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河井彌八君
只今議題になりました
皇室経済法施行法の一部を
改正する
法律案、
日本国憲法第
八條の
規定による
議決案、この両案につきまして、
内閣委員会の
審査の
経過及び結果を御
報告申上げます。
両
案共に
予備審査と共に
委員会を開くことが二回、なおその間に
宮内庁当局との
懇談会をもいたしまして、両案いずれも
全会一致を以て可決すべきものと
議決いたしたのであります。先ず
皇室経済法施行法の一部を
改正する
法律案について
簡單に申述べます。
皇室経済法施行法の一部を
改正する
法律案は、その第
七條の、即ち
内廷費の二千八百万円とありまするのを二千九百万円と改めること。第
八條中に
皇族費六十五万円とありまするのを、七十三万円と改めることであります。而してこの
改正は
昭和二十六年四月一日から施行する。こういうことにな
つておるのであります。その
内容を少しく
説明申上げますれば、
皇室諸般の御
費用は
憲法第八十
八條の
規定に基きまして、すべて
予算に計上して
国庫からこれを
支出することにな
つておるのであります。その
皇室の御
費用の中で、只今申しました
内廷費及び
皇族費は、これは
皇室経済法の
規定に基きまして、
法律の定める
定額によ
つて毎年
国庫から
支出することにな
つておるのであります。
皇室経済法施行法第
七條及び第
八條、只今読みましたその第
八條は、これらの御
費用の
定額に関する
規定でありまして、
規行法によりますれば、只今申しましたように、
内廷費は二千八百万円、
皇族費の
年額の
基準額が六十五万円ということでありまして、これは
昭和二十四年度の当初において決定せられた額であります。
内廷費と申しまするのは、
天皇、皇后、皇太后、皇太子及び
内廷にいらせられるその他の
皇族の
日常の御
費用等でありまして、
皇族費と申しまするのは、その以外の
皇族、つまり現在で申しますと、秩父宮、高松宮、
三笠宮、この三宮家の御
費用でありまして、すべて
皇族に対しまして、
皇族としての
品位を保持するために必要な
経費であるのであります。そしてその
基準額は既婚の親王に対する
支出を
基準額としてきめておるのであります。即ち只今申しました六十五万円というのが、その
基準額であります。そこで今度の
改正案は、
内廷費である現在額の二千八百万円を百万円
増加いたしまして、二千九百万円と下ること。又
皇族費の
年額の
基準額である現在額六十五万円を八万円
増額いたしまして、七十三万円といたすということでありまして、これは総額で申しますると、現在額がおよそ三百四十一万円であるのを四十二万円
増額いたしまして、約三百八十三万円といたそうというのであります。以上が只今申しました
内容の
説明であります。然らば何が故にかような
増額を必要とするかと申しますれば、これは先に
国家公務員の
給與改訂が実施せられましたので、
皇室費に関しましても、
内廷とそれから
皇族の御使用しておられる
職員について、
国家公務員並みの
給與改訂をいたすことが必要であるということを認めたからであります。
委員会におきましては、これらの
費用の
内容につきまして、
愼重に
審議をいたしたのであります。そこで
政府の
説明によ
つて明らかになりました点を大要申上げますると、
内廷費及び
皇族費は、これまで二回に
亘つて増額せられておるのであります。即ち
内廷費は
昭和二十二年度は八百万円でありましたが、二十三年度には二千万円になりました。二十四年度にな
つて今日の額、即ち二千八百万円に
増額せられておるのであります。
皇族費につきましても、その
年額の
基準額が
昭和二十二年度におきましては二十万円であ
つた、これが二十三年度におきましては三十六万円となり、二十四年度におきまして、現在額の六十五万円に
増額せられておるのであります。この
増額は、これまでは
物価騰貴に伴いまして、当然必要とせられるところの
人件費及び
物件費についての
引上であ
つたのであります。ところが今回の
改正案におきましては、
内廷費及び
皇族費の
年額、これの
引上は
人件費及び
物件費の両面に
亘つての
増額ではありませんので、
物件費はそのままに置いておきまして、
人件費の面だけについての
増額であるのであります。即ち
国家公務員の
給與ベースが改訂せられましたので、これに準じて
内廷及び
皇族の御使用しておられる
職員について、
国家公務員並みの
給與改訂をいたそうというのであります。
従つて、三
陛下及び
皇族の
かたがたの御
自身の
日常の御
費用の
増額というものは含まれていないということになるのであります。その
理由は、
昭和二十四年度以降の
物件費の値上げというものは、国の
予算の上においても見積られていないからであるというのであります。さような次第でありまして、従来の
