○
国務大臣(
増田甲子七君) 相馬さんにお答えを申上げます。国が
直轄事業として現に行な
つている部分を、
開発局という国の
出先機関を
作つてこれが執行に当らしめよう、ざつと申しますとこれだけのことでございます。そこで、そうするならば、即ち執行について皆さまが
北海道開発予算を議決されますまで、
開発予算は予算
説明がございまして、例えば港湾につきましてもこういうふうな
計画の下に小樽港を
建設するのである、そこで皆さまの御了承を得てそうして予算は議決されます。即ち
国会の意向を反映して小樽港を
建設するわけでございまするが、小樽港の
建設なら、
建設という執行
関係で、
地方自治団体の
執行機関の長である
知事がや
つている、これが過去四年間の実際の
状況でございます。そうすると中央
政府は執行について
責任があるのやら、ないのやら、指揮監督ができるのやらできないのやら、又
知事が一体どの
範囲まで国の
直轄事業の執行の指揮監督をするのやらよくわからないのであります。はつきりわか
つている点は
只今の法規は実に不明瞭な法規でありまして、はつきりわか
つている点はこれら国の
直轄事業を執行する公務員は国家公務員であるということ、総理府の
官吏であるということ、
従つて私
どもがこの
官吏の任免なり、俸給の上げ下げをすることだけのことはわか
つております。併しながら
地方自治団体の
執行機関の首長である
知事も或る
程度執行についての指揮監督をするらしいのでございまして、法規は極めて
簡單でございまして非常に不明瞭であるということをまず以て御了承願いたいのであります。併して行政については
憲法に
内閣の
国務大臣は連帯して行政の執行について
国会に対して
責任を負う、こう書いてございまするが、執行自体しているのやらしていないのやらわからない。そこでやり方が悪くても私
どもが皆様に対して
答弁責任があるのやらわからない。その行政は純然たる国の行政であります。そこでこれはあの
地方自治を担当する
田中敏文君の信任、不信任という問題ではないのであります。
田中敏文君は有能達識の士である。でございますからあの御支持を道民
諸君から受けたものと私は
考えております。ただ問題は
地方自治をや
つているところのその
執行機関の首長である
知事に国の行政の執行について委せてよろしいかどうか。従来は相馬さん御
承知のごとく、国の
機関を、
北海道庁長官が国の
直轄事業をや
つてお
つたのであります。
北海道庁長官という
言葉が、例えば内地は県
知事という
言葉でありました、公選
知事の前でも。この
言葉の区別によ
つても明瞭なんでございます。実に厖大な権限を與えられてお
つたのでありまして、
長官の仕事は殆んど官治行政、国の行政が殆んどであ
つたのであります。例えば私が
北海道庁長官に赴任した際
地方自治団体である
北海道の費用というものは三億五千万円ばかりでございました。然るに、これは昭和二十一年のことでございまするが、国の費用はどれくらいあるか、
北海道全体が三億五千万円のときに十二億であ
つたのであります。これが即ちいわゆる
北海道拓植費でございましてこの予算面から見ましても、
事業分量から見ましても、
北海道庁長官の仕事は国政の方が多いのであります。いわゆる普通に八割、二割とい
つております。この二割の
地方自治事務を担当するところの
知事が国政八割を担当して一体
責任の所在が明瞭になるかどうか、甚だ私は大なる疑問を当時から実は持
つておりました。大体
北海道庁長官という資格が国の厖大な
機関である。併して国政の大部分を
北海道という国の
行政区域において行な
つてお
つた。これを
地方自治を作るときに、漫然自治事務をやるに過ぎない
執行機関の首長に或る
程度委せたことが、本来我々の勉強が足りなか
つた、こういうふうに
考えざるを得ないのであります。私
どもは決して道
知事の信任、不信任という問題ではございません。例えば
北海道庁長官というのは国の
機関で、いつも
国民の総意を反映するところの
国会へ出ましてそうして
答弁責任を皆様に対して持
つてお
つた、必ず
政府委員をいたしてお
つたものであります。又一年のうち半年は東京にお
つた。例えば朝鮮総督や台湾総督は殆んど半年、或いはそれ以上東京にお
つたことを私は記憶しておりまするが、これというのも国の事務が多いものでございますから、
政府なり
国会に触接する体制において国の行政事務を司らなくてはいかん、
従つて東京にお
つた、こういうわけであります。予算獲得のためばかりではございません。常時
議会に
出席いたしまして国の行政の執行について皆さんの御
質問にお答えする、或いは信任、不信任を問われる、こういう体制にあ
つたのであります。公選
知事になりまして
政府委員というようなこともこれは
法律上許されることではございませんし、ただ参考人として呼ばれるというようなことはこれはもとよりでございまするが、それで行政の執行について国権の最高
機関である皆さんに
答弁責任を果し得るかどうか、甚だ疑問であることは相馬さんも御肯定下さると思います。然るところ終戰後も戰争前の……、
