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森崎隆君
只今から
暫らく時間を頂きまして、
浅井人事院総裁に御
質問を申上げたいと思います。
勤務地手当につきましては、
御存じのごとく昨年末
一般職員の
給與法の
改正によりまして、基本の
事項は一応
決定されましたが、これが
支給地域の区分については、未だ
人事院よりの
勧告がなされていないのであります。
只今政府案による五分引、三段階の
暫定措置が現在とられておるのでありまして、この
勤務地手当につきましては、昨年八月九日でありましたが、
人事院総裁の
勧告案の
説明の中に、読んで見ますと、「
勤務地手当と
扶養手当とは、若干の
意味の違いはあるが、共に
現実の
生活に即して
給與を
調整することを
目的とするものであ
つて、
給與水準の
上昇に
伴なつて漸次俸給に繰入れられるべきものである」云々と書いてございます。この
説明は誠に当を得たものであると思います。即ちこれを要約いたしますと、第一には、
現実の
生活に印して
給與を
調整するということ、第二は、
給與水準上昇に
伴なつて基本給の中に繰入れられるべき
性質を持
つておること、この二つになるわけでございます。
即ちこの一の場合は、
公務員各自が勤務しておる
地域の諸
條件に即応いたしまして
給與を
調整するということでございまして換言いたしますれば、
公務員がその
勤務地において国民への奉仕の義務を十分に果し得るための
最低の文化的・健康的な
生活を保持するために、
現行給與のあの
劣惡性を補正する
目的を持つことであります。特に
現行の七千九百八十一円という
給與水準は、
御存じのごとく幾多の
矛盾と不合理を包蔵しております。その実施に当りましては、
人事院の発した
指令第一〇〇号並びに一〇一号を以てしましても、到底その
欠陷を完全に補うことはできない。而も一方におきましては、
民間給與との大きな
落差を現在生じております。私の記憶では、
給與ベースにつきましても、現在確か本年の一月の全
銀連の調査を思い出しまするが、六大銀行に働いておられる大体三十歳に達する行員の人々の
平均が一万六千円
程度だと私記憶しております。又
日本船舶の全体の
給與ベースが大体これも一万六千円、
公務員の
給與べースの大体倍にな
つております。特に三越なんかにおきましては一万八千円
ベースにな
つておる。
平均が
公務員の倍を上廻ること二千円にな
つておると私記憶しておりますが、こういうふうな物凄い
落差を現在生じております。結局
公務員の
最低生活を現在保証できない。こういう今日におきまして、この
勤務地手当の持つ意義というものは現在ほど大きいときはないと私は
考える次第であります。
更に二について、
給與水準の
上昇に
伴つて本給に繰入れられるべき
性質のものであること、これは当然でございます。ただここで大切なのは、
給與水準の
上昇ということはどういう
意味であるかということを
はつきりと見なければならないと思います。勿論、
終戰以来、二十一年三月のあの六百円
暫定措置を初め、数度に亘りまして、現在まで
給與ベースの
改訂がなされて来たのでございまして、一応これは形の上では
上昇、いわゆる
ベースの
改訂ということはなされておりまするが、これは飽くまで私たちから申しまするならば形式的な
改訂を
意味するものにほかならないのであります。即ち言い換えまするならば、若し経済が安定いたしまして、物価が
はつきりと固定いたした、そういう基礎の上に立ちまして
ベースが
改訂されまするならば、この
ベースの
上昇ごとにこの
勤務地手当というものがその比重をだんだん逐次下げて行きまして、いつとはなしにこれは自然消滅への道を迫ること、これは誠に結構だと私は
考えるわけなんであります。これまでのごとくペースの
上昇のこの
勧告が
政府の手によ
つて平然と無視されて参りましたり、又
ベースを
改訂した頃には、早や物価自身が先に
