○木村禧八郎君 私は労働者農民党を代表いたしまして、
吉田首相の
施政方針演説及び池田大蔵大臣、周東安本長官の経済
演説に対しまして、御
質問をいたしたいと思うのであります。
先ず第一に
吉田総理に対しまして、
朝鮮動乱及び
国際情勢の見通しにつきましてお伺いしたいのであります。と申しますのは、インターナショナル・エコノミツク・サーヴイスの社長アルバーという人が、こういうことを言
つているのであります。これまでは
日本の経済を見通す場合、ドツジ・ラインを眺めておれば大体よか
つたけれども、最近起るかも知れない
世界大戦或いは再
軍備の情勢を考えると、ドツジ・ラインはすでに第二義的になりつつある、
国際情勢を見なければ
日本の経済の動向がわからないということを
はつきり述べております。これは軍に経済問題だけではなく、
講和の問題も、
安全保障の問題も、再
軍備の問題も、又我々がこれから審議しようとしている二十六年度予算の問題も、今後の
朝鮮動乱の動向及び
国際情勢がどうなるかということに対しての
はつきりした認識がなければわからないのでありまして、今後我々にいろいろな予算を中心として法案の審議が課せられるのでありますが、その前に先ず
政府は
朝鮮動乱及び
国際情勢についてどういう見通しを持
つておられるか、これについて確かめて置きたいと思うのであります。
この前、第九
国会において
吉田総理は、
朝鮮事変は国連軍の適切果敢の処置によ
つて事変の収束が図られつつあ
つた、本日
マツカーサー元帥みずから陣頭に立
つて全軍を指揮し、北鮮の戦闘を遂に終結せしめんとする趣きである、これにより
朝鮮全土の平和回復も速かに期待され、慶賀に堪えないと述べておられます。こういう認識の下に予算及び経済
政策を行いまして、私は少くとも五千万ドルは損をしてしま
つたと思うのであります。貿易計画その他について非常に立ち遅れておる。例えば五億ドルの外貨、これに対して一割外国の物価が上
つてしま
つた。その後においてこの買付けを行
なつたならば、少くとも私は一割損、五億ドルに対して五千万ドルは約百八十億円であります。非常に大きな浪費をしてしま
つたと思うのでありますが、この意味においても、貿易計画その他の経済
政策を立てる上においても、この
国際情勢の認識、特に
朝鮮動乱、今後どういうふうにしてこれが収束されて行くかについて、
吉田総理の御
所見を伺いたいのであります。先ほど来
朝鮮動乱は決して大戰にならないという御
意見でありましたが、それならば、これを裏を返して言えば、
朝鮮動乱を中心として、
ソ連、中国、英米等が協調できるか。恐らく
総理は第三次戦争にならないとおつしやるならば、協調の可能性がある、協定の可能性がある、平和的解決の可能性があるとお信じにな
つておると思うのでありますが、この点について御
所見を先ず伺いたいのであります。
第二は
安全保障の問題であります。先ほど羽仁君も言われましたが、
吉田総理が再
軍備について、特に
安全保障に関連して、再
軍備について軽々に口にすべきでないと言われたことについては、我々は全く同感であります。そこでお伺いをいたしたいのは、武力によらない
安全保障とは具体的に何であるか。
総理は
国民の
独立自由に対する情熱であり、
独立自由、
愛国的精神の正しき認識とその観念でありますと、
施政方針演説で述べられております。併しそれだけで
安全保障ができるでありましようか。私は第三表戦争が起
つてしまえば、
日本の経済の自立化も自主性もすつ飛んでしまう。あらゆる問題は、あらゆる計画は空中樓閣に等しくな
つてしまうと思うのであります。従
つて日本の最もよい
安全保障の途は、第三次戦争を起させないということ、
ソ連、中国、米英をして戦わないということ、これを避けるということ、絶対の平和に対して我々がこれを
努力するということ、これこそが最もよい
安全保障の途であると思うのであります。
憲法の第九條によ
つて日本は再
軍備しない、こういうことを言われておりますが、而も
憲法の前書におきましてこういう規定があることは
総理も御
承知の
通りであります。「
