○衆議院議員(松浦東介君)
只今議題と相成りました松浦東介ほか百四十名提出積雪寒冷単作地帶振興臨時
措置法案に関しまして、
提案者を代表し、
提案理由を申述べたいと存じます。
この
法律を提出いたしました
根本の
理由は先ず、国内
食糧の
増産を図り、その自給度を高めることであります。
世界情勢は微妙複雑、いささかも楽観し得ない今日の段階におきましては、国民生活の安定を期する上から申しましても国内
食糧の自給度を可能な限り引上げ、外国依存を軽減する方途を講ずることの
必要性は改めて論ずるまでもないところでありまするが、国民
食糧の大宗である米穀について申しまするならば、年々二千万石以上を生産し、全国供出数壁の四〇%をこの地帯より供出し、戦前戦後一貫して、日本の穀倉的役割を果して参つた単作地帶に対して、この際国の財政力の許す最大限度において追加的な投資を行い、
土地改良等農業生産
條件の整備を促進し、二毛作化を可能ならしめますならば、飛躍的な
増産効果を発揮し得ることは全く疑う余地がないと信ずるのであります。
次に、積雪寒冷軍作地帶農家の経済的基礎を確立しまして、世界経済との接触に伴う経済変動に耐え得る強靱な一基盤を確立し、延いては社会政策的な施策の強化に資することであります。
東北、北陸等の單作地帶は、従来早場米の供出地帶でありまして、年々八十億乃至六十億円に達する早期供出奨励金の実に八〇%がこの地帶に
交付され、農家経済を潤して来たのであります。元来早期供出奨励金は、端境期における米穀の出廻りを促進するために定められた
制度でありまするが、今日ではむしろ単作地帶を保護救済する重百要な
措置と相成つておるのであります。而して近時、
政府手持
食糧の増加に伴いまして、この奨励金は逐次縮減の方向にあり、二十六
年度予算案におきましては、三十億円を計上されることと相成つているのであります。かくのごとく、財政経済の正常化に伴いまして自然的、社会的
條件の劣悪な単作地帶農家は今後相当の試練に遭遇するものと予想いたされまするが、か
ような趨勢に対処いたしまして、この際単作農民が如何なる経済変動にも対応し得る体制を早急に確立しますることは、この地域の歴史的事情に徴しましても、一日もゆるがせにできない肝要な施策と存ぜられるのであります。
以上の、ごとき
根本的な
理由に立脚いたしまして、ここに積雪寒冷単作地帶振興臨時
措置法案を各派の共同
提案によつて提出し、積雪寒冷単作地帯を適用の
範囲とする特別法の制定を図ることといたしたのであります。
もとより積雪寒冷軍作地帶農村振興に関する具体的な方策につきましては、国内の衆智を集め、精密な調査と熱心な研究ののちに初めて確立されるものでありまするので、この
法律案では、先ずこの態勢の整備を可能ならしめる基本的な
計画並びに組織を速かに確立することを当面の目的としているのであります。即ち、政策の基礎を明確に且つ全面的に打出しますために「農業振興
計画」を、市町村、道府県及び中央の各々の段階において策定することを
法律的に命令し、その実施に対して国は財政金融力の許す最大限度において援助する義務を負うことを明らかにいたしましたこと。
二 積雪寒冷単作地帶の指定並びに振興
計画の承認等に関する議決を行い、且つ農村振興に関する
審議並びに建議を行うために
審議会の設置を
規定しましたこと。
三 取りあえずこの振興
計画を五カ
年間に遂行せしめるために、本法を五カ年の限時法としましたこと。
以上の、ごとき趣旨に沿つて立案しましたこの
法律案の主要條項について以下若干の
説明を加えることといたします。
先ず積雪寒令單作地帶の意味並びにそれが成立する要件についてでありますが、それは積雪寒冷が甚しいこと、農地の利用率が低いこと、農業生産力が劣悪であること、という要件が具備されることが必要であり、而して積雪寒冷地に立地しまする限り、水田地帶と畑地帶の双方について、毛作文は著しく生産力の低い、換言すれば土地の收益力のうすい地域が本法の
対象地域として取上げられまするが、その地域につきましては、農林大臣が、積雲寒冷単作地帯振興対策
審議会に付議した上、道府県名を示して具体的に積雪寒冷単作地帶たることを指定しなければならないことといたしております。
積雪寒冷単作地区についても又同じ趣旨といたしております。
次に農業振興
計画の
内容及びその
決定並びに変更の
手続についてでありますが、
計画の
内容については、広く全国の農業及び農民生活を通じて実施すべき事項が掲げられているのでありまして、これらは農業
委員会法案における綜合
計画とその
内容を合致せしめてあるのでありまするが、要するに積雪寒冷地帶の劣悪な自然的社会的
條件に即応した具体的な施策を一層拡大された規模と短縮された期間内に中央、地方協力して実現せしめ
ようとする意図が盛られているのであります。従つて
計画の
決定とその変更につきましてはう住民、議決機関、執行機関の各々がその地位と責務の
重要性を明確に自覚して、この
事業に参劃し得る如き責任体制がとられているのであります。
市町村の農業振興
計画、道府県の農業振興
計画並びに国の農業振興
計画の相互
関係につきましては、各級農業振興
計画は地方自治を尊重する建前から、それぞれの機関によつて確定される独立
計画でありまするが、別々に孤立したる
計画ではなく、道府県は市町村の、国は道府県の
計画をそれぞれ自己の
計画に組入れて、総合的に作成されなければならないことと
なつており、而して
政府は
最後に、財政金融状況を勘案した上、各
年度の直営、
補助、非
補助等の各種
事業全般について詳密な全体
計画を作成し道府県へ通知することといたし、道府県又は市町村は当初に作成した
計画と国又は道府県より通知を受けた
計画とを照合せ変更の必要があれば変更を加えつつ最終
計画を定め、かくて最終的に
決定された
計画が実施に移されるわけでありまするが、
年度の中途において天災、地変、経済事情の激変等により
計画を変更する要が起きたときも前述の
手続の例に従つて
計画変更が行われることといたしております。
最後に積雪寒冷単作地帶振興対策
審議会がこの
法律の運用のため並びに広くこの地帯の農村振興に関する重要事項を調査
審議し且つ
関係行政機関に建議するために設置されることは前述のごとくでありまするが、その調査
審議内容はいやしくもこの地帯の農業並びに農民生活に
関係を持つと思われる一切の問題を包含することと予想されまするので、この
審議会の組織はか
ような任務にふさわしい
ように、総理府に設置され、総理大臣の任命する各方面の権威者三十名以内で構成され、更に
補助機関として専門
委員が置かれ、部会を構成して専門事項の研究に当ることとなるのであります。
以上
法律案の概要を御
説明申上げましたが、
愼重御審議の上速かに御可決あらんことを御願いする次第であります。