○岡本愛祐君
只今議題となりました
地方税法の一部を
改正する
法律案について、地方行政委員会における審議の経過並びに結果を御
報告申上げます。
先ず
政府の提案理由を御紹介いたしますと、新地方税制
施行の結果等に顧み、住民負担の
合理化及び税務行政の効率的運営を図るため、これに若干の
改正を加えることが適当であると考えた折柄、シヤウプ第二次勧告が公表されたので、その示唆するところをも参考として本
法律案を提出するに至つたというのでありまして、その要点を挙げれば次の六つであります。
第一は附加価値税に関するものでありまして、附加価値税の課税標準を算定するに際し、本税の実施前に取得した固定資産の減価償却額を総売上金額から控除することを認めると共に、青人色申告をする法に対しては、その選択によ
つて、現行の控除方式によるほか、所得、給與、利子、地代及び家賃り合計額を以てする加算方式によるここを認め、併せて課税標準の分割方法、申告納付の手続等を簡易化し
ようとするのであります。
第二は市町村民税に関するものでありまして、その一は新たに法人に対しても所得割を課する、いわゆる法人税割の制度を設け、税率は法人税に対し標準を一〇%、制限を一一%として、個人及び法人間の課税上の不均衡を是正することとし、その二は六十五歳以上で十万円未満の所得者を非課税とし、その三は、個人の所得割の課税標準に課税総所得金額を採用する場合において、特別の事情がある市町村では、総所得金額から基礎控除額を控除したものを課税標準とすることができるものとし、その四は給與所得について源泉徴収の方法を採用することができるものと定め、そのほか、これらの
改正に伴い、徴収の方法について、特別徴収、申告納付の方法等に関する詳細の規定を設け、納期前の納付に対する報奨金を税額の月百分の一に引上げることなどを定めてあります。
第三は固定資産税に関するものでありまして、
庶民住宅の居住者等使用者に対する課税を廃止し、償却資産に対する免税点を現行の一万円から三万円に引上げ、評価及び価格の決定、報奨金の引上げその他徴収の方法等に若干の
改正をし
ようとするのであります。
第四は事業税に関するものでありまして、法人の事業税について申告納付の制度を採用し、又附加価値税の場合と同じく、二以上の道府県において事務所又は事業所を設けて事業を行う場合の課税標準の分割基準は、原則として従業者の数とするが、電気ガス供給業、地方鉄道軌道事業及び倉庫業にあ
つては、固定資産の価格と従業者の数の二者とすること等の
改正を企てております。
第五は国民健康保険税を創設することでありまして、国民健康保険を行う市町村は、保険料に代えて保険税を課することを得るものとし、その標準課税総額は、療養の給付に要する費用の総額の百分の七十に相当する額と定め、納税額は所得割、資産別、被保険者均等割及び納税義務者均等割によ
つて算定するのでありますが、一人の限度を一万五千円とするのであります。
第六はその他に関するものでありまして、その一は、国税と地方税との徴収順位は、差押の場合において先着手の順位によるほかは、同順位によるものとし、それぞれの債権額に按分して収納することとし、その二は狩猟者税、自転車税、荷車税等の罰則中体刑を廃止して
合理化し、その三は各税目に亘
つて規定の整備を図ろうとするのであります。
以上の
改正案について当委員会において予備審査中、更に内閣から修正の申出がありました。その
趣旨とするところは、国税徴收法及び租税特別措置法の一部
改正に伴い、
地方税法との規定の調整を図り、以て租税負担の
合理化と地方税務行政の改善に資するにあるとし、修正の要点は次の五つであります。
第一は徴収猶予の制度を設けることでありまして、納税者又は特別徴収義務者が罹災、盗難、廃休業、疾病、事業上の甚大な損失等により、又は一年以上た
つて課税されたことにより、一時に納税することが困難なときは、その申請により一年以内徴収猶予の途を開き、この場合には担保を徴するものとし、期限内に納税しないときはこれを換価して税に充当することができるものとするのであります。
第二は、納税者又は特別徴収義務者が地方団体の徴收金を滞納した場合において、その所有する同族会社の株式又は出資が換価できず、且つ滞納者の他の財産について滞納処分をしても徴収できないときは、地方団体において、その同族会社に対し、滞納者の所有する株式又は出資の時価の限度内において、納税義務を負わせるものとすることであります。
