○河井彌八君
只今議題に供せられました両
法律案の内閣
委員会における審査の
経過並びに結果を御
報告申上げます。
この両案は、去る二十一日
審議会等の
整理のための十二案の
委員長報告をいたした際に申述べました
審議会等の
整理の原則に従いまして提出せられ、その原則に従いまして、内閣
委員会において可決すべきものと
議決いたしたものであります。従いましてその原則的の説明はここにはいたすことを省略いたします。
先ず
審議会等の
整理のための
文部省設置法等の一部を
改正する
法律案について
報告をいたします。
只今申した通りの
審議会等の
政府の
整理方針に基きまして、これまで文部省に置かれております教科書出版資格審査会を
廃止せんとするのでありまして、この施行期日は六月一日からとな
つておるのであります。この
法律案の内容は、教科書出版資格審査会の
廃止をいたしまして、それに伴
つて文部省
設置法と文部省著作教科書の出版権等に関する
法律の各一部を
改正いたして、そうして、この二つの
法律の
規定中、教科書出版資格審査会に関する部分を削
つて、これに伴う
條文を
整理しようとするのであります。教科書出版資格審査会は、
昭和二十四年に文部省
設置法及び文部省著作教科書の出版権等に関する
法律によ
つて文部省に置かれたものであります。それは、文部大臣の諮問に応じて、文部省が著作の名義を有する教科書、即ちいわゆる国定教科書の出版権を取得しようとする者に対して、その資格を審査するために設けられたものであります。この審査会は審査員二十人以内で組織されることにな
つておりまして、その審査員は製紙、出版、印刷、発行供給
関係者等を主体とする学識経験者及び
関係各省各庁職員の中から任命せられておるものであります。従来この審査会は、出版権を取得しようとする者二十数社について審査をいたし、教科書行政の民主化のために多大の貢献をいたして参つたのであります。然るところ文部省著作教科書即ちいわゆる国定教科書は、検定教科書を主とする新教科書制度の確立によりまして逐次減少して参つたのであります。そこで、この審査会の任務が大半は一応終了いたしましたものと認められることになつたのでありまするから、この審査会を
廃止しようとすることにいたしたのであります。
内閣
委員会は、二回
委員会を開きまして、この
法律案の審査に当つたのであります。そして
政府委員との間に
質疑応答を重ねましたのでありますが、その結果明らかになつたことを申述べます。従来、教科書は、文部省が著作の名義を持
つておる教科書、即ち国定教科書が指導的の地位を占めておつたのであるが、文部当局におきましては、この国定教科書を中心とする
方針は、教育を民主的に進めて行くという建前の上から、漸次検定教科書中心の方向に切換えて行くべきであるという見解を持ちまして、それで今日では教科書は大体検定のものが大部分であります。国定のものは僅かに数種に過ぎないという状態にな
つておるということが明らかになつたのであります。なお、本案に関連いたしまして重要な二三の点が明らかになつたのであります。即ちその一つは、教科書が新学年に入
つても所によ
つては十分に出廻
つて来ない、新学年に入
つて二カ月経
つてもまだ入手することができないような学童もあるという事実があつたが、その原因は、教科書は今日国定のものから検定のものに中心が移
つて、それがために当該年度の検定教科書の需要量が発行所に十分に
連絡が取れずに、正確にはわからないためである。その点は文部省におきましても地方教育
委員会においても責任があると思うけれども、今後は文部省としても十分に注意して、教科書の出廻りが円滑に行くように
努力するということであります。第二点といたしましては、出版用紙割当制度がこのたび停止せられてしまつたのでありますが、教科書用紙が不足することはないか、従
つて又その教科書の価格が騰貴して、延いては学童の父兄の負担を加重する懸念がないかという点についてであります。文部当局といたしましては、通商産業省或いは
関係官庁或いは
業者と
十分連絡をと
つて、それらの用紙の確保についてすでに了解ができており、又割当制の停止によ
つて教科書は約二割くらい値上げすることになるのであろう、そうしてこれも通商産業省、物価庁等とこの値上りについて
対策を
