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政府委員(
中島征帆君)
石炭の事情一般につきまして御
説明申上げます。
先ず
需給の現状と今後の
見通しにつきまして概略申上げますが、本年度の出炭は、年度初め以来比較的順調に
推移いたしまして、三月末までにおよそ四千万トンの
生産を上げるという
見通しを持
つております。一月の出炭が、速報によりますと、三月二十九万トンでありまして、これは我々の予想よりか約八万トン余り減少しております。又二月におきましては、昨日、今日行われております炭労のストによ
つて、少くとも二日間に十万トン
程度の減産がある、従
つて昨年末に予想いたしました資格料によりますならば、四千七百万トンという出炭予想は、今の点だけで見れば約十七、八万トンの減少になるというわけでありますが、今後ストの
解決と共に、いずれ二月、三月と、この減産の回復
努力が行われるわけでありますから、それによりまして或る
程度カバーいたしまして、およそ四千万トンの出炭は期待できるということに
なつております。それに対しまして需要の予想でありますが、これも十二月、一月と非常な売渡し増加を来たしておりまして、これがいつまで続くかということにつきましては、必ずしも私
どもはそう永続するとは考えておりません。まあ大体そういうものも織込みまして、年間の需要がやはり四千万トン内外というふうに予想しております。従いまして出炭と需要はほぼ見合
つておりますが、その辺の数字を過欠斤でありますとか、途中の輸送炭というような数字で
調整いたしまして、大体本年度の初めからの貯炭が三百四十万トンありましたので、年度末におきまして二百万トン余りになるというような見込を立てております。で
只今申上げましたような出炭と需要との食い違いが若干ございましても、この二百万トンの貯炭の分におきまして調節できる。食い違いが五十万トン内外の増減でありますれば、この貯炭で、この
程度増加いたしましても減少いたしましても、大して
需給に大きな
支障はないというふうに考えております。
次に来年度の
見通しでございますが、来年度の出炭予想は、確たる資料もございませんが、大体私
どもは四千三百万トンから四千四百万トンの間である。本年度の増産の趨勢から申上げますと、大体まあ四千三百万トンという数字も出ております。
統制撤廃以来、各社が
努力いたしました内部整理が比較的順調に進行しておりますので、今日におきまする炭鉱の
生産実力というものはかなり充実している。従いまして需要が相当に増加すれば、或る
程度まではそれに直ちに対応し得る態勢ができていると、こういうふうに考えております。需要の予想は、これもいろいろな数字が出て確たることは申上げかねますが、いろいろな数字を積み重ねますというと四千四百万トンとか或いはそれ以上の数字が出ております。従
つて四千三百万乃至四千四百万、或いはそれを若干上廻る
程度の需要がございましても、現在の炭鉱の
生産能力から行けば、それにミートし得るというふうに考える次第であります。ただ
全般的な数字は右のような次第でございますが、個々の炭種別に見ますと、勿論アンバランスがございまして、特に原料炭の中で、先ほど
鉄鋼局長から
説明がありましたが、強粘結炭につきましては、これはもう全然鉄の需要を満たすだけの
国内産はございません。来年度の
目標の、強粘結炭の需要の
見通しが大体六十万トン
程度であります。従いまして、先ほ
どもお話がありましたが、一応数量を積み重ねますと四百万トンの
鉄鋼生産のためには百七、八十万トンの強粘結炭の
輸入を要するという結論が出て来るわけであります。それから強粘結炭を含めたその他の原料炭
全般につきましては、全体の出炭見込約七百二十万トンを
予定いたしておりますが、これはほぼ需要に見合うというふうに考えております。その他の一般炭につきましては大体私
ども大した心配はいたしておりません。
それから
輸出入、
輸入につきましては、主として問題は強粘結炭でありまして、先ほど
鉄鋼局長からいろいろ御
説明がありましだので省略いたしますが、
輸出は、これも海外の
情勢の
推移如何によ
