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政府委員(野木新一君) それでは
会社更生法案につきまして概略の御説明を申上げます。
法務総裁からこの法案の骨子となるべき点について説明をせられましたが、私からは先ず手続を追つて一応概略を御説明し、それからお手許に配付してございまする
会社更生法案要綱というものに基きまして、この法案の一番重要な点を別の観点から御説明申上げたいと思います。そうすればこの大きな法案の仕組がよく御了解願えることになるのではないかと存ずる次第であります。
先ずこの
会社更生手続開始の原因といたしましては、会社はその事業の継続に著しい支障を来すことなしには弁済期にある債務を弁済することができないとき、又は会社に破産の原因たる事実の生ずる慮れがあるときでありまして、このような場合には会社から裁判所に
更生手続開始の申立ができることにして、商法の会社の整理よりも更に原因を広くしているのであります。なおこの説明はお手許に配付してありまする
会社更生法案の要旨というのに大体則つております。なお会社に破産の原因たる事実の生ずる慮れがあるときは、
会社自身のほか、資本の十分の一に当る金額若しくは百万円以上の債権を有する債権者、又は
発行済株式の十分の一以上の株式を有する株主も申立をすることができるようにいたしております。
次に手続が開始されますと、裁判所は管財人を選任するのを原則とするのでありまするが、会社の債務の額が少いときは選任をしなくてもよく、又管財人が選任されますと、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権限は管財人に專属ということになつております。管財人は一人又は数人置かれ、銀行又は
信託会社でも管財人となることができ、又管財人を置かないときは、別に審査人というものを置いて会社の業務の監督等をさせることもできることになつております。
次に
更生手続開始の決定がありますと、
破産手続は中止し、
会社財産に対しされている
強制執行とか
競売手続などは原則として中止し、会社の
財産関係の
訴訟手続は中断し、
和議手続、
整理手続、
特別清算手続はその効力を失うことにいたしております。
次に会社の債権者とか
担保権者は、裁判所の定める一定の期間内に届出をして手続に参加することになるのでありますが、届出のあつた債権及び担保権につきましては、期日を開いてその調査を行い、管財人、届出をした債権者、
担保権者等に異議がないときは、その債権及び担保権は確定するわけであります。異議のあるものは訴訟によつて確定し、この確定した債権又は担保権を有する者だけがこの
更生計画においてその権利を認められる、そういう仕組になつております。
次に株主も裁判所の定める期間内に届出をして個々に手続に参加して議決権を行使することができるわけでありますが、この
更生計画認可の結果、株主に権利が認められるときは、届出をしない株主もその権利の分配に與れることになつているわけであります。
次に
更生手続開始後の手続でありますが、
更生手続が開始されますと第一回の
関係人集会が開かれます。この集会では、管財人又は審査人の選任、会社の業務及び財産に関する事項などにつきまして関係人の意見を聞き、会社今後の管理の方針について審査をいたします。この第一回の
関係人集会が済みますと、
更生計画の立案にかかるわけでありますが、管財人がある場合には、管財人が、管財人がない場合には、裁判所の命令があるときは審査人、その他のときは会社が義務的に計画案を作成しなければなりません。併し債権者や株主も
更主計画案を作成して裁判所に提出することができる、そういうことにしております。
更生計画案の提出がありますと、裁判所は、第二回目の
関係人集会を開いてその案を審理し、その結果修正を要するものは修正を命じ、更に第三回の
関係人集会を開いてこれを決議に付することになります。而してこの決議のための集会におきましては、届出をした債権者、
担保権者及び株主は、その権利の性質と内容によ
つて裁判所が分類した組に分れまして別々に決議をすることになります。そして可決の要件といたしましては、
担保権者につきましては議決権の総額の四分の三以上、債権者につきましては同じくその三分の二以上、株主につきましてはその議決権の総数の過平数を要する、そういうことにしております。
このようにして可決された
更生計画案を、裁判所は、独自の判断で審査して、法定の要件を備えていると認めるときは、認可の決定をすることになります。
更生計画認可の決定がありますと、計画によつて認められた権利及びこの法律で認められた権利を除いて、会社は、すべての債務から免責されることになります。
更生計画認可の決定により、計画はその定める条項に
従つて実行に移されるわけでありますが、この場合計画の確実、迅速な遂行を図るため必要な限度で、商法その他の法令及び定款の規定の適用が排除されることにしております。計画は、その