第三は、納税者又は特別徴収義務者が滞納した場合において、差押を免れるために、故意に親族その他使用人等特殊関係ある者又は同族会社に財産を贈與し、又は不当に低い価額で譲渡し、且つ滞納者の他の財産について滞納処分をしても徴収金の徴收ができないときは、財産の贈與又は譲渡を受けた者に対し、その財産の時価の限度内において納税義務を負わせるものとすることであります。
第四は、納税者又は特別徴収義務者が納税管理人を定めないで、当該地方団体の区域内に住所、居所、事務所、事業所等を有しなくなつたときは、繰上徴収をすることができるものとすることであります。
第五は、租税特別措置法の
改正に伴い、銀行預金の利子等にかかる所得税で源泉課税したものについては、市町村民税を課さないものとすることであります。
本委員会においては、右の
改正案並びにその修正について連日会議を開き、各種資料の提出を求め、填重に審議を行いました。先ずこの法案と密接の関係を有する地方財政平衡交付金の問題が論議されました。御承知の通り
昭和二十六年度の
予算に計上された平衡交付金の額については、内閣は千百億円を計上し、地方財政委員会の勧告一する千二百九億円との間に著しい差があり、若しこのままで推移すると地方財政の窮乏はいよいよ甚だしく、延いては地方自治を混乱に陷れる虞れがあるので、各委員と地方財政委員会並びに大蔵、文部、労働各省
政府委員等との間に、意見の相違点並びに増加額算定の基礎について詳細に亘る検討が行われました結果、地方財政委員会の勧告通り交付金の増額計上を必要とする結論に達し、これを
予算委員長に要望する措置をとりました。
次に
政府の税制改革に対する根本方針、今回の
改正案とシヤウプ第二次勧告との関係、
改正案による税の増収見込額、経済情勢及び物価騰貴の税収に及ぼす影響、道府県税制の欠陷に対する是正方策、地方税徴収の実績、徴収猶予制度の
運用、国民健康保険税を創設する理由等に関する質疑応答が行われ、次いで凾條審議に入り、各委員に
政府当局との間に活溌な質疑応答が行われましたが、これらの詳細は速記録について御覧を願うことといたし、ここにその主なる事項の二三を御紹介いたします。西郷委員から、今回の提案は税法の最終案かとの問に対して、岡野国務大臣から、税法の研究は困難であり、一面において新
地方税法施行の結果を見ると共に、地方行政調査委員会議の勧告等を検討する必要があるので、今回の提案は手直し程度にとどめたとの答えがありました。又同委員から、徴税の実績は悪く、而も物価高騰のためにますます徴税は困難視されるのに、増収を見込む理由を質したのに対し、岡野国務大臣は、経済情勢等により増収がある見込であると答え、更に同委員から、道府県税は浮動性が多いが
対策如何と尋ねたのに対し、将来根本改革の際研究する旨を答えました。次に中田委員から、まだ実施しない附加価値税に
改正を加える理由を尋ねたのに対し、
政府当局から、従来保留若しくは研究中であつたものを取上げ、又はシヤウプ勧告の主旨を取入れるために
改正するものであるとの答弁がありました。入場税と遊興飲食税については、西郷、竹中、中田、小笠原各委員から、何故にこれを軽減しないかとの理由並びに軽減した場合の税収見込等について質疑を行なつたのに対し、岡野国務大臣並びに
政府委員から、この税は漸減の方針であるが、重要財源であるから、代りの財源なき限り現在のままとしたい。仮に軽減したとすれば、入場税は下げた税率の半分減収となり、遊興飲食税は率によ
つて収入が変るので、率を下げても収入は確保し得るとは考えられぬとの答弁がありました。市町村民税について高橋委員から、今回の
改正による減収見込を尋ねたのに対し、法人で四十一億円を増し、個人で八億円を減じ、差引三十三億円の増収となり、結局市町村民税の総額は五百七十一億円となる旨の答えがありました。又国民健康保険税の創設に対しましては、特に厚生大臣の出席を求めて、高橋、吉川、小笠原、堀の各委員からの質問に対し、黒川厚生大臣から、国民健康保険の事務費は全額国庫負担としたが、給付費の一部国庫負担は
実現を見るに至らなかつた。今回これを税とするのは、社会保障制度への一歩前進であるから、今後も大いに努力するとの答弁がありました。
以上の
政府原案に対し、衆議院は若干の修正を加えて可決し、三月二十八日を以てこれを本院に送付して参りました。衆議院の修正点を挙げれば次の通りであります。
