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1951-06-01 第10回国会 参議院 文部委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年六月一日(金曜日)    午前十時二十八分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○教育及び文化に関する一般調査の件  (調査報告書に関する件) ○継続調査承認要求の件 ○議員派遣要求の件 ○産業教育法案衆議院提出)   —————————————
  2. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは本日の文部委員会を開催いたします。  先に議長の承認を受けて調査いたして参りました教育及び文化に関する一般調査につきましては、今期国会開会中は重要法案審議に多くの日数を要しましたので、十分な調査を要することが適当でしたから未了報告書を提出し、国会閉会中もこれを継続して調査いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。なおその未了報告書その他の手続については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。それでは順次御署名をお願いいたします。   多数意見者署名     加納 金助  木内キヤウ     工藤 鐵男  木村 守江     平岡 市三  荒木正三郎     梅原 眞隆  高橋 道男     矢嶋 三義
  5. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 次に閉会中に議員でいろいろ六三制度教育制度産業教育文化財保護、その他大学のいろいろな調査をしたいと思いまするので、第一班、二班、三班、四班。第一班は木村さん、高田さん。二班は木内さん、加納さん。三班は荒木さん、梅原さん。四班は岩間さん、高橋さん。第一班は北海道。第二班は青森、秋田。第三班は京都、奈良、滋賀。第四班は佐賀、長崎、熊本。こういうふうにして要求書を出したいと思いますが、御異議ありませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) なお他の委員会との振り合もありまするので、三班になりました場合は四班はあとに、閉会中でございまするけれども、同時に出ないであとに廻すようにいたしたいと思いまするが、これも御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではさよう取計います。   —————————————
  8. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それでは本委員会に付託されておりまする産業教育法案の質疑を始めます。文部大臣が見えましたら第一章に返ることにして、第二章から参ります。第二章の第一節で御意見のあるかた。
  9. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 第二章の第一節中央産業教育審議会について若干質して置きたいと思います。  その第一点は、この権限でありますが、第三条に謳われているところの各号に掲げる事項について取扱われるように書いてありますが、最も危惧される点は、中央審議会教育分限に逆行して、産業教育に関する限り中央集権的な形態になつてはならない、こういう点を慮るものでありますが、飽くまでも中央審議会の性格は、地方教育委員会に対して助言と指導を与えるところの文部省、その文部大臣の単なる諮問機関にして、決して中央審議会決定によつて強引に地方産業教育というものを或る一定の方向に引摺つて行くというような運営というものは絶対になさるべきでなく、最も私は監視しなければならない点だと考えるのでありますが、この点について提案者所見はつきりと承わつて置きたいと思います。
  10. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) 只今矢嶋委員から分限お話がございましたが、その通りでございまして、非常に御尤もなことでありまして、私ども全くその通り趣旨盛つたつもりでおります。これ以外に何もないのであります。
  11. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 更にこの権限についてもう一点お伺いいたしたい点は、第三条に、「産業教育に関する教育内容及び方法の改善のため」云々という、こういうふうに謳われているわけでありますが、これは必然的に産業教育に関する限り教科課程の問題も含まれて来るかと思うのでありますが、従つて教育課程に関する限りは教育課程審議会が最終的に決定するものであつて教育課程審議会決定権中央審議会が侵してはならない、こういうように考えるものでありますが、その点についての御見解も明確にして置きたいと存じます。
  12. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) 非常に御尤もなことでございまして、課程につきましては教育課程審議会のほうが優先し、又それが最後的な決定権限を持つているのでありまして、これはこの地方公共団体が、三条のところにありますることに関連したことで、第九条のところにあります、中央審議会は全くこれらの参考資料参考意見を作る程度のものにほかならないのでございます。
  13. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 審議会はその成果を挙げるために、更に又民主的な運営を期するためには、私は審議委員構成というものが最も問題であると考えるのでありますが、この第八条第二項におきまして、審議会委員文部大臣任命する、こういうふうに謳われているのでありますが、これについて私は若干質しておきたいと思うのであります。教育方針というものは、私は内閣が変るたびに転々と変るべきものでなくして、国家百年の大計の下に私は推進されて行かなければならない。これは申上げるまでもないと思うのでありますが、こういう審議会委員が、現在の政党内閣に所属している文部大臣一個の考え任命するということになりますると、私は委員にはやはり政党色の入ることを否定できないと思うのであります。従つて各界各省から最も民主的人選をするためには、私は最終的な任命権文部大臣にあるとしても、そこに若干の推薦母体というものを考えて、その推薦母体推薦するものに基いて、そうして文部大臣が責任を持つて任命する、こういう形態をとることが最も民主的で、殊に教育に関するこういう審議会委員任命の仕方としては妥当だ、こう考えるものでありますが、この提案者においてこの法案を立案される場合に、そういう点についてはどういうふうにお考えになつたかという点を質したいと思います。
  14. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) 第八条の委員任命のことに関するお尋ねと承わりました。お話通りどももこれを立案するときに、できれば何かしつかりしたいわゆる推薦母体というものを法律条文の上にも掲げられないかということを相当工夫をして見、協議もいたしたのであります。産業経済教育勤労といろいろの面に亘つてつて頂く必要がありますが、これらについてそれぞれのいわゆる分けに認められた母体にふさわしい団体というものがはつきりとすべてに亘つて見つかりかねるという感じも持ちましたがために、そこまでのことを用意いたしませんでした。考え方としては、できればそういう線で行くべきである。少なくとも実質上その線で行くべきであるということで、通常の審議会などの例に従いまして、細則はこの十二条にありますように政令で定める。その政令にそういう精神をできるだけ盛込んで行くべきもの、こういう形態の上に本条を立案いたした次第であります。
