○参考人(
田中敏文君) 実は今度の問題が起りますにつきましては、私
選挙を終りまして後に、中央においてこのような検討が行われておるということの情報が入
つて参りまして、実は私非常に驚きまして、いろいろ模様を調べさしたのであります。併しどうもはつきりしたことがなおわからない。而もそのうちに新聞紙上に、
北海道における新聞にその情報が公表されまして、非常に道内に輿論が湧き立
つて参
つております。私
どもはこの問題につきまして、飽くまでも冷静に愼重に、感情的でなくこれを扱わなければならない、かような決意をいたしまして、この問題に対して更に愼重検討を加えて、いろいろこちらに参
つて陳情しておる次第でございます。
北海道におきましては、五月の二十三日に道民大全が開かれております。この道民大会は各種の産業団体が主体でありまして、それに各種の組織労働者が加わりまして、総計約四千名の大会でございます。この大会が
出先機関設置反対の決議をいたしております。或いは
北海道におきまする
北海道庁の、
北海道知事の諮問
機関として作られてあります
北海道開発計画委員会がこれ又この問題については愼重に検討すべきである、こういうことの決議をいたして参
つておる次第であります。又先般の二十五日の全国
知事会議におきましては、
地方自治確立の観点に立ちまして
開発事業等に関する最近の
出先機関設置については甚だ了解に苦しむということで、これらの措置について愼重な検討を加えられんことを声明されておることも御
承知の
通りであります。而もこの問題は、
政府においても極めて迅速に運ばれ、衆議院は御
承知のように通過いたした次第であります。その間において私
どもの意見は、正式に表明される機会というものは殆んど與えられていなか
つたのであります。例えば二十三日に、例の
北海道開発審議会が開催されておりますが、この席上における模様を私は出席して体験いたしましたが、要するに
政府の手を離れておるのであ
つて、審議会自体の意見の結論が出ても、それが何ら取上げられるということの態勢にな
つていない。いわばこういうことがあ
つたという報告が殆んど重大であるがごとき感を受けたわけであります。そういうようなことで、私
ども各
方面の輿論の力と相待
つて、私自身はここにこの問題についてあらゆる観点からの私の加えた検討の結果を
皆さんがたにお伝え申上げたいと存ずる次第でございます。実はこの問題につきまして
増田開発庁長官、或いは衆議院における論議の速記録等からいろいろなことを私は調べて見ましたが、結論付けて見ますというと、国の
行政は国がやるのがいいのだというような原則論が機械的に主張されておるというような印象を私は受けております。又本州並にするのだということも言われておりますが、この
政府案によりますと、本州並ということではなしに、更にそれよりも遥かに後退した、
地方自治の後退が現出するということも私は指摘できるのであります。或いは又諸種の議論の中におきまして、この際
北海道の実態というものについてそれを基礎にするという行き方、
考え方或いは又政治や
行政の発足点であり或いは終局点である住民の生活というような諸問題について比較的閑却された印象を私は受けるのであります。又衆議院の論議にいたしましても、如何にも
開発行政につきまして、
北海道知事があやふやな権限で何ら法的にはつきりしていないのに、これをや
つているに過ぎないのだ、こういう印象を與えるような
発言が中に見えておりましたが、或いは
北海道において
国費の問題の扱いにつきまして、不法、不当の行為が行われておるというようなことが表現されたり、或いは私自身が共産党の公認であるという、事実ありもしないことが言われて、こんな者
どもの言うことは聞く必要はないというような
発言も実は衆議院の本会議に見えております。私はそこでこれらの諸問題につきまして、総体的な私の観点の中から一つ々々これらに対する私の所見を感情的でなしに公正に
皆さんがたの御判断を頂くためにいろいろ申上げたいと存ずる次第であります。
そこで私はこの問題を検討する場合に、先ほど簡單に申上げましたように、国の
