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公述人(高橋勘次君) 高橋でございます。職業は薬局を開設経営するものでありまして、かたわら
度量衡器の一部の
販売もいたしております。かような職業的見地から、この
度量衡というものにつきまして常に関心を持
つているのでありまして、その
立場から
公述人として
希望をいたした次第であります。
この
計量法案の全体から申しますれば、申出ました
通り賛成でございます。これは大ざつぱに見て
賛成、こういう
意味でございます。そうしてこの
計量法案の内容を通覧いたしまして、大体どこに重点があるかということを考えまするというと、
現行度量衡法に盛られておりますところの
メートル法単一にして、
昭和三十三年以降実施する、いわゆる
尺貫法、
ヤード・
ポンド法を廃止して
メートル法だけに行くということが
規定してありますところの再確認ということにあると思うのであります。
それからもう
一つは、いわゆる
計量器物の種類が非常に多く
なつたと、こう点であろうと私は感じておるのであります。この
計量器物の多くなりましたことにつきましては、現実に我々市民が必要とするものは、現在の
度量衡法に盛られた
器物でたくさんかと思いますけれども、実際に学術の進歩、
工業の発達というような点から申しまして、かようなものをたくさんこの
法案に包含して行くということは当然かと考えます。これらのことは専門的ないわゆる学者の側からも多数述べられているようでありまして、この点私同感であります。ただどの
公述人の方も大体申されたようでありまするが
電気の
単位が定めてない、
電気計量器に関する
規定がないということは私も同様感ずるのでありまして、ここでは詳しくは申しませんが、前
公述人の諸君と同様な考えを持
つている、又そうすべきであるということを申述べておきます。
この
メートル法単一にするということを今改めてお互いに
議論をしなければならんということは、いささか時代遅れの感じがするように思うのであります。極く皆さんでも側近に、じかに身の廻りに考えましても、我々年配の者は全く
尺貫法で育てられたのでありまするけれども、現在もう三十数歳以下の人は実は
尺貫法を非常に不便が
つている。勿も現在の子供などにおきましては
尺貫法というようなものは殆んど知りません。でありますからして、これは世界の文化の趨勢に副うべき点からも、当然
メートル法一本になるべきであるということを簡単に申すよりほかございません。然らばこの実施についてどうであるか。私は幸か不幸か職業として薬剤師の業務を持
つておりまして、もう試験を受けるときからすべて
メートル法で育てられて来ております。非常に便利であります。当時はいわゆる舶来思想のために
ヤード・
ポンド法も併用されまして、薬を計るにはオンスというのがあります。現在でもイギリス製のものはオンス入りにな
つている。これは二十八グラムでありますから我々オンスというものは二十八グラムだと
思つている。それからポンドというと四百五十グラム、
日本の尺貫正法に直しまして百二十匁、こうしておりましたのでありますが、この
昭和何年かの
度量衡法改正のときに、いわゆる薬関係のものは一貫した
メートル法に変りまして、現在はすべて
名称はオンスを用いてありましても、これは
一つの
単位であ
つて、百グラムの四分の一というものの一応慣例
名称として、いわゆるグラムで考えております。普通の
取引、皆さんがお馴染の
商品として売買するもの、これは半キロ、一グラムの半分五百グラムを以て
単位としております。これらを
基準として二十五グラム、百グラム・五百グラム、一キロというものを
単位としてや
つておりますから非常に便利でございます。この際に
尺貫法併用というようなことがありまして、昔の漢法医のように何匁というような処方を盛られては我々は迷惑千万であります。これは職業的の
立場から言うのであ
つて多少の迷惑は忍ぶところでありますけれども、そうでなしにこうした職業の面から
言つて非常に便利である。これは
一つ諸君にお奨めしたいということを深く考えておるのでありまして、そういう観点から又先ほど第一の
公述人が申されました
通り、世界の文化の趨勢から申しましてもかように行くべきであるものであるということを私は深く考えまして、これにつきましてはどうかゆるむことなくこの
法案の
通りに行
つて頂きたいことを考えております。
然らばこの
法案において全面的に
賛成するかというと、一部に極めて不合理なところがあるのであります。先ず第一に、どなたかも申されましたが
手数料が高いのであります。これは
検定手数料が高い、登録の
手数料が高い。恐らくこの立案者は最高をきめたのだと申すでありましよう。併しながら私ども五十年以上も世の中に生きてお
つて、さて現実の
