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1951-05-17 第10回国会 参議院 法務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十七日(木曜日)    午前十時四十五分開会   ―――――――――――――   委員の異動 五月十六日委員齋武雄君辞任につき、 その補欠として二輪貞治君を議長にお いて指名した。   ―――――――――――――   本日の会議に付した事件会社更生法案内閣送付) ○破産法及び和議法の一部を改正する  法律案内閣送付) ○住民登録法案衆議院提出)   ―――――――――――――
  2. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 只今より委員会を開きます。  本日は先ず会社更生法案を議題といたします。本案につきましては、すでに提案理由説明を聴取いたしたわけでございますが、更に政府より詳細の説明を聽取したいと思います。
  3. 野木新一

    政府委員野木新一君) それでは会社更生法案につきまして概略の御説明を申上げます。  法務総裁からこの法案の骨子となるべき点について説明をせられましたが、私からは先ず手続を追つて一応概略を御説明し、それからお手許に配付してございまする会社更生法案要綱というものに基きまして、この法案の一番重要な点を別の観点から御説明申上げたいと思います。そうすればこの大きな法案仕組がよく御了解願えることになるのではないかと存ずる次第であります。  先ずこの会社更生手続開始原因といたしましては、会社はその事業継続に著しい支障を来すことなしには弁済期にある債務弁済することができないとき、又は会社破産原因たる事実の生ずる慮れがあるときでありまして、このような場合には会社から裁判所更生手続開始申立ができることにして、商法会社整理よりも更に原因を広くしているのであります。なおこの説明はお手許に配付してありまする会社更生法案の要旨というのに大体則つております。なお会社破産原因たる事実の生ずる慮れがあるときは、会社自身のほか、資本の十分の一に当る金額若しくは百万円以上の債権を有する債権者、又は発行済株式の十分の一以上の株式を有する株主申立をすることができるようにいたしております。  次に手続開始されますと、裁判所管財人選任するのを原則とするのでありまするが、会社債務の額が少いときは選任をしなくてもよく、又管財人選任されますと、会社事業経営並びに財産管理及び処分をする権限管財人に專属ということになつております。管財人は一人又は数人置かれ、銀行又は信託会社でも管財人となることができ、又管財人を置かないときは、別に審査人というものを置いて会社業務監督等をさせることもできることになつております。  次に更生手続開始決定がありますと、破産手続中止し、会社財産に対しされている強制執行とか競売手続などは原則として中止し、会社財産関係訴訟手続は中断し、和議手続整理手続特別清算手続はその効力を失うことにいたしております。  次に会社債権者とか担保権者は、裁判所定め一定期間内に届出をして手続参加することになるのでありますが、届出のあつた債権及び担保権につきましては、期日を開いてその調査を行い、管財人届出をした債権者担保権者等異議がないときは、その債権及び担保権は確定するわけであります。異議のあるものは訴訟によつて確定し、この確定した債権又は担保権を有する者だけがこの更生計画においてその権利を認められる、そういう仕組になつております。  次に株主裁判所定め期間内に届出をして個々に手続参加して議決権行使することができるわけでありますが、この更生計画認可の結果、株主権利が認められるときは、届出をしない株主もその権利分配に與れることになつているわけであります。  次に更生手続開始後の手続でありますが、更生手続開始されますと第一回の関係人集会が開かれます。この集会では、管財人又は審査人選任会社業務及び財産に関する事項などにつきまして関係人の意見を聞き、会社今後の管理の方針について審査をいたします。この第一回の関係人集会が済みますと、更生計画立案にかかるわけでありますが、管財人がある場合には、管財人が、管財人がない場合には、裁判所命令があるときは審査人、その他のときは会社義務的に計画案作成しなければなりません。併し債権者株主更主計画案作成して裁判所提出することができる、そういうことにしております。更生計画案提出がありますと、裁判所は、第二回目の関係人集会を開いてその案を審理し、その結果修正を要するものは修正を命じ、更に第三回の関係人集会を開いてこれを決議に付することになります。而してこの決議のための集会におきましては、届出をした債権者担保権者及び株主は、その権利性質内容によつて裁判所が分類した組に分れまして別々に決議をすることになります。そして可決要件といたしましては、担保権者につきましては議決権の総額の四分の三以上、債権者につきましては同じくその三分の二以上、株主につきましてはその議決権の総数の過平数を要する、そういうことにしております。  このようにして可決された更生計画案を、裁判所は、独自の判断で審査して、法定要件を備えていると認めるときは、認可決定をすることになります。  更生計画認可決定がありますと、計画によつて認められた権利及びこの法律で認められた権利を除いて、会社は、すべての債務から免責されることになります。  更生計画認可決定により、計画はその定め条項従つて実行に移されるわけでありますが、この場合計画の確実、迅速な遂行を図るため必要な限度で、商法その他の法令及び定款規定適用排除されることにしております。計画は、その実行確保のため、できる限りこの手続中において遂行するものとし、計画遂行されたか又は遂行される確実な見込がついたときに、初めて裁判所更生手続終結決定をし、会社裁判所監督を離脱することになります。  次に更生計画内容としてはあらゆる形態のものができることとし、例えば、債権者株主権利変更営業若しくは財産讓渡、出資若しくは賃貸、事業経営の委任、定款変更取締役監査役等選任資本の減少、新株若しくは社債の発行、合併、解散又は新会社設立等について定めをすることができることにしていますが、計画条件には、債権者担保権者及び株主のそれぞれの権利性質によりその間に公正、衡平な差等を設けなければならず、また計画条件は、同じ性質権利を有する者の間では原則として平等でなければならないものとしております。  以上が大体手続進行の工合に従つて概略説明であります。  次にお手許に配付しておりまする会社更生法案要綱に基きまして別の観点からこの案の内容を御説明申上げます。  先ず要綱の第一点でありますが、これは法律目的定めたものであります。時間の関係で多少簡單に説明をいたしておきますが、第二は、これはいわゆる会社更生に関する外国人及び外国法人の地位を定めたものでありまして、無条件平等主義を採用していることを現わしているものであります。第三は更生手続開始国際的効力について定めたものでありまして、いわゆる属地主義を採用し、和議法破産法の例にならつたものであります。  第四は更生事件管轄裁判所定めたものでありまして、会社本店所在地を管轄する地方裁判所が管轄するということにしておりますが、特別の場合には、職権で事件会社の他の営業所又は財産所在地を管轄する地方裁判所にも移送できるという規定を、条文の上では設けております。  第五から第七までは、更生手続適用すべき手続的な原則をきめたものでありまして、これらはいずれも和議法の例にならつたものであります。  次に第八から第十二まででありますが、これは更生手続開始前の手続について定めたものであります。第八及び第九は更生手続開始原因とその申立権者定めたものであります。先ほどもちよつと触れましたが、要するに会社破産原因たる事実の生ずる慮れのある場合に、会社自身のほか、要綱の第九に定め債権者又は株主から申立をすることができ、又会社及び事業継続に著しい支障を来たすことなぐ、弁済期弁済することができない場合、この場合に会社自身から手続開始申立をすることができる、そういうことになつております。初めの方の概念は、商法において会社整理行使権として規定されておるものとほぼ同様であります。あとの「会社事業継続に著しい支障をきたすことなく弁済期にある債務弁済することができない」という概念は、アメリカの連邦破産法で、会社更生手続で認められているところと大体同様であります。その意味は会社弁済期にある債務弁済するには、その事業継続に欠くことのできない営業用固定財産処分しなければならないような場合を考えおるわけであります。なおこの会社申立をする場合には、通常業務執行の場合と同様に代表取締役取締役会決議に基いてする、そういうことになります。  次に第十でありますが、更生手続開始申立があつた場合における裁判所による手続中止命令について定めているわけであります。訴訟手続とか破算手続和議手続強制執行等のほか、租税滞納処分等訴訟手続中止を命ずるという強い権限裁判所に認められております。但しこの租税滞納処分等中止命令は二カ月で失効するということになつているのでございまして、租税等について他の手続とは特別の取扱をいたしております。  次に第十一は、会社業務及び財産に関する保全処分について定めたものでありまして、破産法和議法などについて保全処分が認められているのと同様の理由に基くものであります。  次に第十二は調査委員に関する規定であります。調査委員はその任務が、和議における整理委員和議開始前の任務に似ておりますが、それと違う点は整理委員のような必須の機関ではないという点であります。  次に第十三は、更生手続開始申立を棄却すべき場合について定めたのであります。申立適法であり、且つ第八及び第九に掲げるような更生手続開始原因があつても、この第十三に掲げるような一定の事由がある場合には更生手続開始すべきでないので、裁判所はこの場合には申立を棄却しなければならないことにいたしたわけであります。  次に十四から十六まででありますが、これは更生手続開始効力の最も重要なものの一つである管財人の設置と、会社事業経営並びに財産管理及び処分権限について定めたのであります。更生手続開始後は管財人が設置されるのを原則といたしますが、比較的小規模の手続につきましては費用関係もありますので、管財人選任の必要なければこれを選任しなくてもいいことにいたしております。  次に第十七でありますが、これは更生手続開始決定の他の手続に及ぼす効力について定めたものであります。更生手続を円滑に進めて行くことができるようにするためには非常に強い効力を認めたわけであります。租税滞納処分等はあまり長く制限することは適当でありませんので、決定の日から六カ月間中止し、必要があればまだ三カ月間だけその期間を伸長することができることといたしまして、その後は徴収権者がその本来の権限によつて処置することができることにいたしました。更生手続開始決定によつて和議手続整理手続特別清算手続等の競合的な手続効力を失いますが、開始決定によつて中止した破産手続強制執行競売手続等は、更生計画認可決定があつたときにその効力を失うことになつております。  次に第十八は、更生裁判所に、他の裁判所に係属中の会社財産関係訴訟の移送を求める権限を詰めたものであります。それらの訴訟更生裁判所に集中して、更生手続を能率的に進めて行くことができるようにするためのものであります。  次に十九は、更生手続開始後の取戻権及び相殺権について定めたものであります。大体において破産法及び和議法の例にならつておりますが、相殺権は、更生手続事業維持更生のための手続である関係から、破産法及び和議の場合よりも制限されております。  次に第二十でありますが、これは会社の発起人、取締役その他に対する損害賠償請求権等査定手続について定めたものであります。更生手続開始の場合には、このような簡易手続を認めることが多いと思われますので、商法会社整理において認められている査定手続にならつたものであります。  次に第二十一は否認権について定めたものであります。否認権内容等破産法否認権の場合と大体同じでありますが、管財人が置かれていないときには、更生債権者及び更生担保権者にその権利行使を認めたこと、及びその行使方法として、通常の訴の方法のほかに簡易手続を認めたことなどが異なつております。  次に第二十二から第二十五までは管財人について定めております。第二十二及び第二十三は管財人の資格について定めました。管財人会社業務及び財産管理をし、又更生計画案作成及び遂行に当るものでありますから、事業経営知識経験を有する者が適任であります。又利害関係のないものであることを原則といたしますが、数人の管財人選任するときはそのうちの一人は、その会社取締役等利害関係のある者でもいいことといたしました。会社更生の成否は管財人の手腕にかかることが多いので人選には愼重を要するものと思います。法人でも信託会社銀行のうちには、管財人として適当なものがあるので、これを管財人選任できることにいたしました。  第二十四は管財人代理について定めました。管財人代理費用の前拂と報酬を受けることができることになつております。  第二十五は管財人注意義務について定めました。破産管財人注意義務と同様でございます。  次に第二十六から三十までは、更生債権及び更生担保権についての規定を設けました。第二十六は更生債権意義定めました。第二十七は更生手続開始当時、当事者双方がまだ共に履行を完了していない双務契約についての解除権と、その解除の効果について定めました。ほぼ破産法規定にならつているものであります。第二十八は更生担保権意義定め、更に第二十九は担保附債権のうち、実質上その担保権によつて担保されていない部分の権利行使について定めたものであります。従前破産手続におきましても別条件として取扱われて来た担保権は、更生手続開始されるとこの手続によつてのみ行使が許されたることになります。担保権を除外しては会社更生が困難なことが多いから、担保権をもこの更生手続に書入れたわけであります。次に第三十は更生債権及び更生担保権弁済禁止等について定めました。併し国税徴収法、又は国税徴収の例によつて徴収することができる租税等請求権につきましては、例外の場合を認めております。  次に第三十一から第四十一までは、更生債権者更生担保権者及び株主更生手続参加について定めております。第三十一は更生手続参加のための届出について定めたものであります。