. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 御意見非常によく了解したのでございますが、その具体案はなかなかむずかしい問題でございまして、ただ私の気持といたしましては、せめて自立経済計画で予定いたしました国民生活水準の線、これは最低ぎりぎりの線として確保して頂きたい。こういう気持であります。従つてあの自立経済計画で予定いたしましたような三カ年の財政計画の線はできるだけ確保したい。自立経済計画そのものにつきましては、私はやはりいろいろ今までも批判して参りましたし、意見も持つておりますが、かくなりました上は、あの自立経済計画の線だけでも是非確保したい。これはただ気持でございます。客観的情勢は或いはそれを困難にする、不可能にする公算のほうが非常に大きいだろうと思われますが、そうしてその場合には、これはどうしても国民生活水準というものは低下する。せざる得ない。そういう必然性が非常に大きいと考えられます。それならばそれで、国民がその生活水準の低下を納得して受取れるような形をとることが非常に必要なのではないか。それができなかつた場合には、成る程度犠牲ということは、非常に大きな国内の問題を、政治問題とか思想問題とか、いろいろな方面に非常に大きな問題を残すことになるのではないかということを恐れておるのでございます。
  30. 高良とみ

    高良とみ君 先ほどの御説明から類推いたしますと、アメリカの例をとつて見ますと、アメリカの国民も一面は間接税の物価高で苦しんでおりますし、又直接税としても非常に重税に耐えて行きつつあるのであります。勿論日本とは雲泥の差がある国民生活水準でありますが、これに対しまして、アメリカにも種々な世論があることは私どもの聞いておる通りであります。国民相当犠牲を要求して、ああいう大きな軍拡予算をあちらの国会がやつておるわけでありますが、私どもはこの前の戰争中、やはり国民の生活水準を切下げ、犠牲を要求せられてこの前の戰争をやつて来た。併し今回は、政府の言うところによりますと全然違うのであつて、持てる諸国を背景に置いて、すべての物資の買入れが自由である。だから暫くは豆も入らない、麦も高くなつた、木材も鉄も砂糖も、塩も困難であるけれども、そういう世界的な経済状態からいつても不安がないのだという説明をよく聞くのであります。これにつきまして、この貧乏な、戰禍も未だ癒えない日本といたしまして、頭でつかちな大きな軍需生産がどんどん進んで行くとしますときに、国民生活は、水準を最低ぎりぎりの線までを犠牲にして、そうしてどこに行くかということを、国民は聞きたいと思うのであります。どこに行くということを……。その利潤が、国民全体の生活を再び又引上げる可能性があるのかということを国民は聞きたがると思うのでありますが、先生のお考えでは、そういうふうな大きな軍拡、或いは特需的な産業によつて、その潤いが国民生活水準を再び確保して来る時期が、大抵どのくらいの時期に、それが運営して行つたならば廻つて来るとお考えになりますか。又そういう可能性があるとお考えになりますか。或いは先ほどお話のような政治的或いは思想的な危險を、つまり体として見れば、非常な熱を出す、高熱で、又栄養失調になつているこの体は、大手術をして行くのだということを考えますと、回復の見込をつけ得るかどうかということです。お考えがあれば伺いたいと思います。
  31. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 確かに第二次大戰のときの日本経済が置かれました諸条件と、今後予想されますような諸條件とは、これは非常に違うと思うのでありまして、生活程度が低下するとかいうようなことになるといたしましても、第二次大戰中の日本の経済が置かれたような状態、その下における国民生活のあの悲惨な状態、それをすぐさま予想するということは、かなりそこにギヤツプがある。疑惑があるというふうに考えられますが、ともかく今まで我々は終戰後の非常に低くなりました生活程度をだんだんに、こう引上げて参りまして、先ほどお話しがありましたように、昭和二十五年度においては、都市と農村との平均でありますが、やつと七九%、約八〇%というような線まで引上げて来た。そうしてこれを更に三カ年で八九%というところまで引上げて行こうということが考えられていたのでありますが、その線が非常にむずかしくなるのではなかろうか。そうしてこの八〇%まで引上げて来た現状の水準すらむずかしくなるのではなかろうか。こういう意味において、国民生活水準の切下げ、低下ということを私は心配しておるわけでありますが、それは必ずしも第二次大戰中のような、木の根や草まで食わなければならなかつたというようなところまで直ちに軽落するという意味では勿論ないのでありまして、今申上げましたような程度においての心配でありますが、併しこれはかなり前途に明るい希望が一応あつた。それがかなり暗くなつたという意味においては非常に大きな問題ではなかろうか。何も木の根や草の根まで食わなければならないような問題ではありませんが、上向線を辿つて来て、一応その状況において希望、明るさというものを、前途に感ずることができていた状態が、若しそうでないということにはつきりなつて来ますというと、その影響はやはり非常に大きいものがあるのではなかろうか。こういうふうに考えておるわけでありまして、先ほども申しましたように、これが再生産的な方向における資本蓄積の促進のために、生活程度の向上が或る程度チエツクされるという場合には、やがてそれは元本が殖えることでありますから、国民所得というものは、それによつて増大いたしまして、国民生活水準も回復して行くという一つ希望を持つことができるのでありますが、非再生産的な方向への資本蓄積というようなことが大規模に行われるようになつて、そのために国民生活程度が低下するということでありますと、この回復はなかなか困難ではないかというふうに考えられます。
  32. 安井謙

    ○安井謙君 先ほどお話間接税の関係の問題ですが、私どもこの間接税というのは、現在でもまだ戰争中の名残りを大分とどめております。賛沢品であるとか、不急品であるといつたような観点からの課税率の高いものがまだ相当あると思います。そういう意味から今予算と現実が遊離するとか、物価高、その他で財政收入を別に求めるといつたような、必然的にそういう方向に今後は流れていいという考え方は、多少どうかと思うのであります。同時に歳入と歳出の問題につきましても、現在の税率のままでやはり増收ということも考えられましようし、又はかに操作の方法もあるのじやなかろうか。そうしますと、間接税に当然逃げて行くという考え方は、或いはそうするのが当然であろうという考え方は、今日の国民生活の状況から申しまして、多少どうかと思うのでありますが、その点について簡單に伺いたと思います。
  33. 鈴木武雄

    公述人鈴木武雄君) 先ほど私が申上げましたのは、私の意見として、間接税に財源を求める方向をとつたほうがよろしいということを、私の政策論として申上げたのではないのでありまして、そういう傾向がかなり必然的になるであろう。で、私としてはそれは好ましくない、こういう意味において申上げたのであります。
  34. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) よろしうございますか。では午後は一時半から開くことにいたしたいと思います。暫く休憩いたします。    午後零時二十八分休憩    —————・—————    午後一時五十九分開会
  35. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 只今から公聽会を再開いたします。佐藤さんお願いたします。
  36. 佐藤治三郎