行政は国でやるという原則論、或いは
行政論議に重点がおかれて、その他の観点からする
発言が殆んど
政府側からなされておらないように感じております。私はこの
開発行政というものを論ずる場合には、勿論
行政自体を問題として論ずる必要性を認めるのであります。併し同時にこれが
開発行政でございまするから、
北海道総合開発というもの、つまり
開発行政がその一部であるに過ぎないところの大きな
北海道総合開発というものが、一体どういう形のどういう
趣旨のものであるか、これを
政府は
国策とされておるごとに対しましては、私に全面的に賛成でございまするが、この
総合開発の観点から見た場合に、この
開発行政の問題がどう扱わるべきものであるかというような問題、或いは新らしい憲法の精神に基くところの
地方自治の進展という観点から立
つて見た場合に、これが実態的にどういう影響を及ぼすかという具体的な影響をはつきりつかむというようなこと、或いは
法律上の諸
関係、例えて申しますると、これが
地方自治体における負担が当然多くな
つて参ることを後ほど申上げたいと思いまするが、そうなりますると、当然これは
地方財政法の問題が起
つて参ります。或いは又
地方行政調査委員会議という問題、或いは又道路法、港湾法という
法律との関連性の問題、そういうような
法律関係の問題、或いはその
開発機構を、
出先機関を作ること自体によ
つて起るところのプラス・マイナスの論議、或いはここに持
つて参る間における手続上の問題、つまり私は官選
知事ではございません、公選された
知事でありまするが、その私が
責任を持
つて実行しておる
開発行政のこの大きな変動に対して、私に対して
政府からの意見を求められたということは実はないのであります。そういうような手続上の諸問題、そういういろいろな観点から私は検討を進めたいと存ずる次第であります。そこでこの
法案は、
北海道開発行政の上におきましても、又
北海道の
自治行政にとりましても画期的とも言うべき重要な変革をもたらすものであります。で、この問題につきまして話に入ります
前提として、
北海道開発の沿革と、新らしい時代に照応する
総合開発の根本理念から先ず申上げたいと存じます。
北海道の
開発は、明治二年の開拓使設置以来、拓地植民政策を重点として強力に
国策が推進されて、八十余年を経過し、その間種々の消長変遷がありましたが、
国策の意図するところと道民意思が固く結合しまして、且又これを
行政面から見ました場合は、国の
行政と
自治行政とが緊密な連繋の下に一元的に総合的に実施し運営されて参りまして、僅か八十年の間に今日の成果を見るに至
つたのでありまして、この輝やかしい発展の姿は全国民ひとしく認識するところと存ず次第でございます。而して戰後の
北海道総合開発は、国家的に重要なる使命を達成すると共に、同時に又北方の広地帶の経済文化の後進性を克服して、住民福祉の増進と安寧を図り、又生活水準の向上を図るということをも併せてその基本目標とするわけでございます。従いまして
総合開発の基本目標を遂行するためには、
北海道に賦存するところの農、林、水、鉱等の豊富な未
開発資源を有機的に
開発する共に、これらの原始産業の振興を基盤とする高度の第二次産業を確立して、以て
日本経済の復興に寄與し、なお併せて人口問題を解決する有力なる環境たらしめんとするのにあるのであります。と同時に、道民の生活文化の向上を図
つて、更に又道及び市町村の
自治体の根基を培
つて国力の伸長、国運の進展に寄與するように総合的な
開発の実を挙げなければならないことが強く要請されているのであります。従いまして当面の
北海道総合開発のあり方は、
総合開発と言いまするが、総合と申しましても單にいわば自然科学的な資源の有機的な総合に止まることなく、これをより深く、文化、科学的な、いわば住民文化との立体的な
自治行政の面との総合にまで結合して、アメリカのTVAにおけるあのリリエンタール氏が言われておりますように、資源の
開発は自然自体の立体性によ
つて支配されなければならないということと、民衆が
開発に積極的に参加しなければならないという、この二つの