更生債権者更生担保権者及び株主更生手続参加して、関係人集会において議決権行使する等、それぞれ権利行使するためには届出をしなければならないことにいたしました。第三十二は更生債権者表更生担保権者表及び株主表について定めました。これらの表にはその権利に関する重要な事項を記載させこれに一定効力を認めることにいたしました。第三十三から第三十五までは更生債権及び更生担保権調査及びその確定手続について定めました。これらの権利更生手続において調査、確定すべきものといたしまして、その確定手続はおおむね破産の場合における破産債権確定手続の例に従うことにいたしました。併しいわゆる有名義債権でなくても管財人異議のない権利につきましては、異議を述べた者から訴を提起しなければならないものといたしまして、異議権の乱用の防止を図つた点等が異なつております。次に第三十六は更生債権者更生担保権者及び株主組分けについて定めました。これらの権利者は、それぞれその権利性質及び利害関係が異なつておりますので、これを組に分けて更生計画案作成及び手続に便ならしめることにいたしました。第三十七は更生計画から除外できる更生債権者及び株主について定めたものであります。会社財産事業継続できるものとして評価して、清算したものと仮定した場合において、債権弁済又は残余財産分配を受けることができないような者は、更生手続参加する実質上の権利を有しないということができますから、更生手続から除外することにいたしました。このような者は又更生計画案議決権をも有しないことにいたしたのであります。第三十八は更生債権及び更生担保権のうち、租税等請求権についての特則定めました。そのうち国税徴収法又は国税徴収の例によつて徴収することができる租税等請求権は、国又は地方公共団体等の財政の基礎をなすものでありますから、徴収権限を有する者、例えば税務署長同意なくしては、更生計画においてその権利に影響を及ぼす定めをすることができないことにいたしました。第三十九は代理委員について定めました。更生手続には多数の利害関係の異なる権利者参加して、而も更生計画案作成及び決議のために相互に折衝を行うようなことが多いのであり、利害を同じくする一群の者は、その者の間から数人の利益代表者選任して、或いは共同して特定の第三者を選任し、その者に権利を代つて行使させる等して、手続の円滑な進行を図ることができるようにする必要がありますから、このような代理委員の制度を設けることにいたしたわけであります。次に第四十及び第四十一は社債権者について定めたものであります。第四十は、この手続におきましては社債権者を集団的に取扱うということは不適当でありますから、この第四十に定めたようにいたしたものであり、又第四十一は、零細な社債権者等で、みずから手続参加する熱意に欠ける者の利益を保護するために考えたものであります。  次に第四十二から第四十五までは関係人集会に関する定めであります。第四十二は関係人集会のことを定めました。関係人集会関係人更生手続参加のための機関で、裁判所が招集し指揮します。裁判所が相当と認めるときは関係人集会並びに更生債権及び更生担保権調査の各期日を併合することができます。第四十三から第四十五までは関係人集会における議決権について定めております。更生債権者及び更生担保権者は、原則として更生債権及び更生担保権の額に応じて議決権を有しますが、更生手続開始当時期限の到来していない無利息債権を有する更生債権者等議決権につきましては、特則を設けております。会社破産状態にあるときは株主には発言権を認めるべきではありませんから、議決権を有させないことにいたしました。議決権額文は数の決定方法破産における強制和議手続に準じました。更生手続の機会に乗じて不当な利益を得ようとすることは許すべきことではありませんから、そのような目的権利を取得した者には議決権行使させないということができることにいたしたのであります。  第四十六から第五十七までは更生手続開始後の手続について定めました。第四十六は会社業務及び財産管理状況等裁判所に報告すべきことを定めました。財産目録及び貸借対照表作成してその謄本を裁判所提出すべきものとしております。なお裁判所提出された書類は利害関係人の閲覧に供されます。第四十七と第四十八は、管財人が置かれない場合の更生事務処理と、これに伴う会社責任について定めました。管財人がないときは、会社裁判所監督の下に本来管財人処理すべき事務である更生事務処理いたします。会社注意義務管財人と同一でありまするが、注意義務違反責任は、会社自身のほか任務を怠つた取締役も負うものといたしております。第四十九は、業務及び財産管理方法変更について定めました。事情に応じて適当な管理方法をとることができるようにしたものであります。第五十は審査人のことを定めております。管財人を置くまでの必要はないが、会社のみに更生事務処理を任せることも不適当なような場合に、審査人選任して裁判所の命ずる事項を行わせることができることとしました。第五十一は法律顧問について定めました。更生事務処理につきましては法律知識を要することが多いから、常設の法律顧問を置くことができることにいたしました。なお法律顧問費用の前拂及び報酬を受け面ことができることになつております。第五十三及び第五十三は更生計画案立案及び提出について定めました。第五十二に定める者は義務的に計画案作成提出しなければなりません。第五十三に定める者はそのような義務はありませんが、権利が認められております。広く良案を求める趣旨であります。第五十四は更生計画案排除について定めました。計画案提出がありましてもそれが結局において認可できないようなものでありますれば、それについて手続を進めても無駄でありますからこのようにいたしたのであります。なお裁判所は案の修正を命ずることもできることになつております。第五十五は更生計画案可決要件について定めました。権利者の頭数は考慮しないことにいたしております。第五十六及び第五十七は共益債権について定めました。第五十六に掲げるものは本来の共益債権ともいうべきもの、第五十七に掲げるものは、公益上の理由等から特に共益債権として取扱うべきものについて定めたものであります。使用人の給料請求権等についてこのような取扱をするのは、更生手続においては特にこのような請求権を保護する必要があるからであります。  第五十八から第六十までは更生計画内容について定めました。第五十八及び第五十九は更生計画条項について定めてあります。第五十八は更生計画必要的条項でありまして、このような条項を欠く計画は不適法となります。第五十九は任意的事項でありまして、このような条項は必ずしも定めなくてもよいのであります。併し任意的事項でありましても、そのうちの一定条項、例えば新会社設立に関する条項定める場合には一定要件を備えなければならないことといたして、計画内容の明確を期し、併せて計画遂行の場合における他の法令適用排除を可能ならしめるようにいたしました。第六十は更生計画条件についての定めであります。更生計画には異なつ権利利害を有する者が参加しておりますので、これを無差別に取扱うことは下都合を生ずることになります。そこで更生計画においては、更生担保権、次に一般先取特権その他一般優先権のある更生債権、次に以上の以外の更生債権、次に更生手続開始後の劣後的更生債権、これは法人破産の場合と同様に劣後的債権といたしております。次に残余財産分配に関し優先的内容を有する種類の株主権利、次にそれ以外の株主権利というような順位を考慮して、計画条件に公正、衡平な差等を設けなければならないことといたしました。その結果、例えば株主権利よりも債権者権利を不利に取扱うような計画は不適法となります。又同じ性質権利を有する者の間では、計画条件は平等であるのを原則としますが、少額の債権等につきましては特別の取扱をしても衡平を害しない限り差支ないことといたしてあります。  次に第六十一から六十九までは更生計画認可及びその効力について定めました。第六十一は更生計画認可要件について定めております。計画案可決されたときは、裁判所は更にその案が計画として法定要件を具備しているかどうかを改めて審査して、要件を満たしていると認めた場合に限りて認可決定をすることができるのであります。第六十二は計画に不同意の組のある場合の定めであります。計画に不同意の組があるときでも、計画内容においてその組の者の権利が保護されているときは、その同意を得なくても計画認可できることといたしまして、計画の成立を容易ならしめることといたしたのであります。なおあらかじめ不同意が明らかなときには、当初からその組の者を除外して決議することもできることといたしました。第六十三は更生計画効力発生の時について定めました。計画認可の上は速かに遂行する必要がありますので、確定を待たず効力を生ずることといたしました。第六十四は更生計画効力の及ぶ範囲について定めました。更生手続参加しない更生債権者更生担保権者及び株主にも効力が及ぶことになるわけであります。第六十五から第六十七までは、更生計画による更生債権者更生担保権者及び株主権利変更について定めております。届出をしなかつた債権届出をしても異議があつたにかかわらず確定手続をとらなかつた債権等につきましては、会社計画認可決定があつたときにその責任を免れることになります。株主手続参加しなくても、その権利に対する分け前には與ることになります。第六十八は、更生手続開始によつて中止した手続の失効について定めています。更生計画認可決定後は、これらの手続は存続させる必要がなく、却つて計画遂行支障を来すことになるからであります。第六十九は、更生計画認可決定確定後の更生債権者表及び更正担保権者表の記載の効力について定めました。確定した権利についてのこれらの表の記載は確定判決と同一の効力を有し、更生手続終了後はこの表に基いて会社等に対し強制執行ができることになるわけであります。  第七十及び第七十一は更生計画遂行責任者について定めました。管財人があれば管財人計画遂行に当ります。管財人がないときは会社みずからが遂行に当りますが、裁判所整理委員選任したときは整理委員がこれに当るのであります。計画によつて会社設立するときは、これらの者が発起人又は設立委員の職務を行うわけであります。  第七十二は、更生計画遂行に関する裁判所命令について定めました。この命令に違反した者は過料に処せられることになつております。  第七十三条は、更正計画遂行の場合における他の法令適用排除について定めております。更生計画遂行を円滑迅速にするため、例えば商法規定によれば、本来株主総会の決議を要する事項でも、更正計画に記載されその計画認可されたときには、株主総会の決議を経なくても適法にこれを遂行することができるようにいたしました。又例えば計画において更生債権者更生担保権者又は株主に対し、新たに拂込又は現物出資をさせないで株式を引受けさせることによつて会社設立することを定めたときは、新会社通常会社設立方法によらず、單に定款作成し、更生裁判所の認証を得た後設立の登記をしただけで成立するものといたしました。なお税法の特例としては、更生手続による会社財産の評価換又は債務の消滅があつた場合における法人税の軽減、更生手続においてする登記登録についての登録税の減免等について定めております。  第七十四は、計画によつて新たに会社又は新会社株主又は社債権者なつた者の失権について定めました。三年間も株券又は債券の交付を請求しないような者は、これを失権させて従来の権利関係整理し、会社又は新会社更生を容易ならしめようとするものであります。なお従前株主又は社債権者であつた者が、新株券又は新債券の交付を請求するには、原則として従前の株券又は債券を提出しなければならないこととしております。  第七十五は更生計画変更について定めております。更生計画認可決定後やむを得ない事由によつて計画をそのまま遂行することができなくなつたが、計画変更すれば遂行が可能になるような場合、計画変更を許して、更生の失敗によつて生ずる無駄を省くことができることにいたしました。  第七十六は更生手続の終結について定めています。更生計画遂行を確実にするため、計画遂行されたか、又は遂行されることが確実と認められるようになつて初めて終結決定をすることができることといたしました。  第七十七から八十までは更生手続廃止について定めています。そのうち第七十七から第七十九までは更生手続廃止の決定をすべき場合を定めました。第七十七と第七十八はいずれも更生計画認可決定前の場合で、第七十七は更生計画が成立しなかつた場合、第七十八は更生の必要がなくなつた場合であります。第七十九は計画認可後の遂行不能の場合であります。第八十は、更生手続廃止の決定確定後の更生債権者表及び更生担保権者表の記載の効力について定めています。一定の範囲内で確定判決と同一の効力を認め、又は強制執行ができることといたしました。更生手続において適法に確定されたものである以上当然であります。  第八十一から第八十六まではその他の点について定めております。第八十一と第八十二は、破産宣告前の会社について開始された更生手続が不成功に終つた場合における破産手続及び和議手続との関係について定めています。更生手続開始原因破産原因より広いので、更生手続が失敗しても必ずしも破産手続に移行しないのは当然であります。破産手続又は和議手続に移る場合は更生裁判所が破算裁判所又は和議裁判所となります。第八十三と第八十四は報酬及び報償金に関する定めであります。第八十三に掲げる者は当然に費用の前拂と報酬を受けることができます。但し裁判所の許可なくして会社株式を売買する等の行為があつたときは、費用報酬の支拂を受けることができません。第八十四は、ここに掲げる者が特に更生に貢献した場合のことであります。報酬を支拂うべき者にはその職務と責任にふさわしい十分な報酬を支拂い、更生に貢献した者には報償金を支拂うというようにいたしまして、この面からも手続が円滑に進むように考慮しております。第八十五は行政庁の更生手続への関與について定めております。更生手続関係行政庁の密接な協力を得て行われなければ目的を達することが困難なので、関係行政庁に対し更生手続進行について通知し、又更生計画について意見を述べさせること等してこれを手続に関與させることにいたしております。第八十六は罰則についてであります。破産法和議法等の例に準じて規定を設けました。  以上で大体会社更生法案要綱の御説明を終ります。   ―――――――――――――
  4. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 次に破産法及び和議法の一部を改正する法律案について政府の逐条説明を伺います。
  5. 野木新一