  15. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 この点についてもう少し私はお伺いいたしたいのでありますが、私立学校法にあるところの私立大学審議会のごときは、はつきりとかくかくの団体があるときにはその団体推薦に基いて大臣任命しなければならない、こういうふうに謳われているわけでありますが、そういう立法形態をどうしてここにとられなかつたか、その点を伺いたいと思います。
  16. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) 少なくとも産業経済教育勤労等と掲げましたが、これらの諸部門から網羅したいという気持を持つたのでありますが、私どもの不明であつたのか知りませんが、とにかくこれらに跨つてそれぞれ同じような系統の公的な団体というものを気付きかねたこともありますが、はつきりとそれを認められない部門もあるという感じを持つたがために、遂にこういう形をとつた次第でございます。
  17. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 例えばあの私立大学審議会のごときは全国に亘つてその団体構成員が全体の三分の二以上を占めているときには、その団体推薦に基いて推薦しなければならないというような事例もあるわけでありますが、ここに或いは勤労とか、或いは教育とか、或いは経済とか出ておりまするが、勤労界においても或いは教育界においても、或いは経済界においてもそういう該当団体というものは我が国にはすでに私は育成されていると思うのであります。従つてそう私立大学審議会のようなああいう立法措置を講じても、私は立派にその推薦に基いて民主的に大臣が最終的に任命できると、こう考えるのでありますが、それに対する提案者の御所見は如何でございましようか。
  18. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) 推薦母体ができ得ますれば、それからできるだけそれを通して来るほうがいいという点においては矢嶋委員の御意見と全く同じ気持を持つている次第であります。ただそれが法的にここに表現するまでに確実な形を整えたものをすべての部門について私ども発見いたしかねたという点において、法律技術上こうなつたのでございます。
  19. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 では提案者はそういう団体があれば、そういう団体推薦を尊重してそうして大臣任命するのが最も民主的である、こういう御見解を今述べられたと、こういうふうに私了承するのでありますが、ただ私立大学審議会みたいにはつきりと全国的に三分の二以上の構成団体があるかないかというのは、私立大学審議会の場合にははつきり把握できるが、この場合把握できないので、法律技術上如何かと思つてここにそういう表現をしなかつただけであつて推薦に対する基本的態度としては、飽くまでも私が先ほどから述べましたような基本的態度で進みたい、こういう御趣旨だと、こういうふうに了承して差支えないわけでございますね。
  20. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) 起草いたしました私ども気持お話通りでございます。
  21. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 次にこの点について更にお伺いいたしまするが、それは先ほど提案者は、そういう趣旨は実施上その線に沿つてやりたい、それは第十二条の政令で定めるというところで考慮する考えだ、こういう御意見を承わつたわけでありますが、今のような趣旨内容政令成文化するお考えでおられると、こういうふうに了承いたします。
  22. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) 法律においてもやり得なかつたのでありますから、多分政令においてもやり得ないであろうという感じを私は持つているのでございますが、ただ運営態度をできるだけそういうところに現わすということは政令で定めらるべきであるということを思つただけでありまして、先刻申しました理由によつて法律上ここに掲げにくかつたということでありますから、ひとしく法令の一種としての政令にも掲げにくいだろうということを私は思つております。
  23. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 その精神を活かし、運営に留意するということを承わつたわけでありますが、それだけ確認いたしまして、更に質問を続けます。  次にお尋ねしたい点は、普通委員任命に当りましては産業界代表者、或いは経済界代表者教育界代表者というように並列しましてそうして学識経験ある者、こういうような普通並べ方をしておるわけでありますが、この第二項を見ますというと、産業経済教育勤労等各界における学識経験ある者と、いずれにも学識経験がかかつておりまするが、他の委員推薦基準との表わし方と例外的になつておると思うのです。こうなりますと産業経済教育勤労界学識経験者が全部かかつておりますから、学者ばかりが出て来るのではないかというような懸念がするのであります。(「よく読め、読めばわかるじやないか」と呼ぶ者あり)それでよろしいかどうか、その点についてお伺いいたしたいと思います。(「みつともないぞ、傍聴人が聞いてるぞ」と呼ぶ者あり)
  24. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) 最初お話がございました、産業経済教育勤労、これらにそれぞれ皆かかりまして、そうして学識経験者というのは学者であるという意味じやございません。学識あり経験あり、或いはそのどちらかを持つておる、こういう意味でございます。(「いい加減にしたらどうだ、文部委員じやないか」と呼ぶ者あり)
  25. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 委員長、少し取締つたらどうですか。(「みつともないぞ、文部委員じやないか」と呼ぶ者あり)委員長、休憩してもらいたい。
  26. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 木村君、少し静かに。矢嶋発言を続けて下さい。
  27. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私はそう恥かしいような無茶なことは言つていないつもりであります。(「常識々々」と呼ぶ者あり)審議会委員をどういう構成によつてなされるかということは、戦後の教育委員会制度であり、或いは審議会制度重点を置いて来ておる今日、私は極めて重大だと考えます。そういう意味において私は審議会構成についてこの第八条の第二項が漠然と書かれておりますので、その点をはつきりと確認いたし、今後の運営に支障なからんことを念願して質問しておるわけでありまして、その点は木村委員も了承して頂きたいと思います。(「常識がないぞ」と呼ぶ者あり)只今私が提案者質問したところによりましてはつきりいたした点は、結局法律技術上こういう成文化をなしたが、飽くまでも推薦に当つて各界各層からその実情がわかり、更に又学識経験のあるかたを文部大臣がその諸階層の団体音向ということも慮つてそうして任命するのである。そういう趣旨で立案したのだということを私現在確認いたしまして、この第一節に関する限りは私の質問を終りたいと思います。
  28. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見ございませんか。  次に第二節。第二節で御意見ございませんか。それでは第三章、第一節
  29. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 長野委員長質問をいたしますが、第十八条でございますが、第十八条は提案者において当初考えられた考えと、ここに出ておるものとはかなりの開きがあるように聞いておるのですが、そうでございましようか。