北海道開発の場合におきましても基本理念としてこれを堅持すべきものでありまして、又これなくしては本当に
北海道の
総合開発の正しい実現は期待することができないと私は
考えている次第であります。そこでもう少しくこれを更に具体的な問題について私
どもがどういうふうにや
つているかということについて
考えて見ますると、私は
北海道のこれらの資源
開発の問題につきまして、常にこれは
日本の総合経済との関連を
考え、又
日本の総合経済の下における
北海道経済の正しい位置づけというものの検討を行な
つて、資源
開発における今後の正しい推進を図
つて行きたいと
考えているわけであります。最近におきましては御
承知の
通り、例えば金であるとか、硫黄であるとか、非鉄金属であるとか、そういうような生産が総体的に
重要性を増大して、
北海道の資源
開発がそういう観点からも極めて重視されなければならないわけであります。ところがそういうような資源
開発を図
つて行き、更に又そこに人口を収容する場合に、私たちは常にこの
北海道の経済の実態というものの
調査をいたしております。そういう
日本の大きな動きに関連して
北海道の経済の実態がどういう実情にあるかというような
調査をして、そして
総合開発の進展の誤りなきを期したわけであります。例えば
北海道の産業構造についてその特殊性を見まするというと、例の就業人口につきましては、第一次産業には五三%、それから第二次には二三%、第三次産業は二四%の就業人口の割合になるわであります。ところがそれに対する所得の形成を見ますと、二十三年度の
調査によりますると、第一次産業が三一%、第二次産業が三六%、第三次産業が三二%に相成
つております。
従つて第一次産業についてみますると、就業人口が五三%であり、所得の形成する率が三一%である。
従つて極めてこの形成率が第一次産業が悪い、その悪い形成率の第一次産業が就業人口ので五三%も占めておる、こういう実態が
北海道の今後における原始産業の進展という面から言
つて、ここに一つ道民の生活水準というものの低さを表明する一つの数字になるわけであります。こういうようなことで私
どもはこの産業を進める場合には、資源の不足というだけでなしに、必ずそこに勤労するところの住民の生活水準の問題、或いは労働生産性の高い生活水準を如何にして引上げるかという問題、それらに亘
つて我々の
行政措置は勿論のこと、各種の対策を單に道のみでなく、あらゆる政治家、或いは経済人たちの、或いは報道人たちの
協力の下に正しい合理的な推進を図
つて行かなければならないと
考えたのであります。そういうような経済の実相の
調査とかいうようなものを基礎にいたしまして、
北海道総合開発第一次五カ年
計画を実は作り上げた次第であります。それを二月に中央の
北海道開発庁に持込んでございます。これは
北海道において道議会議員の満場の賛成によ
つてでき上
つた計画でありまするが、これが
政府に提出されております。私
どもはその中において資源の
開発或いは人口収容と同時に、それをより強力に合理的に進める上から見ても、極めて必要であるところの住民、生活、文化の問題を取上げて、
従つて教育、文化、厚生面に亘るところの広範面の事項を対象としたところの総合開店
計画の推進を図
つて行きたいと
考えておる次第であります。
従つて北海道の
開発行政というものはいわばこれらの
日本の
国策である
北海道総合開発推進ということの中の一部を占める問題である。單に
開発行政そのものを論ずるというだけでは不十分である。こういうような観点からしてこの
総合開発の
開発行政というものを
考えなければならない。そこでそのように
考えて来まするというと、この住民の生活全体の問題との関連性が如何に深いかということがわかります。即ち
自治行政と
開発行政というものが、そういう
総合開発の我々の
考え方を進める上からい
つて極めて密接な関連を持たなければならないということも当然おわかり頂けると思うのであります。又事実におきましてその
開発行政の諸問題は
北海道においては
地方自治の