北海道長官という資格でこの国の行政が八割あ
つたのであります。兼ねて
地方自治事務をや
つてお
つたのであります。而も御
承知のごとく
北海道というのは自治団体にな
つたのは極く最近であります。昔は国の
行政区域に過ぎない。府県は早くから自治団体でございましたが、
北海道は国の
行政区域、道庁
長官というのは全くこれは
政府の
一つの
機関である。そこで市町村といえ
ども北海道は任命市町村があ
つた。まあこういうくらいでございまして、
地方自治法で漫然公選
知事は
地方自治事務を担当するに過ぎない、この公選
知事に委ねたということは勉強が足りなか
つたと今更反省する次第でございます。我我は二十三年に政局を再び担当するや否やこの疑問はかねてから持
つておりましたから、二十四年に直ちに
北海道開発審議会というものを
政府に設けましてその
開発審議会が一年間勉強して下さいました結果、
北海道の
総合開発機構はこれを再検討し直し、整備拡充することがより急務である、こういうような答申も出たわけでございます。そこで内地と
北海道とは実は今度は変らないのであります。従来が内地よりまあ変
つたのであります。この昭和二十二年四月から今日までが変
つてお
つたのであります。むしろ二十二年三月以前は国の行政機構的の色彩が内地諸府県よりも強か
つたんです。ところが二十二年四月以降は、今度はあべこべになりまして、内地諸府県よりは国の行政機構というものがまるきり色彩がどつかへぼやけてしま
つた。即ち必要性から見ますと、戰争以前よりも戰争後は四つの島に限局されて我々は生活せざるを得ないのでございますから、そこで
北海道の未
開発資源を国の総力を挙げて
開発しなか
つたならば八千万同胞の要請に応え得ない。これはむしろ府県よりも従来から国の行政機構的な色彩が強い所であるからそれを倍加し三倍加しなければならないのに、あべこべに内地の府県よりも
地方自治側に委せていた、今後は国が総力を挙げて執行に至るまで
責任を負わなければならない、むしろ国がこの島を整備すべきときにまるきりあべこべにな
つてしま
つた。プラスを大いに加えて行かなければならんときに内地に比べてマイナスの方に帰
つて来た。そこで皆さんは
北海道の国の行政の執行について文句を言おうとおつしや
つても、国権の
機関の中では最高の
機関である皆さんが執行についてそれを督励遊ばそうといたしましても、参考人を招致する、参考に聞きますがというようなことでお聞きになるに過ぎない。こういうような体制に
なつたというのも国の
機関ではなく
なつたからでございます。
そこで我々は然らば内地と比べて特に国の行政機構は昔以上に強くするのか、絶対に強くするのではございません、内地並でございます。でありますから例えば高知県等四国の
開発等について新らしくTVAというようなものを作る意思があるかということをこの
北海道開発法に関連して御
質問でございますが、御
質問の趣旨は御尤もでございますけれ
ども、
只今のところ
北海道開発法の
改正というものは大体内地並にするだけであります。即ち前は内地よりももつと強い色彩だ
つた。国の行政機構的色彩が強か
つた、今度は内地並にするだけであります。どういうことかと申しますと、例えば東北の国道の
建設、直轄河川の改修のために東北地方
建設局があります、これは河川や国道の改修
建設という
直轄事業をや
つている役所であります。それから東北には港湾
建設事務所というものがありまして或いは塩釜或いは小名浜というような所で重要港湾の
建設をしております。福島県がやるわけでもなし宮城県がやるわけでもありません。
運輸省が港湾
建設事務所を
作つて直接運輸
大臣が監督してや
つております。こういうようなものを
北海道に作ろうと、これだけでございます。即ち小樽とか或いは函館というような港は小名浜や塩釜よりは遥かに大きい港であります。御
承知のようにそれから土地改良にいたしましても、福島県に矢吹原の国営開墾とい
つたような厖大なる開墾
事業を
農林省が
直轄事業として矢吹原開墾
事業事務所を
作つてや
つております。この開墾事務の上の役所は何かというと仙台にある東北農地局であります。然るに
北海道の直営開墾と土地改良は、内地の例えば矢吹原は我々がびつくりするくらいの大きい開墾
事業でありまするが、それと比較することが気の毒なくらい大規模な
事業であります。まるきり金額においても
事業分量においても比較にならんほど大きい。そこで
北海道農地局とい
つたような性格のものを
作つてこれら
直轄事業をやろうというわけであります。従来は国の
機関である
北海道長官、人によ
つては実際上の総督だと言
つておりましたが、この
北海道長官、国の
出先機関にやらしてお
つた。そこで今度若し内地なみにするならば農地局、港湾
建設事務所、地方
建設局という三つの役所を作るのが当然ということになります。そこで一時は実は
北海道農地局、
北海道港湾
建設事務所、
北海道地方
建設局、こういうものを作ろうかという議もあ
つたのであります。これは閣僚の間においてもそういう議はありました。それが一番