    政府委員野木新一君) 破産法及び和議法の一部を改正する法律案につきまして、お手許に配付しておりまする印刷に基きまして逐条説明をいたします。  先ず破産法の改正から申上げます。第六条第三項、これは昭和十年法律第十五号民事訴訟法中改正法律により同法第五百七十条に第二項及び第三項の規定が追加せられ、従前の第二項の規定が第四項に繰り下げられたのでこれに伴う整理をしたものであります。第十八条から第二十一条まで、今回免責制度を採用する関係上、これらの条文に掲げる債権の全額を破産債権として取扱う必要があるのでこれを削除することにいたしました。なお第二十条後段の定期金債権については、債権額と評価額との間の差額の観念が認められるかどうかについて疑いがあつたので、これを第二十二条後段に移すことにいたしました。第二十二条の改正は、第二十条後段の規定を本条後段に移しかえたものであります。第三十八条は、免責制度を採用する関係上、本条に掲げる請求権を全部破産債権として取扱う必要があるので改正することにいたしました。右の請求権破産手続参加費用についてだけ積極的な規定を置くことにしたのは、その他の請求権は、元来破産債権即ち破産宣告前の原因に基いて生じた財産上の請求権だからであります。第四十六条、第十八条から第二十一条までを削除し、第三十八条を改正することとしたことに伴い、ここに掲げる請求権を劣後的破産債権とすることにいたしました。改正条文の第五号から第七号までの規定は、債権額と第十八条から第二十条前段までの規定により定まる額との差額の請求権を直接的に表現したものにすぎません。第五十二条、これは第十八条から第二十一条までの規定を削除することとしたことに伴い法文の整理をしたものであります。第百二条、これも第十八条から第二十条までの規定を削除することとしたことに伴い法文の整理をしたものであります。  第百五条、第百六条及び第百七条第一項の改正、裁判所法の施行により区裁判所が廃止されると共に、右各条の規定は、裁判所法施行令により「区裁判所」とある部分を「地方裁判所」と変更して適用せられていたのでありますが、今回その字句を修正したものであります。第百十三条、裁判所法の制定及び民事訴訟法の改正により、破産事件の抗告裁判所は高等裁判所となり、抗告裁判所決定は、最高裁判所に対する特別抗告の有無にかかわらず直ちに確定することとなつたので、本条を削除することにいたしました。第百十六条本条中「出張所」とあるのは法文上地方裁判所の出張所と解するほかないのでありますが、現在地方裁判所の出張所は、全国に一カ所しか設置されてないので、「出張所」が裁判所法施行前は区裁判所の出張所を指していたものであることから考え、これを簡易裁判所に改めた。「市役所、町村役場」を改めたのは、地方自治法の制定に伴う字句の修正であります。  第百三十三条第一項、「産業組合」を削ることとしたのは、産業組合法が消費生活協同組合法第百三条によつて廃止せられたからであり、「株式合資会社」を削ることとしたのは、商法の一部を改正する法律によつて株式合資会社に関する規定が削除されることとなつたからであります。「相互保險会社」を「相互会社」に改めたのは保險業法の用語と一致させることとしたものであります。第百四十六条、保險業法の改正法律により相互会社の社員の責任は、すべて保險料を限度とする有限責任とすることに改められ、又組合員が無限責任又は保証責任を負担する産業組合その他の法人は、すべて関係法律の改廃によつてもはや存在しないので条文の整理をしたものであります。第百四十九条第二項、第百五十一条第二項、これは警察法の制定に伴い法文の整理をしたものであります。  第百八十一条、改正法案第四十六条に掲げる劣後的破産債権に属するものは、従来その届出のあつた事例は極めて少く、又これらの債権議決権行使を認める実益も少いので、手続を簡易にするため第五項を設けたわけであります。第百八十六条第一項、第百八十七条、第百八十八条、これらは「裁判所書記」は、裁判所法等の一部を改正する法律の施行により「裁判所書記官」と読み替えられていたものであり、「執達吏」は裁判所法施行令により「執行吏」と読み替えられていたものであるが、今回その字句の修正をすることにいたしました。第百九十七条、経済事情の変動に応じ金額を修正したものであります。  第二百七条後段、保險業法第三十六条第二項において、相互会社の基金の拂込について準用している株金の拂込に関する商法第百七十七条第一項の規定は、商法の一部を改正する法律によつて改正せられた結果、相互会社の基金についても一時に全額の拂込を要することとなつたのでありますが、他面右改正法律附則第六条は、同改正法律施行の際すでに設立されている相互会社の基金の支拂については、なお従前通り分割支拂の方法を認めているので、本条後段の規定は一応現在でも適用の余地があるはずであるけれども、現存の相互会社には基金の未拂になつているものがなく、本条後段の適用をみることがないのでこれを削除することにいたしました。第二百八条から第二百二十四条まで、第百四十六条について説明した通り、無限責任又は保証責任の相互会社、産業組合その他の法人は現存しないのでこれに関する規定を削除することにいたしました。  第二百二十八条第一項、第二百二十九条、第二百四十条第一項、第二百四十一条第二項、現行法では、改正法案第四十六条に掲げる請求権原則として破産債権とされていないのであるが、先に述べた通り今回これを劣後的破産債権とすることとしたので、現行法が破産債権のうち一般先取特権その他一般優先権のあるものにつき、その権利届出及び債権表への記載を必要とし、且つ、債権調査期日異議がないときは、その優先権も確定することとしていることに対応して、劣後的破産債権についてもその届出及び債権表への記載に当つてはその区分を明確にすべきこととしたほか、債権調査期日異議のないときは劣後的債権の区分も確定することとしたわけであります。「裁判所書記」について字句の修正をしたのは、第百八十六条第一項において修正したのと同趣旨であります。  第二百四十五条但書本条但書を削除したのは、破産事件管轄裁判所地方裁判所に改められた結果、本条但書の規定を存置する必要がなくなつたからであります。第二百五十三条附帶私訴の制度は、刑事訴訟法を改正する法律によつてなくなつたので本条を削除することとしたのであります。第二百五十四条第一項、第三十八条及び第四十六条を改めたことに伴い法文の整理をしたものであります。第二百五十五条第一項「行政訴訟」という用語はもともと行政裁判所の裁判権に属する訴訟を意味するものであつて、日本国憲法施行後においてはこのような意味の「行政訴訟」は存しないから字句の修正をすることとしたのであります。第二百五十八条第二項第二百二十八条第一項及び第二百二十九条及び第二百四十条第一項の改正と同趣旨の改正であります。第二百七十一条第二号、第二百八十条第三号、第二百五十五条の改正と同趣旨の改正であります。第三百二十二条、第百八十六条中「裁判所書記」について字句を修正したのと同趣旨の改正であります。  第三百五十三条第二項、第百四十六条の改正と同趣旨の改正であります。第三百五十八条第一項、第三百五十九条第一項及び第三百六十条経済事情の変動に伴い罰金額の引上を行うものであります。  第三百六十六条ノ二、第一項前段は免責の申立についての原則規定であつて、同項後段は同時廃止のあつた破産者のため免責申立の機会を與えるための規定であります。第二項から第四項までは、第三百六十六条ノ十二に規定する免責の効力との関係から、免責の申立と、強制和議の提供又は第三百四十七条の規定による破産廃止の申立とを、競合的に認めるのが妥当でないので、これを避けるためのものであります。第四項は、免責の申立の追完を認めたものであります。第三百六十六条ノ三、本条は、免責の申立をする破産者に対し、債権者名簿を提出すべき義務を課したものであります。この名簿は、裁判所が次条の規定により審訊期日定め決定を送達すべき債権者を知る一つの資料となるもので、破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかつた請求権については、債権著が破産宣告のあつたことを知つている場合を除き、免責の効力が生じないばかりでなく、破産者が虚僞の債権者名簿を提出したときは、免責不許可の事由となるのであります。第三百六十六条ノ四、本条は免責の申立をした破産者の審訊期日についての規定でありまして、この期日において第三百六十六条ノ九に定める免責不許可の事由の有無が審査せられるわけであります。免責の申立については、後に説明するように第三百六十六条ノ七に掲げる者が異議申立をすることができることとしたのでありますが、これらの者に対し審訊期日を知らせるため、本条第二項及び第三項の規定を設けたのであります。第三百六十六条ノ五、裁判所は、免責の申立について裁判をするため、免責不許可事由の有無を自ら職権で調査することができるのでありますが、本条は、裁判所が必要により破産管財人調査をさせ、その結果の報告をさせることができることにしたものであります。第三百六十六条ノ六、本条を設けたのは、免責の効力を受けるべき破産債権者破産者の免責の申立について、利害関係を有する者に本条に掲げる書類を閲覧して免責不許可事由の有無を調べる機会を與え、次条の規定による異議申立をすることができるようにする必要があるからであります。第三百六十六条ノ七、第三百六十六条ノ八、免責を許すべからざる者に対しで免責を許すようなことがないようにするため、免責の申立に対して本条に掲げる者から異議申立をすることができることといたしました。異議申立期間内に異議申立があると、裁判所は、破産者及び異議申立人の意見を聞き、異議申立理由ありと認めたときは免責を許可せずとの決定をし、異議申立期間内に異議申立がないか、又は異議申立があつてもその理由がないと認めるときは、免責許可の決定をすることといたしました。第三百六十六条ノ九、破産者に対しては原則として免責を許すべきであるが、本条に列挙するような事由のある場合にも常に免責を許すことは行き過ぎであるから、このような場合には免責の申立があつても許可しないことができることとしたのであります。第三百六十六条ノ十、免責の申立をしながら、正当の事由なく審訊期日に出頭しなかつたり出頭しても陳述を拒否するような不誠実な破産者に対しては、強いて免責の手続を進める必要がないから申立を却下できることにいたしました。第三百六十六条ノ十一、免責の手続には、後記のように第三百六十六条ノ二十で第百八条を準用することとしたので、免責の手続でなされる決定は、確定を待たないで執行力を生じ得ることとなるのでありますが、免責の決定が上級審で取消されることにより生ずる煩雑を避ける必要があるので本条を設けたわけであります。第三百六十六条ノ十二、本条は免責の効力についての規定であります。「破産手続二依ル配当ヲ除キ……其ノ責任ヲ免ル」というのは、破産者の責任破産財団の限度にとどめる意味であります。配当すべき財産がないときは、配当なくしてその責任を免れることになります。破産者が責任を免れた債務は一種の自然債務となるわけであるが、破産債権者は、これを自働債権として破産法上の相殺権行使することは差支えありません。併し破産債権のうちには以上のような免責の効力を與えるに適当でないものがあるので、これを但書に列挙して免責の効力が及ばぬこととしたのであります。なお本条但書の請求権中「租税」とあるのは、第四十七条第二号の財団債権でない租税で、例えば関税、屯税、登録税のようなものを指すのであります。第三百六十六条ノ十三、免責は、破産者を更生させるためその責任を限定するに過ぎないのでありまして、免責によつて本条に掲げた者の責任までを軽減するものでないのでこの趣旨を明かにしたものであります。第三百六十六条ノ十四、免責は、破産債権者権利に重大な影響を與えるばかりでなく、後に述べるように免責の決定が確定すると破産者は法律上当然復権することになるので、第三百七十二条の規定にならつて公告についての規定を設けました。なお確定債権についての債権表の記載は、一定条件の下に債務名義となるものでありますから、免責の決定が確定したときはこれを明らかにする必要があるのでその旨を記載させることとしたのであります。第三百六十六条ノ十五、免責の決定が一旦確定しても本条に掲げる事由があることが後に判明したときには、免責を取消すのが相当であるから免責取消の決定をすることができることとしたのであります。なお本条後段の場合については、不安定な権利関係を成るべく早く除去する趣旨から免責取消の申立期間を制限することにいたしました。第三百六十六条ノ十六、免責取消の裁判をするについては、少くとも破産者及び免責取消申立人の意見を聽くのが相当でありますからその旨を定めたものであります。第三百六十六条ノ十七、第三百六十六条ノ十一の規定と同趣旨で設けた規定であります。第三百六十六条ノ十八免責後その取消までの間に破産者と取引した者は、免責のあつたことを考慮に入れて取引をしたのでありますから、その者の債権が免責の取消のあつた後、これにより復活する破産債権や免責前文は免責取消後の原因に基いて生じた債権と同等の地位におかれることになりますと不測の不利益を受けることになりますので、本条を設けました。「他ノ債権ニ先チテ」というのは、債務者の総財産から弁済を受けるべき他の債権に先だつという意味で特別の先取特権、質権、抵当権等で担保されている債権にまで優先するものではありません。第三百六十六条ノ十九、第三百六十六条ノ十四に対応する規定であります。第三百六十六条ノ二十、免責手続は、破産手続ではありませんので復権の章の第三百七十三条の規定と同様の規定をおいたわけであります。第百十八条の規定をも準用したのは、公告と送達とを共にすべき場合があるからであります。第三百六十六条ノ二十一、免責の制度を採用した以上は、本条第一項に列挙する事由のある場合にも、なお破産者に対し身分上の制限をしたままにしておくことは当を得ないので、右の事由のある場合には、破産者は、当然に復権することにいたしました。本条第二項中「……復権ハ将来ニ向ツテ其ノ効ヵヲ失フ」とあるのは、免責取消又は強制和議取消があつても、復権していた間の身上の効果にまで影響を及ぼさない趣旨であります。第三百六十七条、前条の規定を新設することとしたことに伴い法文の整理をしたものであります。  第三百七十四条第四号、第三百七十五条、第三百七十七条第一項、第三百八十条第一項、第三百八十一条第一項、第三百八十二条第一項、「裁判所書記」についての字句の修正は前に説明したところと同趣旨のものであり、罰金額を改めたのは経済事情の変動に応じたものであります。  次に和議法の改正について申述べます。第十一条は破産法第百十三条を削除することとしたことに伴う法文の整理であります。第四十四条ノ二から第四十四条ノ四まで、これは破産法第十八条から第二十条までの規定を削除することとしたことに伴い、和議法第四十五条において準用していたこれらの規定内容を直接規定することが必要となつたため、これらの条文を設けたものであります。第四十五条、右に述べた通り破産法第十八条から第二十条までの規定を削除することとしたことに伴う法文の整理をしたものであります。第六十八条第一項、第六十九条第一項、第七十条第一項、いずれも経済事情の変動に伴う罰金額の修正であります。  附則、第一項、この法律の施行期日定めたものであります。第二項、この法律施行前に破産宣告のあつた事件に対する、ここに掲げる改正規定適用に関する経過規定定めたものであります。第三項、本項前段は、改正法施行前に破産手続の解止のあつた破産者に対し免責申立の機会を與えるための規定であります。本項後段は、改正法施行の際、裁判所に係属中の破産事件破産者が、免責の申立をする機会を失うことのあることを考慮したものであります。第四項、本項は、前項の破産者のために免責の申立の追究をすることができることとしたものであります。第五項、第三百六十六条ノ二十一、第一項第二号から第四号までに掲げる事由が改正法施行前にあつた破産者の復権について規定したものであります。第六項、前項の規定による復権について第三百六十六条ノ二十一第二項の規定と同趣旨の定めをしたものであります。第七項、華士族平民身代限規則(明治五年太政官布告第百八十七号)等により身代限の処分を受け、又は家資分散法(明治二十三年法律第六十九号)により家資分散の宣告を受けた者も、第五項に規定する破産者と同様に取扱うことが相当であるから本項を設けることにいたしました。  以上で破産法及び和議法の一部を改正する法律案の逐条説明を終ります。
  6. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) この程度で休想いたします。午後は、委員室を変更いたすかも知れませんが、変更いたしました際は決定次第掲示でお知らせいたします。一時三十分より開会いたします。    午後零時六分休憩    ―――――・―――――    午後三時十九分開会
  7. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 午前に引続き委員会を開きます。住民登録法案を議題といたします。これより質疑に入ります。御質疑のおありの方は御発言願います。
  8. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 市町村当局が多年戸籍法の改正を要望して来たという御説明でございまして、どういうような具体的な動きがございましたか。
  9. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) この問題は戸籍法でなく居住に関する点です。
  10. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 市町村当局が寄留の制度の改正を要望じて来たというのですが、どういうようないきさつがございますのですか。
  11. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 今までの寄留は本籍地から変つて、住所も変りまするとやるという建前にはなつておりましたのです。なつておりましたが、実際において是非それを届出なければならんような事実が起つて来ない限りはやつておらないわけなんです。従いまして寄留簿というものと住民票というものが本当に一致しておらんという実情であります。従つて本当に住民として取扱うときにはどれによるかという問題になつて来るわけであります。ところが近頃配給制度ができましたものですから所帶台帳というものがありこれが一番住民というものを知る基礎になつておりますが、これは法令でできたものでも何でもないのでこれらの点から、並びに行政上住民として取扱うべきいろいろ法律上、事実上においての必要がたくさんありますから、そこで実際問題と寄留と一つになつて法律上ぴしつと住民を披握できるものを作ろう、こういうことが本法制定の根本趣旨と考えております。
  12. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 これに対して市町村当局が多年要望して来たというのですが、例えば決議をいたしますとか、国会に請願したとかどういう今まで経過を……。
  13. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 事実上出て来ましたのは昭和二十五年十一月二十八日に第九回全国市長会議の決議による陳情書、それから昭和二十五年十二月一日に第十四回関東市会議長会議の決議による陳情書で同趣旨のものが出ておる事実がございます。
  14. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 この制度を実施しますための費用関係はどういうふうになりますか。
  15. 小木貞一