行政面との関連が極めて深い、これは本州に比べて極めて深い。これは後ほど申上げたいと思いますが……。そういうような深い
関係があり、それを総合的にやらなければ
自治の進展も図り得ないし、
総合開発もうまく行かないということを私
どもは痛感いたしておるわけでありますが、只今は
総合開発という観点に立
つてその点について少しく触れた次第であります。そこで私は少しく附加えまするとこの二月に
政府に提出いたしましたこのような総合的な観点に立
つた北海道総合開発計画、この
計画を早く
政府においてお取上げを
願つて、この
北海道開発審議会においても、このような我々の提案したこの問題について、十分な検討を早く進めて頂くということを私
どもはお願いしてやまない次第であります。そこへ以て来て私は突然この機構改革の論を開いたわけでございまして、私としてはこの私たちの
総合開発計画という面の変動の中において、こういう問題も更に今後愼重検討さるべきではないかというふうに私は
考えておる次第であります。
その次は
地方自治確立という観点に立ちまして申上げたいと思います。
地方自治の確立を期することは民主政治を培養する最も根幹的なものでございまして、新らしい憲法の條章におきましても、嚴として
地方自治の本旨の達成を保障する旨が明らかに定められておる次第であります。
北海道は開道以来八十年間、その前半約三十年の間は全くの官治
行政でございましたが、
開発の促進に連れまして住民の
自治意識が高揚して、且つ
自治経営の能力も具有するに至りまして、明治三十四年に
地方自治の制度が
北海道におきましても施行された次第であります。爾来五十年間官治
行政と
自治行政とは全く一元的に総合的に運営されて来たのでございまして、
地方自治法の施行によ
つてもいわゆる
開発行政は道一本の態勢において実施されて今日に参
つておる次第であります。このことは本道の
自治は
開発によ
つて誕生し、育成されて来たのでありまするが、同時に
開発行政も又
地方住民の積極的な
行政参加によ
つてこそよくこれが推進されてその効果を挙げ得べきものと信じておるわけでございます。
開発行政を道から分離するということは
北海道行政の実態に反しております。又
地方自治の伸張を阻むものと存ずる次第であります。特に今回の
北海道開発法中
改正法案は、道
自治体の
行政方式に対する大きな変革であります。これがために
自治体の職員定数條例の
改正、各種部局の設置規定、その他諸規則の改廃を余儀なくされると共に、
行政の分離によ
つて当然
行政費用の増嵩を来たし、
地方住民の負担にも影響を及ぼすこととなるのでありまして、実態的には憲法第九十五條の、一つの
公共団体のみに適用する特別法たる性質を持つものと
考えておる次第でございます。今試みにこれらのこの
法律案が成立をした場合に、若しもこれが成立をした場合に、これによ
つて改廃を余儀なくされる法令及び
地方公共団体としての
北海道の諾法規の主なるものを挙げて見ますると、こういうことに相成るわけであります。先ず
地方自治法施行規程、第二、
地方財政法施行令、第三、国庫負担
地方職員に関する政令、第四、
北海道道路令、第五、
北海道庶務規程、第六、
北海道支庁規則、第七、
北海道職員定数條例、第八、
北海道土木
地方部局規程、第九、
北海道土木
地方部局臨時特例、第十、
北海道庁工事施行規程、第十一、国道路線の道路及び附属物の区域及び供用開始、第十二、国道
地方費道準
地方費道の沿道の区域、その他私はここに二十一の番号まで用意してございます。そういうような広汎な諸規則、諸法規に変改を與えるほどの大きな問題であります。そこで
地方自治の観点から一応以上申上げた次第でございまするが、それに関連して、先ず
開発行政の運営方式について少しく申上げたいと思います。
先ほど申上げましたように、
開発行政遂行の要素といたしましては、総合的一元的な運営の方式が今後も考慮せらるべきものでありまして、更に進めていえば、国と
自治体と民間と、この三者の三位一体的な融合によ
つて初めて円満な遂行が期し得られるものでございまして、国が一方的に推し進めるよりも、
現地におきまする
行政の中心である