実行確保のため、できる限りこの手続中において遂行するものとし、計画が遂行されたか又は遂行される確実な見込がついたときに、初めて裁判所は
更生手続終結の決定をし、会社は裁判所の監督を離脱することになります。
次に
更生計画の内容としてはあらゆる形態のものができることとし、例えば、債権者、株主の権利の変更、営業若しくは財産の讓渡、出資若しくは賃貸、事業の経営の委任、定款の変更、取締役、
監査役等の選任、資本の減少、新株若しくは社債の発行、合併、解散又は新会社の設立等について定めをすることができることにしていますが、計画の条件には、債権者、
担保権者及び株主のそれぞれの権利の性質によりその間に公正、衡平な差等を設けなければならず、また計画の条件は、同じ性質の権利を有する者の間では原則として平等でなければならないものとしております。
以上が大体手続の進行の工合に従つての概略の説明であります。
次にお手許に配付しておりまする
会社更生法案要綱に基きまして別の観点からこの案の内容を御説明申上げます。
先ず要綱の第一点でありますが、これは法律の目的を定めたものであります。時間の関係で多少簡單に説明をいたしておきますが、第二は、これはいわゆる
会社更生に関する外国人及び
外国法人の地位を定めたものでありまして、
無条件平等主義を採用していることを現わしているものであります。第三は
更生手続開始の
国際的効力について定めたものでありまして、いわゆる
属地主義を採用し、和議法、破産法の例にならつたものであります。
第四は
更生事件の
管轄裁判所を定めたものでありまして、
会社本店の所在地を管轄する
地方裁判所が管轄するということにしておりますが、特別の場合には、職権で事件を会社の他の営業所又は財産の所在地を管轄する
地方裁判所にも移送できるという規定を、条文の上では設けております。
第五から第七までは、
更生手続に適用すべき手続的な原則をきめたものでありまして、これらはいずれも和議法の例にならつたものであります。
次に第八から第十二まででありますが、これは
更生手続開始前の手続について定めたものであります。第八及び第九は
更生手続開始の原因とその
申立権者を定めたものであります。先ほどもちよつと触れましたが、要するに会社に破産の原因たる事実の生ずる慮れのある場合に、
会社自身のほか、要綱の第九に定めた債権者又は株主から申立をすることができ、又会社及び事業の継続に著しい支障を来たすことなぐ、弁済期に弁済することができない場合、この場合に
会社自身から
手続開始の申立をすることができる、そういうことになつております。初めの方の概念は、商法において会社の整理の行使権として規定されておるものとほぼ同様であります。あとの「会社は事業の継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務を弁済することができない」という概念は、アメリカの
連邦破産法で、
会社更生手続で認められているところと大体同様であります。その意味は会社が弁済期にある債務を弁済するには、その事業の継続に欠くことのできない営業用の
固定財産を処分しなければならないような場合を考えおるわけであります。なおこの会社が申立をする場合には、通常の
業務執行の場合と同様に
代表取締役が
取締役会の決議に基いてする、そういうことになります。
次に第十でありますが、
更生手続の開始の申立があつた場合における裁判所による手続の
中止命令について定めているわけであります。
訴訟手続とか破算手続、
和議手続、
強制執行等のほか、
租税滞納処分等の
訴訟手続の中止を命ずるという強い権限が裁判所に認められております。但しこの
租税滞納処分等の
中止命令は二カ月で失効するということになつているのでございまして、租税等について他の手続とは特別の取扱をいたしております。
次に第十一は、会社の業務及び財産に関する
保全処分について定めたものでありまして、破産法や和議法などについて
保全処分が認められているのと同様の理由に基くものであります。
次に第十二は
調査委員に関する規定であります。
調査委員はその任務が、和議における
整理委員の
和議開始前の任務に似ておりますが、それと違う点は
整理委員のような必須の機関ではないという点であります。
次に第十三は、
更生手続開始の申立を棄却すべき場合について定めたのであります。申立が適法であり、且つ第八及び第九に掲げるような
更生手続開始の原因があつても、この第十三に掲げるような一定の事由がある場合には
更生手続を開始すべきでないので、裁判所はこの場合には申立を棄却しなければならないことにいたしたわけであります。
次に十四から十六まででありますが、これは
更生手続開始の効力の最も重要なものの一つである管財人の設置と、会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分の権限について定めたのであります。