    公述人(佐藤治三郎君) 私は中央区港町三丁目二番地で木工業を経営しておりまする佐藤治三郎であります。  昭和二十六年度予算の賛否を申上げますと、私はどうしてもこれは組替えて頂くより方法がないと思います。結論といたしまして、私は、この昭和二十六年度予算は反対であります。朝鮮の動乱の影響と、国際情勢の推移とか、更に日本の自立安定政策と復興という二大目標達成の下に編成されました昭和二十六年度予算は、誠に結構のように思われもいたします。併し又歳入の中で以て特に七百十億円という減税は、国民の一人といたしまして誠に喜びに堪えません。ただ考えさせられますことは、今回の朝鮮の動乱によりまして生産原料のない日本産業が、原料資材や食糧まで輸入せねばならない現状におきまして、急速に輸入品の確保を図らねばならんことは申すまでもないことであります。このたびの予算はこれにも重点が置かれまして、輸入資金の確保のために、一般会計の中から緊要物資輸入基金として二十五億円を出資し、これを回転して緊急輸入促進に主力を置かれた点が見られるのでありますが、最近の物価高、物価の高騰率から見まして、果してこの二十五億円の緊要物資輸入基金で賄い得ることができましようか、甚だ疑問と思うのであります。輸出のために今我が国の一部業者は、戰後以来の活況を呈していることは喜びに堪えません。これがために在外ドル資金がだんだん殖えて参りましよう。又これを引当にどんどん輸入品の確保を図るのでありましようが、これとて世界的物価高でそう安くは輸入ができないと思うのであります。一方国内の生産資材は極度に枯渇いたしまして、政府の一般公共事業費の資材に事欠くことは明らかであります。これがためにただ、計画だけで、これを完全に施行し得ることは私はできないだろうと思うのであります。  ささやかながら、私どもで消費しておりまする資材について見ましても、昨年六月に純亜鉛板一トンを買入れましたときは二十二万八千円でありました。ところが昨年の十二月には一躍三十万円と暴騰したのであります。更に本年二月には三十三万五千円となつております。なお騰貴の傾向にあるのであります。又鉛合金でも。昨年六月には一トン九万四千円、十二月には十二万一千円と騰貴しております。又本年の二月には十六万二千円となりまして、昨日地金商に問合せましたところが、二十一万六千円に飛び上つた値段となつたのであります。又木工のほうに使つております桂材の挽板のごときは、昨年の六月には一石二千五百円、十二月には四千五百円、現在では丁度五千円になつております。昨年の六月と比較いたしまして純亜鉛板は五〇%、鉛合金地金の二三%、桂材の二〇〇%の騰貴であります。かくのごとく国際情勢の急迫から、一部思惑もあるでありましようが、生産資材はますます騰貴しまして、輸入品も又海外市場の情勢上安く輸入できることはありません。一方輸出の活況によりまして、ドル資金が殖えますれば、兌換券の増発が考えられぬこともありまおん。そうなりますれば通貨は膨脹して、物価がどんどん上るに違いありませんのであります。現にその傾向が現われていると私は思うのであります。以上のような次第で、昭和二十六年度予算昭和二十五年度予算と同様に補正予算を行わなければよいがと心配いたす次第でありまして、この意味から私は昭和二十六年度予算に対しては反対いたす次第であります。  次に少しく歳入歳出の中で、特に反対といたします主なる点について申上げますれば、先ず歳入の中の租税及び印紙收入の中で、印紙收入八十億九千三百万円であります。これは印紙税法の改正であるかも知れませんが、私ども商人にとりまして大なる負担は、物品受取書に対しまして、その物品が百円以上に達しますると見られるものに二円の收入印紙を貼らなければならないのであります。従来は物品受取書に金額の記入されておつたものについてのみ二円の收入印紙を貼らなければならなかつたのでありますが、一取引の物品受取書に僅か二円でありますから、金額といたしましては僅少でも、商取引の全般に及ぼしまする点から見ますと、印紙收入の一〇%以上が本予算に見込れておると私は思うのであります。物品受取書に印紙を貼りますれば、極端な例かも知れませんが、私どもが米の配給を受ける場合に、米を受取つたと判を捺してやりますれば、これ又正式の意味においては印紙を貼らなければならないのであります。要するに金銭領收書に対する二重課税になると思いますばかりでなく、私ども商人にとつては取引高税廃止後の一種の増税であります。物品受取書の收入印紙を貼ることは、私は廃止することが当然であると思うのであります。又この印紙收入で金銭領收に百円以上の金額には一率に二円の收入印紙を貼ることは、皆さんも御承知の通りであろうと思うのであります。戰前は十円以上の金銭領收書に対しては五銭の收入印紙を貼ればよかつたのであります。現在の貨幣価値は戰前の二百倍というようなことを私は伺つておりまするから、戰前の十円は現在の二千円に相当するわけであります。従つて五銭の收入印紙も十円となりまするから、現在の百円は戰前の五十銭に過ぎません。今私どもは戰前の五十銭の金銭領收に対しまして一銭を課税されておるわけであります。ちよつと皆さんが八百屋でも魚屋でもいらつしやいますれば、必ず百円や二百円をお使いになります。併しそれは現在の貨幣価値から言いますれば、戰前の五十銭か一円に過ぎないと思います。この意味から申しましても、戰前に十円から課税したのでありまするから、私は二千円から十円の課税が合理的だと思うのであります。それに現在の課税の対象が何十万円、何百万円の金銭領收書でありましても二円でよいということは、私は矛盾のように考えるのであります。これは累進的に印紙を貼るべきが当然ではないかと考えます。百円以上千円まで二円、千一円以上五千円まで五円、五千一円以上一万円まで十円というように、累進的に印紙を貼るようにしたならば、物品受取書に二円の收入印紙を貼るのを廃止いたしましても、金銭領收書の累進課税で補うことができると私は思います。取引高税のごとき高率では一般の反対を買いますが、妥当な印紙を貼るならば異議を唱える者はないと思います。  次に官業收入の刑務所收入十九億九千九百万円は、刑務所費四十二億七千五百万円を賄う重要なる收入でありましようが、戰前は約五万五千人の受刑者が、現在は世相を反映しまして、その三倍の約十六、七万人ぐらいと聞いておりますが、受刑者一人当りの一年の稼ぎ高は一万二千五百円という数になり、国が受刑者を使つて営業をしておるという感じを受けるのであります。と申しましたからとて、囚人を遊ばして置くという意味ではございません。免囚者の保護並びに刑事政策上囚徒に職業を授け、国費の負担の軽減を困り、受刑者をして職業の訓練、且つ勤労の習慣を養成することでありましようが、職業を授くるに当りましては、職業の選択であろうと思うのであります。職業は比較的容易に独立自営のできるようなものを選ばねばならないのであります。受刑者のために却つて複雑な業を授けますと、大なる不幸となるのであります。小菅とか或いは千葉、京都、名古屋等の刑務所は、一つの総合の大工場であります。特に印刷とか製本、木工等の設備は、優秀な機械を設備いたしまして、民間工場に負けないほどの機械も充実しておるのであります。ただ私の申上げたいのは、刑務所收入が民間の営業の者を圧迫していると思うのであります。刑務所は刑務所自身の自給自足的に作業をしておればよいわけでありまするが、ややともすると民間業者と競争して、他の注文を受けることはやめるべきだと思います。受刑者の安い賃金、国費による設備費と、税金その他の営業費を考慮に入れてない刑務所作業は、民間業者を圧迫することは当然であります。東京でも刑務所から、刑務所の作業課の人が出て参りまして、官庁などへ行つて、役所專門に廻つている業者と競争して仕事を取つて行きますが、特に地方では営業の範囲が非常に狹いのであります。そのために刑務所の安い料金で県庁とか市町村役場、会社等から、業者と競争して注文を受けるために、業者は営業が成り立たずに、廃業する者が少くないのであります。廃業のために業者ばかりでなく、工場員も又失業者なつて行くわけであります。これでは刑務所のために産業の破壞であります。どうぞ民業と競争して、安い価格業者を圧迫せんように私は願いたいと思うのであります。特に又最近聞くところによりまするというと、刑務政はGHQへお類いいたしまして、GHQの力を以て官庁その他から註文を取るというようなことをしているそうでございます。誠に甚だ言語同断な話だと思います。更に受刑者にはできるだけ免囚の曉、個人経営のできます作業に従事せしめるべきでありまして、世間ではまだまだ免囚者を喜んで受入れるというようなところまでには行つておりません。集団でなくてはできない作業とか、多額の資本を要し、且つ又思想的に影響の大きい印刷等の作業は、私は香ばしくないと思います。  次に又官業の整理について最も大きなものに專売公社とか、印刷庁がありますが、專売公社は国の大なる財源の一つでありまして、ここでは私は述べたくないのであります。民間企業に移してよいものに印刷庁があります。特別会計になつています関係上、年度純益は国家へ納めるのが二億二千七百六十万円、印刷庁は戰争をこうむつたのを機会に根本的に一大整理を行い、機構の縮少を図るべきでありましたのに、縮少どころでなく、却つて設備の拡張に懸命であります。而も今回の行政整理にも印刷庁ばかりは除外されておるのであります。現在の印刷庁は紙幣のほかに公債收入、印紙、切手、小切手、郵便葉書、官報、職員録、議会の議事録等を印刷しております。印刷庁としては、紙幣印刷以外は印刷庁の附随事業で、よろしく民間印刷工場に任ねて差支えないわけであります。極端な言い分かも知れませんが、日本の紙幣は日本銀行の発行であります。日本銀行が印刷庁かち設備一切の払下げを受けて製造すべきものであります。現にこの方法は英国の英蘭銀行では行なつております。民間の印刷技術及び設備が印刷庁に劣つておりまするならば別でありますが、今日の民間の印刷技術は、印刷庁に優つてつても決して劣つておることはございません。民業に払下げられた抄紙部十條工場は、王子製紙株式会社において払下げを受けました今日では、十條製紙株式会社として非常なる発展を示しておるのであります。要するに民業の発展を図らなければならないとき、印刷庁の改革は即時断行すべきであります。かくして官業の整理ができますれば特別会計や国有財産を整理する結果となり、財政行政の合理化が急速に促進できます、これと同時に、民間事業が活撥となり、国家の租税收入も自然に増加するに至るのであります。  それから特別自動車税の新設であります。歳出の一般公共事業費のうちで、道路のために六十七億三千五百余万円を補填する意味から申しましても、特別自動車税の新設が妥当ではないかと思うのであります。道路を傷めるのは大部分が自動車であります。道路のために国家は六十七億三千五百万円を支出するに対しまして、自動車税は地方税として徴收していますが、道路は傷めつけられつ放しであります。この道路に対して国は改修してやつて、一銭の收入もないということはどうかと思うのであります。私は自動車に対しては、地方税のほかに国税として最低年額千円乃至二千円ぐらい徴收したならば、この六十七億三千五百万円も、或る程度軽減できると思います。東京だけで約八万台の自動車があるとして、年額千円徴收しても、八千万円、全国に三十万台として三億円の收入があります、二千円とすれば六億円の收入となり、道路費の約一割近く收入されるではありませんか。私は自動車を持つておらないからやつかむわけではありませんが、近来の自動車の殖え方は著しいもので、昭和通や、銀座通を見ましても、交通信号のないところでは、横断するのに容易ではありません。又自動車の数量はますます増加する点から考えても、特別自動車税の課税は至当と思います。  次に歳出でありますが、特に失業保險費六十三億円と、失業応急事業費七十七億五千万円についてであります。前年度に比べて、失業保險で約四億円、失業者四十二万人、日雇労務者五万八千人を賄える計算であると聞いています。又失業応急事業費は前年度より二十二億五千万円の増額で、一カ月二十五日稼働で、毎日十七万三千人の失業者を吸收できることになつている予算であるということですが、私はこれらの費目の計上は当然と思いますが、なお一歩進んで失業者の更生的、機動的、将来失業者が潤いのある生活ができるような事が起せないかを非常に悲しむものです。日雇労務者や失業者が、四人、五人となつて集団を作つて、道路の清掃に従事し、これらの人々に対し、国家が三分の一の賃金を負担しておるのかと思うと、なんて国家は無為無策なことと私は思つています。自分の家の前の道路の清掃は、その家の者にやらせればよいではないかと思うのであります。又清掃している人々の中には二十歳台の若い人もおりますし、又子供を負つて清掃している女のかたもおります。これらの人々の気持とても、恐らくはただその日その日を過し、雨が降れば仕事がなくてあぶれなくてはならぬときの気持に考え及びますれば、目頭の熱くなる思いがいたします。失業保險の目的は、私が申上げるまでもなく、失業の経済的苦痛の緩和にあつて、失業の発生そのものを防止する効果はありません。金は使い途で生き、制度は人によつて動くのですから、頭の働かせ方ではもう少しどうにかなるに違いありません。私は失業保險と関連して、国家に産業委員会というものを作つてもらい、この委員会が公私の事業計画を調査し、既定計画がある場合着手時期を命令し、又は既定計画がありながら故意に着手を遅らせる者には着手を命令し、この命令に従わない場合は当該事業主体の負担する失業保險掛金率を高める制度にしたり、なお既定計画の着手時期を調節するだけでは職業供給量の全体としての増加とはなりませんが、現在官公営事業の規模の大きさから申せば、地方的に職業需給の調節には相当役立ち得るのではないかと思います。恐らく我が国土木事業の三分の一以上くらいまでは官公営事業だと言い得ると思います。故にこの官公営事業施行期の調節は、運用の習熟によつて有力な失業対策たることを疑いません。又労働移動の阻止されることが失業を激しくするもので、これは一般に認むるところでありますから、職業の転換を容易ならしめることと、旅行費用を補助して、地方的に労務者の移動を容易にすることは失業緩和の一手段となります。労働者に移動補助を与えることは是非とも必要のことで、労働の移動性のため最も徹底したやり方をするには国鉄の割式パスを与えることであります。距離は百キロ以内全線通用で、労働日に限り乗車ができる制度にして、普通乗車賃の四分の一くらいの安さにしたならば、都市集中の失業労働者はこのバスがあるために、大部分の者は田舎に住み、仕事のないときは農業なり、その土地の副業によつて生計を立てると思います。いま一つには失業対策として全国的に副業を起せということです。戰争によつて狭い四つの島に押込まれ、而も人口はどんどん殖えて行き、如何にひいき目に見ても決して産業的に惠まれた国柄とは言えません。土木工事でも開墾事業というがごときは、その完成後もそれだけ職業を増加し、又植林事業も、差当りにおいても、将来も仕事増加します。殊に副業、或いは地方的小加工業にあつては、差当りにおいて各種の職業を全国的に増加するばかりでなく、一度植付けられた職業はそう潰れるものではありません。これらの人々は再び失業者とはなりません。尤も失業救済のためにする事業は、これら開墾、植林、副業、その他加工業に限るわけではありませんが、大工業は差当りには間に合いません。普遍的でなく、殊に多量の製品の販路はなかなかむずかしいのでありますが、副業その他加工業は植付けやすく、普遍的で、且つ各種技術を含んでいますので、失業救済事業として最も適当と思うのであります。特に副業その他加工生産畠中には頗る輸出品が多く、又輸出有望品と認むるものも少くありませんので、政府は広く世界市場に眼を転じて頂きたい。要するに政府は失業対策のために賃金のみの考えでなく、思い切つた副業加工奨励金を交付して、政府みずから販路及び生産の指導をせられることを望む次第であります。この二つの私の意見は多少なりとも失業対策の一助になりますれば幸甚と思うのであります。国家が失業救済として賃金の三分の一を負担して道路清掃のごときをなさしむることは御一考を考いたいと思うのであります。  又いま一つ申上げたいことは、職業教育の不定であります。新制中学、新制高等学校の職業教育は全くと申してもよいくらいに不足しております。私どもで本年三月卒業の生徒を雇入れましたが、工業学校の生徒は鉋のかけ方さえ満足にできませんし、又商業学校の生徒の簿記の記帳方法など、学校で簿記を習つたのかと思うくらいであります。これは学校における実習及び実践時間の割当が少く、理窟や理論のみで、旧制実業学校と教授方法が根本的に変つたからであります。理窟や法律論ばかりの職業教育では我が国の産業は伸びません。衰微するばかりであります。又失業者増加するわけであります。要は教育行政が余りに地方庁任せで、政府の活力が入つてないからであろうと思うのであります。どうぞ政府はもつと職業教育のために積極的に力を注いで頂き、これが又将来における失業対策の一助ともなるわけであります。  以上で私の意見は終ります。愚論を申上げまして甚だ失礼いたしました。御静聽を有難うございました。
  37. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 何か御意見がありますか。
  38. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 今、何か職業教育何とか法とかが出るとか何とか言つているけれども、あなたの御趣旨は結構だが、どういうふうに職業教育を……、その不足しているのはどういうところが不足しているのです。具体的に…。
  39. 佐藤治三郎