交渉中であるから、適当な
解決が付くであろうという御
意見であります。第三の点といたしましては、学童に対し教科書の無償
給與、無償に支給する問題に関連いたしまして、現在第一年生の学童に対して漸く無償支給を行な
つておる状況であ
つて、文部当局といたしましては、これは誠に不十分で遺憾であるというので、将来、即ち二十七年度以降においては
義務教育の全学年を通じて、教科書は勿論、学用品についても無償支給するように
努力するという点であるのであります。
かような事柄につきまして、委員
諸君は熱心な
審議をいたしまして、その結果、内閣
委員会といたしましては、今日の
現状に鑑みまして、もはや教科書出版資格審査会を存置する必要がないと認むることになつたのであります。かようにいたして、
討論を省略し、本案の
採決に入りましたところ、
全会一致を以て可決すべきものと
議決した次第であります。
次に
審議会等の
整理のための
労働省設置法の一部を
改正する
法律案について
報告をいたします。
この
法律案は、やはり先に申しました
審議会等の
政府の
整理方針に基いて
政府から提出したものでありまして、労働省に置かれてありますところの労働教育
審議会を
廃止せんとするものであります。従
つてその
審議会の委員定員二十八名、任期一年というものが削除せられるのであります。この
改正は公布の日から施行するということにな
つておるのであります。
政府がこれを
廃止せんとする理由は、あえて労働教育そのものの意義を軽視するというのではなくて、ただ戰後五年の経験を積んだ労働運動及び労使
関係の現段階におきましては、必ずしもこの
審議会の形に因われる必要はない。何か必要がある場合には、その場合に応じて随時労働
関係者の
意見を聞くという彈力性ある方式によつたほうが、却
つてよく目的を達するであろうということを
政府が認めまして、この際この
審議会の
一般整理方針に基いてこれを
廃止することにしたのであるという趣意であります。
内閣
委員会は三回に亘
つて委員会を開きまして、
政府との間に熱心な
質疑応答を交わしたのであります。その主な点を申上げて置きます。第一には、労働教育のためにどれほどの
予算が計上されておるか、又労働教育
審議会の過去の業績はどういう状況であるかという
質問でありました。この点に対しましては、
政府が労働教育のために
予算に計上しておる額は年間四千四百万円であ
つて、これらの
予算は主として労働教育に関する資料を作成し、これを労働
関係者に配付するために使用せられたのであります。なお、そのほか労働教育のための各種の催し物等にも使用したのであります。が併し
補助金的にはこれを使用いたしたことはないということであります。次に労働教育
審議会の一年間の
予算はどうかと言えば、これは十五万六千余円ということであります。又過去の業績といたしましては、労働者側の部会を開くこと三十七回、使用者側の部会を開くこと十五回、そうしてこの
審議会に付議せられた件数は、労働者
関係の案件が百二十九件、使用者側の案件が四十七件であつたという説明であります。第二点といたしましては、この
審議会は
政府の説明のごとくに従来多大の業績を残して来たものである。これを不必要とする理由はどこにあるかという
質問に対しまして、この
審議会は当初総司令部の示唆に基いて設けられたものであ
つて、当時
我が国には労働組合が混沌たる状態にあ
つて、まとまりが付かなかつたときであつたから、
政府の手において労働教育を行う必要を感ぜられて来たから、こういうものが設けられたのだ。然るに今日においては
日本労働組合総評議会が労働者団体の中心となり、又
日本経営者団体連盟が経営者側の主体とな
つてそれぞれ各種労働問題の研究処理に当
つておるのであるから、労資
関係の教育は、今日では、これら民間団体の手で自主的、民主的に
運営されて行くほうが適当であると思われる。この年度の当初においては一年間の
予算を計上したのであ
つて、なお、一年間引続いてこの
審議会の活動を維持して行くつもりであつたけれども、今般
政府の
方針として
審議会等を
整理するということになつたのであるし、そうして且つ又、労資双方の民間人の
意見を聞く機関は、労働省においてほかにも一二あるのであるから、
審議会を
廃止してもあえて差支ないと認めた次第であるという
