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1951-05-10 第10回国会 参議院 本会議 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十日(木曜日)    午前十時二十三分開議     ━━━━━━━━━━━━━  議事日程 第三十八号   昭和二十六年五月十日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  第二 相互銀行法案衆議院提出)(委員長報告)     ━━━━━━━━━━━━━
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  この際お諮りして決定いたしたいことがございます。本日金子洋文君から、理由を附して食糧管理法の一部を改正する法律案両院協議会協議委員を辞任いたしたい旨の申出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。      ——————————
  4. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) つきましては、日程に追加して両院協議会協議委員補欠選挙を行いたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。
  6. 中村正雄

    中村正雄君 只今両院協議会協議委員補欠選挙は、成規の手続を省略いたしまして、議長において指名せられんことの動議を提出いたします。
  7. 木村守江

    木村守江君 私は只今中村君の動議に賛成いたします。
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 中村君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないと認めます。よつて議長食糧管理法の一部を改正する法律案両院協議会協議委員江田三郎君を指名いたします。      ——————————
  10. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第一、国務大臣演説に関する件(第二日)。昨日の内閣総理大臣発言に対し、これより順次質疑を許します。加藤シヅエ君。    〔加藤シヅエ登壇拍手
  11. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 私は日本社会党を代表いたしまして、昨日本議場で行われました総理大臣外交問題に関する発言に対しまして、若干の質問を試みたいと存じます。  先ず第一にお伺い申上げたいことは、吉田総理大臣外交問題に対する態度であります。昨日の吉田総理の本議場における発言は、日本国の将来の違命をかけての講和の問題でございます。吉田首相ダレス特使との第二次東京会談において、米国の対日講和の仮草案内容に基いて会談がなされたと聞いておるにもかかわらず、総理の御発言は余りにもあつけなく、国民をして多大の失望を感じさせられました。これは吉田首相が、かねてより旧式な秘密外交を以て外交官の使命と考えておられるためでありましようか、それとも総理演説嫌いの習癖のなさしむるところでございましようか。(「両方だ」と呼ぶ者あり)いずれにしても、日本が結ぶべき講和内容如何は單に日本民族百年の幸不幸を決定するのみならず、アジア全体の平和の礎となるべきものであるからには、この内容は最大限に具体的に国民に知らしむべきではございませんでしようか。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)殊に今回のダレス特使の来朝は、迅速、公正、集団保障、この三原則に基く米国の対日講和が、米国において完全な超党派的支持を得ているものであつて最高司令官の更迭によつても何らの変化をもたらさない、個人を超越する政策であればこそ、信頼に値いするものであることを特に強調するために来られたと申します。又米国としては、この講和敵国同士の和解を促進する公正なる講和でなければならない。敗戰国の無力な立場に乗じて他の完全主権国家には適用されないような制限を敗戦国に課そうとする気持はあり勝ちなものであるが、米国はこれに反対する立場をとつておると言われ、講和及び安全保障に関する諸條件日本国民納得と心からなる支持の上に成立することを望んでおることは、ダレス特使のたびたびの言葉によつて明らかにされております。戰勝国側において、これだけの公正且つ寛容な態度を示しております際、何の遠慮があつて吉田総理大臣国会を通じて国民に知らしめる努力甚だ不十分のそしりを受けられる必要がありましようか。老兵は死なず、消えて去ると言いながら、而も堂々十七万語に亘る証言をあえてしたマツカーサー元帥の元気と憂国の情に見習つて、現役の総理大臣たる者民主主義国外交は先ず国民をして知らしむべし、そして納得の上に国民的支持を受けるべしと申したいのでございます。(拍手総理大臣は今後もう少し熱を持つて、そしてその御発言具体性を帯びるよう努力されることを国民は希望しておりますが、御所見のほどを承わりたいと存じます。(拍手)  次に質問の第二点は、ダレス氏との会談において、総理大臣は対日講和が單独又は多数講和可能性多いとの意見に御承諾を與えられましたのでしようか。又特使に対しまして、ソ連中国等を含む全面講和理想実現への努力を今後とも続けるよう懇請されましたでしようか、どうでしようか、この点をお尋ねいたします。(「そうだ」と呼ぶ者あり)自由党社会党の提唱する全面講和を、故意に共産党の唱える社会党のそれとは全く内容を異にする全面講和と混同させたり、(「全く同じじやないか」と呼ぶ者あり)又は空念仏などと言つて冷笑しているのでありますが、(「どこが違うんだ」と呼ぶ者あり)国際情勢現実現実としてこれを認めるのは当然でありますが、国家は常に大義名分に立脚した基本的態度を滅却してよいはずはございません。講和締結の目的が平和と自由と独立の確保にある以上は、講和締結は迅速であつて拙速主義はとらないところでございます。(拍手)この意味において社会党の唱える全面講和は(「共産党と同じじやないか」「黙れ」「うるさいな」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)第一次世界戰争の犠牲の上に、人類の知性が考え出した最善にして唯一の平和機構考えられる国際連合への参加と、その統一強化に協力したい念願より発したものでございます。