    公述人(佐藤治三郎君) 私のは、実はもつと実習をやつて頂きたいと思つているのです。今のは殆んど実習の時間が割合いに少いのであります。私ども商業学校におりましたときなんか、全く実習というものを四年以上からやつて、非常に殆ど各学科を実習する。簿記の実費もやれば、記帳の実習もやれば、銀行のほうの実習もやる。そういう方面が多かつたのです。今日はそういうふうな傾向は殆んどないそうであります。まあ卒業生がそう言うのですから間違いないと思いますのですが、ですからもつと実践をやつて、実際に役立つようにして頂かなければ、本人としても私はかわいそうじやないかと思うのです。
  40. 高良とみ

    高良とみ君 今の職業教育のことについては、私ども文部関係の委員会で只今全国的に職業教育の案を作つておりまして、各工業学校やら、商業学校、その他農業学校からもどんどん要請が出ておりますので、近くそれが法案として、日本の教育にもつと職業教育を入れることになつておりますから、更に御協力頂けばいいと思います。
  41. 佐藤治三郎

    公述人(佐藤治三郎君) 有難うございました。早く、是非一つそういうふうに実践のほうの時間をうんと組んで頂きたいのでございます。とにかく理窟や法律論だけでは実際もうこの産業というのは発達しないだろうと思うのでございます。
  42. 高良とみ

    高良とみ君 更に先ほどお話のその失業者を、パスを或る距離与えて移動させると言われますが、あなたのような木工業を営んでおられるかたが、実際にこの職業をもつと殖やして行くことについて、大企業は別にして、何か特にお考えがあるかと思うのです。私ども日本の中小企業というものがもつと団結して、みんな個々別々、天狗にならずに、本当の組合、或いはコーポレーシヨンと言いますか、そういうものを作つて、一致団結して一家のような力……中国なんかでも長くそういうことをやはり戰後やつております。そういうふうな工作的なことによつて日本の再建に貢献して頂くことを希望するのでありますが、そういう点、如何でありますか。殊に物価高をあなたは御指摘になりましたが、材料が上つたと言われますが、工賃も又上つている。そういう点で個々に立つておられる木工業というものは大きな資本に押されてしまうと思うのです。それに対して我々消費者側から考えれば、一に甲斐性がなく、大きな案を持つておられないのじやないかという点を心配するのです。
  43. 佐藤治三郎

    公述人(佐藤治三郎君) 今高良さんのお話通りで、全く同感であります。実際我々中小工業は、こういうふうに材木とかが上つて参りまするというと、今まで十石買つておりましたものも十石は絶対買えないのであります。要するに資本がないためであります。結局十石を買つておつたところでございますれば、五石なり、三石なりに減らしまして、そうして金融面のほうから何とかして切り抜ける方法をしなくちやならないと思います。要するに材料が高くなりましても、売りのほうをそういうふうに上げるかというと、決して上げるわけに行かないのであります。要するに業者の競争というのであります。それをお互いに相談をしてやるというのは、独占禁止法によりまして法律の上で抑えられますから、或いは程度原価を割らない制度で利益を上げて行く方法よりないと思います。業者が寄りますといつもそういう話が出るのでありますが、実際何といいますか、今業者の競争が主でありまして、実際立ち行くのに困るくらいであります。いろいろお説を伺いまして、帰りましたら同業者みんなとよく相談して、よく報告したいと思います。
  44. 高良とみ

    高良とみ君 産業を起す方面は、失業者を吸收して行く方面はどうですか。
  45. 佐藤治三郎

    公述人(佐藤治三郎君) 失業者は、私のほうの木工のほうですと、東京都でよく職業補導ということをやつておりますが、ああいう人を足りないときは雇つておりますし、又失業と言いますけれども、木工のほうは割合て熟練工なら鉋一挺持つておりますれば小さな指物とか何とかができますから、割合に木工のほうの失業者は少いのであります。
  46. 高良とみ

    高良とみ君 先の、道路掃除なんかしている人を、ああいうふうなつまらない、非生産的なことに使わずに、もつと産業を与えるという御意見でありましたが、その四十五、六万なりの失業者にもつと産業を与えて行くこと、或いはただ移動だけでなく、それは御趣旨は多分農業をやらして、そうして都会から離散さして行くということであると思いますが、もつと、お説は、産業を国家でどこかに据置くということなんですか。それとも都会に重工業のような産業が起つて来るまで田舎に置くという趣旨でございますか。
  47. 佐藤治三郎

