○
国務大臣(
増田甲子七君) 楠見
委員の御
質疑にお答え申上げます。先ず国の行うべき国の
直轄事業と、それから
自治団体の行な
つておるところの
公共事業との
相互の間を、密接な
連絡の下に執行する必要があるという昨年度の
政府委員の
答弁は、私は全然
賛成であります。その
通りでございます。例えば
内地におきましても、国が
直轄事業を行な
つて同じ
国道でも、例えば
国道第一号線にいたしましても、或る
地点は国が
直轄事業を行な
つておりまして、或る
地点は
府県知事が
自分の委任された
仕事として執行いたしております。その
相互の
関係の
連絡が緊密であるということは
政府委員の
答弁の
通りであります。ただ併しながら同一の
機関で一元的にこれを執行しなか
つたならば、
連絡は密接にとれないものであるというところまでは、
政府委員は言
つておるのではないのでありまして、
我我は現に
内地におきましては、国の
直轄事業を
国道の
建設について見ますと、
地方建設局が行な
つております。それから
地元に任せる同じ
国道の
建設にいたしましても、改修にいたしましても、そういう
仕事はたとえて言えば、
国道第一号線におきましては、
神奈川県知事がやる、
静岡県知事がやる。同じ
神奈川県でやる
国道一号線で
直轄事業でや
つておる部面もあれば、
府県でも
自分の
事業としてや
つておる部分もあるのでありまして、主管が異なりましても、同じ
国道の一号線が、或る
地点が幅員が二十メートルにな
つたり、或る
地点では急に十メートルにな
つてしま
つたり、或る
地点の橋が永久橋であるならば、或る
地点はぼろぼろの木橋であるとい
つたことでは困るのでありまして、
建設省で立てました
計画に
従つて、関東
地方建設局も
神奈川県の
知事も
連絡をとりつつ同じ
国道の一号線の改修なり、
建設をいたしておるのであります。ただ楠見さんのよく御
承知の
通り、国の行うべき
直轄事業というものは、到底地方の負担を以上てしては堪え切れないような大規模の
事業を、
直轄事業として国が直接
計画から執行まで
責任を担当いたしておるのであります。行政の対象物それ自体を見ますというと、性質上の区分というものはあまりできません。結局
事業の規模によ
つて、とてもこれだけの大きい
事業は
府県ではできがたい、そこで国がやる。こうい
つたような形であります。
北海道についても従来から同様であるのであります。ただ併しながら
北海道が
内地と違うところは、
直轄事業の部面が極めて多い、
国道のごときは全部直轄でありまして、地方
公共団体たる
北海道がやるというようなことは殆んどありません。又
北海道に地方費道という、
内地で申せば
府県道と同じような性質の道路がございまするが、この地方費道の
建設、改修等も全額国庫負担でや
つております。先だ
つても本
会議において、私が木下
議員の御質問に対して縷々申上げましたが、これらの
直轄事業は
内地においては三分の一は
地元で負担してもら
つております。ところが
北海道では
国道は国の
直轄事業で殆んど全部や
つておりまするし、而うして
地元負担というのは一文もございません。それから
府県道は
内地におきましては、半額国庫負担、而うして
府県道の改修なり、補修なりの
事業は地方
自治団体の
仕事でございます。併しながら半分
地元で持ち、半分国庫で持つ、こういうようなことでありまするが、とにかく
北海道の国の
直轄事業というものは、分量においても、或いは対象物においても、
内地と比較にならないくらい多いということは楠見
委員のよく御
承知の
通りでございます。而うして
内地において同じ
直轄事業の対象を、同じ
国道においてや
つておりましても、
建設省で立てた
計画に則
つて連絡を密接にとりつや
つておるごとく
北海道でもと
つたならばよろしいと、こう
考えております。而うしてまだ
開発庁ができてから一年ばかりで、一年た
つただけでは、
現地に国の
直轄事業を担当する
内地と同様の役所を作
つたほうがよろしいという結論に到達するには早過ぎるのではないか。一年間た
つたのちに
現地に国の
機関を設けようとするに至
つたその
経緯を申述べよという御質問に対してお答え申上げます。実は皆様御
承知のごとく昭和二十二年四月までは、これら国の
直轄事業は
政府の出先
機関である
北海道庁長官が担当いたしてお
つたのであります。
北海道庁長官は、