(「落選するぞ」「そんなことを言うな」と呼ぶ者あり)不幸にも今日国際連合世界平和機構として未だ完成せず、大国の権力政治によつて大きくゆさぶられておりますが、敗戰国日本が更生して国際場裡にその一歩を発足するに当りましては、その動向が未完成の国際連合統一強化に役立つことこそ好ましいのであつて、これが分裂、弱体化に拍車をかけるようなことがあつては断じてならないのでございます。(拍手、「その通り」と呼ぶ者あり)かかる根拠に基いて、日本としては最後まで全面講和の提唱を捨ててはならないと思います。総理の御所見を承わりたいと存じます。(「答弁無用」と呼ぶ者あり)  質問の第三点、第二次東京会談におきまして、首相は單独文は多数講和承諾を與えられたとすれば、残余の講和締結国との関係はどういうことになるのでございましようか。(「それは共産党社会党に任せるよ」と呼ぶ者あり)依然として無條件降伏関係に置かれるのでございましようか。又は交戰関係に残されるのでございましようか。この場合これらの国々との関係についての見通しについて御説明を承わりたいのでございます。(「議長注意しろ」と呼ぶ者あり)この場合講和條約未締結国との間にさまざまな困難な紛争が発生するのではないかとの心配が多分にございます。(「その通り」と呼ぶ者あり)例えばこれらの国によつて日本の商船や漁船が一方的理由の下に拿捕されるような予測される危険について、ダレス氏は何らかの保障を與えられましたのでしようか。この点につきまして首相お答えを頂きたいのでございます。(「そんなものは古いことだ」と呼ぶ者あり)  質問の第四点は、対日講和ソ連との関係でございます。ダレス特使総理との会談の際は、ソ連政府においてダレス氏の対日講和への呼びかけに対しまして、全く背を向けるような態度であつたと聞いておりました。この点私もダレス氏の滞京中、鈴木社会党委員長らと共に親しく特使会談をいたしました際、ダレス氏はソ連のこのような態度に対し遺憾の意を表明され、今後ともソ連に対しての呼びかけを続けるであろうとのお話でございましたが、最近のソ連政府米国に対する覚書提示に対しまして、米国政府がこれには考慮をしないで、既定の方針通りに進むであろうというお見通しでございましようか、或いはそうでないか。この辺に対する総理の御所見を承わりたいと存じます。(「ソ連に頼まれたのか」「黙れ」と呼ぶ者あり)  質問の第五点は、仮にダレス氏の提唱する形式において單独講和が成立したといたしまして、日本経済自立アメリカとの協力だけで可能と考えられますか。マツカーサー元帥経済的自立なきところに政治的自由なしとたびたび強調されましたが、原料の七割と食糧の二割を輸入せねば日本経済の循環は円滑に運ばぬことを考えますときに、日本への重要な原料供給国であり、又市場でもあるところの中国との経済的断交状態が今後続きますときに、今後そのような状態日本経済自立がやつて行けると首相は思われますでしようか。又インドビルマ等の東南アジアの諸国で、現在北京政府を承認している国との関係はどういうふうになると首相は思われますでしようか。この点については特に去る二月本議院におきまして、我が党の和田博雄氏よりもこまごまとお尋ねいたして置いたのでございます。そのときに総理大臣は、日本経済的に崩壊するような場合があるとするならば、今日まで日本に対して援助政策をとつて来た米国政府としては見捨てるようなことはできない事情にあるから、あらゆる方法を以て援助してくれるであろうとの御答弁でございましたが、このような特定国への経済的な依存主義は誠に心細いのでございます。(拍手個人生活においても人の厄介になつておる者は頭が上りません。独立国たるもの、経済的自立見通しは万全を期して置かなくてはならないと存じます。特にこの点はもつと具体的な御答弁が承わりたいのでございます。  質問の第六点は、講和自主権回復の問題でございます。終戰後占領が永びくにつれまして、国民は何をおいても自主権回復を熱望しております。リツジウエイ司令官憲法施行記念日に当りまして、日本が完全な自主権回復する日に備えるために、占領管理を漸進的に緩和するという方針を明らかにされましたが、講和後には必ず完全に自主権回復されるものと期待しておりますが、その自主権内容は、経済的自主権通商の自由及び外交権をも含まれておると思つて差支えないのでございましようか。例えば米英陣営との講和締結によつて外交の自由を確保したと見て、まだ講和を結んでいない中共との通商の自由を日本みずからの手によつて開拓するというようなことは許されるのでございましよか。この点御説明をお願いいたします。  質問の第七点は、講和後の駐兵問題に対して、どのような條件を話合われたのでございましようか。これは実に国民にとりまして大きな関心事でございます。例えば駐兵の員数、場所、国内通行権の範囲及び駐兵期間等を知りたいと思います。又アメリカ軍隊日本軍事基地を使用するような場合は、どんな條件で提供されるのでございますか。これらの点につきまして、ダレス特使米国に帰られた後の発言に、日本国民の圧倒的多数は、米国軍隊日本及びその周辺を守ることを歓迎していると述べられているのでございますが、(「その通り」と呼ぶ者あり)ダレス特使日本の圧倒的多数という言葉を用いられたのは、吉田総理大臣日本の大政党の総裁であるところから、ダレス氏がこのような印象を受けられたものと見られますから、(「ひがみだよ」と呼ぶ者あり)このアメリカ軍隊日本駐兵の問題については、特にアメリカ式のフランクな御答弁をお願いいたしたいと思います。  質問の第八点は、最後でございますが、仮にソ連中共を除いた国々とだけの講和成立の場合、ソ連及び中共地区に今なお残留しておるところの三十余万の同胞帰還の問題はどうなるのでございましようか。(「それはソ連に聞け」と呼ぶ者あり)この点ダレス氏に対して特に何らかの保障を求めて下さいましたでございましようか。(「お門違いじやないか」と呼ぶ者あり)未帰還同胞の問題については、日本政府米国当局も従来あらゆる努力拂つて、一日も早く送還せしめるよう手段を講ぜられました。然るにソ連政府説明が何であるにせよ、終戰後五年余の今日、なおポツダム宣言の約束を無視して、遠い異国に抑留され、(「何を言うか」「うるさい」と呼ぶ者あり)或いは消息不明の数多き同胞の問題があることは、日本国民の名誉の問題であるばかりでなく、(「共産党に聞け」と呼ぶ者あり)国際的な人道問題であり、(「何を言つておるのだ、寝言を言うな」と呼ぶ者あり)人権無視の問題であります。