自治体たる
北海道及び市町村を活用して行うことが最も合理的な実施方式でありまして、
北海道を中心として国、道、市町村、民間の
協力方式をとるべきものと信ずる次第でございます。
北海道も併しその発達に連れまして、又一面シヤウプ勧告の線に沿いまして、
行政事務再
配分の見地に鑑みて、
北海道における
開発行政と一般
行政のあり方について、なかんずく国の
開発行政が多年本道
自治の育成的な役割を持ち、自然にその事務の中でも漸次
自治体に同化して、いわゆる慣習的にも
自治権化されて参
つた面も非常に多いのでございまして、如何にして
自治体
行政と
開発行政とが実態とマッチするような調和点を見出すかということが、
北海道行政改定の中心課題でございまして、そのためには單に
開発事業の面に立つのみでなくて、
地方自治の
行政、財政、税制など、広汎な
立場に立
つてその解決がなさるべきものと存ずるのでございます。昨年の十二月の
地方行政調査委員会議の第一回の一般的な勧告は、
地方自治の充実強化を図り、
国政の民主化を推進するという目的において行われております。その原則は、
地方公共団体としては、これを承認すべきものと私
どもは
考えておるのであります。而もこの原則におきましても、ただ單に国の事務は国が行うというのではございませんで、
地方公共団体の区域内の事務は、できる限り
地方公共団体の事務とするという基本方針から、実施的な事務は、府県の区域を超える事務で、府県においては有効に処理できないものに限
つて国が行うべきものとされております。その上に、
北海道につきましては、先に述べた
開発行政との関連においてなお検討すべきものとして留保されて、目下真剣な検討が行われつつあります。その結論に近付きつつあることも
承知いたしておる次第でございます。このときにおきまして、実際の担当者である
北海道知事にはもとより、
地方行政調査委員会議及び
開発行政の分離によ
つて道費財政に相当の負担の増加を来たすことになる新たな制度
改正について、
地方財政委員会に何ら諮ることなく、一方的にこれが提案をなされておりますることは、その手続の上でも民主的でないばかりでなく、かかる重要な
行政権の分離は、
地方自治の本旨に反する、
地方自治権の侵害でございます。又シヤウプ勧告の
日本における問題は、依然として国の支配を減じ、
地方団体の独立を増すことであるという、
地方自治の新らしい方向に副わないものと存ぜられる次第でございます。
そこで、その次に、
開発行政の
執行に関する権限と
責任の明確化の問題を申上げたいと思います。
政府の御
説明によりまするというと、
北海道開発行政が
北海道知事に対する委任事務であるかどうかも不明のままで、ただ單に
開発関係の管理を
指揮監督するという規定があるだけである。そして多額の
国費を投ずる仕事について、
行政権を持つ
政府が
国会に対して
責任を負えない形態であると
説明されておりまするが、これは私
どもに納得のできないことであります。委任事務であるかどうかということにつきまして、若しも法が不備でありまするならば、はつきりこれは委任するという規定を設ければいいだけのことであります。成るほど、
開発関係官吏の
人事権は、国家公務員法によ
つて知事の手から奪われて、おることは事実でございます。併しその他の面におきまして、
知事に対する委任事務に間違いがないことは、
地方自治法施行の際に、
北海道長官の権限をそつくりそのまま継承したという事実が何よりも雄弁に物語
つておるものでございまして、
従つて開発事業を担任する土木部、開拓部、これは道の部であります。
北海道の部であります。
開発関係管理の基礎規定であるところの、
地方自治法附則第八條では、官吏は本来道の職員であることが規定されている、又
地方財政法施行令第七條におきましては、
北海道開発事業は
北海道知事が行うものとすることが明らかにされております。又
昭和二十二年六月の
北海道開発に関する
行政機構等に関する
閣議決定で、
北海道の
現地機構は
北海道庁を利用するものとするとされていることによ
つても何ら疑念がなか
