○
佐多忠隆君 ここに私は(「
大蔵大臣はどうした」と呼ぶ者あり)
日本社会党を代表しまして、
政府の
施政方針とその施策について、
吉田総理大臣以下各
大臣に対してお尋ねをいたします。
先ず第一にお尋ねしたいのは、現在の
世界危局に直面して、
吉田総理は今後の
日本経済の
体制を、システムをどの
方向に持
つて行こうとしておられるのか、この点であります。
トルーマン大統領は、昨年の暮に
非常事態宣言を発して、
共産主義の
脅威に対抗するために厖大な
軍備拡張をする決意を示し、
年頭の
一般教書でその
態度を更に全般的に明らかにしました。次いで一月十二日に議会へ送つた
経済報告書において、
アメリカとその
同盟諸国の
軍事力を増強し、
アメリカの
軍需産業を拡張し、その
基礎をなす
基幹産業の
生産力を拡充する方策を具体的に示し、
国防経済への転換を声明しました。
これより先、
アメリカではすでに昨年の九月初めに、
経済統制の
基本法として、非常に広汎な
戦時権限を持つ
国防生産法が制定されております。又
経済統制機関も必要に応じて再開され、又は新設され、
非常事態宣言後はそれらが一元的に統一されて、その機能を強化しつつあります。これらに基いて先ず信用が
統制され、次いで
軍需優先権が與えられ、民需の
使用制限という形で
割当制が広汎に実施され始めました。
年頭の
経済報告では、更に進んで
物価と
賃金の直接
統制の必要が明らかに示され、過ぐる二月二十六日には
アメリカ政府は遂に
物価と
賃金を二十五日夜半現在の水準で釘付けし、凍結することを決定し、発表しました。
自由企業制度的資本主義の
擁護を最も大事に考えている
アメリカにおいてすでに然りであります。
社会主義を
国是とする
イギリスでは、第二次
世界大戦当時の
非常時権限法が現在でも
非常時法令法や
需給調整法の形で生きていて、いろいろな
統制が残
つております。のみならず、最近では
軍需資材、船腹、
労働力などの不足のために、
割当制その他の
統制が新たに実施され始めました。殊に昨年末の
トルーマン、
アトリー会談で
意見の
一致を見ました
重要物資の国際的な
輸出と
割当の
統制が近く実施され、その
国際協定を結ぶために
自由主義諸国の間で
国際機関を設けることを折衝中だと言われております。かかる国際的な
環境の中に置かれて、
日本だけが依然として
自由放任の
政策を持ち続けられると
吉田総理大臣は考えておられるのかどうか。勿論私たちといえども
統制を好むものではありません。殊に
戦時中や
終戦後のあの拙ない
統制に
国民がさんざん悩まされた
経験を思い起すならば、これは絶対に嫌う
心理状態はよくわかります。併し昨今は
鉄鉱石や粘
結炭、塩、羊毛や綿花やパルプ、大豆や米麦などの食糧、これらのものの入手がなかなかうまく進捗しないで、或いは
価格が上り、又は
非鉄金属の三、四のものや、鉄鋼の二次、三次製品の二、三のものは絶対的不足すら来たしつつあります。こうなると、これらの
物資に対して、或いは
価格を
統制し、又は
使用制限や
割当を考えねばならなくなるでありましよう。かかる実情に直面しまして、
政府の
事務当局が何らかの
統制の
準備をすることに対しまして、
吉田総理大臣を初め、自由党は強い
反対態度を示して
政策を混乱させつつあるとすら言われておりますが、その真相はどうであるか。場合によ
つては
特定物資の
輸出制限すら考えなければなりませんし、生糸のごときは、昨今の
アメリカにおける
物価凍結冷に照応して、
価格の
統制を急ぐべきだと思いますが、
横尾通産大臣はこれらの問題をどう処置されるおつもりか、所見を承わりたい。
客観的な
事態は、好むと好まざるとにかかわらず、
統制を不可避なものとすることは明らかであります。今からそれを
はつきりと見通して、それに対処する方法を具体的に考究し、
準備することが、むしろ
統制を円滑に適正に運営するゆえんだと思いますが、
周東経済安定本部長官はどうお考えになりますか。少くとも
物資需給調整法の期間を延長し、
物価統制令の存続をいたし、
鉄鉱石、強粘
結炭、塩などの
