○
政府委員(
野木新一君)
破産法及び
和議法の一部を改正する
法律案につきまして、お
手許に配付しておりまする印刷に基きまして逐条
説明をいたします。
先ず
破産法の改正から申上げます。第六条第三項、これは昭和十年
法律第十五号民事
訴訟法中改正
法律により同法第五百七十条に第二項及び第三項の
規定が追加せられ、従前の第二項の
規定が第四項に繰り下げられたのでこれに伴う
整理をしたものであります。第十八条から第二十一条まで、今回免責制度を採用する
関係上、これらの条文に掲げる
債権の全額を
破産債権として
取扱う必要があるのでこれを削除することにいたしました。なお第二十条後段の定期金
債権については、
債権額と評価額との間の差額の観念が認められるかどうかについて疑いがあつたので、これを第二十二条後段に移すことにいたしました。第二十二条の改正は、第二十条後段の
規定を本条後段に移しかえたものであります。第三十八条は、免責制度を採用する
関係上、本条に掲げる
請求権を全部
破産債権として
取扱う必要があるので改正することにいたしました。右の
請求権中
破産手続参加の
費用についてだけ積極的な
規定を置くことにしたのは、その他の
請求権は、元来
破産債権即ち
破産宣告前の
原因に基いて生じた
財産上の
請求権だからであります。第四十六条、第十八条から第二十一条までを削除し、第三十八条を改正することとしたことに伴い、ここに掲げる
請求権を劣後的
破産債権とすることにいたしました。改正条文の第五号から第七号までの
規定は、
債権額と第十八条から第二十条前段までの
規定により定まる額との差額の
請求権を直接的に表現したものにすぎません。第五十二条、これは第十八条から第二十一条までの
規定を削除することとしたことに伴い法文の
整理をしたものであります。第百二条、これも第十八条から第二十条までの
規定を削除することとしたことに伴い法文の
整理をしたものであります。
第百五条、第百六条及び第百七条第一項の改正、
裁判所法の施行により区
裁判所が廃止されると共に、右各条の
規定は、
裁判所法施行令により「区
裁判所」とある部分を「
地方裁判所」と
変更して
適用せられていたのでありますが、今回その字句を
修正したものであります。第百十三条、
裁判所法の制定及び民事
訴訟法の改正により、
破産事件の抗告
裁判所は高等
裁判所となり、抗告
裁判所の
決定は、最高
裁判所に対する特別抗告の有無にかかわらず直ちに確定することと
なつたので、本条を削除することにいたしました。第百十六条本条中「出張所」とあるのは法文上
地方裁判所の出張所と解するほかないのでありますが、現在
地方裁判所の出張所は、全国に一カ所しか設置されてないので、「出張所」が
裁判所法施行前は区
裁判所の出張所を指していたものであることから考え、これを簡易
裁判所に改めた。「市役所、町村役場」を改めたのは、地方自治法の制定に伴う字句の
修正であります。
第百三十三条第一項、「産業組合」を削ることとしたのは、産業組合法が消費生活協同組合法第百三条によ
つて廃止せられたからであり、「
株式合資
会社」を削ることとしたのは、
商法の一部を改正する
法律によ
つて株式合資
会社に関する
規定が削除されることと
なつたからであります。「相互保險
会社」を「相互
会社」に改めたのは保險業法の用語と一致させることとしたものであります。第百四十六条、保險業法の改正
法律により相互
会社の社員の
責任は、すべて保險料を限度とする有限
責任とすることに改められ、又組合員が無限
責任又は保証
責任を負担する産業組合その他の
法人は、すべて
関係法律の改廃によ
つてもはや存在しないので条文の
整理をしたものであります。第百四十九条第二項、第百五十一条第二項、これは警察法の制定に伴い法文の
整理をしたものであります。
第百八十一条、改正
法案第四十六条に掲げる劣後的
破産債権に属するものは、従来その
届出のあつた事例は極めて少く、又これらの
債権に
議決権の
行使を認める実益も少いので、
手続を簡易にするため第五項を設けたわけであります。第百八十六条第一項、第百八十七条、第百八十八条、これらは「
裁判所書記」は、
裁判所法等の一部を改正する
法律の施行により「
裁判所書記官」と読み替えられていたものであり、「執達吏」は
裁判所法施行令により「執行吏」と読み替えられていたものであるが、今回その字句の