日本の
行政の程度はどうであろうかということを考えますると、いつでもこれは最高をきめたのだ、決してそれをとるものではない、それは最高でそれ以内であるから御心配ないと
言つても、どうも
役人というものはどういうものか、
法律に許された
範囲の最後の最高のところまで持
つて行こうとするのであります。私はこの点に非常に心配を持つのであります。そういう点におきまして
手数料が高い。若しこの例を申しまするならば、
検定手数料の例、十三の(1)のロには当然竹の物差を含んでおります。竹の物差というものは現在いわゆる
販売業者間の
取引価格が三十センチが六円です。
現行法では十五銭だそうであります。ところがこの
手数料は二十円以下にな
つている。六円で売られるものに対して二十円以下というような数字を付けることは余りにもばかばかしいではないかと思うのであります。又(2)のはかりで私どもが使う天びんが現在は千円以下とな
つているのであります。ところが調剤用に我々が最も頻繁に使う百グラムの天びんの
取引価格は八百五十円です。又その辺のやお屋や魚屋が使
つております自動はかりの
検定手数料が最高が五万円とな
つております。これの普通のものを仮に二貫目、七キロというものであれば、大体千二三百円が
取引価格であります。又温度計の(4)のところには、温度計は三百円以下とな
つておるのでございます。ところがよほど優秀なものでも現在
取引価格は百円前後であります。私どもはこの表を見て実は唖然としているのであります。現在のものは温度計が六十五銭かと聞いております。又自動はかりは十六円十銭です。一方だけでは八円五銭というふうに聞いているのでございますけれども、これは大体現行
通りにやるのだということを、恐らく国
会議員の方々が
政府に質問すればお答えになるであろうと私は想像します。これはもう殆んど
日本の
役人の常套手段であります。でありまするが私どもはやがて上るであろうということを想像しております。どうかこういう点につきまして国
会議員各位の深甚なる御配慮を願いたいと思うのであります。
でその次にこの
販売に関する
手数料であります。現在は
度量衡器、
計量器を売りますならば大体におきまして度量器一種類、
計量器一種類としてこれは登録して免許を取ります。これはそれぞれ三百円でありまして六百円であります。而もこの期限が十五年であつたのであります。ところが今度は簡単に売ろうとしても
度量衡、温度計でこの四つは受けなければならない。従来はこれに対して六百円でありましたものが、最高とは申せこれが千五百円で六千円の登録料であります。六百円が六千円とは実に驚くべき数字であると思うのであります。今度は
法案の全体から見ますと七つ受けなければなりません。そうすれば一万五百円であります。而もこれが期限が五年間でありまするから、現実には六千円と申しましてもこれの二倍一万八千円ということに相成るのでありまして非常に
手数料が高い。而も先ほど申しました
通り必ずや最高まで持
つて行かれる機会があるのじやないかという点から、特にこういう点に警告をしたいとかように思うのであります。この点で私は薬剤師の
立場から特に議員先生方の御配慮を願いたいと思うのであります。
それから薬局の経営にはなくてはならない体温計の
販売であります。この体温計と申しまするのは
昭和七、八年頃に必要があ
つて計量器の部類に包含されました。従
つて免許を受けなければ売れなく
なつたのであります。而も当時の
地方庁の全部とは申しませんが
役人は、薬局の従来売
つておつた体温計についてはできるだけ既得権を尊重して簡単に免許をするというのであつたにもかかわらず、相当厳重な講習等をさせましてやつと体温計を売ることができるというような程度であつたのであります。当時の我々の先輩が大いに憤激をいたしましてそうして当時の帝国議会に運動をいたしました結果、勅令といたしまして、薬局を開設する薬剤師は、体温計、目盛りある板付寒暖計、それから御承知のメートル・グラス、これらは登録によ
つて売れることに
なつたのでありまして現在これを特殊登録
販売と申しております。而もこれは永久であります。その薬局を個人が開設する限りは一回登録すれば死ぬまでよいのであります。これが法人であつた場合は法人のあらん限り何百年といえどもそれでいいのであります。然るに今度の改正によりますと、今のメートル・グラスと体温計を売るためには先ほど申しました二つの登録をいたしまして千五百円として三千円の登録料を払う。而も永久的であつたこの資格が、特権が実に五カ年で消耗されるのであります。こんな不合理なことはないと思うのであります。これは特に我々の先輩がこうして多年元の帝国議会の方々の御協力御援助によりましてかち得たこれに対して、何らの考慮も払わないというかような不合理はないと私は考えるのであります。而も現在先ほど申しました