  30. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 最初立案したときと趣きは別に大した距離はないと思いますが。
  31. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 当初この委員会におきまして懇談会のときでございましたが、長野委員長から説明を聞いたときには、二分の一の補助をするというふうなお話がございました。併しここにはそういうふうに出ておりませんので、相当変つておると思うのです。で私の聞きたいことは、将来当初考えられたように機会があれば訂正したいという意思を持つておられるかどうか、そういう点を聞きたいと思います。
  32. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 最初お説のように二分の一という数字がたしか入つてつたと思います。それをなくした理由は、実は説明を要する関係の面に対していろいろ打合せをし、又大蔵当局ともその後打合せをいたしましたところが、二分の一と数字を釘付けにしてしまうことはどうも少し無理が行くのではないか。例えば二分の一以上やりたいというような貧弱な町村があるかも知れません。又二分の一以下で当然行くような富裕な町村もあるかも知れません。と同時に又この中に数字を入れるということは技術的に解釈して、これに関係をした方面法文作成方針もあることだしというようなこともあります。いろいろさような事情もございまして、成るほどこれは二分の一の数字を取つたほうが却つて地方財政を圧迫しないことにもなるし、一緩急自在の弾力ができるのだからこうしようというので、数字だけは取外したわけであります。
  33. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私の考えでは、二分の一というふうに入つているほうが財源的には確保されるのではないか、むしろ望ましいのじやないか、こういうような考えを持ておるわけなのであります。それは「予算の範囲内において補助するものとする。」、こういう漠然とした杉となつたことを遺憾に思つておるわけです。まあ止むを得ない事情もよく知つておりますから、将来こういう点についてはいずれ考えて行こうというようなお考えがあるかどうか、その点を同つておるわけです。
  34. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 御心配の点は、最初計画した、予算数字を確保する意味に対する御心配も相当あると思いますが、全く御同感でありまして、十分これは留意するつもりであります。成るべくこれから来たる不利益はないように努力したいと思いますが、これは相当関係当局心配をしてくれておるようでございますから、安心というと何でしようが、気を許しておる次第であります。
  35. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 「中央審議会の議を経て政令で定める基準に達していない」、この政令で定める基準高等学校設置基準との関係を承わつておきたい。
  36. 石井勗

    衆議院専門員石井勗君) これは似たようなものにならざるを得ないであろうと思いますけれども高等学校設置基準というものは、大学などにおきましての設置基準などと同様に、或る程度実状考慮に入れつ、併し教育理想形態というものを多分に織込んでおります。こちらのほうのは、やはりそういういろいろな問題を考慮に入れつも、段階的に当面ミニマムのものを出して行く、教育をどうにかやり得る最小限のものを出すということを大体私どもの頭に描いております。予算の積算も、大体数えましたのはそういうようなものを予想して、ミニマスのものを予想して、それから割り出して行くということをこの前申上げた次第であります。
  37. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 もう一点お尋ねしたい。その点は、「高めようとする場合においては、」云々という意味でありますが、次のように了解して差支えないか。即ち地方公共団体としては、受入態勢として或る枠まで、この受入と体物質的な受入態勢でありますが、それが整備できなくとも、実状教育遂行不可能の状況にあり、積極的に高めようとする意慾が強い場合には、場合によつては金額或いは三分の二補助というものが考えられる場合もある、こういうふうに了承して差支えありませんぬ。更に確認をお願いいたします。
  38. 横田重左衛門

    衆議院専門員横田重左衛門君) 只今石井専門員が申しましたように、高専学校設置基準よりも低い水準、ミニマムのところを政令基準の標準といたしておりまして、若しそこまで、つまりミニマムのところまで行こうとするところがあれば、今仰せの通りに二分の一の枠でなくとも、上下自在の融通性を以て補助して行くということでございます。
  39. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それでは次のようなお考えがあるかどうか、あつたら承わりたいのですが、国家財政地方財政との実情からいつて、そう満足するような予算は急には取れないと思うのでありますが、先ず当面緊急的にどういう方面重点的に実施したいというような発議者に現在構想があられるかどうかということを、これは長野発議者のほうからありましたら承わつておきたいと思います。
  40. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 我々が計画しておるところのものは、既往の実情から見ていずれも閑却することのできない重要性を持つておりますから、今ここにどれに重点を置き、どれに比較的軽くということも申しかねますが、併し設備の点におきまして、人的設備即ち教員及び物的設備であるところの産業教育に当面に必要な問題、極めて実際的に見て急を要するような設備には特に力を入れたいと思つております。
  41. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これは発議者であるところの長野委員長に御慶質しておきた、いと思うのでありますが、この法案を通して見ましたときに、第十九条に出ておるのでありますが、短期教育というのが非常に実質上大きくクローズ・アップされておると思うのです。先般もこの教員養成の評価のところに、短期大学教員養成をするのが手取り早くもあるし、それから技術を身に付けるのに有効的だというふうな意味の御発言もありまして、この短期教育、この中に別科が入つているこの別科についてはお尋ねいたしませんが、この短期教育というのが、発議者長野委員長としてはどういうお考えでいらつしやるのか、どうもつかめないところがあるので私繰返してお尋ねするわけでありますが、長野委員長といたしましては、六・三の教育終つたあとに何らかそこに短期学制というのを布くことによつて産業教育振興を図りたい、又それが我が国実情に即した振興法であるというようなお考えの下にこういう法案を発議されたであろうというように私は推測をいたしておるわけでありますが、今の学制長野委員長がお考えになつておるところの短期教育というものはどういうお考えでおられるのか、この際承わつておきたいと思います。