修正をすることにいたしました。第百九十七条、経済事情の変動に応じ金額を
修正したものであります。
第二百七条後段、保險業法第三十六条第二項において、相互
会社の基金の拂込について準用している株金の拂込に関する
商法第百七十七条第一項の
規定は、
商法の一部を改正する
法律によ
つて改正せられた結果、相互
会社の基金についても一時に全額の拂込を要することと
なつたのでありますが、他面右改正
法律附則第六条は、同改正
法律施行の際すでに
設立されている相互
会社の基金の支拂については、なお従前通り分割支拂の
方法を認めているので、本条後段の
規定は一応現在でも
適用の余地があるはずであるけれども、現存の相互
会社には基金の未拂にな
つているものがなく、本条後段の
適用をみることがないのでこれを削除することにいたしました。第二百八条から第二百二十四条まで、第百四十六条について
説明した通り、無限
責任又は保証
責任の相互
会社、産業組合その他の
法人は現存しないのでこれに関する
規定を削除することにいたしました。
第二百二十八条第一項、第二百二十九条、第二百四十条第一項、第二百四十一条第二項、現行法では、改正
法案第四十六条に掲げる
請求権は
原則として
破産債権とされていないのであるが、先に述べた通り今回これを劣後的
破産債権とすることとしたので、現行法が
破産債権のうち
一般の
先取特権その他
一般の
優先権のあるものにつき、その
権利の
届出及び
債権表への記載を必要とし、且つ、
債権調査の
期日に
異議がないときは、その
優先権も確定することとしていることに対応して、劣後的
破産債権についてもその
届出及び
債権表への記載に当
つてはその区分を明確にすべきこととしたほか、
債権調査の
期日に
異議のないときは
劣後的債権の区分も確定することとしたわけであります。「
裁判所書記」について字句の
修正をしたのは、第百八十六条第一項において
修正したのと同趣旨であります。
第二百四十五条但書本条但書を削除したのは、
破産事件の
管轄裁判所が
地方裁判所に改められた結果、本条但書の
規定を存置する必要がなく
なつたからであります。第二百五十三条附帶私訴の制度は、刑事
訴訟法を改正する
法律によ
つてなく
なつたので本条を削除することとしたのであります。第二百五十四条第一項、第三十八条及び第四十六条を改めたことに伴い法文の
整理をしたものであります。第二百五十五条第一項「行政
訴訟」という用語はもともと行政
裁判所の裁判権に属する
訴訟を意味するものであ
つて、日本国憲法施行後においてはこのような意味の「行政
訴訟」は存しないから字句の
修正をすることとしたのであります。第二百五十八条第二項第二百二十八条第一項及び第二百二十九条及び第二百四十条第一項の改正と同趣旨の改正であります。第二百七十一条第二号、第二百八十条第三号、第二百五十五条の改正と同趣旨の改正であります。第三百二十二条、第百八十六条中「
裁判所書記」について字句を
修正したのと同趣旨の改正であります。
第三百五十三条第二項、第百四十六条の改正と同趣旨の改正であります。第三百五十八条第一項、第三百五十九条第一項及び第三百六十条経済事情の変動に伴い罰金額の引上を行うものであります。
第三百六十六条ノ二、第一項前段は免責の
申立についての
原則的
規定であ
つて、同項後段は同時廃止のあつた
破産者のため免責
申立の機会を與えるための
規定であります。第二項から第四項までは、第三百六十六条ノ十二に
規定する免責の
効力との
関係から、免責の
申立と、
強制和議の提供又は第三百四十七条の
規定による
破産廃止の
申立とを、競合的に認めるのが妥当でないので、これを避けるためのものであります。第四項は、免責の
申立の追完を認めたものであります。第三百六十六条ノ三、本条は、免責の
申立をする
破産者に対し、
債権者名簿を
提出すべき
義務を課したものであります。この名簿は、
裁判所が次条の
規定により審訊
期日を
定める
決定を送達すべき
債権者を知る一つの資料となるもので、
破産者が知りながら
債権者名簿に記載しなかつた
請求権については、
債権著が
破産宣告のあつたことを知
つている場合を除き、免責の
効力が生じないばかりでなく、
破産者が虚僞の
債権者名簿を