    公述人(佐藤治三郎君) 今の御質問でありますが、私はそういう意味じやないのでございまして、要するに副業ですから、早く言いますれば藁工品をやらせますとか、或いはガツト、といいますとラケツトでございますね、ラケツトの絲の、弦みたいなものです。弦なんというものは殆ど家内工業であつて、機械的なものでないから、ああいうふうにいろいろそういうものがあるのじやないかと思います。それは私ども素人ですからわかりませんけれども是非そういうふうなことを考えて頂きますれば、相当出てやることができるのじやないかと思います。仮に、私は越後なのですが、越後に参りますというと、農家は筵を織りまけのに非常に早い、一日に十五枚も二十枚も織るのでございます。ところが私の住んでおります練馬のほうの農家は、非常に織ることも知らない、せいぜい二人でやりまして一枚か、一枚半とか織れない。そういうことではいけないと思います。そういうことは政府からどんどん副業には奨励のためにお金を出して頂いて、よく指導してやつて頂ければ相当業者が救済できるのじやないかと思います。仮に早く言いますれば、輸出の方面の人造真珠なんてものもございますから、ああいうふうな傾向だと、機械的なものでなくて、殆んど人造でやるものが多いということを聞いておりますから、そういう副業を奨励して頂いて、そして失業者を吸收して頂ければ、一つの技術を覚えますれば、失業者つて何も道路の清掃なんかやりたくないと思います。
  48. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) もうございませんか……。それじやどうも有難うございました。   —————————————
  49. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 次に日本化薬株式会社社長、原安三郎さんにお願いします。
  50. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 原安三郎でございます。風邪を引きまして、今日咽喉を痛めておるのですけれども、連絡がとれませんでお伺いしたようなわけでありまして、お聞き苦しいかと思いますが、御容赦を願いたいと思います。  私丁度予算の出たときからちよいちよい見ておりますが、掘下げて研究いたしておりませんので、一般的のことを意見として申上げたいと、こう考えます。この予算は作られたときがドツジ氏の了解を得て作られまして、その後殊に十一月から十二月、一月、二、三はまだ数字が出ておりませんけれども、少くとも平均で三〇%ぐらいの物の値上りがありましたから、これは恐らく補正予算で修正をいたさなければならんと、こう考えます。これは併し別段予算を返上するというほどの問題でなく、実行は実行として考えなければならん問題だというふうに考えておりますが、先ず順序が歳出になつておりますから私自身の関係しておりまするものが、実業界の仕事をやつております関係、又もう一つは、主として化学工業の仕事をしております関係から、自然その面からお話するほうがいいと思います。全般に亘つてそれぞれ国民としての常識で判断いたしますと、僅かの時間ではお話が盡きませんから御了承を願いたいと思います。ただここに、この予算の数字を離れて私考えておりますことは、日本の国は極く昭和年代の時期をとりましても、陸海軍の予算というものが非常に多かつた。我々実業界方面における産業経済費というものは割合に歳出予算には盛込まれておる程度が少なかつた。近頃は頻りに国の基礎は経済にあり、又、ダレスさんがお見えになつて、外交上の問題を話すときに、自由経済のことを非常に重く見ておりますけれども、口重く見ることは昔から必要であつて、必ずしも今日だけの問題ではありませんが、さて次に予算から見ましても、これは戰前になりますが、数字を一応申上げたいと思います。昭和元年頃は大変貨幣価値も高かつたときですから十四、五億の予算でありましたが、その時代には産業関係費用は三%六分で、そうして陸海軍のほうの関係は二七%六分、これが日本を今度の不幸な戰争に導くような状態が現われました頃から、即ち昭和十年の頃では陸海軍費四六%八分で、そうして産業関係費用は五%二分、そういう関係にありました。その後臨時軍事費という特別なものが出ましたから、その後の数字を見ますと産業関係も三二%八という大きな数字が出ておりますが、絶対数はやはり少なかつた。これは終戰後私たちがすぐ考えましたのは、今度は陸海軍という……いわゆる平和憲法奉戴の国家ができたのだから決してそういう心配はない、産業経済方面に大きな国費が投ぜられ、国民もその方面にうんと働いて行けるのだ、我々の時代来たれりと考えましたが、これは終戰後今年度は少し減りましたが、終戰処理費というような大きな数字が出ましたことはこれは止むを得ませんが、それにしても、産業経済関係のものは非常に少いわけなのであります。これが最近から、これはこんなわけで数字の集計がわかるわけでありますが、二十三年、四年、五年の数字がございますが、これが又非常に少なうございます。その方面の数字を我々が集計して見ますと、一三%七、二十四年度は二〇%になつておりますが、二十五年度は一応地方仕事が委讓されておりまして、地方財政費のうちに入つておりますから一〇%下がつておる。ただここに私たち希望を持つておりますのは、終戰処理費がこの全体の予算の中で二四%、これが二十四年度には一七%六分、二十五年度には一六%八今であり、本年の、即ち二十六年度予算を拜見すると一五%六分、こういうことに相成つておりますが、これなども我々が立てた我々の産業開発費と睨み合せて考えて頂きたい問題でなかろうかと、こういうふうに思うのです。これは将来の希望を冒頭に述べましたわけでありますが、かくのごときことによつて皆さん感じておられます産業開発の、日本の一番大切な基礎が形作られるのではなかろうかというふうに思つております。  そこで今年度の先ず歳出関係を拜見いたしますと、私たち産業面の者から申上げまして、一番この中で現われておりますのは、大きな数字で前年度より変化しておりますのは外国為替資金のものであります。これは一般会計からインベントリー・ファイナンスで繰入れられましたが、どうも本年の三月三十一日において、例の輸入が輸出に伴いませんで、ドル・インフレの形になつておりますので、その円も確保するために日本銀行からの特別一般借入がございます。これに対して利息などが嵩みまして恐らく千億以上のもがその方面の会計になると思いますが、これは日本銀行の借入によることが簡單な方法でありますけれども、これは政府の恐れておられるようなインフレをやはり助長するのではないか。或いはインフレの因を作るのではないかと、こう考えておりますので、昨年度の百億を五百億に、四百億殖やされたことは止むを得ないことであつて、私たちこれについては止むを得ざる方法であつて、これよりほかにやり方はなかろうと、こんなふうに考えております。それからその他の問題でここにかねてから大きな数字で現われておりました価格調整費、これが我々の産業に対して非常に国民の負担を重ねておりましたわけなんですが、来年度はこれが食糧品を主にしまして殆んど一般物資になくなりますわけであります。これは私これについての考えを持つておりますのは、むしろ補給金を頂かなくてもよかつたのではないかとかねてから思つております。補給金を頂かないで、そうして各産業が自分の力で立上つて行くということをやつて置けばよかつたのではないか。即ち価格の上において国民に高いものを買わすよりは国民全般の負担においてやるということから現われて来ましたわけですが、企業人の企業心というものは自分の力で稼ぎ出すという考え方を与えることがよろしいので、何らかの補給金を頂いているということはその点で奨励という場合のこととは違つて、こういう事実働いた結果がどうしても足りないのだ、これは物の値いの上において調節しなければならないわけなんだ、即ちコスト、原価を基礎にして、それによつて止むを得ず物を高くしてそうして補給する、それによつてまあ適当に商況を見て進んで行く、これが最も私たち希望しております点なんであります。このことから考えまして、今度の減り方は急に二、三年間に大きく減りましたが、むしろこれによつて、私たちの勉強心によつてものを進めて行く、これを世間に通用する言葉で言えば集中生産とか、合理化経営とかいうような形に持つて行く、それをますますこの方法によつて強くし、いわゆる企業家の本当のあり方に持つて行くためには結構なことじやなかろうかと、こう考えておりますわけであります。減りましたことについては、それは当然のことだと考えておりますわけであります。その他歳出面の細かい点ではこの一番冒頭に政府からいろいろ御説明があります文化関係並びに科学に関する振興を図つている。こういうことが書かれておりますのですが、これが存外産業に関する歳出が甚だ少いということと同じような意味で少いのです。で、これは殊に私たちこの化学工業に関係しておりまする者は、今日の科学よりもむしろ明日の科学を進展、発展させなければならないと思つておるわけなのであります。それは戰争中約五年ほど、その後相当努力しましたが、資金関係その他いろいろな点においてまだ発達が遅れております。科学の一部では二十年も海外に遅れておると言われておるものがあるわけであります。それは機械設備並びにその製造方法などにおいても遅れております。これは既設産業、もう一つは新らしく興らんとする産業、日本の将来に約束されておる産業、或いは化学工業、これが現在では育成発達せしめる芽生えを生かして行くという途がないのです。この点で私、業者として非常に遺憾に思つております点があります。これには研究所費というのが、学校の研究所費というのが盛られております。又通産省所属の資源庁関係及び農林省の農業改良局などというその指導関係の機関がございます。これに盛られております金額も非常に僅かで、私たち希望しておりますのは、新らしい発明、新らしい発見などが起りましたときに、これを工場経営に移す前にその施設を大にして、徐々に誤まりなからしめる試験所が必要なのです。この試験経営ということのためには相当費用が要りまして、現在のごとく企業家が蓄積資本というもののないとき、蓄積せんとしても、国費資源のために、負担しておる租税の高が多い関係で、どうしてもこれは新らしい何らかの形で、他から、国家から醵出してもらわなければこの仕事にかかれない。この方面で私たちは終戰後非常に心配をしておりますものであります。戰争前、又長い日本の歴史において財閥というのがございます。この財閥が諸種の事業を営んでおりますうちに、さつき申しました乏しい、又は或る一部の資本を割いて、研究並びに将来の化学工業の発展のために研究所又は試験工場のごときものを持つておりました。これが財閥解体後殆んどなくなりました。集まつた力を以て実行せざれば、集まつた資金を以て実行せざればできなかつたものが一々分割されましたということ、分割そのものの目的と違つた方面に惡結果が生まれておりますわけであります。これはもうどうしてもこの際こういう面における支出を国家が負担をして頂かなければならんというふうに終戰後絶えず思つておりますこと、これはさつき申上げましたが、産業経済開発の一部とも見られますわけであります。ここに教育文化進展のためにという費用の中にこれが明らかに盛られておるものがありますが、これと連関して一部産業から唱えられておりまする化学工業振興金融機関というものがございましたが、これはやはり化学工業方面における産業の新らしいものの開発のために、工場化の前に一応試験費を出すこと、そうしてその工場化が図られたときにこれが大行動に移る、資本の無駄なく、新らしい発明者をして自分たちの向う道に安心して研究せしめるということから起る制度でありましたわけなんですが、これは一応御審議は進めておりますようですが、やはりものになつておりませんから、本年度予算に入つております五十億乃至百億をこういう方面に使つて頂くことができますならば、さつき申しました明日の日本の化学工業の振興、又はあるべき姿に持つて行くことに安心して発明家又は企業家が当つて行けるのではないかと、こういうふうに考えております。又これに連関して、さつき申しましたように蓄積資本がありませんから、自然ここから、現在のすでにある工業の諾先進国の状態に遅れないように、これはなぜ遅れないかと言えば、日本の製品が海外で貿易品と競争する場合に、安い操作、能率の上つておる、又生産力がよく効果を発揮しておる新らしい設備機械によらざれば、海外における同種品の輸出はむずかしいわけです。そういう点並びに一応失業問題とも連関いたしますが、或いは物によつては、貿易品では、成るべく機械力によつてコストを下げて行かなければならないということも起つて参ります。こういう機械を新らしく獲得する、これにはどうしても新らしい資本が必要であるわけであります。新事業、これから興つて来る仕事並びに従来の仕事の設備及び機械の近代化、こんな方面に相当力を盡して頂かなければ、国家が力を添えなければ目的が達せられないわけであります。尤も産業界の近代化などというものもございましたが、これは大変いろいろの御考慮がありましたが、大きな金額予算が取れませんので、この法律もまだ具体化しておらないということになつておりますが、よりよりのいろんな計画がありまするが、どうもこの産業界方面に対する考え方がまだ熟しておらないのだと思つて、この点非常に遺憾に思つておりますわけであります。この産業関係の本年度増加いたしましたものを一々取上げて見まして、それがいずれも我々の考え方にぴたつと……我々の希望ばかりであつて、国家の資源これに伴わずということがあるかも知れませんが、先ず一番に申上げた面の御努力を為政者のかたがたにお願いをしたいということが、恐らく化学工業方面ばかりでない、全体の産業人の声であるというふうに考えます。  それから歳入のほうの面について申上げたいのですが、これは租税制度が大きな変化で日本は変りましたので、中には日本の現状に徴税上当てはまつていないものも相当たくさんございますわけで、こういう点で是非ともすでに作られた予算が思うように実行されない、或いは歳入がその予定に達しないなどというのは、そのうちに徴税上非常な不便のあるものがそういう結果を来たしておる。日本の実情に合わないということからそういうものが現われておりますから、現にまだ実施されておりませんが法律は出ておりますが、今決定されんとしております固定資産税中の償却資産に対する課税、このごときは実は法律の上において明らかである、実行の上において非常に骨の折れる問題であつて、すでに各地方並びに中央においての御調査が進行しておりまするが、さて課税して大いに国民全体からの不平の起るものであるかも知れません。又産業の一部にはこの課税のあることによつて産業の進展が阻止されるというようなものも現われておりまするわけであります。これについてはむしろこの税金は撤廃して徴税技術上税金のかけいい方面の税率を殖やす、即ち当然その收入を必要とする場合には戻すというようなやり方をおとり願わなければならんのじやないかとこういうふうに考えております。又もう一つ企業家の立場から問題になつておりますのは、ガス並びに電気税の問題です。これは予算では当初四十五、六億でありましたのが、とつて見ますと非常に殖えて参りまして、本年度は七十億ぐらいの予算なつておりますが、これが又むずかしい問題で、自分でガスを自分の工場内で生産して、それを原料仲介品として化学製品を作るという場合にも課税されることになつておるのです。これは企業体の違うものでない一つ企業体、又言い換えて見れば一つの工場内に税金をかけられる部があつて、税金のかかつたもので製品を作る、これは課税の上で面倒で手数のかかるものである。而も私推算して見ますと、それから徴税上の煩があるばかりでなく、只今申上げました七十一億のガス、電気税の、これは地方税でありますが、そのうちで僅か三億五千万円ぐらいしかならない。三億五千万円にしかなりませんが、そのものが生産する製品は大体海外に向うのが多いのです。これから得る貿易收入が三十億乃至四十億に推算されております。これは細かい数字はちよつと今手許に持つておりませんが、いつでも参考書は差上げます。これなどは七十一億の課税に非常に困難なんです。それから工場自身が生産しておるガス、ガスというのは普通の石炭ガス以外のガスもあるわけなんですが、電気などというものについては事業としてガス及び電気を売つておるものに対しての課税という範囲に止めて頂かなければ、僅かばかりの税金を獲得するがために国家の貿易関係における輸出品の、今申上げました三十四、五億から四十億というものを失う。こういうことになるわけですが、このことは昨年からこの問題について随分申上げておりますが、割合にこの事情が徹底いたしませんので、政府にはお取上げになつておりませんけれども、事業者企業関係でこんなよくわかつたことが実行されないのは、実に残念だというふうに思つておりまする著しいものの一つでございます。これは歳入方面に失うことを僅かにして、国家全体からいつた国際バランスの点からいつて相当のプラスが国に生れて来るものでなかろうかというふうに考えております。その他現在すでに実施しておりまする歳入関係の税收入を、まだ十分実物に当てはめて、研究が終つておりませんけれどもございますわけです。これが終つて一応の新税法が実施された上で、修正すべき点は業者の実際の意見を聞かれて、数字の本当の結果を検討されて、為政者側で修正をして頂くことが必要ではなかろうか、こういうふうに考えております。又歳出、歳入の関係はございませんが、日本に行われております、現在の民主主義のために行われたいろんな示唆を受けた法律も、日本の型に合うように全面的に廃止する、全面的に変えるという必要はございませんが、実際に合うような形にこれが変つて行くことが必要でなかろうか。それには国民全体の意思を、又実行した結果をよく国民自身もこれを為政者、政を行う者に訴え、又この点についての事情を明らかに見て頂くというふうにしなければ、本当日本の民主主義は成立しないのじやないかと、こう考えますが、私は予算について極く全般的なことを申上げたのでございますが、ただ希望としてもう一つ実質的に申上げたいのは、日本の産業の基礎になつております金融関係の問題、物資問題が非常に長い間の欠乏を訴えられておつた問題でありましたが、いつもこれと並行して現われて参りますのが産業金融の問題であります。この産業金融の問題は実際は一昨年から長期金融は萎靡しておりますために、即ち復興金融金庫が二カ年間一千百億円の金を貸出されて、その後三月十四日に事業を停止しています。見返資金というものが、これに代るものだと国民も思い、恐らくそれが自由潤達に動いておるものと思つてでしようが、これは復興金融金庫の長期金融とまるで違つた形で実際上現われておるわけであります。そういうことで、長期貸付は全部一般商業銀行に頼らざるを得ない。これは短期の預金を持つておりますから、これは好みません。その結果が昨年末から日本銀行に千六百億からのオーバー・ローンを、日本歴史初めての状態が現われた。こういう点から、相当長期金融金庫というものは産業の振興のために、今申上げました機械の近代化、その他のもの以外のこととして、国は文化と共に産業が全般的に発達するわけです。殊に終戰直後を我々の産業のスタートと仮にした場合には、五年たつておれば五歳の少年になつており、五歳の少年には五歳の着物を着せ、五歳の靴を供給しなければならん状態が、この靴もなく前のちつちやな着物を着せ、ちつちやな靴を穿かせておる。而もそれが着物や靴の被修に必要なる革ぎれ、衣料ぎれもないという状態に置かれておつたのが産業界の長期金融機関の停止並びにその方面における需給の途が絶えておつたことである。これを一昨年あたりは増資、社債などという民間資金による方法をとりましたが、まだ日本の現在では会社の株が高い、或いは株式の換価が十分であるということでなければ民間資本も出て参りません。いわんや民間資本はみんな枯渇しております。銀行預金が殖えないのがこれに起因するのです。ここにいらつしやるかたがたの個人の日常生活を御覧になりましても、收入と税金との関係、又もつと細かくなりますが、基礎控除が僅かに三万円に今度なりますわけなんです、これなんか五万円くらいの基礎控除がなければ恐らく十分な生活ができないのではないかというふうに思われますわけなんです。そういうふうでありますから、資金の余裕がないのですから民間の貯金はありません。でありますから、一般中央地方銀行に頼つても、この資金の供給は得られない。この状態が続いて参りましたとき、昨年の四月から長金融機関の一部として営業しておりました興業銀行が、一般銀行に変りました。勧業銀行又一般商業銀行と同じ形になりました。一体どうなるかと私たちは考えておりましたわけです。輸出のために輸出銀行もできましたが、その面に対することは少しも考えられておりません。最近やつと開発銀行の問題が上つておりますが、この問題は是非皆さん愼重に、而も早く取上げて実行に入れなければ、本当にさつき申上げました国家補助による近代化など勿論、現状維持がむずかしくなるのではないかというふうに私は考えております。最近における六十一品目の安本のまとめ上げました今度の非常事態に対する、世界の軍拡に寄与するための物資の供与などはユートピアで、恐らくこれについては特別なる措置をとらなければ、電力の問題のごとき、すぐに行き詰まつて、実行できない。あれは机上の空論に終るのじやないかと私は思つておりますが、それは別問題として現状を維持するためにどうしても特別な長期金融金庫を作らなければならない。もう一歩進みまして、この長期金融金庫と並行してでも、又これを拡大して、その中にやはりそれぞれの産業に対しての金融考えなくもやならんと思うのです。それは鉱山に対しては鉱山の金融、船に対しては船の、それぞれ変つた長期の金融面があります。これについて償却、耐用年数と睨み合した金融機関を持たなければならんと思う。開発金融機関金融銀行さえできないときに、こういう小さな、小さなと言うか分化的のものをここで作るわけには参りません。この開発銀行というものを大きくして、この内部に今申上げたような組織を作つて、そこにその方面の專門家が長期の仕事をすることを助けなければいけない。私は現在の日本の工業はまだ赤ん坊だと思つております。石炭は相当にこれに重点を置きまして、日本全体の石炭の埋蔵量は少いのでございますから、相当枯渇に近いような状態になつておりますが、その他の鉱業も殆んど開発されてない。これと、元の財閥が存在した時代とは違つて、自分のところから出る資金を以て新規開発資金に廻すことはできません。どうしてもこれを特別な資金によつて開発しなければならん。こういうふうに考えますが、現在の一般金融機関でこれを理解する機関を持つておりません。のみならず、その他の方面の資金が忙しくて、今申上げた特需方面に対する資金については、船の場合のごとく特別なる斡旋がなければ目的を達しない、こういうことであります。そういうことで一般の金融に関するその面の援助、或いはどういう形でこれを作りますか、いわゆる復金インフレなんというようなことのないように、私はこの復金インフレも世間一般の評判でありますが、必ずしも復金がインフレを助長したものと思いませんが、復金の実情に鑑み、この貸出に実際の仕事の実効が早く現われて来るということの裏付をするような形を作りまして、良心的に運用することにしてこの機関を作り、又今申上げました分化的の各産業別の長期投資を必要とするものに対しても、又別の、或いはその中に入れて金融機関を作るということが今申上げた日本の産業の大きな面からの立上り、又自立経済と申しましても、今までのものに少し力を添えたというだけでなく、根本的に、日本の今後の立場の経済基礎に立つて行くということであれば、その点にあらゆる方面からの遺憾のない手段方法が速急にとられなければならないと思います。今、船の問題に少し触れましたが、この船に対しても現在新造船に対して金融関係だけ大いに国家斡旋が行われておりますが、私この場合新造船年々四十万トン、或いは三十万トン造つておるのではとても日本貿易の振興には間に合いません。千五百万トン、二千万トンの海上輸送をしなければならない場合に、僅か百万トン足らずの船が五回運転しましても五百万トンです。これはアメリカが二千万トンの船を繋いでおりますが、かねて問題になつおりますこの船を傭船でなく、買船するということに計らわなければ、我々の希望しておる貿易の振興も又今度の軍拡又は軍備に対する我々の援助の目的も達成しない。これに資金が要る。これは造船の資金じやなくして船を買うほうの資金が要ると思う。尤もこれにはいろいろな海の向うにおける船舶業者又は海運業者からの了解を必要といたします。これは恐らく日本の十分今後の社会、経済に寄与する立場から許される。併しこの買取りに行くのにはただ船だけでは行かれませんから、こういう方面に対する資金というものはやはりさつき申しましたように大急ぎでやらなければならん一つであると考えておるわけであります。こういう面についての支出などは是非やらなければならんことであります。これには資金面から、……外資導入が最近には電力の開発などに謳われておりますが、私これも非常に心配しておりますものなんです。というのは実現されるか否かは……、併し予算関係関係はございません。でありますから触れません。どうしてもこういう方面に皆様が相当の力を注いで、口頭禅でなく、産業は国の基礎なり、産業の発展がなければ日本の国の発展がないということを如実にこの予算面に盛込んで頂くことを、本予算といわず将来の予算にあらかじめお願いをして置きたいと思います。これで終ります。
  51. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 如何ですか。
  52. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 今のお話は、自分の家で作つて使用しておるガス、電気、そういうものには課税しないほうがよかろうという御意見で、そうすればそれだけコストが下るという意味なんですね。
  53. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) そうでございます。ちよつと申上げます。その中でこれをほかの第三者に売る場合には……。自分の製品を作る場合になります。
  54. 岩崎正三郎

