○
山花秀雄君 私は
日本社会党を代表いたしまして、
労働組合運動弾圧に関連いたしまして、
皇居前
広場の
中央メーデー会場使用禁止の問題、並びに五月三日の
憲法祝典の
会場において引き起されたる不
群事件について、我々の又
国民の納得のできる釈明を
吉田総理初め
関係大臣より求めるものであります。(「
議長、
総理大臣がいないぞ」「
吉田首相どうした」「副
議長やめちまえ」と呼ぶ者あり)
戰後
我が国が在来の
封建国家より
民主国家として再出発したる以上、その国に健全なる
民主的労働組合運動の
育成発展を願う者は、
労使双方の当事者だけでなく、
政府も、
国民も、
国家全体を挙げての念願でなくてはならんと
我我は
考えておるものであります。(
拍手)然るに
吉田内閣の結成以来、その
労働行政を見るに、往年の
軍閥専制政治時代に見られたような、
事ごとに
労働運動を迫害し、最近に
至つては健全なる発達をなし来た
つた民主的労働組合に対してすら、何らの
見境いもなく圧迫を加えるに
至つては、(「
ノーノー」と呼ぶ者あり)
国民のうちから
反動政府の声が上
つて来るのは当然だと思うのであります。
メーデーの
行事は
我が国においては永年の
伝統にな
つている
労働運動の
行事であります。
戦前我が国を今日の
状態に転落せしめた
反動政府によ
つて不幸にも一時中絶の止むなきに至りましたが、
終戦後の
昭和二十一年復活し、ここに二十二回の
伝統を有するに
至つたのであります。特に戰後の
メーデー行事は単なる
労働者のみの
行事ではございません。
国民的規模における働く者の
祭典であります。そのことは、集まる
大衆が毎回
中央におきましては五十万人を超える事実がこれを明らかに証明しておるものであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)全国的にも働く者が町から村に至るまで何百万という
動員実数を
政府当局は熟知しておるはずであります。若し
政府が
民主政治の何たるかを理解し、
時代の
進展に即応する
政策を
考えるならば、当然これら働く者の
祭典行事にあらゆる
便宜を與えるべきが至当であると
考えるものであります。(
拍手)五十万人以上の
大衆が集まり得る
場所は
東京においては
皇居前
広場しかありません。
終戦後この
場所において五回引続き
メーデー行事が行われたのであります。これは
場所的に当然のことであります。然るに
政府はこのたび突如何らの
理由なく
広場の
使用禁止の
措置に出たことは、我々はどうしても納得できません。併し今年度の
メーデー行事の一切の
責任を負う
主催者は総
評議会と聞いておるのであります。総
評議会は、
終戦時の混乱と動揺に乗じて一部の
極左分子が
我が国労働運動を誤まれる方向べ導かんと狂奔した、(「
ノーノー」と呼ぶ者あり)その中にあ
つて、あらゆるデマと妨害とを排除して、これらの
極左分子の
破壊勢力と執拗に鬪い、ここに国際的にも
信用を得た立派な
民主的労働組合として結成された
労働組合が総
評議会であります。このことは私のみならず
国民の誰しもひとしく認めているところであります。
政府は
皇居前
広場以外の
広場を斡旋する
便宜を與えるようにな
つていると、こういうように言
つておるのでありますが、併し私の見るところでは、他の替地の
広場では、交通の便からも
收容人員の点からも求め得るような
場所はないと思うのであります。従来五回に亘り何らの事故もなく行われたる
メーデー行事を、健全なる
労働組合総
評議会がこのたび主催せんとしているのに、何の
理由によ
つて禁止したのであるか。その
真意を質したいのであります。
国民公園管理規則第四條には、
集会又は
示威行進の
許可に関する
取扱については、一、政治的又は
宗教的目的を有すると認められる
集会及び
示威行進、二、社会の
安寧秩序を紊す慮れありと認められる
集会又は
示威行進、三、
国民の
厚生利用を阻害し又は
管理上支障を来たすと認められる
集会又は
示威行進とな
つておるのであります。
取扱條項に示されたることによ
つては、何らの
禁止の
事由は我々には見出すことができないのであります。
メーデーの
行事が今日では
国民的規模における
労働祭典として挙行されるこの
時代に、
国民公園管理規則という單なる
取扱規定によ
つてこれを
禁止するに
至つた政府の
真意は、健全なる
労働組合運動をも圧迫せんとする
時代錯誤の
反動政策であると断ぜざるを得ないのであります。(
拍手)殊にこの問題に関してわざわざ
リツジウエイ最高司令官の
見解発表を見るに至らしめたことは、我々は全く遺憾とするところであります。何故に総
司令部の手を煩わすことの
事態に至らしめたかについて、
政府は十分に反省すべきであります。若し
政府にして、民主的にして進歩的な
労働政策をとるならば、このような不手際なことは発生しなかつたであろうと