上昇を示しておる。そうい
つたような状態におきましては、この物価の騰貴に追い付き得るだけの大幅な
給與水準を確保できない限りは、
勤務地手当はこの場合も更に強い意義を保持しなければならないと私は
考えます。 (
拍手)特に昨年六月以後、朝鮮の戰乱及び世界的な軍備拡充の煽りを食いまして、いつも大蔵大臣におかれましては自慢されておりますあの健全財政という、あの基本線に立ちまして諸施策をされておるにもかかわりませず、国策の基本的な錯誤より生じたインフレの高進しつつある現在におきましてむしろこの種の手当の増額をすること自身が昨年浅井総裁がなされました八月の
勧告案の御趣旨の線に合致するものであると私は
考えるわけなのであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)我が社会党が最高三〇%六段階案を貴職に要請いたしまして、少くとも昨年末まで実施されておりましたあの既成の
比率の上に良心的な補正を加えられまして、それに伴う予算
措置も併せて
政府に要望いたしましたのも、実に
人事院の
勧告の基本的な意義の上に立
つての良心的な我々の
決定なのでございます。
質問に先立ちまして、賢明なる浅井総裁に、このように長々と長口上を申上げましたのは、別に他意があるわけではございません。
勤務地手当の真の意義を、又その正しい使命を
はつきりと再認識いたしまして、一方ではすでに政治問題化いたしておる。更には、さる政党の或る人々の手によりまして選挙運動にこれが惡用されんとしておる。(「どこの党だ」と呼ぶ者あり)他方においては全国各地より熱烈なる要望が現在集中されておる。この際、
人事院が毅然たる態度を以て、
公務員の
給與の
責任者として、適正なる御
研究、御
措置をされまして、その使命を果されんことを熱望するからにほかならないのでございます。
質問第一、経済情勢の現在のこの状態におきまして又
勤務地手当の前述の意義と二つを
考え合されまして、我が党の最高三〇%六段階案を支持
勧告される御意思がありましようか。ありとすれば結構でございまするが、若し他に
意見がありますならば、その反対の理由をお聞かせ願いたいと思います。
質問の第二、
勤務地手当の
給與水準のうちで占める
比率は、六千三百七円
ベースの実施当時では大体一一・五%、
平均で七百二十六円でございます。これが二十四年九月十五日現在昇格等によりましてだんだんこれが高くなりまして、この二十四年九月十五日現在では一二・二%、
平均金額一人当り七百九十五円にな
つております。更に二十五年度の予算においては、一般職につきましては九百五十一円を組んでおる。これが昨年の八月の
勧告案におきましては、いわゆる八千五十八円水準におきましては八・九%に引下げられて、
平均七百二十四円にな
つておる。更にこれが
現行の
政府案によりますあの
暫定措置におきましては、七千九百八十一円水準で八・八%、七百円にぐつと切下げられております。この数字を見まするならば、
人事院の
勧告は八千五十八円水準において
地域給の大幅の切下げを断行しておるのであります。而もその基礎は昨年六月以前の資料に置かれております。そうしてこの
勧告案は昨年八月上旬に出されましたが、国会の議決がなれさましたのは昨年の十二月十六日でございます。この長い期間の間には御
承知のように日本経済に大きな変動がありましたにもかかわりませず、
勧告案にはその後これに何らの修正がなされなか
つた。即ち
人事院は結果より見まして、決してお気持を申すのではございませんが、結果から申すならば、
勤務地手当についての
人事院御自身の主張を、その怠惰と薄弱なる意思のために、みずからの手によ
つてこれを蹂躪している結果にな
つておると私は
考える。更に
政府は計画的に第九国会を年末に延期いたしまして、そこで出された
政府案は、
暫定措置という名の下に五分引
平均七百円と切落しております。これはまさに無謀なるやり方でございまして、私は時流への反抗であり、