輸入物資については何らかの
統制を
準備しなければなりますまい。
周東長官の
演説に言われる
物資の
需給の
調整、
物価の安定について適当な
方式による
調整措置をとる、こういうような言葉の
ごまかしでは、
事態は決して乗り切れません。そんな
ごまかしを
言つてぐずぐずしておるから、ドクター・フアインにきつい警告を突き付けられて狼狽せねばならんことになるのであります。
統制の
方式は従来の
官僚統制方式でない、業界の自主的な
統制方式を、而も
曾つての
カルテル的独占資本の
統制方式でない、
経営者と
労働者と
消費者の社会民主的な新らしい
統制方式を創案すべき時期だと思いますが、
周東経済安定本部長官はかかる新
体制を検討されておるかどうか。新聞紙の伝えるところによりますと、一月二十日に開かれた
自立経済審議会で決定した
報告書には、次のように述べられておると言われております。「現在のように国際的、
国内的な
環境が目まぐるしく変動しておる時期に、長期的な
経済計画を策定することは甚だしく困難である。併しそれと同時に、
経済政策の運営は又長期的、総合的な
基礎に立脚して、最も合理的且つ効果的に行われなければならない。その
意味からすれば、現在のように重要な時期においてこそ、長期的な、総合的な
経済計画が必要である。」、こう
報告書は述べておると言われております。この
審議会の会長は
吉田総理大臣でありますから、これは
吉田総理の
意見であると考えてよいと思います。とすれば、
曾つては長期的な、総合的な
経済計画のごときは、現在のように変転極まりない時期にはこれを立てることが不可能である。のみならず、かかるものはむしろ有害無益であるとして、葬り去つた
吉田総理が、今や我々の年来主張してやまないところの長期的、
総合的経済計画を採用されたことになり、我々の甚だ欣快とするところであります。
質問の第二点は、
我が国の
自立経済計画について、特にその目標についてであります。この
自立経済計画は
政治的自主性を回復する前提として、
昭和二十八年までには
アメリカの対日援助から離脱することを最高の目標とし、三年後には
我が国の国際収支を
アメリカの援助なしに完全に均衡することを期しております。即ち
昭和二十八年度までに
国民の
生活水準を
戦前の約九〇%に維持しつつ、十七億ドル程度の規模で国際収支を均衡させ、鉱工業生産指数を
戦前の一三一%に高め、農業では
昭和二十九年度に約一千二百万石だけ米麦を増産し、
国内自給度の向上を図ることにな
つております。
政府は
我が国経済政策の最高目標を
自立経済の達成に置いております。併し周知のように、第二次大戦後の
経済政策の最高目標は、どこの国でも
国民の完全雇用と
生活水準の引上げに置かれております。尤も
戦争直後はそうであつたが現在では非常に変
つて来て、米英その他では戦力増強であり、
日本では
経済自立そのものであるとの主張がありますが、今年の初めに開かれた英連邦首相
会議は、その閉会に際しまして、
世界の後進
国民の
生活水準を向上させることは現在最も必要であり、英連邦
諸国はこのためにできる限りの援助をする決心であると宣言しております。
経済政策の最高目標は、今もなお依然として
国民の
生活水準の向上でなければなりません。すでに
戦前から非常に低い
生活水準の下にあり、
終戦後は殊にひどく、現在でも漸く
戦前の八〇%程度に過ぎず、
朝鮮動乱以後はあまつさえ低下の傾向さえ示しつつあります。加うるに雇用の
状態は非常に悪く、
政府が定期的に発表する完全失業者数は約五十万人でありますが、一週三十四時間以下しか就業しない不完全就業者、いわゆる半失業者は八百万人を超えております。又年々新たに増加する
労働力は五十万人に達します。憲法第二十五條によ
つて、我々
日本国民は健康で文化的な
生活を営む権利を持
つております。従
つて働く意思のある者すべてに職場を與え、少くとも
戦前の一〇〇%の
生活水準を保障することこそ
自立経済政策の最高目標でなければなりません。我が
日本社会党は、それを可能にする
経済自立四カ年
計画をすでに計数的に打立てております。
