○
参考人(
加茂正雄君) この
法案が
審議されるだろうという予想の下に、
冷凍関係の者からの
意見をこちらに申達してくれろという御書面が三月二十五日であ
つたと思います。私のところへ届きましたが、その際にはこの
法案そのものを私拝見いたしておりませんでした。
法案の
内容を全く存じませんから
意見を述べることは差控えますという御返事をいたしておいたのであります。ところが昨朝十時半頃に今日この
委員会があるから一時にこちらに出て、この
法案に対する
批判並びに
意見を述べろということであ
つたのであります。ところがまだ私の
手許にはこの
法案が着いておりません。このお手紙に恐らく案が付いて来ておるのだろうと思いまして、そのことを尋ねて見ましたら、付いていないということでありましたので、先ず以てこの案を拝見することが
意見を述べるのには必要だと思うから、至急その案をお届け願いたいということを、やはり速達でこちらに申述べておきましたが、私がこちらに参りますまで
手許に届きません。こちらに参りまして今これを頂載しただけでありますので、これについての
意見とか或いは
批判という
ようなものを述べる実は資格は
只今のところではないわけでありますが、この案ができますまでにいろいろ同
業者のほうにも
通産省から相談がありましたので、
特別委員会を設けて
お話をし合
つたことはあ
つたのでありますが、最後の案は全く存じていない
ようなわけで、恐らくこの案には今の我々の所で作りました
委員会で出ました
希望とか
意見が含まれておることだろうと想像いたしますけれども、到底それを一々調べる時間がありませんでした。
従つて只今も一向
意見として申述べるべき
考えはまとま
つていないのであります。
ただこちらの
委員でおられます
かたがたのお顔触れを伺
つて見ますと、私の知
つております
範囲におきましては、この
冷凍の
仕事にこれまで
関係をされてお
つたとか、或いはそれを実際に手がけられて
経験をお持ちの
かたは殆んどおられない
ようなふうに私には見えるのであります。併しこの案は将来の
日本の
産業の
進歩発展という
方面から
考えまして非常に大切なことと思われますので、我々
業界の者、或いはそれに
関係のある者をお招きにな
つて、その
意見を先ず以てお尋ねになるということは非常に結構なことで、引続いてこの
愼重さを以て
法案の御
審議を衷心から
お願いをいたす次第でありますが、私の、この
案そのものとは全く
関係はありませんが、御
審議の上に、ころもあ
つたらよからうかという
希望を申しますれば、
只今お話しました
ように、殆んど
冷凍のことを
御存じのないかたのお寄り合いでありますから、一応この
冷凍機械といろものはどういうものか、それを
使つた冷凍事業というものは如何なるものであるかということの実地の
見学をみんなでなす
つて、同時にこれは
高圧ガスのほうの
仕事も
御存じがあれば結構ですが
御存じなければ、それも
御覧になりました上で、それでこの
解義を進められることが、最も私は望ましいことではないかと
考えておるのであります。
十五分許されておる
ようでありますから、もう少し私時間を頂戴して申述べたいのでありますが、
冷凍の
仕事は
御存じのかたがありまし
ようけれども、ただ冷、低い
温度を作るというのが目的なのでありまして、ただこれは物を蒸発させればいいわけであります。
皆さんアルコールか何か頭におつけにな
つて、暫らく立
つておれば、蒸発しますからそれで涼しくなる、だから極めて
簡單なわけです。何でも蒸発しやすいものをそこへ持
つて来て蒸発させればそこで冷は得られるわけですが、これを
工業化して経営するとい
つた面から
考えますとどれだけか値打ちのある
液体を持
つて来てそれが室中に飛散してしまうということでは、到底収支引合うということにはなりませんから、それで今日の
冷凍の
仕事は、冷を作るために蒸発させたところの
液体を回収をして、そうして幾度も繰返して使うという
やり方をしておるのであります。この冷を作るために蒸発させた
液体を回収して元のものに戻すという
仕事が即ち
冷凍機械のやる
仕事なんであります。
従つて回収した
ガスの
圧力のほうから
考えますと、冷を作るために蒸発させる
品物のことを
冷媒と唱えておりますが、
冷媒の性質によ
つて高い
圧力を要するものもあれば、低い