更生手続開始後は管財人が設置されるのを原則といたしますが、比較的小規模の手続につきましては費用の関係もありますので、管財人の選任の必要なければこれを選任しなくてもいいことにいたしております。
次に第十七でありますが、これは
更生手続開始決定の他の手続に及ぼす効力について定めたものであります。
更生手続を円滑に進めて行くことができるようにするためには非常に強い効力を認めたわけであります。
租税滞納処分等はあまり長く制限することは適当でありませんので、決定の日から六カ月間中止し、必要があればまだ三カ月間だけその期間を伸長することができることといたしまして、その後は
徴収権者がその本来の権限によつて処置することができることにいたしました。
更生手続開始決定によ
つて和議手続、
整理手続、
特別清算手続等の競合的な手続は効力を失いますが、
開始決定によつて中止した
破産手続、
強制執行、
競売手続等は、
更生計画認可決定があつたときにその効力を失うことになつております。
次に第十八は、
更生裁判所に、他の裁判所に係属中の会社の
財産関係の訴訟の移送を求める権限を詰めたものであります。それらの訴訟を
更生裁判所に集中して、
更生手続を能率的に進めて行くことができるようにするためのものであります。
次に十九は、
更生手続開始後の取戻権及び相殺権について定めたものであります。大体において破産法及び和議法の例にならつておりますが、相殺権は、
更生手続が事業の
維持更生のための手続である関係から、破産法及び和議の場合よりも制限されております。
次に第二十でありますが、これは会社の発起人、取締役その他に対する
損害賠償請求権等の査定の手続について定めたものであります。
更生手続開始の場合には、このような
簡易手続を認めることが多いと思われますので、商法の会社の整理において認められている査定の手続にならつたものであります。
次に第二十一は否認権について定めたものであります。否認権の内容等は破産法の否認権の場合と大体同じでありますが、管財人が置かれていないときには、
更生債権者及び
更生担保権者にその権利の行使を認めたこと、及びその行使の方法として、通常の訴の方法のほかに
簡易手続を認めたことなどが異なつております。
次に第二十二から第二十五までは管財人について定めております。第二十二及び第二十三は管財人の資格について定めました。管財人は会社の業務及び財産の管理をし、又
更生計画案の作成及び遂行に当るものでありますから、事業経営の
知識経験を有する者が適任であります。又
利害関係のないものであることを原則といたしますが、数人の管財人を選任するときはそのうちの一人は、その会社の
取締役等の
利害関係のある者でもいいことといたしました。
会社更生の成否は管財人の手腕にかかることが多いので人選には愼重を要するものと思います。法人でも
信託会社、銀行のうちには、管財人として適当なものがあるので、これを管財人に選任できることにいたしました。
第二十四は
管財人代理について定めました。
管財人代理は費用の前拂と報酬を受けることができることになつております。
第二十五は管財人の
注意義務について定めました。
破産管財人の
注意義務と同様でございます。
次に第二十六から三十までは、
更生債権及び
更生担保権についての規定を設けました。第二十六は
更生債権の意義を定めました。第二十七は
更生手続開始当時、
当事者双方がまだ共に履行を完了していない双務契約についての解除権と、その解除の効果について定めました。ほぼ破産法の規定にならつているものであります。第二十八は
更生担保権の意義を定め、更に第二十九は
担保附債権のうち、実質上その担保権によつて担保されていない部分の
権利行使について定めたものであります。
従前破産手続におきましても別条件として取扱われて来た担保権は、
更生手続が開始されるとこの手続によつてのみ行使が許されたることになります。担保権を除外しては会社の更生が困難なことが多いから、担保権をもこの
更生手続に書入れたわけであります。次に第三十は
更生債権及び
更生担保権の弁済の禁止等について定めました。併し
国税徴収法、又は
国税徴収の例によつて徴収することができる租税等の請求権につきましては、例外の場合を認めております。
次に第三十一から第四十一までは、
更生債権者、
更生担保権者及び株主の
更生手続の参加について定めております。第三十一は
更生手続参加のための届出について定めたものであります。
更生債権者、
更生担保権者及び株主は
更生手続に参加して、
関係人集会において議決権を行使する等、それぞれ権利を行使するためには届出をしなければならないことにいたしました。第三十二は
更生債権者表、
更生担保権者表及び株主表について定めました。これらの表にはその権利に関する重要な事項を記載させこれに一定の効力を認めることにいたしました。第三十三から第三十五までは