  42. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) この問題につきましては私はこう解釈しております。つまり中学校を卒業して直ちに社会に出て職業に従事しておる、或いは又従事しないで遊んでおる青少年に対しまして成るべく重要な、無駄のないところの身の入つた教育をする、これをわかりやすくいいますと、余り汎論というものではなく、本当に身の入つた重要なものを短かい時間に教え込んで行く、こういうことが非常に必要ではないか、それで成るほど見かたによると、短時間で教えているようでありますけれども、その習つたことは直ちに家庭に帰り、自分の職場にいて応用してやれますから、その日々の仕事そのもの自己修養になつて行くわけで、事実は非常に長期に行われておるより以上長期であると、こういうふうに解釈するのです。指導の仕方によりましては……。それからこれには一つの講習会講習会というのはどういうことかというと、郷土産物の芸術的な手工とか何とか、よく講習会によつてその土地の職業を作る、又一面においては芸術的な普通の教科と連繋の深いようなものもあるでありましようが、そういうことを講習会で授けるということによつて、直ちに家庭生活に、職業生活に結びついて行くのであまりすから、自然に教える時間は短かいのでありますけれども、彼らの体得したものによつて更に自己修養をし得るということを時間数に延べて行きますと、却つて長期になつて行くわけでありまして、ここに短期ということの運用を私は当局に希望したいと思つております。希望したいというより御批判を願いたいと思つております。短期でありますが、その短期は教えるということが短期であつて、事実上彼らが修養することは長期である。こういうふうに進めて行くことが最も呼当ではないか、かように考えております。
  43. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 産業教育言つてもやはり教育であつて教育というものは、これは釈迦に説法で申上げるまでもなく、人を育成することである。そういう大前提の下に私はあえて長野委員長にお伺いいたすことは、今長野委員長が言われました身の入つた教育でございますね。これは中学校更に高等学校別科とか定時制、これらを含んだ高等学校中学校では身の入つた教育はできないものでありましようか、そこのあたりどういうふうにお考えになつていらつしやいましようか、重ねてお伺いしたます。
  44. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) それは大いに身の入つた教育を皆努めておると私は思つております。併しながら往々にして只今ここに計画しておるような、中学校を卒業していわば比較的放任せられたような形におるような者に対しましては、単に教えるというだけではとても身の入つた教育は困難であります。彼らが習いましたものを更にみずから繰返して練習する。言い換えれば自己体得自己修養を努めて行くというところに初めて身の入つた教育ができると思うのです。併しながら比較的自由に生活をし仕事をしておるようなそういう青少年に対しては、その意味における身の入つた教育を特に心掛けて行くのが親切ではないかと、かように考えておる次第であります。
  45. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 くどいようでありますが、もう一回お伺いしますが、従来我が国義務教育というのは六年であつたが、三年延びて六三で九年になつたのでありますが、国民経済の苦しいところから子供を九年間も学校に学ばせるわけです。その六三の義務教育を終つたところで、まあ日本人としてお互いの社会で生きて行けるだけの、言い換えれば知識程度はありましようが、身の入つた教育ですね、それを完了したいものだとまあ私はそう考えるわけでございますが、それに対するそういう教育の実態を招来したいというようなことについて対策をお考えになつたことはございませんでしようか。でなくて、その終つて、まあ先生の言葉で言うと放任された、その放任された者の救済として別途短期考えて行くという発言について、六三の教育、これを補習の教育も要らないような身の入つた教育にするためには如何にすればいいかということを先生お考えになつたことがあられるのじやないか、或いはお考えになつてすでにそれを放棄されたのか、こういう点について私は承わつておきたいと思います。
  46. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) 六三制について身の入つた教育考えたことがあるか、こういうことでございますか。
  47. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 それだけです。
  48. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) それは実は私六三制を作るときに文部省の政務次官をしておりまして、あの法文は実は私も一緒になつてつたわけです。非常にそれは切実に考えて来ましたが、まあここでその問題をお話しすると長い時間になりますし、それは御要求でないと思いますが、とにかく六三制の九カ年間については、あの教育基本法及び学校教育法のその該当法文にありますような点について十分学校当局は勉強して頂くし、又文部当局としても行政指導上については特にあの条文に基いて一つ間隙なく努力をしてもらいたい、こういうことを念願したことはあります。勿論現在もそう思つております。ただ教育は申すまでもなく年齢の発達に伴い、思想の伸長に伴つて行かなければなりませんので、六三制のうちの小学校の者は五年ぐらいから、中学校の三年と来ると、経済的な思想というものが、慾求というものが発達して来ますから、こういう際にいわゆるよい仕附をつけて、そうして更にそれをこの青年期に及んで具体的に自己職業生活とよく結び合わせて、そうして立派に思想的にも、社会生活に対する教養においても又同時に経済生活の面においても相伴つて円満な発達をして行くように努力すべきものである。この点についてこの青少年期における産業教育ということについては、できる限りその実生活に伴つて彼らの発展して来る思想、彼らの心に湧いて来る慾求、こういうものと相伴つて行くように親切に指導しなければならん、こんなふうに考えておる次第でございます。
  49. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 これで終ります。私のお聞きしたいことからちよつと答弁が外れていますので、繰返してお尋ねするわけでありますが、率直にお伺いします。長野委員長にこの二つの場合を申上げます。これは一番根本的な重要な問題でありますので、確めておきたいと思いますが、六三の今の制度というものは不満である、これを否定した前提の下に青少年云々という教育の機関というものをお考えになつておられるか、或いは六三という教育制度というものを肯定はするが、十分これが育成されていない、十分育成されていないので不十分であるために、今迷つておる青少年を一時的にこういう教育の機関によつて救済するのであつて、恒久的なものとしては考えていないのか、この前者と後者のいずれかを私この前から伺つてつて、この点把握できませんので、発議者である長野委員長としてはいずれをお考えになつておるのか承わつておきたいと思います。
  50. 長野長廣

    衆議院議員長野長廣君) これは最初から私たびたび直接に申上げたこともあると思い、又そういう意味は言外にいつでも現われておると思いまするが、六三制は私どもが作つたものであり、私どもは六三制の制度の完成によつて我が国義務教育の目的達成をしたい、こういう非常な念願の下に私は作つた一人でございますから、これを肯定するのは勿論のこと、できる限りこれが発達を図り、又今後時勢の推移と共に改良する点があれば改良するのは結構でしようけれども、今日ではその改良は考えておりません。極力あらゆる施設において充実を図つて行くものである、こういうように考えております。ただ六三制で習つた、中学を卒業したときは、先ほど申したように性格的に非常に発達をするものであり、又性格的に非常な欲求が違つて来ます。又単に嬉々として子供らしく遊んでおつたものが切実に経済生活ということを考えて参りますから、これを善導し、その生活能力を高めて行くように指導するつもりである、こういう考えを持つている次第であります。全然六三制は肯定いたします。