考えますと、返す返すも遺憾の意を私どもは表したくなるのであります。(
拍手)
リツジウエイ最高司令官の
見解発表の
一節にも、この問題につき
最高司令官として
声明を発したが、併し
公教の
集会の
権利を保護し、
日本の自由な民主的な
労働運動の健全な
成長を奨励して行くことは、
最高司令官の心から
切望するところである。このように
見解発表の
一節には言われておるのであります。この
切望は、
最高司令官の
切望というよりも、
我が国が
民主国家として
育成発展して行く上に絶対必要なことであり、
国民のひとしく
切望するところであります。
この問題に関して私の
吉田総理や
保利労働大臣にお尋ねしたいことは、その第一点は、総
司令部リツジウエイ最高司令官の
見解による、公衆の
集会の
権利を保護し、
日本の自由な民主的な
労働運動の健全な
成長を奨励しなければならないということに、
メーデー行事を実質的に
禁止したこのたびの
労働行政は、
リツジウエイ最高司令官の
見解と一致しておると
考えておるかどうかという一点であります。その第二点は、自由にして
民主的労働組合として結成された
日本労働組合総
評議会について、
政府は如何なる
考えを持
つておられるや、これを一部に見られたような
破壊的労働組合として見られておるや
否やの点であります。その第三点は、この問題に関しわざわざ総
司令部の
見解発表に至らしめた
事態について
責任を感じておるや
否やという点であります。その第四点は、
日本の
労働組合運動が良識ある
指導者によ
つて折角健全に
発展途上にあるとき、総
評議会主催の
メーデーに
会場使用を拒否するごときは、勢い
労働者と
政府との衝突は激烈なものになると我々は
考えられるのでありますが、これは決して緊迫せる
国際情勢において好ましいことでないと我々は
考えるのでありますが、
政府はこのような
事態の
進展についてどう
考えておるか。これらの諸点について、この問題を重視しておる
国民大衆が十分納得でき得るような答弁を要望するものであります。
次に、五月三日
皇居前
広場を
会場として行われた
憲法記念日祝賀式典において、その
式典に招待され出席いたしましたところの総
評議会議長である武藤武雄氏外三十六名が検挙されるという、このような不祥事件が突発いたしましたことは、我々は誠に遺憾な出来事というのみで、これを等閑視することは断じてできないのであります。
我が国の再出発は言うまでもなく
昭和二十二年五月三日より施行を見た
日本国憲法によ
つてその基礎が確立したのであります。全
国民がこの施行日を
記念日として祝典を行うことは当然であります。あらゆる各界各層の代表者と
国民大衆が渾然一体となり新憲法を讃え集うこのおめでたき祝典式場の内外に、約五千名に及ぶ武装警官の動員と、六百名に及ぶ私服警官の警戒裡にこの祝典が行なわれたということは、実に
民主国家の現代の
日本として遺憾の極みであります。(「その通りだ」と呼ぶ者あり、
拍手)これらの警察官
諸君が、当日
式典に招待され出席した総
評議会関係労働運動指導者及び一般
労働者大衆を取締の対象として動員されたことは、否めない事実であろうと
我我は
考えざるを得ぬのであります。而もその式場において警察官
諸君は、全く常軌を逸した行為により、招待されし出席者が逮捕検挙されるというがごとき事件の発生を見たことは、目前に追つた
講和條約成立に対しても悪い影響を與え、且つ又国際的不信を買つたことは否めないのであります。
政府はみずからの排発的行為によ
つて生じたその非を蔽わんがため、当日出席した被招待者を初め当日検挙した三十七名に対し、政令三百二十五号違反容疑で送検すると新聞紙上に報道せしめておりますが、如何なる根拠に基いてかかる重大なる法律違反容疑者としてこれを問題にしたかであらます。
私のこの問題についてお尋ねしたき諸点は、
憲法施行記念祝典において、而もその
会場において、全く憲法無視の数々の行為が
政府みずからの手によ
つて行われたることは、断じて許されるべき行為ではないのであります。(
拍手)それらの諸点について
政府の
責任を追及すると同時に、如何に憲法無視の行為が行われたかについて
吉田総理や大橋法務総裁に質問するものであります。この問題についても我々や
国民が納得できるお答えを願うものであります。
質問の第一点は、この不祥事件の発生は明らかに挑発行為によ
つて発生したことは、次の諸点で明瞭であります。僅か二千名程度の総
評議会関係労働組合員がこの祝典に参列したにもかかわらず、武装警官五千名も動員し、検挙用のトラックを随所に配置し、なお且つ私服警官を式列にある
労働者の間に分散配置し、当日招待を受けた総
評議会幹部にはその周囲を包囲攻撃のような態勢で備えるという、全く野蛮極まる警戒準備を行な
つたのであります、(「そうだ」と呼ぶ者あり)これらの私服警官の中には、その多くは