(「野次で済む問題じやないぞ」と呼ぶ者あり)ダレス特使の対日講和條草案が各新聞に掲げられましたとき、(「寝言を言うな」と呼ぶ者あり)未帰還者に関する何らの條項が含まれていないのを知つたとき、留守家族の心は闇の中に突き離された思いであつたと想像されます。(「きまつているじやないか」と呼ぶ者あり)国会の受付に或る日(「ソヴイエトに開け」「共産党に聞け」と呼ぶ者あり)見知らぬ老婆が私を尋ねて来ました。私の顔を見るなり、(「先生全面講和にお願いします」との挨拶、(「方向が違う」「泣き言を言うな」「うるさいな」と呼ぶ者あり)私は驚いて、この草深い田舎の老婆が何で(「何を言つているんだ」と呼ぶ者あり)全面講和支持者なつたか不思議に思つて尋ねましたところ、老婆は二人の息子を戰死させ、末の息子ソ連に(「それが社会党代表質問か」「黙つて聞け」と呼ぶ者あり)今なお抑留されて、便りはあれど顔は見られぬ、息子の残されている国と日本紛争をかまえられたら、我が子の身の上はどうなりましようかと歎くのでした。講和締結の日は日本民族の喜びの日でなければなりません。未帰還者留守家族をこれ以上の悲しみと失望に泣かせないために、首相は(「平和三原則を唱える社会党質問か」「議長、何とか……」と呼ぶ者あり)必ずダレス氏に対して何らかの保障を求められたいと考えますが、この点につきましては、特に留守家族納得の行くような御答弁をお願いいたします。(拍手)  以上の諸点を以ちまして質問を終りますが、講和締結の問題は、決して多数党といえども、一つの政党功名心満足感の上に成立させてよいものではございません。(拍手)飽くまでも謙虚に、全国民納得せしめるに[足る基礎の上に成立せしめなければならないことは申すまでもありません。(「社会党同胞愛があるのか」と呼ぶ者あり)国民早期講和を要望するのは、講和條約が締結されたならば、(「ごまかすな」と呼ぶ者あり)敗戰屈辱感から脱し、真実の平和、独立、自由が回復し得られるものと思えばこそであります。決して外国の不沈母艦の役割を引受けるための講和を望んでいるのではございません。(拍手、「大したものだ、平和三原則はどうした」と呼ぶ者あり)功をあせるの余り、国家百年の大計、アジアの恒久平和の礎を誤まるようなことがあつてはならないのでございます。(「それは社会党じやないか」「自由党はどうだ」「少しは反省しろ」と呼ぶ者あり)私はアメリカ人が自国の世界政策に関する政略、戰略について、堂々と国内的には勿論、世界的に白日の下に論争を展開しているあの事実を見て、これこそ国家運命に関する重大事を国民的規模において論議するものとして感歎を惜しまないものでございます。(拍手)今や日本民族運命を決する重大な講和論議をするに当りましては、吉田総理大臣は従来の秘密外交の殻を破つて(「社会党の平和三原則はどうだ」と呼ぶ者あり)米国における論議規模倣つて、堂々と国民の前に所信を披瀝して(「社会党はどうだ」と呼ぶ者あり)国民と共に論じ、講和の成果は国民と共に喜ぶの態度に出でられんことを切望してやまないものでございます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  12. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  私の昨日の演説に対して、簡單に過ぎるとか、秘密とかいうお話でありますが、私は冒頭に申しました通りダレス氏がロスアンゼルス或いは日本に来られたときの声明、又工業クラブ等においてなされた演説等を参酌いたして、私の昨日の演説を以て十分と私は考えるのであります。(拍手)これを以てよく要領を得ないとか、何とかいうことは御自由でありますが、私は昨日の説明を以て十分なりと考えるのであります。(「その通り」「独善」と呼ぶ者あり)徒らに長いことがいいのではないのであつて、あえて秘密ではない。言うべきことは私は盡したつもりでおります。  又多数講和全面講和お話がありましたが、多数講和を要望したというようなことは断じてないのであります。私としては始終申す通り全面講和ができれば仕合せである。できなければ仕方がない。拙速主義ではないのであります。むしろ私は拙延主義を排するのであります。日本は一日も早く独立をいたさなければならないのであります。又日本講和関係平和関係に入ろうという国は、一国といえどもこれと速かに講和関係平和関係に入つて、幾分なりとも日本独立回復いたすべきものと私は確信いたすのであります。(拍手)故に拙速主義ではないのであります。拙延主義を排するのであります。(「その通り」「社会党わかつたか、よく聞け」「拙延主義という言葉があるかね」と呼ぶ者あり)又従つて締結国との間の関係をどうするか。私は全面講和ができれば結構であると考えまするから、成るべく未締結国は少いことを希望しますから、その場合に、今後において未締結国ができるでありましようが、それはそのときに考えるべきであつて、今日仮定の問題をあらかじめ政府としては声明いたすべきではないと考えるのであります。  又、ソヴイエトアメリカに対する講和條約問題についての声明と申しますか、申入れについてどう考えるか。これは連合国との間の関係でありますから、私はここに容喙はいたしませんが、併しながら講和條約に至るまでには幾多の曲折があるであろうと思います。或いは一国の提議を排斥する、或いは拒絶するという場合もあるでありましようし、拒絶した後において又承諾するという場合もあるでありましようから、或る国の一言一句を捉えてかれこれ申すべきではなく、暫らくその経過を見るべきであると思いますので、私はこの点については容喙いたしません。  経済自立経済自立と言われますが、経済自立観念は、実は軍国主義残つた観念であると思います。今日は経済自立ではないのである。国際相依であります。想互いに相助け、少きことを、欠乏を見ないように、国を貿易によつて立つべきものであります。若し経済自立というならば、貿易はやめたらいいと言わざるを得ないのであります。日本貿易経済の伸張によつて国を立てて行くべきもので、原料食糧が不足した場合においては、これは貿易によつて補うべきことと考えるべきであつて、單に自立々々とお考えになるのは、これは軍国主義の遺物であると考えるのであります。(拍手)又ビルマインドとの関係と言われますが、現にビルマインド等においては貿易は開始されておるのであります。