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の
関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであ
つて、平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと
決意した。」これが第九條が出て来た根本であろうと思うのであります。従
つて日本は平和を愛する諸
国民の公正と信義に信頼して、我々の安全と生存を保持しようと
決意したのです。
従つて如何なる意味においても我々は武力を持つべきでないし、又それが羽仁君も言
つたように、却
つてこれが安全より承脅威になる。ドイツのカール・シユミツトは、半分の
武装は十倍の破壊を伴うのであるということを言
つております。そこで私は
総理にお伺いしたいのであります。この英米及び
ソ連、中国を戦わせない、第三次大戦を絶対にこれを起させないという
努力、これに対しては、イギリス労働党の前の書記長ハロルド・ラスキー氏は、最近の米ソの対立につきまして、これは不可避的に戦争になるのではない、第三次大戦はこれを避けられるのだ、これに対してはイギリスはその調停に立たなければならん、若しイギリスが調停に失敗しても、イギリス
国民というものは人類の平和を熱願して
努力したいという記録が
世界の中に残るのであるから、イギリスはこの米ソの
戰争を起させないように、
世界の平和に
努力すべきであるということをラスキー氏は言
つております。又最近インドのネール首相の平和に対する
努力、昨年十月三日の太平洋問題調査会において述べられたあのインド首相の、第三次
戰争を起してはいけない、どうしてもこれは防止しなければいけない、こういう
熱意に対しまして、首相はどういうふうにお考えであるか。この観点から考えまして私は首相に御
質問したいのでありますが、第一に首相は、米ソを戰わせない、協調させる條件があるとお考えであるか、或いはないとお考えであるか。我々はあると考えておりますが、これは間違
つておるかどうか。首相の御
見解を伺いたい。又いわゆる単独
講和は米ソの協調を却
つて破ることになりはしないか。(「その
通り」と呼ぶ者あり)そうして第三次戦争に拍車をかけるような結果になるのではないか。この点をお伺いしたいと思います。更に又、
総理は再
軍備の問題について軽々に口にしてはいけないということを言われましたが、その半面において、池田大蔵大臣は本年一月十三日大阪駅での記者会見において、再
軍備や再
武装の問題が起
つても、二十六年度予算には彈力性があるから、増税を行わなくてもこういう費用は賄えるということを言われたのでありますが、これは平清盛の衣の下(「その
通り」「そうだそうだ」と呼ぶ者あり)から鎧の袖を出しておるところの類ではないか。(
拍手)頭隠して尻隠さずではないか。(「その
通り」と呼ぶ者あり)一方では、口ではそう言いながら、実際においてそういう再
軍備のための準備が伏在的に行われておるやに解される言動が、
言葉がありましたが、この真相はどうなんでありますか。更に又周東長官は、国連
協力の
方法として、例えば鉄鋼生産についても
国内消費を削減しても国連に
協力すべきである、こういうことを言
つておりますが、こういう戦略物資を相手国に供給するということ、意識的に戦略物資ということがわか
つていながら供給するということは、どういう
国際法上の根拠に基いてできるのであるか。又そういうことは、
世界戦争を起させないという
努力と、これは逆の方向に行くのではないか。この点についてどうお考えでありますか。
所見を伺いたいのであります。それから第三に、対
日講和の意義について首相にお尋ねいたしたいと思います。首相は
施政方針演説におきまして、「極東共産主義制圧の一勢力たるの期待をかけられつつある国際的環境にあるのであります。この
内外の情勢は自然対
日講和の
機運を促進して参り」云々と述べておられますが、この表現から見ますと、最近対
日講和が促進されるように
なつたのは、