つた。
従つて現実に主務大臣から
知事に予算を令達されて、
事業執行の
責任を負うているのであります。この事実は何人も否定し得ないと存ずるものであります。法令の上で積極的に委任するという規定を欠いているのは、要するに
北海道庁時代においても藩制上
北海道庁長官の権限を抱括的に拓地植民の事務を処理するというように規定しして、その具体的事項の権限を規定する
開発行政の実体法が殆んどなか
つたためであります。故に当時存在した実体法であるところの道路法、
北海道道路令、河川法或いは
北海道国有未開地処分法等におきましては、
開発事務に関する
長官の権限に関する具体的な規定があります。これが今日
知事と読み替えられて
北海道知事の権限とな
つている点からも、法的には
北海道庁時代から引続き同一状態にあるという証明にほかならないのであります。
次に
政府が
国会に対して
責任を負い得ないという点につきましては、本
事業の
執行に対しましては、
地方自治法上主務大臣の監督が認められております。事実上におきましても
知事が主務者の命に背いたことはないのでございます。
従つて何ら支障なく行われておるのであります。憲法で
行政権は
内閣に属するとするとしても、これはただ究極において
行政権が
内閣に属するという原則を規定するものでありまして、
内閣がすべての
行政機関を直接に
指揮監督しなければならんということではございません。現に外局であるところの
委員会は殆んど権限としては
内閣に独立して、又
自治体、又その長に委任されておる国の事務は極めて莫大でありまして、今日
自治体の事務の多くの
部分が国の委任事務であるとい
つても過言ではないのであります。国の事務を国の
機関がやるというのであるならば、なぜこれを改めないのであろうか。又少くとも
地方自治法附則第八條に基く職業安定、保険等の事務に従事する官吏を国の
機関になぜそれでは引上げないのか、その点誠に理解に苦しむわけであります。従いまして現在の実態に即して、法が不備であるならば補正する方向に行くべきものと
考える次第であります。そうして又
開発行政である
公共事業の実施を
北海道知事に任しておくのが不適当であると言われるのであるならば、
地方自治法施行以来四年間余り、何が故にこのままに放置しておられたのでございましようか。それは要するに現在機構が適切であると認めたからにほかならなものではないだろうかと
考える次第であります。さればこそ
昭和二十二年六月の
閣議決定におきましては、
北海道の
現地機構は、
北海道庁を利用するものとすることと明示して、又昨年
北海道開発法制定の際におきましても、この精神を受継いでおることは当時の
政府委員の答弁によ
つても窺えることと思う次第でございます。次に
政府は本
法案の実施によ
つて開発行政を
昭和二十二年の
地方自治法施行直前の
北海道庁長官時代の官治
行政に復帰させるのであるというように私
ども説明を聞いておりまするが、これは全く事事に反する御
説明であると
考えております。勿論
北海道が人跡稀な未開の地であ
つた初期の時代におきましては、官治
行政の行われたことは事実でありまするけれ
ども、
開発の進展に連れて、明治三十四年に
北海道地方費法及び
北海道会法が施行されて、ここに
北海道は府県同様の
地方自治体としての形態をも備うるに至
つたのでありまして、爾来五十年
北海道の
行政は官治
自治ともに
北海道庁長官の下に
北海道開発行政を中心として総合一体の
関係において運営されて来ておるのであります。予算におきましても、戰時中におきましては
国費の
北海道拓殖費は七千万円乃至八千万円であります。道費の予算も
国費予算額とほぼ同程度のものでありまして、国の大規模な拓殖
事業と併行して道費においてもこれに対応する、土木産業経済の費用を計上して、両々相俟
つて開発の促進に努めて来たのであります。又
北海道会は
北海道庁長官が
自治体
行政を管理しておりましたので、事実上道
自治体の面を通じ
開発行政に参画して来たものであります。
自治法の施行によ
つてそれがそつくり現在の
北海道知事乃至は