公務員生活実態の無視であると私は
考えます。而もこれには何らの正当なる理由が見出されないのであります。当時の提案理由の
説明におかれましても、
人事院案を認めた上で、
支給地域の区分が
法律で
決定されるまでは暫定的に五分引とするというだけなんで、資本蓄積政策の犠牲の一環として
公務員の
給與予算を減額する
目的以外には何ら根拠がないでたらめな
措置であ
つたと私は
考えております。若し
人事院の
勧告案が七月国会で実施されていたと仮定いたしまするならば、丁度今頃、この二月、三月頃には、日本経済の大変動に即応いたしまして、新らしい良心的な
勧告がなされるべき時期であると私は
考えます。これと逆に
公務員の
立場から申しますならば、この長い間の時間のズレの結果、全国の
公務員の受けた損害は実に甚大なるものがあると私は
考える。この五分引案というものは一日も早く断ち切られなければならないときに当りまして、聞くところによれば、
人事院の原案である七百二十四円すら、
政府の圧力の下において七百円へと切下げられる修正がなされつつあると心配している向きもたくさんあるのでございます。毎日々々
上昇するところの物価と、而も現在の俸給のこの状態とより
考えまして、遅れ馳せながらも上述の
地域給の意義に徹して、最少限度
平均八百円
程度に引上げる
措置が最も至当であると私たちは
考えるのでございますが、浅井総裁は、特に去る十日の
人事委員会におかれまして、調査資料及び
請願陳情等を十分に考慮して、すべての人の納得の行く
勧告をすると
はつきりと申されましたようでございますが、それは前述の我々の主張する
平均八百円
程度の線を確保できるような改善をなされる
意味でありますかどうか。御返答を承わりたいと思います。
質問の第三、総理府統計局が実施いたしました二十四年十一月並びに昨年の五月の特別消費者
価格の調査
報告書は、この
支給地域の区分
決定に最も重大なる又重要なるフアクターとして考慮されておるように伺いまするが、これは各地区よりの多数の
陳情請願者が異口同音に不満を表明しておりまするごとく、幾多の
欠陷を持
つて不正確のものであると私は思いまするし、これは貴職自身も認めていられるところでございまするが、然らばこれに代りまして正しい健全なる基礎資料といたしまして何を採用されるお
考えでございまするか。又現在各地の再調査をなされておるようでございまするが、勿論これは朝鮮戰乱以後の影響を検討せられるためであると私は
考えておりまするが、如何なる範囲までこの調査を進められまして、又どの
程度にこれが盛り込まれるように計画されておりまするか。これもお伺い申したいと思います。
質問の第四、これは第二、第三の
質問にも関連いたしまするが、公正妥当な
勧告のためには、第十四次で打切られまして現在に至るまで実施されておりまするところの
支給地域の区分、これに追加いたしまして、これと同等の事情又は同じ
條件にある他の
地域を生かして持
つて行かなければならないと私たちは
考えます。これまで随分こうした
矛盾の犠牲を忍んで来た
地域がたくさんございます。記憶を辿
つて二三申しますならば、例えば愛知県の岡崎市と不離一体の
関係にありますところの岩津町が全然脱落しており、又香川県の丸亀市と坂出市との間に挟まれた宇多津町という町がございますが、物価指数、
生活水準、物資の交流等、全くこの町を挟んでおる二市と同じような
條件にある
地域が全く無視されておる。更には又別のフアクターでありますが、三重県の四日市のように繊維工場とか金属工場が多数あります、この都市におきましては、現在のこれら工場の凄い景気によりまして物価はだんだんと吊上
つておりまして、その煽りを食
つておるものは誰か、実に
公務員自身であります。こういう
地域に対して特別の考慮が早急に而も強力になされなければいけないと思います。
人事院はこれらの実態を正しく把握されまして善処されることだと私は信じますが、特に総裁の御
意見のほどをお聞きいたしたいと思います。