日本を極東共産主義制圧の一勢力たらしめんとしておる、そういうところにあるのであるか。即ち極東共産主義制圧を
目的としたものが対
日講和なのであるかどうか。私はこの
言葉は非常に重大であろうと思うのです。一体制圧とはどういうことを意味するか。我々の感じでは、制圧と言いますと、何か武力を以てこれを抑えつける、我々はこういうような感じを抱くのでありますが、この
言葉は、首相の再
軍備はすでに不必要なる疑念を中外に招いておるという、そういう
総理の
言葉と矛盾しはしないか。極東共産主義制圧の一勢力と
日本がなるために
講和を結ぶのでは、ますますこれは
世界の疑惑を招くのではないか。米ソを戦わせない、全体の平和を我々は
世界に確立する、そういうふうに我々が
努力する方向と、これは矛盾するのではないか。一体この制圧ということは具体的に何を意味するか。我々は非常に不安であります。この点について
総理の具体的な御説明を願いたいのであります。今進んでおるいわゆる対
日講和は制圧の
義務を持つものであるか。その制圧の
義務に対する代償として
講和が許されるものであるかどうか。そういう
内容の
講和であるのかどうか。こういう点についてお伺いいたしたいのであります。
首相に対する
質問の
最後といたしまして、
国民生活の問題について質したいと思うのであります。首相は、
施政方針演説におきまして、
国民の
生活水準は向上しつつあると言われております。その向上しつつある、又改善されつつあると言われるその根拠はどこにありますか。これは首相が具体的に御答弁できない場合には、周東長官その他
関係大臣からその根拠について私は伺いたいのであります。
朝鮮動砧以後
国民生活水準は下
つておる
ことば明らかであります。朝日新聞の昨年十一月二十日の
世論調査によります「暮し向は去年とくらべてどうですか」という
世論調査、「よく
なつた」が一九・三%、「変らない」が二五・〇%、「悪く
なつた」が五一・九%、「判断かつかぬ」が〇・七%、「わからない」が三・一%、明らかに
生活は悪くな
つておるという、これが絶対的に多数であります。又毎日新聞の
世論調査、昨年十二月二十九日、「歳末の暮しを主婦にきく」と題して、「お宅ではこの年末は昨年とくらべて暮し向きはどうですか」という問いに対して、「楽に
なつた」が八・〇%、「苦しく
なつた」が五二・五%、「かわらない」が三五・九%、「わからない」が三・一%、無回答〇・五%、この場合においても五二%が暮し向きが悪く
なつたと回答しています。又東京都庁の調べによりますと、家計収支の状況は昨年四月から六月までは八%の余剰が出ている。これが七月—九月にな
つて五%に減り、十月は三%に減り、十一月は二%の赤字にな
つているのであります。家計が……。又安本調査によりましても、昨年四月、戦前の七九%にまで回復した
国民消費水準はその後どんどん低下しまして、九月においては七一%、十月はCPSの統計の作り方を変えまして、ここで統計作成を変えて、そうして漸く七三%にしておりますが、四月の七九%には及ばない。
はつきりと
朝鮮動乱以後は
国民の
生活水準は下
つておる。にもかかわらず首相は、これは
生活水準は向上したと言われる。周東安本長官は向上しているとは言いませんで横這いである……。横這いではない。
はつきりと下
つております。
従つて若し向上しておる、横這いと言うならば、その根拠を示して頂きませんと
国民は納得できないと思うんです。
次に池田大蔵大臣に御
質問申上げたいのであります。先ず第一に、この予算編成の基礎となりました
我が国経済の現状と見通しにおきまして、特に物価の動向について私は御
質問したいのであります。蔵相の経済
演説の中で、
日本の物価が海外の物価よりも余計に上
つていることについては注目すべきであるということを言われております。この点は私は非常に重大であろうと思います。この予算編成におきまして池田大蔵大臣は、こういう物価騰貴を予想しましてこの予算を編成されているかどうか。私はそうではないと思います。これは織り込まれておりません。昨年の十月頃の物価を二十六年度の予算を編成される基準にしている。(「その