北海道に引継がれて来たものでありまして、本
法案はこの長い歴史に大きな変革をもたらすものでありまして、全くこのために
北海道の
行政体系を両断するような重要な内容を含んでおるのでございます。従いまして
北海道庁長官時代の元に戻すということは、形式的な御所論でございまして、本質的には
北海道行政を新たな形態に作り出すものであると申さなければならないのでございます。次に
国費予算と道費予算との混淆使用について、大分問題にしておるかたがあるようでございます。この点につきましても、これは全く事実に反しておるのであります。現在の
国費予算はその大
部分が
公共事業費でございまして、昔の拓植予算の
執行とは大いにその趣きを異にしております。実施に先立ちまして工事別、地区別に主務省を通じて経済安定本部の嚴密なる認証を受けるものでありまして、更に地区の変更、工事設計等の変更につきましても、その都度前記同様の認証変更手続を経なければ実施できないことにな
つております。又施工中、及び施工後におきましても当該工事の主務省のみならず、経済安定本部、
大蔵省、会計検査院等から、技術面においても会計面においても特別嚴格なる実地監査を受けるものでありまするから、
国費と道費との混淆は勿論のこと、令達予算につきましても、その移用若しくは流用等は到底できないわけでございます。この点については従来特別愼重に取扱
つて参
つたのであります。
従つて過去においても以上申上げたことに違背し、国に御迷惑をおかけしたような事実はないのでありまして、又今後においても決して御迷惑をかけることはないと存じておる次第でございます。
第四に経費の問題について申上げます。
政府はこのことにつきましては分離後であ
つても、
出先機関を作
つた後であ
つても建物も貸すし機械も貸すのであるから、経費は増加しないのではないか、どうして増加するのかと言われております。そこで私はこの点を少し実態に基いてよく
考えて見たいと思うのであります。先ほど申述べて来ましたように、
北海道の
開発は
自治体
行政運営の実態と密接な関連を有しており、過去幾十年間一本立運営の妙味を発揮して最小限度の機構と最低の経費を持
つて最も効率的に
事業を遂行して来たのであります。今ここに
北海道開発法の
改正によ
つて機構を分離して二元化するならば、それぞれの
事業を実施するためにおのおのの系統に属する
事業の企画、監督、運営面の機構を設けなければならないのは必然であります。現に今回の
開発法の
改正案におきましても、
開発局には局
長官房と
建設部、
農業水産部、港湾部、営繕部の四部を置いて、その下に更に課を置かなければならないことは当然でございます。即ち局長、次長、部長、課長等を多数増置しなければならない。道のほうにおきまして土木部長、開拓部長以下各部長を道吏員として置かなければならないわけであります。又
現地の土木現業所及び出張所におきましても、国と道との二本の系統に属する企画、監督、運営面において、所長、部長、課長以下
機関構成の職員を二重に置かなければならないことは御了解頂けると信ずるのであります。かようにこれらの企画、監督、運営面の人員が相当増加するに伴
つて、現場作業に従事する職員が減少することになる。この面の職員を増加させる必要が生ずることは当然でございます。更に
北海道の土木
事業は効率的な実施を図るために極めて周到且つ緻密な
計画の下に、少数の人員で施行して来たのであります。例えば同一の
地域において国の
事業と道の
事業とが起工されている場合、一人の
地方技官に道費事務を嘱託し、或いは道の吏員に国の事務を委嘱し、二つの工事の監督を兼ね行わせ得ることであります。竣工検定の場合におきましても又同様でございます。更に土木現業所の会計課長は
地方事務官であ
つても道吏員であ
つても、
国費及び道費の支出事務を一人で担当している等、すべてこのような方法によ
つて人員の節約を図
つて来たのであります。この場合道費においては、
国費職員に対しても旅費等を適切に支給しておるのであります。その方法は拓植
計画時代を通じて連綿として行な
つて参
つたのでありまして、決してこと新しいことでないのは