周東経済安定本部長官は、かかる見地に立
つて自立経済審議会の
報告書を
根本的に修正さるべきだと思いますが、長官にその意思があるかどうかお答えを願いたい。
生活水準を
戦前の九〇%程度に近付けることで安心をし、五十万人の完全失業者をそのままに残し、雇用の増加を殆んど考えないで、
労働力の組織的、合理的配置のごときは少しも顧慮しないようなこの
経済計画を、保利労働
大臣はそのままに承認される気かどうか、保利労働
大臣の所見をお伺いいたします。こういう雇用、
生活水準を考えない
政府の
政策の結果の一例として、数カ月に亘
つて企業整備の結果としての争議を続けておる長崎の川南造船所のストライキを思い起さざるを得ません。ここでは八千人を超える
労働者諸君が非常な苦闘の下に
生活権確保の要求を出しております。而もこれに対して
曾つての社長某は追放の身でありながら、この争議に関與して
労働者の彈圧に狂奔をいたしております。保利労働
大臣はこれに対してどう対処されようとしておるのか、法務総裁はこれをどう取締らんとしておられるのか、明確にお答えを願いたい。
現在のような
世界情勢の下で
自立経済を打立てることは、
輸出を振興して單に国際収支を均衡するだけでは問題になりません。現在はむしろ更に進んで輸入を確保し、
国内資源の開発を通じて原料と食糧の自給度を向上することに重点を置くべきだと思います。
自立経済審議会の
報告書がこの点を強調していることは、我々も又全く同感であります。併しその主張が実現していないので不満に堪えないのであります。
報告書は三カ年に水力、火力を合せて九十七万キロワットの電源開発を
計画しておりますが、我々の主張のように動力の石炭ベースを電力ベースに切替えるためには、公益事業委員会の
計画によ
つてすら二百六十万キロワットの増強を必要としております。その他海運、鉄鋼、化学肥料、合成繊維等の設備の合理化や新設拡張を急がなければなりません。食糧増産については後に同志江田君が詳しく述べる
通りであります。
このように
我が国の
経済計画はすでに安定の時期を脱して、
生産力拡充の積極的、
建設的段階に大転換すべきときであります。然るに
政府においては未だ安定を固執して、瘠せ細つた規模で
自立を達成しようとしておるとしか思えません。この点について
政府の所見を明確にお示し願いたい。殊に
日本の鉱工業生産指数が、昨年の十一月は
戦前水準を突破して一一一%に達したことを
政府は誇りやかに示されたのであります。一九三六年を一〇〇とする場合、西ドイツは昨年の十月にすでに一二八%に達しておりますのに、
日本では漸く九〇%に過ぎません。又
政府は
日本の貿易の
昭和二十五年度推計実績を、
輸出は特需を含んで十億ドル、輸入は援助を含めて十一億ドルと見込み、貿易規模の拡大を喜んでおられます。成るほど過去数年に比ぶれば非常な発展と言えましよう。併し昨年一月から六月に至る半カ年の数量から見た貿易水準は、
戦前を一〇〇として、
輸出では西ドイツが七六%に達しているのに
日本は僅かに二四%に過ぎません、三割に満たないのであります。輸入では西ドイツが一〇九%という
戦前水準を突破しているのに、
日本は三四%という低いところにあります。かかる現状にある
日本経済の規模を少々引上げた形で
自立さしたとしても、それは
日本経済の合理的な
自立とは言えますまい。少くとも我が
日本社会党が主張するように、鉱工業を一六四%まで高め、国際収支バランスを約二十億ドル程度に置かなければ、
国民大衆の
生活水準を合理的に引上げ、
国民を完全雇用に近付けることはできないと思います。周東
経済安本長官は、これらの点をどうお考えになるのか、見解をお示し願いたい。
第三の
質問は、輸入の確保についてであります。
我が国経済の活力素であるところの原材料の輸入が極めて困難にな
つております今日、輸入の促進が何よりも緊要な課題であることは周知の
通りであります。
吉田総理も、
周東長官も、池田蔵相も異口同音にこのことを強調されました。このことはすでに昨年中からその必要が叫ばれておるのに、