    ○岩崎正三郎君 自分の製品を作るということはどういうことですか。
  55. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 例えばガスを利用いたしましてそうしてガラスを拵えてそのガラスを……、自家用のガスを自分の工場内に持つて行く。それは初めから自家用ガスを使うことによつてガラス工業を成立されております。今度それに税金がかかります。これなんかはつきりほかヘガスは出ませんからよろしうございますが、電気の一部にはほかへ電気を売りながら一方自家用で化学工業品を出しておるものがございます。これなどはやはりほかに売つておるものに対して税金を取つております。そうしてその電気を利用して電気精錬をやつておりますとか、電気製鉄をやつておりますものは、これはその電気に税金をかけて頂いたものから現われて来る、その製品が国際場裡においてコスト・ラインの点から輸出ができないということもなきにしもあらずという場合も考えられます。こういう種類のものについての課税を免除してもらいたい。
  56. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 岩崎君よろしうございますか。
  57. 一松政二

    ○一松政二君 ちよつと原さんにお伺いますが、今のガス発生瀘から出るガスに税金をかけておるのですか。
  58. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) 今、出たガスに対して税金をかけることになつたわけです。
  59. 一松政二

    ○一松政二君 それだから自分の工場に施設してあるガス発生瀘から……、ガス発生瀘といつても、それを重油に置替えればガスじやなくなるのだが……。
  60. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) そうです。ところがガスでなければならないものがあります。さつきのガラスのボツトルをこしらえたりする場合ですね。
  61. 一松政二

    ○一松政二君 それにかけておるわけですか。
  62. 原安三郎

    公述人(原安三郎君) そうなんです。それからそのガスのうちには、今まではガスの例を話したのですが、工場内の塩素というものがございます。あれなどはガスをよそへ出せない、全部自分のほうで四塩化酸素とか六塩化酸素を作つておるわけです。これがかかるのです。やはり法の解釈で行けば……。
  63. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) よろしうございますか。ではどうも有難うございました。   —————————————
  64. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 次は婦人有権者同盟常任委員野村克子さんにお願いします。
  65. 野村克子