  51. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 第二節に移ります。……それでは附則……よろしうございますか。  それでは大体提案者に対する質問は終了したものと認めてよろしうございますか。  それでは大臣が見えましたから大臣に対する質問を保留しておりましたので、これより質疑をすることにいたします。
  52. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 矢嶋委員質問に関連して大臣質問をしたいと思います。  提案者説明を聞き又この法案を見ると、この法案を提出した理由には、義務教育を修了した学生のうち高等学校に入る者の以外、まあ義務教育を修了する百六十万の学生のうち六十万くらいは高等学校へ入り、残りの百万は高等学校へも行けないで教育的にブランクがある、教育的空白がある。その空白を埋めるためにこの法案を作つたのだ、こういう御説明が大体あつたわけであります。これは私は六三制の欠陥であるかどうかという点をこの際明らかにしておく必要があると思うのです。現在の六三制は、言うまでもなく義務教育の九カ年と残りの高等学校の三年、大学の四年の六三三四制になつているわけです。当然この新学制からは、義務教育を修了した者の教育的空白時代というものはこの制度から来るわけである。私はそういうふうに思うのです。そうすれば今の考えかた、提案の考えかたに立つならば六三制というものの欠陥を認めざるを得ない。提案者の側に立つて考えるならばそういうふうに思うわけです。果してそれでは六三制というものはそういう欠陥があるものかどうか、こういう点について大臣所見を伺いたい、こういうふうに思います。
  53. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) これは六三制自体に欠陥があるのではない。六三制自体というものは、若しこれが十分に行われるならば、産業教育として当然中に含められるものなんです。ただ現段階においては、六三制のシステムには欠点はないけれども、その実施においてまだ十分でないためにそこに補足を要するものができて来た。この産業教育ということはそれを補足するものであると自分は考えております。従つてシステムそのものの持つている欠陥のことではないと思います。
  54. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 更に申上げたいのですが、六三制以前における日本の教育制度の中には、義務教育を修了した者は青年学校という制度があつて、殆んど勤労青少年はその教育を受けておつたわけであります。従つて制度の上から見て一応空白の時代はないと見ることができたと思うのです。ところが新学制になつてから、義務教育を修了した者がそういう教育を受ける機会が少くなつている。こういう点からこの法案が出て来たのであるというような説明が行われているわけであります。そうすればシステムの問題になるのではないか、こういうふうに考えるわけであります。
  55. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はそう理解しておりませんで、定時制高等学校という制度もありますし、又一時的にはそれをいろいろ補足する青年教育というようなこともいたしておりますから、システムそのものの持つているものではなくて、システムの実施に当つてまだ十分な効果を挙げていない、こういう点からこういう補足を要する。従つてどこまでもこれは補足的なものであつて、システムそのものをこれによつて変改するという意味は少しも持つていないと理解しております。
  56. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 そこで、私も今大臣お話になつたような考えを持つて来ているわけなんです。特に勤労青少年に対する教育としては定時制高等学校が設けられております。これは実際上青年学校時代のような多数の勤労青少年が入学しているというような実情にはなつておりませんけれども、少くともシステムとしてはそういう空白を起さないように考慮されている。そうすればここに短期産業教育という名題の下に第十九条に短期教育を施さなければならない、こういう考え方は、むしろ定時制高等学校においてその実現を図つて行くべき性質のものである。少くとも新学制というものを最もいい教育制度考えて立つならば、そういう方向に向つて行かなければならないのじやないか。それを定時制高等学校のことを考慮されないで、別に短期教育というふうな方向に打ち出して行くということは、私はこのシステムを変えようとする、補足という意味を更に越えているのではないかというふうな感じがするわけでございます。そういう意味に立つて私は大臣の所感を伺つたわけなんです。ですからまあ御答弁はこれ以上私は要求いたしませんけれども、そういう点を心配しているわけです。
  57. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 関連してお尋ねします。大臣只今の答弁を承わりますと、結局システムはよろしいのだ。ただ過度期として十分成果を挙げていないので、ここに法案に謳われているところの短期教育とか、或いは中学校を終えた青少年を対象云々というのは、現段階における暫定的に必要な事柄である。その意味においてその部分についてのみが暫定的に必要な法律だ、こういうふうに大臣はお考えになつている。こういうふうに私今答弁から了承するのでございますが、間違いないでしようか。
  58. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は今矢嶋さんの言われたことと同じかどうか、どうもちよつとはつきりしない点があるのですが、要するに私はシステムそのものには何も欠陥はないのである。それを実施するに当つて十分法のきめた趣意を徹底さすように、職業教育という面を充実することができなかつた。それが現状である。その現状を補うためにこういうものができて来ておるので、これはシステムの中へ入つているものであります。システムに瘤をつけるわけのものではないのであります。今荒木委員のおつしやつたような、理念のものであつても、定時制高等学校というものをどこまでも頭に置いて、そして瘤を作るのじやなくて、それを充足するという意味でこれが提案されるものだ、そう理解しておるのです。なお私が附加えることを許されるならば、中学を出た者の高等学校へ入るという数をもできるだけ増そう、そういう趣旨からして育英制度においても前年度は二%でしたけれども、今度は三%に奨学資金を増す。進んでは五%にはどうしてもやりたい。そういう面をも一方においてすべきであると同時に、他方こういう方法で以て職業教育という面を充実させるということは、決してシステムを害することではなくて、システムを力強くすることだ、こう言つているのだと思います。
  59. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 十四日のこの委員会の席上で、高等学校のシステムの中に職業教育を実は取入れたかつたのだという大臣の御答弁、そうすると、それでは大臣が言われるごとくにシステムに欠陥がないというようなら、なぜこれを別個に取出さなければならなかつたか、その理由をもう少し端的にお答え願いたいと思います。
  60. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私はそういうシステムに何も欠陥があるのじやないので、初めきめたときも、高等学校というのは様々なバラエティを持たして、或る高等学校は農業高等学校、工業高等学校と、そういうふうにする考えなんですが、併し六三建築とか様々なものに力を注いでおるために、こちらの職業的な教育というものが不十分である、これは認めざるを得ない。又一般の新教育精神は基本的な教育をするというところに精神があるために、余りにそこに力を入れ過ぎてしまつて高等学校生といえばすべてが大学へ進むような心がまえになつている。本当にそこで直ちに社会に行つて職業人として働くのだという自覚なども之しかつた。そういう点をこの制度によつてつて行こうというのであります。勿論荒木委員などのおつしやつたような危険もここにあるから、私は初めから運用当を得なければならないということを主張しているので、私自身も運用が当を得るように努力して、システムそのものに瘤を附けるとか、システムそのものを阻害するというようなことのないように、自分として考えるように努力しておる次第であります。