改正、即ち
増額は、
人件費及び
物件費両方に
亘つての
増額であ
つたのが、今度は
人件費のみのものであ
つて、
物件費について言いますれば、まだそのままに残
つておるという形であるのであります。従いまして、
政府当局の
説明によりましても、三
陛下の御
日常は極めて質素な御模様であるということに承わ
つて、深く一同の心持が打たれたのであります。併しこれは
陛下御
自身の御
希望でもあるのでありまして、決して多額の
費用を使わないという御趣意は本当に徹底して
伺つたのであります。即ち今日の
国民の
生活の窮迫している
状態に鑑みまして、どこまでも質素に御
生活をなさろうということであるのであります。
皇族費にいたしましても、これは申すまでもなく
皇族の
品位を保持するために
支出するもので、そういう建前とな
つておるのでありまするが、これは全額ではなくて、八五%を限
つて計上されるということにな
つております。この
必要経費は実際の
日常生活において必要とする
経費ではなくて、
予算上一定の
算定基礎に基いて算出せられてある
金額であります。従いまして実際の御
費用というものは、この
予算上の
必要経費を相当上廻
つておるという事実が明らかであるのであります。そういうわけでありまするから、
委員会におきましては、いろいろ
質疑がありました。その主なものを申上げますると、
昭和二十二年度において
内廷費や
皇族費の
金額が定められた当時は、内外の
諸般の
情勢に鑑みまして、
最小限度の
予算というものを
作つて、その作られた
予算に
賛成をいたしたのであるが、今日においては
情勢も大分変
つて来ておる、それであるから、
日本国の
象徴としていらせられる
皇室関係に対する
費用は、どうしてもそれ相当な
尊嚴を保つに足るだけの
金額であ
つて欲しいという
国民感情でありますが、その
感情を吐露して、
政府はどう考えておるかというような
質問が主なものであります。
政府におきましては、
内廷費及び
皇族費が決定しました
昭和二十三年と今日とは全く
情勢が変
つて来ておるし、今日から見れば、その額は極めて不合理であるということを認め、殊に
講和條約が成立せんとする場合においては、なおその
金額が足りないというような
事情もよく了解しておるけれども、併し今度は軍にこの程度にとどめて置きまして、そして
昭和二十七年度からは、新らしい見地から更にこの
費用を考え直そうということを申したのであります。或いは又かような苦しい御
生活をなす
つていらつしやるならば、定めて
皇室には相当な
資産を持
つていらつしやるであろうというような
質問などもありました。併しこれは御承知の
通り、すべて
皇室の
財産は国に帰属しておるのであります、
憲法の
規定に書いてある
通り。それでただ千五百万円が
皇室にとどめ置かれるということが認められたのでありまして、それだけである、これがいろいろな
経理の
関係で以て、二千万円ぐらいに近くな
つておるという工合な
答弁であ
つたのであります。どちらにいたしましても、
皇室のこの
経済というものは極めて窮屈なものであるということが明らかにせられた次第であります。かようにいたしまして、
討論に入りましたところが、
竹下委員から、
昭和二十二年当時の
内廷費及び
皇族費の
金額がきま
つたそのときの時勢から申しますれば、
皇室に対する外国からの認識も、
国民の
考えかたからも、遺憾ながら
予算が少額であ
つても、これに
賛成せざるを得なか
つたのであるが、併し今日は全く世の中が変
つて来たのであ
つて、国の
象徴としての地位を保つに十分な
予算を見積ることが正しいと思う、これが真に
国民の持
つておる
希望であるというふうに考える。であるからして、それから又これは
日本の
国家の体面を保つ上においても極めて重要なことであ
つて、かような意味において今回は十分ではないということを認めながらも、これに
賛成する、併し早い機会に適当なる
改正をするようにして欲しいということを述べて
賛成意見を陳述せられたのであります。又
梅津委員からも、
皇室がこの
日本の
象徴であるということから考えるならば、その
皇室のあり
かた及び今後
如何にあるべきかということについて十分なる検討を遂げ、そうしてそれにふさわしい
費用を計上せらるべきものである。で、今回の
改正案においても
皇室費の
増額はこれは
賛成するけれども、併しその根本に遡
つてよく考えた
増額が必要であるという強い
意見の陳述があ
つたのであります。
かくのごとくいたしまして、
採決をいたしましたところが、
全会一致を以てこの
改正案は可決すべきものと
議決した次第であります。
次に、
日本国憲法第
八條の
規定による
議決案について申上げます。これは「
天皇及び
皇室経済法第四條第一項に
規定する
皇族は、
皇室経済法施行法第五條に
