○須藤五郎君 私もこの間
宮城委員のお供をして
四国のほうに行
つて参りましたですが、その前に東京の
家庭裁判所も拜見したのですが、私が理想家のためか存じませんけれ
ども、
家庭裁判所というのは表から入るときの感じでは、非常に素晴らしく明るい感じを受けて入
つたのです。ところがとたんにあの子供たちを見て非常に暗い気持にな
つて、おやおや、これは羊頭を掲げて狗肉を売るたぐいだ、表玄関ばかりばかに立派にして、その実、
内容はこれは駄目だなという感じがしたのですが、その点は今雑談のうちにいろいろ申し述べました
通り、
四国へ参りまして受けた感じも私の
思つていたよりも非常に設備が悪い。特にたくさんの
逃走者を出している
善通寺の
少年院を見まして、実に暗い気持にな
つたのですが、伺いますと、あれは曾
つての軍の
施設をそのまま使
つているということで、而も敵前上陸の訓練をしたぼろ倉庫をそのまま使
つて。直ぐ傍に敵前上陸の訓練をした前のいろいろな材料などがそのまま残
つておるというような、そういう陰惨な感じのする所に子供たちを置いているということ、柵は全くなくて実に解放されているような感じなんですが、一歩部屋の中へ入ると鉄柵、鉄の格子が入
つております。あれでは私は実際活動盛りの子供にあそこにじつとしておれということは、これは絶対、私、無理なことだと思うのです。私があそこへ入れられましたら私は一週間しか持たない私は忽ちその晩に逃げ出すだろうと、それほどに思われるほどあそこの
生活そのものが暗い、陰惨な気持を受けると思うのです。ですから一刻も早くあそこの建物は改造して頂きたい。
予算がないということを常に申されますが、それならばこの法の精神を守らなくてもいいのか、これだけ立派な法ができるならばやはりそれを活かす設備ということを万難を排してや
つて頂きたい。皆さんも一生懸命でや
つていらつしやると思うのですが、我々議員もその点に協力申しまして
予算をとるように協力して、できるだけ早くあれを改造して頂きたい。それでなか
つたらあそこに入
つている子供は実に不幸だと思うのですが、その前に私はやはり高松の刑務所を見ましたが、高松の刑務所のほうがずつと立派なんです。折角の子供が刑務所より悪い設備の中に入れられているということに大きな問題がある。ですからああいう逃亡者が出て来る。
それから私がもう
一つ感じたことは刑務所ではいろいろな作業が課せられておるわけなんです。刑務所へ入
つた経験のある人であればよくわかるのですが、何もしないでじつとしておるということほど、人間苦しいことはないと思うのです。作業を課せられればこれは非常に楽しいことなんです。刑務所の作業というものはむしろ苦痛よりも楽しみがあるものだと私は
思つているのですが、そこの
少年院で聞きますと、作業の面が非常に少いということを感じました。最近に鍛冶屋をやり、それから印刷などや
つておりますが、その印刷をや
つている子供に楽しいかと聞いたら楽しいですと言
つておるのです。ですからああいう面もどんどん、作業の面を殖やして頂くことも
一つの方法だと思うのです。それから高松の保護鑑別所ですか、そこへ参
つたときに私高い塀がめぐらしてある、この高い塀が問題に
なつたそうですが、私は余り高い塀にはそれほど苦にならなか
つたのですが、その高い塀の中へ入
つて部屋を見ると、やはり監獄と同じように、独房と同じように鉄の格子が入
つているのです。これは必要以上のことだと思うのです。先ほど宮城さんがおつしやいましたように、高い塀をめぐらすことによ
つて逃亡を防ぎ、塀の中は自由ということで私はいいのじやないか、必要以上のものについて鉄格子などとられたほうがいいと思います。それから子供たちが本を読んでおりましたが、この読書をどれだけ許すのかと私質問いたしましたが、二時間ほど許すとい
つておりましたのですが、何もしないで部屋の中でぽつねんとさしておくよりも、やはり私は読書などはできるだけ、本があるならば時間の
制限なしに読書を許してや
つたらどうかと、そういうふうに考えました。
そして大体私が感じましたところは、子供に対するあの荒んだ子供たちの精神をなごやかにしてやるような情操的な面の考え方が少し欠けているように私は感じたわけなんです。読書時間を
制限している点や、あの扱い方を見ましてもやはり根本的なものが
一つ欠けているように感じました。私は音楽家ですから申し上げるのですが、是非全国の
少年院又は少女の家にピアノを一台づつ備え付けてや
つて頂きたいと思うのです。でピアノを今税金なしで買えば十五万円出せば新品が買えます。中古品でしたら十万円余りで手に入るのですから是非全国五十カ所でありますか、そういう所に十五万円としますと、七百五十万円の
予算があればピアノを一台づつ贈れるのですが、そのピアノをどうぞ備え付けてや
つて頂きたい。そうしてそれも鍵をかけろのでなしに、子供たちが自由に使えろようにそのピアノを開放してや
つて頂きたいと思うのですが、
善通寺の
少年院で一人の子供がギターを弾いているのを私は見ましたのですが、一人の子供がギターを弾くその周囲に同じ部屋にいる子供たちが集
つて皆がにこにことして演奏しているのを聞きまして、楽しいかねと言
つて私が聞くと楽しいですと言
つて皆にこにことしているのにぶつか
つたのですが、あれをどうぞもつと拡げて、こちらからピアノを一台づつも備え付けてや
つて頂いたら、どんなに私は情操面で
教育ができるかと、恐らくピアノを中心にして
一つの子供の楽しい集いができるのじやないかというふうに考えましたので、是非これをや
つて頂きたいと、そういうふうに考えたわけです。