のみならず、在外事務所はやがて設置するに至るのであります。決してビルマインド等とは今日において貿易関係は決裂いたしてはいないのであります。又アメリカにばかり依存すると言われますが、私はアメリカばかりに依存する考えはないのであります。広く世界相手日本貿易は依存すべきであつて、或る国に依存するという考えはないのであります。併しながら輸入することが便利な、輸出することが便利な国とは、これは貿易関係に入つて成るべく多く貿易をいたしたいと考えますが、成る国に、米国にのみ依存する考えは毛頭ないのであります  講和自主権関係についてのお話でありますが、講和後は完全なる自主権独立権回復できることと私は考えており、現にダレス氏も、日本との間において全く対等関係において、何ら主権に制限することのない対等の條約を結びたいということははつきり申しておられます。その通りになるかならんかはとにかくとして、米国考えは正にそうであると考える。又日本国はこれを希望せざるを得ないのであります。  然らばソヴエツト若しくは中共政府の間の関係はどうであるか。これは講和條約ができるか、できないかに一にかかつておるのであつて講和條約は強制するわけには行かないのでありますから、相手国平和関係に入ることを拒絶いたした場合には、日本としてはいたしかたないのであります。成るべく講和関係に入ることに無論努力いたしますが、これは相手のあるとでありますから、相手承諾せざる場合は如何ともできない。  又保障條約についての、日本安全保障についてのお話でありますが、これは過日も申す通り国内における治安日本の力において飽くまでもこれを保障する。みずから守る。併しながら今日の情勢においては、集団的に攻撃を受ける場合においては、いずれの国といえども集団的防禦方法考えておるのであります。若し日本集団的攻撃を受けた場合には、国内治安については一向懸念いたしませんが、併しながら集団的攻撃を受けた場合においてはどうするか。これについてはダレス氏の演説の中にもあります通り日本を長く空虚の状態に置くということはできない。世界の平和或いは米国自身安全保障の上から言つて見ても、日本を空虚の状態に、真空の状態に置くわけには行かないから、アメリカとしては、できるだけの日本に対して援助を與える。それは結構であるということを私は申したのであつて、このことについては日本国民は誰も異存違つた意見考えを持つ人は……或いは社会党諸君は別であるが、或いは共産党諸君は別であるが、八千万国民日本同胞異存を言う者は私はないと考えるのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手)  未帰還者の問題については、これはお話のあるまでもなく、私はこの問題については就任以来、或いは終戰以来外務大臣になりまして以来、常にこの問題は頭の中に置いておるのであります。誠に同情に堪えないのであります。お話のあるまでもなく、私はダレス氏にお話をいたしておりますが、その交渉内容の結果については将来を御覧願いたいと思います。又講和條約は、自由党若しくは我が内閣がこれを独占いたして、自分の功名のためにするというようなけちな考えは決して持つておりませんから、この点は御安心を願いたい。(拍手)     —————————————
  13. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 櫻内辰郎君。    〔櫻内辰郎登壇拍手
  14. 櫻内辰郎

    櫻内辰郎君 吉田内閣総理大臣外交に関する報告演説に対しまして、二、三の点について質問をいたしたいと存じます。  第一に、首相ダレス氏との会談において、琉球、小笠原その他の領土権復帰の要望をせられたかということであります。ポツダム宣言受諾に際しまして、領土の問題はすでに決定をいたしておる問題でありまするが、ポツダム宣言受諾の当時と今日の形勢においては隔世的に一変をいたしておる現実から考えまする場合に、この問題について連合国側に要望するということも、私は決してこの当を得ておらないというそしりは受けないと考えておるものであります。従つて国民の要牽いたしておる点を察せられまして、総理はこの点についてダレス氏に対して要望されておると考えまするが、要望されておりまするかどうかということを伺いたいのであります。参議院における外務委員会に対しまして、これらの島々の人々及び各方面からこの領土権復帰の問題が陳情をせられて、毎日のごとくにこの陳情書が参つておるのであります。最近におきましても、徳川頼貞議員と私は大阪に参りまして、商工会議所において講和に関する懇談会を開いたのでありまするが、その際懇談会を終りましたときに、奄美大島人々が来られまして、どうか我々が日本人として生きて行くことができるように特別なる御配慮をお願いいたしたいと、涙を流して陳情をせられたのであります。私どもはもとより、この悲痛なる陳情の声を聞いた並みいる人々も共に泣かされたのであります。この国民感情を考えまする場合に、我々はポツダム宣言受諾の際にすでに決定した問題であるから、領土の問題はこれを要望することができないというような考えは持ち得ないと思うのであります。更に参議院の外務委員会はこの問題の重要性を考えまして、委員は各地に出張をいたしまして、この問題について調査をいたしたのでありますが、團伊能議員は北海道に参りまして、千島に関するところの調査をいたしたのであります。その場合において歯舞島は完全に日本領土であるということを確認をして帰られたのであります。そうしてこの調査の結果に基きまして、團伊能氏がダレス氏に会見をいたしました際に、詳細にこの調査の報告をすると共に、歯舞島の日本領土復帰の問題を陳情されたのであります。ダレス氏は滞京中においては何らこれに対する意見を述べられなかつたのでありますが、アメリカに帰られまして、二月二十八日の記者団との会見において、歯舞島は日本領土と認める、ここにソ連軍隊が駐屯しておることは間違いであると声明をされたのであります。(拍手)私はこの陳情をされたところの團伊能氏の満足はもとより、国民すべてが御同慶の至りに堪えないと考えておるものであります。国民的、民族的の感情を無視して、これらの島島が没収されるということは誠に痛恨に堪えないのであります。この国民的感情を察せられまして、首相ダレス氏に対しまして、これらの島嶼の復帰問題について要望をされましたかどうかということをお伺いいたしたいのであります。  