政府の説明でありました。第三点といたしましては、今日大企業においては労働教育も相当徹底しておる。労資双方は対等の地位で
交渉する段階に達しておるのであるけれども、労働條件の劣
つております中小企業においては労働組合もまだ組織ができていないままに放置せられておる状態であるから、特に労働組合の精神に即した教育を徹底せしめる必要がこの方面において痛感せられるのである。殊に労働者
保護の基本法であるところの労働基準法については、中小企業
関係の労資双方において理解が欠けており、この基準法をば産業全般に徹底して励行することが
日本の産業の健全なる発達を促すゆえんであると思われる。この
審議会がこういう使命を果すためには最も有力な機関と認められなければならぬのに、これを
廃止することによ
つて、これらの点に大いなる潰憾なことが起るのではないかという
質問があつたのであります。これに対しまして、中小企業においては、労資双方を教育することによ
つてその振興をもたらすという見地から、労働教育の必要を痛感し、
政府も又その点に
努力を拂い、或いは労働学校とか、或いは短期講習とか等におきまして、労働基準法等の普及徹底を図ると同時に、末端の基準監督官、労政
事務所と
連絡をと
つて、指導に当
つておるのである。併し先に説明したように、
現状においては、あえてこの
審議会によらずとも、
政府は十分所期の目的を達することができるという自信を持
つておるということを述べました。なお中小企業においては、地方の日経連、即ち
日本経営者団体連盟傘下の団体と、地方総評、即ち
日本労働組合総評議会の手で、自主的にこの労働教育の普及徹底を行わせたい考えである。中小企業において労働教育の必要な点は
政府も全く同感であるから、労働当局としては、本
委員会においてこの点に重点が置かれておる趣きを速かに地方へ伝達するように取計らう考えであるという説明であつたのであります。なお、第四点といたしましては、この
審議会は労働者の
文化的教育をも行うものであ
つて、これは労働
文化向上のために相当有意義な仕事であると思うが、この
審議会が
廃止せられた場合に、これらの
文化的教育は如何なる
方法によ
つて行な
つて行く
方針であるかという
質問が出たのであります。これに対しまして、労働
文化の向上を図ることの必要については
政府も全く同感であ
つて、この問題は今後、使用者、労働者、学識経験者等の手によ
つて運営して行きたい考えを持
つておる。例えば労働者の体育大会のごときは、今年は総評と労働省との双方の話合いで行い、将来は総評が主体とな
つて行うように取計ら
つて行く考えであ
つて、このような労働者の
文化教育の問題は、官庁よりも、むしろ民間人の手によ
つて自主的に
運営せられて行くほうが適当であると思う。従
つて、この
審議会が
廃止せられても、この労働者の
文化教育の点は毫も懸念すべきものはないという
政府の説明でありました。大体主要な
質疑応答はかような点であります。
討論に入りましたところが、上條委員から、大企業においては労働組合も組織せられてお
つて、労働教育む
政府の支援がなくても自主的に行な
つて行ける。併しまとまつた労働組合の組織もなく、労働問題に関する理解も乏しい今日のこの中小企業においては、その労資双方に対して十分な労働教育をなす必要が痛感せられる。従
つて現に労働省におかれておるこの
審議会を今後も活用して、そうして労働教育のために計上せられてあるところの
予算、即ち四千四百万円の額を最も有効に運用せられることが必要である。要するに現在の
我が国の労働状態では、この
審議会を今後も存置しておく必要があると信ずるが故に、この
法律案に対しては反対であるということを
発言せられたのであります。これに引続きまして郡委員から、
政府はこの
審議会がなくても労働教育については今後も最善の
努力を盡す旨の決意を明らかにしておる以上は、この
審議会整理に関するこの現
政府の
方針に基いて、この際、この
審議会を
廃止しても差支えないと信ずると言
つて、本案に
賛成する旨の
発言があ
つてのであります。
かくて
討論を終りまして
採決いたしましたところ、これは多数を以て本案を可決すべきものと
議決いたした次第であります。これを以て
報告を終ります。(
拍手)