政府の施策は何ら実績として現われておりません。昨年一カ年の輸入推計は九億ドルで、前年の実績をやや上廻る程度に過ぎません。
物価の上りを考慮に入れますならば、輸入の数量はむしろ前年より下廻
つております。
政府は昨年七月から本年六月に至る一カ年間の食糧輸入を三百二十四万トンと
計画しましたのに、昨年末までの半カ年には九十三万トンを入れただけで、達成率は三〇%にも満ちません。主要工業原料である
鉄鉱石、強粘
結炭、塩、大豆などの輸入達成率も、上半期にはいずれも同じく三〇%前後に過ぎません。
政府の施策の失敗がここに数字的に明瞭に示されております。(
拍手)そこで
周東長官も、池田蔵相も、輸入資金の確保だとか、保有外貨の活用だとか、緊要
物資輸入基金制度の設置だとか、今後の施策をいろいろと列挙されました。だが
現実の問題はもつと前進しております。
国民が
政府に聞きたいのは、もつと具体的にこの
国際情勢の緊迫化に伴
つて備蓄輸入をどうするのか、どんな
物資を幾ら、どこから入れて備蓄するのかというこの点であります。
吉田外務
大臣は、かかることは機密を要するから答えないと言われるかも知れませんが、
世界市場はあけすけであります。知らぬは
日本国民ばかりなりという川柳がはやらなければ幸いです。我々の計算によりますと、その金額は五百億を超えますが、その資金の調達を
政府はどう
準備されつつあるのか。池田
大蔵大臣は得得として、そのために二十五億円の緊要
物資輸入特別会計を設けたと言われるかも知れませんが、それを年四回転としても百億に過ぎません。それが固定化することを考えると、その半分にも廻りません。そこで我々に言わせれば、見返資金から二百五十億から五百億くらいの資金を輸入基金に繰入れるなり、外為委員会が保有する余裕外貨を基金に投融資するなり、又はそれを直接に輸入業者に貸付けるなりして備蓄輸入を急がなければなりません。事はタイミングの問題なのに、
政府は何をぐずぐずしておられるか。伝えられるところによりますと、通産省、大蔵省、外為委員会、
関係当局が三つ巴、四つ巴にな
つて小田原評定をや
つているとも言います。これでは商機を逸するのは当然でありましよう。官僚
統制の煩壇、無
責任を最も嫌うはずの自由党
政府がこのていたらくであります。
国民はこれを坐視するに忍びません。若し
関係当局との折衝に暇取
つているというのならば、こういう点にこそ
経済自主性の回復を、
講和を待たずして、緊急に而も強力に主張すべきではないでしようか。それをあえてやらないから、自由党
政府はイエス・マンに過ぎないとして
国民に愛想をつかされるのであります。(「ノー」と呼ぶ者あり)これらの点に関して明確な而も具体的な
答弁を、
吉田総理、
周東長官、池田
大蔵大臣並びに
横尾通産大臣にお願いいたします。
輸入確保についていま一つお尋ねしたい問題は、対
中国貿易の問題であります。
吉田総理はフオーリン・アフエアーズ一月号の論文で、対
中国貿易の重要性を余り過大評価してはならないと
言つておられます。成るほど対
中国貿易の最近の二、三年の状況は、
輸出において
日本貿易総額の僅かに一—二%、輸入において二形から四%程度で、誠に微々たるものに過ぎません。それでも昨年の上半期には相当の増加を示しつつありました。ところが
朝鮮動乱が起り、中共がそれに介入するに及んで、
政府はスキヤツプ覚書によ
つて、鉄鋼製品を中心とし、機械類その他の
物資の
中国向
輸出を禁止しました。これは言うまでもなく、
アメリカの
中国に対する
経済制裁、
輸出禁止の措置に同調するものでありましよう。ところが
中国に対する
経済制裁、
経済封鎖が如何に無価値であり、不可能であるかは、
我が国の先の
戦争でつぶさに
経験したことであります。
世界各国も、
アジア、アラブ
諸国は勿論、
イギリスなどの西欧
諸国に至るまで、それを見通して
中国に対する
経済制裁に反対しております。この点についてのものと突つ込んだ批評はこの際差控えますが、ただ我々が見逃せないのは、対
中国貿易中止によ
つて生ずる
我が国の打撃であります。通産省の
報告によれば、この措置によ
つて輸出において鉄鋼製品を中心とし、機械類の