内地は当時はいわゆる任命
知事でございましたが、
北海道庁長官も任命
知事であり、国の
機関である。而うして
内地の
知事は自治事覇も相当担当しておりまするが、
北海道庁長官の担当する事務はむしろ国の
機関としての事務のほうが、予算面からも
事業分量からも遥かに多いのであります。普通には二割、八割と言
つておりますが、八割くらいの
事業分量或いは予算面を、国の
機関として、国の予算を
現地において執行する
意味の
北海道庁長官があ
つたのでございます。黒田開拓使から始まりまして昭和二十二年四月まで、而もその期間の自治というのは
内地の諸
機関に比べてよほど重責を担当する立場に置かれた長官がこれを担当いたしてお
つたのであります。ところが二十二年四月、公選
知事になりました場合に、本来あのときに我々は
考え直さなくてはいけなか
つたのでありまするが、漫然一種の委任の形にな
つてしま
つたのでありますが、どうしてあのときに
考え直さなくてはいけないかと言いますと、終戰前でありましても、
北海道の
意味というものは非常に重要でございますから、
北海道庁長官がこれを担当いたしてお
つたのでありまするが、終戦後はいよいよ
北海道の全日本における立場というものは重且つ大を加えて来たのでありまして、そういう
意味から見ますと、漫然委任したことが本当は我々の怠慢ではなか
つたかというふうに
考えているわけであります。そこで私どもは第二次吉田内閣を担当するや否や、直ちに
北海道の行政機構の根本的検討ということが必要であるという
意味におきまして、
北海道総合
開発審議会を内閣に
設置いたした次第であります。これが昭和二十二年、いよいよ閣議
決定の下に
設置されたのが二十二年四月でございまして、一年間
審議会の皆さんに勉強して頂いた結果、
北海道の
開発には国が総力を挙げて重点的に力を入れなくてはならない。終戦前も相当力を入れる
意味において、国の行政を八割担当する
意味において
北海道長官がいた。ところがそれがなくな
つてしま
つた。而してむしろ終
戰後の意義というものは終戦前よりも遥かに偉大である。
北海道の中に実際上の朝鮮だとか、実際上の樺太だとか、実際上の満洲とい
つたようなものを作る必要がある。即ち
北海道の有する潜在資源というものを飛躍的に
開発して、そうしてこれらの生産力によ
つて全日本
国民の生活を賄
つて行くようにしなくてはならない。従来も国家
機関が八割も
仕事をする
意味において
仕事を担当しておりたのを、漫然公選
知事に委任したのはよろしくない。むしろあべこべに
北海道の
重要性というものは
意味を加えて来たのであるからして、
北海道総合
開発機構を整備充実せよという答申があ
つたのであります。一年間勉強されました結果……この答申に基きまして、我々は本来楠見
委員の御指摘のごとく、中央地方を通じて、
北海道に終戦後は日本がそれだけ力を入れているならば、首尾一貫したところの総合
開発機構を作るべきであ
つたのであります。その当時も私どもは、実は私は当時は御
承知のように各省には直接
関係のない官房長官をいたしておりましたが、各省の調整ということについてや
つて見ましたけれども、
現地に
開発機構を直く作るという運びには、当時はまだ努力はいたしましたけれども、至りませんでした。そこで中央における
開発庁を作る、当時は中央と地方と百尾一貫した
北海道TVAを作るべしという
考えのほうがむしろ非常に盛んであ
つたのであります。そこでTVAというところまでは行きませんでした。結局中央における
北海道総合開発計画を樹立する、そうしてその
総合開発計画の執行について、各省
大臣を指導推進するとい
つたような内閣
総理大臣の立場を受けた、同じ内閣の総理府の外局として
開発庁長官は
国務大臣を以てこれに充つという立場から、総理の名において
農林省或いは
運輸省或いは
建設省の
北海道総合開発計画の実施について推進を図るというだけの
意味の
開発庁ができたわけであります。この
開発庁ができまして我々は併しながら
北海道総合開発計画の樹立について一生懸命勉強し、或いは
北海道総合
開発についての予算の獲得について一生懸命努力すると共に、一両
北海道の総合
開発行政機構の検討も引続いて今から三年前にでき上りました
北海道総合
開発審議会の答申の線に沿うて一生懸命勉強いたしてお
つたのであります。結局一年間の勉強の結果、やはり
現地におきましても、