第一は遊興飲食税について、大学以外の学校生徒兒童等の修学旅行の場合の旅館における飲食及び宿泊に対してはこれを非課税とすること。
第二は市町村民税について、一、非課税の範囲に健康保険組合、国民健康保険組合及び農業共済組合並びにこれらの連合会、漁船及び木船の保険組合並びに森林組合、農業水
産業の協同組合、消費生活協同組合又は
中小企業等協同組合若しくは連合会で政令の定めるもの、公務員の団体等を加えました。二、個人均等割の標準税率及び制限税率を現行よりそれぞれ百円ずつ引下げました。三、法人税割の標準税率百分の十を百分の十五に、制限税率百分の十一を百分の十六に引上げました。
第三、事業税について、非課税の範囲を森林組合、農業水
産業の協同組合、消費生活協同組合及び
中小企業等協同組合又は連合会で政令の定あるものが行う事業並びに政令で定める新聞業に拡大したわけであります。
委員会においては前尾衆議院地方行政委員長かち修正の
趣旨について説明を聞き、更にこの修正による税政の増減見込を尋ねましたところ、減収見込額は、遊興飲食税において四千万円、市町村民税において非課税の範囲の拡大によるもの六千万円、個人均等割の引下げによるもの十七億七千二百万円、事業税において協同組合等の非課税によるもの一億二千万円、新聞業の非課税によるもの三千万円、合計二十億二千二百万円であり、増収見込額は市町村民税法人税割の引上げによるもの二十億五千四百万円であるとのことでありました。又政令で定める新聞業には日刊紙を予定し、雑誌を除く旨の説明がありました。更に堀委員から新たに法人税割を設けた理由及びこの税率を衆議院で修正したことに対する所見並びにこの法案と関係ある事務再配分の実施に対する見通し等を尋ねたのに対し、岡野国務大臣から、資本蓄積のためには非課税を可とするが、個人負担との均衡を保つため、
政府は原案を適当と認めた。併し衆議院の修正もこの程度ならば堪えがたいとは思わない。又将来更にこれを増税する意思はない。なお事務再配分は第三次勧告の出るのを待
つて善処するとの答弁がありました。最後に委員長から、衆議院の修正案によれば、市町村民税の非課税団体中に水
産業協同組合共済会が漏れているが差支ないかと質したのに対し、
政府当局から、この団体は他の非課税団体と同性質であるから、農業共済組合と同様に措置する
ように善処するとの答弁がありました。
以上を以て質疑を終了し、討論に入りましたところ、小笠原委員から、社会党としては幾多の主張を持
つているが、すでに衆議院で修正可決した法案であるから、遺憾ではあるが賛成の意を表明する旨の討論がありました。次に高橋委員から自由党を代表して、本案に賛成するが、
政府は行政事務の再配分を促進し、
地方税法に再検討を加え、特に入場税及び遊興飲食税の軽減、市町村民税及び事業税の非課税範囲の拡大を図り、更に国民健康保険制度に対する国庫の負担を増大し、法人税割の運営に完璧を期する
ように要望するとの討論がありました。次いで採決に入りましたところ、全会一致を以て衆議院の修正通りこれを可決すべきものと決定いたしました。
右御
報告申上げます。(拍手)
次に
地方財政平衡交付金法の一部を
改正する
法律案について御
報告申上げます。
今回内閣がこの法案を提出した理由は、昨年度創設された地方財政平衡交付金制度は全く新らしいものであるので、その運営の実績を検討した結果、差当り必要な二三の点について
改正を加え
ようとするものでありまして、その内容はおおむね次の通りであります。
第一は基準財政収入額の算定に用いる基準税率について、現行の標準税率の百分の七十とあるのを百分の八十に改めるのであります。その理由とするところは、平衡交付金の算定額は基準財政需要額から基準財政収入額を差引いた額でありますが、
昭和二十六年度以降は、給與基準の改訂その他によ
つて、全地方団体を通じて確保すべき最小限度の所要財源は更に増額を余儀なくされ、かたがた地方税収入はますます偏在する傾向にありますので、一面には基準税率を引上げることによ
つて全地方団体を通じて保証すべき基準財政需要額を引上げることとし、これによ
つて税収入の乏しい団体にも相当の財源を與え、半面には、各地方団体の基準財政収入額の算定に加える割合を引上げることによ
つて、地方税収入の偏在する地方団体に対しては交付金を交付しないこととし、以て地方財政平衡化を一歩前進させたいというのであります。
第二は、都等の特例について