責任に対する対象を明確にするゆえんである、こういう議もありましたが、併し我々はこれらの三つの仕事は相互関連が深い、併しながら性質においては
直轄事業という
意味において同じ
直轄事業である
一つの役所を
作つて、従来総理府の役人がや
つてお
つたのでありますから、同じ役人に相互密接不離の連絡の下に調和ある
関係において
開発をしてこそいわゆる
総合開発である。内地ならば三つの役所を作るところをそれでは役所をあまり、行政機構を簡素化というときにまずいし、又
総合開発の妙味という見地からもこれはまずいし、今の性質から申すと三つあります農地局、
建設事務所、地方
建設局これを合せて
一つにして
北海道開発局と名を付けた次第であります。
将来或いはどういう性質に変るかも知れませんが、我々が現在
考えておるところは国の
直轄事業をやらせよう、これだけであります。
地方自治の侵犯でも何でもないわけであります。殊に
事業分量からお
考え願いたいのでありまするが例えば道路であります、道路では私一生懸命予算の獲得に盡力いたしましたが、微力でありまして去年は五十億円、今年はその三割二分増の六十七億であります。
公共事業全体から見れば御
承知のごとく一割殖えただけでありまして、三割二分殖えても率はよろしいのでございますが、その六十七億五千万のうち十六億は
北海道に使います。事務費等を除きまして大体において五十億が内地、東京都及び二府四十二県、即ち四十五都府県で五十億を使う。でありまするから一府県平均一億一千万円でありまして、非常に妙なコントラストでございまするが、岩手県の約四倍半が
北海道であります。その岩手県は九千万円くらいしか使
つておりません。その九千万のうち
補助事業と
直轄事業がある、その
直轄事業と国道
建設という仕事が東北全体では一億までは行
つていないのであります。又中国、四国全部の直轄
公共事業を担当する
意味におきまして広島地方
建設局という役所があります。その広島の地方
建設局でや
つておるところの直轄の
建設省関係の
直轄事業費の合計とそれから東北六県、即ち十五県の国の
直轄事業費の合計は
北海道で使うところの約十四億の
直轄事業費の何分の一ということであります。十五県が
直轄事業をや
つておりますが、その合計が
北海道の何分の一。こういうような厖大なる国の
事業が適切妥当に執行されるためには、是非地方
建設局が必要であるという
意味なのであります。仙台にも広島にも地方
建設局が置かれている、この四億か五億しか執行するに過ぎない所ですら地方
建設局が置かれて国道を立派に
建設しようというのであります。これを以て見ましても私はいつも言うておるのでございますが、本年度の予算の特色は歳入は減税の七百四十三億であります、歳出は
北海道開発費の七十五億でございます。
北海道選出の
北海道議員各位が一生懸命私に御協力下さいましてその結果八〇%増、而もこの
北海道開発というものは全体の
公共事業費の枠の中にあるのであります。全体の
公共事業費は御
承知の
通り一割殖えただけであります。併し
北海道開発は八〇%殖えております。この八〇%殖えたということによ
つてもおわかりの
通り而も皆様が議決して下さ
つたのであります。歳出
方面の本年度の予算の特色は
北海道開発費であります。これだけ費用が殖えたのはどういうわけか。内地のかた、
北海道のかた、ひつくるめて申上げますが、即ち国力を上げて
北海道の
開発をしよう、国の仕事としてやるのだ、こういう意思表示であると私
どもは信じて疑いません。果して然らば我々は
計画を立てるだけであ
つて、ほかの小額の執行ですら国の
事業、国の
機関が執行して
国会に
責任を負い得る態勢においてやるのは当り前ではないか、こういう御趣旨の下に広島にも、或いは仙台にも国の
出先機関ができて、而も担当事務は
地方自治事務でも何でもない国の
直轄事業を担当するのである。
北海道にも
開発局を作りまして、中国、四国並びに仙台の地方
建設局の何倍というような
直轄事業をや
つておる。国道につきましてだけ論じましてもこの
直轄事業に担当させよう、こういうのでございまして、
地方自治事務とは何ら
関係がないということをどうぞ御了承願いたいと思います。
ただ併しながら
地方自治事務として
知事さんが
公共事業をされております。その
知事担当にかかる
地方自治事務たる
公共事業費もなかなか道の負担を以てしては完全に遂行できません。そこで我々は大いに補助費を出します。内地の諸府県に対する補助とはまるきり率が違
つてよろしいのであります。これらの補助費は
公共団体に支出いたしましてそうして
公共団体担当にかかる自治事務であるところの
公共事業を立派にや
つてもらう、こういうことを
開発庁
長官として
考えております。従来や
つて参りましたし、又本年度の補助費のごときは飛躍的に増加されております。これらの
補助事業によるいわゆる
地方自治団体の自治事務である
公共事業と今回
開発局の所管せんとする
公共事業とはまるきり性質が違う、要するに内地並になる。但したくさん役所を作るだけでは非能率になるし、相互連絡がとれないから
一つの看板で
開発局という名前で能率を上げて行こう、こういう趣旨であります。