更生債権及び
更生担保権の調査及びその
確定手続について定めました。これらの権利は
更生手続において調査、確定すべきものといたしまして、その
確定手続はおおむね破産の場合における
破産債権確定手続の例に従うことにいたしました。併しいわゆる有
名義債権でなくても管財人に異議のない権利につきましては、異議を述べた者から訴を提起しなければならないものといたしまして、異議権の乱用の防止を
図つた点等が異なつております。次に第三十六は
更生債権者、
更生担保権者及び株主の組分けについて定めました。これらの権利者は、それぞれその権利の性質及び利害の関係が異なつておりますので、これを組に分けて
更生計画案の作成及び手続に便ならしめることにいたしました。第三十七は
更生計画から除外できる
更生債権者及び株主について定めたものであります。会社の財産を事業が継続できるものとして評価して、清算したものと仮定した場合において、債権の弁済又は
残余財産の分配を受けることができないような者は、
更生手続に参加する実質上の権利を有しないということができますから、
更生手続から除外することにいたしました。このような者は又
更生計画案の議決権をも有しないことにいたしたのであります。第三十八は
更生債権及び
更生担保権のうち、租税等の請求権についての特則を定めました。そのうち
国税徴収法又は
国税徴収の例によつて徴収することができる租税等の請求権は、国又は
地方公共団体等の財政の基礎をなすものでありますから、徴収の権限を有する者、例えば
税務署長の同意なくしては、
更生計画においてその権利に影響を及ぼす定めをすることができないことにいたしました。第三十九は
代理委員について定めました。
更生手続には多数の
利害関係の異なる権利者が参加して、而も
更生計画案の作成及び決議のために相互に折衝を行うようなことが多いのであり、利害を同じくする一群の者は、その者の間から数人の
利益代表者を選任して、或いは共同して特定の第三者を選任し、その者に権利を代つて行使させる等して、手続の円滑な進行を図ることができるようにする必要がありますから、このような
代理委員の制度を設けることにいたしたわけであります。次に第四十及び第四十一は
社債権者について定めたものであります。第四十は、この手続におきましては
社債権者を集団的に取扱うということは不適当でありますから、この第四十に定めたようにいたしたものであり、又第四十一は、零細な
社債権者等で、みずから手続に参加する熱意に欠ける者の利益を保護するために考えたものであります。
次に第四十二から第四十五までは
関係人集会に関する定めであります。第四十二は
関係人集会のことを定めました。
関係人集会は関係人の
更生手続参加のための機関で、裁判所が招集し指揮します。裁判所が相当と認めるときは
関係人集会並びに
更生債権及び
更生担保権調査の各期日を併合することができます。第四十三から第四十五までは
関係人集会における議決権について定めております。
更生債権者及び
更生担保権者は、原則として
更生債権及び
更生担保権の額に応じて議決権を有しますが、
更生手続開始当時期限の到来していない
無利息債権を有する
更生債権者等の議決権につきましては、特則を設けております。会社が
破産状態にあるときは株主には発言権を認めるべきではありませんから、議決権を有させないことにいたしました。議決権の額文は数の
決定方法は破産における
強制和議の手続に準じました。
更生手続の機会に乗じて不当な利益を得ようとすることは許すべきことではありませんから、そのような目的で権利を取得した者には議決権を行使させないということができることにいたしたのであります。
第四十六から第五十七までは
更生手続開始後の手続について定めました。第四十六は会社の業務及び財産の
管理状況等を裁判所に報告すべきことを定めました。
財産目録及び
貸借対照表も作成してその謄本を裁判所に提出すべきものとしております。なお裁判所に提出された書類は
利害関係人の閲覧に供されます。第四十七と第四十八は、管財人が置かれない場合の
更生事務の処理と、これに伴う会社の責任について定めました。管財人がないときは、会社は裁判所の監督の下に本来管財人が処理すべき事務である
更生事務を処理いたします。会社の
注意義務は管財人と同一でありまするが、
注意義務違反の責任は、
会社自身のほか任務を怠つた取締役も負うものといたしております。第四十九は、業務及び財産の
管理方法の変更について定めました。事情に応じて適当な
管理方法をとることができるようにしたものであります。第五十は審査人のことを定めております。管財人を置くまでの必要はないが、会社のみに
更生事務の処理を任せることも不適当なような場合に、審査人を選任して裁判所の命ずる事項を行わせることができることとしました。第五十一は
法律顧問について定めました。