    ○衆議院專門員(小木貞一君) この寄留の点は非常にこの法案を施行する上に誠に重大な問題でございまして、昭和二十四年度にこの寄留の事務とそれから世帶台帳の事務に、どのくらいのものが経常費として出ておつたかを調べてみますると、寄留事務につきましておおむね四億二千万円くらい、それから世帶台帳の事務につきまして約十五億六千万円くらい、合せて十九億八千万円近くのものが出ておるようでございます。この住民登録制度は提案理由のところにも申しましたように、寄留と世帶台帳二つの長町をとつて総合したものでございますので、経常費としてはこの十九億八千万円程度より以上に亘るわけではないだろうと思うのであります。ただこの制度を最初に実施いたします際に、初年度の臨時費が相当かかるものだと思われるのです。それで臨時費につきましては国家においてこれを負担する。例えば臨時費と申しますと、この住民登録票の用紙であるとか、或いは印刷代であるとか、或いは調査する人の手当であるとか、或いは市町村主任者の会議、連絡旅費であるとか、或いは通信費であるとか、そういつた種類の臨時的なものは国家においてこれを負担する、こういうような方針で進んでおるのであります。ただ現在寄留事務につきまして、平衡交付金の中でこの寄留事務の点が出てはおるのでありますがはつきりいたしておりませんので、この住民登録制度が確立されまする場合には、住民登録の事務につきまして地方財政平衡交付金の行政費目の中にどうしてもこれを明確にして、経常費についてもこの点を考えて行かなければならんというような方針をとつておるのでございます。
  16. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 昭和二十七年七月一日までの間において施行期日を政令で定めるとありますが、提案者は大体どのくらいの予定をしておられるのでありますか。
  17. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 大体七月一日で施行してよろしいのではないかと思います。相当準備期間が要りますから。
  18. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 それに対して大蔵省当局と大体打合或いは見通しが付いておりますかどうか。
  19. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 大体大蔵省と打合の上これを出しましたので、昭和二十六年度には今專門員の申しました準備費として千八百万円出ることになつております。昭和二十七年度は今までの……。
  20. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 それは補正予算で……。
  21. 鍛冶良作

    ○衆議院議院(鍛冶良作君) いや、二十六年度の予算に組んであるはずであります。
  22. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 組んでありますか。
  23. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 準備費で。
  24. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 準備費が千八百万円といたしまて、いよいよ昭和二十七年度にかかりますときに、もうそろそろ予算の編成期になつておりますが、臨時費はどれくらい御要求になる御予定でございますか。
  25. 小木貞一

    ○衆議院專門員(小木貞一君) 先ほど申しましたような構想で、大体ああいう費目につきましてこれはまあ大ざつぱな数字でございますが、おおむね四、五億程度の臨時費が計上されることになるのではないかと、こういうふうに考えております。これは大体の予想でございます。
  26. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 大蔵当局との間に御了解がついておるというのですが、数字を商売としておる大蔵省との間に四、五億というような非常にはつきりしていない、そういうまあ漠然たるものでいいかどうか。殊にこの法律そのものの中には経費の負担のことは書いてございません。要綱の中にはあとに成るべく何か国が財政の許す範囲においてというようなことが書いてあるのでありまして、財政の許す範囲において臨時費で市町村の費用を負担するということを備考に書いてある程度でありまして、その点が非常に不安だと思うのですが、その点を大蔵当局とどこまではつきりした打合ができておるか。若し何ならばこの委員会で大蔵当局の出席を求めて説明を聞いてもいいと思うのですが、殊に先ほど平衡交付金のお話がございましたが、今まで漠然と寄留の費用を平衡交付金からこれだけということがはつきりしていない。今度いよいよこういう法律を出して市町村がその事務を負担することになりますと、その点を大蔵当局なり或いは地方財政委員会なりともう少しはつきりして頂きたいと思うのですが、これに対して今までの経過なり或いはお見通しはどういう工合になつておりますかお聞きしたいと思います。
  27. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 只今の点御説明申上げます。実は法務府といたしましては昨年に昭和二十六年度の予算といたしまして、住民登録の実施に要する経費を要求したのでございます。ところが昨年はいろいろな都合で全額を認められるに至りませんで、先ほど衆議院のかたから御説明ございましたように千八百十三万八千円が計上されたのでございます。
  28. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 それは二十六年度ですか、二十五年度ですか。
  29. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 本年度の予算です。
  30. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 昨年は要求しなかつたのですか。
  31. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 昨年要求しましたが、駄目になりましたので、本年初めて千八百幾らが出たわけなのです。本年度二十六年度予算の内訳を申上げますと、そのうち約千二百四十万四千九百円というものは、この法案の中に出ておりますところの戸籍の附票の用紙代、印刷代なのでございます。それから残りが約六百万円あるわけでございますが、これは旅費たとか会議費なんかの全くの準備費用でございます。二十六年度においては市町村には何ら負担をかけないわけでございます。で法務府といたしましては、当初この住民登録は二十六年度から実施する予定で予算を要求いたしたのでありますけれども。
  32. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 どれくらい要求したのでありますか。
  33. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) これは一番当初いろいろな折衝の経過がございまして、相当多額の経費が要るものでございますから一番最初は約八億要求いたしたのでありますが、だんだん折衝いたしました結果結局千八百万円という先ほど申上げた数字になつたのでございます。これでは到底実施ができませんのでこれは準備費用ということにいたしました。ただ戸籍の附票だけでは本年度において作つてそうして市町村に配布するということで、実施は更に一年延ばそうということになつたのでございます。で結局実施に要する経費といたしましては、来年度の予算要求の際に更に今度は出さなくちやならん。それが先ほど小木專門員から御説明ありましたように極く大雑把な計算で、正確に計算してみなければ何とも申上げかねるのでありますが、大体四、五億程度ではないかという見当をつけております。
  34. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 八億要求したのが四、五億でいいのですか。
  35. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 八億と申しましてもこれは実施の方法によつて非常に違つて来るわけであります。一例を申上げますといろいろな実施方法があると思うのですが、一番完全な方法をやるといたしますと、全国一齊に丁度国勢調査と同じような工合に市町村の方で調査員というのを選びまして、その調査員を各戸に訪問させてそうして登録して行く。これが一番いいやり方なんでありますが、その調査員をどういうふうに使うか、調査員が記入をして行くようにするか、或いは各戸に紙を配つて各戸で書かせるかというようなことで以て、調査員に対する手当の問題がそれで非常に違つて参ります。調査方法によつて、一番最初の一軒調査方法によりまして経費が相当動いて来るのでございます。去年八億要求いたしました際は、非常に嚴重な方法丁度国勢調査と同じような方法でやるという構想の下にやつたのであります。と申しますのは、この調査員が各戸を訪問いたしまして世帶員の住民票の記載事項全部を調査員が調査いたしましてそれを調査いたしましてそれを調査票に記入する、それを今度は市町村役場におきまして住民票に更に移し換える、そういうような構想で八億という数字を出したのでございます。ところが国勢調査とは違いまして、住民票の記載事項もそう複雑ではございませんし、結局各戸に住民票の用紙を配りましてそうして各戸においてこれを書いて貰う、それを更に取集めるということになりますると手続が非常に簡易化されまするし、それから調査員のやりまする仕事も便利になります関係で手当なんかも少くて済むのではないか。そういう方法でやりますと約四、五億あつたらいいのではないかと考えておるわけでございます。ただ何分これは二十七年度の予算に組まれる関係で以てこの二十七年度の予算の折衝がまだ始まらんままですから、大蔵省当局が果してどの程度法務府の要求を入れてくれるかちよつと現在のところはまだなんとも申上げられない、そういう段階でございます。
  36. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 先ほどのお話では大体大蔵省との打合ができておるというようなお話だつたのですが、今の法務府の御説明を聞きますと、要求する額も四、五億という程度ではつきりしていない、それがどういうふうになるということもわからないというのですが、実情はどういうことですか。大蔵省とも先ほど話合がついておるというのはどの程度までついておるのですか。いずれこの委員会に大蔵省の主計局長なり大蔵省の責任者を一度お呼び頂いてその点を明らかにしたいと思います。
  37. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) こちらの方で二十六年度に施行するとして最初に要求したのですが、それで予算の都合上いかんというので本年は準備費だけを出す、こういうことになつたそうでありますから、あとは来年やるということは大蔵当局においては十分承知の上で準備費を出した、こういう実情であります。
  38. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 只今の御説明で八億で計画をしたけれどもそれはいけないので四、五億程度で行くような計画をしておるということでありますが、その費用の出る、出ないということは法案そのものには関係ございませんか。八億の大体予定で準備になつ法案と、今回提出されておるものと何も内容には変化はございませんか。
  39. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それは法案そのものには変化はありません。ただ実際に登録する事務の違いだけであります。
  40. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 只今大蔵省とのお話をお尋ねしたのですがもう一度、はつきり私が了解できないのですが、地方財政との関係はどういうようなお話合ができておりますか。
  41. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 先ほど專門員から説明しましたように、今まででも寄留並びに世帶台帳で相当金が要つておりましたが、その上にかかるものは平衡交付金で出すべきものだというので、地方財政委員会にもその意を伝えているはずであります。
  42. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 はずとおつしやいますが……。
  43. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 法務府からそういうことでやつてもらいということで……。
  44. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 地方財政は了解しておりますか。
  45. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 額はまだきまつておりません。
  46. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 世帶台帳との関係はどうなるのですか、登録法がいよいよ実施されると。
  47. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 世帶台帳は勿論要らない、前の寄留簿も要らないことになります。
  48. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 二十四年度に寄留世帶台帳に十六億五千万という非常に巨額の費用が要つておるようなお話ですが、この法案が実施されますと四、五億の程度で行けるのですか、それとも臨時費だけがそれだけで経常費はもつと沢山要るのですか。
  49. 小木貞一