第二には、講和條約締結と共に日本安全保障の問題でありますが、すでに加藤議員からこの問題は質問されておりまするので、私は簡單に申上げたいと存じまするが、講和條約締結と共に日本安全保障は何によつて求めらるるか、日本国際連合に加盟をいたしまして、国際連合によつて保障されるということは望ましきことでありまするけれども、これが不可能といたしまするならば、集団保障の遂によつて日本の安全は保障されなければならんと思うのであります。併しながらその場合におきまして、講和條約を締結をいたして完全なる独立国なつたという日本が、外国の軍隊にのみ依存をして、そうして日本の安全が安らかであると考えるということは、これは言い得られるでありましようかどうか。この場合において、私は日本経済力が直ちに大きな軍備を持つことはできない、併しながら国土の保安隊ぐらいは日本人の手によつて編成をせなければならないと考えるのであります。而してこの問題についてダレス氏と総理大臣との間において種々なる談合があつたと考えまするが、これについてお話合いがあつたかどうか、更に詳細に御説明を願いたいと存ずるのであります。  更に又講和と同時に国防力の真空状態に備えまして、米軍の駐兵問題が論議されておるのでありますが、すでにこの問題も先ほど加藤議員から質問をされました通りでありまするから、これも私は省略いたしますが、要するにこのアメリカ軍隊が駐屯をする、そういうような場合において、或いはそれに対して年限を切るとか、そういうようなお話合いがあつたと考えまするが、具体的に卒直に御説明を願いたいと思うのであります。  第四に、米国政府から講和草案が、仮の草案でありまするけれども、これが関係各国に配付をされておるという記事が出ておるのであります。我が国の政府もこれを受領いたしておるかどうかということを伺いたいのであります。更に又この草案を受領しておらるるといたしまするならば、速かにこれを国会に提示をされまして、そうして国会においてもこれを検討せしめらるることが当然と考えまするが、総理の御所見を伺いたいのであります。  第五に、條約の締結前に国会の承認を求めるかどうかということを伺いたいのであります。当然民主憲法の今日において、憲法治下においては国会の承認を先に求められなければならないと考えまするが、これに対する首相の率直なる御見解を伺いたいのであります。  以上の点について首相から詳細に伺いたいということを申述べて降壇をいたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  15. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  第一の御質問は、領土に関して要望をいたしたかどうかということでありますが、この領土の問題については、すでに第一回のこの前に見えたときに、一月に見えたときに、私からして国民の要望するところはつぶさに申述べておるのみならず、又外務省としてはお示しの千島その他の領土についての歴史的、地理的の関係に対する詳細なる資料は米国政府に、米国政府と申すよりは、総司令部に提出いたしております。この領土の問題は、只今お話通りポツダム宣言において一応きまつておることはお示しの通りであります。併しながら又時の事情によつて、或いは又政治上と言いますか、外交上その他の理由によつて連合国自身の意見も変ることでありましようし、又国民の要望の熱意によつては又再考せられる余地のあることはお話通りであります。政府といたしましては、十分できるだけの手段を盡して、方法を盡して、国民の意のあるところは伝えております。ただこの点について一つ御注意申したいのは、余り国民が、或いは政府が熱心の余り要望を強制し過ぎますと、話がかたくなになります。(笑声)笑いごとではない、怪しからん。領土問題のごときは、これは国民或いは国運の消長に関することでありまするから、この取扱い方においては十分愼重にいたしたいと思うのであります。又これを愼重にすることによつて不利益はないのみならず、利益があると思いまするのは、今日御承知であろうと思いますが、曾つては北緯三十度という。三十度以南ということでありましたが、すでに二十九度以南というまでに、一度違つておるのであります。でありまするから、この領土問題の限界は時々刻々変るものでありまして、相手方が承服するようなふうにしかけて行くことが外交であり、必要であると思います。この点については、なお政府といたしましても十分愼重に取扱いますが、議会においても愼重にお取扱いを願いたいと思います。(拍手)  安全保障の問題については、これはこの前見えたときに十分話はいたしております。要は先ほど申した通り国内治安については飽くまでも日本政府独力でいたすと、はつきり申しております。又その方法を盡すつもりでおります。併しながら集団的攻撃の場合においては、今日においてはこれを集団的に防禦する方法考えるよりほか方法はないと私は考えます。従つてここで米国駐兵問題が起るのでありますが、この駐兵問題については、米国政府考えもまだしつかりいたしておらないと思います。つまり細目についてはしつかりいたしておらないと思います。日本を真空状態に置きたくない。太平洋或いは極東の平和、世界の平和維持のために日本一帶を真空状態に置くということは、平和維持の上において危険であるという考えについては、日本政府アメリカ政府も一致いたしておりますが、さて駐兵問題となつてどうなるか、或いはその期間はどうであるか、或いは又どこに置くかとか、軍事基地というような問題についての詳細については、米国政府においても今なお具体的にきまつておらないと考えられます。従つて詳細な交渉には入つておりません。殊に今度の場合においては、このたび来訪せられた場合においては話頭に上つておりません。  又米国草案を受取つたかどうか、これは受取りました。見ましたが、これを発表することは許されておらないのであります。新聞に洩れたということはあります。洩れたために迷惑をいたしたということはありますが、発表することは許されておらないのであります。のみならず、これは草案に過ぎないのであります。この草案を基にしてどう変化するか、各国との間の交渉の間において、この草案も多少は変化いたすであろうと思いまするが、今のところは草案であつて、且つ又これは発表することを許されておりませんから、国会に提示して諸君の御研究を待つというところまで参つておりません。  