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政府委員(
松本烝治君) いわゆる
含み資産問題が起りましたので、我々の
委員会で数回に亘
つて調査をいたしました。併しこれは完璧な調査をしようということなら、恐らくは何十人の人を、専門家を要する、又非常な長い日数を要する。到底そういうことは今できません。我々のできる範囲において調査をいたしました。その大体の
お話を私からいたしまして、更に細かい資料を作
つて、細かい
説明はその資料と共にほかの
政府委員からいたすことにいたしたいと思います。二十四年度の決算は、御
承知のように三月の三十一日のものです。その決算が
会社ででき上
つたのは、五月の末くらいであ
つたと思われます。そのときにたしか十七億何千万かの
利益を計上しまして、そうしてそれに対して七億何千万かの税を
拂つている。併しながら当時において表面に計上されなか
つた利益が約十七億以上あ
つたようで、尤もその中に、三億くらいは正当な記載というべきもので、必ずしも含みを特にしたものと思われぬものもあるようで、その点はいずれ細かい
説明のときにおわかりになると思います。この十七億幾らというものは、どうして、そういうものが生じたかと申しますと、当時まだ單価の未定のものが多か
つた、一番大きいのはやはり石炭の單価がしつかりわか
つていない。すでに使
つてしま
つたり、或いは買
つてしま
つた石炭の量はわか
つてお
つても、單価がきま
つていない。そこで前の高い時分の値段で單価を、未拂金ですか、或いは買掛金ですか、買掛金として上げていた。ところが後に至
つて、支拂うことになるとそれがもつと少くて済んだというのが
一つ、それから中には代金の支拂を怠
つてお
つたということで、その怠
つてお
つた滞納の利息を取られるというようなものが一億幾らでしたか、確かにあ
つたのです。そういうようなものは後にな
つて、その時分
供給された石炭の質が悪い、量が足りなか
つたとか、いろいろなことがわかりまして、そういう利息を拂わないで済むことに
なつた、免除されたのです。つまり協定によ
つてあとで拂わないことに
なつたために要らなく
なつた。そんなようないろいろなものが、集めて見ると十七億幾らというものが隠れてお
つた。それからしてその後においてそういうものが出ましたのは、要するに非常な豊水のために、本当に石炭か予定したものが要らなか
つたということで、そういうことが起
つたようです。その後において昨年の九月の三十日に仮決算をして、その仮決算のときにやはり
相当の余りが出て、十八億くらいの、そういう同じような性質のものが出て来ている。それを合せますと或いは三十六億にもなる、或いはその中に隠してあると言えないものが三億くらいあるようで、それを引けば三十三億くらいになります。そんなようないわゆる隠れた
資産があ
つた。それに対応するものは大きな預金であ
つたというようなことなのです。この当時の
事情から
考えますと、先ほど栗山君の言われたように、渇水準備金というようなものが若し税を取られずにあるのなら、これは恐らくはそのほうに当然
なつたものと思う。それが最初二十四年度の決算をした時分にはまだわか
つていなか
つた。少し大きくまあどうしても立てて、買掛金とか未拂金を大きく
考えて立てた。これがわか
つた時分には、正当なやり方としては、その時分にそれを出して、そして二十四年度の税を、新らしく出ただけの金額について追加して拂うということをやるのが、本当の適法な行為であ
つたかも知れん。併しそのことが怠られて、ずつと昨年の十月頃に怠られたなりにな
つてお
つたということです。それから今の二十五年度に出て来たほうは、これはまだ決算されていませんから、決算は今年の三月三十一日の貸借対照表でされるのでありますから、
従つてそのほうはそのままにな
つてお
つても、別に違法であるとは言えなか
つたと思うのです。併し帳簿の上から見れば、剰余金であ
つたり、
利益であ
つたものが他の項目、買掛金とか未拂金というような名前のところに入
つてお
つたということは言える。このやり方について
考えて見ますと、これは先ほど栗山君の言われたような渇水準備金というような
制度が若しあ
つたならば、必ずそのほうえ行くものであ
つたので、そういう
制度がないためにそういうことが起
つたのじやなかろうか。又
経理に関する
日発のいろいろな書類を、全部じやございませんが、或るものを私が見たところでは、どうもその書類の様式等も、昔からのものであ
つて、よほど前からの、恐らく
日発ができた時分から変
つていないものかも知れませんが、通常の私どもの知
つている商事
会社の帳簿の形式とは大分違うように思われる。そんなような点が
制度の不備であ
つたように思う。 その
制度の不備に乗じてわざわざや
つたとは言えないが、そういうような弊害が自然出て来たのだろう。見方によ
つては止むを得なか
つたことかも知れん。
含み資産を発見して、これを正直に出して、そうして大きな税を
拂つてしまう。今度渇水にな
つて来たときにはそれを償う金がなくなるということになる。御
承知のようにこの頃は非常な漏水で、毎日一億円以上の石炭を焚いているそうであります。そんな時期になりますと、大きな損失が出る。今のいわゆる
含み資産が昨年の十月頃の
計算において三十六億又は三十三億あ
つたとしても、そんなものはもう或いはこの期末には全部なくな
つてしまうのじやなかろうかとさえ言われている。或いはなくな
つて欠損が出るという説さえあるくらいです。そういうようなことで、こういうようなことが起
つたのは、どうも
制度に欠点があ
つた、止むを得なか
つたのではなかろうか。 当時通産省のほうで勿論
経理の御監査はあ
つたようだが、ちよつとした人間がただ少しばかり行
つて監査したのでは、到底こういうことは発見できない。これはすべての
会社の書類を全部見る。これはもう何十人お
つても、とても大きな何百億というような
計算については見られないと思うのです。おまけに各所に支店もある。そういうようなところへ全部出張して行
つて見るということをしなか
つたら、本当には発見はむずかしか
つたろうと思います。そういうことでこういういわゆる
含み資産なるものがあ
つたのではなかろうかと思う。結果において見ますと、一点の非難もできないことでないことはこれは言うまでもない。むしろ見方によ
つては大いに違法なものであ
つたかも知れませんが、
制度の結果としてよんどころのない結果であ
つたとも或る点まで見られるかとも思
つております。そういういわゆる
含み資産なるものがあ
つたのですが、併しすでに
お話したように、この頃のように石炭をどんどん焚いて、勿論その
料金は取
つてはおりますけれども、併しこの頃のようにたくさんの石炭を焚くと到底償い得ない。そこで恐らくは含みなるものは……、この後まだ一カ月半以上いわゆる渇水期があるようです。その間不幸にしてこんな渇水
状態が続いて参
つたならば、恐らくはこのいわゆる
含み資産なるものはなくな
つてしまうのではなかろうかと
考えております。そういうことがいわゆる
含み資産という問題の実相であ
つたと思
つております。なお極く細かい
計算については、参考資料を出してから細かく御
説明することにしたいと思いますが、大体のことはそういうことであります。