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参考人(
村木武夫君) 私が
村木でございます。
只今お話のございました
石炭の
輸送問題につきまして私
どもの
考えておりますこと、或いは直面いたしております問題を申上げて見たいと思います。
先ず
出炭でございますが、二十四
年度の
出炭は三千七百二十九万トンであ
つたと思います。二十五
年度は、これは三月は
推定に
なつておりますが、大体三千九百二十五万トン、二十六
年度は四千四百万トンはどうしても川さなければならんというような
状況になろうと思われます。そこで去年の二十五
年度の
出炭から見ますと、二十六
年度は約四百七十五万トンの
出炭増加を
予想されておりますので。ここに
輸送の問題がこれに関連して起
つて来るわけであります。
一方
需要のほうを見ますと、
昭和二十四
年度は三千五百二十四万トン
程度であ
つたと思いますが二十五
年度は一部三月の
推定が入
つておりますが、大体四千百二十五万トンと飛躍的に
増加いたしております。更に二十六
年度は
石炭協会の調べによりますと
最低四千五百二十万トンは必要であるというような
数字が出ておりますので、どうしても四千四百万トンくらいは頑張
つて出炭をしなければならない
状態に
なつております。
なお二十五
年度と違います点は、二十五
年度は約三百五十万トンの
貯炭を
年度末に持
つて迎えたのでありますが、その
貯炭を約二百万トン払い出しまして、殆ど
常備貯炭だけにな
つたのでありますが、それがありましたので急激な
需要増にも応じ得たのでありますが、二十六
年度はもう
貯炭は
常備貯炭だけに
なつておりますので、
出炭の
増加だけによ
つて需要の
増加に対応して行かなければならないという
関係にありますので、
出炭増加に邁進いたさなければならないわけでありますが、そこで我々一番心配いたしますのは、折角
増産いたしましても、
輸送の
関係で送れない
石炭を掘るというようななことになりますと、それだけが山下の
貯炭に
なつてしまいます。併し場合によりましては港の
貯炭になることもあります。そうなりますと、
石炭は非常に場所を余計取りますので、港や山が一ぱいに
なつてしまいますと、
生産をとめなければならないという問題に直面するわけでございます。そういたしますというと、更にこれは
生産業者にと
つて重大な問題でありますばかりでなく、
需要者にとりましても、
予定した
石炭が来ないことになりますので、非常な迷惑な問題になりまして、延いては二十六
年度の
日本経済全般に非常な悪影響を及ぼす問題になろうと思われるので、私
どもの最近の
情勢から推測いたしております
輸送状態につきまして、次に順次申上げて見たいと思います。
先ず
貨車の問題でありますが、これが一番深刻な問題のように思われますが、
国鉄当局の発表した
数字によりますと、
昭和二十六
年度は
造車がー千五百七十二両、廃車が二千四百七両、差引き
造車が僅かに百六十五両のようであります。それの
運行効率を増大いたしまして、
昭和二十六
年度といたしましては全
貨物の
輸送量において一億二千八百万トン、つまり
昭和二十五
年度よりは二百五十万トンも殖えたものを
輸送しようというような
努力目標を掲げられておるようであります。その中で
石炭に対しましては、三千七百六十二万トンを
輸送する
計画を立てておられるようであります。なお一方
安本で研究しておられます
自立経済審議会の構想を
ベースにいたしまして、それだけの
経済力を発揮するための
貨車の
輸送を
国鉄で換算した
数字があるようでありますが、それによりますと、第一案では全
貨物を一億四千三百九十万トン、そのうち
石炭は三千八百三十八万トン、これは
出炭を四千二百万トンと見ておるようであります。第二案は全
貨物は一億四千六百五十七万トン、そのうち
石炭は三千九百九十七万トン、これは四千三百五十万トンの
出炭と見ておるようであります。従いましてその
数字を見ましても、全
貨物では
国鉄の
努力目標の一億三千万トンの場合と比べて見ましても、全
貨物では六百万トン乃至七百万トンの
輸送力の
不足を来すようでありますし、
石炭だけについて見ましても、四千二百万トンの
出炭の場合の
輸送すら、
努力目標の
数字では
輸送できないというような
状態に
なつているようであります。
昭和二十五
年度には
特需の
関係もありましたが、
貨車不足のために
石炭界は非常な苦心をいたしまして、去年の九月から十二月頃にかけましては
出炭をとめなきやならない寸前に追い追まれた苦い経験がございますので、
貨車の問題につきましては極めて神経が過敏に
なつておるわけであります。更にこれは思い過しかも知れませんが、
特需のほうは減ることはないと思われますし、その上に聞くところによりますと、米国の州兵が二箇師団参るというようなことになりますと、その
方面にも
輸送力が取られるでありましようし、先ほど申上げました
貨車の
数字の
状態から
考えまして、
石炭を折角
増産いたしましても、
貨車のほうの
輸送で行き詰まるじやないかというような不安が非常に強いわけであります。この点を特に御認識願いたいと思うわけであります。
二番目の問題は
機帆船でありますが、
機帆船は御
承知のように、大体
船腹としては
日本全体で百二十万トン
程度あるようでありますが、
従つてこの運航が二回半ぐらいはできると思いますが、
輸送力といたしましては四百二十万トン
程度の
輸送力はあると思われるのでありますが、御
承知のように
重油が非常に少いので、正規に配給に
なつておりまするのは殆んど数にもならぬような
数字でありますので、大
部分は
特殊手当によ
つて、油を
特殊手当をいたしまして