質問の第五、これは昨年末にも山下
人事官より、
支給地域区分に関する
勧告はできるだけ年内にいたしたいと言明がありましたし、又総裁その他の
人事院の係のかたがたから、第八国会以来継続審議中もしばしば至急善処方を約されて参りましたが、第九国会も終り、本国会開会後二ヵ月を経たる今日、なお
勧告がなされていないのは一体どういうわけでございますか。
はつきりと御
答弁を願いたいと思います。勿論真摯に
請願陳情を取上げて検討中であると申されるかも知れませんけれ
ども、良心的な補足的
改訂誠に結構でございまするが、その場合といえ
ども時日には限度があるのでございます。現在全国各地区より必死の
請願陳情がなされておりまするが、押し付けられた劣惡なる
給與の下でインフレの苦しみと闘
つておる全
公務員が、如何にこの
支給地域の区分
決定に重大なる関心を持ち、更にた
つた一つ頼るところの
人事院へ大いなる期待を持
つているかは、総裁自身がよく知
つておられることだと私は思います。彼らが零細な醸金を集めまして、彼らの総意を託した
陳情団のあの一人々々の人々が皆旅費を使
つてや
つて来ておる。この旅費は実に莫大なるものでございます。(「その
通り」と呼ぶ者あり)一日この
決定が遅れまするならば、その経費は実に重大なものとなりまして、延いてはこれが末端の苦しい、たださえ苦しい
公務員一人々々の台所へ響いて行くことを
はつきりと御認識願いたいと思う。この黙視できない事実は、皆さんがたは或いは何でもないとお
考えかも知れませんけれ
ども、この大きな努力を続けておられる、彼らが必死の問題として、これを今
給與改善のた
つた一つの希望としてこれを掴んでおる、この点を特に御認識頂きたいと思います。現状のまま放置することは由々しい問題でございまして、更には来年度予算案の審議がすでに衆議院では終りそうにな
つている現在、一日も早くこの善処方を私は願いたいのでございます。大体
勧告の期日はいつ頃の御予定でございましようか。
更に附け加えまするが、若し万一にも
人事院勧告の遅延の動因が他よりの圧力のためであるというようなことが若しあるといたしまするならば、まさに
人事院の権威の問題でございまするし、
公務員の
給與の
責任者たる資格なしと、これは断ぜざるを得ないことになると思います。(
拍手)
更に
人事院の
勧告原案の漏洩等につきましても随分の流説が横行しております。私は信じたくございません。更には四月選挙と絡みまして、この
公務員にとりましては嚴粛なる問題が選挙運動に惡用されておる。そういうような意図で以てこの問題を取扱
つているところの国
会議員があるとい
つたような話も私は風の便りに聞いておる。これは皆
人事院総裁が適切なる手を適切なる時に打たなか
つたためであると私あたり
考える。今こそ
人事院がその本来の正しい姿を堅持いたされまして、あらゆる不正な圧力を排除されまして、一日も早く、誰のためでもない、
公務員のために
公務員の
勤務地手当に関しまする最も適切なる
勧告をなされまして、以てあらゆるデマや又惡質なる政治的利用者の手を排除いたされまして、
人事院の権威を
はつきりと確立されますることを希望いたしまして、
簡單でございまするが、
人事院総裁への
質問を終えたいと思います。私は更に大蔵大臣にいろいろ御
質問を申上げたいと実は思
つて準備しておりましたのでございますが、どういうことか、事前通告してございましたが、大蔵大臣が見えておられません。多分大事な本国会におきまして、本会十議におきまして
答弁するより以上に重大な使命の下に欠席されておるのだろうと私は信用いたしまするが、御本人のおらない所でいろいろ御本人にお問い申しましても、返事がない限りは私は今したくないと存じます。これは又、日を改めまして大蔵大臣の御出席を求めた上でいたしたいと思います。本日はこの点は預かりたいと思います。
以上
簡單でございまするが、私の
質問を終ります。(
拍手)
〔
政府委員浅井清君
登壇、
拍手〕