労働組合員のみが脚に付けることのできる俗にいう組合員バツジ、更に民擁同のバッジ、それを付けて
労働者群の中に入り、盛んに挑発行為を行な
つたのであります。その事実の一例は、そのために一人の私服警官は仲間の私服警官から誤ま
つて検束され(笑声)手錠をかけられ、警視庁まで連行されたと言われているのであります。このような挑発行為を何のために
行なつたかという点、(「そうだ」と呼ぶ者あり)これは明らかに
労働組合運動弾圧の一例であります。これらの挑発的数々の行為に対して
責任ある答弁を願うものであります。
質問の第二点は警察官の暴力行為であります。それぞれの検挙された者は、戦前の検束風量にも見ることのできない、各人に忌わしい手錠をはめて検挙したのであります。又参加組合員に対しては、やたらに警棒を揮
つて毆打したのであります。警棒使用に関しては明らかに警察官服務規程が定められているはずであります。これは、警察官に対して反抗し、その警察官の身体に迫害を加えられる場合にのみ、自衛上止むなく使用を許されたるものと存じておるのでありますが、このたびの警察官の行為はその服務規程に違反せる行為であることは明らかであります。これらの警察官の暴力行為によ
つて万世橋署に留置された海員組合の土屋誠一君は内出血で倒れておるのであります。これら一連の野蛮的暴力行為が権力を背景とて行われたのであります。
憲法祝典式場において悲しむべきこの警察官の行為に
政府は如何なる
責任をとろうとするものであるか。明確なる答弁を願うものであります。
質問の第三点は、被検束者釈放に際してこれらの全部がその非を認めて
責任をとる態度に出るため、これを釈放したと新聞紙上に報道せしめて、自己の挑発行為の隠蔽を図らんとしておるのであります。誰一人
政府の言う
責任を認めた者は被検束者の中にはありません。かかるデマを報道し、問題の真実を曲げんとする行為は、明らかにこれはスパイ政治の行為であります。同時にこれによ
つて国民の真実に対する誤まつた認識を與える結果となり、且つ又これによ
つて政令三百二十五号違反事件として事件を成立せしめんとする全くの
労働組合運動彈圧の陰謀政治の現われであると断定せざるを得ないのであります。(
拍手)又当局は五月一日
メーデーの
リツジウエイ最高司令官の
見解発表を五月三日の
憲法祝典に延長解釈しているような報道をたびたび新聞紙上に発表しておるのであります。こんな三百代言的延長解釈をしなければならない
政府の無
方針には驚き入るが、
リツジウエイ最高司令官の
見解発表は飽くまで
メーデー問題に関する
見解発表であります。これを、
憲法祝典式場に参加し、平和憲法を讃えんとした
労働者の心からなる平和憲法礼讃の行為を、徳川幕府
時代の古くさい陰謀政治を以て弾圧せんとする行為は、およそ民主主義とは縁遠いスパイ政治の
考えが、これらの諸点について明確にな
つておるのであります。我らはかかる問題について
政府の明らかな答弁を願うものであります。
最後に申上げたいことは、
国際情勢は緊迫し、特にアジア情勢は朝鮮動乱を契機として、
我が国の立場は誠に複雑な立場に立
つているのであります。卒直に申上げますと、再び恐るべき悪魔のような戰争が
我が国の頭上に蔽いかか
つて来る危険性を我々は感じておるのであります。
只今こそ
日本の民主化を一段と促進し、その
日本の民主化の原動力と言われておる
労働者を自由にして民主的な労働組織の中に包容せしめ、立派な
労働組合を
育成発展せしめて世界の平和に協力せしめる国内態勢を築くことが、現在の
日本に課せられたる最大の任務であると我々は
考えておるのであります。(
拍手)
日本国憲法はその任務遂行の基礎であります。これからの
日本の生き方を教えた光明であります。
労働者がこの平和憲法を守れと叫び、軍国主義の芽出しに鬪
つている姿は、世界の民主主義
国家のひとしく認めているところであります。然るに
吉田内閣は
労働組合運動彈圧の現われとして五月一日
メーデーの
労働祭典を圧迫し、越えて平和憲法を守らんとする
労働者に牢獄の刑罰を與えんとするもののごときに
至つては、およそ時局認識の欠如した
労働政策の貧困、曾
つて軍閥が
行なつた反動政治と何ら異なるところがないのが
只今のあり方であります。(「
ノーノー」「フアツシヨだ、フアツシヨだ」と呼ぶ者あり)今度の
政府の反動的なもろもろの
労働政策は、国際的には
我が国の
信用を落し、
講和條約に多大の悪影響を與え、国内的には階級鬪争を激化せしめる結果を生ぜしめたことは疑う余地はございません。かかる不手際をたびたび露呈した
吉田内閣は、自己の政治力欠如を
国民の前に陳謝し、その
責任を明らかにせられんことを要望し、私の質問を終えたいと思うのであります。(
拍手)
〔
国務大臣保利茂君
登壇〕
〔「吉田はどうした」「吉田を出せ」「総理を出せ」と呼ぶ者あり、
拍手、「良心的な答弁を願います」「黙
つて聞け」と呼ぶ者あり〕