輸出に相当な打撃を受けることは勿論であり、又
我が国のかかる措置に反対して、中共側が報復的措置に出るならば、石炭、
鉄鉱石などの製鉄原料、油脂原料などの輸入が困難になり、不可能になり、本年度以降のかかる
物資の
需給計画は大きな齟齬を来し、
経済再建途上の
我が国にとり重大な影響になると言われております。輸入の障害は特に大きいです。
鉄鉱石は
中国からの要輸入九十三万トンを
アメリカとカナダに振向けても、現在見込み得るものは三十万トンに過ぎません。強粘
結炭、毎四半期十五万トンの
中国からの要輸入額を
アメリカとカナダに振向けると
言つておられますが、それもなかなか困難であります。
物資の入手がなかなかむずかしく、物の入手の見込が付いても値段や運賃が非常に高く、船腹の手当も全くできない場合が多々あります。心ならずも
アメリカの対
中国政策に同調せしめられたためにこうむるかかる損失を、
政府は
アメリカに対してどう補償してもらおうと
思つておられるのか。この
物資的、資金的補償の要望又は見込を、
周東長官又は
横尾通産大臣から具体的にお示し願いたい。なお進んでは、
我が国に対する
中国貿易の重要性を改めて
認識することが必要であります。
戦前の
我が国の対
中国貿易が、
外国貿易全額のうちに占める割合は、
吉田総理も先の論文で挙げられておられるように、
輸出額において二二%、輸入類において一三%に及んでおります。今後の
中国の発展を考えるならば、この重要性は更に一段と増すでありましよう。
吉田総理のように、これを余り過大評価してはならんなどとうそぶいて、これを過小評価することは自己欺瞞に過ぎません。(「その
通り」と呼ぶ者あり、
拍手)我々はよろしく
関係当局に対してこの点を究明し、
日本が
アメリカの対中共貿易
政策に追随せしめられることは、
日本の特殊的
地位を無視するものであり、
日本経済の
自立のためには勿論、
世界の特に
アジアの平和保持のためにとらざるところであることを、この際強く主張すべきであります。(
拍手)ほかならん
吉田総理自身が、フオーリン・アフエアーズの論文に次のように断言しておられるではありませんか。「赤だろうと白だろうと、
中国は
我が国の
隣国である。地理的並びに
経済的法則は、遠い将来にはイデオロギーの違いや、技術的な通商障害を乗越えて突き進むであろうことを私は信ずる。」と。この総理の自信を遠い将来の成行きに任せず、この
経済法則を早急に確立すべく努力することこそ、
日本の
政治家が現在この瞬間において大勇を振
つて果すべき使命であると思いますが、
吉田総理の見解を伺いたい。
吉田総理は、この見地から対
中国貿易を再開し、対
日講和に
中国を引入れるべきことを
関係当局に、ダレス氏に強く要望すべきだと思いますが、
吉田総理はどうお考えになるか。
お尋ねしたいことの第四は、長期資金の確保、資金の蓄積の問題であります。貿易を振興し、生産の規模を拡大し、
経済基盤を充実するためには長期資金の確保が必要であります。それには池田
大蔵大臣を初め
政府の諸公は、ドツジ氏の教えに従
つて民間
資本の蓄積が緊要な課題だと見われます。そのために池田
大蔵大臣は減税その他の方法で企業
資本や利子附
資本に対して、殊に軍需利得に脂肥りしている大
資本に対して思い切つた優遇措置を講じようとしておられます。だが私たちの見るところによりますと、資金の蓄積を阻んでいるのは、むしろ
政府や
日本銀行が行き過ぎた金融引締めをや
つているからにほかなりません。この点を適正にするならば、貨幣
資本の蓄積のごときはそれほど重大な問題ではなくなります。むしろ問題は蓄積された資金の運用の面にあります。もつと正確に言えば、貨幣の形で蓄積された資金を
現実態の
資本に転化すること、設備投資することに問題があります。このためには特に財政資金の運用が重大問題となります。池田
大蔵大臣の
演説によりますと、
昭和二十六年度は
日本輸出銀行、農林漁業金融などによ
つて巨額の財政投資を行い、見返資金や資金運用部などを通じて、
政府資金により
産業に供給する資金は九百七十六億に上り、