    ○衆議院專門員(小木貞一君) 四、五億程度というのは臨時費だけでございます。それを合せて十九億何ぼと申しましたのは二十四年度における経常費を実は言つたわけであります。その四、五億程度は概算でございますけれどもこれは国庫で負担しよう、こういう構想だということでございます。
  50. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 経常費は全部地方費の負担という御予定ですね。
  51. 小木貞一

    ○衆議院專門員(小木貞一君) そういうことです。
  52. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 そうしますと、両方で二十億ほどの寄留と世帶台帳ですか、それが一本になるとどれくらい節約できる予定でございますか。どうもはつきり勉強してないようですね。
  53. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 実はこの制度を実施しますにつきましては経費が一番問題になると思います。昨年法務府の出先機関でございます法務局と地方法務局を使いまして、全国のまあサンプル的に市町村を選びまして実情調査をやつたわけでございます。で各都道府県に人口五千ぐらいの町村、人口一万前後の町、人口五万前後の市、人口十万前後の市と平均各都道府県に四市町村を選びまして、住民登録実施の暁において影響があると思われます行政事務につきまして経費その他の関係を実情を調べたのでございます。でこの寄留に要する経費の四億、世帶台帳に要する経費の十五億というのも実はそのサンプル調査の結果を全国に引直してこういう数字を得たわけでございます。その際併せて、この住民登録が若し実施になつたならばその他の行政事務で果して経費の節減になるかどうか、若しなるとすればどのくらいの節減になるだろうかということをまあ調べたのでございます。でそれを法務府の方で全国的な集計をいたしました結果、約一億八千万円ぐらいの経費の節約ができるのではないか。その主な経費の節約面は選挙人名簿の調整、学齢簿の調整、予防接種法の施行の関係で、市町村では予防接種の記録を作つておるのであります。これを通俗に予防接種台帳と申しておりますが、予防接種台帳の経費節約、これが主な面じやないかと思われるのでございます。その選挙人名簿、学齢簿、予防接種台帳、こういうものの調整に住民登録というものを利用いたしますと、一億八千万円という経費の節約が一年間に出来るという数字を得たわけでございます。併しながらこれはまあ各市町村の実際の行政の運用についてそういう数字が出ましたのを集計いたしましたので、果して実施の暁正確にそのまま現われるか、或いはこれより減るか殖えるか、これは何とも申しがたいのでありますけれども、一応そういう数字になつております。
  54. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 法務府自身でも御自信のない御調査のようですが、それを地方財政の方では大体そのサンプルで調査なさつたのに対して同意をいたしておりますか。地方財政ではまだ別途の計算を持つていますかどうか。
  55. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 地方財政委員会でも特別にこのために調査をなすつていないようであります。
  56. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 あなたの方で調査したのを地方財政では了承して話はついているわけですか。
  57. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 調査方法はいろいろあります。併し結果はこういう結果になるということを向うに伝えてありますけれどもこれを承認しているとは言えない、又併し承認しないとも言つておりませんので、これはやはり地方財政委員会でも別途にこういう調査をすべきじやないかと思いますが、各方面からやはり調査いたしてみませんと正確に言えないのじやないかと思うのです。
  58. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 これは国会に御提案にになるについては、大蔵省並びに地方財政委員会とももう少しそれぞれ十分な基礎を固めてお出しになるべきです。今伺つて見ますとですね、法務府が若干の調査をなすつたが地財委はしていないと、それならば法務府の調査を了承するかというとそこまで行つていない。そうすると地方財政委員会に又聞いて頂いていろいろやつて貰わなくちやならんということで、我々の審議に手間を要する。もう少しはつきり固めて提案になることはできませんでしたか、殊に昨年から準備しておられて。
  59. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 地方財政委員会とは、つとに連絡いたしておるのでございまして、昭和二十三年の十一月に寄留制度改革審議会というものを作つたのであります。その以前から寄留制度の改正ということが問題になつておりまして、二十三年の幕に寄留制度改革審議会というものを法務府内に設置いたしまして、それには地方自治庁、地方財政委員会事務局、それから全国選挙管理委員会事務局、そういう地方行政に密接な関係のある庁からも委員並びに幹事を出して頂きまして、その委員会で共同で討議いたしまして、二十四年の二月に寄留制度改革審議会の答申ができたのでございます。それを寄留制度改正要綱といいまして法務府の民事局で作りまして、お手許に差上げてあります住民登録に関しまする資料の中に人づております。その要綱に基きまして実はこの法案の原案というものができたわけであります。でありますから、その当時からこの経費の点は、つとに問題になつておりまして、只今申上げましたこの寄留の経費が幾ら、世帶台帳の経費幾らというこれだけの数字、節約できる数字が幾らという最後の数字については、地方財政委員会といたしましても賛否の意見はなかなか表しがたいと思うのでありますが、当初から結局、今の寄留の世帶台帳を廃止する、それから事務実質を見ましても寄留と世帶台帳とを合せたものにほぼ匹敵する。人員も寄留の人員と世帶台帳の作成に従事しておりますところの多数の職員とを合せれば、住民登録の事務というものはほぼ賄えるのではないか。それから事務量からいたしましてもやはり寄留と世帶台帳の事務を合せたものとほぼ匹敵いたしますが、極く常識的に大ざつぱに考えましても、今の寄留と世帶台帳の経費があれば賄えるのじやないかということも常識的にいえるわけなんでございます。でありますから、その事務のことにつきましては地方財政委員会も了承いたしておるわけです。ただこの数字をピシヤリと出してこれが果して正確かどうかということになりますと、これは全面的にそのまま直ちに賛成できる、できないということは、これは地方財政委員会としてもちよつと無理、困難ではないかと思いますけれども、大体においてはそういう方針並びにその経費の大体のことと、これについては地方財政委員会も了承いたしておるのであります。
  60. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 選挙人名簿との関係はどうなりますか。
  61. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 直接の関係としては法律にはありませんが、選挙人名簿を作るときの住居の基礎はこれによつて定まるわけです。だから非常にその関係が深い。
  62. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 今の御説明に、選挙人名簿、学齢簿或いは予防接種の基礎になる帳簿とういうものとの重複が非常に避けられるという、それは技術的にはどういうふうになつていますか。
  63. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) いや、選挙人名簿は、そういうものはこしらえんでもいいというわけでじやありません。
  64. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 寄留を基礎にしてやつているよりは、この登録ができると一億八千万ほど節約ができるという今の御説明がありましたが、それはどういう関係で……。
  65. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 今のその世帶台帳と寄留簿と両方動いておりますのでそれで金が要るのです。
  66. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 いや選挙人名簿の関係をお話なりましたね、選挙人名簿を作るとき、登録簿ができておると便利で節約ができるというお話なんではないですか。
  67. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それはそうです。
  68. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 選挙人名簿を作ります際には、いろいろ市町村の作り方によつて方法があるところでございますが、これはたしか九月十五日の現在で抑えることになつているのですが、その数カ月前から市町村では係員が管内を廻られまして戸別調査なんかやつておる所もある。それから場所によりましては配給世帶台帳を基礎にしてやつておる、それを参考にして選挙人名簿を作つておる所もあるのであります。いずれにしましても、この市町村でその職員を使いまして各戸を廻らせてやるということになりますと、職員の数もたくさん要りますし経費もかかるのは勿論でありますが、世帶台帳を基にいたします際に、本籍が不明であつたり、それから殊に年齢が正確でなかつたりする関係上本籍地に照会すると、そういうようなことにやはりいろいろ調査費用がかかつているのであります。それから選挙人名簿を作ります際には、選挙人名簿基礎台帳というのがございまして、台帳ができておる所が多いのであります。それは移動ごとに差し替えたりしまして台帳ができております。それらの台帳の調整費が相当かかつているのであります。住民登録ができますと選挙人名簿のために別にそういうことをすることがなくなる、年齢なんかも戸籍と照合をしてはつきりしたものが載つておりますのでそういうものが全然必要がなくなる、更に選挙人名簿の基礎台帳というようなものも必要がなくなるのであります。ただ選挙人名簿だけは別に作る必要があると思うのです。そういう面で経費の節約ができると思います。
  69. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 選挙人名簿の基礎台帳というものは法律的なものじやない、市町村が便宜的にやつておるのですか。
  70. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) さようでございます。今選挙人名簿基礎台帳は東京都なんかでは作つております。全国の市町村で作つておるのじやなく、かなり経費がかかつておるようであります。
  71. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 最初の御計画では八億、節約すると……、今度節約しても四、五億という臨時費でお始めになるわけですが、国勢調査をいたします際に、同時に調査員というような制度を活用して発足しますれば、非常にその臨時費が少くて済むのであります。折角国勢調査制度があるのだから、それを機会にこの法律を出発させるという点についての何か御工夫はなかつたのでございますか。
  72. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 実は昨年の十月一日に国勢調査がございまして法務府でもそれを考えまして、国勢調査責任庁であります総理府の統計局と折衝いたしたのであります。ところが統計局の方とは、調査項目が大体同じようなことではありますけれども、かなりやはり違つておるのであります。それからこちらで考えております住民票、向うでは国勢調査調査表、個表と申しますか、になつておりますが、記載事項が大分違うのであります。統計局では調査事項と記載が違うのでこれを一緒にやられると、国勢調査調査員が頭が混同しまして、国勢調査の施行そのものが正確性を非常に欠いて来ることになる。それで同じ調査員を使つて住民登録の調査員にすることはいいけれども、これを時期をずらしてやるべきであるという意見がありました。これは成るほど国勢調査の正確な統計資料を得るという目的からいいますとその点尤もでありますので、同時に施行するということは無理がある。時期をずらしますと結局同じことでありまして、国勢調査選任された調査員をこちらでも利用する、併し手当はやはり別に拂わなくてはならんというようなことになりますので、経費の点では全然節約にはならないのであります。そういういきさつがあつたものですから、国勢調査と一緒にやるということは一応考えたのでございますけれども、実行できなかつたという次第であります。
  73. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 セクシヨナリズムと申しまか、いろいろの役所からいろいろな仕事が結局末端ではあれもこれもみんな皆負い込まされて困つておるという実情でありますが、私実際調査を受ける国民としてもそうだと思いますが、今のお話を伺いますと統計局の立場もございましようが、もう少しその間の調節を保つて国勢調査には目的がございましようけれどもその間を調節すれば、現実に住民登録されているそれを基礎にして国勢調査をするということが、私は国勢調査の趣意にも、又登録を活かすという意味においても意味があると思うのですけれども、只今伺いました御説明だけでは一緒にやろうという熱意が足りなかつたのじやないか。或いはもう少しその間にお互いに国民の立場を考えて工夫をなさるべきでなかつたか。今の法務府の立場としてはどうしても内閣の方も承知しないし、あなたの方も承知できない。これはどうしても喧嘩わかれで別々にやるのだ。何とかその間にもう少し歩み寄つて実際の国民の生活に即したものを作り、又国民自身も応接にいとまなからしめるようなことのないように、そういうような御親切はございませんですか。
  74. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それは私も左藤さんのお説は大賛成なんですけれども、実際からいいますと仕事をする官庁が違つて内容が違つたらやつてくれないのです。この国勢調査には氏名、年齢、男女の別、それから世帶主くらいまではいいかも知りませんが、第一戸籍、本籍の表示、それから移つて来た年月日、そういうようなことになりますると、国勢調査では必要でないものも入つて来るものですから、お前のところでやつたらついいじやないか。これは実際は役所が違うとやつてくれない実情です。これはやるのが当り前です、みんな公務員なんだから。けれどもなかなかそういうわけにはいかんのが今までの実際のやり方と思いますが、国勢調査は現在……。
  75. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 どれくらい食い違いますか。
  76. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 国勢調査となりますと、日本国内におる人間を一定の時点におさえまして全部やるわけであります。この住民登録はその市町村の住民を把握するというので、その市町村に住所を持つておる者を登録する。これは行政事務の便宜からいいますと、住所を持つておる地方自治法にいうところの住民を把握すれば足りるというので、大体においては範囲は似ておりますけれども、やはり若干適用の対象が違つて来るのでございます。  それからもう一つありますのは、国勢調査の結果作られますところの調査表、これは市町村の行政事務には使えないことになつておるのであります。全国的に集計をして数字だけは公表してこれを出すけれども、誰が世帶主で誰が世帶員であるという個々のものは表に出してはいけない、公表してはいけない、従つて又市町村でこれを行政事務に使用するというようなことはできない建前に統計法上なつているのであります。これは統計の正確を期するために調査表と申しますか、個表は行政的には利用できない。従つて国勢調査で作りました調査表は全部統計局に集めまして、市町村や都道府県には置いていないはずであります。従いまして住民を把握するということになりますと、誰がどこの住民であるか、本籍はどこ、年令は幾つという工合に個個的に個人的にはつきりしなくちやならんのでありますから、国勢調査では全然そういうことができない建前になつておるのであります。ところが国勢調査と住民登録と一緒にやりますと、やはり市町村としては同時にやりまするので、どうしても対照をする。国勢調査調査表と住民登録の住民表と対照する、そうして果して正確であるかどうかということを対照するというようなことになりまするというと、国勢調査調査を受けましたところの国民は、どうせ市町村で対照されるのだつたらこういう点がバレてはいけないというので嘘を書くというようなことで以て国勢調査の正確性が失われる。そういうようなことも考えられるわけであります。でありまするからやはりどうしても統計法に基きまして国勢調査によつてできましたところの調査表というものは行政事務には使えない。そういう面からもどうも一緒にやるのはまずいのじやないかと、これは何も統計局と法務府との間に意見の対立があつたわけでなくて、統計法の趣旨を尊重しまして法務府としてもこれは一緒にやるべきものじやないという結論に達したわけであります。
  77. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 鍛冶議員非常に私の意見に御賛成を頂いたのですが、なかなか役所の事情でむずかしい。今役所の事情については法務府のほうからお話がございましたが、国会としては若しその点を調整する意思があるならば統計法を改正することもできるわけでありまして、こういうようなセクシヨナリズムをできるだけなくして行くことが我々国会の任務だと思うので。
  78. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 御趣旨は賛成ですが、ちよつとやはりいかんと思います。国勢調査の対象とこの対象は対象が違うわけであります。ただ一致するというところがあるだけなんで、旅行者でも警察までも国勢調査は調べるのでしよう。たまたまそこへ来ておつてもやる。これはもう住所があるというだけでやるのですから、だからもうそれは別にしてやらなければならん問題があつてちよつとやはり一致しないように思います。ただ一致するところも大分ありますけれども、やはり狙いが違うわけですからちよつと工合が悪いのじやないかと思います。趣旨はもうそうあれば一番いいのです。二枚持つてつてやればいいじやないかという、そうできれば言うことはありませんがそれはなかなか容易にやれないのじやないですか、殊に素人を使つてやりますから。
  79. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 私は二枚持つてつてつて、官庁吏員が、登録は国勢調査は全国一齊にやるのですが、その一齊に二枚やらしてあとを調査員がだんだんと補填して行けばいいので、私は同じ調査員を使つて折角国勢調査をやるときに同時に出発するということが便宜でもあり、受ける国民側も一つでありますから、経費その他の点においても又国民にこれを周知せしめて協力させる点からも工夫次第によつてはできるのではないかと思いますが。只今伺つただけの理由ではそれは不可能だと法務府も投げてしまう、又国会も投げてしまうほどの強い理由はないように思うのであります。
  80. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) もう一つだんだん考えて来まして工合いが悪いのは、ここに住所があつてもおらなければつけないのです、国勢調査では。ところがこれはおらんでも佳所があればつけなければならない。そこに大変な違いが出て来る。さつきのはおる者について、これは旅行者でも何でもこれは除かれなければならない、今度はこの町におらんでも国勢調査ではつけんでもいいが住民登録はつけなければならん。そういう差異が出て来ますから。
  81. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 それはどのくらいのパーセンテージが出て来ますか。そういうことはあとからいくらでも補填して行けるので、訂正して行けるので、画期的なこういうものをやるのに国勢調査と一緒に出発するということは国民に協力させるという点からも意味があると思うのであります。まあ伺つてみると、役所の事務的の不便だけのために国民に二度手間をかけさせる、もう少し私は親切に、いろいろむずかしい点もありましようがその点をまあ法務府と内閣と話合つて一つ……、若しどうしてもいけないということがあれば統計法そのものの修正もできると思うのであります。もう一つ私は努力が足りないように思うのであります。
  82. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 只今の点は結局技術的の問題でございまして、調査員というものは結局住民票と国勢調査取扱方法を使い分けなくちやならない、それが非常にむずかしい。で、調査員もいろいろな資質を持つ人がなるわけですがそこがうまく使い分けが行かない。それでどちらも正確を欠くという点をやはり統計局も恐れ、私どもの方でも恐れたわけであります。やればできんこともないし、国民の側からいえば一遍で済むからいいということもありますが、どちらも正確を欠いて来るということもありますし、まあ国勢調査におきましては一定の時点におきます総人口数字というものに非常に重きをおきますので、そこに誤差がありますと国勢調査をやつても何にもならんのでありまして、数字の正確を期するという点からむずかしいのじやないかと思うのであります。
  83. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 只今のお話は両方一緒にやつてマイナスが出るというのですが、私は又両方補い合つて正確を期するということもあると思います。果して今おつしやつた意味でどこまで一〇〇%確実かどうかということについてはこれは問題があろうと思います。住民登録という恒久的なものと相補つてやはりそのために又正確を期するプラスの面も出て来るのじやないかと思いますが、これは私の意見ですが。  それからこれは今ちよつと忘れたのですが、統計法十五条ですが、「何人も、指定統計を作成するために集められた調査票を、統計上の目的以外に使用してはならない。」とおつしやつたのですが、その第二項に「前項の規定は、統計委員会の承認を得て使用の目的を公示したものについては、これを適用しない。」とあるのですが、先ほどの御説明についてはこの第二項を適用すれば不都合はないと思います。統計法を私は場合によつて修正してもいいと思いましたが、あえて修正しなくてもいいようになつているのです。
  84. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 問題は二項を活用いたしまして、国勢調査で使いました調査表を住民票と同じように活用できれば、これはもう申分ないのでありますが、そこまでに飛びますとやはり統計が成果を達せない、第一項の目的上するところが全然達せられなくなるのじやないか。それで調査票を住民票と同じような目的に使うということは統計局にも相談したのでありますが、ちよつとそれが実際問題として不可能だということだつたのであります。
  85. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 それは統計局の事務当局ですか、統計委員会とのお話合でございますか。
  86. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 統計局の事務当局との話合であります。
  87. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 委員会にお話して委員会としてこれは困つたということがあつたのですか。
  88. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) これは常識上相談するまでもないことと私どもは考えます。統計委員会に正式に書面で以て聞いたことはございませんけれども、統計の常識上これは当然のこととして了解されていいのじやないかと私は思います。
  89. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 そうするとこの第二項はどういうことですか。殆んど死文になるのじやないですが。
  90. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 具体的にどういう場合ということになりますとちよつと私も今直ぐ思い付きませんが極く限られた場合だと思うのであります、一項の目的というものがそういうふうに行政上使われるということになりますと、どうしてもやはりその調査員に対して嘘の申告をする。それを防ぐのが一項の目的なんでありまして、その目的からいつて調査票を行政事務にどんどん使うということになりますと、これは統計の正確性を非常に害されるのじやないかと思うのであります。
  91. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) これは何ですね。今までの研究の結果を報告しておられますが、これは施行に当つての実際の方法ですからして、まだ一年余りもありまするし、なおそういう機会があつたら今一遍一つ法務府なり何なりで研究させることにして、御注意は十分伝えることにして行きたいと思います。
  92. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 そうしてそういう努力によつて次の国勢調査を早めるとか、次の国勢調査の機会までその実施の附則の方を国勢調査の機会までとめるようにするか、そういう御意思がおありなんですか。
  93. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 私の考えでは二十七年の七月一日ですから、それまでにそういう機会でもありますれば……。
  94. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 それはもう国勢調査はきまつているのですからそれに合うようにこれをお出しになるか、或いは国勢調査をずらすようにその努力をなさるか、四年ですから……。
  95. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) そうすると、ちよつとないですね。
  96. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 去年済んだのですからもうあと二年お待ちになる意思があるかどうか。
  97. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) それはちよつと困りますね。今この法律を急いでいるのはいろいろな関係で、準備期間として一年置いているのですから、そういう機会でもあればもう一遍研究させるということを考えます。
  98. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 一昨年からいろいろ、もつと遡つて言えば二十三年ですか、法務府に審議会を作つてからの問題なんでありますが、それから現在に及んでいるのですが、それをもう二年ぐらい、次の国勢調査までどうしても讓れない緊急性があるというふうにお考えになりますか、提案者は、折角私に御共鳴下すつているようだが、四年に一遍ということをお聞きになつてからにわかにむずかしくなつたようですが。
  99. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 緊急といつても今日明日ではないのですが、これはやはり一日も早い方がいいのですが、若しそういう機会があるならばと言いましたが、機会ということはどうもそういうことは受け合い兼ねますが。
  100. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 それでは私は一先ずこれで終ります。
  101. 伊藤修