又講和條約ができた場合に国会の審議にかけるかというお話でありまするが、無論国会の承認を経て條約はいたすのでありますからして、決して政府独断で、諸君の御承知のない間に締結をいたすようなことは断じてございません。  この機会に昨日私に対する質問で留保になつておる問題についてお答えをいたしますが、それはメーデーに宮城前の広場を使わせないという問題であります。この問題は早急にきまつた問題ではなくして、すでに一ケ月前と思いますが、政府方針はきまつて関係者に通告いたしたはずであります。即ち私の考えまするところは、宮城前の広場はこれは国民の共有と申すか、儀式その他に使うために保存いたしたい。これはきれいな場所として、きれいな場所というのもおかしいが、成るべくその美観を傷つけないように保存いたしだい、(「労働者はきたないのか」と呼ぶ者あり)又儀式その他に使いたい、これを政治上の目的その他のデモに使わせないということにいたしたいと思います。これは昨年のいつでありますか、覚えておりませんが、米国兵と学生との問に不祥事件が起つて、そのために両国の間に、或いは司令部との間にいろいろな関係を生じましたが、そういうことのないように、広場は成るべくこれを国民共同の場所として、そうして長くきれいに保存いたしたいと、こう考えるのであります。故に宮城前は使わせない、京都の御所についてはよろしいと、こう申したのであります。あえて労働運動を彈圧した考えではないのであります。労働運動の発達については、我々は健全なる発達については決してこれを妨害する考えはないのでありますが、併しながら国民として、国家として大事な場所を労働運動のデモのために使わせるということは政府としては許せないところであります。(拍手、「祭典じやないか」「旧憲法時代に還れ吉田は」「黙れ」と呼ぶ者あり)     —————————————
  16. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 堀木鎌三君。    〔堀木鎌三君登壇拍手
  17. 堀木鎌三

    ○堀木鎌三君 私はここに吉田総理大臣に対しまして、外交問題に関して国民の知らんとするところを代表いたしまして、質問をいたそうとするものでありまするが、大体本日ここに質問いたします事項は、本来総理大臣がみずからその責任上、進んでその誠意と熱情を傾けて経過を語り、国民の共感と納得を得らるべきものでありまして、その点に関しまして、先ほど加藤シヅエ議員に対して、非常な御努力があるということを言われるのでありますが、私どもはその点に総理大臣が欠くるところがあるのでなかろうかということは、ひとり加藤シヅエ議員のみでないと私は考えるのであります。何となれば、今回の講和に関しましても、私どもは既成の事実をダレス氏その他から知るほうが多いのであります。総理大臣から伺いますほうがむしろ少い。そういう観点から見ましても、もう少し親切に、率直に国民納得行かれるような態度が是非欲しいものだと、こう考えるのであります。昨日ここにおきまして、総理大臣がみずから進んで御説明なつた。これは非常に珍らしいことでありますので、我々はすでに講和条約もこの夏あたりは締結されるかということが言われておりますときに、さぞかし従来の経過を率直に表明されるものと考えておつたのであります。然るにただ早期講和国民の希望するところであつて、今回の地方選挙の結果はそれを裏書きするものであるという言葉で以てお結びになつておるのであります。そうして実質的な講和内容は、ダレス氏のサンフランシスコにおける演説その他を通じて知つてもらいたいということが内容を成しておるかと思うのであります。早期講和国民が欲しますことは、これは私は社会党諸君といえども早期講和は欲せられるであろうと考えるのであります。全面講和を欲せられることは、総理大臣が(「早期全面講和」と呼ぶ者あり)しぱしば欲せられておるところであります。それでは実際の問題に触れないのであつて、要するに如何なる講和條約が締結できるのであろうか、その内容如何が問題になると思うのであります。従いまして、私は二、三の重要な問題について御答弁を願いたいと思うのでありますが、前二者に対しまして答弁せられましたところは極く簡單に省いて参りたいと思います。  先ず第一に領土問題でありますが、領土問題については先ほど詳細なる御答弁がありましたので、私としてはこの問題について更に御答弁を求めませんが、併しながら率直に申しまして、国民的感情から申しまして、千島列島、琉球列島、小笠原の諸島は決して我々の貧欲なる侵略主義によつて領有したものではないのであります。又ヤルタ協定によつて千島の所属問題が行われておるのでありますが、これもこの秘密協定については我々としてあずかり知らないところでもあると思うのであります。更に進んで太平洋憲章によれば、今回の大戰参加国はいずれも領土拡張の意思のないことを表明しているのであります。こういう点から考えますると、私は領土問題について、総理大臣は表現の方法、仕方について慎重を要することを切言されておりまするが、その点については私も御同感をいたしまするが、併しながらそれかといつて、この問題について我々が口を抑えているわけに参らないものがある、こう考えるのであります。殊に先ほど挙げられました歯舞島が千島列島の一部でないとする観点からしまするならば、琉球列島の奄美大島も又同様の見解に立つてもらいたいと思うのであります。これらについては詳しく申上げませんが、領土問題で触れられなかつた一つの問題について御答弁を願いたいと思います。それは今回北緯一十九度線より以南の諸列島が、国際連合憲章第七十五條以下によりまして信託統治制度の下に置かるることとなつたのでありますが、その目的は同憲章第七十六條のいずれによるものでありましようか。現下の国際情勢上、国際的平和及び安全を増進するために必要でそういう処置がとられたもりといたしまするならば、その必要性がなくなりましたとき、その帰属について改めて住民の意思に墓き決定せらるべきものと思われまするが、その点について総理大臣は如何に御了解なすつておられましようか。私が申したいことは、従来の住民の沿革と歴史とその意思が無視されて、人為の緯度によつて領土の変更が勝者の考え方によつてきめられましたときに、決して世界の平和の維持に貢献するゆえんでないということは歴史の証明するところであります。そういう点から、あの太平洋憲章の預出不拡大の原則が打立てられたものと思うのでありますが、こういう観点から、首相はこの領土問題について如何にお考えになつておりましようか。  