    公述人(野村克子君) 只今御紹介にあずかりました野村でございます。私は二人の子供の母でございまして、毎日あくせくとお台所の用事にその日その日を送つておりますものでございます。従いまして、こういう今回の予算であるとか、広く日本経済一般の問題につきましては、日頃別に勉強いたす機会もなく、全くこういう方面におきましてはずぶの素人でございます。従いましてこれから今度の予算に対して申上げますことは、たくさんいらつしやいます專門家のかたがたがお聞きになれば恐らくちぐはぐな、或いは間違つたことを一ぱい言うような、大変お聞き苦しいようなことになるかも知れないのでございますが、その点あらかじめ御寛容頂きたいと思います。私も台所をあずかつております家庭の主婦の一人として、そういう見地から今度の予算の説明書を読まして頂きまして、それに対しまして自分の思いましたことを概括的に申上げたいと思います。  先ず最初に今度の予算では、私たちお台所をあずかつておるものとして一番心配しておりますのは物価上昇でございますが、このことにつきましては今度の予算では十分今後の物価上昇ということについての処置がとられていないのではないだろうかということを感じたのでございます。成るほど私たちがお台所で使います消費財の小売価格というものの上昇率は、生産財に比べまして成るほど緩慢でございます。昨年の六月から十二月にかけての消費財の、特に食糧でございますが、食糧上昇率というのは二・七%でございます。これはお米の値段がそれほど上つていないので食糧一般の上昇率がこのように二・七%ぐらいにとどまつているのであろうと思うのでございますが、ところがこの食糧が十二月を境として一月、二月にかけましてもの凄く上つているのでございます。例えて卑近な例を申しますと、お味噌一つにいたしましても、お味噌百匁につきまして昨年の朝鮮動乱のときにはお味噌が十五円で買えたのでございます。その十五円のお味噌が、十二月には十八円となり、只今は百匁二十五円いたしております。よいお味噌になりますともう三十円もいたしております。それにお塩につきましても大体昨年の六月、十二月、本年の二月と、その上昇率を見てみますと、八十二円五十銭、百五十円、百六十五円、又豚肉を見ましても大体十二月から二月にかけまして百匁につきまして二十円ぐらい上つております。お米の闇の値段は百四十円を前後いたしておりまして、それほど上つておりませんが、このようにしまして主食を除いた重要な副食物というものの上昇というものは、十二月以来非常に急激に上つております。それから衣料につきましても、六月から十二月にかけましては、大体五三・八%の上昇だそうでございますが、十一月から現在に至りましては、更にそれが三〇%から三五%上つております。特に純毛品の値上りは五〇%以上にこの僅かの期間に上つております。それに日用品、私たちに関係の深い石鹸にいたしましても、もう十二月から只今まで一個について大体五円、それ以上上つております。それに又お台所用になくてはならない紙でございますが、これは一締め年末に買いました紙、二百二十円くらいの紙が只今三百三十円になつております。このようにいたしまして、最近の物価高ということは、お台所をあずかります私たち主婦にとりましては、本当に頭痛の種なのでございます。一体今度の物価高の原因はどこにあるか、これは先生がたに申上げるまでもなくよく御存じのことでございますが、海外の各国が第三次世界大戰に備えての軍備拡張をしている。そのために戰略物資を買溜し、或いは又今まで輸出していた品物を出さなくなる。そのために又船舶が非常に逼迫して来るというようなことのために、その上更に私たちにとつては十二月六日における中共貿易のストツプというようなことも原因いたしまして、今度の物価高の原因の震源地、根源地というものが、海外の軍備拡張にあるという点に非常に大きい特徴を持つているのではないかと思います。でこんなにして例えばこの今まで入つておりました輸入が非常に円滑に入つて来なくなるし、又これからも輸入というものは、今までのようにスムースに行かないのではないだろうかというふうに、素人の私にも考えられるのであります。例えば最近の輸入の動向を見て参りましても、綿花、原毛、塩、人絹パルプ、小麦、大豆、砂糖など、そのほか私たちの日常生活に非常に関係の深い輸入物資の動向を見て参りますと、その輸入物価上昇は、昨年の一月を一〇〇といたしますと六月には一 ○四、十二月には一四一、更に二月一日現在で平均一八六に上つております。こんなにして私たちに関係の深い輸入物資の物価がどんどん上つて来ております。これが国内にも響いて、私たちの台所にも響いて来るのは当然なことでございます。それに戰争準備のために船舶が非常に逼迫して参りますから、船賃の値上げということも非常に大きい原因をいたしておるわけでございます。驚いたことには、この船賃というものは、私たちの輸入いたします品物の大体五〇%から六〇%、七〇%をこの船賃というものが占めているということを私ちよつと雑誌で知りまして、実に驚いたのでございます。このように船賃というものは非常に私たちのお台所の品物の値段と大きな関係を持つているということ、この船賃というものはどんなに朝鮮動乱を境として上つているのだろうか、素人なりに私調べて見たのでございますが、非常にこれも上つております。例えば日本向けの海上運賃、バンクーバーの穀類が日本に参りますには、昨年の四月は一トンにつき六ドル五十セントでございました。それが昨年十一月には九ドル二十五セントくらい、更に今年の二月になりますと十六ドル五十セントにも運賃が上つております。更に又バンコツク米、お米のほうでございますが、これはやはり昨年の四月、十一月、本年の二月と足取りを辿つて見ますると、一トンにつき四ドル三十セントが六ドル、更に十一ドルに上つています。つまりこの予算編成されました当時の十月或いは十一月から比べまして、ここ四カ月の間に運賃が二倍になつておる。こういうふうな関係でございますから、輸入物資の物価がこんなに上る、運賃が上つておりますから、これが私たちのお台所に響いて参りますのは当然でございます。こんなにいたしまして、お台所をあずかつております主婦は非常に物価が上ることを恐れておりますが、一体今後物価はどんなになるだろうかということが私たち主婦の頭痛の種なんでございます。恐らく今後の物価上昇の見通しということにつきましては、それぞれ專門家にお任せいたさなければならないのでありまして、これはやはり第三次世界大戰の危機というものが去らない限り、世界における物価上昇ということは、或いは急激に、或いはじりじりか、どういう形をとるにいたしましても、大戰の危機というものがなくならない限り、物価上昇というものが今後続けられるのではないだろうかと思うのでございます。このようにいたしますと、私たちは一銭の物の値段も上らない、全然物価上昇ということを勘定に入れないでさえも、只今私たちのお台所というものは非常に苦しいのでございます。毎日こういう立派な議会で御生活していらつしやいます議員さんには、なかなかそういうところがわかつて頂けないのじやないかと思うのでございますが、本当に私たち国民の生活は、一般消費者の生活はこの際大変でございます。例えば東京都庁が昨年の十月に四・七人の労働者の生活の実態調査をいたしておりますが、この人たちの調べによりますと、四・七人の生活で、これは少し多いと思うのですが、一万三千二百七十三円ぐらいの生活をいたしております。このように数字を申しますと、ははん、そうかで終つてしまうのでございますが、一体四・七人ぐらいの家族で一万三千二百七十三円ぐらいの生活内容というものはどういうものかということをもつと具体的に申しますと、これは理論生計費を一〇〇といたしますと、こういうふうな生活というものは理論生活費を一〇〇としまして大体五〇%ぐらいに当るところの、人間としての生活以下の、動物的な生活であるということです。例えばもつとそれを具体的に申しますと、この理論生計費一〇〇と申しますのは、どういうことを基準に言つているかと申しますと、成年男子の一日のカロリー二千四百カロリー、蛋白質、軽労働者に必要な最低限として八十五グラム、それから被服として例えばワイシャツが年一着、シャツ二年に三着、ズボン五年に二着、ズボン下一年に一着、冬服五年に一着、セーター三年に一着、オーバー五年に一着、たばこ一日七本、お酒が一月五勺、こういうふうな低いスタンダードを基準として考えたところの理論生計費でございます。こういう理論生計費を元にしましてすら、現在私たちの暮しというものはその理論生計費の五〇%を前後しているくらいの非常に低位なものであるということを知つて頂きたいと思うのであります。  それから最近私たち主婦の間で非常に大きい問題になつておりますのは、配給米が、お米の配給が来たときにすぐにお金が払えない、こういうことは皆さん御存じであるかどうか知りませんが、私の近所の配給所で調べて見ますと、最近の私たちの近くのお米の配給所では、大体一千四百二十八世帯を対象にいたしておりますが、お米の配給を持つてつてすぐお金をくれるのは約この半分です。一千四百二十八世帶のうち六百八十四世帶は殆んどいつもお金がないために、あとから取りに来るというような実情だそうです。ここの主任さんが、だんだんこの率が殖えて参つておりますと言つて、この主食の配給すらも取れないということが国民生活の実態であると思います。もつといろいろこういう点具体的に申上げたいと思いますが、こんなにいたしまして、私たちは今後の物価上昇、一銭も上昇しないということを仮定いたしてすら、こういう生活をいたしておりますのに、今後物価がだんだん上つて行くならば、どうなるだろうかという不安が、非常に主婦の中に大きく動いております。  こういうふうに見て参りますと、こういう観点から今度の予算を拜見いたしますと、先ず第一にその今後の物価上昇ということが予算の面に組入れられてないということの端的の現われは皆さん誰もが申されると思いますが、あの価格調整補給金の打切りでございます。これがたつた二百二十五億に切下げられておるというような点、それからもう一つ端的にそれが現われておりますのは、あの公共事業費の面において現われておると思うのであります。仮に調整補給金二百二十五億と算定いたしておりますが、先ほども申しましたように、この予算編成されました当時は十月の物価を基準とされているそうでございますが、この予算説明書のC・I・Fですか、小麦平均価格を、例えば米国、オーストラリア、パキスタン、カナダ、アルゼンチン等から参りますあの平均価格を出しますと、この予算説明書によると大体九十ドルでございます。これが昨年十月予算編成されましたときの小麦輸入平均価格でございます。ところがこの小麦が今年の二月一日では百一ドルに上つております。お米につきましては、予算説明書に書かれておりますお米の輸入平均価格はC・I・Fで百三十八ドルでございます。ところがこれが二月十日には百六十一ドルに上つております。輸入価格がこんなにいたしまして小麦は十月から二月までに一トンについて十一ドルの上昇を見せておりますし、お米は同期間におきまして二十四ドルの上昇を見せております。こういうふうにいたしますと、今後一体お米或いは小麦は一トンについて何ドル上るか私はわかりませんけれども、仮に二十ドル今後上ると仮定いたしましても、もうすでに三千二百万トンの予定量を計算いたしますとここに二百十億円の狂いが出て来るのでございます。一体この予算説明書に、その二百十億円を、どういうふうな形でおとりになる予定なのか、それは補給金を増額するのか、或いはそれとも私たちの消費者価格を釣上げて、その足らずまいをおとりになるのか、そういう点に私たちは非常に不安を覚えるのでございます。そういうようなことは公共事業費についても申されると思います。成るほど昨年度予算に比べますと、公共事業費は昨年度見返資金の分を入れますと、今度の公共事業費は昨年度に比して三十五億減になつております。而も又昨年度のいろいろな工事が残つておりますが、この残つております工事のために、五十四億というものが今年度予算から流用されるそうでございます。こんなにいたしますと、もうこれですでに五十四億と昨年度予算との開きの三十五億減を加えますと八十九億というものがもう本年度予算の中から消えちやうわけなんです。それにいろいろな資材が騰貴いたしますから、恐らく本年度公共事業というものが、政府が予定されます事業分量を完遂いたしますためには、到底この予算ではできないのじやなかろうかというようなことが言われます。このことは同様にしてもうあらゆる予算費目のことについても言われるのじやないか。このように今後の物価上昇ということが、二十六年度予算の中に考慮されていないということ、その不安感を私たちは覚えるのであります。従いましてこういう予算でいいだろうかというふうにこの予算に対して私たちの信頼感というものがそれだけ薄らぐのじやないだろうかと思うのでございます。  この予算書を読みまして第二に私が感じましたことのポイントは、政府が産業資金に対してお貸になる援助額に対して、民生安定とか文教方面への援助資金のウエイトが余りにも軽過ぎはしないだろうかということを私は感じたのでございます。産業資金への援助というものは、何ですかむずかしい言葉で言いますと、資本蓄積というのか何か私はそういうむずかしいことはわかりませんですが、ともかく私はこの予算費目から、一体産業に関係ある費目をずつと拾い取つて見ますと、その合計が幾らになるだろうかということを自分で計算したのであります。外国為替資金、或いは貴金属、それから農林漁業資金、緊要物資輸入基金、日本輸出銀行日本国有鉄道、公団への損失補填等々、一般会計の中からそういう費目を拾いまして、そのトータルを自分で出して見たのでございます。そうしますと、そのトータルが六百七十九億になつて、全予算の大体一〇%を占めております。それから更に特別会計のほうを見ますと、見返資金が殆んど産業資金に廻されておりますので、私は驚ろきました。見返資金の公企業支出に九十億、私企業支出に三百五十億、それから経済再建のために七百五十四億というように、とにかく見返資金の費目の殆んどが産業資金に廻されております。それから資金運用部特別会計、この中でも金融債に対して四百億という貸付がなされております。それで国鉄、電通を合せますと、六百三十五億というものが資金運用部特別会計から出されております。私はこの一般会計と特別会計と合しまして産業に用いられる額が一体幾らになるのだろうかということを自分で出して計算いたしましたところが、私の計算によりますと、それが大体二千五百八億ぐらいになるのです。こういう費目について、嚴密にそれは産業資金ではないかとか何とかいろいろな御意見があるだろうと思いますが、私は素人でよくわかりませんが、素人なりに拾つて見てそういう計算を出して見たのでございます。それでは一体私たちの民生安定、文教及び科学の振興のためにどれほど政府からお金を出して頂いておるのかと思いまして、又そういうものを拾つて見ますと、社会政策的な経費、住宅関係経費、文教費というものを合算いたしますと九百二十九億になるのでございます。それを先ほどの産業への貸付と申しますか、援助額というものとの比率を比べて見ますと、この民生安定、文教のために用いられる額というものは、産業へ政府がお貸付けになる、援助なさる額の大体三七%に私のそろばんではなるのでございます。これは勿論昨年度予算から見れば、民生安定、文教のために随分政府が今年は奮発して頂いております。その御努力に対しましては、非常に感謝するのでございますが、私は慾が深いかも知れませんが、まだこれでも足りないような気がするのでございます。その民生安定、文教の面につきまして、極く常識的な観点から各費目について一瞥いたしますと、先ずこの民生安定に用いられております生活保護費の問題でございますが、これも政府は昨年度に比べまして、特に六大都市五人家族の生活保護費といたしまして四百十円の増額をされておりまして、誠に結構だと思うのでございますけれども、よく考えて見ますと、先ほども申しましたように、お米はすでに小売価格として一月から上つております。