北海道総合
開発局を作る必要があるという結論に到達いたしました。
只今のところ、御
承知のごとく
開発局と名前を打
つておりまして、又
事業対象は国の
直轄事業でございまして、伝えられるごとく、
北海道という地方
公共団体、
自治団体の自治事務とは何ら
関係がないのであります。先般の本
会議においても、木下
議員に対して縷々私御
答弁申上げましたが、
内地においては国の
直轄事業は
地元が相当負担しているけれども、なお且つ国の出先
機関がこれをや
つている。
北海道の国の
直轄事業というものは
地元負担というものが全然ないのでございます。併しながらその
地方事務官、
地方技官という総理府の役人がや
つている
仕事を或る一部公選
知事、即ち自治事務を担当する
執行機関の首長である
知事か、これらの役人を指揮監督するとい
つたような極く変態的の現象があるのでありまして、この変態的の現象を直しまして、
内地と行政機構の点につきましては同様にするだけであります。ただ併しながら
内地と違うところは、例えば東北に例をとりますと、東北
地方建設局が東北の直轄河川或いは橋梁或いは
国道の改修なり
建設なりを担当しております。又東北農地局というものが矢吹原の国営の開墾を初めとして、東北地域における国の直轄土地改良
事業を担当しております。又東北港湾
建設事務所が或いは塩釜その他の国のいわゆる重要港湾の
建設をいたしております。
北海道においては
北海道庁の中の土木部に総理府の役人が
只今御
説明申した
通り数千名おりまして、国家公務員でございます。この国家公務員が、或いは小樽港、函館港の
建設をする。或いは
国道の
建設をする。或いは石狩川その他の直轄河川の改修をすると、こういうことにな
つておりまするから、これを直ちに
内地と同様に
北海道地方建設局、
北海道地方農地局、
北海道港湾
建設事務所という
三つにばらばらに分ける必要はない。むしろ
北海道はこれら三種類の国の行うべき
直轄事業も従来から
一つの
機関、而してその
機関は総理府の役人であります。この総理府の役人がや
つてお
つたのであるからして、やはり
一つとして、即ち
北海道開発局という役所にいたしまして、これを総合的に所轄せしめることがよろしいと、こういう結論に到達しております。
内地と違うところは
内地のごとくばらばらではない。即ち
地方建設局、地方農地局及び港湾
建設事務所の
三つではない。この
三つのものが一緒にな
つている、これだけであります。
経緯は大体以上の
通りであります。
然るに一体地方の地方自治を担当するところの
執行機関の長、公選
知事に或る
程度の委任をしておるけれども、この委任をした場合欠陥があ
つたのか、なか
つたのか、これを指摘せよという御質問に対してお答え申上げます。私どもは行政調査
委員会議の勧告の線も、楠見
委員のよく御存じの
通り、国の行政事務は国の
機関がこれを担当せよ。地方の地方事務は地方自治行政
機関がこれを担当せよ、こういう線でやることが、あの行政調査
委員会議の勧告にもございます
通り、能率を発揮するゆえんであると思
つております。従来はこういう悪いことがあ
つた、ああいう悪いことがあ
つたということよりも、より能率を発揮するためには、行政調査
委員会議の我々の指示する線、即ち国の行政事務は国の
機関がやる。地方自治事務は地方自治
機関がこれを行うという、これが私は能率を上げるゆえんではないかと、こう思
つております。そういう信念から、この改革を行な
つた次第でございます。尤も国の行政事務と申しましても、極く瑣末な事務は地方の
公共団体、自治事務を担当することを使命とするところの地方行政の首長に任せてもよろしいと思いますが、
北海道のごときはあべこべにな
つておりまして、国の行政が八割で、予算面からも
事業分量から申しましても、地方費は
府県であれば半分を
地元で負担するに過ぎないところの
府県道と国じ地方費道ですら、全額国庫で持
つている。地方費道という名前が本当はおかしいのです。まあ工費の
関係上
国道と言えないから、地方費道という仮に看板を出してあるだけでありまして、全額国費で賄
つておるという
意味においては、これはもう純然たる、道路を
建設という
関係から見ますと、
国道でございます。とにかく公選
知事の担当する地方自治事務が二割、それから国政
関係八割、こういうように公選
知事に八割も
事業分量なり、予算を持