通り」と呼ぶ者あり)
朝鮮動乱以後、安本の調べによりましても、この一月におきまして
朝鮮動乱以後、卸売物面は四〇%上
つております。これに対してアメリカ物価は約一〇%、一割であります。この物価統計はアメリカよりも
日本の統計が三〇%も多い。高い。これは何が原因でありますか。この原因についてはいろいろあります。いろいろありますけれども、私はその
一つとして、
日本が
朝鮮動乱以後インフレの新らしい段階に入
つたことが
一つの原因であると私は考えております。アメリカと
日本との物価の統計のとり方の遠い、或いは
日本がアメリカよりマーケットが狭い、又物価の基準のとり方が違う等々もありましようけれども、通貨が、アメリカでは大体連邦準備券が二百四十五億ドル見当を維持しているに対して、
日本は昨年一月の三千四百四十六億から年末には四千二三百億台になり、三〇%以上も通貨は膨脹している。この根本の原因が貿易インフレにあることは言うまでもないのでありますけれども、こういう意味で通貨膨脹を中心にして
日本の物価が上り出している。
日本は再び新らしいインフレの段階に入
つたと私は考えておりますが、池田大蔵大臣はこの点についてどうお考えであるか。先ずこの点についてお伺いしたいのであります。毎日新聞の
世論調査によりますと、「あなたは主婦として
政府にいまどんなことをしてもらいたいと思いますか」という問いに対しまして、物価を引下げて
生活を安定してもらいたいというのが三七・二%、減税が一八・五%、主食の増配が五・三%、主食価格の引下げが四・七%、給料の引上げ、遅配をなくすことが三・二筋、米価引上げが二・六%、主食統制撤廃二・二%その他一一・九%です。減税の要望よりも、物価を引下げて
生活を安定してもらいたいという要望のほうが圧倒的に多い。これは最近
朝鮮動乱以後における顕著な趣向です。その前は圧倒的に、税金が高い、まけてもらいたいという要望が多か
つたのが、最近では物価を引下げてもらいたいという要求が多いのであります。これこそはインフレの段階に入
つている明らかな証拠であります。この点を先ずお伺いしたい。
第二は、今後のインフレの動向についてお伺いしたい。池田大蔵大臣は二十六年度予算はいわゆる均衡予算であると言われておりますが、一般会計、特別会計、預金部の資金運用部及び
政府関係機関予算をひつくるめて、これはむしろ統計において一千三百九十三億の
政府資金の支拂超過になると思うのです。決して均衡予算ではありません。むしろインフレ予算であります。この点に
一つの大きなインフレ要因があります。
第三には、終戦処理費、対日援助費の比較において、二十五年度より二十六年度においては終戦処理費のほうが対日援助費より遥かに多くな
つて来ております。二十五年度においては、私の計算では、援助費が九百二十九億に対して終戦処理費が一千九十二億、二十六年度には援助費は四百八十六億に対して終戦処理費は一千二十七億、差引七百四億というものが終戦処理費のほうが援助費より多いのであります。これは明らかにそれだけ非生産的消費が多くなるということでありまして、これも明らかにインフレ要因であります。
第四には、海外のインフレの輸入であります。一ドル三百六十円の為替相場をそのまま維持しておれば、海外のインフレが高進すれば、これは、じかに
日本に輸入されて来ます。この点について私は池田大蔵大臣に、海外のインフレ防止策として円価を切上げる
意思がおありかどうか。このままにして置けば海外のインフレは
日本に……
日本は無防備でありますから、これは際限なく
日本に波及して来ます。これに対する
対策をどうするか。又
政府の余裕金、この
政府の余裕金が、今後の
国際情勢如何によ
つて、例えば警察予備隊費用の増加等々に使われますれば、これは明らかにインフレ要因になります。従いまして私は、今後、
朝鮮動乱を契機としてすでに
日本はインフレの段階に入
つておる。而も今後に今申上げたようなインフレ要因があるのであります。従
つて日本の今後のインフレの動向は決して
楽観できない。これに対して大蔵大臣はどういう