  61. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 そうすると新学制を真実に天野さんのお考えになるように完備して行けば、特段にこういう産業教育法というものは必要がなくなる。こういうふうに結論をお持ちになつておるように私お察しするのでありますが、その通りですか。
  62. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) こういう産業教育法ということは、正しく運用して行けば、初め考えられたような六三制というシステムを強化することになり、それを充実するということになる、こういう考えであります。
  63. 高田なほ子

    ○高田なほ子君 結局六三制、新学制というものに重点を置くのであつて産業教育法これ自体はそれを補足するのだと、こういう意味でございますか。
  64. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 補足するというと言葉に少しく語弊があるかも知れませんが、産業教育法というものは何も六三のシステムと別なものを企てることでなく、システムの精神がこれによつて充足され強化されて行くのだ。だからこれ自身意味を持つておるのだ。こういう考えを持つております。
  65. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見ございませんか。
  66. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 項目を変えてよろしいですね。
  67. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 文部大臣質問あとに残つているなら……。
  68. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣にお伺いいたしたい点は、この専門課程高等学校においては、この法案の第四条に謳われておる点でありまするが、実験実習により生ずる収益、この収益というものの取扱いかたというものは私は極めて重大だと、こう考えておるのでありますが、文部大臣としてこの実験実習により生ずる収益というものをどういうふうにお考えになつていらつしやるか、大臣としてのこれに対する見解を承わりたい。
  69. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 一体この実験実習というのは収益を目的としてやるわけではないのでありまして、教育のためにやつておるのであります。併しそこから収益が挙るということも可能なことなんですが、挙つた収益をどうするかということだろうと思うのでありまして、その収益は、私はそれを作つたところで以てそこのいろいろな費用に充てるとか、拡張するためにそれを利用するとかいうことが元来非常に望ましいことでよいことだと思います。けれどもそういう収益を自由に使うということになるというと非常に又弊害の起る虞れもありますから、これは国立の場合においてはその法規に従つて行くし、そうでない地方の場合においても非常に戒心を要することがあるので、どういうことであつてもよいことばかりというふうには行かないので、このことには特に弊害の伴うことがあるから、私はこの点相当考えなければならんことかと思います。
  70. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 昨日政府委員のかたに承わつたところによりますというと、これは申すまでもなく国又は地方公共団体の収益になるのでありますが、政府委員にお聞きした点並びに私が若干調査したどころによりますというと、学校にその収益が任されている場合においても、又公共団体にそれを百%納める場合においても、多額の収益というものを強制されるために多額の収入に努力をしておる。それが教育的に考えた場合に若干問題も起つておるところがあるやに私把握しているのでありますが、この事態に対して大臣どうお考えになりますか。
  71. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) つまり国或いは公共団体に向けてそれを納めるというために多額に要求されて無理な仕事をする、こういうことですか。そういうことがあつてはそれはいけないことであることは当然であると思いますから、納めるにしても適当な査定をしてもらいたい。もともと只今も申するように収益を挙げるためにこれをやつて頂くことではないのでありますから、その査定が当を得ないということは非常に不満であります。是非その査定を適当にしてもらいたいと思います。
  72. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 大臣にこの実態を是非私は知つて頂きたいと思うのでありますが、結局地方財政に大きなウェイトを占めておる教育財政、この関連性において地方財政の貧困ということは、地方公共団体としては学校当局に対して、君のところでは年かくかく万円の収益を挙げて欲しいということを強制されるわけであります。又学校に若干住されておる学校におきましても、君のところではどの程度収益があるはずだからかくかくの施設をして欲しいということを強制されるわけであります。これは地方教育財政の貧困ということがこういう点にも現われておるという実情でございます。これを大臣是非知つて頂きたいと思うのでございます。  更に私は大臣に最後にお伺いしたい点は、かくのごとく非教育的な収益の取扱い方がなされておるのに対しまして、文部大臣として何らか地方教育委員会なり或いは地方公共団体について指導と助言を与えられるお考えはないかどうか、若しありとすればどういう方法があられるか、承わりたいと思います。
  73. 天野貞祐

    ○国務大臣(天野貞祐君) 私は地方の学校に行きましたときに、これは大学ですが、学長等でも、これは自分のほうへ任せてもらうと非常にいいのだがという話を聞いたことがあります。今矢島さんがおつしやつたようなことを聞いたことがありません。だからそういう実態をよく調べさして、そうして適当な意見を私から述べるということにしたいと思つております。(「進行」と呼ぶ者あり)
  74. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御発言ございませんか。それでは本案に対する質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか、    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。それではこれより討論に入ります。御意見のおありのかたは賛否を明らかにしてお述べを願います。なお修正の御意見がございましたらこの際お述べを願います。
  76. 梅原眞隆