提出したときは、免責不許可の事由となるのであります。第三百六十六条ノ四、本条は免責の
申立をした
破産者の審訊
期日についての
規定でありまして、この
期日において第三百六十六条ノ九に
定める免責不許可の事由の有無が
審査せられるわけであります。免責の
申立については、後に
説明するように第三百六十六条ノ七に掲げる者が
異議の
申立をすることができることとしたのでありますが、これらの者に対し審訊
期日を知らせるため、本条第二項及び第三項の
規定を設けたのであります。第三百六十六条ノ五、
裁判所は、免責の
申立について裁判をするため、免責不許可事由の有無を自ら職権で
調査することができるのでありますが、本条は、
裁判所が必要により
破産管財人に
調査をさせ、その結果の報告をさせることができることにしたものであります。第三百六十六条ノ六、本条を設けたのは、免責の
効力を受けるべき
破産債権者等
破産者の免責の
申立について、
利害関係を有する者に本条に掲げる書類を閲覧して免責不許可事由の有無を調べる機会を與え、次条の
規定による
異議の
申立をすることができるようにする必要があるからであります。第三百六十六条ノ七、第三百六十六条ノ八、免責を許すべからざる者に対しで免責を許すようなことがないようにするため、免責の
申立に対して本条に掲げる者から
異議の
申立をすることができることといたしました。
異議申立期間内に
異議の
申立があると、
裁判所は、
破産者及び
異議申立人の意見を聞き、
異議申立を
理由ありと認めたときは免責を許可せずとの
決定をし、
異議申立期間内に
異議の
申立がないか、又は
異議の
申立があ
つてもその
理由がないと認めるときは、免責許可の
決定をすることといたしました。第三百六十六条ノ九、
破産者に対しては
原則として免責を許すべきであるが、本条に列挙するような事由のある場合にも常に免責を許すことは行き過ぎであるから、このような場合には免責の
申立があ
つても許可しないことができることとしたのであります。第三百六十六条ノ十、免責の
申立をしながら、正当の事由なく審訊
期日に出頭しなかつたり出頭しても陳述を拒否するような不誠実な
破産者に対しては、強いて免責の
手続を進める必要がないから
申立を却下できることにいたしました。第三百六十六条ノ十一、免責の
手続には、後記のように第三百六十六条ノ二十で第百八条を準用することとしたので、免責の
手続でなされる
決定は、確定を待たないで執行力を生じ得ることとなるのでありますが、免責の
決定が上級審で取消されることにより生ずる煩雑を避ける必要があるので本条を設けたわけであります。第三百六十六条ノ十二、本条は免責の
効力についての
規定であります。「
破産手続二依ル配当ヲ除キ……其ノ
責任ヲ免ル」というのは、
破産者の
責任を
破産財団の限度にとどめる意味であります。配当すべき
財産がないときは、配当なくしてその
責任を免れることになります。
破産者が
責任を免れた
債務は一種の自然
債務となるわけであるが、
破産債権者は、これを自働
債権として
破産法上の
相殺権を
行使することは
差支えありません。併し
破産債権のうちには以上のような免責の
効力を與えるに適当でないものがあるので、これを但書に列挙して免責の
効力が及ばぬこととしたのであります。なお本条但書の
請求権中「租税」とあるのは、第四十七条第二号の財団
債権でない租税で、例えば関税、屯税、登録税のようなものを指すのであります。第三百六十六条ノ十三、免責は、
破産者を
更生させるためその
責任を限定するに過ぎないのでありまして、免責によ
つて本条に掲げた者の
責任までを軽減するものでないのでこの趣旨を明かにしたものであります。第三百六十六条ノ十四、免責は、
破産債権者の
権利に重大な影響を與えるばかりでなく、後に述べるように免責の
決定が確定すると
破産者は
法律上当然復権することになるので、第三百七十二条の
規定になら
つて公告についての
規定を設けました。なお確定
債権についての
債権表の記載は、
一定の
条件の下に
債務名義となるものでありますから、免責の
決定が確定したときはこれを明らかにする必要があるのでその旨を記載させることとしたのであります。第三百六十六条ノ十五、免責の
決定が一旦確定しても本条に掲げる事由があることが後に判明したときには、免責を取消すのが相当であるから免責取消の