通り計量器の免許につきましては三百円である。ところが薬局開設者の場合の特殊
販売登録は僅かに五円である。その五円が今度は三千円になります。実に六百倍の増額であります。この点につきまして、特に先生方の御配慮を私は深くお願いをいたすものであります。
次にどなたからもお述べにならんようでありますが罰則が重いのであります。罰則の重いということは次代の文化の進展に副うものかどうか知りませんが、私はさように考えない。できるだけ教養を深めて罪を犯さぬようにするということがお互いの務であろうと思います。罰を重くして罪を犯さないようにするということはいわゆる封建時代の考え方じやないかと思います。先ほど申しました
通り、現在の五円で登録できた薬局のものが、今度は薬局を開設すればその日からどうしても必要とする体温計が要ります。
ちよつと誤
つて体温計を売
つても無登録
販売として実に一年以下の懲役十万円以下の罰金、こういうのが第二百三十三条にあるのであります。これは実に私ははげしい悪法であると、悪化した
法律とかように考えるのであります。全体的に見ましても今までは五百円以下の罰金が最高でありました。むろん悪い者には一年でありました、最高の体刑は。ところが今度は体刑が三年、罰金が二十万円とな
つておるのでありまして、この点につきましても余りにも全体的に強い。
業者は間違いやすい。薬剤師をして誤らしめてわざわざ罪を作るものだ。一体中央官庁の方々や或いは国
会議員の諸先生方はすべて、或いは皆さん方の良識を以て標準にされるかも知れませんが、必ずしも出先の官公吏はさようのみには申されないのであります。我々幾多体験しておるのでありまして、こういうふうないわゆる罰する規則がある限りはどこまでも罰するというようなことになるのではないかとかように考えられるのであります。その点から考えましても、どうかこの点を何とかなるように
一つ御再考をお願いして、御
修正をお願いしておきたいと存ずるのであります。なおこの
法律がこうした原案に
なつたものを大部的に
修正するのがなかなか困難といたしますならば、先ほど来問題にな
つております
計量行政審議会でありますが、これが官吏だけを以て構成するどういうことは誠に
意味のないことだ。これはよく我々の知つた
範囲で
役人の悪口を言う例に、日当稼ぎの場所を作
つておくに過ぎないとい
つてもあえて過言ではないと思うのであります。これはよろしく
民間人を入れるべきだ。そうして登録料或いは
検定料その他の重要なことはこうした
民間人を入れたところで審議して、時代に適応した運用をするという
意味において、私は現在の原案のような機構であるならば、これはむしろない方がよいと私は考えるのであります。どうかかような
意味において、これには必ず半数以上の
民間人を入れるということに御
修正を願いたいと
希望してやみません。
ところで先ほど来他の
公述人の方々が申されました
通り計量課若しくは
計量局を通産省に作れということでありましてこれには私は
異議はないのであります。併しこの
議論の観点につきましても私は前
公述人とはいささか違う
方面からこれを申述べてみたいと思うのであります。我々がよく聞くのでありますが、いわゆる一国文化の水準というものはその国の
計量思想の如何によ
つてきめられるというようなことをしばしば聞くのであります。先ほど前
公述人が申しましたように、いわゆる
日本では一山幾 というようなことがたくさん
取引に行われておるのであります。これは
計量思想が浅いということを
意味するのでありまして、更にこうした風潮が続けられて行くのでありますならばいわゆる文化は逆転して行くというように考えられるのであります。こうした厖大な
計量法案が作られましてこれを施行するということは、
国民の文化水準を高めるという大きな観点に立
つて行かなければならんと思うのであります。で、これらにつきましては現在通産省の機械局の中に農林民生機械課という、我々人民から見ればえたいの知れないような名前の課の一部で扱
つているようでは、折角これほどの
計量法案が成立いたしましてもその運営の効果は期待することはできないと思うのであります。少くとも
計量課くらいは設け、又
地方におきましても
計量課くらいは設けて、もう少し
国民を罰するとかそういう
意味じやなしに善導して
国民の文化水準を高めるという
意味合において、私はどうかこうしたものを作
つて頂きたいと思うのであります。
又なお今度の
法案につきましては医療関係のものに触れておらんのでありまするが、これは私ども商
売上の専門的なことに亘りますから申しませんが、注射器なども当然将来
検定というようなことがなければならんのではないか。特に現在のごとく素人が盛んに注射をするような時代におきましては大いに考慮を要するものだということを附加えておきます。
大体時間でありますから以上申述べておきます。