つておるものを担当させるのはよろしくない、こういう
考えでございます。それで地方地方自治行政調査
委員会議の我々に対する示唆をしておりまするが、その示唆
通り能率的に発揮できないのであるが、これがいわば一般的に予想せられる欠陥でございます。それからなお執行という
意味から見ますと、我々は
計画を立てているだけであ
つて、もとより執行を監督するがごとく監督せざるがごとく、実に曖昧模糊であります。ところが憲法には、この行政は内閣がこれを担当して、
国務大臣は連帶して
国会に対して
責任を負うと書いてあります。即ち
国会は国憲の最高
機関である、旧憲法時代と違いまして、
政府よりも上位に立つものである。三権分立で対等の鼎の
三つの脚というような
関係でないのでありまして、
国会が国権の最高
機関である、
政府なり司法府というものはその下位に属するものである。いずれの時代におきましても、私は帝国議会の時におきりましても、
国民の代表である
国会なり議会に対して
責任を負い得る態勢において国政を執行すべきものだと思
つております。ところが執行について指揮し得るのやら、指揮し得ないのやらさつぱりわかりません。而も人によ
つては
知事よりも強力なる指揮を
建設大臣や農林
大臣や運輸
大臣が、小樽港の
建設或いは
北海道の
国道の
建設ついて、或いは国営の土地改良
事業について指揮監督すべきである。こういうことを言うかたもあります。
知事よりも高い立場で強力にやるべきであるというようなことを言うかたもありますが、どうも直接指揮できるやら、できないやらさつぱりわからん。
知事もどの
程度まで指揮できるやら、できないやらわからないのであります。楠見
委員は自治法をよく御存じだと思いますが、自治法をお読み下す
つても非常に曖昧模糊であります。そこで予算を、私どもは皆様の予想
通り、
現地において執行する
責任が
国会に対してあると思
つております。ところが執行について口を出し得るのやら、出し倶ないのやらわからない。とにかく総理府の役人がお
つて、俸給を上げるということだけは我々がや
つておる、これだけではあの橋のかけ方がこれはまずいじやないかというようなことを世話を焼けなか
つたならば、我々が皆様に対して
責任を負い得ない、こう
考えているのであります。ともかくも去年の予算面から見ますと、歳入の面での特色は去年も今年も減税であります。歳出の面の本年度の予算の特色は他にいろいろございましようけれども、先ず比較的に数が多少とも殖えているというようなことで、惰性的に数が殖えた面もございまするが、刮目して見えるほど数字が殖えた予算費目は
北海道開発費である。即ち歳出面における本年度の特色は
北海道開発費である。この
開発費を皆様の議決された御意向に
従つて現地において執行する
責任は、行政については
国務大臣は連帯して
国会に対して
責任を負う、あの憲法上の言葉から見ましても、我々は二十二年四月に、憲法よりも下のほうであるところの地方自治法で漫然任したような、任せないような曖昧な形にしたことは、この行政を執行するに際しては飽くまでも執行であります。行政という言葉は、執行という言葉で現わせる別な名前でございますから、この執行についてなし得るのやら、なし得ないのやらわからないにもかかわらず、行政の執行について
国会に対して
責任を負う、この憲法上の條文について我々はもつと憲法の條文を本当に尊重して、そうして我々は
責任を負うべき態勢にしなくしてはならん。こういうふうに
考えましたから、地方自治法も憲法の点からも、まあこれはスキャンダルだとか、スキャンダルでないとか、そういう細いことはこれは論じたくありません。会計検査院でいろいろな
報告もございまするが、そういうような点を私は決算
委員会において皆様からお叱りを受けましたが、あの
程度以上は申述べないつもりでございますが、憲法その他から見ましても、他の
三つの島よりも
北海道には力を入れておる、皆様が予算面その他において力を入れて下さ
つておるのであります。その執行を我々が指揮も、監督もできるやら、できないやらわからん、こういうことでは皆様に相済まん、延いては
国民に相済まない、こういう見地から……これが一種の欠陥でございます。即ち
北海道の
開発のごときは、
国民の
代表者である
国会の皆様に
責任者を負い得る態勢、即ち
国民的事業としてこれを執行しなくてはならんという確信の下に、本
法案を
提案いたした次第でございます。