つて毎月非常に数字が違
つておりますので、従
つて確たる
見通しが非常に困難でありますが、本年度十二月末の数字を集計いたしまして、大体二十万トン
程度のものしか出ておりません。昨年は六十万トン余り出ておりますが、後三カ月たちましても、昨年の実績には到底達し得ないと考えております。
なおこの
石炭の
生産につきまして、そういう一応の数字的な
見通しは出るのでありますが、実際上の問題といたしましては
金融の問題とそれから資材と、これらの点が十分に満たされませんというと、所期の出炭の成果というものは期待できないと、こういうことになるわけであります。そういたしますというと、
金融問題は
如何なる点にあるかと申しますと、昨年以来、
運転資金につきましてはその都度冬場或いは夏場資金といつたような種々資金の斡旋をいたして今日まで繋いでおりますが、長期の
設備資金につきましては、現在までのところ、見返資金を除きまして殆んどついておらないという現状であります。従
つてこの長期の企業的な投資というものは、その面で立遅れておる、これを今後長期の
設備資金を潤沢に炭鉱
方面につけない限りは、将来に対しましてこの出炭を多くするということは極めて困難であるというような懸念があるわけであります。又最近坑木がパルプ用材等の競合の
関係におきまして、相当入手難を来たしております。これは目先の問題だけでなくて、
我が国の森林
資源全般から申しまして、この
供給力そのものが極めて少いという点から、今後この坑木問題或いは
全般の木材問題自体として、適当な
解決策をとらなければ、抜本的な
解決はできないわけであります。当面炭鉱といたしましては、この坑木を順調に入手するように我々としても種々
努力をしておるわけであります。それから先ほど
金融問題に触れましたが、特に
設備資金を中心といたしまして、
石炭鉱業の
合理化のための資金というものを、先般来
通産省の
合理化審議会で種々検討をいたしております。その目的は、現在の
我が国の
石炭鉱業の
基礎を一層強固にし、非常に高炭価を謳われております現状を打開いたしまして、できるだけ低廉な
石炭を
供給するようにしたい。こういう趣旨から
石炭鉱業のこの際急速な
合理化を図る。そのためにどういうふうな手段があるかというわけで
研究いたしたのでありますが、結局これは現在、戦争中に相当荒されております炭鉱の内部の整備をいたしまして、更に新らしい
設備乃至方式によりまして、機械的な、合理的な採掘を図るということ以外にはない。それには相当な長期の
設備資金を要するわけであります。でこの
設備資金が全体といたしまして、三カ年間に四百七十五億という数字が出ておりますが、これを優先的に見返資金等から獲得したいということで、我々は大いに期待しておつたわけでありますが、今日までのところ、それだけの数字が簡単に出せるというところまで来ておりません。それで我々といたしましては、この
合理化計画を
基礎といたしまして、今日の
金融事情の下におきまして許される限り、できるだけの
方法を講じまして、
石炭鉱業に
長期資金、特に
合理化資金が少しでも多く行きますように
努力したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
なおこの
全般的な
長期資金の問題の中でも、特に中小炭鉱に関しましてそういう事情が特に加わ
つておる。大手筋は従来の銀行取引
関係からいたしましても、比較的まだ資金がつけやすい利点がございますが、中小炭鉱に対しましては、この炭鉱
事業そのものが極めて長期的な
設備資金を要するという不利な事情のために、なかなか
設備資金の獲得が困難であります。で特別にこの中小炭鉱の
設備資金の獲得問題につきましては、今日におきましても各
方面と折衝いたしまして、できるだけのことをしたいというふうに
努力中でございます。
次に、炭鉱の機械化の問題につきまして申上げますが、この機械化は、
昭和二十三年の九月から
石炭庁に臨時炭鉱機械化
推進本部という機関を設けまして、これによ
つて種々
努力して来ておりましたが、
