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政府委員(木内信胤君) 最近の外貨
事情を
簡單に御
説明いたします。
新聞には今度は外貨が足りなく
なつたという記事がたくさん出たのですが、ひどく足りなく
なつたわけではないのであります。ただ望みに対しては足りない、もつと買いたいが、思うように買えないという表現のほうが或いはいいかと思います。併しそれで例の有名になりました
数字、昨年末には五億一千九百万
ドルの外貨があつたと申しまするのは、実はポンド、
ドルを合せたものでありますが、こういう私どもの持
つております外貨のバランスをどんどん世間に発表して行くことのよし悪しは実は議論のある点であります。申上げませんとわかりませんから三月三十一日のバランスを申上げます。これは
ドル、ポンド合せまして四億四千七百万です。ですから五億一千九百万が四億四千七百万に減つたということは、そうひどい減り方ではないのです。但し外貨が非常に足りないということを言われますのは、一方今後
輸入をするという約定をしてしまつたもの、そのために信用状が出てしまつた、信用状がまだ出なくても
政府としては
輸入をしたいという
希望者に対して外貨の割当とか承認とかいう言葉を、場合によ
つてはよく使いすすが、要するに外貨をお前に渡すぞという約束をしてしまつたという
数字が非常に多いことは当然でありますが、昨年の秋から現在に至るまで、できるだけ早く
輸入をしようということを努力して来だのであります。
従つてそういう割当をして来たのでありますが、その
金額が非常に多い、これも三月三十一日でありますが、信用状の残高にして八億を少し越している。今の信用状はまだ出ないが、
政府としては外貨をお前に渡すぞという約束をしてしまつたというものは八億を少し越しているという
状況であります。ですから四億何千万かの現金を持
つて、これだけの約束をするということは相当金繰りを窮屈にいたします。楽な
状態ではないのであります。併しそういう
状況に
なつたということは、
輸入の約定ができたということを
意味するのであ
つて、買いたいものをすでに
買付けているのでありますから、必ずしもその荷物はまだ来ていないかも知れませんが、その
意味からは使いたいと思つた金をその方面に使
つてしまつたから、なく
なつたということになれば、このような約定ができているということは今の
日本の
経済から見まして、場合によ
つては随分でき過ぎているようにできている部面もあります。望みを言えば限りがありませんのですが、満足していい部面もあるのであります。
従つて急に非常にお金がなくな
つて非常に困難をしておるというような印象がつい世間に與えられております。これは実は訂正を要するものであります。ついでながら申上げますが、私ども仕事をしておりまして、大分改善をして来たと思いますが、まだまだ至らん点はたくさんあるのであります。その至らん点の
一つの大きなものは実は
新聞発表であります。我々思
つてもいないことが
政府の一部局において多少の研究がなされたということだけで
新聞種になる。例えば
輸出は制限するぞということが、そういうことをその
担当の部局において研究をなすつたことは事実と思いますが、決して
政府がそういう
輸出を制限しなければならんというようなことを考える
ところまでは行かなかつたと私は了解しておるのであります。同じように
輸入急ぎが問題になりましたが、
政府は民間の人の
資金の心配までして、何んでもかんでも
輸入をして欲しい、頼むから
輸入をしてくれ。ということは、できるだけ
輸入がし易いために外貨をたくさん與えたいということを言
つたのでありますが、何かそういう点が常に誇張されて
新聞に出ます。これらの点改良を要すると思います。どうぞそういう目で今の
数字を頭に入れてお考えを下されば、そう何も苦労はないのだというふうに御
承知願いたいと思います。但し例のポンドの
ユーザンスをやめてしまつたというような
事情がありまして、そのようなことが外貨が足りないからだといつたような印象を作つたかと思うのでありますが、これは実は大変技術的にな
つて恐縮でございますが、
ちよつと違う考えであります。ポンドの
ユーザンスをやめたということは、実はお金が足りないからやめたのではない。お金よりもほかのものが足りなく