    梅原眞隆君 私はここに修正したい点を持つております。この修正を内容として賛成をしたいと思うのでありまして、この修正案と申しますものを一応ここに申上げます。    産業教育法案の一部を次のように修正する  題名を次のように改める。    産業教育振興法   目次中「第六条」を「第三条」に、「第七条—第十二条」を「第四条—第九条」に、「第十三条—第十七条」を「第十条—第十四条」に、「第十八条—第二十一条」を「第十五条—第十八条」に、「第二十二条」を「第十九条」に改める。第一条中「かんがみ」の下に「教育基本法(昭和二十二年法律第二十五号)の精神にのつとり、」を加え、「よりよき郷土の建設と」を削る。   第二条中「、学生又は青少年その他の一般公衆」を「又は学生」に改め、「職業教育として行う」を削る。   第八条第一項中「十人以上二十人以内」を「二十人」に改め、同条第二項を次のように改める。  2 委員は、左に掲げる者につき、文部大臣任命する。   一 産業経済界における学識経験がある者四人   二 教育界における学識経験がある者 八人   三 勤労界における学識経験がある者 四人   四 関係行政機関の職員四人同条に次の二項を加える。  3 前項第一号から第三号までに掲げる者のうちから任命される委員の任期は、二年とする。但し、欠員が生じた場合の補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。  4 委員は、再任されることができる。   第十三条第二項中「前項の都道府県以外の都道府県又は」を削る。第十四条第三項中「第八条」を「第五条」に改める。   第十五条第二項を削る。   第十八条第二項第一号中「高等学校文部大臣が都道府県の教育委員会推薦に基いて指定するもの」を「高等学校又は短期大学で、文部大臣高等学校にあつては都道府県の教育委員会推薦に基いて、短期大学にあつてはその設置者の申請により指定するもの」に改める。   第十九条中「及び学校が」を「及び学校において」に改める。   第二十二条第一項中「第十八条」を「第十五条」に改める。   第四条から第六条までを削り、第七条を第四条とし、以下順次三条ずつ繰り上げる。   附則第一項但書中「第十八条から第二十二条」を「第十五条から第十九条」に改める。   附則第二項中「第十三条」を「第十条」に改め、同項を附則第四項とし、以下順次二項ずつ繰り下げ、附則第一項の次に次の二項を加える。  2 第五条第二項第一号、第二号又は第三号に掲げる者のうちから最初任命される中央審議会委員のうち各半数の者の任期は、同条第三項の規定にかかわらず、一年とする。   3 前項の規定により任期を一年とする委員は、くじで定める。  修正案の大体の趣旨について御説明いたします。  第一に法案の名称を産業教育振興法といたしましたのは、本法案の要旨が、別に産業教育の原則を明らかにしようするものではなく、単に産業教育振興を目的といたしておりますので、学校教育或いは社会教育との関係が問題とされるような産業教育法の名称をさけて、端的に産業教育振興法といたそうとするものであります。第二に、第一条に「教育基本法の精神にのつとり」と挿入いたしましたのは、産業教育振興教育基本法の示す学校教育社会教育との一体系の中において行われることを示そうとする趣旨であります。第三に、第二条中の「又は青少年その他一般公衆」という文句を削除いたしますのは、本法案の目的を学校が主として学校教育として行う産業振興を目的とするよういたしたいという趣旨であります。第四に、第八条の中央産業教育審議会構成に関する修正は、審議会の民主的構成法律上明確に規定しておこうとする趣旨であります。第五に、第十八条第二項中に「短期大学」を挿入いたしましたのは、短期大学が現に産業教育を担当いたしていますことを考慮して、これに財政的援助を与えようとするものであります。第六といたしまして、第四条から第五条までを削除いたしましたのは、これらの規定は単に倫理的の意義を持つもの、或いは問題となる点多きため、むしろ削除して、別に適当の措置を講ずるよういたしたいという趣旨であります。  第七に、第十九条中の「及び学校」を「及び学校において」と修正いたしましたのは、第二条に関する修正と同一の趣旨であります。第八に附則第二噴出として加えて、その任期を一年といたしましたのは、これは関係行政機関の職員の場合にこれが適当であるという趣旨であります。  その他はこれは法文を改めます整理上の問題であります。これらの修正案を内容として私はこの法案に賛成をするものであります。
  77. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) なおこの修正案は梅原君外十八名の共同提案になつておりますので、只今梅原君が御説明なさいましたのは提案者を代表しての意味と解釈いたしまして、他の委員で補足的に御説明があるならばお述べを願いたいと思います。
  78. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 只今梅原委員から提出されました修正案に賛成をいたします。
  79. 加納金助

    加納金助君 只今梅原委員より修正されました点につきましては、我が自由党におきましても同意するものであります。その他の原案に対しましては別に異議なく賛成をいたします。
  80. 矢嶋三義

    矢嶋三義君 私は梅原委員が代表して提案されました修正案並びに修正部分を除く原案に対して賛成の討論をいたすものであります。  先ず第一番にこの法案の国会にかかるや、教育界において数百万の運動費をこの法案推進ために集めた、而もその費用は一部には生徒の手を通じて生徒の父兄、即ち生徒の頭割によつて算出されたということについて私は遺憾の意を表明するものであります。教育の第一線において施設不十分のために或いは教員の定員不足のために、なさんとするところの教育がなし得ないところの苦境にある教育者に対して私は衷心からお気の毒に思うものでありますし、その教育者をして数百万の金を集めて而もこういう教育立法の運動をしなければならない段階に教育者を追い込んだことにつきましても、私立法府におる一員といたしまして責任を感じておるものであります。  次にこの法案につきまして審議の過程において最も問題となりましたところは、現在の新学制におけるシステムとの関係でありまして、この点に関しましては、責任の文部大臣から現在のシステムというものを堅持するのである。而もそのシステムは十分であり、このシステムを育成、指導する意味においてこの法案の運用よろしきを得なければならない、こういう意見を確認できまして、その点については満足の意を表明するものであります。併しながらここに注意しなければならないことは、我が国国家経済並びに国民経済が貧弱である現段階におきましては、できるだけ税金を安くしたい。そのためには学習年限を短かくしたい、こういうふうに考えて来るのは当然であります。そうして新教育は人間としての育成を先ずやつて、そうして人間として作り上げられた者に対して、教養の高い人間に対してその上に専門技術を教授して行くという新教育の理念から、手取り早いところともかく鋤の使いかた、ハンマーの振いかた、そういう人間を早く作つて、そうして産業経済の高揚にその人的資源をここに確保して、そうして経済の再建、或いは資本主義の再建を図ろう、こういうふうに考えるということも又私は予想されると思うのであります。そこにもたらされるものは、いわゆる人間性を無視したところの徒弟教育であります。曾つて我が国が軍国主義時代には明らかにそういう教育があつたということを我々は反省しなければならないと同時に、この法律の成立したあげくにおきましては、運営にその点特に戒心しなければならないということを、私はここに声を大きくして申上げたいと思うのであります。  更にこの修正案において私は最も明確にされて結構である点は、それは現在のシステムを認め、而も学校教育の不十分を先ず第一義的にこれを充足する。即ち学校教育においてなすところの産業教育趣旨にいたしまして、そうしてその充実された施設を以て社会教育振興する、こういうふうに種々の関係はつきりと打立てるべく修正された点は、この修正案の最も骨子をなすものでありまして、その点非常に賛成を表明するものであります。  次に私はこの法が成立した暁において最も重大なる点は、やはり財政の問題だと思うのであります。