改正を加えることでありまして、現在交付金の算定に関しては、都を道府県とみなし、特別区の存する区域を市とみなしていますが、こうして算定された結果をどう計算するかということについては明文を欠いているので、今回、法の精神に則
つて新たに規定を設け
ようとするのであります。
第三は、基準財政需要額の算定に用いる単位費用は
法律で定める建前でありますが、差当り
昭和二十六年度においても二十五年度と同様地方財政委員会規則で定め、又厚生労働費にかかる測定単位は二十六年度においても委員会規則で特例を設けられることとするのでありまして、その理由は、これらは現在なお研究の段階にあり、又は補助金の整理及び行政事務の再配分が確定しない状態にあるから、本年度と同様にしたいというのであります。
第四は、
昭和二十六年度においても、地方財政法、予防接種法等の国費地方費の負担区分に関する規定の適用を停止することでありまして、その理由は前項とほぼ同様であります。
地方行政委員会におきましては、種種重要なる質疑応答を交しましたが、その二三を紹介いたしますと、標準税率の百分の七十を百分の八十に改めることについて、鈴木、西郷、石村の各委員から、その差額は幾らであるか。差額の全部が弱小団体へ廻ることになるか。結果において交付金が減ることになりはせぬか等の質疑があつたのに対し、
政府委員から、差額は税収二千八十七億円の約一割に当る二百億円と見るが、その全部が各弱小団体に廻るのではない。財政需要は団体によ
つて大差はないが、税政には大差がある。弱小団体は需要の八〇%を保証されるので楽になる。併し交付金の総額に変りはないとの説明がありました。
次に西郷委員から元来交付金の総額が少いので、苦肉の策として基準財政収入の基準税率を上げたのではないか。その結果、現行の自由財源たる百分の三十を百分の二十にすれば、地方財政を圧迫することにならぬか。
政府は先ず交付金の増額に力を盡すべきではないかとの質疑があつたのに対し、岡野国務大臣から、交付金増額には努力する。七〇%のほうが自由財源の点では望ましいが、それでは徴税意欲を弱くする虞れもあり、一面、財政需要の増大に苦しんでいる税収入の少い農村に財源を與え、他面、税収入の偏在する地方団体に交付金を交付しないこととして平衡化を前進させる必要に追られたのであり、又努力すれば八〇%としても徴税が向上して自由財源を得られるであろうとの答弁がありました。小笠原委員から、この
改正は地方財政を圧迫するから時期尚早ではないか。又単位費用の定め方を二十六年度も規則で規定するのは国会軽視ではないかとの質問に対し、岡野国務大臣は、まだ
法律で定めるだけの自信がない。実績に徴して
改正する必要があるので、明年度に限
つて規則で定めたいのであるとの答弁がありました。最後に高橋委員から、朝鮮動乱の勃発により地方税収入に異状を来たしたことが平衡化の必要を生じたのであ
つて、この
改正によれば、農村地方の配分が増加し、大
都市方面が減ることとなると解してよいかとの質問に対し、おおむねその通りとの答弁がありました。
その他幾多の重要な質疑応答が行われましたが、速記録によることをお許し願います。
次いで討論に入りましたところ、西郷、竹中、小笠原の三委員から、お手許に配付いたしました修正案が提出されました。この意味するところは、即ち基準財政収入の基準税率を百分の八十と
改正するのを取りやめ、現行通り百分の七十にとどめることを意味するのでありまして、西郷委員の提案理由の説明によれば、今回
政府が提出した標準税率の百分の七十を百分の八十に改める案については、当委員会においてしばしば質疑を試みたが、
政府の答弁に確信が認められないので、この
改正規定を留保する意味において修正するというのであります。次いで竹中委員より、昨年制定したばかりの規定を又
改正することに疑いを持つので、修正に賛成するとの賛成意見が述べられました。これに対して、高橋委員はこの修正案に反対する旨を明らかにし、地方財政の現状を見るに、
地方税法制定後、朝鮮動乱が起
つて、経済情勢は変り、大
都市方面と農村地方の税収入に大差を生じたので、これらの地方団体間に財政調整を加える必要があるので、
政府原案に賛成するとの討論がありました。
次に採決に入りましたところ、修正案に賛成する者六名、反対する者五名となり、多数を以て修正案が可決せられ、次いでこの部分を除く原案は全会一致可決となりました。よ
つて内閣提出案は多数を以て修正可決すべきものと決定された次第であります。
以上御
報告申上げます。(拍手)