    ○伊藤修君 先ずお尋ねする前に、この法律でしばしば使われているところの住民の意味と世帶の意味というものを先ず伺つておきたいのですが、それから住所と三つ
  102. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 第一番に住所の意味からですが「これは旧来の民法に使つております意味と同一に解釈しております。従つてその町村に住所を有している住民と、こういうことになるわけでございます。それから世帶は、これは事実問題でありまして、生活を一緒にしている一つの団体と、こういうふうに解釈しております。
  103. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうするとこの住所は、あなたの今の意義からいうと、民法にいうところのいわゆる生活の本拠をいうということにそれは適応する、こうおつしやるわけですね。
  104. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) その通りです。
  105. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうすると、この住所というものに対するところのこの住民登録法によるところの住所というものが決定された場合には、他の法律にいう住所として同一に取扱つて差支ないわけですか。
  106. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) そう言われると面倒になるが。(笑声)
  107. 伊藤修

    ○伊藤修君 面倒ですから聞くのです。
  108. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それはそういうことにならなければならんと思うが。
  109. 伊藤修

    ○伊藤修君 ならなければならんではいかん、信念を伺つて置かないと。
  110. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) やはり何というても直接住民と接触しておる市町村で認めた住所というものが一番基礎と思います。併しそれは違うのだといつて法律上争うことになれば裁判所決定してもらうということになるのであります。民法に基いて住所と認めた、その認めたものがその者のおるところの町村である。そうして見ればその町村が一番有力なものであるからこれが優先する。こう解釈せざるを得んと思います。
  111. 伊藤修

    ○伊藤修君 私のお尋ねしようというのは、それだから先に意義を聞いたのです。先ほど来説明を伺つておりましても、この住所というものに法的公証力といいますか信憑力というものを與えておるがごとき御説明のようでありますが、例えば選挙法の問題の場合にも、その他の法律の場合においても、この住所に対してどの程度の公証力というか法的根拠を與えるのか、その点をはつきりさして頂きたいと思います。お説のようにただ参考という程度にこれを見ていいのか。折角住民登録法というものをお作りになつてそこに住所というものをはつきりここに確定しようという御趣旨であろうと思うのです。ただ参考だけに住所というものをお書きになるということでは寄留と何ら変らないと思うのです。又裁判でこの住所が争われるというようなことは、いわゆる反証なき限りは、いわゆる住所と推定するというぐらいまでの観念がなくちやならんと思うのです。
  112. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) その意味ならば公証力があると思います。ただそうでないという争いがあつた場合に絶対かと言われれば、これは事実なんですから、生活の本拠があるかないかということの事実について争いがあるならば、これは裁判所変更しようけれども、市町村がここに住所ありとして証明を出せるのですから、その証明には一定の今言う証明力を持つておるものと解釈して差支ないと思います。
  113. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうすると、その住所の証明力に対して今鍛冶さんの御説明によると相当の信念があるようでありますが、例えば選挙法の場合において、住所の移動によつて被選挙権が喪失する場合がある、その場合において他に証明がない場合においてはこれを以てその基礎とすることができると思いますがね。
  114. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 一応基礎とせざるを得んと思います。
  115. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうすると、これに対して選挙権の有無ということは、住民登録法によつて作ればいいことになるものでありましようか。先ほどただ参考というふうに御説明があつたのでありますが、そうすると、今の御説明によれば、この住民登録によつて選挙人台帳というものを作ればいいことになるのですか。
  116. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 勿論参考というかこれを基礎にして選挙簿を作る、従つて選挙簿ができました以上は一応それで確定しておることになります。ただやがてそれは実際にそこになかつたのだ、移転の時期が違つて来たのだ、こういう事実に対して争いがあれば別ですが、一応それに対する法律上の効果は現われなければならんと、こう解釈しております。
  117. 伊藤修