第二は安全保障の問題であります。これも前二者から御質問がありましたので、私は主として講和條約の草案に言うところの問題の一、二について御質問いたしたいのであります。今回の條約草案によりますと、国際連合憲章の第二條の原則は、連合国側日本との双務的関係において規定せられております。連合国日本主権国家として、国連憲章に言うところの個別的又は集団的固有の自衛権を持つことを認めております。と同時に、日本が外国の武力攻撃に対しまして、安全保障としての諸国との取りきめに自発的に参加することを認めております。ここが問題だと思うのでありますが、その註釈のうちで、この自衛権が他国の武力攻撃に対する自衛権であると規定せられておるのでありますが、他国の武力攻撃に対する自衛権というのは何でありましようか。ここに言うところの自衛権は、総理大臣の従来言つておられますところと異なりまして、兵力そのものを指すと私は思うのであります。即ち現在日本は軍備を持たざるが故に、差当りその責任の遂行は不可能でありまするが、自衛権を持つことは国家の権利でありますと共に、他国の集団的安全保障の取りきめに参加する場合は、これ又義務となり得ないのでありましようか。自国の安全を保障する意思のないものが、他国と集団的安全保障協定に参加できることは考え得られないのであります。又ダレス氏の言葉を引用いたしますれば、ダレス氏は、アメリカの日米防衛協定に対する態度は、ただ單に相手国に防衛の恩恵を一方的に與えるものではなくて、ヴアンデンバーグ決議に基き、相互援助と自衛を前提にして初めて相手国と防衛協定を結ぶというのが方針であると言つているのであります。こういう観点から見ますと、この自衛権は確かに兵力の裏付けをした自衛権である、空な自衛権でないということを私は考えざるを得ないのであります。そういたしますると、今回講和條約を結びますると、将来に対しまして、差当りは法律上或いはその他によりまして、実質的に軍備を持つておりませんが、将来そのときには日本が自衛権を持つことを要請せられる、義務付けられるものであると考えるのでありまして、この條約によつて、私は憲法に優先する、憲法上條約は憲法の條章に優先するという考え方からしまするならば、いつの日にか、その必要の生じました際には憲法改正の手続を国民に訴うるの考え方がなければならんと思うのでありますが、その点について如何にお考えになりましようか。更にこの條約の中に括弧いたしまして、「太平洋の安全保障を維持し、日本が今後攻撃的脅威となることなく……日本を自国の安全に寄與せしむるために現在行われつつある意見交換の結果に照して補足せられる」ということが書いてあるのでありますが、これは何を指すのでありましようか、私は取りも直さず、いわゆる日米防衛協定を指すものだと思うのであります。日米防衛協定の性質については今御答弁がありましたが、細目はともかくといたしまして、基本的なものについてのお話合いは私はあつたろうと思うのでありますが、この点についてダレス氏みずからがその経過によつて考えると言つている以上、お話合いがあつたと思うのでありますが、総理としてはどういうふうにお考えになつておりましようか。ただ最も問題といたしたいことは、この日防衛協定と国連との繋がりであります。即ち日米防衛協定が国際連合の第五十一條以下の国連の目的原則従つて行われるものであるかどうか、單なる両国間の軍事協定ではあるはずがない。そういう意味におきまして、私は国連との繋がりにおきまして、この日米防衛協定は世界平和への途を発見することができると思うのでありますが、この点について如何にお考えになりましようか。  最後に申したいことは、憲法制定記念日に当りまして、リツジウエイ最高司令官が、講和に備えて占領管理日本の自治能力、政治の能力に応じて大幅に委讓して参るという、漸進的に大幅に委讓して参るということを言つておられるのですが、過去の日本の政治のあり方を見まするときに、占領下、日本人が日本人の手でみずから治め得ることまで、占領軍の指示でありますとか、或いは書簡でありますとか、そういうふうな権威を頼つて政治が行われがちであつたのであります。これにつきましては、私どもは国民とひとしくその責任を痛感しなければならないと考えるのでありますが、特に内閣に列せられるところの諸公は、この点について十分意を用いられまして、本来の民主主義の原則に立返つて、みずから治めるの責任と義務を感ずべきであると考えるのであります。然るに過去の政治はこの点について私は甚だ遺憾の点があつたと思うのであります。殊に終戦後六年たちました今日に至つて国民自立の気魄が乏しくして、最近におきましても、昨年電力問題に対しまして書簡を問題にし、又今総理大臣がここで御答弁になりました皇居前広場の問題にいたしましても、お互いの手で解決すべきものがかくのごとき形をとりましたことは、私は民主主義の原則に反するものと思わざるを得ないのであります。(拍手)  最後に、追放解除について一言申上げたいと思うのであります。すでに民主化の基礎ができ上りまして、講和もでき上ろうというときになつて参りましたことに鑑みましても、今回の追放解除は従来と異なりまして、ポツダム宣言受諾に基きますところの戰争犯罪人、極端なる軍国主義者、極端なる国家主義者を除いては全部解除せられるも何ら憂慮するところはないということが考えられますが、この問題がとかく世上政治的な眼を以て見られるということは甚だ遺憾だと思うのでありますが、総理大臣としては、特別の委員会を設けられるとか出ておるのでありますが、みずからの責任におきまして、速かにこの問題を御解決になる御決心はございませんでしようか。実際我々講和は一日千秋の思いで待望して参りましたが、今後我々が我々の手で民主主義の原則従つて政治をやつて参りますのには、今更ながら一層従来よりその責任の加重を感ぜざるを得ないと思うのであります。総理大臣といたしましても、私ども総理大臣自身が日夜国民に対して努力しておられることは十分感謝しながらも、なお且つ総理大臣国民と共に憂え、国民と共に語るの姿はどうしても我々としては不足に感ぜざるを得ません。そういうふうな状態におきまして、この大問題を解決して参りますことは、実に私は不可能なことでなかろうかと考えるのであります。(拍手)どうか総理大臣としては一層御反省になりまして、そうして八千万の国民のエネルギーを祖国愛と国際正義の確立に燃え上るように御努力あらんことを切に希望いたします。  これを以て私の質問を終ります。