それに、お米の上る率は僅かでございますが、先ほど申しましたように、衣料品、味噌、醤油の上る率が非常に多うございますから、こういうふうなものを計算に入れますと、折角政府が六大都市に住む五人家族に対し四百十円の増額をして下さつているのでございますが、実際にはこういつたものはみんな吹き飛んでしまうのであります。政府の補助は、生活保護費のためにこれだけの増額をしていると、この予算説明書の中でもそれを一つの大きな特徴として御説明になつておりますが、受けるほうの側では、物価上昇を計算いたしますとちつとも増額にはなつていないのであります。前ととんとんだと、或いはもつと物価上昇すればそれよりも苦しくなるかも知れません。まあ受取る側といたしましては、折角経費を増額して頂きましても、少しも増額にはならんのであります。それから生活保護費と関連いたしまして、未亡人の問題は大きな問題だろうと思うのですが、こういう点につきましても、私は政府にもつと御考慮願いたいと思うのです。未亡人は只今百九十万ございますが、そのうち戰争未亡人は一五%、私は特にこの戰争未亡人に対しましては、本当に国家がもつに丁重なる礼を盡して、この人たちの生活を保護して後顧の憂いなくその日を送らせるということは、国家の当然の義務であり、又私たち国民の当然の義務であると思うのです。こういうことのために私たちの税金が用いられますならば、私たちは本当に喜んで苦しい中からでも税金をお払いしたいと思うのです。未亡人百九十万のうち戰争未亡人一五%に対しては、もつと何らかの措置が特別にとられていいのではないかと思います。又十八歳未満の子供のある未亡人は、全体の未亡人の中で八八・四%でございます。そうしてこの八八・四%のうちの漸く一二%だけが生活保護費の適用を受けておるのでございます。ですから未亡人全体の中で生活保護費の適用を受けておる者の数は、極く微々たるものであると言わなければならない。では八八・四%の十八歳未満の子供を抱えた未亡人は一体どうして暮しておるか、働くにも子供があつて働けない、そういう未亡人の社会施設ということのために国家はどれだけのことをしておいでになるかと申しますと、只今公立の乳児院という竜のは全国でたつた六カ所しかないのです。それに又母子寮は全国におきまして百三十五カ所、保育所が五百七十五カ所、助産施設が僅かに八カ所、こういうふうな社会施設の現状でございます。では一体未亡人全体の八八・四%を占める子供を抱えた未亡人は一体どうして暮したらよいのかということは、非常に大きな問題だと思うのであります。保育所に收容されております児童の数にいたしましても、公立と私立と合せまして、五歳未満の子供の総人口の僅か一・八%を收容し得るに過ぎない状態でございます。これは生活保護費について関連して私の意見を申上げましたが、この予算説明書では、民生安定のために昨年度よりも非常に大きいお金を出してそのために努力をしておると政府がおつしやられましても、受ける側の私たちにとりましては、まだまだその御努力が何だかもの足りないように感ずるのでございます。こういうことは同様に、結核対策、或いは失業対策、住宅対策についても言われると思います。結核対策につきましても、昨年度予算に比べますと、約十五倍の大きな予算額を本年度は計上されておりまして、非常に私たち結構だと喜んでおります。けれども結核の死亡率は未だに我が国の死亡率の第一位を占めておりまして、人口一万に対しまして死亡率は一六・九%でございます。こんなに大きな死亡率を示しております。これを外国の死亡率に比べますと、デンマークにおきましては人口一万につきまして二・八人、アメリカが三人、英国では五・四人の割合でございます。日本ではそれが十六・九人の割合で死亡しておるという現実でございます。そうして結核患者は、大体現在の推定数といたしましては、百四十万人あるのだそうでございますが、その百四十万人に対しまして、二十六年度予算では一万七千二百のベットを用意されておりますが、百四十万の結核患者に対して一万七千二百のベットを用意したということがどういう意味を持つておるか、それは必要とされるベットの一・二%を満たすに過ぎないというような現状でございます。そのほか住宅のことにつきましても、同様なことが言えると思います。住宅につきましては、大体一九四九年におきまして、絶対不足量が三百五十四万戸だと建設省では申されております。ですから毎年四十万戸以上の建設が今後必要であると、建設省の資料を読みますと書いてございますが、これに対してまして、今度の国庫予算では、住宅金融公庫の貸付と、それから災害復旧、公共事業費の中から住宅費に廻される分を合算いたしますと、本年度においては、大体その合計が五万九千戸増設されることになつておりますが、未だに絶対不足量が三百五十四万ぐらいございますから、これにつきましては、まだまだその需要を満たす点では、折角のこれだけの予算をお立て下さいましても、まだまだその需要を満たす上におきましては僅かなものであるということを、この際もう一度御記憶を新たにして頂きたいと思うのであります。それから私たちの住んでおります疊数が、一人当り全国平均いたしまして、都市では三・二疊ぐらいのところに住んでおるのだそうでございます。これでは決して人間らしい生活ではないということになります。  そのほか文教予算の面でございますが、これも大変増額して頂きまして結構なんでございますが、私たち会いますお母様がたから、もうひとしく言われますことは、せめて義務教育だけは国家で全額負担して下さるようにお願いして欲しいと、今日は予算の公聴会に出られるのだそうだが、どうかその点を是非伝えてくれということを私は近所のお母さんがたから懇々と申されております。私の近くの小学校に行きまして、その小学校の経費を私は調べて見たのでございます。上北沢小学校というところでございますが、そこの二十四年度の歳出を調べて見たところが、総歳出が四百四十六万二千百十八円出ております。このうち、区からの補助が約九十一万くらいでございます。厳密に申しますと、九十万八千四百六十七円でございます。都からの歳出が三百五十五万三千六百五十一円になつております。そうしてPTA及び寄附というのが、二十四年度におきましては八十三万六千八百四円でございます。そういたしますと、このPTA及び寄附から出ております八十三万六千八百四円というお金は、丁度区から出ております九十万八千四百六十七円というお金と大体において匹敵するのでございます。そういたしますと、この上北沢小学校で使われております消粍費、燃料費、印刷費、光熱費、水道費、通信運搬費、そういつた学校の経費というものの約半分を、PTA、保護者が負担しておるという結論になるのでございます。大体子供を一人抱えておりますと、どれくらい私たち子供のためにお金を出さなければならないかと申しますと、この小学校ではPTAの会費を四十円取つております。学校の給食代が百十円から百四十円かかります。学級費が三十日かかりまして、一人の子供を小学校に入れるのにどうしても四百円かかります。ですから子供を三人抱えておりますと、千二百円というものが小学校に行つている子供だけに使われる。千二百ばかりと皆さんお思いになるかも知れませんが、この間の衆議院の予算委員会の公述人をなさいました亀山教授の公述を読みますと、こういうことをここで大きな声で言つていいかどうかわかりませんが、自分は大学の教授として大体手取り一万八千円くらい取つておる。恐らく自分は一番最高であろう。けれども自分の同僚の中で書物を買うために收入の一割を割いておる者はもう殆んど稀だ、ということを公述書の中で申されております。大学の教授ですら自分の收入の一割を書籍に当てることのできないような現実でございますから、ましてやもつともつと少い收入をもらつております私たちの家庭から三人の子供を小学校に入れますために千二百円出すということは、非常に大きな負担でございます。ですからこういう面から、政府本当に文教、民生安定のために非常な努力を払つておられることはよくわかりますが、こういう点をもう一度よくお考え下さいまして、こういう面への支出をもつと大きくして頂きたいということを申上げたいのであります。  それから小さなことに移りますが、この預金部資金のことでございますが、預金部資金の收入の大体半分というものは預金の増額から来ております。言い換えれば、私たちの零細なる郵便貯金、或いは保險というものからその收入の半分は賄われておるわけですが、当然この預金部資金というものの運用は、大衆から取上げたお金でございますから、大衆の福祉のためにそれを還元するということが本道ではないかと思います。勿論消費金融ということは、金融の本道から申しますれば非常に危險ではございましようが、併しそれは何とかほかの面から操作して下さいまして、大衆から取上げたお金は大衆に返すということにもつと力を入れて頂きたいとお願いしたいのでございます。それから又小さなことでございますが、鉱工品貿易公団の損失補填が十六億九千取つてございますが、ああいう馬鹿げた早船事件でございますか、そういう事件のために起つた損失というものを国民一般の税金の中から補填するということも、何かちよつと私たち理解できないような気がいたします。それに終戰処理費も随分な額に上つておりますが、講和條約も本年度中に締結されるのではないかと思いますと、若し締結された場合に、その残つた終戰処理費というものは一体どういうために使われるのであろうか、そのお金が宙に浮きはしないだろうかということが、素人なりにも何だか不安に思われます。こういう点を思つたまま率直に申上げます。それに経済再建費として七百五十四億円が計上されておりますが、この予算説明書では、経済再建費としてこれが具体的にどう使われるかということは書かれておりませんので、この点もう少しよくわかるように知りたいと思つております。  その次に申上げたいことは、税金の点でございます。正直なところ税金のことに関しましては、私随分この予算説明書を何回も何回も繰返して読んだのでございますが、正直に申しましてよくわかりませんです。この予算説明書では、本年度七百四十三億の減税と書いてございますが、よくこれが理解できないのでございます。で例えば物価がこれからも上りますから、所得が仮に二十六年度私たちが上るといたしましても、所得が上ればそれだけ税率も変つて参りますし、それに当然必要な税金を払わなくちやならない。ところが一方物価が非常に上つておりますから、所得が上りましても、物価が上つておりますから、本当に生活が苦しいということにつきましては、二十五年度も二十六年度も同じなのでございます。けれども所得が上つておりますから、それだけ税金を払わなくちやなりません。ですから結局私たちにとりましては決して減税になつていないので、まあ増税と言うていいかどうか知りませんが、決して私たちにとつては減税になつていないということが言えるのじやないかと思うのです。それに本年度の国税は、昨年度に比べまして確かに五億円の減になつております。けれども他方地方税というものが、昨年度に比べて今年度は百七十八億増になつておりますから、差引私たち払う者にとりましては、国税であろうが、地方税でありましようが、払う者にとりましては、百七十三億円の増税になるのじやないだろうかと思うのです。で私たちがこれ以上税金を取られますと、本当にもうどうしていいかわからないのです。一体私たちが自分の実收入の中からどれだけ税金を国家のために払つているのだろうかと私は不思議に思いまして、ちよつと調べて見たんでございます。そういたしましたら、昭和九年から十一年におきまして、実收入の約一%が租税公課のために払われております。けれどもこれが昭和二十五年の十二月になりますと、実收入のうち一八%というものが租税公課のために払われているのです。而もこれが直接税でございまして、これに間接税を含めますならば、私たちの実收入のうちの一体何%が間接税、直接税を含めて払うことになるであろうかと思いますと、何だか恐ろしくなるような気がいたすのであります。私たちは税金をお払いすることを決して拒否するものでもありませんし、本当に喜こんでお国のために使つて頂きたいと思いますが、やはりそれにも限度がありますので、こういう点ももつと予算の面で……、それでは一体具体的にお前たちはどうしろというのだと聞かれますと、私にはわかりませんですが、こういう点を御專門家のかたがたにお願いいたしまして、本当国民の減税ということについてもつと御考慮を頂きたいとお願いいたす次第でございます。  最後に申上げたいことは、この予算編成の基礎となつております政府の政策に対して、二、三の私の希望意見を述べさして頂きたいと思うのです。これは直接予算関係がないかも知れません。併し政府の政策というものは予算を決定いたしまする基礎的な要件でございますから、これに対しても一主婦として自分の希望意見を申述べさして頂きまして私の責を果したいと思うのでありますが、先ず箇條書的に申上げますと、成るほど二十六年度予算では随分日本の産業再建のために力を入れておいでになる、ということが素人なみにもわかるのでございます。それも非常に結構なことだと思いますけれども、そういうふうに日本の産業再建のために力を入れて下さることも結構ですが、それと同時にその産業を本当に汗と油とを以てその産業の歯車を廻しておりますその産業再建の真の担い手であるところの私たち働く人間、働く人々、庶民階級の生活が本当にそれと同時にもつと安定するように御考慮願いたいということを真剣にお願いいたしたいと思うのでございます。それからもう一つは、只今警察予備隊とか、海上保安官等の経費が随分出ております。今度の予算でも再び二千三百人の海上保安官の増員を予定されているようでございますが、私から申しますならば、こういうふうな経費というものは、国内の治安維持というようなことは、本当にこういうことのために使われるお金があるならばもつと民生を安定するような面にそのお金を廻して頂いたほうが賢明じやないだろうかと思うのでございます。警察予備隊とか海上保安官というような経費というものは、いいますれば疾患部に出ました膿の上に膏薬を貼るようなものじやないかと私は思うのです。ですからそういう膿が出ないようにするためには膏薬を貼るということよりも、もつと根本的な対策、即ち平素からその人が十分に栄養をとつて、そうして明るい衞生的な住居に住むということが病気にならない先決問題だと思うのです。ですから膿が出てしまつてから膏薬を貼るというような、そういうような対策でなしに、膿が出ない前にもつと栄養が皆とれるような、そうして明るい家に住めるような民生の安定ということに留意した対策というものを根本的に立て直して頂きたいと思うのです。でなければ栄養は補給しないし、暗い家に住まして置く、そして膿が幾らでも出て膿の上に膏薬を貼つて行くというようなことばかりやつておりますと、国内の、苦しい国民の生活それ自体の中からもうすでに治安が崩れて行くのじやないだろうかということを私は虞れるのでございます。ですからむしろそういうお金があるならば、できるだけ直接に民生の安定、未亡人を保護するとか、母と子の施設を守るというようなことにお金を使つて頂きたいということを是非お願いしたいと思うのでございます。それから私ども主婦が恐れます物価上昇という問題でございますが、これから一体物価はどれくらい上るだろうか。非常に私たち主婦は不安でございます。併しよく考えて見ますと、最初にも申上げましたように、今度の物価上昇は各国が軍備拡張をするからこういうふうに上昇するのでございますから、究極的にはこの物価上昇の根原的な原因であるところの世界の軍備拡張ということに対して日本は断乎として反対するというような立場を、政策をしつかりと立てる決意を政府の皆様方にお願いしたいということを希望いたしまして、私の非常に概括的な素人的な見解を述べさして頂いた次第であります。
  66. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) 何か御質問ありますか。
  67. 一松政二