更生事務処理につきましては
法律知識を要することが多いから、常設の
法律顧問を置くことができることにいたしました。なお
法律顧問は費用の前
拂及び報酬を受け面ことができることになつております。第五十三及び第五十三は
更生計画案の立案及び提出について定めました。第五十二に定める者は義務的に計画案を作成、提出しなければなりません。第五十三に定める者はそのような義務はありませんが、権利が認められております。広く良案を求める趣旨であります。第五十四は
更生計画案の排除について定めました。計画案の提出がありましてもそれが結局において認可できないようなものでありますれば、それについて手続を進めても無駄でありますからこのようにいたしたのであります。なお裁判所は案の修正を命ずることもできることになつております。第五十五は
更生計画案可決の要件について定めました。権利者の頭数は考慮しないことにいたしております。第五十六及び第五十七は
共益債権について定めました。第五十六に掲げるものは本来の
共益債権ともいうべきもの、第五十七に掲げるものは、公益上の理由等から特に
共益債権として取扱うべきものについて定めたものであります。使用人の
給料請求権等についてこのような取扱をするのは、
更生手続においては特にこのような請求権を保護する必要があるからであります。
第五十八から第六十までは
更生計画の内容について定めました。第五十八及び第五十九は
更生計画の条項について定めてあります。第五十八は
更生計画の
必要的条項でありまして、このような条項を欠く計画は不適法となります。第五十九は
任意的事項でありまして、このような条項は必ずしも定めなくてもよいのであります。併し
任意的事項でありましても、そのうちの一定の条項、例えば新会社の設立に関する条項を定める場合には一定の要件を備えなければならないことといたして、計画の内容の明確を期し、併せて
計画遂行の場合における他の法令の適用の排除を可能ならしめるようにいたしました。第六十は
更生計画の条件についての定めであります。
更生計画には異なつた権利と利害を有する者が参加しておりますので、これを無差別に取扱うことは下都合を生ずることになります。そこで
更生計画においては、
更生担保権、次に一般の先取特権その他一般の優先権のある
更生債権、次に以上の以外の
更生債権、次に
更生手続開始後の
劣後的更生債権、これは法人の破産の場合と同様に
劣後的債権といたしております。次に
残余財産の分配に関し
優先的内容を有する種類の株主の権利、次にそれ以外の株主の権利というような順位を考慮して、計画の条件に公正、衡平な差等を設けなければならないことといたしました。その結果、例えば株主の権利よりも債権者の権利を不利に取扱うような計画は不適法となります。又同じ性質の権利を有する者の間では、計画の条件は平等であるのを原則としますが、少額の債権等につきましては特別の取扱をしても衡平を害しない限り差支ないことといたしてあります。
次に第六十一から六十九までは
更生計画の認可及びその効力について定めました。第六十一は
更生計画認可の要件について定めております。計画案が可決されたときは、裁判所は更にその案が計画として法定の要件を具備しているかどうかを改めて審査して、要件を満たしていると認めた場合に限りて認可の決定をすることができるのであります。第六十二は計画に不同意の組のある場合の定めであります。計画に不同意の組があるときでも、計画の内容においてその組の者の権利が保護されているときは、その同意を得なくても計画を認可できることといたしまして、計画の成立を容易ならしめることといたしたのであります。なおあらかじめ不同意が明らかなときには、当初からその組の者を除外して決議することもできることといたしました。第六十三は
更生計画の効力発生の時について定めました。計画認可の上は速かに遂行する必要がありますので、確定を待たず効力を生ずることといたしました。第六十四は
更生計画の効力の及ぶ範囲について定めました。
更生手続に参加しない
更生債権者、
更生担保権者及び株主にも効力が及ぶことになるわけであります。第六十五から第六十七までは、
更生計画による
更生債権者、
更生担保権者及び株主の権利の変更について定めております。届出をしなかつた債権、届出をしても異議があつたにかかわらず
確定手続をとらなかつた債権等につきましては、会社は計画認可の決定があつたときにその責任を免れることになります。株主は手続に参加しなくても、その権利に対する分け前には與ることになります。第六十八は、
更生手続開始によつて中止した手続の失効について定めています。
更生計画の認可決定後は、これらの手続は存続させる必要がなく、却つて計画の遂行に支障を来すことになるからであります。第六十九は、
更生計画認可決定確定後の
更生債権者表及び更正
担保権者表の記載の効力について定めました。確定した権利についてのこれらの表の記載は確定判決と同一の効力を有し、