    ○伊藤修君 くどいようですが法務庁の御意見どうですか。
  118. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 同じように考えております。
  119. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうするとあらゆる他の法規にいうところの住所というものにつきまして、この法律の住所を基礎とするということにいうて差支えないわけですね。
  120. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) いいです。絶対とは申しませんけれども。
  121. 伊藤修

    ○伊藤修君 それは絶対か絶対でないかということは事実問題で、ただ法律観念において、いわゆる生活の本拠というものは住民登録法による住所を指すのだ、こう言い換えてもいいわけですね。
  122. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) そこまで言われると、言い換えるとなると、住民票に記載されておるものは一応そこに住所ありと認めて差支えない、こう答えますが、逆にそれでは載つた以上は必ず住所ありと認めるかと言われたならば、或いはこれは事実が違つておるかも知れない、人間の認定ですから。そこまでは言われませんが一応そこに認定力を持つ、証明力を持つ、而うしてその法律上の効果を認めて差支えない、こう言わなければならんと思います。
  123. 伊藤修

    ○伊藤修君 法律上の効果を認めて、ここで折角法律案を作られて、住所という意味を格付けされる言い方ですから我々そうありたいと思います。この法文の中に住所地という表現がなされておるのですが、これは場所を指すのですか。例えば第六条第三項に、他の法律の用語例から行きますと、地というのは私が御説明申上げるまでもなく最小行政区画を指すというふうに解釈が殆んど通説になつておりますから、ここに住所地という言葉を改めて用いられたのですがそういう場合と大いに異なるものだと思う。
  124. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 今の場合ちよつと具体的に、第六条ですか。
  125. 伊藤修

    ○伊藤修君 第六条の第三項でもよろしい。その他もたくさんあります。都市の行政区画を指すものにあらずして場所を指すものと我々は読みますが。
  126. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 第六条の第三項の場合、これはやはり地は市町村行政区画でございます。従つて行政区画が変らなければこの必要はないことになります。
  127. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうするとたくさん出て参りますが、この法文中に地とあるのは土地の最小行政区画を指すものと解釈したらいいですか。
  128. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) そう害われるとどこかに工合の悪いところがなかつたかな。(笑声)
  129. 伊藤修

    ○伊藤修君 私もよく見ていなかつたけれどもたくさん出て来ます。
  130. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 地は大体それでよろしうございます。
  131. 伊藤修

    ○伊藤修君 なお精読してみますがそう伺つて置きましよう。  それからこれに附票とか住民票とか票という文事が使われているのですが、この形式は結局カード式ですか。
  132. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) カード式になるのだそうで書式も参考資料に出ておるはずですが。
  133. 伊藤修

    ○伊藤修君 いわゆるそのカードに公証力を持たせるわけですか。
  134. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) これは参考についておりますが、こういうものがついております。
  135. 伊藤修

    ○伊藤修君 これは公文書の中ですか。
  136. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) そういうことです。
  137. 伊藤修

    ○伊藤修君 カード一枚々々が公文書、今までの戸籍法、寄留法と同じような、これに対して市町村で何か認証されるのですか、その票が公文書になるのですか。
  138. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) これには責任者の印を捺して公証力をつけることになつております。
  139. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうすると、カード一枚一枚に市町村長の署名捺印が入るわけですか。
  140. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 判を捺させる。
  141. 伊藤修

    ○伊藤修君 誰の判を捺させる。
  142. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 取扱人。
  143. 伊藤修

    ○伊藤修君 取扱人の判でもつてその市町村の公文書になるのですか、それに基いて今度証明書が発行されるのですから。
  144. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 最初の実施の際にはこれを各戸に書かせるというふうに考えております。それを市町村に集めて参りまして、そうして市町村で内容を検討しましてこれでいいということになれば、やはりこれは最初だけは市町村長の職印を捺させる、それで最初は本人が書いたものだけれどもすべて市町村の正式に作つたということにしよう、そういうふうに考えております。それから市町村に今の戸籍簿、寄留簿でもそうでありますが、記載をいたしますと記載のあとに、戸籍や寄留でありますと、市町村長の職印或いはその代理者の印が捺されるわけです。この住民票におきましても、やはりその後、事項欄とありますが事項欄に記載をいたしまして、そのあとに市町村長の職印にしますか、或いは認印にいたしますか、ここはまだ決定いたしておりませんけれどもとにかく印を捺させよう、そういう方針で考えております。
  145. 伊藤修

    ○伊藤修君 私のお尋ねしたいのは、結局その住民票というものは住民が書いて出すのですから、いつ公文書にかつて来るかということが問題になつて来る。それが仮に抜き差しされた場合においてどうなるのか。それから公信力というものは一体基礎があやふやじやないか。殊にカード式ですから抜き差しは自由ですから、今法務府の御説明は、現在は帳簿になつておるのですからそれはもう明らかに公簿と認証できる。ところが伝票ですから一枚々々に認証がなければ、私はそれに対するところの公信力というものは保たれないと思う。従つて公文書というそれに基いて発行した証明書はどういう結果になるか、これによつて法的に疑義が起つて来るわけでありますから御説明では満足できない。
  146. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) やはり責任をとるものがこれに公証力を持つだけの署名なり、捺印が必要と思う。どうあつてもそうなくちやならんと思う。
  147. 伊藤修

    ○伊藤修君 そうすると、本法においていわゆる住民票の要式行為を明記する必要があるのじやないでしようか、それは政令、そういうものに讓るべきものではないと思いますよ。基本的なものであるから法文の中に明らかにする必要があるのじやないでしようか、基本的なものですから。それは何もかも政令に委ねるということは余りよくない。それは今のは帳簿だからカードというのは想像していない。この頃は官庁はよくカードを使用したがるですが、カードは公簿とての何かの形式をはつきりさせて置かなければいかんと思うのですよ。
  148. 小木貞一

    ○衆議院專門員(小木貞一君) 現在戸簿法の百二十五条で、やつぱり戸籍の要式につきましてはこれを命令に委ねておりまして、戸籍法施行規則というものでその要式をきめておるわけであります。同じ方法で同じような考え方でこの住民登録の場合も第三十四条によりましてこれを政令に委ねて要式をきめようという考え方をとつております。  それから先ほどのこれはカードになつているから取りはずしが自由になつて非常に困りやせんか、いろいろな弊害が起りやせんかというお話でございますが、これはとじて鍵で施錠しまして抜き差しできんようにしておきます。現在登記のやつ、あの方法をとろう、こういうふうだそうでございますから御了承願います。
  149. 伊藤修

    ○伊藤修君 今の引用になりましたいわゆる戸籍法の制定の場合は、いわゆるカード式を予定していないのです。いわゆる帳簿を予想しているからそういう規定になつているのですけれども、ここでは住民票という一つの新らしい形式を打出しているのですから、従つて住民票の何ものたるかということを私は基本的に明示する必要があるのじやないかと思うのです、それが親切じやないかと思う。それはいわゆる予防の問題ですが、予防の問題はわかります。
  150. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 登記簿にもそういうことは出て来るわけです。やつぱりそれらにならつて嚴重に政令できめるようにやりたいものだと思います。
  151. 伊藤修

    ○伊藤修君 登記簿には一葉々々署名があるでしよう、署名がたしかあつた。これは本法中に簡單な形式だけは明らかにすればいい。住民票の作成法を明らかにするとかどちらかにせんというとこの漫然市町村の条例に委ねたり、何かすると……。
  152. 小木貞一

    ○衆議院專門員(小木貞一君) それは政令に委ねてあります。
  153. 伊藤修

    ○伊藤修君 三十二条と三十三条のこの過料と刑罰との比重ですね、これはどういう根拠から出て来るのでありますか。
  154. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) この三十二条のはいわゆる懈怠に対する過料なんです。三十三条になりますると、これは妨害した行為で罰則といたします。その意味で異つておるのであります。それからあとその内容はほかの法律との均衡をとつてきめたはずでございます。
  155. 小木貞一

    ○衆議院專門員(小木貞一君) お手許に先日お配りいたしました逐条説明の所にもちよつと書いてございますが、三十一条、三十二条のはそこに書いてございますように、戸籍法の大体百二十条と百二十三条と同趣旨にこれはきめたものでございます。三十三条はこれはほかの法律にならいまして、例えば労働基準法百二十条、兒童福祉法の六十二条、統計法の十九条その他たくさんございますが、若し御必要でございましたら表をお手許の方へ配りたいと思います。
  156. 伊藤修

    ○伊藤修君 市町村吏員の質問に対し陳述を拒んだだけでこういう重い罰金に処することがあるのですか。
  157. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) あるのです。たくさんの例があります。
  158. 伊藤修

    ○伊藤修君 市村町の吏員の質問に対して陳述を拒んだだけで五万円の罰金に処せられる。
  159. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 市町村の吏員に対してと言われると何ですが、こういうことでほかの法律でやつておるのはこの事例がいくつもあります。
  160. 伊藤修

    ○伊藤修君 こういうことで……。
  161. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 労働基準法、兒童福祉法、統計法、船員法、漁業法、地方公務員法、国家公務員法とか……。
  162. 伊藤修

    ○伊藤修君 それは市町村吏員に対してですか。
  163. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) そうではありません。
  164. 伊藤修

    ○伊藤修君 これは市町村吏員を軽しと見るわけではないのでありますが。
  165. 岡部常

    ○岡部常君 先ほどのと関連したことで住民票の作成ですが、この作成は初めは住民から提出させるということでございましたが、それはやはり一齊に同日にやらすのでありますか、丁度国勢調査と同じようにやらすというおつもりですか。大体その期日というようなことは予定されておるのでありますか。
  166. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 七月一日ということに予定しております。
  167. 岡部常

    ○岡部常君 施行期日と一緒になるのでありますね。その費用が八億とか。
  168. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 去年要求いたしましたのは八億でありました、当初要求いたしたのは。
  169. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 統計法はこれは調査員に対する不申告の場合ですがこれは五千円ですけれどもちよつと前の法律ですから、それで均衡をとつて五万円にしたのですが、「第五条の規定により申告を命ぜられた場合申告をせず、又は虚僞の申告をした者」「命ぜられた調査につき申告を妨げた者」検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、調査資料を提供せず、若しくは虚僞の調査資料を提供し、又は質問に対し虚僞の陳述をした者」、こういうことになつております。
  170. 伊藤修

    ○伊藤修君 作為の場合でなく、質問に対して陳述をしないという不作為の場合は。
  171. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) これにあります。
  172. 伊藤修

    ○伊藤修君 質問に対し陳述しないということがあるがどうか。
  173. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それでこれは衆議院では修正したのです。今の黙つておるのは罰しないことになつたのです。
  174. 伊藤修

    ○伊藤修君 黙つておれば不問ということですね。
  175. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) そういうことです。そういうことに訂正した。刑事訴訟ですらそうやつておるのにいかんじやないかというので訂正したのであります。
  176. 伊藤修

    ○伊藤修君 質問しても黙して語らざる場合はこの罰に該当しないというわけですね。
  177. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 原案は「質問に対し陳述をせず」となつておつたのを、「陳述を拒み、忌避」……。
  178. 伊藤修

    ○伊藤修君 黙して語らない場合は三十三条によつて処罰されないわけですね。
  179. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それは仕方がない。その代り調査方法がありますから如何にでも認定できるからというのでこの点は訂正したわけです。
  180. 長谷山行毅

    ○長谷山行毅君 四条の第二項の、条例でそのほかのことは記載事項定めることができるといつて、これで予想しておるものは大体どんなようなことを予想されるのでありますか。
  181. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 随分議論もあつたのですがやはり必要があろうというので残しましたが、大体今までの研究の結果必要があるだろうといわれておりまするのは印鑑証明のための印鑑、それから選挙権の有無とか学齢兒童がどうであるとかそういうようなことを載せた方が便利であろう、こういうことで結局それを載せることにしたわけであります。
  182. 長谷山行毅

    ○長谷山行毅君 条例ではそのほかいろいろなことが規定できると思いますが、そういう場合に個人のいろいろ名誉に関することやなにかの場合があり得なくもないと思いますけれども、そういう場合に今のこの罰則との関係で嫌な問題を記載事項にしてやつた場合に、何か条例で規定することに対して、何といいますかこれを監督するというか勧告するというか、そういう条例でもそんなことをきめるのでは不適当だというふうな方法が何かどつかに規定がありますか。
  183. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) どれだけの効果があるかということになると問題ですが、二十九条はそのために設けてあります。これは主として成るべく全国に統一的なものを作りたいという意味と、それからそういうものは積極的、消極的に聞きに来るならばなおですがそういう意味でこの条文を残したわけであります。
  184. 長谷山行毅

