○深川榮左エ門君
只今議題となりました
高圧ガス取締法案に対する当
委員会の
審査の
経過並びに結果について御
報告申上げます。
従来より危險物としての高圧ガスの取締は、大正十一年に
制定せられました圧縮ガス及び液化ガス取締法によ
つて運営せられて参つたのでありまするが、同法によりますと、取締
機関は内務省であり、而も同法は旧憲法下の立法であるため、形式的にも、実質的にも現情勢にそぐわぬので、これを全面的に
改正して、高圧ガスの製造、販売、貯蔵、移動、その他の
取扱及び消費或いは容器の製造及び
取扱を規制し、高圧ガスによる災害を防止し、公共の安全を
確保することを
目的として本
法案は
提出されたものであります。
次に本
法案の要旨について申上げます。その第一点は、新憲法の施行に伴う法体系の
整備についてでございます。
現行法である圧縮ガス及び液化ガスは、先にも述べたごとく、旧憲法下の立法でございますので、全面的委任立法に近いものであり、且つ不当な行政処分に対する救済も認めていない等、法制的に不備があるのであります。本
法案は新憲法に即応した法体系を
整備し、取締対象、
権利制限、義務設定、行政救済等を
法律自身に
規定しているのであります。第二点は、技術上の
基準について再検討を加えているのであります。
現行法制定以来の高圧ガス工業或いは容器製造工業の進歩より見て、製造施設、製造
方法の規制或いは容器の検査
制度、製造作業の監督者である作業主任者の資格、その他高圧ガスの貯蔵、消費、廃棄、輸入高圧ガスの規制等について所要の
規定を設けているのであります。第三点は、取締担当
機関の明確化の問題であります。これについては内務省の解体、
地方自治体制の確立、警察
制度の
改正後における取締
機関としての通商産業省、
都道府県及び警察のそれぞれの権限、所掌事務の
範囲を明確化して、運用上の疑義をなからしめているのであります。
本
法案につきまして、当
委員会におきましては、その
審議に万全を期するため、
関係業界の
団体及び企業或いは学識経験者を参考人として出席を求め、本
法案に対する
意見を聽取したのであります。その結果、業界或いは学識経験者の意とするところが明確になり、本
法案審議に遺憾なきを期し得たのであります。
次に
本案に対する
質疑応答でございますが、その詳細は
速記録に譲るといたしまして、論点の主なるものは、第一には
審議会に関する点、第二には技術
基準に関するもの、第三は取締
機関及びその区分についてでございます。その他本
法案と鉱山保安法或いは労働
基準法との
関係等にも
質疑があつたのでございます。特に保安
審議会については白熱的な
質疑応答が
政府との間に行われたのであります。その一、二の点について申上げますと、先ず本
法案第七十條の保安
審議会の構成メンバーにある学識経験者の任期が六カ月であり、一回に限り再任を妨げないと
規定してあるが、再任したとしても一カ年しか構成メンバーとしての職責を果すことができない。これでは
政府の
意図する
審議会に民間の声を反映するという立案の趣旨に反しないかとの質問でございます。これに対し、
政府は差当り一年程度の任期ならば、
政府の
意図する
審議会運営に支障がないとの
答弁がございました。その他当該
審議会に関し
経済的
審議会なりと断定した理由について
質疑がありましたところ、
政府は
審議会等に関する閣
議決定その他の
内容を引用する等、極めて懇切に
説明されたのでありまするが、当
委員会全般といたしましては、参考人各位から、本
法案の死命を制するものは保安
審議会の活用如何にあるとの
意見に全く同感であるために、本條の
規定ではこれを全面的に了承できんという空気が濃厚であつたのであります。
かくて
質疑を終了し、
討論に入りましたところ、栗山
委員より、
政府原案第七十條の、「一回に限り」を削るとの
修正動議が
提出せられたのであります。その理由といたしますところは次の通りでございます。即ち本
修正案により、
審議会委員中高圧ガスの保安に対し学識経験のある者の二回以上の再任を認め、一年以上継続的に保安に関する
重要事項を
審議させることに
法律で
規定することは、民間人も含めた学識経験者の
発言力を強化し、
審議をして
効果あらしめると同時に、責任ある態度で
審議に加わることができる
関係上、結論的には、
政府も業界も
意図する
審議会の本来の
目的を達成することができるというのであります。
以上を以て
討論を終り、先ず栗山
委員提出の
修正案を
採決いたしましたるところ、
全会一致を以て可決、次いで
修正点を除く
政府原案全部を可決いたしましたるところ、これも同じく
全会一致を以て可決いたしたのであります。よ
つて本
法案は
全会一致を以て
修正議決すべきものと決定いたした次第でございます。
この際特に申上げて置きたいと存じますることは、
委員会における
修正は、形の上に現われたところは頗る
簡單なものであります。併し
内容的には、
政府が立案過程において直面したいわゆる客観情勢なるものを、国会独自の立場からこれを是正したものであり、情勢の推移と相ま
つて、ここに意義と重要性が存するのであります。その点を特に申添えて
報告を終ります。(
拍手)