圧力でいいものもあるのであります。十四、五年前までは
炭酸ガスを使
つたことがあります。これは
相当に高い
圧力まで圧縮する必要があるのでありますが、そのほかにおいては
アンモニアだとか、
亜硫酸ガス、
近頃はフレオンという
ようなものも使
つております。メチル・クロライドという
ようなものも使
つております。これなどは決して
圧力の高いものではありません。むしろ
低圧であります。殊に水を蒸発させてそれで冷を作るという
やり方もありまするので、これは
高圧どころではない、真空であります。それを利用しておる、
従つてこの
高圧ガス取締というものの
法案の
適用を、
冷凍事業を経営しておる
工場に
適用されて然るべきものであるかどうかということすら疑われる場合が多多あるのでありまして、今日の傾向では
高圧の
ガスは使わぬほらが多くなりつつあるのであります。その
実情を
皆さんに御了知願いました上でこの
法案の御
審議を願うということがよほど大切だろうと思うのであります。
更にこの
冷凍の
適用の
方面から申しますと、決して食料の
冷凍とか、或いは建物の冷房ということばかりではないのでありまして、今日においては輸血に使います血を
冷凍しますとか、その赤血球、白血球の
被膜がすつかりとれてしま
つて、A型とか、O型とか、B型とかいう
ような型は、すつかりその
被膜がとれてしまうために取り除かれてしま
つて、それで
冷凍したものをブドウ糖なり、水なりに溶かして使えば、如何なる型の血の人にもこれは注射をすると言いますか、輸血して差支えないという
ようなところにもな
つております。
近頃の医薬の
製造におきましても、スフなどの
製造におきましても、更に絹物の
方面から言いますと、繭なども
只今煮殺して糸を
解舒するということをや
つておりますが、むしろこれは凍死をさせまして、凍らせて蛹を殺してから糸の
解舒をやるということのほうが、生糸の艶から言いましても、又その強さから
言つても、織り上げましたところの織物のいわゆる
絹鳴りということを申しますが、その点から
言つても遥かに優れておるということがわか
つておるのであります。殊に最近の例を見ますと、まだ実用にはな
つておりませんが、アメリカにおいては
フロリダで以て
螢光体、フリユーオレツセソトの
品物に、
フロリダの比較的
温度の高い所で、
日光を吸收させまして、そうしてそれを
冷凍するというと、
光つてお
つたやつがすつかり色が消えてしまう。それを実験の
方面から言いますというと、飛行機で以てニューヨークに運びまして、それで夕方この冷えたやつを常温に戻す。そうすると部屋の中に晝間と同じ
ようにすつかり
日光が照り輝いておるという
ようなこともあるのであります。更に
近頃の
発電方面で非常に大切だとされております
ダムの築造におきましても、この
冷凍は非常に大切なのであります。
御存じの
通りあの
ダムを作
つております
コンクリートが固まるときに熱が出て来ます。で、これを早く取去るということにいたしませんと、
コンクリートの柔らかいうちに、堰き止めた水の
圧力によ
つてそれが変型をする虞れが著しくあるのであります。有名な
コロンビア河を堰き止めたボルダー・
ダム、或いはフーバー・
ダムと申しますか、これには実は
アンモニアを凝縮させたものを蒸発させて冷を作る。その管が十八マイルばかりもあの中に入
つて、そのままで
コンクリートの
ダムができ上
つておるという
ようなわけでありますが、
適用の
方面が非常に広く、且つ我々の日常の生活から、将来の
産業の上にも少なからぬ影響を持
つておりまするので、これの
発達方面に少なからぬ
関係を持
つております。
法案の御
審議には、か
ような
適用の広い
仕事であるということもお
考えの上で、
愼重の上にも
愼重を加えて頂くということを私特にとの席において
お願いをいたしたいのであります。
つづめて申しますれば、こういう
仕事であるから、少しでもこの
事業の将来の
発展、改良という
ようなことに障害になる
ような点のない
ような
法案を作り上げて頂くということをどうしても
希望せざるを得ない次第なんであります。まだ申述べれば
相当に申述べるべきことはあると思いますが、
委員会は今日限りではないという
委員長の、
お話でございましたから、若し
機会がありましたならば、重ねて申述べさせて頂き、今日はこれで失礼をいたします。