対策をお持ちであるか。又一月十三日の大阪駅での新聞記者に対する談話としまして、これまで予算したくさんの蓄積をしておるから、警察予備隊或いは再
軍備費用ができても増税を行わなくても賄えると言われましたが、その蓄積というのがどのくらいに上
つておるのでありますか。又どういう所に、どういう会計にその蓄積がしま
つてあるのでありますか。その蓄積のしま
つてある会計のポケツトはどのくらいでありますか。これも又お伺いいたしたいのであります。
更に池田大蔵大臣に対する
最後の御
質問として、税の問題についてお伺いしたいのでありますが、詳しいことについては予算委員会或いは大蔵委員会において御
質問したいと思いますが、
二つの点をこの際お伺いしたいのであります。
それは、しよつちゆう問題になります税法上の減税と実際上の減税のことでありますが、大蔵大臣は緑風会の小林政夫氏の
質問に対しまして、税法上の減税も実質上の減税も、学問上も実際上も同じことだという御答弁でありました。併しこれについては重大な前提條件があるのでありまして、若しその前提條件を大蔵大臣は言わないでこういう答弁をされましたら、これは
国民をごまかすものであります。その前提條件というのは、物価水準が同じならばということであります。物価がどんどん騰貴してしまえば、税法上の減税と実質上の減税と違うことは明らかであります。例えば基礎控除を同じにして置いて、物価がどんどん上
つて、賃金ベースが上
つたときに基礎控除を引上げなければ、実際上増税になることは明らかであります。所律が殖えたから税金が殖えたのは当り前であると言われますけれども、それは実際上の増税であります。これを税法上の減税と実質上の減税とが同じであるということは、物価が動かないということであろうと思いますが、そうであるかどうか。或いは物価が騰貴しても同じであるかどうか。この点は重大でございますから明確に御答弁願いたい。
更に資本蓄積に関連しまして、大蔵大臣は、最近ややもすると資本蓄積に便乗いたしまして、合法的脱税を認めるがごとき方策を行わんとしております。総司令部のモス歳入課長は、最近この点について鋭く指摘しております。合法的脱税を認めるならば、そういうような減税は、たとえそれが資本蓄積に役立とうとも認めるべきではない、そういう提案は否決すべきであるということをモス歳入課長は言われております。更に租税の公平の原則にとらわれることなく減税を行うと言
つておりますが、これこそはまさに民主的な財政を破壊するものであります。(「その
通り」と呼ぶ者あり)民主主義の基礎は財政の民主化にあり、財政の民主化は租税の公平化にある。これを除いて民主主義はないのであります。
従つて租税の公平の理論にとらわれることなくということは、これは民主主義を破壊するフアツシヨ財政にな
つて行くと私は思うのであります。この点、私は重大な発言であると思う。如何に資本蓄積が大切でも、民主主義の原則を曲げることはできないのであります。合法的な脱税を認めるような形において減税をしたならば、
国民の租税に対する考えは非常に悪くな
つて行くと思うのです。これは私は池田大蔵大臣の重大な失言であると思う。(「そうだ」と呼ぶ者あり)この点は私は取消して頂きたいと思います。(「まさに危険思想だ」と呼ぶ者あり、笑声)
最後に周東安本長官にお伺いしたいと思いますが、時間がございませんので、要点を申述べましてお伺いしたいのでありますが、(「堂々とやれよ」と呼ぶ者あり)周東安本長官は
演説の中で、
日本経済の自立と発展のため必要な経済規模を拡大し、併せて国連に
協力する態勢を推進すべきものであると言われていますが、これは具体的にどういうことなんでありますか。経済的に国連に
協力する態勢を、これを推進するということは経済的にどういうことなんですか。具体的
内容をお伺いしたい。これが第一であります。
それから、この経済
演説の中で述べられております
日本の経済の情勢につきまして、私は安本長官は実情を正しく伝えてないと思うのです。第一に貿易が非常に好調であると言われた。輸出は八億ドルを超え、輸入は十一億ドルを超えようと言われておりますが、これは金額から言