輸送しているようであります。
従つて輸送能力があるにもかかわりませず、
実績を見ますると約毎月二百万トン
程度しか全
貨物の
輸送は月々ないようであります。これが更に
特殊手当の油が困難に
なつて参りますと、その数が漸次減
つて行くように思います。
石炭は二十五
年度機帆船によりまして
輸送いたしました
数字は大体四百二十万トン
程度で、月割三十五万トンぐらいと思われますが、
昭和二十六
年度の
計画といたしましては、四千四百万トン
出炭ベースの場合に、
最低六百三十五万トン、月約五十三万トンは
機帆船で送らなければならない。更に後ほど
ちよつと触れますが、
機帆船のほうの、
輸送力が非常に弱体に
なつていると思われますので、今、
日本で余
つておりまする
輸送力と申しますと、
機帆船だけだと思われますので、この
方面で
相当加勢をしなければならないという点を
考えますと、
機帆船に対する
輸送対策ということが
石炭方面から見ましても非常に重要な問題に
なつて来ると思われます。聞くところによりますと、四月からは
重油の
割当を従来
占領軍がや
つておりましたのが、
安本のほうに移るとかいうことでございますので、この際を機会といたしまして、ぜひともこの
機帆船の増送、
輸送対策につきまして万全の
措置を講じて頂きたいと念願しておる次第でございます。なお
簡單に触れたいと思うのでありますが、
汽船の問題でありますが、
汽船に対する
輸送は、
昭和二十五
年度は大体九百五十二万トン、
昭和二十六
年度の四千四百万トン、
出炭ベースでは千二百六十二万トン
輸送する
予定であります。
従つてこれも約三百万トン
年間に
昭和二十五
年度よりも殖えた
数字を
輸送しなきやならないわけでありますが、御
承知のように最近の
内地に就航いたしておりまする
汽船は非常に減
つて来ておりまして、いいものは
外航の近海のほうに
相当廻
つておりますし、大体七十五万トン
程度の
船腹で百四、五十万トンの
輸送をしているかと思われますが、そのうちの半分くらいに当る
数字が戰標船と申しまして、戰時標準型の悪い、非常に壊れやすい、
故障の多い船でありますし、
壽命もそう長くないようでありますので、そういうものに
相当依存しております
関係もありますので、これ以上の
輸送力の
増強は期待できないのじやないかという不安があるわけであります。
従つて三百トンの殖えた
数字を、
内地の、内
航汽船で果して輸出できるかどうかという点にも不安の念があるわけであります。その次には港の
荷役力の問題でありますが、これは特に
北海道方面で
小樽、
室蘭の
荷役の
状況が
昭和二十五
年度には
荷役機械が非常に
故障をいたしましたことと、道内の
貨車が非常に逼迫いたしました
関係で、常置いたしております押出しの
貨車が非常に払底いたしましたこと、並びに
配船が順調に至らなか
つた点等がありまして、非常に
荷役には難澁いたしたのでありますが、最もひどいのは去年の暮から今年の一月にかけまして、非常な
荷役の困難な
状況に追込まれまして、
各社の
配船いたしました船が殆んど全部十日以上滞船するというような非常な苦境に追込まれたのであります。そこで
各社とも非常な
努力をいたしまして、費用もかまわずに
荷役の
増強を図りましたことと、
鉄道のほうにいろいろな御協力も得まして、やつと切り抜けたのでありますが、それでも
昭和二十五
年度の
荷役の合計は
小樽で
年間百七十二万トン、
室蘭では約二百二十三万トン
程度になろうと思われます。
昭和二十六
年度を見ますと、
北海道炭の
生産は大体千三百七十万トン
程度と思われますが、
昭和二十五
年度の
推定実績でありまする千百五十七万トンから比べますと、約二百万トンくらい殖えることになりまして、その大
部分が
小樽、
室蘭の両港からの
内地への
積出しに
なつて参ると思われますので、今年のような
状況でありますと、非常にこの点にも不安の念が濃いのであります。二月の
状況を見ますと、
国鉄の
設備の
故障いたしました時間が、
小樽では総
荷役時間が二百三時間余でありますが、そのうち三十三時間五十分が
故障しておる。
室蘭のほうでは総
荷役時間が二百五十時間余でありますが、そのうち九十時間十分ほど
故障しておるというような
状況に
なつておりますし、先ず二十六
年度の
輸送につきましては、
荷役につきましては、この
故障を何とかなくして、申上げましたような、
増加の
数字をぜひ
荷役ができるような
状態に持
つて行きたいと思うのであります。更に
先行きのことを
考えますと、大体
日本の
石炭の
増産は、山が若い
北海道のほうにどうしても重点がかか
つて参りますので、今の
見込数は、大体
年間一割くらいずつ
北海道のほうが殖えて行くようでありますが、
最低そのくらい殖えて行くとしても、
昭和二十七
年度には
小樽の
荷役予定数量は二百二十五万トン
程度になろうと思われますし、
室蘭では三百三十五万トン、
昭和二十八
年度は
小樽二百七十万トン、
室蘭四百十万トン、
昭和二十九
年度は
小樽三百十万トン、
室蘭四百八十万トンというふうに、
先行き相当大幅に
増加して行くと思われます。大体
北海道の
生産は殆んど
戰前に近い
状態に
なつておりますにもかかわりませず、
荷役設備のほうは殆んど
戰前と変りない、むしろそれが老朽化しておるというような点があ
つて、低下の一途を辿
つておるようでありますので、
先行きの
増産態勢に関連いたしまして、今から新規の
設備について特段の御配慮を
鉄道方面にお願いしませんと、この点にも重大なネツクが
予想されておるわけであります。大体
輸送問題につきまして、私
どもの見ております
実情から見た心配しておる点を種々申上げたわけでありますが、どうぞよろしくお願いいたします。