規定するものの外」、
規定するものと言いますのは、百二十万円であります、そのほか「
見舞及び
奨励のために、
昭和二十六年四月から
昭和二十七年三月末までの間において、二百五十万円をこえない範囲内で
賜與することができる。」という
規定であります。
憲法第
八條におきましては、
皇室がほかから、
財産を讓り受け、或いは
皇室が
財産をほかに讓り渡す、又は
皇室から
賜與する場合においては、
国会の
議決を要するという
規定があるのでありまして、その
規定に基きましてこの案が出たのであります。そして
皇室経済法第二條によりますると、
天皇その他
内廷にいらせられる
皇族が、一年内になされるところの
賜與又は
讓受の
財産の価額が百二十万円に達した後は、その後の
期間においてなされるものは、すべて
国会の
議決を要するという
規定があるのであります。即ち
憲法第
八條の
規定に基いて、かような
規定ができておるのであります。併しながら、これらの
かたがたが、特に
災害の生じた場合に
罹災者に対する
お見舞をなさるとか、或いは又各種の御
奨励のためになされる
賜與の額というものが、一年に二百五十万円近くになると見込まれておるのでありまして、
災害に対する
お見舞のごときは実は初めからは予定することはできませんけれども、実際の必要に臨んで
賜與する、それが一々
国会の
議決を要するというようなことは、これは到底不可能でありまするから、ここに一括して二百五十万円を
限度とする
議決をして欲しいと、こういうのがこの案の
内容であります。それですでにこれは、この
経費はどこから
支出するかと申しますと、先に申上げました
内廷費のうちから
支出せられることにな
つておるのであります。この
内閣委員会におきましては、前に申したと同様に、この
議決を経べき二百五十万円の
内容につきまして、
愼重に
審議をいたしたのであります。この二百五十万円の
内容につきましての使途につきましては大体二種あります。即ち御
奨励の
関係と
救恤の
関係、この
二つであるのであります。この御
奨励と申しますのはどういうことかと申しますと、大体は
社会事業に対する御
奨励である。それから又学術の御
奨励或いは
日本古来の特殊の
芸術(「
簡單に願いますよ」と呼ぶ者あり)
古来の特殊の
芸術等の御
奨励であるのであります。それから
救恤関係におきましては、風水害、火災或いは
鉄道事故とか、たくさんのそういう
事故が頻々と起
つておりますが、それに対する
救恤であるのであります。大体この
金額はこれで十分であるかどうかという問題につきましては、
昭和二十三年の額におきましては、百八十万円であ
つたのが、そのときには
支出額が八十七万円であ
つた。
奨励の
支出が八十七万円、
お見舞が四十万円、
合計百二十七万円であ
つたということであります。二十四年度におきましては、
議決額が二百五十万円に
引上げられたのでありまするが、その額に対しまして、実績は
奨励費が百六万円、それから
救恤が二十一万円、
合計百二十七万円であるということであります。これらの詳細に亘りましては、表をと
つて、それについていろいろと十分な
審議を遂げましたのでありますが、すでに前年度におきましても、二百五十万円ということが決定しておるのでありまして、別にそれと
違つた金額であるのではありません。従いまして、
委員会におきまして
質疑応答がありましたが、余りにこの
賜與の額が、或いは
奨励或いは
救恤の
金額が少いということであ
つて、それではききめがないではないかというようなこと、或いはそれならば、むしろその
費用は
皇室の御
経費のほうへ廻してしま
つたほうがよくはないかというような
議論等もあ
つたのでありまするが、併し
皇室としてさような
お見舞をなさること、或いはそういう御
奨励をなさるということは本当に結構なことであるということに一致したのであります。それから又
日本の
古来の特殊の芸能、即ち雅楽であるとか、或いは蹴鞠であるとか、或いは御歌会であるとか、そういうものの
費用に供せられる、そういうものの
奨励に供せられるということも極めて必要である、こういう結論にな
つたのでございます。併し一方におきましては、こういうものは国の
予算で以て、例えば文部省の
予算等にこういうことを十分に計上して、そうしてこれらの
古来の
日本の
芸術を
保護すべきであるという
意見も強く述べられたのであります。
政府におきましても、それらの点につきまして、十分な考慮をして研究をして見ようということでありました。かような
経過を経まして、
討論を省略いたしまして、
採決することにいたしました。その結果
全会一致を以て可決すべきものと
議決いたしました次第であります。
これを以て
報告を終ります。(
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