なつたからやめたのであります。ほかのものと申しますのは
輸入をしますときにはポンドでありますと、主として英系銀行が信用状を確認してくれるということがあるのであります。信用状確認と申しますのは先方の
輸出商が
商品を積み出した。何
商品を持
つて来れば、確かに代金を拂うという約束を守
つてくれることであります。その結果として
貿易が行われるわけであります。そういう約束をしてくれる限度というものをクレジツト・ラインにおいて認めたのであります。そのクレジツト・ラインなるものの拡大を望んで来たのでありますが、思うように行きませんで、拡大が行き悩みにな
つておる。そうしまするといわゆる
ユーザンスというものを使いますと、四ヶ月ならば四ヵ月、手形は拂われずに残
つております。残
つておるものは
日本の債務であります。先方の銀行としては向うの
輸出商にはお金を拂
つてしまつた、
日本がそれを拂
つてくれるまでの間は
日本の債務、向うの債権として今のクレジット・ラインから差引いておるわけであります。これが四カ月引延ばされておりますから、累計としては思いのほか大きな
金額になるのでありますから、そのようなものを背負
つていては新らしい
輸入というものがクレジツト・ラインの上で天井につかえることによ
つて滞ります。むしろその
ユーザンスというものをやめてしま
つて、向うで
輸出したらすぐ金を向うの銀行が拂
つてくれます。その銀行にはすぐこちらから又お金を入れてや
つてその立替えをして、今のクレジツト・ラインが詰
つて来るということを避けるようにということを最近したのであります。ですからこれがお金がないためでなくして、クレジツト・ラインというものの拡大が行き悩んだのでありますから、この拡大というものは行き悩んだが、私ども非常に残念に思
つたのでありますが、いろいろ止むを得ざる
事情があ
つたのであります。最近御
承知のように、司令部が私どもに委任状を出して、かれらは委任者でありますから責任者は委任者たる司令部が実は負
つてお前たちに一応委した、銀行に委した。併し多少のまずいことがあ
つても尻拭いは司令部がするということが今の仕組であります。その委任状をそろそろ撤回したいという申入れを各銀行に対していたしました。その申入れに私どもは今後司令部の保証なしに仕事をする取きめが立派に成立して、今後の
日本の
貿易が滞りなく行くという見定めが付いたならば自分のほうの保証状を撤回する。こういう極めて親切なる申出ではありますが、その意思は、明らかにしました結果として、その問題がはつきりするまでは新らしく信用限度を拡張する、長期の手形さえも向うが債権者としてこつちが手形債務を負うことを認めてもらうということは差控えたい。あちらとしては当然な考えであります。そういうことを英系銀行が主として考えるようになりました結果として、今までのクレジツト・ラインの拡大が行き悩んだのでありまして、これは止むを得ざる仕儀であつたと思います。それが今度の
ユーザンスをやめた
事情であります。ついでながら申上げますが、
ドルの
ユーザンスというものも一応やめておりましたが再開したい。これをやりますとお金が楽になりますから、先ほど申しました
輸入急ぎということは、今の限度よりももう少したくさんできるわけであります。これもそのような
事情並びに例の機構問題がはつきりしないということも手伝いまして、
ちよつと行き悩みの形に
なつおります。それらのことが若しできましたならば、私どもは実はいわゆる一—三の
予算というものを正直に申しますと、あのように勇敢に大きな
予算を組んで
輸入急きをやりましたことは、ポンド、
ドルと両方に亘
つてユーザンスというものは近く実現する見込があると鑑定したことにあ
つたのであります。それが実現しませんうちにそのようなこれ又司令部が我々に権限を委すということは結構なことでありますから、歓迎すべきことではありますが、そのほうが先に来てしまつた結果、
ユーザンスは一応延びたが、それが現在金繰りを一層窮屈にしているわけであります。そのような
事情があ
つたのであります。併しそれを総計して見ましても、先ほど申しました
通りそう何も非常に悲鳴を挙げなければならんほどのものではないから、その点は先ほど申しました
数字によ
つて御判断願いたいと思います。大体最近の外貨
事情はそのようなことが重要なポイントであると思います。なお御
質問がありましたらお答えいたします。