昭和二十五年度の六百五十六億に対して三百二十億の増加になるとのことであります。ところが私の計算によりますと、二十五年度に比べて二十六年度は成るほど財政支出で九十三億円、資金運用部の金融債において二百億円、合計二百九十三億円の増額にな
つておりますが、その半面において見返資金が三百三十億円の減額をしておりますので、差引きむしろ四十七億円だけ財政投資は少くな
つております。ここにも
大蔵大臣の数字の魔術があります。池田
大蔵大臣と私とそのいずれが正しいかは委員会で詳しく争うことにいたしたいと思います。ただ一つ明白なことは、資金の蓄積が不足するのではなくて、蓄積された
政府資金が徒らに握り込まれ、余裕金として金庫の中で空しくあくびをしており、巨額のものが次年度に繰越されていることであります。
昭和二十六年度予算では、周知の
通り五百七十億円を超えるインベントリー・フアイナンスが無理やりに強行されております。
政府の
計画によりますと、見返資金では二十五年度末には五百三十億円の余裕金を残して二十六年度に繰越し、二十六年度末には又七百五十一億円の留保金を次年度に繰越すこととな
つております。預金部資金でも二十五年度末に六百六十六億の余裕金を二十六年度に繰越し、二十六年度末には四百三十億の余裕金を次年度に繰越します。資金の欠乏が気違いのように叫ばれておる昨今に、
政府は以上のような無理な金融引締めをや
つて、ひたすらに金融
資本の支配力確立に奉仕しております。その犠牲はすべて
労働者に、地方の農漁民に、
中小企業者に、一口に言えば
勤労大衆にしわ寄せされつつあります。かかる行過ぎた超均衡予算、超引締め金融は早急に修正され、組替えらるべきものと思いますが、他出
大蔵大臣はどうお考えになるか。財政と金融を適正にし、
国民経済に適応させるには我々がかねて主張し続けていますように、
国民経済予算を編成し、総合的な資金
需給計画を立て、
経済全体を総合的に、
計画的に運用すべきでありますが、これに関する
周東長官の御
意見を伺いたい。
長期資金の調達に関連して、池出
大蔵大臣は
日本開発銀行ともいうべきものに言及されました。これは我々のかねての主張、則ち
日本では長期資金、特に電力、海運、鉄鋼、公共事業等の設備資金の調達は民間銀行のコンマーシヤル・ベーシスには乗らないのであ
つて、国家
資本による特設金融機関によらざるを得ないという我々の主張に池田
大蔵大臣が屈伏し、追随をして来られたものとして我々の欣快に堪えないところであります。池田
大蔵大臣はこの銀行の基本構想を具体的にお示し願いたい。
最後に第五の問題として、地方財政についてお尋ねをいたします。池田
大蔵大臣は地方財政平衡交付金と地方債の発行限度を増額し、地方財政の充実を図つたと言われました。ところが地方財政委員会は
昭和二十六年度地方財政平衡交付金の総額千百億円を一千二百九億円に修正するように勧告をしております。百九億円の増額を要求しているわけであります。更に又二百七十五億円の地方債の増額の要求も出ております。地方の財政が非常に困窮している半面において、中央の一般会計はかなりなゆとりがあり、預金部資金に多額の余裕金や繰越金がある現状としては、地方財政委員会の増額要求はこれを容れて然るべきものと思いますが、どうですか。池田
大蔵大臣、岡野
国務大臣おのおのの御所見を承わりたい。
更に、平衡交付金百九億円の増額要求は、百七十八億を超える地方税の増徴を前提しておるのでありますが、池田
大蔵大臣の言われる国税地方税を通ずる租税負担の合理化とはこの増税を
意味されるのかどうか。岡野
国務大臣は地方税の増徴はやる必要がないと声明されたと伝えられていますが、とすれば、三百億円を超える平衡交付金の増額が必要となります。岡野
国務大臣はこれを容認されるのであるかどうか。一体地方財政に関して毎度
内閣と地方財政委員会の見解が食違うのでありますが、各所管
大臣は両財政の
調整をされたのかどうか、
吉田総理大臣は予算閣議においてこれをどう裁定されたのか。各
大臣の明快な御
答弁を要求する次第であります。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