この審議の過程におきまして、七カ年問に二百億、そのうちの百億は国庫でやるが、その費用については現在の教育予算の枠外である、決してこれは六三予算あたりにしわ寄せをするものではないということを発議者からも承わり、又確保するということを文部大臣からも承わつたわけでありますが、飽くまでもこれに要するところの予算というものは、決して現在の天野文政のみの予算にしわ寄せをするものではない、枠外に予算を確保すべきものであるということを、これ又私は強く要望いたすものであります。更に申上げることは、本修正案においてこの法案の第四条、第五条、第六条を削除したのでありまするが、この第四条、第五条、第六条というものは、産業教育振興の上から重大なる問題であるということは、本委員会審議の過程におきまして論議されたところでありまして、ただ法文上こういうところに集めなくても、その技術運営において他の方面においてなされる、こういう立場から第四条、第五条、第六条は削除されたのでありまして、行政府としてはこの趣旨を十分行政の面に活かされるよう、更に委員会において質疑応答の結果確認された点につきまして努力されることを要望するものであります。  次にこの法案運営に当つて重大な点として更に申上げなければならない点は、中央産業教育審議会の性格並びにその委員構成でありまして、これを飽くまで助言と指導の機関たらしめるべく将来やる立場に立たせなければならない、更にその委員構成を民主的にするために、先ほど梅原委員から適切なる修正案が提示されたわけでありますが、最終的任命の責任者は文部大臣であります。飽くまでも私は文部大臣に対しましてこの修正の趣旨を体し、各関係各層から最も公平にして適切なる委員構成に責任を持つて大臣が努力せられることを要望いたしまして、私は梅原委員の修正案並びにその修正部分を除く原案に賛意を表するものであります。
  81. 荒木正三郎

    荒木正三郎君 私は日本社会党を代表いたしましてこの修正案並びにその他の原案に対しまして賛成の意見を申述べます。  ただこの際一言申上げておきたいことは、この法案が成立をいたしました暁においては、この職業教育振興するのに必要な経費の捻出については文部当局におかれては十分な努力をせられまして、この法案趣旨とするところが実現できるようにして頂きたい、かように考えておる次第であります。なおこの法案審議過程におきまして、六三に対する費用が削減をせられてこのほうに廻るのではないか、こういう危惧が相当ございましたので、かような危惧の生じないように善処して頂きたい、こういう希望を簡単に申述べまして、賛成の意見を終る次第であります。
  82. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 他に御意見ございませんか。
  83. 高橋道男

    高橋道男君 私も梅原委員の提出された修正案と、その部分を除いた原案に賛成するものでございます。産業教育は申すまでもなく教育上非常に重要な部分を占めるものでございまするが、原案において示されましたところを率直に感じまするときには、ややともすると六三制の教育体系を誤るがごとき観念を与えられたのでございます。併し幸いにして修正案が提出されたことによつてそのことが誤られることなく、私どもが念願する人間教育ということの完成の一環として産業教育の方途が促進されるようなことになりますることを、私は最も喜ぶ一人でございます。産業教育ということが余りに重要に取上げられて、六三制の体系を乱すというようなことがありますれば、或いは物質的な、或いは功利主義的な人間を作ることになることがありまするので、教育は飽くまでも人間教育の完成である、これを目標としてこの目途とされる産業教育の基本が促進されることを念願するものでございます。なお矢島委員なり荒木委員から申された財政の点が、この教育を促進する上に非常に重点になつておるのでございますが、両委員の述べられたと同じ趣旨においてこの法律の施行上当局において十分の配慮をされんことを希望するものでございます。  なを一言附加えますることは、今回の法律の立案なり進行の過程におきまして、関係教育界において相当多額の費用が父兄の間から徴され、殊にこれに深い関係を有せられる教育家諸君が、殆んど連日に亘つて国会に陳情或いは運動の方途を立てておられたのでございまするが、私はこういうことは教育界の上から申して必ずしも喜ぶべきことじやない。資金を集められたことだけでなしに、その教育の実際に最も精魂を傾けられるべき教育家諸君が、その職場を離れて運動されるということについては、その熱意は認めることはできましても、多々考えさせられる点を私は感じるのでございます。これは単にこの産業教育法の問題にかかわりませず、将来を通じて文部大臣において、教育家をしてもつと真実なる立場において教育に従事することに専念するような措置を講じられることを併せて具申して、私の賛成の討論を終る次第であります。
  84. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) ほかに御意見ございませんか。別に御意見もないようでございますから、討論は盡きたものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれより採決に入ります。  産業教育法案について採決をいたします。  先ず討論中にありました権原君外十八名提出の修正案を議題に供します。梅原君外十八名提出の修正案に賛成のかたの御起立を願います。    〔総員起立〕
  86. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 全会一致でございます。よつて梅原君外十八名提出の修正案は可決せられました。  次に修正の部分を除いた原案を議題に供します。  修正の部分を除いた原案に賛成のかたの御起立を願います。    〔総員起立〕
  87. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 全会一致と認めます。よつて産業教育法案は全会一致を以て修正議決されました。なお本会議における委員長の口頭報告の内容は、本院規則第百四条によつてあらかじめ多数意見者の承認を経なければならんことになつておりまするが、これは委員長において本案の内容、本委員会における質疑応答の要旨、討論の要旨及び表決の結果を報告をすることといたしまして、御承認を願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) 御異議ないと認めます。  それから本院規則第七十二条によりまして、委員長が議院に提出する報告書に関して多数意見者の署名を附することになつておりますから、本法案を可決することに賛成をされたかたは順次御署名を願います。   多数意見者署名     加納 金助  木内キヤウ     工藤 鐵男  川村 松助     木村 守江  平岡 市三     荒木正三郎  高田なほ子     梅原 眞隆  高橋 道男     山本 勇造  大隈 信幸     矢嶋 三義
  89. 堀越儀郎

    委員長堀越儀郎君) それではこれで散会いたします。    午前十一時五十八分散会  出席者は左の通り。    委員長     堀越 儀郎君    理事            加納 金助君            木内キヤウ君    委員            川村 松助君            木村 守江君            工藤 鐵男君            平岡 市三君            荒木正三郎君            高田なほ子君            梅原 眞隆君            高橋 道男君            山本 勇造君            大隈 信幸君            矢嶋 三義君   衆議院議員    文部委員長   長野 長廣君   国務大臣    文 部 大 臣 天野 貞祐君   政府委員    文部省初等中等    教育局長    辻田  力君   事務局側    常任委員会専門    員       石丸 敬次君   衆議院事務局側    常任委員会専門    員       石井  勗君    常任委員会専門    員      横田重左衛門