決定をすることができることとしたのであります。なお本条後段の場合については、不安定な
権利関係を成るべく早く除去する趣旨から免責取消の
申立期間を制限することにいたしました。第三百六十六条ノ十六、免責取消の裁判をするについては、少くとも
破産者及び免責取消
申立人の意見を聽くのが相当でありますからその旨を
定めたものであります。第三百六十六条ノ十七、第三百六十六条ノ十一の
規定と同趣旨で設けた
規定であります。第三百六十六条ノ十八免責後その取消までの間に
破産者と取引した者は、免責のあつたことを考慮に入れて取引をしたのでありますから、その者の
債権が免責の取消のあつた後、これにより復活する
破産債権や免責前文は免責取消後の
原因に基いて生じた
債権と同等の地位におかれることになりますと不測の不
利益を受けることになりますので、本条を設けました。「他ノ
債権ニ先チテ」というのは、
債務者の総
財産から
弁済を受けるべき他の
債権に先だつという意味で特別の
先取特権、質権、抵当権等で担保されている
債権にまで優先するものではありません。第三百六十六条ノ十九、第三百六十六条ノ十四に対応する
規定であります。第三百六十六条ノ二十、免責
手続は、
破産手続ではありませんので復権の章の第三百七十三条の
規定と同様の
規定をおいたわけであります。第百十八条の
規定をも準用したのは、公告と送達とを共にすべき場合があるからであります。第三百六十六条ノ二十一、免責の制度を採用した以上は、本条第一項に列挙する事由のある場合にも、なお
破産者に対し身分上の制限をしたままにしておくことは当を得ないので、右の事由のある場合には、
破産者は、当然に復権することにいたしました。本条第二項中「……復権ハ将来ニ向ツテ其ノ効ヵヲ失フ」とあるのは、免責取消又は
強制和議取消があ
つても、復権していた間の身上の効果にまで影響を及ぼさない趣旨であります。第三百六十七条、前条の
規定を新設することとしたことに伴い法文の
整理をしたものであります。
第三百七十四条第四号、第三百七十五条、第三百七十七条第一項、第三百八十条第一項、第三百八十一条第一項、第三百八十二条第一項、「
裁判所書記」についての字句の
修正は前に
説明したところと同趣旨のものであり、罰金額を改めたのは経済事情の変動に応じたものであります。
次に
和議法の改正について申述べます。第十一条は
破産法第百十三条を削除することとしたことに伴う法文の
整理であります。第四十四条ノ二から第四十四条ノ四まで、これは
破産法第十八条から第二十条までの
規定を削除することとしたことに伴い、
和議法第四十五条において準用していたこれらの
規定の
内容を直接
規定することが必要と
なつたため、これらの条文を設けたものであります。第四十五条、右に述べた通り
破産法第十八条から第二十条までの
規定を削除することとしたことに伴う法文の
整理をしたものであります。第六十八条第一項、第六十九条第一項、第七十条第一項、いずれも経済事情の変動に伴う罰金額の
修正であります。
附則、第一項、この
法律の施行
期日を
定めたものであります。第二項、この
法律施行前に
破産宣告のあつた
事件に対する、ここに掲げる改正
規定の
適用に関する経過
規定を
定めたものであります。第三項、本項前段は、改正法施行前に
破産手続の解止のあつた
破産者に対し免責
申立の機会を與えるための
規定であります。本項後段は、改正法施行の際、
裁判所に係属中の
破産事件の
破産者が、免責の
申立をする機会を失うことのあることを考慮したものであります。第四項、本項は、前項の
破産者のために免責の
申立の追究をすることができることとしたものであります。第五項、第三百六十六条ノ二十一、第一項第二号から第四号までに掲げる事由が改正法施行前にあつた
破産者の復権について
規定したものであります。第六項、前項の
規定による復権について第三百六十六条ノ二十一第二項の
規定と同趣旨の
定めをしたものであります。第七項、華士族平民身代限規則(明治五年太政官布告第百八十七号)等により身代限の
処分を受け、又は家資分散法(明治二十三年
法律第六十九号)により家資分散の宣告を受けた者も、第五項に
規定する
破産者と同様に
取扱うことが相当であるから本項を設けることにいたしました。
以上で
破産法及び
和議法の一部を改正する
法律案の逐条
説明を終ります。