    ○一松政二君 ちよつと野村さんに伺いますが、今の海上保安官或いは軍備拡張というかなり日本の国だけでどうにもできないような問題にお触れになりましたか、民生の安定、ウエルフエア・ステートいうことを一応お考えになることは結構だと思いますが、海上保安官にしても治安の維持にいたしましてもそれのみでは、民生の安定だけやつておれば必ず治安が保てるかというと、これはそうでもなかろうと思います。我々のところへ泥棒が入つて来たり、いろいろ惡徳をするものは必ず生活に窮迫しておる人のみがそれをやつておるのじやなくて、やはり多くの人の中にはいろいろ変つた性質もあると思いますから、それを止めて、そうしてそれを民生の安定に廻すと今おつしやつたんですれども、その御趣旨は、今でもやはりさようにお考えになりますか。
  68. 野村克子

    公述人(野村克子君) ちよつと聞き違いして頂いておるのじやないだろうかと思うのでございます。私深い混み入つた細部に亘つてのいろいろなむずかしい議論はよくわかりませんのでございますが、私は決して海上保安官だの、それから国警だのを全然なくするというようなことは申しておりません。ただ最近の国際情勢や又最近の何と申しますか、世相に現われたいろいろなことを見聞きし触れておりますと、何だか政府がそういうことのみに力を余りにも一生懸命入れ過ぎるのじやないかということを、偏狭であるのじやないかということを申上げたのでございまして、それが全然そういうようなものは必要でないというようなことは私今でもちつとも考えておりません。ただそういうことのみによつて、そういう警察官だとか海上保安官でございますか、そういうものを増員することによつてのみ民生が安定されるというような、そういう印象を何か最近の世相から受けるものでございますから、それだけでは民生が安定しない。勿論それも大切でございますけれども、そういうことのみに余り力を入れ過ぎて頂いて、そうして肝心の栄養を補給するという面がそのことのためにおろそかになりますならば、その栄養失調というそのこと自体の中からもうすでに治安が崩れて行くのじやないだろうかということを申上げただけでございまして、その点をどうか……。
  69. 一松政二

    ○一松政二君 議論は止めます。あなたのおつしやることも或る程度わかります。私の言うこともあなたはおわかりになつておると思うから、それ以上の議論は止めますが、今は第三次大戰を避けるための軍備拡張をやつておると思うのです。第三次大戰をやるために軍備拡張をやつておる民主国家は今のところはないと思います。止めたいと思つてつておると思う。それに日本が反対すべきであるとあなたのおつしやつた意味は私はちよつと奇異に感じたのですが、やはり日本がそういうことを率先してやれば世界にそれだけ大きな影響を与えて、そうして或る程度目的が果せるとお考えになりますか、どうですか。その点ちよつと伺つて私の質問を終りたいと思います。
  70. 野村克子

    公述人(野村克子君) 軍備の問題につきましては非常に大きい問題でございますので、これはこの予算編成なさる政策の基礎要件として私はそういうお願いを持つておるという希望意見を述べたに過ぎませんので、その軍備拡張の問題につきましては又別途にいろいろと十分時間をとつて討議しないと、こういう短かいところでいろいろお話し合つて行きますと、却つて誤解が生じますから、そういう点は別途の機会に十分にお聞きもし、又お教えもして頂きたいと思います。ただ私は国民の一人としてそういう希望を持つておるというその希望を一応聴取して、聞いてやるという点にお止め頂ければ結構じやないかと思います。
  71. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 ちよつとお尋ねしますが、先ほど予算の説明書の特に税のところを見てわからなかつたというようなお話ですが、実は私たちもわからないので、あなたがたの実感が理論的にも予算の上からもむしろその生のままの実感を持つておるのだと、そういう意味では政府の陳弁は抗弁に過ぎない、議論に過ぎないと思つておるのですが、その議論は別としまして、そこの四十六頁を一つ開いて見て下さいませんか。四十六頁のそこに夫婦及び子三人という欄がありますね。そこで一万円の收入の人は、收入のところは現在は四百八十三円の税を納めておるということになつています。それが改正案によりますと、二百円になつておる。従つて二百八十三円のまあ税が減になるということを政府は説明しておるのですね。でこれは国税だけですから地方税を合せますとさつきおつしやつたような問題が出て参りますが、国税だけについて言つてこういう家族が二百八十三円の減税になるということ、ところが他方には今あなたもおつしやつたように物価がどんどん上つて来て、生計費あたりは上つて来る。そこで政府がこれをどう説明するかというと、我々が聞いたところでは、成るほど消費物資はいろいろ上りましようが、それらのものは今度減税をしますんで、その減税で吸收する。政府のよく使う言葉なんですが、減税で吸收しますから、もうそんなに生活は苦しくならんと思います。と説明をするんですよ。そこで私がお聞きしたいのは、一万円ぐらいの收入のところで、而も夫婦及び子供三人ぐらいのところで二百八十三円ぐらい税を下げてもらつたら、この物価騰貴、消費物資の騰貴はこれで大体帳消しになることがあなたがたの実際に家計をとつておられる実感として肯けるかどうか。という問題は、一万円ぐらいの收入のところでは生活費の上りはどれくらいに今実際なりつつあるか、その点を一つお聞きしたい。
  72. 野村克子

    公述人(野村克子君) 一万円ぐらいで二百三十三円の減税になる……。
  73. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 二百八十三円、そこに数字が出ておりますね、それで……。
  74. 野村克子

    公述人(野村克子君) これは何でございますね。先ほども申しましたように、ちり紙一つ買いましても一締め買いますと、もう十二月から一月までに一締めで百十円というものがもう上つておるわけでございますから、二百八十なんぼぐらい減税して頂いてもそれは何もならないのじやないかと思います。それにお米の値段が上りまするし、そうして外国からお米が入つて来る輸入分量が少くなるのです。そうして又お麦が統制が撤廃されます。お麦の値段もそうして外国から入つて来ます輸入価格が非常に上つて来る。撤廃されますと大よそ私たち庶民生活にとつて非常に関係の深いお麦の闇値というものも上つて参りますでしようし、そういうことを計算に入れますと、一万円で二百八十何がしのお金を減税して頂いても、それは大したことにならないと私ども考えます。
  75. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 もう一つ、その点をもう少し具体的に言いますが、一万円くらいのところで夫婦及び子供三人ぐらいだつたら家計費としちや最近は何割程度従つて金にすると何百円、或いは何千円ぐらいの支出増になるものでしよう。大体概括的なところでいいですから……。
  76. 野村克子

    公述人(野村克子君) そうでございますね。夫婦二人子供三人でございましたら、どんなに、その子供さんの大きさにもよりますが、どんなに見積つても私は最低一万五千円なければもういけないと思いますが、これは最低の線でございます。具体的に申しますと、今日は只今申しませんでしたが、私の一番親しい友達の家計簿を私はもらつて参りました。この友達の御主人は或る省の、或る役所でございますが、或る省の課長さん級の生活をしておられます。で子供さんお二人と夫婦の四人暮しでございますが、大体月給をいろいろ手当を入れまして二万五千円も取つておいでになります非常に裕福な何と申しますか、お役人さんの中ではもう最高級ぐらいだと思うのでございます。その友達は一体どういう食生活をいたしておるかと申しますと、勿論この友達は今住宅金融金庫でお金を借りて家を建てておりますために、そのほうに経費がかなり要ります。併しこの二万五千円を取つているこの友達ですら一日の副食物費を七十円で切下げてやつております。この友達は非常に数学的な頭が発達した人でありまして、もうお酢からお醤油からあらゆるものをカロリーを計算して二千四百カロリーになるようにきちつと計算して七十円で切り詰めてやつておりまして、これ以上もう自分はどうにもならないと言つております。而もこの友達は專門学校の非常に高い教育を受けており、優れた技能を、技術を持つておる友達であるにもかかわらずそういうたつた七十円の副食物費で毎日賄わなければならないのでカロリーの計算とか、いろいろの節約方法をするために随分な労力を使つて、折角彼女の持つておる高度な技術、技能が何ら社会的に発揮されておらない、それでは損じやないかということを議論しております。具体的に申しますと、さんまが百匁安く売つておるときはこの友達はこのさんまを何百匁というふうに一括して買つて参りまして、自分でそれを切り開いて乾してそうしてお魚の値段の高いときはそのさんまを食べる、或いは又、だしに使いますだしざこ、それもだしに使わないでいろいろ調理して副食物として食べるというように、あらゆる苦心をしてやつております。二万五千円の收入を取つておる友達ですらこのような家計の状態でございますから、只今申上げたように子供三人夫婦五人暮しで一万五千円というのは物凄く切り詰めた生活だと私は思います。
  77. 岩間正男

    ○岩間正男君 ちよつとお伺いしますが、先ほど戰争の問題とそれから予算の組み方のお話があつたわけでありますが、今の例えば非常に生活費が最近は物凄く上がつておる、それで生計費が追詰められておる。こういう問題、この原因については、言うまでもなく朝鮮事変の影響だというふうにおつかみになつておられると思うのですが、日本の今後……先ほどからちよつと問題があつたようですが、再軍備の問題、この再軍備についてはどういうふうに婦人の立場としてはお考えなつておられるか、ちよつと伺いたい。
  78. 野村克子

    公述人(野村克子君) 私はそれは予算の何んと申しましようか、予算審議との関連において申しますと、先ほど申しましたように、物価上昇という面からでも再軍備を反対するというふうに申上げたいと思いまするし、婦人としてはむずかしい議論はわかりませんのでございますが、もうこの間の戰争で愛する夫や可愛い子供を犠牲にいたしてさんざんな目に遭つております。私たち婦人といたしましては、どういたしましても、もう戰争は結構でございます。
  79. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 もう一つお尋ねしたいのですがね。そこの予算説明の二十頁をちよつと開いて見てくれませんか。二十頁の右側の欄のところに、日本專売公社益金という欄がございますね、その右側の一番上、そこの文章のところの下から「たばこは、四月からピース、光を十円値下げし、いこいを廃止する」ということを言つておるですね、たばこの値下げを政府は今度は四月からやろうとしている。これはやはり税を減税して国民の負担を軽くしたのと同じようにたばこの値段も下げて、国民の負担を軽減したいという説明を大蔵大臣はしたのですね。ところがピース、光を下げることはいいのだが、新生だとか、ゴールデンバツトというようなものは下げないのですよ。そこで私がお聞きしたいのは、一体新生とかゴールデンバツトとかいうようなものを下げないで、ピース、光だけ下げて、庶民大衆の負担は軽減になるだろうかどうだろうか。一体家計その他から考えて、これは私はたばこをのまないものだからよくわからない。感覚が出ないのだが、ピース、光をすつているクラスと、下のほうのクラスと、どこのところでそれが分れるかどうか。従つて家計費にこれがどういうふうに影響を及ぼすとあなたが光はお考えであるか。その点。
  80. 野村克子

    公述人(野村克子君) 大変申訳ございません。私もたばこをのみませんものでございますから、只今のピースだの、光だのといろいろおつしやられましたのですが、よくわからないのでございます。御趣旨は私よくわからないのでございますが、そのピースとか光というのは割合に高級者の人がおのみになるのでございます。そういうことはわからないのでございますからお答えできません。
  81. 佐多忠隆

    ○佐多忠隆君 いや、結構です。
  82. 藤野繁雄

    理事藤野繁雄君) よろしうございますか。  今日の公聴会はこれで散会いたします。    午後四時十一分散会  出席者は左の通り。    理事            石坂 豊一君            平岡 市三君            佐多 忠隆君            伊達源一郎君            藤野 繁雄君            東   隆君            木村禧八郎君            岩間 正男君    委員           池田宇右衞門君            大島 定吉君            小野 義夫君            白波瀬米吉君            野田 卯一君            長谷山行毅君            一松 政二君            安井  謙君            岩崎正三郎君            吉川末次郎君            高良 とみ君            西郷吉之助君            高橋龍太郎君            竹下 豐次君            菊田 七平君            鈴木 強平君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            矢嶋 三義君   事務局側    常任委員会專門    員       野津高次郎君    常任委員会專門    員       長谷川喜作君   公述人    全日本中小工業    協議会中央委員    長       櫻田  巖君    武藏大学経済学    部長      鈴木 武雄君    木  工  業 佐藤治三郎君    日本化薬株式会    社社長     原 安三郎君    婦人有権者同盟    常任委員    野村 克子君