更生手続終了後はこの表に基いて会社等に対し
強制執行ができることになるわけであります。
第七十及び第七十一は
更生計画遂行の責任者について定めました。管財人があれば管財人が計画の遂行に当ります。管財人がないときは会社みずからが遂行に当りますが、裁判所が
整理委員を選任したときは
整理委員がこれに当るのであります。計画によつて新会社を設立するときは、これらの者が発起人又は設立委員の職務を行うわけであります。
第七十二は、
更生計画の遂行に関する裁判所の命令について定めました。この命令に違反した者は過料に処せられることになつております。
第七十三条は、更正
計画遂行の場合における他の法令の適用の排除について定めております。
更生計画の遂行を円滑迅速にするため、例えば商法の規定によれば、本来株主総会の決議を要する事項でも、更正計画に記載されその計画が認可されたときには、株主総会の決議を経なくても適法にこれを遂行することができるようにいたしました。又例えば計画において
更生債権者、
更生担保権者又は株主に対し、新たに拂込又は現物出資をさせないで株式を引受けさせることによつて新会社を設立することを定めたときは、新会社は通常の会社設立の方法によらず、單に定款を作成し、
更生裁判所の認証を得た後設立の登記をしただけで成立するものといたしました。なお税法の特例としては、
更生手続による会社の財産の評価換又は債務の消滅があつた場合における法人税の軽減、
更生手続においてする登記登録についての登録税の減免等について定めております。
第七十四は、計画によつて新たに会社又は新会社の株主又は
社債権者となつた者の失権について定めました。三年間も株券又は債券の交付を請求しないような者は、これを失権させて従来の権利関係を整理し、会社又は新会社の更生を容易ならしめようとするものであります。なお従前株主又は
社債権者であつた者が、新株券又は新債券の交付を請求するには、原則として従前の株券又は債券を提出しなければならないこととしております。
第七十五は
更生計画の変更について定めております。
更生計画の認可決定後やむを得ない事由によつて計画をそのまま遂行することができなくなつたが、計画を変更すれば遂行が可能になるような場合、計画の変更を許して、更生の失敗によつて生ずる無駄を省くことができることにいたしました。
第七十六は
更生手続の終結について定めています。
更生計画の遂行を確実にするため、計画が遂行されたか、又は遂行されることが確実と認められるようになつて初めて終結決定をすることができることといたしました。
第七十七から八十までは
更生手続廃止について定めています。そのうち第七十七から第七十九までは
更生手続廃止の決定をすべき場合を定めました。第七十七と第七十八はいずれも
更生計画認可決定前の場合で、第七十七は
更生計画が成立しなかつた場合、第七十八は更生の必要がなくなつた場合であります。第七十九は計画認可後の遂行不能の場合であります。第八十は、
更生手続廃止の決定確定後の
更生債権者表及び
更生担保権者表の記載の効力について定めています。一定の範囲内で確定判決と同一の効力を認め、又は
強制執行ができることといたしました。
更生手続において適法に確定されたものである以上当然であります。
第八十一から第八十六まではその他の点について定めております。第八十一と第八十二は、破産宣告前の会社について開始された
更生手続が不成功に終つた場合における
破産手続及び
和議手続との関係について定めています。
更生手続開始の原因は破産原因より広いので、
更生手続が失敗しても必ずしも
破産手続に移行しないのは当然であります。
破産手続又は
和議手続に移る場合は
更生裁判所が破算裁判所又は和議裁判所となります。第八十三と第八十四は報酬及び報償金に関する定めであります。第八十三に掲げる者は当然に費用の前拂と報酬を受けることができます。但し裁判所の許可なくして会社の株式を売買する等の行為があつたときは、費用及報酬の支拂を受けることができません。第八十四は、ここに掲げる者が特に更生に貢献した場合のことであります。報酬を支拂うべき者にはその職務と責任にふさわしい十分な報酬を支拂い、更生に貢献した者には報償金を支拂うというようにいたしまして、この面からも手続が円滑に進むように考慮しております。第八十五は行政庁の
更生手続への関與について定めております。
更生手続は関係行政庁の密接な協力を得て行われなければ目的を達することが困難なので、関係行政庁に対し
更生手続の進行について通知し、又
更生計画について意見を述べさせること等してこれを手続に関與させることにいたしております。第八十六は罰則についてであります。破産法、和議法等の例に準じて規定を設けました。
以上で大体
会社更生法案要綱の御説明を終ります。
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