昭和二十四年度にアメリカのジヨイローダー、或いはシヨートウオール・コール・カツターというようなモーゼル機械が入りまして、それに刺戟されまして非常に炭鉱の機械化というものが進歩をいたしております。差当りといたしましては先ず切羽に重点を置きまして、坑木の節約と能率化のために鉄柱を採用することを慫慂いたしております。又それと共に積込み作業を機械化するために、切羽の積込機の使用を勧奨しておりましたが、更に現在におきまして、坑内でも試験的に採用して成功を見ましたドイツ式のカツペ採炭
方法を採用することにいたしまして、来年度二千八百万円、カツペの採炭方式に対する
助成金を計上しております。それから切羽の能率がこのようにいろいろな
方法で
向上いたしますにつきまして、切羽と坑道の集約が行われるわけでありますが、そのために掘進速度が非常に上
つて参ります。この結果、終戰直後の労務者の能率というものが五トン台でありましたものが、逐年増加いたしまして昨年末には遂に十トンを突破するというところまで来たわけであります。来年度も更にこれの一層の能率
向上というものが我々としては期待されるのであります。又
石炭の品位も、この採炭の強化によりまして逐次
向上いたしまして、現在では六千二百カロリー平均ということに
なつております。各炭鉱とも来年度におきましては、一層大きな機械化を計画しておりますが、現に外国機械の
輸入の希望も今日におきまして二百六十万ドルまで申請があります。これのための外貨資金の獲得に現在
努力しているわけであります。次に、本年度の新らしい
施策といたしまして、二十五年度から全国の埋蔵炭量及び炭質の調査をしております。この炭量、炭質の調査につきましては、過去におきまして、大正二年と
昭和七年に極めて大雑把な調査をいたして来ましただけで、その後科学的な調査を行
なつておらないのであります。而もこの両回の記録は、炭質につきましては全然触れておりませんで、単に数量だけの見積りに過ぎないのであります。今回は、先般来司令部の
協力によりまして炭田探査
審議会というものを設置いたしまして、その
審議会の答申によりまして、炭量計算基準という基準を作
つております。この基準に基きまして、炭量並びに炭質の推定をいたすということになるわけでございますが、先ず
事業の計画といたしましては、本二十五年度におきましては資料調査をいたしまして、二十六年度から逐次所要の実地踏査をする、こういうふうになるのであります。二十六年度、このために資料調査、炭層調査、地質調査、試錐調査、地震探鉱、こういつたような諸種の
事業を通じまして全体で七千四百万余りの
予算を計上しております。最後に、鉱害の
対策について一言申上げますが、戦時中の特別採炭、強行採炭に基きますいわゆる特別鉱害に関しましては、前
国会におきまして特別鉱害復旧臨時
措置法の一部を改正いたしまして、この実施機関といたしまして、昨年末鉱害復旧
特別会計という
特別会計が作られております。これが年末から発足いたしまして第一回の納付金の徴収を行
なつておりますが、大体一月末ぐらいの期限までにつきまして、
予定額の九〇%近くのものを収納いたしております。又工事の実施も、一般公共
事業につきましてはこれはもうすでに継続しておりますが、家屋、墓地といつたような私有地のほうにつきましても工事をしようといたしておりまして、近くこういう
方面につきましても、実際に工事が進められるというような段階に至
つております。なお来年度は大体十億
程度の工事を実施する
予定でございます。又この特別鉱害のほかに、それ以外の一般鉱害といたしまして、まだ現在各地に相当な額に上ります鉱害が残存しておるわけでありますが、これが
対策につきましては、先般
国会の御要請もありまして
石炭鉱害地復旧
対策審議会という
審議会を
通産省で以て作りまして、すでに一、二回会合いたしておりますが、一般鉱害を
如何にして中止乃至は
解決を図るかということを検討いたすために、先ず実際のこの鉱害の実情というものを調査するということになりまして、現在その調査を進めておるわけであります。その調査のでき次第又この
審議会におきまして適切なる
対策を立てるというふうな準備をいたしておるわけであります。簡単でございますが
全般の御
説明を申上げました。