    ○長谷山行毅君 これは勧告した助言ですから、そういうことを規定していけないというところまではできないわけでしようね。
  185. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それはそういうことは面白くないと思うだけは差支えないでしよう。但し聞かなんだらどうするかということはちよつと方法はないですが、もう一つ附け加えて御説明申上げますが、これは衆議院で一番議論のあつたところなんですが、地方自治法の第十四条の第一項で、「普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて第二条第二項の事務に関し、条例を制定することができる。」これがあるからこういうものを置かんでもいいじやないかという議論が大分やかましくなつたのですが、これがあつてやろうというか知らんが、市町村でこの住民登録に関しての特別の関連のあるものをどうせやれるならやつて残して置いた方がよかろうということで残しましたわけであります。
  186. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 今例を挙げられたのは、選挙権の有無、学齢兒童の有無でありましたが、それだつたら別に地域的な特殊なものでなくて全国一齊のものなのでありますから、取上げられた例がらすればむしろこれが必要ならば八の次に挙げられればいいので、特にこうして相当ゆとりを持つて挙げると、今長谷山委員の御心配になつたようなことも条例で入れるようなことになりはしないか。結局そうしてそれが又罰則へ繋がつて行く。こういうことになるのですが、これをいつそ今三つお挙げになつた例が是非必要ならば、記載事項にお入れになればいいし。
  187. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) この第四条は、住民登録制度というものにどうしても必要であるというものをここへ列挙したわけであります。今の言うのは市町村だけが特に必要だとすれば、それを利用してやつてもよろしいというだけであつて、住民登録制度としては第八までは必要である、これは欠けてはいかんのである、こういう意味であります。
  188. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 そうすれば市町村みな同じにしてこんな第二項を設けないで置いたらどうですか。罰則があるから私は非常に心配するのですが。
  189. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 第二項のような規定は市町村で非常に要望いたしておりまして、行政事務に便宜なように市町村で記載事項をきめることができるようにという要望に基いてこれは入れられたのでございますが、この条例で住民票に記載すべき事項をきめた場合に、それが全部が全部届出事項になるとは限りませんので、選挙資格の有無とか学齢兒童の有無というものは届出を持たなくても年齢がわかつております。それから住居期間もこの住民票の記載自体でわかりますので届出を要せずしてわかることで、要するにこの選挙人名簿を作つたり或いは学齢簿を作つたりする場合に簡單に発見できるという、そういう便宜のために選挙資格の有無であるとか学齢兒童であるとかいうようなことを書いたらどうかということなのであります。でありますからして、必ずしも書かなくても住民票を見れば当然わかることでありますから、或いは書かなくてもいいという市町村もありましようし、書いておきたいという市町村もありましようし、これはやはり市町村の便宜に任したらどうかという事柄でございます。
  190. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 市町村の便宜のためにこの第二項を設け、而も法律を見ますと罰則はやはりこれにひつかかるように読み得るのですが、それを救うものとしては二十九条とおつしやいますが二十九条も絶対のものでないといたしますれば、むしろ法律の第二項はのけてしまつたらどうですか。或いは罰則の規定の場合に第二項に関してはこの規定適用しないとか、何かそこをしないと町村が条例できめてそれに対して陳述を拒んだという場合にすぐこれが罰則にかかつて来る。而も法の趣旨からいえば、ただ市町村の便宜のためにおくものが罰則にひつかかる慮れがあるということは、それは非常に警戒しておかなければいけないと思うのです。
  191. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) これは先ほど長谷山さんからも質問がありましたように、地方自治法の第十四条の一項で法令に違反しない限りにおいて条例を制定することができるので、市町村としてはやはり条例で罰則も作れるわけでありますが、こちらでできないことになりますと、やはり市町村として是非それが必要となればその地方自治法に基いて地方条例でそういう罰則を作るという結果になつて来るんじやないかと思うのであります。でこれは勿論乱用は飽くまで防止されなくちやなりませんので、ただ的確な乱用防止の措置は地方自治法の建前でできないのでありますけれども、要するに余り条例で以て細かい記載事項定めて全部それを届出に待つということにいたしますと、これは届出が結局励行されないということになります結果、住民登録の全体の成績が悪くなるという結果になりますので、市町村としてはやはり条例できめますものは十分その点を考えて、住民の届出義務の負担と、それからやはり届出が正確に行われるかどうか、住民票の記載の正確性を如何にして保証して行くかという、そういう点から条例の記載事項、これを又届出にするかどうかということも市町村としては愼重に考慮しなくちやならん。本当に住民登録に真に熱のある市町村でありましたら、まあむちやなことはきめないのじやないかと想像されるわけであります。又余りにむちやなことが行われましたら、二十九条の規定はそれを防止するに完璧とはいえませんけれども実際上相当の役割を果すものじやないかと、そういうふうに考えております。
  192. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 只今の御説明では地方自治法で幾らでも条例で罰則をきめられるという話ですが、これは地方が地方自治法によつてやればこれは止むを得ませんが、我々は国で作る法律の中に罰則に適用されるようなことを予想するものをこのままで入れておくということは、少し筋が違つて来ると思うのです。  それから又第二十九条というものは勧告を聞かなかつた場合はどうなるかということは少しもないわけですから、そういうようなことが常識がなくて若し問題が起るような場合には、もうすでに勧告が行われるような場合も予想しなければならん。若し常識で行くならば、この二十九条なんかは入れなくてよろしいわけです。
  193. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 市町村の条例と申しましても、やはりこれは市町村の住民の代表者であるところの市町村の議会がきめるものでありまして、我我といたしましてはやはり市町村の議会というものを住民の代表として信頼していいんじやないか。住民の利益にひどく反するような立法を条例が制定するということは先ずないのじやないかと思うのであります。これは国民全体の代表としての国会というものと大小の差はありますけれども市町村の議会といえどもその点においてはやはり住民の代表であります。住民の利益を無視した条例というものは一応できないであろう、しないであろうということを我々は信用してもいいんじやないか、そういうふうに大体考えております。
  194. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 ちよつと私の質同趣旨と違うのですが、地方自治法のことを申上げておるのではなくて、地方自治法で罰則を含んだ条例を作ることは今おつしやつた通りなんですが、ここへ条例で住民票に記載すべき事項が幾らでも附け加えられる、まあこの法案からいいえば。而もそれがこの法律で八つ数えたと同じように、若しそれを拒否した場合に罰則が適用されるということは、無論その条例をきめるときには罰則なんかも考慮して地方議会がきめるとおつしやるかも知れませんが、そこに若干の食い違いが出て来るのではないか。地方議会の責任においてきめるということはこれはおつしやる通りなんです。それは地方自治法を認める以上は当然なことなんですが、ここで条例で住民票に記載すべき事項は幾らでもきめておいて、それが自動的にこの法律の罰則にかかり、国が今きめる八つの事項と同じように若し拒否した場合には、やはり五万円以下の罰金になるということは少しそこの筋が違つて来ておるのではないか。こういうことを申上げておるのです。
  195. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それではその議論は出ますが、これがなくてもこの自治法の十四条でこういうことができるのですだから自治法できめれば同じ効果になつて来るわけです。こんなものがなくてもいいのじやないか、こういう議論が多かつたのです。この十四条がいかんことになつておるのです。
  196. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 十四条と言つておるのじやないのですよ。
  197. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 十四条できめればこれと同じものがきめられるのです。だからわざわざそういうものを入れてはいかんというなら十四条をやめなければいがん。十四条がある限りはこれをのけてはいかんということは……。
  198. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 条例として作る場合と国があらかじめ作る法律にゆとりを作つて貰うということとは、そこに若干の軽重ができて来ると思うのです。私の言うことを逆に言えば今おつしやつた十四条のようになるのです。十四条でできることをわざわざ入れて、而もこれが自動的に罰則にかかる国のきめたものと同じ項目になるということに対してはですね。
  199. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) 罰則は十四条できめればここへ入るんですよ。ただ問題は十四条があるからやめたらいいのじやないか、あれはそういう議論なんです。その議論で初めやめるということも衆議院で案も作つてみたのですが、ただ強いて言えばこの十四条は一般の行政全般に亘るものである、ここへ書けば住民登録に関係があるものだということが明らかになる。これは十四条は何でもないのですから、ここにあるのは住民登録に最も関係の近いものという意味から書いてもよかろう。こういう意味でこれは公聽会の意見を聞いた方がいいという、こういう議論が多かつたわけですからこれを入れたわけです。
  200. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 若しそういうことならば、例えば東京都で世帶票の条例をやつておるのですが、それと同じように条例で各市町村に必要があればお書きになればいいのですね。この二項にこういうことを書くことによつて従来の法律全体の罰則にからんで来るので非常に私は嫌な気持がするのですが、だからそれならば十四条に任しておいたらいいんじやないか。これは住民票の問題だからここへこういう項目を入れておいたというが、入れたらすぐ自動的に最後の罰則と関連して考え得るいろいろな場合々々が、質問されたように、いやがるような条例でもここへ入れてそうしてすぐこの罰則が適用されるという私は慮れがあると思う。
  201. 平賀健太

    説明員(平賀健太君) 三十三条の規定と申しますのはこれはやはり住民票、住民登録の正確性を保障しますところの最後の担保なのでございまして、こういう規定をどんどん発動するというようなことは実際問題としてはそう考えられないことなのであります。併しながらやはり最後の正確性の担保としてはやはり他の法令にもこういう規定がございますので、必要であるというので入つたのでございます。  それから四条の第二項で以て市町村が条例で記載事項定めることができるとした以上は、その記載事項はこの第一項の一号から八号までほど正確でなくてもいいということは言われませんので、いやしくも住民票の記載事項がそれぞれ公証力があるとする以上は、やはり一号乃至八号と同じ正確度を保つ必要があるのではないか。そういたしますというと、この記載事項の正確を担保するための保障でありますところの三十三条の規定というものは、その条例に定める記載事項についてもやはり適用があると見るのが、これはり住民票というものの公証力を保障する以上は建前上そうなくちやならないと思うのであります。この第二項の規定に条例による記載事項というのを特に掲げたのは、住民票というものが市町村本来の事務である以上は、やはり市町村の自主性というものを重んじなくてはいけないのじやないか、本来地方自治法でできることでありますけれども、特にここに掲げるというのはやはり市町村の自主性を重んずる、市町村が熱意を持つてこの事務遂行して行くということに何らかのやはり貢献があるのではないかということだと思うのであります。本来こういうことが法律上できないということになりますと、やはり地方自治法の第十四条も問題にすべきものと考えております。法律上は地方自治法の第十四条で条例で罰則をつけることもできることになつております、法律上できる。当不当の問題になりますと、今申しましたように、いやしくも住民票の記載事項なつた以上は、その正確性を担保するための三十三条の規定は、条例の記載事項についてもやはり適用があるとするのが妥当であると、こういうふうに思うのであります。
  202. 左藤義詮

    ○左藤義詮君 最初の御説明とちよつと変つて来たようで、町村の便宜上つけておるということであつたが、非常に町村に熱意を持たせるために、やはり町村に自主性を持たせるためにこの十四条があるのだというので、さつきの御説明と変つて来たようでありまするが、第三十三条は殆んど伝家の宝刀で最悪の場合で滅多にやらない、事実上問題になるのは変な抜き方をした場合で、我々が法律を出すときにはやはりとにかくこの最悪の場合を考えなくちやならんので心配いたすのでありますけれども、自主性を持つておるから条例でやれる、極端に言えばどんなことでも住民票に関係がないことはない、住民票に関係があることならどんなことでも記載事項をきめられる、そうして条例の場合にはそれが前の八と同じように罰則の対象となるということは、滅多にないとおつしやるかも知れませんが、私どもは最悪の場合を心配する余地が多くあると思うのですが、その点は如何ですか。
  203. 鍛冶良作

    ○衆議院議員(鍛冶良作君) それは三十一条の第一項で除外してあるのです。「市町村の当該吏員は、住民登録の正確な実施を図るため、第四条第一項に規定する事項について、事実に反することを疑うに足りる相当な理由があるときは、事実の調査をすることができる。」、こうなつております。この調査に関してのみその適用があるのであります。
  204. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) 他に御発言がないようでありますから本日はこの程度で……。
  205. 伊藤修

    ○伊藤修君 質問はなお保留しておきますから。
  206. 鈴木安孝

    委員長(鈴木安孝君) なお次回に質疑を続行いたします。  本日はこの程度で散会いたします。    午後四時十九分散会  出席者は左の通り。    委員長     鈴木 安孝君    理事            伊藤  修君            鬼丸 義齊君    委員            左藤 義詮君            長谷山行毅君            岡部  常君            一松 定吉君   衆議院議員            鍛冶 良作君   政府委員    法務府法制意見    第四局長    野木 新一君   事務局側    常任委員会專門    員       長谷川 宏君   衆議院事務局側    常任委員会專門    員       小木 貞一君   説明員    法務府民事法務    長官総務室主幹 平賀 健太君