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  18. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えいたします。  領土問題については、先ほど一応の、私からして答弁をいたしましたが、お話の中に口を緘してと言われたか、とにかく領土問題について遠慮して話す必要はない、その通りであります。私は絶えず国民の輿論を、領土問題その他についても、講和條約についても極く率直に国民の要望するところを自由に話される方がいいということを、又話すことを奨励いたしておるのであります。又講和條約は国民の意思に反した、或いは要望に反した講和條約をなして、そうしてそれが守られなかつたということは、ヴエルサイユ條約において最も明瞭であります。故に連合国としても、このたびの講和條約は相手国の民意を十分尊重したい、故にダレス氏の声明その他の中にも明らかに言われておる通り日本に対しては対等国として、曾ての敵国、若しくは戰勝国と戰敗国との関係において條約は結ばないと言われておるのであります。故に国民の要望は十分取上げらるると考えますから、決して遠慮せられて言葉を差控える必要は毫毛もないのであります。只今お話領土問題等についての国民の要望は、私としてもできるだけ司令部その他に表明いたしており、又要望の徹底することに努力いたしております。  安全保障の問題について自衛権云云、又国連との関係等について詳細の御意見が開陳せられましたが、御意見として拝承いたします。併しながら、今日日本の安全と申しますか、ダレス氏との間において話合をいたしたことは、これまで私がここで以て説明いたしました以外に何にもないのであります。今後においてこれがその趣旨において具体化された場合において、いわゆる自衛権その他がどう国連憲章との関係を持つかということが明らかにせられるのであつて、今日は草案の程度であつて、その草案がどう変化するかということはわからないのであります。連合国との間の話合においていろいろな修正があり得ると思いまするから、その原案或いは條約の原案を御覧になつて、その上で以て更に御意見の開陳を願いたいと思います。  又條約が憲法に優先するとは私は考えないのであります。憲法の下においては、法律、條約ができるのでありますから、憲法を無視して條約が締結せらるるということは断じていたしませんつもりでおります。  太平洋條約についてのお話がございましたが、この太平洋條約については、今日或いは今日まで、ダレス氏との間或いは連合国との間に何ら話合いをいたしておりません。  追放問題についてのお話がありましたが、これは成るべく多数解除いたしたいと考えております。併しながら追放に関する司令部の原則は変つておらないということはメモランダムの中にもちやんと書いてあるのであつて、その原則の範囲において成るべくその適用を広くして、成るべく広く解除いたしたいということを希望もし、又考えておるのであります。一応のお答えをいたします。(拍手
  19. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は全部終了いたしました。内閣総理大臣発言に対する質疑は終局したものと認めます。      ——————————
  20. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 日程第二、相互銀行法案衆議院提出)を議題といたします。先ず委員長の報告を求めます。大蔵委員会理事大矢半次郎君。    〔大矢半次郎君登壇拍手
  21. 大矢半次郎

    ○大矢半次郎君 只今上程せられました相互銀行法案の委員会における審議の経過並びに結果について御報告申上げます。  御承知のごとく、我が国における中小企業の占める重要なる地位に鑑みまして、従来より中小金融対策として政府資金の導入、商工組合中央金庫の活用等の諸方策が講ぜられて参つたのでありますが、この際中小金融機関の体系を整備し、中小金融の専門機関の制度を確立する見地より、普通銀行の制度とは別に、中小企業者のための金融機関として、且つ国民大衆のための貯蓄機関として相互銀行制度を確立せんとするものであります。  本案の内容の概要について申上げますと、相互銀行は地方的に国民大衆の相互金融を主たる業務とし、大衆的な貯蓄機関たる性格を有する銀行でありまして、その業務としましては、預金の受入、資金の貸付を行うものでありまするが、特に大衆の貯蓄の便益とその金融の円滑化に資するため、従来無盡会社によつて採用されて来た月掛、日掛等による掛金方式を取入れ、貯蓄性預金の吸收にその特色を発揮せしめることといたそうとするものであります。なおその性格上、債券の発行、為替業務等は行わないこととして、普通銀行との差異を明らかにするほか、一人に対する大口信用の集中を禁止し、中小金融に専念せしめると共に、営業区域について制限を設け、資金の地方還元の趣旨を明確にいたすと共に、その規模内容等につきまして、普通銀行に準ずる資金及び運営の健全性を確保し、その監督の適正を期し、以て預金者等の保護の万全を期そうとするものであります。  本案審議の経過は速記録によつて御承知願いたいと思います。かくて質疑を終了し、討論に入り、野溝勝委員から賛成意見が述べられ、採決の結果、全会一致を以て原案通り可決すべきものと決定した次第であります。  右御報告申上げます。(拍手
  22. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 別に御発言もなければ、これより本案の採決をいたします。本案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。    〔起立者多数〕
  23. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 過半数と認めます。よつて本案は可決せられました。  次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十七分散会      —————————— ○本日の会議に付した事件  一、食糧管理法の一部を改正する法律案両院協議会協議委員辞任の件  一、両院協議会協議委員補欠選挙  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  一、日程第二 相互銀行法案