つたことでありまして、物に換算しますとどうでありますか。安本長官の所で出されておる経済月報本年度の一月号によりますと、
朝鮮動乱以来の物価の上昇を
考慮に入れれば、輸出数量は前年に比し極めて好調であり、同時に輸入数量はむしろ前年を若干下廻
つていると、こういうふうに報告されています。金額で言いますと、成るほど殖えているように見えますけれども、物から見るとむしろ減
つています。減る傾向にある。これは重大であると思う。こういう私は
国民を惑わするような報告はされたくはない。やはり実情は我々に今現在不利であ
つても、実際を正しく私は報告して頂きたい。
従つて物の面から見て輸出はどうである、今後どうなる、この点についてお伺いしたい。
更に、
生活水準は先ほど横這いと言われていますが、その根拠を示して頂きたい。又なぜ昨年の十月からCPSをお変えに
なつたか、何故にお変えに
なつたか。私はそう想像したくないのでありますが、この前もそうであ
つたのでありますか、この物価が上昇期になると統計操作が行われる。この
改正が行われる。なぜ十月からCPSをお変えに
なつたのか。何だか我々はそう想像したくないのでありますが、政治的な統計操作が行われたのじやないかというふうな私はどうも疑念が起るのであります。この根拠について的確にお伺いしたい。そういう操作を行わない東京都の統計と、操作を行
なつた
総理庁の統計を見ますと、非常な違いがある。例えば衣料費なんかについては、東京都のほうにおきましては非常に上
つておりますが、
総理庁の統計では今度は下るようにな
つておる。それであるから、その点、疑念を持ちますので、明らかにして頂きたいと思います。
時間がありませんので、
最後に一点だけお伺いしたいのであります。それは物価
政策であります。一月二十三日の周東長官の新聞記者に対する談話におきまして、周東長官は、今後は従来のような低物価
政策はおとりにならない、国際物価に鞘寄せして行
つて、それで又物価が上るのを放任して賃金ベースもそれに応じて上げる、こういうことを言われております。新しい物価
政策をとられる、これは私はインフレ要因の
政策だと思うのです。先ほど申上げましたように、インフレ要因はたくさんあるのです。むしろそれは物価を抑えなければならない方向に経済
政策を持
つて行かなければならないのに、又物価と賃金と悪循環する方向に
政策を持
つて行くような談話が行われておる。この点は今後私は重大な問題だと思うのでありまして、この点について物価
政策をどういうふうに持
つて行くか。この点について私はお伺いしたいと思うのです。
なお、もう
一つ最後にな
つて恐縮ですが、自立経済の問題ですが、この点についてた
つた一つ伺いたい。周東長官は財政
演説におきまして、
昭和二十八年度において我々の
生活水準を九〇%まで引上げると言われておる。併しながらその前提は、
昭和二十五年度の
国民生活水準は八〇%になることを前提といたしておる。ところがすでに
国民生活水準は七〇%台に下
つてしま
つておる。それにもかかわらず九〇%に持
つて行かれるというのは、これは途中において、
朝鮮動乱以前にお作りに
なつた統計だと思うのですが、
朝鮮動乱の影響を考えておられない、時間がなか
つたので非常にそういう粗雑なあれでお出しに
なつたのではないかと思うのでありますが、その基礎が崩れております。(「たるいぞ」と呼ぶ者あり)基礎が崩れておる。又貿易の収支につきましても、安本で御計算のように、物価というものを、価格を離れて計算しますと、数量としてはむしろ輸入が減
つておる。輸出も計画
通り殖えていない。
従つて自立経済を達成する一番重要な問題、貿易計画において崩れ、
国民生活の水準確保においても崩れておる。こういう基礎條件が崩れてお
つて、二十八年度において九〇%に我々の
生活水準を引上げることができるか。この点についてお伺いしたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣吉田茂君
登壇、
拍手〕