皆様がた御存じの
通りであります。今二千七百余名に及ぶ土木部
関係の
国費職員が、いわゆる時間外勤務
協力による道費
事業の消化量は、これを定員化するときは数百名に相当するものでありまして、以上を勘案するときは機構分離による定員増は、道が
資料として提出した増員土木
関係千百四十二人が我々は適切であると思うが、それについては十分なる御検討をお願いいたしたいのでありますが、とにかく職員の増加を要するということは確認して頂きたいのであります。即ち分離後道費
事業の
執行については、土木
関係は道費職員八百二十六名のみによ
つては、如何に運用の妙を盡し活用しても到底達成し得られないところでありまして、多数職員の増置を必至とする事情を重ねて御了解頂きたいのであります。次に分離に伴いまして、職員においてかかる増員を必要とする結果は、延いてこれを新たに収容する庁舎公宅その他の施設の早急設置を行わねば
事業の遂行が不能となるのであります。けだしこの費用は現下の状況においては巨額に達する次第であります。又機械器具につきましても、現在までは工事施工時期等を総体的な
計画に基いて相互に流通使用を可能ならしめて来たのであります。例えば浚渫船を使用する場合、港湾工事と、漁港工事を現在道
知事一本で施行しているから、先に述べたようなことは可能であります。そうしてこの場合漁港で使用する場合に、浚渫船の運営費は当然道費で負担しております。併し港湾工事が
開発局に、漁港工事が道
知事に二本建に分れた場合、おのおの所管の
事業進捗に熱心であればあるほど、他に貸付けすることが円滑に行われなくなることは当然であります。漁港工事の担当部においては、分離により機械器具購入費は八億六千八百余万円を要する旨の
資料を提出しておるのであります。
政府は現在のままでやれると言
つたり、又相互に融道し合えばよいということを言
つておりますが、仮に大きな機械は或る程度流通できたといたしましても、常時使用するトラックのごときものまでも、全面的に借りることは常識としては不可能でございます。世帶を二つに分けた場合に鍋、釜の果てまで毎日借りたり貸したりすることはや
つていけないことは御
承知頂けると思います。
従つて物を持
つておる、機械器具を持
つておる
政府の側におきまして、いろいろ実態に副わないところを議論されても、それは
政府側にと
つては何でもないことでありますけれ
ども、機械器具を持たずして、これから買わなければならないという、持たない側の
北海道におきましては、到底それで以ては済まされない実情にあるのであります。
以上申上げましたように、機構の分離によ
つて土木、開拓、企画等の部局を持ち、又全道数十カ所の土木現業所及び出張所に多数の職員を増置せねばならないことになり、又これらの収容施設及び機械器具等をも必ず設備しなければならない結果となることは必然であります。これらの経費を概算するときは、実に十数億円に達すると思われるのでありまして、分離に伴い経費負担は必ず増加すると確言し得るものであります。この十数億円の数字の内容につきましては、私のほうから印刷物を各議員の
かたがたに差上げてある
通りでございます。要はこの機構改革の問題は、その
通り特に道にと
つて多額な負担を伴うものでありまするから、机の上の議論で簡單に結論を出して参
つては困るのであります。従来の慣行と、
現地の実情と、工事の実態とをよく御理解の上、果して経費がかかるか、かからないか、かかるとすれば幾ばくを要するか等の諸点を先ず愼重に
調査して頂きたいのであります。
政府は経費がかからないとい
つておられますけれ
ども、これは
現地において十分
調査を遂げられたかどうか、若しも私の申上げるように経費がかかるものといたしますると、当然
地方財政法第二十一條の規定によ
つて地方財政委員会の意見を
政府は求むべきであ
つたと
考えられるのであります。然るにこの手続を経られておらないのでありまするから、
従つてこれは
地方財政法に違背するところの違法の
法案だと
考えられるのであります。
〔「一時間経過した」「要点だけ簡單に」「重要な議案だ」と呼ぶ者あり〕